(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022150977
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】タッチパネル用粘着剤組成物及びタッチパネル用粘着シート
(51)【国際特許分類】
C09J 133/08 20060101AFI20220929BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20220929BHJP
【FI】
C09J133/08
C09J7/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021053831
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000004592
【氏名又は名称】日本カーバイド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤川 はる奈
(72)【発明者】
【氏名】竹口 港
(72)【発明者】
【氏名】狩野 肇
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AB00
4J004CA01
4J004CB03
4J004CC02
4J004CE01
4J004FA04
4J040DF041
4J040HB36
4J040HB37
4J040HB38
4J040HB40
4J040HC16
4J040HD07
4J040HD24
4J040JA06
4J040JB09
4J040KA16
4J040KA28
4J040LA01
4J040NA17
(57)【要約】
【課題】高温高湿環境下に置かれた場合でも白化し難く、高温環境下に置かれた場合でも、被着体に対して高い粘着力を示し、かつ、黄変し難い粘着剤層を形成できるタッチパネル用粘着剤組成物、及びタッチパネル用粘着シートの提供。
【解決手段】水酸基を有する単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して18質量%以上含む(メタ)アクリル系共重合体(A)と、分子量が300以上であり、かつ、重合性基を有しないフェノール系酸化防止剤(B)と、フェノール系酸化防止剤以外の酸化防止剤(C)と、を含み、フェノール系酸化防止剤(B)の含有量が、(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して0.1~3.0質量部であり、フェノール系酸化防止剤以外の酸化防止剤(C)の含有量が、(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して0.05~0.50質量部であるタッチパネル用粘着剤組成物、及びタッチパネル用粘着シート。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基を有する単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して18質量%以上含む(メタ)アクリル系共重合体(A)と、
分子量が300以上であり、かつ、重合性基を有しないフェノール系酸化防止剤(B)と、
フェノール系酸化防止剤以外の酸化防止剤(C)と、を含み、
前記フェノール系酸化防止剤(B)の含有量が、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して0.1質量部~3.0質量部であり、
前記フェノール系酸化防止剤以外の酸化防止剤(C)の含有量が、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して0.05質量部~0.50質量部であるタッチパネル用粘着剤組成物。
【請求項2】
前記フェノール系酸化防止剤(B)が、1分子中に1個~3個の芳香環を有する化合物である請求項1に記載のタッチパネル用粘着剤組成物。
【請求項3】
前記フェノール系酸化防止剤以外の酸化防止剤(C)が、リン系酸化防止剤及び硫黄系酸化防止剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の酸化防止剤である請求項1又は請求項2に記載のタッチパネル用粘着剤組成物。
【請求項4】
前記フェノール系酸化防止剤以外の酸化防止剤(C)の含有質量に対する前記フェノール系酸化防止剤(B)の含有質量の比が、1.3~15.0である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のタッチパネル用粘着剤組成物。
【請求項5】
前記(メタ)アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量が、20万~90万である請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のタッチパネル用粘着剤組成物。
【請求項6】
前記(メタ)アクリル系共重合体(A)のガラス転移温度が、-40℃~-5℃である請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のタッチパネル用粘着剤組成物。
【請求項7】
イソシアネート系架橋剤を含む請求項1~請求項6のいずれか1項に記載のタッチパネル用粘着剤組成物。
【請求項8】
車載用タッチパネルに用いられる請求項1~請求項7のいずれか1項に記載のタッチパネル用粘着剤組成物。
【請求項9】
請求項1~請求項7のいずれか1項に記載のタッチパネル用粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備えるタッチパネル用粘着シート。
【請求項10】
車載用タッチパネルに用いられる請求項9に記載のタッチパネル用粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タッチパネル用粘着剤組成物及びタッチパネル用粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、携帯端末等の携帯電子機器では、入力装置としてタッチパネルが用いられることが多い。タッチパネルの表面には、タッチパネルを保護することを目的として、カバーパネルが設けられる。タッチパネルとカバーパネルとは、視認性を確保する観点から、一般には、アクリル系の粘着剤組成物により形成される粘着剤層を介して貼合される。
【0003】
タッチパネルに用いられる粘着剤組成物(所謂、タッチパネル用粘着剤組成物)には、種々の性能が求められている。例えば、携帯電子機器は、様々な場所に持ち運ばれて使用されるため、高温環境下又は高温高湿環境下に放置されることがある。タッチパネルを搭載した携帯電子機器が高温環境下に長期間置かれると、タッチパネルに貼着した粘着剤層が黄変したり、粘着剤層の粘着力が低下したりすることがある。また、タッチパネルを搭載した携帯電子機器が高温高湿環境下に長期間置かれると、タッチパネルに貼着した粘着剤層が白化することがある。このような粘着剤層の黄変及び白化、並びに、粘着剤層の粘着力の低下は、携帯電子機器の商品価値を損なう要因となる。このため、タッチパネル用粘着剤組成物には、高温環境下又は高温高湿環境下に置かれた場合でも性能及び外観が変化し難い粘着剤層を形成できることが求められている。
【0004】
このような要求を満たす粘着剤組成物として、例えば、特許文献1には、アルキル基の炭素数が1~18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの合計100重量部に対して、水酸基を有する共重合可能なモノマーを0.1重量部~10重量部の割合で共重合させた、重量平均分子量が20万~200万であり、かつ、酸価が5.0以下であるアクリル系ポリマーと、特定の構造を有する特定量のジエステル化合物と、イソシアネート系架橋剤と、フェノール系酸化防止剤及びフォスファイト系酸化防止剤から選ばれる少なくとも1種の酸化防止剤と、を含む粘着剤組成物が報告されている。
特許文献1に記載の粘着剤組成物によれば、雰囲気温度80℃の高温環境下に250時間放置した場合でも被着体からの剥がれが生じず、かつ、雰囲気温度85℃、85%RHの高温高湿環境下に240時間放置した場合でも白濁することがない粘着剤層を形成できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、カーナビゲーション及びインストメントパネルに代表される車載用の表示装置においても、入力装置としてタッチパネルが多用されている。車載用の表示装置に搭載されるタッチパネルに用いられる粘着剤組成物には、信頼性の観点から、これまで想定されていた温度よりも高い温度(例えば、130℃)の環境下に置かれた場合でも劣化し難い粘着剤層を形成できることが求められる。しかし、130℃のような高温環境下では、粘着剤層の熱劣化が加速されるため、粘着剤層の粘着力の急激な低下及び粘着剤層の急な黄変が起こりやすい。近年のタッチパネルの中には、デザイン性及び操作性の観点から、曲面形状、異形形状等の形状を有するものがある。このような形状のタッチパネルに貼着される粘着剤層は、従来よりも高い粘着力を必要とするため、高温環境下に置かれた場合でも高い粘着力を良好に保持できることが望ましい。
以上のように、タッチパネル用粘着剤組成物には、高温高湿環境下に置かれた場合でも、白化し難い粘着剤層を形成できることに加えて、130℃のような高温環境下に置かれた場合でも、粘着力の低下及び黄変が生じ難い粘着剤層を形成できることが求められる。
【0007】
本開示の一実施形態が解決しようとする課題は、高温高湿環境下に置かれた場合でも白化し難く、高温環境下に置かれた場合でも、被着体に対して高い粘着力を示し、かつ、黄変し難い粘着剤層を形成できるタッチパネル用粘着剤組成物を提供することにある。
本開示の他の実施形態が解決しようとする課題は、高温高湿環境下に置かれた場合でも白化し難く、高温環境下に置かれた場合でも、被着体に対して高い粘着力を示し、かつ、黄変し難い粘着剤層を備えるタッチパネル用粘着シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 水酸基を有する単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して18質量%以上含む(メタ)アクリル系共重合体(A)と、
分子量が300以上であり、かつ、重合性基を有しないフェノール系酸化防止剤(B)と、
フェノール系酸化防止剤以外の酸化防止剤(C)と、を含み、
上記フェノール系酸化防止剤(B)の含有量が、上記(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して0.1質量部~3.0質量部であり、
上記フェノール系酸化防止剤以外の酸化防止剤(C)の含有量が、上記(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して0.05質量部~0.50質量部であるタッチパネル用粘着剤組成物。
<2> 上記フェノール系酸化防止剤(B)が、1分子中に1個~3個の芳香環を有する化合物である<1>に記載のタッチパネル用粘着剤組成物。
<3> 上記フェノール系酸化防止剤以外の酸化防止剤(C)が、リン系酸化防止剤及び硫黄系酸化防止剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の酸化防止剤である<1>又は<2>に記載のタッチパネル用粘着剤組成物。
<4> 上記フェノール系酸化防止剤以外の酸化防止剤(C)の含有質量に対する上記フェノール系酸化防止剤(B)の含有質量の比が、1.3~15.0である<1>~<3>のいずれか1つに記載のタッチパネル用粘着剤組成物。
<5> 上記(メタ)アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量が、20万~90万である<1>~<4>のいずれか1つに記載のタッチパネル用粘着剤組成物。
<6> 上記(メタ)アクリル系共重合体(A)のガラス転移温度が、-40℃~-5℃である<1>~<5>のいずれか1つに記載のタッチパネル用粘着剤組成物。
<7> イソシアネート系架橋剤を含む<1>~<6>のいずれか1つに記載のタッチパネル用粘着剤組成物。
<8> 車載用タッチパネルに用いられる<1>~<7>のいずれか1つに記載のタッチパネル用粘着剤組成物。
<9> <1>~<7>のいずれか1つに記載のタッチパネル用粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備えるタッチパネル用粘着シート。
<10> 車載用タッチパネルに用いられる<9>に記載のタッチパネル用粘着シート。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一実施形態によれば、高温高湿環境下に置かれた場合でも白化し難く、高温環境下に置かれた場合でも、被着体に対して高い粘着力を示し、かつ、黄変し難い粘着剤層を形成できるタッチパネル用粘着剤組成物が提供される。
本開示の他の実施形態によれば、高温高湿環境下に置かれた場合でも白化し難く、高温環境下に置かれた場合でも、被着体に対して高い粘着力を示し、かつ、黄変し難い粘着剤層を備えるタッチパネル用粘着シートが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示のタッチパネル用粘着剤組成物及びタッチパネル用粘着シートについて、詳細に説明する。以下に記載する要件の説明は、本開示の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本開示はそのような実施態様に限定されるものではなく、本開示の目的の範囲内において、適宜、変更を加えて実施することができる。
【0011】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0012】
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示において、タッチパネル用粘着剤組成物中の各成分の量は、タッチパネル用粘着剤組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、タッチパネル用粘着剤組成物中に存在する上記複数の物質の合計量を意味する。
【0013】
本開示において、「(メタ)アクリル系共重合体」とは、(メタ)アクリロイル基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、全構成単位〔即ち、(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位〕の50質量%以上である共重合体を意味する。
【0014】
本開示において、「(メタ)アクリル」は「アクリル」及び「メタクリル」の両方を包含する用語であり、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方を包含する用語であり、「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイル」及び「メタクリロイル」の両方を包含する用語である。
【0015】
本開示において、「n-」はノルマルを意味し、「i-」はイソを意味し、「s-」はセカンダリーを意味し、「t-」はターシャリーを意味する。
【0016】
[タッチパネル用粘着剤組成物]
本開示のタッチパネル用粘着剤組成物(以下、単に「粘着剤組成物」ともいう。)は、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して18質量%以上含む(メタ)アクリル系共重合体(A)と、分子量が300以上であり、かつ、重合性基を有しないフェノール系酸化防止剤(B)と、フェノール系酸化防止剤以外の酸化防止剤(C)と、を含み、上記フェノール系酸化防止剤(B)の含有量が、上記(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して0.1質量部~3.0質量部であり、上記フェノール系酸化防止剤以外の酸化防止剤(C)の含有量が、上記(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して0.05質量部~0.50質量部である。
以下、「水酸基を有する単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して18質量%以上含む(メタ)アクリル系共重合体(A)」を、単に「(メタ)アクリル系共重合体(A)」ともいい、「分子量が300以上であり、かつ、重合性基を有しないフェノール系酸化防止剤(B)」を、単に「フェノール系酸化防止剤(B)」ともいい、「フェノール系酸化防止剤以外の酸化防止剤(C)」を、単に「酸化防止剤(C)」ともいう。
【0017】
本開示の粘着剤組成物は、上記のような構成を有することで、高温高湿環境下に置かれた場合でも白化し難く、高温環境下に置かれた場合でも、被着体に対して高い粘着力を示し、かつ、黄変し難い粘着剤層を形成できる。
本開示の粘着剤組成物がこのような効果を奏し得る理由については明らかでないが、本発明者らは以下のように推測している。但し、以下の推測は、本開示の粘着剤組成物を限定的に解釈するものではなく、一例として説明するものである。
【0018】
タッチパネルを搭載した携帯電子機器が高温高湿環境下に長期間置かれると、タッチパネルに貼着した粘着剤層が白化することがある。粘着剤層が白化すると、視認性が低下するため、携帯電子機器の商品価値が損なわれる。
本発明者らは、高温高湿環境下に置かれた場合でも白化し難い粘着剤層を形成できる粘着剤組成物を実現するため、鋭意研究を重ねたところ、粘着剤組成物に含まれる(メタ)アクリル系共重合体中の水酸基を多くすると、高温高湿環境下に置かれた場合の粘着剤層の白化が抑制できることを見出した。しかし、その一方で、(メタ)アクリル系共重合体中の水酸基を多くすると、形成される粘着剤層の高温での耐久性が低下し、粘着剤層が黄変したり、粘着剤層の粘着力が低下したりすることが判明した。
(メタ)アクリル系共重合体中の水酸基が多い粘着剤層が、高温環境下に長期間置かれると、粘着剤層では、(メタ)アクリル系共重合体中の水酸基に起因するパーオキシラジカルが多量に発生すると考えられる。この発生したパーオキシラジカルが、(メタ)アクリル系重合体を酸化劣化させるため、粘着剤層の粘着力の急激な低下及び粘着剤層の急な黄変が起こると推測される。
【0019】
これに対し、本開示の粘着剤組成物は、水酸基を多く含む(メタ)アクリル系共重合体(A)に加えて、特定の分子量及び構造を有するフェノール系酸化防止剤(B)を特定量含むため、形成される粘着剤層では、発生したパーオキシラジカルが、フェノール系酸化防止剤(B)によって補足され、不活性化される。パーオキシラジカルは、フェノール系酸化防止剤(B)によってハイドロパーオキサイドに変化するが、ハイドロパーオキサイドは、不安定であるため、熱分解によってパーオキシラジカルを生成する。生成したパーオキシラジカルは、フェノール系酸化防止剤(B)によって補足され、再び不活性化されるが、フェノール系酸化防止剤(B)が酸化されると、粘着剤層を黄変させる要因の1つであるキノン化合物が生成する。これに対し、本開示の粘着剤組成物は、フェノール系酸化防止剤(B)に加えて、フェノール系酸化防止剤以外の酸化防止剤(C)を特定量含むため、形成される粘着剤層では、酸化防止剤(C)によって、不安定なハイドロパーオキサイドがより安定なアルコールに分解され、上記のような連鎖的な反応を止めることができる。
以上のことから、本開示の粘着剤組成物によれば、高温高湿環境下に置かれた場合でも白化し難く、高温環境下に置かれた場合でも、被着体に対して高い粘着力を示し、かつ、黄変し難い粘着剤層を形成できると推測される。
【0020】
〔(メタ)アクリル系共重合体(A)〕
本開示の粘着剤組成物は、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して18質量%以上含む(メタ)アクリル系共重合体(A)を含む。
本開示の粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系共重合体(A)を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0021】
<水酸基を有する単量体に由来する構成単位>
(メタ)アクリル系共重合体(A)は、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して18質量%以上含む。
本開示において、「水酸基を有する単量体に由来する構成単位」とは、水酸基を有する単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。
【0022】
水酸基を有する単量体の種類は、特に限定されない。
水酸基を有する単量体としては、例えば、1分子中に少なくとも1つの水酸基とエチレン性不飽和基とを有する単量体が挙げられる。
エチレン性不飽和基の種類は、特に限定されない。
エチレン性不飽和基の具体例としては、ビニル基、アリル基、ビニルフェニル基、スチリル基、マレイミド基、(メタ)アクリルアミド基、及び(メタ)アクリロイル基が挙げられる。
エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0023】
水酸基を有する単量体の具体例としては、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、3-メチル-3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,1-ジメチル-3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,3-ジメチル-3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,2,4-トリメチル-3-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-3-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、及びポリ(エチレングリコール-プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレートが挙げられる。
これらの中でも、水酸基を有する単量体としては、例えば、他の単量体との共重合性が良好であるという観点から、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、他の単量体との相溶性が良好であるという観点、及び、架橋剤(特に、イソシアネート系架橋剤)との反応性が良好であるという観点から、炭素数が1~5のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートがより好ましく、炭素数が2~4のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが更に好ましく、2-ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)及び4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)から選ばれる少なくとも1種が特に好ましい。
【0024】
(メタ)アクリル系共重合体(A)は、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0025】
(メタ)アクリル系共重合体(A)における水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率は、(メタ)アクリル系共重合体(A)の全構成単位に対して、18質量%以上である。
(メタ)アクリル系共重合体(A)における水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、(メタ)アクリル系共重合体(A)の全構成単位に対して18質量%以上であると、形成される粘着剤層が、高温高湿環境下に置かれた場合でも白化し難い傾向を示す。
このような観点から、(メタ)アクリル系共重合体(A)における水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率は、(メタ)アクリル系共重合体(A)の全構成単位に対して18質量%以上であり、23質量%以上であることが好ましく、28質量%以上であることがより好ましく、33質量%以上であることが更に好ましい。
(メタ)アクリル系共重合体(A)における水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率の上限は、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル系共重合体(A)の製造適性の観点から、(メタ)アクリル系共重合体(A)の全構成単位に対して50質量%以下であることが好ましく、45質量%以下であることがより好ましい。40質量%以下であることが更に好ましい。
【0026】
<(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位>
(メタ)アクリル系共重合体(A)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を含むことが好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位は、粘着剤層の粘着力の調整に寄与し得る。
【0027】
本開示において、「(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位」とは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。
【0028】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の種類は、特に限定されない。
なお、(メタ)アクリル系共重合体(A)における「(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体」には、前述の水酸基を有する単量体に該当する単量体及び後述のカルボキシ基を有する単量体に該当する単量体は、包含されない。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体は、無置換の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体であることが好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、又は環状のいずれであってもよい。
アルキル基の炭素数は、例えば、1~18であることが好ましく、1~12であることがより好ましい。
【0029】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、i-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、i-ノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、及びイソボルニル(メタ)アクリレートが挙げられる。
これらの中でも、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、例えば、メチルアクリレート(MA)、エチルアクリレート(EA)、n-ブチルアクリレート(n-BA)、及び2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0030】
(メタ)アクリル系共重合体(A)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を含む場合、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0031】
(メタ)アクリル系共重合体(A)が(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を含む場合、(メタ)アクリル系共重合体(A)における(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の含有率は、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル系共重合体(A)の全構成単位に対して、50質量%以上であることが好ましく、50質量%~82質量%であることがより好ましく、50質量%~77質量%であることが更に好ましく、50質量%~72質量%であることが更により好ましく、50質量%~67質量%であることが特に好ましい。
ここで、(メタ)アクリル系共重合体(A)における(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の含有率が、(メタ)アクリル系共重合体(A)の全構成単位に対して50質量%以上であることは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位が、(メタ)アクリル系共重合体(A)を構成する構成単位の主成分として含まれていることを意味する。
【0032】
<カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位>
(メタ)アクリル系共重合体(A)は、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含んでいてもよい。
(メタ)アクリル系共重合体(A)がカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含むと、(メタ)アクリル系共重合体(A)中の水酸基とイソシアネート系架橋剤中のイソシアネート基とのウレタン化反応において、カルボキシ基が酸触媒として働くため、養生時間を短縮でき、例えば、粘着シートの生産性が向上し得る。
本開示において、「カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位」とは、カルボキシ基を有する単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。
【0033】
カルボキシ基を有する単量体の種類は、特に限定されない。
カルボキシ基を有する単量体としては、例えば、1分子中に少なくとも1つのカルボキシ基とエチレン性不飽和基とを有する単量体が挙げられる。
エチレン性不飽和基の種類は、特に限定されない。
エチレン性不飽和基の具体例としては、ビニル基、アリル基、ビニルフェニル基、スチリル基、マレイミド基、(メタ)アクリルアミド基、及び(メタ)アクリロイル基が挙げられる。
エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0034】
カルボキシ基を有する単量体の具体例としては、アクリル酸(AA)、メタクリル酸(MAA)、クロトン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、グルタコン酸、シトラコン酸、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート〔例えば、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート〕、コハク酸エステル(例えば、2-アクリロイルオキシエチル-コハク酸)、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、及びネオデカン酸ビニルが挙げられる。
【0035】
(メタ)アクリル系共重合体(A)は、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含む場合、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0036】
(メタ)アクリル系共重合体(A)におけるカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率は、特に限定されないが、例えば、養生時間の短縮に伴う粘着シートの生産性向上の観点からは、(メタ)アクリル系共重合体(A)の全構成単位に対して、0.1質量%以上であることが好ましい。
例えば、被着体が金属部材を含む場合には、金属の腐食を抑制する観点から、(メタ)アクリル系共重合体(A)は、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含まないか、又は、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が(メタ)アクリル系共重合体(A)の全構成単位に対して0質量%を超えて2.0質量%以下であることが好ましく、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含まないか、又は、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が(メタ)アクリル系共重合体(A)の全構成単位に対して0質量%を超えて1.0質量%以下であることがより好ましく、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含まないか、又は、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が(メタ)アクリル系共重合体(A)の全構成単位に対して0質量%を超えて0.5質量%以下であることが更に好ましく、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含まないことが特に好ましい。
【0037】
<その他の構成単位>
(メタ)アクリル系共重合体(A)は、本開示の粘着剤組成物の効果を損なわない範囲において、必要に応じて、既述の構成単位以外の構成単位(所謂、その他の構成単位)を含んでいてもよい。
【0038】
その他の構成単位を構成する単量体としては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート及びフェノキシエチル(メタ)アクリレートに代表される芳香族環を有する(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート及びエトキシエチル(メタ)アクリレートに代表されるアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、スチレン、α-メチルスチレン、t-ブチルスチレン、p-クロロスチレン、クロロメチルスチレン、及びビニルトルエンに代表される芳香族モノビニル、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルに代表されるシアン化ビニル、並びに、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、及びバーサチック酸ビニルに代表されるビニルエステルが挙げられる。また、これらの単量体の各種誘導体が挙げられる。
【0039】
(メタ)アクリル系共重合体(A)は、その他の構成単位を含む場合、その他の構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0040】
(メタ)アクリル系共重合体(A)がその他の構成単位を含む場合、(メタ)アクリル系共重合体(A)におけるその他の構成単位の含有率は、特に限定されず、本開示の粘着剤組成物の効果を損なわない範囲で、目的に応じて、適宜設定できる。
【0041】
<<(メタ)アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量>>
(メタ)アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量(「Mw」ともいう。)は、特に限定されないが、例えば、10万~100万であることが好ましく、20万~90万であることがより好ましく、30万~80万であることが更に好ましく、40万~70万であることが特に好ましい。
(メタ)アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量が10万以上であると、高温環境下に置かれた粘着剤層の被着体に対する粘着力が、より高くなる傾向を示す。
(メタ)アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量が100万以下であると、粘着剤層の被着体に対する初期粘着力が、より高くなる傾向を示す。
【0042】
(メタ)アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量は、下記の方法により求められる値である。具体的には、下記の(1)~(3)に従って求める。
(1)(メタ)アクリル系共重合体(A)の溶液を剥離紙に塗布し、100℃で1分間乾燥し、フィルム状の(メタ)アクリル系共重合体(A)を得る。
(2)上記(1)で得られたフィルム状の(メタ)アクリル系共重合体(A)とテトラヒドロフランとを用いて、固形分濃度が0.2質量%である試料溶液を得る。なお、ここでいう「固形分濃度」とは、試料溶液に占める(メタ)アクリル系共重合体(A)の質量割合を意味する。
(3)下記条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレン換算値として、(メタ)アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量を求める。
【0043】
~条件~
測定装置:高速GPC〔型番:HLC-8220 GPC、東ソー(株)製〕
検出器:示差屈折率計(RI)〔HLC-8220に組込、東ソー(株)製〕
カラム:TSKgel GMHXL〔東ソー(株)製〕を4本使用
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
試料溶液の注入量:100μL
流量:0.8mL/分
【0044】
(メタ)アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量は、単量体を重合させる際に、重合温度、重合時間、有機溶剤の使用量、重合開始剤の種類、重合開始剤の使用量等を調整することにより、所望の値にできる。
【0045】
<<(メタ)アクリル系共重合体(A)のガラス転移温度>>
(メタ)アクリル系共重合体(A)のガラス転移温度(以下、「Tg」ともいう。)は、特に限定されないが、例えば、-50℃~-5℃であることが好ましく、-40℃~-5℃であることがより好ましく、-40℃~-10℃であることが更に好ましい。
(メタ)アクリル系共重合体(A)のガラス転移温度が-50℃以上であると、高温環境下に置かれた粘着剤層の被着体に対する粘着力が、より高くなる傾向を示す。
(メタ)アクリル系共重合体(A)のガラス転移温度が-5℃以下であると、粘着剤層の被着体に対する初期粘着力が、より高くなる傾向を示す。
【0046】
(メタ)アクリル系共重合体(A)のガラス転移温度は、下記の式1から計算により求められる絶対温度〔(単位:K);以下、同じ。〕をセルシウス温度〔(単位:℃);以下、同じ。〕に換算した値である。
1/Tg=m1/Tg1+m2/Tg2+・・・+m(k-1)/Tg(k-1)+mk/Tgk (式1)
【0047】
式1中、Tg1、Tg2、・・・、Tg(k-1)、及びTgkは、(メタ)アクリル系共重合体(A)を構成する各単量体を単独重合体としたときの絶対温度で表されるガラス転移温度をそれぞれ表す。m1、m2、・・・、m(k-1)、及びmkは、(メタ)アクリル系共重合体(A)を構成する各単量体のモル分率をそれぞれ表し、m1+m2+・・・+m(k-1)+mk=1である。
なお、絶対温度から273を引くことで絶対温度をセルシウス温度に換算でき、セルシウス温度に273を足すことでセルシウス温度を絶対温度に換算できる。
【0048】
本開示において、「単独重合体としたときの絶対温度で表されるガラス転移温度」とは、その単量体を単独で重合して製造した単独重合体の絶対温度で表されるガラス転移温度をいう。
単独重合体のガラス転移温度は、示差走査熱量測定装置(DSC)〔型番:EXSTAR6000、セイコーインスツル(株)製〕を用い、窒素気流中、測定試料10mg、昇温速度10℃/分の条件で測定し、得られたDSCカーブの変曲点を単独重合体のガラス転移温度としたものである。
【0049】
代表的な単量体の「単独重合体としたときのセルシウス温度で表されるガラス転移温度」は、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)が-76℃、2-エチルヘキシルメタクリレート(2EHMA)が-10℃、n-ブチルアクリレート(n-BA)が-57℃、n-ブチルメタクリレート(n-BMA)が21℃、t-ブチルアクリレート(t-BA)が41℃、t-ブチルメタクリレート(t-BMA)が107℃、i-ブチルメタクリレート(i-BMA)が48℃、メチルアクリレート(MA)が5℃、メチルメタクリレート(MMA)が103℃、イソボニルメタクリレート(IBXMA)が155℃、イソボニルアクリレート(IBXA)が96℃、エチルアクリレート(EA)が-27℃、メタクリル酸(MAA)が185℃、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)が-39℃、2-ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)が-15℃、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(2HEMA)が55℃、2-ヒドロキシプロピルアクリレート(2HPA)が-7℃、アクリル酸(AA)が163℃、n-オクチルアクリレート(n-OA)が-65℃、i-オクチルアクリレート(i-OA)が-75℃、i-デシルアクリレートが-62℃、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DM)が18℃、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレートが-30℃、及び2-アクリロイルオキシエチル-コハク酸が-40℃である。
【0050】
(メタ)アクリル系共重合体(A)のガラス転移温度は、例えば、単独重合体としたときのガラス転移温度が異なる単量体を2種以上用いることで、適宜調整できる。
【0051】
<<(メタ)アクリル系共重合体(A)の含有率>>
本開示の粘着剤組成物における(メタ)アクリル系共重合体(A)の含有率は、特に限定されないが、例えば、粘着剤組成物中の全固形分量に対して、50.0質量%~99.85質量%であることが好ましく、60.0質量%~99.8質量%であることがより好ましく、70.0質量%~99.5質量%であることが更に好ましい。
本開示において、「粘着剤組成物中の全固形分量」とは、粘着剤組成物が溶媒を含まない場合には、粘着剤組成物の全質量を意味し、粘着剤組成物が溶媒を含む場合には、粘着剤組成物から溶媒を除いた残渣の質量を意味する。
本開示において、「溶媒」とは、水及び有機溶剤を意味する。
【0052】
〔(メタ)アクリル系共重合体(A)の製造方法〕
(メタ)アクリル系共重合体(A)の製造方法は、特に限定されない。
(メタ)アクリル系共重合体(A)は、例えば、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法、及び塊状重合法に代表される公知の重合方法で、既述の単量体を重合することにより製造できる。
重合方法としては、製造後に本開示の粘着剤組成物を調製するにあたり、処理工程が比較的簡単であり、かつ、短時間で行える点で、溶液重合法が好ましい。
【0053】
溶液重合法では、一般に、重合槽内に所定の有機溶剤、単量体、重合開始剤、及び、必要に応じて用いられる連鎖移動剤を仕込み、例えば、有機溶剤の還流温度で、撹拌しながら数時間反応させる。この場合、有機溶剤、単量体、重合開始剤、及び、必要に応じて用いられる連鎖移動剤の少なくとも一部を逐次添加してもよい。また、窒素気流中で反応させてもよい。
【0054】
重合反応時に用いられる有機溶剤としては、例えば、芳香族炭化水素化合物、脂肪族系炭化水素化合物、脂環族系炭化水素化合物、エステル化合物、ケトン化合物、グリコールエーテル化合物、及びアルコール化合物が挙げられる。
芳香族炭化水素化合物の具体例としては、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、n-プロピルベンゼン、t-ブチルベンゼン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、テトラリン、デカリン、及び芳香族ナフサが挙げられる。
脂肪族系炭化水素化合物又は脂環族系炭化水素化合物の具体例としては、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、i-オクタン、n-デカン、ジペンテン、石油スピリット、石油ナフサ、及びテレピン油が挙げられる。
エステル化合物の具体例としては、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸n-アミル、酢酸2-ヒドロキシエチル、酢酸2-ブトキシエチル、酢酸3-メトキシブチル、及び安息香酸メチルが挙げられる。
ケトン化合物の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチル-i-ブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン、及びメチルシクロヘキサノンが挙げられる。
グリコールエーテル化合物の具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、及びジエチレングリコールモノブチルエーテルが挙げられる。
アルコール化合物の具体例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、i-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、i-ブチルアルコール、s-ブチルアルコール、及びt-ブチルアルコールが挙げられる。
【0055】
(メタ)アクリル系共重合体(A)の製造に際しては、芳香族炭化水素化合物、エステル化合物、ケトン化合物等の重合反応中に連鎖移動を生じ難い有機溶剤の使用が好ましく、特に、(メタ)アクリル系共重合体(A)の溶解性、重合反応の容易さ等の観点から、酢酸エチルの使用が好ましい。
【0056】
重合反応時には、有機溶剤を1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0057】
重合開始剤としては、例えば、通常の溶液重合法で用いられる有機過酸化物及びアゾ化合物が挙げられる。
有機過酸化物の具体例としては、t-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、カプロイルペルオキシド、ジ-i-プロピルペルオキシジカルボナート、ジ-2-エチルヘキシルペルオキシジカルボナート、t-ブチルペルオキシピバレート、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-アミルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-オクチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-α-クミルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルペルオキシシクロヘキシル)ブタン、及び2,2-ビス(4,4-ジ-t-オクチルペルオキシシクロヘキシル)ブタンが挙げられる。
アゾ化合物の具体例としては、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル〔AIBN〕、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)〔ABVN〕、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、及び2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチルが挙げられる。
(メタ)アクリル系共重合体(A)の製造に際しては、重合反応中にグラフト反応を起こさない重合開始剤の使用が好ましく、特に、アゾ化合物の使用が好ましい。
【0058】
重合反応時には、重合開始剤を1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0059】
重合開始剤の使用量は、特に限定されず、例えば、目的とする(メタ)アクリル系共重合体(A)の分子量に応じて、適宜設定できる。
【0060】
(メタ)アクリル系共重合体(A)の製造に際しては、必要に応じて、連鎖移動剤を用いてもよい。
連鎖移動剤としては、例えば、シアノ酢酸、シアノ酢酸の炭素数1~8のアルキルエステル化合物、ブロモ酢酸、ブロモ酢酸の炭素数1~8のアルキルエステル化合物、α-メチルスチレン、アントラセン、フェナントレン、フルオレン、9-フェニルフルオレン、p-ニトロアニリン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、p-ニトロ安息香酸、p-ニトロフェノール、p-ニトロトルエン、ベンゾキノン、2,3,5,6-テトラメチル-p-ベンゾキノン、トリブチルボラン、四臭化炭素、四塩化炭素、1,1,2,2-テトラブロモエタン、トリブロモエチレン、トリクロロエチレン、ブロモトリクロロメタン、トリブロモメタン、3-クロロ-1-プロペン、クロラール、フラルデヒド、炭素数1~18のアルキルメルカプタン化合物、チオフェノール、トルエンメルカプタン、メルカプト酢酸、メルカプト酢酸の炭素数1~10のアルキルエステル化合物、炭素数1~12のヒドロキシアルキルメルカプタン化合物、ピネン、及びターピノレンが挙げられる。
【0061】
(メタ)アクリル系共重合体(A)の製造に際し、連鎖移動剤を用いる場合、連鎖移動剤の使用量は、特に限定されず、例えば、目的とする(メタ)アクリル系共重合体(A)の分子量に応じて、適宜設定できる。
【0062】
重合温度は、特に限定されず、例えば、目的とする(メタ)アクリル系共重合体(A)の分子量に応じて、適宜設定できる。
【0063】
〔フェノール系酸化防止剤(B)〕
本開示の粘着剤組成物は、分子量が300以上であり、かつ、重合性基を有しないフェノール系酸化防止剤(B)を含む。また、本開示の粘着剤組成物におけるフェノール系酸化防止剤(B)の含有量は、既述の(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して0.1質量部~3.0質量部である。
【0064】
フェノール系酸化防止剤(B)は、分子量が300以上であり、かつ、重合性基を有しないフェノール系酸化防止剤であれば、その種類は、特に限定されない。
フェノール系酸化防止剤(B)の分子量は、300以上であり、350以上であることが好ましく、400以上であることがより好ましい。
フェノール系酸化防止剤(B)が、分子量300以上のフェノール系酸化防止剤であると、形成される粘着剤層が、高温環境下に置かれた場合でも被着体に対して高い粘着力を示す傾向がある。
フェノール系酸化防止剤(B)の分子量の上限は、特に限定されないが、例えば、1500以下であることが好ましい。
【0065】
フェノール系酸化防止剤(B)は、重合性基を有しないフェノール系酸化防止剤である。
フェノール系酸化防止剤(B)が、重合性基を有しないフェノール系酸化防止剤であると、形成される粘着剤層が、高温環境下に置かれた場合でも被着体に対して高い粘着力を示す傾向がある。また、フェノール系酸化防止剤(B)が、重合性基を有しないフェノール系酸化防止剤であると、形成される粘着剤層が、高温環境下に置かれた場合でも黄変し難い傾向を示す。
【0066】
重合性基は、重合反応に関与する基であれば、その種類は、特に限定されない。
重合性基としては、例えば、エチレン性不飽和基及びカチオン性重合性基が挙げられる。エチレン性不飽和基の具体例としては、ビニル基、アリル基、ビニルフェニル基、スチリル基、マレイミド基、(メタ)アクリルアミド基、及び(メタ)アクリロイル基が挙げられる。カチオン性重合性基の具体例としては、エポキシ基、及びオキセタン基が挙げられる。
【0067】
フェノール系酸化防止剤(B)は、1分子中に、1個~4個の芳香環を有する化合物であることが好ましく、1個~3個の芳香環を有する化合物であることがより好ましく、1個又は2個の芳香環を有する化合物であることが更に好ましい。
フェノール系酸化防止剤(B)が、1分子中に1個~4個の芳香環を有する化合物であると、高温環境下に置かれた粘着剤層が、より黄変し難い傾向を示す。
【0068】
芳香環としては、例えば、芳香族炭化水素環が挙げられる。
芳香族炭化水素環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、及びアントラセン環が挙げられる。
芳香環としては、ベンゼン環が好ましい。
【0069】
フェノール系酸化防止剤(B)は、フェノール性水酸基に隣接する部位(オルト位)に置換基を有する化合物であることが好ましい。
置換基としては、炭素数1~12のアルキル基が好ましく、炭素数1~8のアルキル基がより好ましく、炭素数1~4のアルキル基が更に好ましい。
【0070】
フェノール系酸化防止剤(B)としては、市販品を使用できる。
フェノール系酸化防止剤(B)の市販品の例としては、「アデカスタブ(登録商標) AO-20」、「アデカスタブ(登録商標) AO-30」、「アデカスタブ(登録商標) AO-40」、「アデカスタブ(登録商標) AO-50」、「アデカスタブ(登録商標) AO-60」、「アデカスタブ(登録商標) AO-80」、及び「アデカスタブ(登録商標) AO-330」〔以上、(株)ADEKA製〕、「Irganox(登録商標) 1010」、「Irganox(登録商標) 1035」、「Irganox(登録商標) 1076」、「Irganox(登録商標) 1135」、「Irganox(登録商標) 1330」、「Irganox(登録商標) 245」、「Irganox(登録商標) 565」、及び「Irganox(登録商標) 3114」〔以上、BASFジャパン(株)製〕、「スミライザー(登録商標) GA-80」〔住友化学(株)製〕、並びに、「トコフェロール」〔三菱ケミカルフーズ(株)製〕が挙げられる。
【0071】
本開示の粘着剤組成物は、フェノール系酸化防止剤(B)を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0072】
本開示の粘着剤組成物におけるフェノール系酸化防止剤(B)の含有量は、(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して0.1質量部~3.0質量部である。
本開示の粘着剤組成物におけるフェノール系酸化防止剤(B)の含有量が、(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して0.1質量部以上であると、形成される粘着剤層が、高温環境下に置かれた場合でも被着体に対して高い粘着力を示す傾向がある。 このような観点から、本開示の粘着剤組成物におけるフェノール系酸化防止剤(B)の含有量は、(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して0.1質量部以上であり、0.3質量部以上であることが好ましく、0.5質量部以上であることがより好ましい。
本開示の粘着剤組成物におけるフェノール系酸化防止剤(B)の含有量が、(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して3.0質量部以下であると、形成される粘着剤層が、高温環境下に置かれた場合でも黄変し難い傾向を示す。
このような観点から、本開示の粘着剤組成物におけるフェノール系酸化防止剤(B)の含有量は、(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して3.0質量部以下であり、2.0質量部以下であることが好ましく、1.0質量部以下であることがより好ましく、0.8質量部以下であることが更に好ましい。
【0073】
本開示の粘着剤組成物における、後述のフェノール系酸化防止剤以外の酸化防止剤(C)の含有質量に対するフェノール系酸化防止剤(B)の含有質量の比〔フェノール系酸化防止剤(B)の含有質量/酸化防止剤(C)の含有質量〕は、特に限定されないが、例えば、1.0~30.0であることが好ましく、1.3~15.0であることがより好ましく、1.5~10.0であることが更に好ましく、3.0~8.0であることが特に好ましい。
本開示の粘着剤組成物における、後述のフェノール系酸化防止剤以外の酸化防止剤(C)の含有質量に対するフェノール系酸化防止剤(B)の含有質量の比〔フェノール系酸化防止剤(B)の含有質量/酸化防止剤(C)の含有質量〕が1.0以上であると、高温環境下に置かれた粘着剤層の被着体に対する粘着力が、より高くなる傾向を示す。
本開示の粘着剤組成物における、後述のフェノール系酸化防止剤以外の酸化防止剤(C)の含有質量に対するフェノール系酸化防止剤(B)の含有質量の比〔フェノール系酸化防止剤(B)の含有質量/酸化防止剤(C)の含有質量〕が30.0以下であると、高温環境下に置かれた粘着剤層が、より黄変し難い傾向を示す。
【0074】
〔酸化防止剤(C)〕
本開示の粘着剤組成物は、フェノール系酸化防止剤以外の酸化防止剤(C)を含む。また、本開示の粘着剤組成物における酸化防止剤(C)の含有量は、既述の(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して0.05質量部~0.50質量部である。
【0075】
酸化防止剤(C)の分子量は、特に限定されないが、例えば、300~1500であることが好ましい。
酸化防止剤(C)は、重合性基を有しないことが好ましい。
酸化防止剤(C)における重合性基の具体例は、フェノール系酸化防止剤(B)における重合性基の具体例と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0076】
酸化防止剤(C)は、フェノール系酸化防止剤以外の酸化防止剤であれば、その種類は、特に限定されないが、例えば、リン系酸化防止剤及び硫黄系酸化防止剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の酸化防止剤であることが好ましい。
リン系酸化防止剤としては、例えば、亜リン酸エステル化合物が挙げられる。
硫黄系酸化防止剤としては、例えば、チオエーテル化合物が挙げられる。
【0077】
酸化防止剤(C)としては、市販品を使用できる。
酸化防止剤(C)の市販品の例としては、リン系酸化防止剤である「アデカスタブ(登録商標) PEP-8」、「アデカスタブ(登録商標) PEP-36」、「アデカスタブ(登録商標) HP-10」、「アデカスタブ(登録商標) 2112」、「アデカスタブ(登録商標) 1178」、「アデカスタブ(登録商標) 1500」、「アデカスタブ(登録商標) C」、「アデカスタブ(登録商標) 135A」、「アデカスタブ(登録商標) 3010」、及び「アデカスタブ(登録商標) TPP」〔以上、(株)ADEKA製〕、並びに、「Irgafos(登録商標) 168」〔BASFジャパン(株)製〕が挙げられる。
また、酸化防止剤(C)の市販品の例としては、硫黄系酸化防止剤である「アデカスタブ(登録商標) AO-26」、「アデカスタブ(登録商標) AO-412S」、及び「アデカスタブ(登録商標) AO-503」〔以上、(株)ADEKA製〕、「Irganox(登録商標) PS800FL」、及び「Irganox(登録商標) PS802FL」〔以上、BASFジャパン(株)製〕、並びに、「スミライザー(登録商標) TP-D」〔住友化学(株)製〕が挙げられる。
【0078】
本開示の粘着剤組成物は、酸化防止剤(C)を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0079】
本開示の粘着剤組成物における酸化防止剤(C)の含有量は、(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して0.05質量部~0.50質量部である。
本開示の粘着剤組成物における酸化防止剤(C)の含有量が、(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して0.05質量部以上であると、形成される粘着剤層が、高温環境下に置かれた場合でも黄変し難い傾向を示す。
このような観点から、本開示の粘着剤組成物における酸化防止剤(C)の含有量は、(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して0.05質量部以上であり、0.08質量部以上であることが好ましく、0.10質量部以上であることがより好ましい。
本開示の粘着剤組成物における酸化防止剤(C)の含有量が、(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して0.50質量部以下であると、形成される粘着剤層が、被着体に対して高い初期粘着力を示し、かつ、高温環境下に置かれた場合でも高い粘着力を保持する傾向がある。
このような観点から、本開示の粘着剤組成物における酸化防止剤(C)の含有量は、(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して0.50質量部以下であり、0.30質量部以下であることが好ましく、0.20質量部以下であることがより好ましく、0.15質量部以下であることが更に好ましい。
【0080】
〔架橋剤〕
本開示の粘着剤組成物は、架橋剤を含むことが好ましい。
本開示の粘着剤組成物が架橋剤を含むと、形成される粘着剤層のゲル分率が高くなり、粘着剤層を備える物品を複雑な形状に加工する場合でも裁断刃に粘着剤層が付着する現象(所謂、糊残り)が発生し難くなるため、加工性の観点から好ましい。
【0081】
架橋剤の種類は、特に限定されない。
架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、及び金属キレート系架橋剤が挙げられる。
【0082】
本開示において、「イソシアネート系架橋剤」とは、1分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物(所謂、ポリイソシアネート化合物)を指す。また、「エポキシ系架橋剤」とは、1分子中に2以上のエポキシ基を有する化合物(所謂、2官能以上のエポキシ化合物)を指す。また、「金属キレート系架橋剤」とは、架橋剤として機能する金属キレート化合物を指す。
【0083】
架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤が好ましい。
イソシアネート系架橋剤の種類は、特に限定されない。
イソシアネート系架橋剤としては、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)等の芳香族ポリイソシアネート化合物、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、イソホロンジイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート化合物の水素添加物等の脂肪族ポリイソシアネート化合物又は脂環族ポリイソシアネート化合物などが挙げられる。
また、イソシアネート系架橋剤としては、上記ポリイソシアネート化合物の2量体、3量体、又は5量体、上記ポリイソシアネート化合物とトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体、上記ポリイソシアネート化合物のビウレット体なども挙げられる。
【0084】
イソシアネート系架橋剤としては、市販品を使用できる。
イソシアネート系架橋剤の市販品の例としては、「コロネート(登録商標) HX」、「コロネート(登録商標) HL-S」、「コロネート(登録商標) L」、「コロネート(登録商標) L-45E」、「コロネート(登録商標) 2031」、「コロネート(登録商標) 2037」、「コロネート(登録商標) 2234」、「コロネート(登録商標) 2785」、「アクアネート(登録商標) 200」、及び「アクアネート(登録商標) 210」〔以上、東ソー(株)製〕、「スミジュール(登録商標) N3300」、「デスモジュール(登録商標) N3400」、及び「スミジュール(登録商標) N75」〔以上、住化コベストロウレタン(株)製〕、「デュラネート(登録商標) E-405-80T」、「デュラネート(登録商標) AE700-100」、「デュラネート(登録商標) 24A-100」、及び「デュラネート(登録商標) TSE-100」〔以上、旭化成(株)製〕、並びに、「タケネート(登録商標) D-110N」、「タケネート(登録商標) D-120N」、「タケネート(登録商標) M-631N」、「MT-オレスター(登録商標) NP1200」、及び「スタビオ(登録商標) XD-340N」〔以上、三井化学(株)製〕が挙げられる。
【0085】
本開示の粘着剤組成物は、架橋剤を含む場合、架橋剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0086】
本開示の粘着剤組成物が架橋剤を含む場合、本開示の粘着剤組成物における架橋剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して、0.1質量部~3.0質量部であることが好ましく、0.1質量部~2.0質量部であることがより好ましく、0.1質量部~1.0質量部であることが更に好ましく、0.1質量部~0.5質量部であることが特に好ましい。
本開示の粘着剤組成物における架橋剤の含有量が、(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して、上記範囲内であると、高温環境下に置かれた粘着剤層の被着体に対する粘着力が、より高くなる傾向を示す。
【0087】
〔有機溶剤〕
本開示の粘着剤組成物は、有機溶剤を含んでいてもよい。
本開示の粘着剤組成物は、有機溶剤を含むと、塗工性がより向上し得る。
有機溶剤としては、例えば、既述の(メタ)アクリル系共重合体(A)の重合反応時に用いられる有機溶剤と同様のものが挙げられる。
【0088】
本開示の粘着剤組成物は、有機溶剤を含む場合、有機溶剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0089】
本開示の粘着剤組成物が有機溶剤を含む場合、有機溶剤の含有量は、特に限定されず、本開示の粘着剤組成物の効果を損なわない範囲で、適宜設定できる。
【0090】
〔その他の成分〕
本開示の粘着剤組成物は、その効果を損なわない範囲において、必要に応じて、既述した成分以外の成分(所謂、その他の成分)を含んでいてもよい。
その他の成分としては、(メタ)アクリル系共重合体(A)以外の重合体、架橋触媒、着色剤(例えば、染料及び顔料)、光安定剤(例えば、紫外線吸収剤)、帯電防止剤等の各種添加剤が挙げられる。
【0091】
本開示の粘着剤組成物がその他の成分を含む場合、その他の成分の含有量は、特に限定されず、本開示の粘着剤組成物の効果を損なわない範囲で、適宜設定できる。
【0092】
<<用途>>
本開示の粘着剤組成物は、高温高湿環境下に置かれた場合でも白化し難く、高温環境下に置かれた場合でも、被着体に対して高い粘着力を示し、かつ、黄変し難い粘着剤層を形成できるため、タッチパネルに用いられる粘着剤組成物として好適である。
本開示の粘着剤組成物は、例えば、タッチパネルとタッチパネルを保護する目的で使用されるカバーパネルとの貼合、及び、液晶ディスプレイとタッチセンサーとの貼合に好ましく用いられる。また、本開示の粘着剤組成物は、例えば、タッチセンサー構成部材の貼合にも好ましく用いられる。具体的には、本開示の粘着剤組成物は、ガラス基板、透明導電性フィルム、意匠フィルム等の各種タッチセンサー構成部材を貼合してタッチセンサーを製造する際に用いられる粘着剤組成物として好適である。
本開示の粘着剤組成物は、従来よりも高温(例えば、130℃)の環境下に置かれた場合でも、被着体に対して高い粘着力を示し、かつ、黄変し難い粘着剤層を形成できるため、近年、より高い温度での耐久性が求められている、車載用タッチパネルに用いられる粘着剤組成物として、具体的には、車載用の表示装置に搭載されたタッチパネルに用いられる粘着剤組成物として、特に好適である。
【0093】
[タッチパネル用粘着シート]
本開示のタッチパネル用粘着シート(以下、単に「粘着シート」ともいう。)は、既述の本開示のタッチパネル用粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備える。
本開示の粘着シートが備える粘着剤層は、高温高湿環境下に置かれた場合でも白化し難い。また、本開示の粘着シートが備える粘着剤層は、高温環境下に置かれた場合でも、被着体に対して高い粘着力を示し、かつ、黄変し難い。このため、本開示の粘着シートは、タッチパネルに用いられる粘着シートとして好適である。
本開示の粘着シートが備える粘着剤層は、従来よりも高温(例えば、130℃)の環境下に置かれた場合でも、被着体に対して高い粘着力を示し、かつ、黄変し難い。このため、本開示の粘着シートは、近年、より高い温度での耐久性が求められている、車載用タッチパネルに用いられる粘着シートとして、具体的には、車載用の表示装置に搭載されたタッチパネルに用いられる粘着シートとして、特に好適である。
【0094】
本開示の粘着シートは、基材を有しない無基材タイプの粘着シートでもよく、基材の片面又は両面に粘着剤層を備える有基材タイプの粘着シートでもよい。
本開示の粘着シートが、基材を有しない無基材タイプの粘着シート又は基材の片面に粘着剤層を備える有基材タイプの粘着シートの場合、露出した粘着剤層の面は、剥離フィルムによって保護されていてもよい。
【0095】
剥離フィルムとしては、粘着剤層からの剥離を容易に行えるものであれば、特に限定されず、例えば、片面又は両面に剥離処理剤による表面処理(所謂、易剥離処理)が施された樹脂フィルムが挙げられる。
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに代表されるポリエステルフィルムが挙げられる。
剥離処理剤としては、シリコーン系剥離処理剤(例えば、シリコーン)、ワックス系剥離処理剤(例えば、パラフィンワックス)、フッ素系剥離処理剤(例えば、フッ素系樹脂)等が挙げられる。
剥離フィルムは、本開示の粘着シートを実用に供するまでの間、粘着剤層の表面を保護し、使用時に剥離される。
【0096】
粘着剤層の厚さは、特に限定されないが、一般には、1μm~300μmであり、5μm~200μmであることが好ましく、10μm~150μmであることがより好ましい。
【0097】
本開示における「粘着剤層の厚さ」は、粘着剤層の平均厚さを意味する。
粘着剤層の平均厚さは、以下の方法により測定される値である。
粘着剤層の厚み方向において、無作為に選択した10箇所で測定される粘着剤層の厚さの算術平均値を求め、得られた値を粘着剤層の平均厚さとする。粘着剤層の厚さは、膜厚計を用いて測定される。
【0098】
本開示の粘着シートが基材を備える場合、基材は、その基材上に粘着剤層を形成できれば、特に限定されない。
基材としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂〔例えば、ポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)〕、ポリエステル系樹脂〔例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)〕、アセテート系樹脂(例えば、トリアセチルセルロース樹脂)、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)樹脂、フッ素系樹脂等の樹脂を含むフィルムが挙げられる。
【0099】
基材の粘着剤層が設けられる側の面には、基材と粘着剤層との密着性を向上させる観点から、コロナ放電処理、プラズマ放電処理等の表面処理(所謂、易接着処理)が施されていてもよい。
【0100】
基材は、可塑剤、着色剤(例えば、染料及び顔料)、熱安定剤、光安定剤、帯電防止剤、難燃剤、酸化防止剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
基材は、一部又は全体に、模様が施されていてもよい。
【0101】
基材の厚さは、特に限定されないが、一般には、5μm~500μmであり、10μm~300μmであることが好ましく、10μm~200μmであることがより好ましく、10μm~100μmであることが更に好ましい。
【0102】
本開示における「基材の厚さ」は、基材の平均厚さを意味する。
基材の平均厚さは、既述の粘着剤層の平均厚さの測定方法に準拠した方法により測定される値である。
【0103】
[タッチパネル用粘着シートの作製方法]
本開示のタッチパネル用粘着シート(即ち、粘着シート)の作製方法は、特に限定されない。本開示の粘着シートは、公知の方法により作製できる。
本開示の粘着シートを作製する方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
【0104】
本開示の粘着シートが無基材タイプの粘着シートの場合、まず、本開示の粘着剤組成物を剥離フィルムの易剥離処理面に塗布することにより、剥離フィルム上に塗布膜を形成する。次いで、形成した塗布膜を乾燥させることにより、剥離フィルム上に粘着膜を形成する。次いで、形成した粘着膜の露出した面を、別途、準備した剥離フィルムの易剥離処理面に重ねて貼り合わせた後、養生を行うことにより、剥離フィルム/粘着剤層/剥離フィルムの積層構造を有する、無基材タイプの粘着シートを作製できる。
【0105】
本開示の粘着シートが有基材タイプの粘着シートの場合、まず、本開示の粘着剤組成物を基材の易接着処理面に塗布することにより、基材上に塗布膜を形成する。次いで、形成した塗布膜を乾燥させることにより、基材上に粘着膜を形成する。次いで、形成した粘着膜の露出した面を、剥離フィルムの易剥離処理面に重ねて貼り合わせた後、養生を行うことにより、剥離フィルム/粘着剤層/基材の積層構造を有する、有基材タイプの粘着シートを作製できる。
【0106】
本開示の粘着シートが有基材タイプの粘着シートの場合、別の方法として、例えば、以下の方法も挙げられる。
本開示の粘着剤組成物を剥離フィルムの易剥離処理面に塗布することにより、剥離フィルム上に塗布膜を形成する。次いで、形成した塗布膜を乾燥させることにより、剥離フィルム上に粘着膜を形成する。次いで、形成した粘着膜の露出した面を、基材の易接着処理面に重ねて貼り合わせた後、養生を行うことにより、基材/粘着剤層/剥離フィルムの積層構造を有する、有基材タイプの粘着シートを作製できる。
【0107】
粘着剤組成物の塗布方法は、特に限定されない。
粘着剤組成物の塗布方法としては、例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、ナイフコーター、スプレーコーター、バーコーター、アプリケーター等を用いる公知の方法が挙げられる。
粘着剤組成物の塗布量は、特に限定されず、例えば、形成する粘着剤層の厚さに応じて、適宜設定される。
【0108】
塗布膜の乾燥方法は、特に限定されない。
塗布膜の乾燥方法としては、例えば、自然乾燥、加熱乾燥、熱風乾燥、真空乾燥等の方法が挙げられる。
塗布膜の乾燥温度及び乾燥時間は、特に限定されず、塗布膜の厚さ、塗布膜中の有機溶剤の量等に応じて、適宜設定される。
乾燥条件の一例としては、熱風乾燥機を用いて、70℃~120℃で30秒間~180秒間乾燥させる条件が挙げられる。
【0109】
養生は、例えば、雰囲気温度20℃~35℃、相対湿度45%~55%(即ち、45%RH~55%RH)の環境下で、2日間~7日間行う。
【実施例0110】
以下、本開示の粘着剤組成物等を実施例により更に具体的に説明する。本開示はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0111】
[(メタ)アクリル系共重合体の製造]
〔製造例A-1〕
撹拌機、還流冷却器、逐次滴下装置、及び温度計を備えた官能装置の反応容器内に、酢酸エチル〔有機溶剤〕400質量部を仕込んだ。次いで、別の容器に、エチルアクリレート〔EA;アクリル酸アルキルエステル単量体〕180質量部、n-ブチルアクリレート〔n-BA;アクリル酸アルキルエステル単量体〕12質量部、及び2-ヒドロキシエチルアクリレート〔2HEA;水酸基を有する単量体〕108質量部からなる単量体混合液300.0質量部を準備した。この準備した単量体混合液を上記反応容器内に仕込んだ後、70℃に加熱した。次いで、上記温度条件下で、酢酸エチル15質量部と2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)〔ABVN;重合開始剤〕0.012質量部とを混合した溶液Xを10分間かけて上記反応容器内に逐次滴下した。溶液Xの滴下終了後、更に、酢酸エチル30質量部と2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)〔ABVN;重合開始剤〕0.014質量部とを混合した溶液Yを85分間かけて上記反応容器内に逐次滴下した。溶液Yの滴下終了後、300分間保持して重合反応を完結させた。次いで、重合反応の完結により得られた溶液を、固形分濃度が40質量%になるように酢酸エチルを用いて希釈し、(メタ)アクリル系共重合体A-1の溶液を得た。
【0112】
ここでいう「固形分濃度」とは、(メタ)アクリル系共重合体A-1の溶液に占める(メタ)アクリル系共重合体A-1の質量割合を意味する。以下において製造した(メタ)アクリル系共重合体A-2~A-13の各溶液についても同様である。
【0113】
〔製造例A-2~A-8及びA-11~A-13〕
製造例A-2~A-8及びA-11~A-13では、(メタ)アクリル系共重合体の単量体組成を表1に示す単量体組成に変更したこと、及び、重合温度、重合時間、有機溶剤の使用量、重合開始剤の使用量等を適宜調整したこと以外は、製造例A-1と同様の操作を行い、固形分濃度が40質量%である(メタ)アクリル系共重合体A-2~A-8及びA-11~A-13の各溶液を得た。
【0114】
〔製造例A-9及びA-10〕
製造例A-9及びA-10では、重合温度、重合時間、有機溶剤の使用量、重合開始剤の使用量等を適宜調整したこと以外は、製造例A-1と同様の操作を行い、固形分濃度が40質量%である(メタ)アクリル系共重合体A-9及びA-10の各溶液を得た。
【0115】
(メタ)アクリル系共重合体A-1~A-13の単量体組成(単位:質量%)、(メタ)アクリル系共重合体A-1~A-13のガラス転移温度(Tg)、及び(メタ)アクリル系共重合体A-1~A-13の重量平均分子量(Mw)を表1に示す。
【0116】
(メタ)アクリル系共重合体A-1~A-13のガラス転移温度は、既述の(メタ)アクリル系共重合体(A)のガラス転移温度の計算方法と同様の方法により計算した。
(メタ)アクリル系共重合体A-1~A-13の重量平均分子量は、既述の(メタ)アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量の測定方法と同様の方法により測定した。
【0117】
上記にて得られた(メタ)アクリル系共重合体A-1~A-13のうち、(メタ)アクリル系共重合体A-1~A-12は、本開示における(メタ)アクリル系共重合体(A)に相当する。
【0118】
【0119】
表1に記載の各単量体の詳細は、以下に示すとおりである。
<(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体>
「EA」:エチルアクリレート
「n-BA」:n-ブチルアクリレート
「2EHA」:2-エチルヘキシルアクリレート
「MA」;メチルアクリレート
<水酸基を有する単量体>
「2HEA」:2-ヒドロキシエチルアクリレート
「4HBA」:4-ヒドロキシブチルアクリレート
<カルボキシ基を有する単量体>
「AA」:アクリル酸
【0120】
表1中、単量体組成の欄に記載の「-」は、その欄に該当する単量体を使用していないことを意味する。
【0121】
[粘着剤組成物の調製]
〔実施例1〕
(メタ)アクリル系共重合体A-1の溶液100質量部(固形分換算値)と、フェノール系酸化防止剤(B)であるアデカスタブ(登録商標) AO-80〔(株)ADEKA製〕0.5質量部(固形分換算値)と、酸化防止剤(C)であるアデカスタブ(登録商標) 3010〔(株)ADEKA製〕0.10質量部(固形分換算値)と、イソシアネート系架橋剤であるタケネート(登録商標) D-110N〔三井化学(株)製〕0.2質量部(固形分換算値)と、を十分に混合して、実施例1の粘着剤組成物を得た。
【0122】
〔実施例2~23〕
実施例1において、粘着剤組成物の組成を表2に示す組成に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例2~23の各粘着剤組成物を得た。
【0123】
〔比較例1~8〕
実施例1において、粘着剤組成物の組成を表3に示す組成に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、比較例1~8の各粘着剤組成物を得た。
【0124】
【0125】
【0126】
表2及び表3中、「-」は、その欄に該当するものがないことを意味する。
表2及び表3では、粘着剤組成物における「フェノール系酸化防止剤以外の酸化防止剤(C)の含有質量に対するフェノール系酸化防止剤(B)の含有質量の比」を「(B)/(C)」と表記した。
【0127】
表2及び/又は表3に記載の各成分の詳細は、以下に示すとおりである。
[フェノール系酸化防止剤]
〔フェノール系酸化防止剤(B)〕
「アデカスタブ AO-80」〔商品名、分子量:741、1分子中の芳香環の数:2個、重合性基:なし、(株)ADEKA製〕
「アデカスタブ AO-30」〔商品名、分子量:545、1分子中の芳香環の数:3個、重合性基:なし、(株)ADEKA製〕
「アデカスタブ AO-60」〔商品名、分子量:1178、1分子中の芳香環の数:4個、重合性基:なし、(株)ADEKA製〕
「トコフェロール」〔商品名、分子量:430、1分子中の芳香環の数:1個、重合性基:なし、三菱ケミカルフーズ(株)製〕
上記「アデカスタブ」は、登録商標である。
【0128】
〔フェノール系酸化防止剤(B)以外のフェノール系酸化防止剤〕
「2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール」〔商品名、分子量:220、1分子中の芳香環の数:1個、重合性基:なし、東京化成工業(株)製〕
「スミライザー GS」〔商品名、分子量:548、1分子中の芳香環の数:2個、重合性基:あり、住友化学(株)製〕
上記「スミライザー」は、登録商標である。
【0129】
[フェノール系酸化防止剤以外の酸化防止剤(C)]
「アデカスタブ 3010」〔商品名、リン系酸化防止剤(亜リン酸エステル化合物)、分子量:503、1分子中の芳香環の数:0個、重合性基:なし、(株)ADEKA製〕
「アデカスタブ AO-26」〔商品名、硫黄系酸化防止剤(チオエーテル化合物)、1分子中の芳香環の数:2個、重合性基:なし、(株)ADEKA製〕
上記「アデカスタブ」は、登録商標である。
【0130】
〔架橋剤〕
<イソシアネート系架橋剤>
「タケネート D-110N」〔商品名、キシリレンジイソシアネート(XDI)とトリメチロールプロパン(TMP)とのアダクト体、固形分濃度:75質量%、三井化学(株)製〕
上記「タケネート」は、登録商標である。
【0131】
[評価用粘着シートの作製]
1.評価用粘着シートX
上記にて調製した粘着剤組成物を、シリコーン系剥離処理剤で易剥離処理された剥離フィルム〔商品名:フィルムバイナ(登録商標)100E-0010 No.23、厚さ:100μm、藤森工業(株)製〕の易剥離処理面に塗布し、塗布膜を形成した。なお、粘着剤組成物の塗布量は、最終的に形成される粘着剤層の厚さが50μmとなる量とした。次いで、形成した塗布膜を、熱風循環式乾燥機を用いて、乾燥温度100℃、乾燥時間2分間の乾燥条件で乾燥させ、剥離フィルム上に粘着膜を形成した。次いで、粘着膜の露出した面を、別途準備したシリコーン系剥離処理剤で易剥離処理された剥離フィルム〔商品名:フィルムバイナ(登録商標)25E-0010 BD、厚さ:25μm、藤森工業(株)製〕の易剥離処理面に重ねて貼り合わせた後、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下に4日間静置し、養生を行い、無基材タイプの粘着シートを作製した。作製した粘着シートを評価用粘着シートXとし、粘着力の評価用粘着シートとして用いた。評価用粘着シートXは、剥離フィルム/粘着剤層(厚さ:50μm)/剥離フィルムの積層構造を有する。
【0132】
2.評価用粘着シートY
上記にて調製した粘着剤組成物を、シリコーン系剥離処理剤で易剥離処理された剥離フィルム〔商品名:フィルムバイナ(登録商標)100E-0010 No.23、厚さ:100μm、藤森工業(株)製〕の易剥離処理面に塗布し、塗布膜を形成した。なお、粘着剤組成物の塗布量は、最終的に形成される粘着剤層の厚さが150μmとなる量とした。次いで、形成した塗布膜を、熱風循環式乾燥機を用いて、乾燥温度100℃、乾燥時間2分間の乾燥条件で乾燥させ、剥離フィルム上に粘着膜を形成した。次いで、粘着膜の露出した面を、別途準備したシリコーン系剥離処理剤で易剥離処理された剥離フィルム〔商品名:フィルムバイナ(登録商標)25E-0010 BD、厚さ:25μm、藤森工業(株)製〕の易剥離処理面に重ねて貼り合わせた後、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下に4日間静置し、養生を行い、無基材タイプの粘着シートを作製した。作製した粘着シートを評価用粘着シートYとし、黄変及び白化の評価用粘着シートとして用いた。評価用粘着シートYは、剥離フィルム/粘着剤層(厚さ:150μm)/剥離フィルムの積層構造を有する。
【0133】
[測定及び評価]
1.粘着力
粘着力の評価試験における試験片の作製方法及び粘着力の測定方法は、JIS Z 0237:2009に記載の方法に準拠した。具体的な方法は、以下のとおりである。
【0134】
(1)初期
上記にて作製した評価用粘着シートXの一方の剥離フィルム〔商品名:フィルムバイナ(登録商標)25E-0010 BD〕を剥離し、PETフィルム〔商品名:コスモシャイン(登録商標) A4100、厚さ:100μm、東洋紡(株)製〕の易接着処理面に重ね、加圧ニップロールを通すことにより圧着して貼り合わせた後、25mm×150mm(長辺)の大きさに切断し、評価用粘着シート片X1を準備した。次いで、準備した評価用粘着シート片X1〔構成:剥離フィルム/粘着剤層/PETフィルム〕の剥離フィルム〔商品名:フィルムバイナ(登録商標)100E-0010 No.23〕を剥離し、剥離により露出した粘着剤層の面を、ガラス板〔光学ソーダガラス、厚さ:1.8mm、大きさ:250mm×200mm、松浪硝子工業(株)製〕の一方の面に重ねて貼り合わせ、積層体を作製した。作製した積層体は、ガラス板(被着体)/評価用粘着シート片X2〔構成:粘着剤層/PETフィルム〕の積層構造を有する。次いで、作製した積層体を、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下に24時間静置し、初期の粘着力を評価するための試験片とした。この試験片について、ガラス板から評価用粘着シート片X2を長辺(150mm)方向に180°剥離したときの粘着力(単位:N/25mm)を、測定装置として(株)エー・アンド・デイ製のシングルコラム型材料試験機〔型番:STA-1225〕を用い、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下、剥離速度300mm/分の条件で測定した。そして、下記の評価基準に従って、評価を行った。結果を表4に示す。
下記の評価基準において、「A」、「B」、及び「C」は、実用上問題ないレベルであり、「A」であることが最も好ましい。
【0135】
-評価基準-
A:粘着力が25N/25mm以上であった。
B:粘着力が20N/25mm以上25N/25mm未満であった。
C:粘着力が15N/25mm以上20N/25mm未満であった。
D:粘着力が15N/25mm未満であった。
【0136】
(2)耐熱性試験後
上記にて作製した評価用粘着シートXの一方の剥離フィルム〔商品名:フィルムバイナ(登録商標)25E-0010 BD〕を剥離し、PETフィルム〔商品名:コスモシャイン(登録商標) A4100、厚さ:100μm、東洋紡(株)製〕の易接着処理面に重ね、加圧ニップロールを通すことにより圧着して貼り合わせた後、25mm×150mm(長辺)の大きさに切断し、評価用粘着シート片X1を準備した。次いで、準備した評価用粘着シート片X1〔構成:剥離フィルム/粘着剤層/PETフィルム〕の剥離フィルム〔商品名:フィルムバイナ(登録商標)100E-0010 No.23〕を剥離し、剥離により露出した粘着剤層の面を、ガラス板〔光学ソーダガラス、厚さ:1.8mm、大きさ:250mm×200mm、松浪硝子工業(株)製〕の一方の面に重ねて貼り合わせ、積層体を作製した。作製した積層体は、ガラス板(被着体)/評価用粘着シート片X2〔構成:粘着剤層/PETフィルム〕の積層構造を有する。次いで、作製した積層体を、雰囲気温度130℃の環境下に15日間静置し、耐熱性試験後の粘着力を評価するための試験片とした。この試験片について、ガラス板から評価用粘着シート片X2を長辺(150mm)方向に180°剥離したときの粘着力(単位:N/25mm)を、測定装置として(株)エー・アンド・デイ製のシングルコラム型材料試験機〔型番:STA-1225〕を用い、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下、剥離速度300mm/分の条件で測定した。そして、下記の評価基準に従って、評価を行った。結果を表4に示す。
下記の評価基準において、「A」、「B」、及び「C」は、実用上問題ないレベルであり、「A」であることが最も好ましい。
【0137】
-評価基準-
A:粘着力が25N/25mm以上であった。
B:粘着力が20N/25mm以上25N/25mm未満であった。
C:粘着力が15N/25mm以上20N/25mm未満であった。
D:粘着力が15N/25mm未満であった。
【0138】
2.黄変
上記にて作製した評価用粘着シートXの一方の剥離フィルム〔商品名:フィルムバイナ(登録商標)25E-0010 BD〕を剥離し、PETフィルム〔商品名:コスモシャイン(登録商標) A4100、厚さ:100μm、東洋紡(株)製〕の易接着処理面に重ね、加圧ニップロールを通すことにより圧着して貼り合わせた後、50mm×70mm(長辺)の大きさに切断し、評価用粘着シート片Y1を準備した。次いで、準備した評価用粘着シート片Y1〔構成:剥離フィルム/粘着剤層/PETフィルム〕の剥離フィルム〔商品名:フィルムバイナ(登録商標)100E-0010 No.23〕を剥離し、剥離により露出した粘着剤層の面を、ガラス板〔光学ソーダガラス、厚さ:1.8mm、大きさ:250mm×200mm、松浪硝子工業(株)製〕の一方の面に重ね、加圧ニップロールを通すことにより圧着して貼り合わせ、積層体を作製した。作製した積層体は、ガラス板(被着体)/評価用粘着シート片Y2〔構成:粘着剤層/PETフィルム〕の積層構造を有する。次いで、作製した積層体を、雰囲気温度130℃の環境下に15日間静置し、耐熱性試験後の黄変を評価するための試験片とした。この試験片及び上記PETフィルムのb*値を、分光色彩計〔型番:SE6000、日本電色工業(株)製〕を用いて測定し、試験片のb*値からPETフィルムのb*値を差し引くことにより得られた値を「評価値」とし、下記の評価基準に従って、評価を行った。結果を表4に示す。
下記の評価基準において、「A」、「B」、及び「C」は、実用上問題ないレベルであり、「A」であることが最も好ましい。
【0139】
-評価基準-
A:評価値が0.5未満であった。
B:評価値が0.5以上0.8未満であった。
C:評価値が0.8以上1.0未満であった。
D:評価値が1.0以上であった。
【0140】
3.白化
上記にて作製した評価用粘着シートXの一方の剥離フィルム〔商品名:フィルムバイナ(登録商標)25E-0010 BD〕を剥離し、PETフィルム〔商品名:コスモシャイン(登録商標) A4100、厚さ:100μm、東洋紡(株)製〕の易接着処理面に重ね、加圧ニップロールを通すことにより圧着して貼り合わせた後、50mm×70mm(長辺)の大きさに切断し、評価用粘着シート片Y1を準備した。次いで、準備した評価用粘着シート片Y1〔構成:剥離フィルム/粘着剤層/PETフィルム〕の剥離フィルム〔商品名:フィルムバイナ(登録商標)100E-0010 No.23〕を剥離し、剥離により露出した粘着剤層の面を、ガラス板〔光学ソーダガラス、厚さ:1.8mm、大きさ:250mm×200mm、松浪硝子工業(株)製〕の一方の面に重ね、加圧ニップロールを通すことにより圧着して貼り合わせ、積層体を作製した。作製した積層体は、ガラス板(被着体)/評価用粘着シート片Y2〔構成:粘着剤層/PETフィルム〕の積層構造を有する。次いで、作製した積層体を、雰囲気温度85℃、95%RHの環境下に7日間静置し、耐湿熱性試験後の白化を評価するための試験片とした。この試験片及び上記ガラス板のヘイズ値(単位:%)を、ヘイズメータ〔型番:NDH 5000SP、日本電色工業(株)製〕を用いて測定し、試験片のヘイズ値からガラス板のヘイズ値を差し引くことにより得られた値を「評価値(単位:%)」とし、下記の評価基準に従って、評価を行った。結果を表4に示す。
下記の評価基準において、「A」、「B」、及び「C」は、実用上問題ないレベルであり、「A」であることが最も好ましい。
【0141】
-評価基準-
A:評価値が0.10%未満であった。
B:評価値が0.10%以上0.50%未満であった。
C:評価値が0.50%以上1.00%未満であった。
D:評価値が1.00%以上であった。
【0142】
【0143】
表4に示すように、実施例1~23の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、高温高湿環境下に置かれた場合でも白化し難く、高温環境下に置かれた場合でも、被着体に対して高い粘着力を示し、かつ、黄変し難いことが確認された。
【0144】
一方、(メタ)アクリル系共重合体における水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が全構成単位に対して18質量%未満である比較例1の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、高温高湿環境下に置かれると顕著に白化した。
フェノール系酸化防止剤(B)及びフェノール系酸化防止剤以外の酸化防止剤(C)のいずれも含まない比較例2の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、高温環境下に置かれると被着体に対する粘着力が顕著に低下した。
フェノール系酸化防止剤(B)の含有量が(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して0.1質量部未満である比較例3の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、高温環境下に置かれると被着体に対する粘着力が顕著に低下した。
フェノール系酸化防止剤(B)の含有量が(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して3.0質量部を超える比較例4の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、高温環境下に置かれると顕著に黄変した。
フェノール系酸化防止剤以外の酸化防止剤(C)の含有量が、(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して0.05質量部未満である比較例5の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、高温環境下に置かれると顕著に黄変した。
フェノール系酸化防止剤以外の酸化防止剤(C)の含有量が、(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して0.50質量部を超える比較例6の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、被着体に対する初期の粘着力が過度に低く、その粘着力は、高温環境下に置かれることで更に低下した。
フェノール系酸化防止剤(B)の代わりに、フェノール系酸化防止剤(B)に該当しないフェノール系酸化防止剤、具体的には、分子量が300未満であり、かつ、重合性基を有しないフェノール系酸化防止剤を含む比較例7の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、高温環境下に置かれると被着体に対する粘着力が顕著に低下した。
フェノール系酸化防止剤(B)の代わりに、フェノール系酸化防止剤(B)に該当しないフェノール系酸化防止剤、具体的には、分子量が300以上であり、かつ、重合性基を有するフェノール系酸化防止剤を含む比較例8の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、高温環境下に置かれると被着体に対する粘着力が顕著に低下した。また、比較例8の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、高温環境下に置かれると顕著に黄変した。