(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022150913
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】積層コイル部品の製造方法及び積層コイル部品
(51)【国際特許分類】
H01F 41/04 20060101AFI20220929BHJP
H01F 17/00 20060101ALI20220929BHJP
H01F 27/29 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
H01F41/04 C
H01F17/00 D
H01F27/29 123
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021053720
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】濱地 紀彰
(72)【発明者】
【氏名】松浦 利典
(72)【発明者】
【氏名】占部 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】飛田 和哉
(72)【発明者】
【氏名】志賀 悠人
(72)【発明者】
【氏名】數田 洋一
(72)【発明者】
【氏名】田久保 悠一
【テーマコード(参考)】
5E062
5E070
【Fターム(参考)】
5E062FF01
5E062FF03
5E070AB02
5E070CB13
5E070EA01
(57)【要約】
【課題】端子電極の厚みを均一にすることができる積層コイル部品の製造方法及び積層コイル部品を提供する。
【解決手段】積層コイル部品1の製造方法は、絶縁体層10を形成する工程と、第一コイル導体20、第二コイル導体21、第三コイル導体22及び第四コイル導体23を形成する工程と、絶縁体層10及び第一コイル導体20、第二コイル導体21、第三コイル導体22及び第四コイル導体23が積層されて形成された積層体Lを得る工程と、積層体Lの外表面に、フォトリソグラフィ法によって端子電極4,5を形成する工程と、を含む。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁体層を形成する工程と、
コイル導体を形成する工程と、
前記絶縁体層及び前記コイル導体が積層されて形成された積層体を得る工程と、
前記積層体の外表面に、フォトリソグラフィ法によって端子電極を形成する工程と、を含む、積層コイル部品の製造方法。
【請求項2】
複数の前記積層体を含む積層体基板を形成する工程と、
前記積層体基板から複数の前記積層体を個片化する工程と、を含み、
前記端子電極を形成する工程では、個片化された前記積層体に前記端子電極を形成する、請求項1に記載の積層コイル部品の製造方法。
【請求項3】
複数の絶縁体層が積層されて形成されている素体と、
前記素体内に配置され、複数のコイル導体によって構成されているコイルと、
前記素体の外表面に配置され、フォトリソグラフィ法によって形成されている端子電極と、を備え、
前記端子電極において、最大厚みをa、最小厚みをbとした場合に、
(b/a)≧0.7
の関係を満たす、積層コイル部品。
【請求項4】
前記素体内に配置されると共に、前記素体において前記端子電極と対向する前記外表面に露出し、前記端子電極と接合されている接合導体を備える、請求項3に記載の積層コイル部品。
【請求項5】
前記接合導体は、連続して複数設けられている、請求項4に記載の積層コイル部品。
【請求項6】
前記素体は、前記外表面として、互いに対向している一対の端面と、互いに対向している一対の主面と、互いに対向している一対の側面と、を有し、一の前記主面が実装面であり、
前記端子電極は、前記端面に配置されている第一電極部分と、前記実装面に配置されている第二電極部分と、を有し、一対の前記側面の対向方向から見てL字状を呈しており、
前記対向方向から見て、前記第一電極部分において前記端面から離間する角部の曲率をR1、前記第二電極部分において前記実装面から離間する角部の曲率をR2、前記第一電極部分と前記第二電極部分とが成す角部の曲率をR3とした場合、
R1=R2≧R3
の関係を満たす、請求項3~5のいずれか一項に記載の積層コイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層コイル部品の製造方法及び積層コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の積層コイル部品の製造方法として、たとえば、特許文献1に記載された方法が知られている。特許文献1に記載の積層コイル部品の製造方法は、絶縁体層及び内部電極を剥離可能な基材上に積層して成る未焼成の積層体をフォトリソグラフィ工法で形成する第1工程と、積層体を複数のチップに切断した後、基材を剥離して、各チップを焼成する第2工程と、外部電極を焼成された各チップの両端に形成する第3工程と、を含んでいる。第3工程では、焼成されたチップの両端部を導電性ペーストにディップして焼き付け、焼付層の上にめっきを施して外部電極を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の積層コイル部品の製造方法のように、素体(チップ)を導電ペーストに浸漬させる浸漬法によって外部電極を形成すると、外部電極の厚みが不均一になり得る。特に、素体の角部では、外部電極の厚みが他の部分よりも薄くなる。外部電極の厚みが不均一になると、外観不良によって歩留まりが低下したり、めっきの剥離が生じたりする。
【0005】
本発明の一側面は、端子電極の厚みを均一にすることができる積層コイル部品の製造方法及び積層コイル部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る積層コイル部品の製造方法は、絶縁体層を形成する工程と、コイル導体を形成する工程と、絶縁体層及びコイル導体が積層されて形成された積層体を得る工程と、積層体の外表面に、フォトリソグラフィ法によって端子電極を形成する工程と、を含む。
【0007】
本発明の一側面に係る積層コイル部品の製造方法では、積層体の外表面に、フォトリソグラフィ法によって端子電極を形成する。フォトリソグラフィ法によれば、端子電極を精度良く形成することができる。そのため、端子電極をフォトリソグラフィ法によって形成することによって、端子電極の厚みを均一にすることができる。
【0008】
一実施形態においては、複数の積層体を含む積層体基板を形成する工程と、積層体基板から複数の積層体を個片化する工程と、を含み、端子電極を形成する工程では、個片化された積層体に端子電極を形成してもよい。端子電極を形成した後に、端子電極を切断して個片化する方法では、端子電極をダイシングなどによって切断するときに端子電極に大きな切断応力が加わり、その結果、端子電極が変形するおそれがある。これにより、端子電極の厚みが不均一になり得る。積層コイル部品の製造方法では、個片化された積層体に端子電極を形成するため、切断に起因する変形を回避できる。したがって、端子電極の厚みを均一にすることができる。
【0009】
本発明の一側面に係る積層コイル部品は、複数の絶縁体層が積層されて形成されている素体と、素体内に配置され、複数のコイル導体を含んで構成されているコイルと、素体の外表面に配置され、フォトリソグラフィ法によって形成されている端子電極と、を備え、端子電極において、最大厚みをa、最小厚みをbとした場合に、
(b/a)≧0.7
の関係を満たす。
【0010】
本発明の一側面に係る積層コイル部品では、端子電極が上記の関係を満たしている。これにより、積層コイル部品では、端子電極の厚みを均一にすることができる。
【0011】
一実施形態においては、素体内に配置されると共に、素体において端子電極と対向する外表面に露出し、端子電極と接合されている接合導体を備えていてもよい。この構成では、素体と端子電極との接合強度の向上を図ることができる。
【0012】
一実施形態においては、接合導体は、連続して複数設けられていてもよい。この構成では、素体と端子電極との接合強度をより一層高めることができる。
【0013】
一実施形態においては、素体は、外表面として、互いに対向している一対の端面と、互いに対向している一対の主面と、互いに対向している一対の側面と、を有し、一の主面が実装面であり、端子電極は、端面に配置されている第一電極部分と、実装面に配置されている第二電極部分と、を有し、一対の側面の対向方向から見てL字状を呈しており、対向方向から見て、第一電極部分において端面から離間する角部の曲率をR1、第二電極部分において実装面から離間する角部の曲率をR2、第一電極部分と第二電極部分とが成す角部の曲率をR3とした場合、
R1=R2≧R3
の関係を満たしてもよい。この構成では、当該関係を満たすことにより、端子電極の厚みを均一にすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一側面によれば、端子電極の厚みを均一にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る積層コイル部品を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、積層コイル部品の製造方法を示す図である。
【
図5】
図5は、積層コイル部品の製造方法を示す図である。
【
図6】
図6は、他の実施形態に係る積層コイル部品の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0017】
[積層コイル部品]
図1は、一実施形態に係る積層コイル部品の斜視図である。
図2は、積層コイル部品の側面図である。
図1及び
図2に示されるように、積層コイル部品1は、直方体形状を呈している素体2と、複数(ここでは一対)の端子電極4,5と、を備えている。一対の端子電極4,5は、素体2の両端部にそれぞれ配置されている。直方体形状には、角部及び稜線部が面取りされている直方体の形状、及び、角部及び稜線部が丸められている直方体の形状が含まれる。
【0018】
素体2は、外表面として、互いに対向している一対の端面2a,2bと、互いに対向している一対の主面2c,2dと、互いに対向している一対の側面2e,2fと、を有している。以下、一対の主面2c,2dが対向している対向方向を第一方向D1、一対の端面2a,2bが対向している対向方向を第二方向D2、一対の側面2e,2fが対向している対向方向を第三方向D3とする。本実施形態では、第一方向D1は、素体2の高さ方向である。第二方向D2は、素体2の長さ方向であり、第一方向D1と直交している。第三方向D3は、素体2の幅方向であり、第一方向D1と第二方向D2とに直交している。
【0019】
一対の端面2a,2bは、一対の主面2c,2dの間を連結するように第一方向D1に延在している。一対の端面2a,2bは、第三方向D3、すなわち、一対の主面2c,2dの短辺方向にも延在している。一対の側面2e,2fは、一対の主面2c,2dの間を連結するように第一方向D1に延在している。一対の側面2e,2fは、第二方向D2、すなわち、一対の主面2c,2dの長辺方向にも延在している。積層コイル部品1は、電子機器(たとえば、回路基板又は電子部品)に、たとえば、はんだ実装される。積層コイル部品1では、主面2cが、電子機器に対向する実装面を構成する。
【0020】
図3に示されるように、素体2は、第三方向D3に複数の素体層6が積層されて構成されている。素体2は、積層されている複数の素体層6を有している。素体2では、複数の素体層6が積層されている積層方向が、第三方向D3と一致する。一部の素体層6は、後述するように、積層方向で隣り合う素体層6と一体的に形成されている。別体として形成された各素体層6についても、実際の素体2では、各素体層6の間の境界が視認できない程度に一体化されている。
【0021】
各素体層6は、たとえば、絶縁性材料を含んでいる。各素体層6は、絶縁性材料として、たとえば、磁性材料を含んでいる。磁性材料としては、たとえば、Ni-Cu-Zn系フェライト材料、Ni-Cu-Zn-Mg系フェライト材料、Ni-Cu系フェライト材料、又は、Fe合金が挙げられる。各素体層6は、絶縁性材料として、たとえば、非磁性材料を含んでいてもよい。非磁性材料としては、ガラスセラミック材料又は誘電体材料が挙げられる。各素体層6は、たとえば、絶縁性材料を含む絶縁体層を焼成する焼成工程を経て形成され、絶縁性材料の焼結体を含んでいてもよい。
【0022】
図1に示されるように、一対の端子電極4,5は、第二方向D2で互いに離間している。端子電極4,5は、第三方向D3から見て、L字状を呈している。各端子電極4,5は、たとえば、導電性材料を含んでいる。導電性材料は、たとえば、Ag又はPdを含んでいる。導電性材料は、たとえば、Ag粉末又はPd粉末などの金属粉末を含んでいる。各端子電極4,5の表面には、めっき層が形成されていてもよい。めっき層は、たとえば、電気めっき又は無電解めっきにより形成される。めっき層は、たとえば、Ni、Sn、又はAuを含んでいる。
【0023】
端子電極4は、素体2の端面2a側に配置されている。端子電極4は、端面2a及び主面2cにわたって配置されている。端子電極4は、端面2aに設けられた第一電極部分4aと、主面2cに設けられた第二電極部分4bと、を有している。第一電極部分4a及び第二電極部分4bは、互いに一体的に設けられている。第一電極部分4a及び第二電極部分4bは、素体2の稜線部において互いに接続されており、互いに電気的に接続されている。
【0024】
第一電極部分4aは、第一方向D1に沿って延在している。第一電極部分4aは、第二方向D2から見て、長方形状を呈している。第二電極部分4bは、第二方向D2に沿って延在している。第二電極部分4bは、第一方向D1から見て、長方形状を呈している。第一電極部分4a及び第二電極部分4bは、第三方向D3に沿って延在している。
【0025】
端子電極5は、素体2の端面2b側に配置されている。端子電極5は、端面2b及び主面2cにわたって配置されている。端子電極5は、端子電極5は、端面2bに設けられた第一電極部分5aと、主面2cに設けられた第二電極部分5bと、を有している。第一電極部分5a及び第二電極部分5bは、互いに一体的に設けられている。第一電極部分5a及び第二電極部分5bは、素体2の稜線部において互いに接続されており、互いに電気的に接続されている。
【0026】
第一電極部分5aは、第一方向D1に沿って延在している。第一電極部分5aは、第二方向D2から見て、長方形状を呈している。第二電極部分5bは、第二方向D2に沿って延在している。第二電極部分5bは、第一方向D1から見て、長方形状を呈している。第一電極部分5a及び第二電極部分5bは、第三方向D3に沿って延在している。
【0027】
端子電極4,5では、当該端子電極4,5の最大厚みをa、最小厚みをbとした場合、以下の関係を満たす。
(b/a)≧0.7
最大厚みa及び最小厚みbは、第一方向D1又は第二方向D2における、素体2の外表面(端面2a,2b、主面2c)と端子電極4,5の外表面との間の距離である。なお、
図2においては、便宜的に、第一電極部分5aの厚みをaとし、第二電極部分5bの厚みをbとして示している。最大厚みaは、第一電極部分4a,5a又は第二電極部分4b,5bであり得る。最小厚みbは、第一電極部分4a,5a又は第二電極部分4b,5bであり得る。
【0028】
端子電極4,5では、第三方向D3から見て、第一電極部分4a,5aにおいて端面2a,2bから離間する第一角部C1の曲率をR1、第二電極部分4b,5bにおいて主面2cから離間する第二角部C2の曲率をR2、第一電極部分4a,5aと第二電極部分4b,5bとが成す第三角部C3の曲率をR3とした場合、以下の関係を満たす。
R1=R2≧R3
すなわち、曲率R1と曲率R2とは同じであり、曲率R1及び曲率R2は曲率R3以上である。第一角部C1について、詳細には、第一電極部分4a,5aにおいて端面2a,2bから第二方向D2に離間して位置する角部であり、端面2a,2bと接しない面であって第一方向D1に沿った当該面と、主面2d側に位置し且つ第二方向D2に沿った面とが成す角部である。第二角部C2について、詳細には、第二電極部分4b,5bにおいて主面2cから第一方向D1に離間して位置する角部であり、主面2cと接しない面であって第二方向D2に沿った当該面と、端面2a又は端面2b側に位置し且つ第一方向D1に沿った面とが成す角部である。
【0029】
図2に示されるように、積層コイル部品1は、素体2内に配置されたコイル7を備えている。コイル7のコイル軸は、第三方向D3に沿って延在している。コイル7の外形は、第三方向D3から見て、略矩形状を呈している。
【0030】
図3に示されるように、コイル7(
図2参照)は、第一コイル導体20と、第二コイル導体21と、第三コイル導体22と、第四コイル導体23と、を有している。第一コイル導体20、第二コイル導体21、第三コイル導体22及び第四コイル導体23は、第三方向D3に沿って、第一コイル導体20、第二コイル導体21、第三コイル導体22及び第四コイル導体23の順に配置されている。第一コイル導体20、第二コイル導体21、第三コイル導体22及び第四コイル導体23は、ループの一部が途切れた略矩形状を呈しており、一端と他端とを有している。第一コイル導体20、第二コイル導体21、第三コイル導体22及び第四コイル導体23は、第一方向D1に沿って直線状に延在する部分と、第二方向D2に沿って直線状に延在する部分と、を有している。第一コイル導体20、第二コイル導体21、第三コイル導体22及び第四コイル導体23は、所定の幅で形成されている。
【0031】
第一コイル導体20は、連結導体25を介して、端子電極5に連結されている。連結導体25は、第一コイル導体20と同じ層に位置している。第一コイル導体20の一端が、連結導体25と接続されている。連結導体25は、第一コイル導体20と端子電極5の第一電極部分5aとを連結する。連結導体25は、第二電極部分5bと接続されていてもよい。第一コイル導体20及び連結導体25は、一体に形成されている。
【0032】
第二コイル導体21は、第一コイル導体20と接続されている。第一コイル導体20の一部と第二コイル導体21の一部とは、第三方向D3から見て重なっている。第三コイル導体22は、第二コイル導体21と接続されている。第二コイル導体21の一部と第三コイル導体22の一部とは、第三方向D3から見て重なっている。
【0033】
第四コイル導体23は、第三コイル導体22と接続されている。第三コイル導体22の一部と第四コイル導体23の一部とは、第三方向D3から見て重なっている。第四コイル導体23は、連結導体26を介して、端子電極4に連結されている。連結導体26は、第四コイル導体23と同じ層に位置している。第四コイル導体23の一端が、連結導体26と接続されている。連結導体26は、第四コイル導体23と端子電極4の第一電極部分4aとを連結する。連結導体26は、第二電極部分4bと接続されていてもよい。第四コイル導体23及び連結導体26は、一体に形成されている。
【0034】
第一コイル導体20、第二コイル導体21、第三コイル導体22及び第四コイル導体23は、コイル7(
図2参照)を構成している。コイル7は、連結導体25を通して、端子電極5と電気的に接続されている。コイル7は、連結導体26を通して、端子電極4と電気的に接続されている。
【0035】
第一コイル導体20、第二コイル導体21、第三コイル導体22及び第四コイル導体23、並びに、各連結導体25,26は、導電性材料を含んでいる。導電性材料は、Ag又はPdを含んでいる。導電性材料は、たとえば、Ag粉末又はPd粉末などの金属粉末を含んでいる。本実施形態では、第一コイル導体20、第二コイル導体21、第三コイル導体22及び第四コイル導体23、並びに、各連結導体25,26は、各端子電極4,5と同じ導電性材料を含んでいる。第一コイル導体20、第二コイル導体21、第三コイル導体22及び第四コイル導体23、並びに、各連結導体25,26は、各端子電極4,5と異なる導電性材料を含んでいてもよい。第一コイル導体20、第二コイル導体21、第三コイル導体22及び第四コイル導体23、並びに、各連結導体25,26は、対応する素体層6に設けられている。
【0036】
[積層コイル部品の製造方法]
続いて、積層コイル部品1の製造方法について説明する。積層コイル部品1の製造方法は、積層体基板30を形成する工程と、複数の積層体Lを個片化する工程と、端子電極4,5を形成する工程と、を含む。
【0037】
積層体基板30を形成する工程について説明する。積層体基板30を形成する工程では、
図4に示されるように、積層体基板30を形成する。積層体基板30は、複数の絶縁体層10を積層することにより形成される。積層体基板30は、複数の積層体Lを備えている。積層体Lは、積層コイル部品1に対応している。積層体Lは、焼成工程を経ずにそのまま積層コイル部品1とされてもよいし、焼成工程を経て積層コイル部品1とされてもよい。
【0038】
本実施形態では、積層体Lの数は「4」である。積層体基板30は、基材32上に形成されている。複数の積層体Lは、積層方向から見て、積層方向に交差する第一方向D1及び第二方向D2にそれぞれ配列されている。複数の積層体Lは、個片化の際に除去される部分(切断部、分断部)と一体的に形成されている。
【0039】
積層体Lは、第一コイル導体20、第二コイル導体21、第三コイル導体22及び第四コイル導体23、並びに、各連結導体25,26に対応する導体12と、素体層6に対応する絶縁体層10と、を有している。導体12は、焼成工程を経ずにそのまま第一コイル導体20、第二コイル導体21、第三コイル導体22及び第四コイル導体23、並びに、各連結導体25,26とされてもよいし、焼成工程を経て第一コイル導体20、第二コイル導体21、第三コイル導体22及び第四コイル導体23、並びに、各連結導体25,26とされてもよい。絶縁体層10は、焼成工程を経ずにそのまま素体層6とされてもよいし、焼成工程を経て素体層6とされてもよい。
【0040】
本実施形態では、積層体基板30を、フォトリソグラフィ法を用いて製造する。本実施形態の「フォトリソグラフィ法」とは、感光性材料を含む加工対象の層を露光及び現像することにより、所望のパターンに加工するものであればよく、マスクの種類などに限定されない。
【0041】
最初に、基材32上に絶縁性材料を塗布することにより、絶縁体層10の一層を形成する。続いて、絶縁体層10上に、第一コイル導体20及び連結導体25に対応する導体12を形成する。導体12は、フォトリソグラフィ法を用いて形成する。具体的には、絶縁体層10上に感光性銀ペースト(感光性導電ペースト)を塗布する。続いて、導体12のパターンを有するマスク(たとえば、Crマスク)を介して感光性銀ペーストに紫外線を照射して露光させると共に現像液で現像して、導体12を形成する。
【0042】
続いて、絶縁体層10の一層を形成する。絶縁体層10は、導体12の周囲に形成される。絶縁体層10は、フォトリソグラフィ法を用いて形成する。具体的には、絶縁体層10、導体12上に感光性絶縁体ペーストを塗布する。すなわち、感光性絶縁体ペーストを、導体12の全域が覆われるように塗布する。続いて、導体12のパターンを有するマスクを介して感光性絶縁体ペーストに紫外線を照射して露光させると共に現像液で現像して、絶縁体層10を形成する。
【0043】
上述の方法により、第二コイル導体21、第三コイル導体22及び第四コイル導体23、並びに、連結導体26に対応する導体12及び複数の絶縁体層10を形成して、積層体基板30を形成する。
【0044】
次に、複数の積層体Lを個片化する工程について説明する。複数の積層体Lを個片化する工程では、たとえば、ダイシングによって積層体Lを個片化する。具体的には、第一方向D1及び第二方向D2に沿って積層体基板30を切断する。ダイシングブレードは、少なくとも、第一方向D1で隣り合う積層体Lの間、及び、第二方向D2で隣り合う積層体Lの間を通過する。これにより、積層体基板30が分断され、複数の積層体Lが個片化される。積層体基板30の分断によって、基材32上において、隣り合う積層体Lの間には溝が形成される。なお、積層体Lの個片化は、他の方法で行ってもよい。たとえば、レーザーによって積層体基板30を切断してもよいし、フォトリソグラフィ法によって積層体L以外の部分が除去されてもよい。
【0045】
次に、端子電極4,5を形成する工程について説明する。端子電極4,5は、フォトリソグラフィ法を用いて形成する。端子電極4,5を形成する工程では、個片化した積層体Lの間の溝に(基材32上に)、感光性銀ペーストを塗布(充填)する。続いて、端子電極4,5のパターンを有するマスクを介して感光性銀ペーストに紫外線を照射して露光させると共に現像液で現像して、
図5に示されるように、端子電極4,5を形成する。端子電極4,5が形成された積層体Lは、上述のように、焼成工程を経ずにそのまま積層コイル部品1とされてもよいし、焼成工程を経て積層コイル部品1とされてもよい。必要に応じて、端子電極4,5に電解めっき又は無電解めっきを施し、めっき層を設けてもよい。
【0046】
以上説明したように、本実施形態に係る積層コイル部品1の製造方法では、積層体Lの外表面に、フォトリソグラフィ法によって端子電極4,5を形成する。フォトリソグラフィ法によれば、端子電極4,5を精度良く形成することができる。これにより、端子電極4,5を所望する寸法で形成することができる。そのため、端子電極4,5をフォトリソグラフィ法によって形成することによって、端子電極4,5の厚みを均一にすることができる。その結果、外観不良によって歩留まりが低下したり、めっきの剥離が生じたりすることを回避することができる。
【0047】
また、積層コイル部品1の製造方法では、フォトリソグラフィ法によって端子電極4,5を形成することによって、端子電極4,5の厚みを均一に薄くすることができる。これにより、端子電極4,5とコイル7との間に形成される浮遊容量を小さくすることが可能となる。その結果、自己共振周波数(SRF:Self-Resonant Frequency)特性を向上させることができる(自己共振周波数を高周波側にすることができる)。
【0048】
本実施形態に係る積層コイル部品1の製造方法では、複数の積層体Lを含む積層体基板30を形成する工程と、積層体基板30から複数の積層体Lを個片化する工程と、を含む。端子電極4,5を形成する工程では、個片化された積層体Lに端子電極4,5を形成する。端子電極を形成した後に、端子電極を切断して個片化する方法では、端子電極をダイシングによって切断するときに端子電極に大きな切断応力が加わり、その結果、端子電極が変形するおそれがある。これにより、端子電極の厚みが不均一になり得る。積層コイル部品1の製造方法では、個片化された積層体Lに端子電極4,5を形成するため、切断に起因する変形を回避できる。したがって、端子電極4,5の厚みを均一にすることができる。
【0049】
本実施形態に係る積層コイル部品1は、端子電極4,5において、最大厚みをa、最小厚みをbとした場合に、
(b/a)≧0.7
の関係を満たす。これにより、積層コイル部品1では、端子電極4,5の厚みを均一にすることができる。
【0050】
本実施形態に係る積層コイル部品1では、端子電極4,5は、端面2a,2bに配置されている第一電極部分4a,5aと、主面2cに配置されている第二電極部分4b,5bと、を有しており、第三方向D3から見てL字状を呈している。積層コイル部品1では、第三方向D3から見て、第一電極部分4a,5aにおいて端面2a,2bから離間する第一角部C1の曲率をR1、第二電極部分4b,5bにおいて主面2cから離間する第二角部C2の曲率をR2、第一電極部分4a,5aと第二電極部分4b,5bとが成す第三角部C3の曲率をR3とした場合、
R1=R2≧R3
の関係を満たす。この構成では、当該関係を満たすことにより、端子電極4,5の厚みを均一にすることができる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0052】
上記実施形態に加えて、
図6に示されるように、積層コイル部品1Aは、接合導体9を備えていてもよい。接合導体9は、素体2内に配置されると共に、素体2において端子電極4,5と対向する外表面に露出している。
図6に示される例では、接合導体9は、端面2a,2b及び主面2cに露出している。接合導体9は、端子電極4,5と接合(固着)されている。接合導体9は、導電性材料を含んでいる。導電性材料は、Ag又はPdを含んでいる。導電性材料は、たとえば、Ag粉末又はPd粉末などの金属粉末を含んでいる。
【0053】
接合導体9は、第三方向D3から見て、たとえば三角形状を呈している。接合導体9の形状は、矩形状であってもよいし、半円形状などであってもよい。接合導体9は、コイル導体と同時に形成することができる。具体的には、コイル導体及び接合導体9に対応するパターンを有するマスクを用いることによって形成することができる。
【0054】
接合導体9は、第一方向D1において連続して(並んで)設けられていると共に、第二方向D2において連続して設けられている。接合導体9は、独立して設けられていてもよいし、複数の接合導体9が一体的に(連結して)設けられていてもよい。接合導体9は、全て同じ大きさであってもよいし、大きさが異なっていてもよい。接合導体9は、第三方向D3に沿って延在していてもよいし、第三方向D3において断続的(間隔をあけて)に配置されていてもよい。
【0055】
積層コイル部品1Aでは、接合導体9を備えているため、素体2と端子電極4,5との接合強度の向上を図ることができる。また、複数の接合導体9を連続して設けることにより、接合強度をより一層高めることができる。
【0056】
上記実施形態では、端子電極4,5が第一電極部分4a,5aと第二電極部分4b,5bとを備える形態を一例に説明した。しかし、端子電極4,5の構成はこれに限定されない。たとえば、端子電極4,5は、第二電極部分4b,5bのみを有していてもよい。
【0057】
上記実施形態では、端子電極4,5が素体2の端面2a,2b及び主面2cに配置されている形態を一例に説明した。しかし、端子電極4,5は、その一部が素体2に埋設されていいてもよい。たとえば、素体2の端面2a,2b及び主面2cに凹部を形成し、凹部内に端子電極4,5の一部が設けられていてもよい。この場合、素体2の外表面とは、凹部を形成する面のことを意味する。
【0058】
上記実施形態では、コイル7が第一コイル導体20、第二コイル導体21、第三コイル導体22及び第四コイル導体23によって構成されている形態を一例に説明した。しかし、コイル7を構成するコイル導体の数は上述した値に限られない。
【0059】
上記実施形態では、積層体基板30を形成し、積層体基板30から積層体Lを個片化して、積層体Lを得る形態を一例に説明した。しかし、一つの積層体Lを形成し、この積層体Lに端子電極4,5を形成してもよい。
【0060】
上記実施形態では、積層体基板30をフォトリソグラフィ法によって形成する形態を一例に説明した。しかし、積層体基板30は、他の方法によって形成されてもよい。たとえば、積層体基板30は、コイル導体が形成された絶縁体層を積層することによって形成されてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1,1A…積層コイル部品、2…素体、2a,2b…端面、2c…主面(実装面)、2d…主面、2e,2f…側面、4,5…端子電極、4a,5a…第一電極部分、4b,5b…第二電極部分、7…コイル、9…接合導体、10…絶縁体層、20…第一コイル導体、21…第二コイル導体、22…第三コイル導体、23…第四コイル導体、30…積層体基板、C1…第一角部、C2…第二角部、C3…第三角部、L…積層体、R1,R2,R3…曲率。