(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022150981
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】缶の検査装置および缶の検査方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/90 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
G01N21/90 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021053835
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】305060154
【氏名又は名称】アルテミラ製缶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】平野 忠文
(72)【発明者】
【氏名】内匠 雄嗣
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 毅
(72)【発明者】
【氏名】田村 哲也
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA21
2G051AB04
2G051BA01
2G051BA02
2G051BB02
2G051BC06
2G051CA01
2G051CB02
2G051DA08
(57)【要約】
【課題】ピンホールの位置を検出することができる缶の検査装置および缶の検査方法を提供する。
【解決手段】缶胴101と缶底を備える有底筒状の缶100に対して、缶100の外部から光Lを照射して、缶100の内部に漏れる光を検出する缶の検査装置1であって、缶100の外部から缶100に光Lを照射する複数の光源3と、缶胴101の開口端部を通して、缶100の内部から外部に漏れ出る光を検出可能な検出部と、制御部と、を備え、制御部は、複数の光源3から缶100に対して、順番に光Lを照射させる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
缶胴と缶底を備える有底筒状の缶に対して、前記缶の外部から光を照射して、前記缶の内部に漏れる光を検出する缶の検査装置であって、
前記缶の外部から前記缶に光を照射する複数の光源と、
前記缶胴の開口端部を通して、前記缶の内部から外部に漏れ出る光を検出可能な検出部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、複数の前記光源から前記缶に対して、順番に光を照射させる、
缶の検査装置。
【請求項2】
複数の前記光源は、前記缶の中心軸と直交する径方向の外側から前記缶胴に光を照射し、前記中心軸回りの周方向に並んで配置される複数の第1光源を含む、
請求項1に記載の缶の検査装置。
【請求項3】
複数の前記光源は、前記中心軸が延びる軸方向から前記缶底に光を照射する少なくとも1つの第2光源を含む、
請求項2に記載の缶の検査装置。
【請求項4】
前記第1光源は、前記周方向に等ピッチで12個以上設けられる、
請求項2または3に記載の缶の検査装置。
【請求項5】
前記制御部は、すべての前記光源から前記缶に対して順番に光を照射させる制御を、複数回行う、
請求項1から4のいずれか1項に記載の缶の検査装置。
【請求項6】
前記制御部は、1回目の前記制御では、所定数の前記光源毎に前記缶に対して順番に光を照射させ、2回目以降の前記制御では、前記所定数よりも多い数の前記光源毎に前記缶に対して順番に光を照射させる、
請求項5に記載の缶の検査装置。
【請求項7】
前記制御部は、1回目の前記制御において前記検出部が光を検出しなかった場合に、2回目以降の前記制御を行う、
請求項6に記載の缶の検査装置。
【請求項8】
複数の前記光源と対応する複数の表示部を備え、
各前記表示部は、
前記缶に対して光を照射していることを表示する照射表示部と、
前記検出部により光が検出されたことを表示する検出表示部と、を有する、
請求項1から7のいずれか1項に記載の缶の検査装置。
【請求項9】
缶胴と缶底を備える有底筒状の缶に対して、前記缶の外部から光を照射して、前記缶の内部に漏れる光を検出する缶の検査方法であって、
前記缶の外部から前記缶に光を照射する複数の光源と、
前記缶胴の開口端部を通して、前記缶の内部から外部に漏れ出る光を検出可能な検出部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、複数の前記光源から前記缶に対して、順番に光を照射させる、
缶の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶の検査装置および缶の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、缶に意図せず生じたピンホール等の欠陥(以下、単にピンホールと呼ぶ)の有無を検査する缶の検査装置として、例えば特許文献1に記載のものが知られている。
特許文献1では、光源に対して缶を缶軸回りに回転させ、缶の開口端部を閉塞するシール手段の内部を通して、缶の内部から外部に漏れ出る光を検出部で検出することにより、ピンホールの有無を検査する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の缶の検査装置では、ピンホールの位置を検出することは難しかった。
【0005】
本発明は、ピンホールの位置を検出することができる缶の検査装置および缶の検査方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの態様は、缶胴と缶底を備える有底筒状の缶に対して、前記缶の外部から光を照射して、前記缶の内部に漏れる光を検出する缶の検査装置であって、前記缶の外部から前記缶に光を照射する複数の光源と、前記缶胴の開口端部を通して、前記缶の内部から外部に漏れ出る光を検出可能な検出部と、制御部と、を備え、前記制御部は、複数の前記光源から前記缶に対して、順番に光を照射させる。
また、本発明の一つの態様は、缶胴と缶底を備える有底筒状の缶に対して、前記缶の外部から光を照射して、前記缶の内部に漏れる光を検出する缶の検査方法であって、前記缶の外部から前記缶に光を照射する複数の光源と、前記缶胴の開口端部を通して、前記缶の内部から外部に漏れ出る光を検出可能な検出部と、制御部と、を備え、前記制御部は、複数の前記光源から前記缶に対して、順番に光を照射させる。
【0007】
本発明によれば、制御部が、複数の光源のうち1つまたは2つ以上から、つまり所定数の光源毎に、缶に対して順番に光を照射させる。このため、検出部が光を検出したときに、検出のタイミングと、どの光源が缶に光を照射したかとを紐付けることで、当該光源と対向する缶の部分にピンホールが存在することを認識でき、つまりピンホールの位置を特定できる。また、検出部が検出した検出値に基づいて、ピンホールのおおよその孔径等についても把握することが可能である。
【0008】
従来のように、例えば回転する缶に対して光源から光を照射し、検出部で光(ピンホール)を検出する場合には、検出部の検出閾値(検出下限値)を所定以上に高める必要があり、これに応じて検査装置の運転時の消費電力および電流値等も高くなる傾向があった。
一方、本発明によれば、静止状態の缶に対して光源から光を照射するため、検出部の検出閾値を小さく抑えることが可能であり、つまり検査装置の運転時の消費電力および電流値等を抑制しつつ、検出部により安定して光(ピンホール)を検出できる。本発明によれば、微小なピンホールであっても精度よく検出することが可能であり、ピンホールの見落としが低減する。
【0009】
以上より本発明によれば、検査装置の製作費用やランニングコストを低減しつつ、ピンホールの位置を正確に検出することができ、高精度で安定した検査が行える。また従来の検査装置に比べて、本発明によれば検査時間を短縮することができる。
【0010】
上記缶の検査装置において、複数の前記光源は、前記缶の中心軸と直交する径方向の外側から前記缶胴に光を照射し、前記中心軸回りの周方向に並んで配置される複数の第1光源を含むことが好ましい。
【0011】
この場合、周方向に並ぶ複数の第1光源により、缶胴のピンホールの周方向位置を検出できる。
【0012】
上記缶の検査装置において、複数の前記光源は、前記中心軸が延びる軸方向から前記缶底に光を照射する少なくとも1つの第2光源を含むことが好ましい。
【0013】
この場合、少なくとも1つの第2光源により、缶底のピンホールを検出できる。
【0014】
上記缶の検査装置において、前記第1光源は、前記周方向に等ピッチで12個以上設けられることが好ましい。
【0015】
この場合、軸方向から見て、周方向に隣り合う第1光源同士の間の中心軸を中心とする中心角が、30°以下となる。すなわち、複数の第1光源が周方向に隣接するように配列するため、例えば、缶胴のピンホールが周方向に隣り合う第1光源間に位置しているような場合であっても、ピンホールを通して缶の内部に漏れ出る光量が確保され、検出部によって安定して光(ピンホール)を検出することができる。
【0016】
上記缶の検査装置において、前記制御部は、すべての前記光源から前記缶に対して順番に光を照射させる制御を、複数回行うことが好ましい。
【0017】
この場合、各光源から缶に対して順番に光を照射する一連の制御が、複数回繰り返される。このため、ピンホールの位置や大きさ等をより正確に検出でき、またピンホールの見落としがより低減される。なお制御部による前記制御は、例えば、照射制御、照射動作、照射工程などと適宜言い換えてもよい。
【0018】
上記缶の検査装置において、前記制御部は、1回目の前記制御では、所定数の前記光源毎に前記缶に対して順番に光を照射させ、2回目以降の前記制御では、前記所定数よりも多い数の前記光源毎に前記缶に対して順番に光を照射させることが好ましい。
【0019】
例えば、ボトル缶のように缶の壁厚が厚い場合などにおいては、ピンホールの見落としが生じやすい傾向がある。このような場合であっても、上記構成のように、1回目の制御で缶に個別に照射する光量に比べて、2回目以降の制御で缶に個別に照射する光量が大きくされていると、ピンホールの見落としがより安定して抑えられる。すなわち、缶の壁厚やピンホールの大きさ等に係わらず、ピンホールを精度よく安定して検出できる。
【0020】
上記缶の検査装置において、前記制御部は、1回目の前記制御において前記検出部が光を検出しなかった場合に、2回目以降の前記制御を行うことが好ましい。
【0021】
この場合、ピンホールの見落としを抑制しつつ、光源の部品寿命を延ばすことができる。
【0022】
上記缶の検査装置は、複数の前記光源と対応する複数の表示部を備え、各前記表示部は、前記缶に対して光を照射していることを表示する照射表示部と、前記検出部により光が検出されたことを表示する検出表示部と、を有することが好ましい。
【0023】
この場合、照射表示部によって、複数の光源のうちどの光源から缶に対して光が照射されているかを、オペレーターが認識できる。また検出表示部によって、複数の光源のうちどの光源から缶に対して光が照射されたときに、検出部が光を検出したか、つまり缶のどの部分にピンホールが位置しているかを、オペレーターが認識できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の一つの態様の缶の検査装置および缶の検査方法によれば、ピンホールの位置を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、本実施形態の缶の検査装置を示す正面図である。
【
図2】
図2は、缶の検査装置の一部の内部構造を示す縦断面図である。
【
図3】
図3は、缶の検査装置の一部の内部構造を示す横断面図である。
【
図4】
図4(a)は、光源とピンホールとの位置関係を模式的に示す側面図、
図4(b)は、光源の照明出力と、検出部により検出された信号出力との関係を示すグラフである。
【
図5】
図5(a)は、光源とピンホールとの位置関係を模式的に示す側面図、
図5(b)は、光源の照明出力と、検出部により検出された信号出力との関係を示すグラフである。
【
図6】
図6は、光源とピンホールとの周方向の相対位置(入光角)と、検出部により検出された信号出力との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の一実施形態の缶の検査装置1および缶の検査方法について、図面を参照して説明する。なお以下では、缶の検査装置1を単に検査装置1といい、缶の検査方法を単に検査方法という場合がある。
図2に示すように、本実施形態の缶の検査装置1および缶の検査方法は、缶胴101と缶底102を備える有底筒状の缶100に対して、缶100の外部から光を照射して、缶100の内部に漏れる光を検出することにより、ピンホールの有無、位置および大きさ等を検出する(以下、単にピンホールを検出する、と省略する場合がある)。
【0027】
缶100は、飲料缶に用いられるものであり、後工程において飲料等の内容物が充填され、密封される。缶100としては、例えば、缶胴の開口端部に缶蓋が巻き締められる2ピース缶用の缶体(いわゆる普通缶)や、缶胴の開口端部(口金部)にキャップが螺着されるボトル缶などが挙げられる。
図2に示す例では、缶100がボトル缶である。
【0028】
図1~
図3に示すように、缶の検査装置1は、検査対象の缶100が収容される検査ハウジング2と、複数の光源3と、環状のランプブラケット4と、缶100の開口端部101aを支持する支持部5と、缶100の缶底102を押さえるプッシャー6と、プッシャー操作部7と、検出部8と、複数の表示部9と、制御部10と、を備える。
【0029】
本実施形態においては、検査される缶100の中心軸Cと、ランプブラケット4、支持部5、プッシャー6および検出部8の各中心軸とが、互いに同軸に配置される。つまり中心軸Cは、これら部材の共通軸である。
【0030】
本実施形態では、中心軸Cが延びる方向を軸方向と呼ぶ。軸方向は、各図においてZ軸方向に相当する。
図2に示すように、軸方向において、支持部5とプッシャー6とは、互いに異なる位置に配置される。軸方向のうち、支持部5からプッシャー6へ向かう方向(+Z側)を軸方向一方側と呼び、プッシャー6から支持部5へ向かう方向(-Z側)を軸方向他方側と呼ぶ。缶100の検査時において、缶100はその中心軸Cを上下方向(鉛直方向)に延ばし、缶胴101の開口端部101aを下側へ向けた倒立姿勢とされて、検査ハウジング2内に配置される。このため本実施形態において、軸方向は上下方向に相当する。また、軸方向一方側は上側に相当し、軸方向他方側は下側に相当する。
中心軸Cと直交する方向を径方向と呼ぶ。径方向のうち、中心軸Cに近づく方向を径方向内側と呼び、中心軸Cから離れる方向を径方向外側と呼ぶ。
中心軸C回りに周回する方向を周方向と呼ぶ。
【0031】
図1に示すように、検査ハウジング2は、缶の検査装置1のうち上側部分に配置される。
図2および
図3に示すように、検査ハウジング2は、直方体形の箱状である。検査ハウジング2は、開口部を有する箱状のハウジング本体部2aと、ハウジング本体部2aにヒンジ等を介して接続され、前記開口部を開閉可能に塞ぐハウジング扉部2bと、を有する。
【0032】
複数の光源3は、缶100の外部から缶100に光Lを照射する。各光源3は、少なくとも1つ以上のLED球を有する。光源3に発光ダイオード(LED)を用いることにより、消費電力を低減できる。
複数の光源3は、径方向の外側から缶胴101に光Lを照射し、周方向に並んで配置される複数の第1光源3Aと、軸方向から缶底102に光Lを照射する少なくとも1つの第2光源3Bと、を含む。
【0033】
第1光源3Aは、検査ハウジング2内に収容される。第1光源3Aは、軸方向に延びる直方体状である。複数の第1光源3Aは、検査対象の缶100を径方向外側から囲う。複数の第1光源3Aは、周方向に互いに間隔をあけて配置される。第1光源3Aは、周方向に等ピッチで12個以上設けられる。言い換えると、
図3に示すように軸方向から見て、周方向に隣り合う第1光源3A同士の間の中心軸Cを中心とする中心角は、30°以下である。具体的に本実施形態では、第1光源3Aの数が、12個である。
【0034】
図4(a)および
図5(a)に示すように、本実施形態では、第1光源3AにLED球3aが複数設けられる。第1光源3Aの複数のLED球3aは、第1光源3Aのうち径方向内側を向く面に配置され、軸方向に互いに間隔をあけて配列する。
【0035】
図2に示すように、第2光源3Bは、検査ハウジング2内に収容される。第2光源3Bは、検査対象の缶100の缶底102の上側に配置される。本実施形態では、第2光源3B(のLED球)がプッシャー6内に埋め込まれている。
【0036】
図2および
図3に示すように、ランプブラケット4は、検査ハウジング2内に配置される。ランプブラケット4は、中心軸Cを中心とする円形リング状または円筒状である。ランプブラケット4は、複数の第1光源3Aを支持する。各第1光源3Aは、ランプブラケット4の内周部に取り付けられる。本実施形態では、各第1光源3Aが、ランプブラケット4により、軸方向(上下方向)に位置調整可能に支持される。
【0037】
図3に示すように、ランプブラケット4は、ブラケット本体部4aと、ブラケット本体部4aにヒンジ等を介して開閉可能に接続されるブラケット扉部4bと、を有する。オペレーターは、検査対象の缶100を装置にセットする際や、装置から取り出す際などにおいて、ハウジング扉部2bを開け、ブラケット扉部4bを開けることにより、検査ハウジング2の内部にアクセス可能である。
【0038】
図2に示すように、支持部5は、検査ハウジング2内に配置される。支持部5は、中心軸Cを中心とするリング板状または筒状である。支持部5は、検査ハウジング2の底壁と固定される。
支持部5は、缶100の開口端部101aに軸方向から接触して開口端部101aを閉塞するシール部5aと、開口端部101aを径方向外側から囲うガイド部5bと、を有する。
【0039】
シール部5aは、中心軸Cを中心とする円環板状である。シール部5aは、例えばゴム製等であり、弾性変形可能である。シール部5aは、缶100の開口端部101aに対して、下側から密着する。開口端部101aは、シール部5aによって軸方向から支持される。
【0040】
ガイド部5bは、中心軸Cを中心とする円筒状である。ガイド部5bは、缶100の開口端部101aの径方向外側に配置される。開口端部101aは、ガイド部5b内に挿入される。
ガイド部5bは、アクリル樹脂等の光透過性材料で形成されている。つまりガイド部5bは、透明である。なお「透明」とは、光線透過率が例えば90%以上であることを指す。
【0041】
プッシャー6は、検査ハウジング2内に配置される。プッシャー6は、中心軸Cを中心とする板状であり、本実施形態では円板状である。プッシャー6は、検査対象の缶100の上側に配置される。プッシャー6は、軸方向に移動可能であり、缶100の缶底102に対して上側から接触する。つまりプッシャー6は、缶底102に軸方向から接触可能である。プッシャー6が缶底102に接触することで、缶100は、軸方向において支持部5とプッシャー6とにより保持される。
プッシャー6は、アクリル樹脂等の光透過性材料で形成されている。つまりプッシャー6は、透明である。
【0042】
プッシャー操作部7は、検査ハウジング2の外部に配置される。プッシャー操作部7は、リンク部材やカム部材等を介してプッシャー6と連結される。
図1に示すように、オペレーターが、プッシャー操作部7を操作(図示の例では上下動)することにより、プッシャー6は、軸方向に移動させられる。
【0043】
図2に示すように、検出部8は、検査ハウジング2の下側に配置される。検出部8は、缶胴101の開口端部101aおよびシール部5aの内部を通して、缶100の内部から外部に漏れ出る光を検出可能である。検出部8は光センサであり、具体的には、例えば光電子倍増管(いわゆるフォトマル、PMT)である。検出部8は、検出ハウジング11内に収容される。検出ハウジング11は、検査ハウジング2の底壁と固定される。
【0044】
複数の表示部9は、複数の光源3と対応する。すなわち、各表示部9は、各光源3と個別に対応する。本実施形態では、複数の表示部9のうち1つが、複数の光源3のうち1つと対応する。
図1に示すように、複数の表示部9は、検査ハウジング2の下側に配置される。複数の表示部9は、装置の外部からオペレーターが視認可能な位置に配置される。図示の例では、複数の表示部9が、缶の検査装置1の正面パネル12に配置される。
【0045】
表示部9は、この表示部9と対応する光源3が缶100に対して光Lを照射していることを表示する照射表示部9aと、この表示部9と対応する光源3が光Lを照射したときに検出部8により光(ピンホール)が検出されたことを表示する検出表示部9bと、を有する。各表示部9の照射表示部9aと検出表示部9bとは、互いに隣接して配置され、例えば、互いに色が異なる表示ランプ等により構成される。
【0046】
本実施形態では、正面パネル12に円形状に配列する複数の表示部9が、複数の第1光源3Aと個別に対応している。正面パネル12に円形状に配列する複数の表示部9の並び順は、検査ハウジング2内において周方向に配列する複数の第1光源3Aの並び順と同じである。また、円形状に配列する複数の表示部9の内側(円中央)に配置される少なくとも1つの表示部9が、少なくとも1つの第2光源3Bと個別に対応している。
【0047】
図1に示す例では、円形状に配列する各表示部9のうち、照射表示部9aが円の外周側に配置され、検出表示部9bが円の内周側に配置される。また、円中央に配置される表示部9のうち、照射表示部9aが上側に配置され、検出表示部9bが下側に配置される。ただしこれに限らず、例えば、円形状に配列する各表示部9のうち、照射表示部9aが円の内周側に配置され、検出表示部9bが円の外周側に配置されてもよい。また、円中央に配置される表示部9のうち、照射表示部9aが下側に配置され、検出表示部9bが上側に配置されてもよい。また、各表示部9を、上記以外の配置としてもよい。
【0048】
制御部10は、缶の検査装置1のうち下側部分に配置される。制御部10は、複数の光源3、検出部8、および複数の表示部9と電気的に接続される。
図3において、本実施形態の缶の検査装置1および缶の検査方法では、制御部10が、複数の光源3から缶100に対して、順番に光Lを照射させる。具体的に、例えば制御部10は、複数の第1光源3Aから缶胴101に対して、軸方向から見たときに時計回り(または反時計回り)の順番で個別に光Lを照射させた後、第2光源3Bから缶底102に対して個別に光Lを照射させる。なお、複数の光源3から缶100に対して光Lを照射する順番は、上述の順番に限らない。
また制御部10は、各光源3から光Lを照射させるタイミングに合わせて、各光源3と個別に対応する各表示部9の照射表示部9aを、表示ランプを点灯させる等により順番に表示させる。
【0049】
本実施形態では制御部10が、すべての光源3から缶100に対して順番に光Lを照射させる制御を、複数回行う。なお前記制御は、例えば、照射制御、照射動作、照射工程などと適宜言い換えてもよい。
具体的に、制御部10は、1回目の制御では、所定数の光源3毎に缶100に対して順番に光Lを照射させ、2回目以降の制御では、この所定数よりも多い数の光源3毎に缶100に対して順番に光Lを照射させる。より詳しくは、例えば制御部10は、1回目の制御では、1つの光源3ずつ(つまり光源3の単位数1ずつ)、缶100に対して順番に光Lを照射させ、2回目以降の制御では、周方向に隣り合う2つの光源3ずつ(つまり光源3の単位数2ずつ)、缶100に対して順番に光Lを照射させる。
【0050】
また制御部10は、1回目の制御において検出部8が光を検出した場合には、2回目以降の制御を行わない。言い換えると、制御部10は、1回目の制御において検出部8が光を検出しなかった場合にのみ、2回目以降の制御を行う。なお本実施形態では、制御部10が、1回目の制御において検出部8が光を検出しなかった場合に、2回目の制御を行い、2回目の制御における検出部8での検出結果に係わらず、3回目の制御は行わない。つまり制御部10は、すべての光源3から缶100に対して順番に光Lを照射させる制御を、最大で2回行う。
【0051】
また制御部10は、検出部8が光を検出した場合に、この検出のタイミングと、どの光源3から缶100に光Lが照射されていたかとを関連付けることで、該当する光源3と個別に対応する表示部9の検出表示部9bを、表示ランプを点灯させる等により表示させる。
【0052】
以上説明した本実施形態の缶の検査装置1および缶の検査方法によれば、下記の作用効果が得られる。
本実施形態によれば、制御部10が、複数の光源3のうち1つまたは2つ以上から、つまり所定数の光源3毎に、缶100に対して順番に光Lを照射させる。このため、検出部8が光を検出したときに、検出のタイミングと、どの光源3が缶100に光Lを照射したかとを紐付けることで、当該光源3と対向する缶100の部分にピンホールが存在することを認識でき、つまりピンホールの位置を特定できる。また、検出部8が検出した検出値に基づいて、ピンホールのおおよその孔径等についても把握することが可能である。
【0053】
従来のように、例えば回転する缶に対して光源から光を照射し、検出部で光(ピンホール)を検出する場合には、検出部の検出閾値(検出下限値)を所定以上に高める必要があり、これに応じて検査装置の運転時の消費電力および電流値等も高くなる傾向があった。
一方、本実施形態によれば、静止状態の缶100に対して光源3から光Lを照射するため、検出部8の検出閾値を小さく抑えることが可能であり、つまり検査装置1の運転時の消費電力および電流値等を抑制しつつ、検出部8により安定して光(ピンホール)を検出できる。本実施形態によれば、微小なピンホールであっても精度よく検出することが可能であり、ピンホールの見落としが低減する。
【0054】
以上より本実施形態によれば、検査装置1の製作費用やランニングコストを低減しつつ、ピンホールの位置を正確に検出することができ、高精度で安定した検査が行える。また従来の検査装置に比べて、本実施形態によれば検査時間を短縮することができる。
【0055】
また本実施形態では、複数の光源3が、周方向に配列する複数の第1光源3Aを含んでおり、複数の第1光源3Aは、径方向の外側から缶胴101に光Lを照射する。すなわち制御部10は、複数の第1光源3Aから缶胴101に対して、順番に光Lを照射させる。
この場合、複数の第1光源3Aにより、缶胴101のピンホールの周方向位置を検出できる。
【0056】
また本実施形態では、複数の光源3が、軸方向から缶底102に光Lを照射する少なくとも1つの第2光源3Bを含む。
この場合、第2光源3Bにより、缶底102のピンホールを検出できる。
【0057】
また本実施形態では、第1光源3Aが、周方向に等ピッチで12個以上設けられる。
この場合、軸方向から見て、周方向に隣り合う第1光源3A同士の間の中心軸Cを中心とする中心角が、30°以下となる。すなわち、複数の第1光源3Aが周方向に隣接するように配列するため、例えば、缶胴101のピンホールが周方向に隣り合う第1光源3A間に位置しているような場合であっても、ピンホールを通して缶100の内部に漏れ出る光量が確保され、検出部8によって安定して光(ピンホール)を検出することができる。
【0058】
また本実施形態では、制御部10が、すべての光源3から缶100に対して順番に光Lを照射させる制御を、複数回行う。
この場合、各光源3から缶100に対して順番に光Lを照射する一連の制御が、複数回繰り返される。このため、ピンホールの位置や大きさ等をより正確に検出でき、またピンホールの見落としがより低減される。
【0059】
また本実施形態では、制御部10が、1回目の制御では、所定数の光源3毎に缶100に対して順番に光Lを照射させ、2回目以降の制御では、前記所定数よりも多い数の光源3毎に缶100に対して順番に光Lを照射させる。
例えば、ボトル缶のように缶100の壁厚が厚い場合などにおいては、ピンホールの見落としが生じやすい傾向がある。このような場合であっても、上記構成のように、1回目の制御で缶100に個別に照射する光量に比べて、2回目以降の制御で缶100に個別に照射する光量が大きくされていると、ピンホールの見落としがより安定して抑えられる。すなわち、缶100の壁厚やピンホールの大きさ等に係わらず、ピンホールを精度よく安定して検出できる。
【0060】
また本実施形態では、制御部10が、1回目の制御において検出部8が光を検出しなかった場合に、2回目以降の制御を行う。
この場合、ピンホールの見落としを抑制しつつ、光源3の部品寿命を延ばすことができる。
【0061】
また本実施形態では、各光源3と個別に対応する各表示部9がそれぞれ、照射表示部9aと、検出表示部9bと、を有する。
この場合、照射表示部9aによって、複数の光源3のうちどの光源3から缶100に対して光Lが照射されているかを、オペレーターが認識できる。また検出表示部9bによって、複数の光源3のうちどの光源3から缶100に対して光Lが照射されたときに、検出部8が光を検出したか、つまり缶100のどの部分にピンホールが位置しているかを、オペレーターが認識できる。
【0062】
また本実施形態では、缶100の開口端部101aを径方向外側から囲うガイド部5bが、透明である。
この場合、光源3の光Lを、ガイド部5bを通して開口端部101aに照射することができ、開口端部101aのピンホールを精度よく検出できる。
【0063】
また本実施形態では、缶底102を押さえるプッシャー6が、透明である。
この場合、光源3の光Lを、プッシャー6を通して缶底102に照射することができる。例えば、プッシャー6の上側だけでなく、斜め上側や側方などに光源3を配置することによっても、缶底102に照射される光量を確保することが可能となる。光源3のレイアウトの自由度が増し、かつ缶底102のピンホールを安定して検出できる。
【0064】
また本実施形態では、プッシャー6が、軸方向に移動可能である。
この場合、1つの検査装置1により、軸方向の高さが互いに異なる複数種類の缶100を検査することが可能である。
【0065】
また本実施形態において、支持部5が、検査ハウジング2に着脱可能に設けられてもよい。
この場合、例えば、ガイド部5bの内径等が互いに異なる複数種類の支持部5をあらかじめ用意しておき、検査対象の缶100に合わせて支持部5を適宜交換することにより、開口端部101aの直径が互いに異なる複数種類の缶100を、1つの検査装置1で検査可能である。
【0066】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されず、例えば下記に説明するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の変更等が可能である。
【0067】
前述の実施形態では、複数の光源3が、複数の第1光源3Aと、少なくとも1つの第2光源3Bと、を含む例を挙げたが、これに限らない。例えば、缶胴101に比べて壁厚が厚い缶底102のピンホールを検出する必要性が低い場合などには、第2光源3Bが設けられなくてもよい。
【0068】
前述の実施形態では、光源3が、LED球3aにより缶100に光Lを照射する例を挙げたが、これに限らない。光源3は、例えば、電球や蛍光灯などのLED球以外の照明部材により、缶100に光Lを照射してもよい。
【0069】
前述の実施形態では、制御部10が、複数の第1光源3Aから缶100に対して、軸方向から見て時計回りまたは反時計回りの順番で、個別に光Lを照射させる例を挙げたが、これに限らない。制御部10は、例えば、複数の第1光源3Aから缶100に対して、周方向の各位置からランダムにかつ順番に光Lを照射させてもよい。
【0070】
前述の実施形態では、表示部9の照射表示部9aおよび検出表示部9bが、互いに色が異なる表示ランプ等により構成される例を挙げたが、これに限らない。例えば、複数の表示部9と、各表示部9の照射表示部9aおよび検出表示部9bとが、検査装置1の外部からオペレーターが視認可能なモニター画面等に表示されてもよい。
【0071】
本発明は、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態および変形例等で説明した各構成を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態等によって限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例0072】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。ただし本発明はこの実施例に限定されない。
【0073】
前述の実施形態で説明した缶の検査装置1のピンホール検出の基本性能について、下記の確認試験1、2を行った。
【0074】
〔ピンホール検出の基本性能 確認試験1〕
図4(a)は、検査装置1に設けられる1つの第1光源3A(光源3)と、検査対象である缶100の缶胴101のうち、この第1光源3Aと対向する部分に配置されるピンホールPと、の位置関係を模式的に示す側面図であり、具体的には、径方向内側から第1光源3Aを正面に見た図である。
図4(b)は、
図4(a)の第1光源3Aの照明出力と、この第1光源3Aから缶100に光Lが照射されることで検出部8により検出された信号出力(検出値)と、の関係を示すグラフである。
【0075】
図4(a)では、第1光源3Aの複数のLED球3aのうち1つのLED球3aの中心と、缶胴101のピンホールPとが対向して配置されている。すなわち、径方向から見て、1つのLED球3aの中心とピンホールPとが、重なって配置される。
この位置関係の場合、
図4(b)に示すように、第1光源3Aの照明出力が100DIGIT以上であると、ピンホールPの孔径の大小(50μm、24μm)に係わらず、検出部8の信号出力が検出閾値(検出下限値)の1V以上となることが確認された。例えば、第1光源3Aの照明出力を750DIGITとした場合には、検出部8の信号出力は、微小ピンホールP(24μm)の場合でも、この検出部8の最大信号出力値の14Vとなった。
【0076】
図5(a)は、検査装置1に設けられる1つの第1光源3A(光源3)と、検査対象である缶100の缶胴101のうち、この第1光源3Aと対向する部分に配置されるピンホールPと、の位置関係を模式的に示す側面図であり、具体的には、径方向内側から第1光源3Aを正面に見た図である。
図5(b)は、
図5(a)の第1光源3Aの照明出力と、この第1光源3Aから缶100に光Lが照射されることで検出部8により検出された信号出力(検出値)と、の関係を示すグラフである。
【0077】
図5(a)では、第1光源3Aのうち軸方向(Z軸方向)に隣り合う一対のLED球3a間に位置する部分と、缶胴101のピンホールPとが対向して配置されている。すなわち、径方向から見て、一対のLED球3a間に位置する部分とピンホールPとが、重なって配置される。つまり
図5(a)の場合、上述した
図4(a)の場合と比べて、第1光源3Aから缶100に光Lを照射したときに、ピンホールPを通して缶100の内部に漏れる光量が小さくなる。
この位置関係の場合でも、
図5(b)に示すように、第1光源3Aの照明出力が100DIGIT以上であると、ピンホールPの孔径の大小(50μm、24μm)に係わらず、検出部8の信号出力が検出閾値(検出下限値)の1V以上となることが確認された。例えば、第1光源3Aの照明出力を750DIGITとした場合には、検出部8の信号出力は、孔径50μmのピンホールPでは最大信号出力値の14Vとなり、孔径24μmの微小ピンホールPでも約9.5Vと高い値となった。
【0078】
〔ピンホール検出の基本性能 確認試験2〕
図6は、第1光源3A(光源3)とピンホールとの周方向の相対位置(入光角)と、検出部8により検出された信号出力と、の関係を示すグラフである。具体的にこの試験では、周方向に等ピッチで配列する12個の第1光源3Aのうち、3つの第1光源3Aを用いた。周方向に隣り合う一対の第1光源3A間の、中心軸Cを中心とする中心角は、それぞれ30°である。
【0079】
図6のグラフにおいて、横軸は、3つの第1光源3Aのうち周方向中央に位置する第1光源3Aと、缶胴101のピンホールとが正対した状態を基準(0°)として、缶100が中心軸C回りに回動させられた角度を表す。具体的に、
図6において3つの第1光源3Aは、缶胴101のピンホールが角度-30°、0°、30°に配置されたときに、ピンホールと正対する位置に配置されている。
【0080】
これらの第1光源3Aに対して、缶胴101に1つのピンホール(孔径22μm)を有する缶100を、中心軸C回りに5°刻みで回転、停止させ、各停止位置において、各第1光源3Aから照明出力800DIGITで光Lを順番に照射したときに、検出部8により検出される信号出力(検出値)を測定した。
なお試験は、径方向から見てピンホールが、LED球中心に位置する場合(
図4(a)参照)と、軸方向に隣り合う一対のLED球間に位置する場合(
図5(a)参照)とについて、それぞれ行った。
【0081】
試験の結果、
図6に示すように、検出部8の信号出力は、缶胴101のピンホールが、3つの第1光源3Aの正面に位置したとき、つまり横軸の角度-30°、0°、30°である場合に、それぞれ最大値(14V)となった。また、缶胴101のピンホールが、周方向に隣り合う一対の第1光源3A間に位置する場合、具体的には、
図6に示す各折れ線グラフ同士の交差部である横軸の角度-15°、15°の場合に、検出部8の信号出力がそれぞれ実質的に最小値となることがわかった。
【0082】
そして、検出部8の信号出力の上記最小値は、缶100の内部に漏れる光量が最も低い状態、すなわち
図6に符号Aで示すように、ピンホールがLED球間に位置し、かつ周方向に隣り合う一対の第1光源3Aから周方向に最も離れて配置される場合でも、2V以上(つまり検出下限値の2倍以上)確保されることが確認された。
1…缶の検査装置、3…光源、3A…第1光源、3B…第2光源、8…検出部、9…表示部、9a…照射表示部、9b…検出表示部、10…制御部、100…缶、101…缶胴、101a…開口端部、102…缶底、C…中心軸、L…光、P…ピンホール