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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022150985
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】カメラの設計方法およびカメラ
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20210101AFI20220929BHJP
   G02B 7/04 20210101ALI20220929BHJP
   G03B 17/02 20210101ALI20220929BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
G02B7/02 F
G02B7/04 D
G03B17/02
H04N5/225 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021053840
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173691
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 康久
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 武史
(72)【発明者】
【氏名】田村 和也
(72)【発明者】
【氏名】古河 憲一
(72)【発明者】
【氏名】藤田 直喜
(72)【発明者】
【氏名】岡本 光弘
【テーマコード(参考)】
2H044
2H100
5C122
【Fターム(参考)】
2H044AH14
2H044AH18
2H044BD10
2H044BD20
2H100EE00
5C122DA11
5C122EA01
5C122GE01
5C122GE05
5C122GE11
5C122HB09
(57)【要約】
【課題】レンズユニットと撮像素子とを繋ぐ各部の材質を選定することにより、レンズユニットと撮像素子との離間距離の変化とレンズユニットに対する撮像素子の傾斜とを抑制することのできるカメラの設計方法およびカメラを提供すること。
【解決手段】カメラ100は、レンズユニット420とレンズユニット420から入った光を受光する撮像素子600とを、熱変動によりレンズユニット420と撮像素子600との離間距離Dを増加させる距離増加部材110と、熱変動によりレンズユニット420と撮像素子600との離間距離Dを減少させる距離減少部材120と、を介して接続されている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズユニットと前記レンズユニットから入った光を受光する撮像素子とを、
熱変動により前記レンズユニットと前記撮像素子との離間距離を増加させる距離増加部材と、
熱変動により前記レンズユニットと前記撮像素子との離間距離を減少させる距離減少部材と、を介して接続することを特徴とするカメラの設計方法。
【請求項2】
ケーシングと、
前記ケーシングに装着されたシリンダーと、
前記シリンダー内に配置され、前記シリンダーに対して光軸方向に移動可能であり、前記レンズユニットを保持するスリーブと、
前記シリンダーに固定され、前記撮像素子を支持する回路基板と、
前記スリーブの前記光軸方向の結像側に位置し、前記スリーブの基端部に接続されたロッドと、
前記ケーシングに装着され、前記ロッドを前記光軸方向の受光側に送り出す送り装置と、を有し、
前記ケーシング、前記シリンダー、前記スリーブ、前記ロッドおよび前記送り装置の少なくとも1つを前記距離増加部材とし、少なくとも1つを前記距離減少部材とする請求項1に記載のカメラの設計方法。
【請求項3】
0℃~80℃における前記離間距離の変動を25℃における前記離間距離に対して±0.005mm以下とする請求項1または2に記載のカメラの設計方法。
【請求項4】
レンズユニットと前記レンズユニットから入った光を受光する撮像素子とが、
熱変動により前記レンズユニットと前記撮像素子との離間距離を増加させる距離増加部材と、
熱変動により前記レンズユニットと前記撮像素子との離間距離を減少させる距離減少部材と、を介して接続されていることを特徴とするカメラ。
【請求項5】
ケーシングと、
前記ケーシングに装着されたシリンダーと、
前記シリンダー内に配置され、前記シリンダーに対して光軸方向に移動可能であり、前記レンズユニットを保持するスリーブと、
前記シリンダーに固定され、前記撮像素子を支持する回路基板と、
前記スリーブの前記光軸方向の結像側に位置し、前記スリーブの基端部に接続されたロッドと、
前記ケーシングに装着され、前記ロッドを前記光軸方向の受光側に送り出す送り装置と、を有する請求項4に記載のカメラ。
【請求項6】
前記ケーシング、前記シリンダー、前記スリーブ、前記ロッドおよび前記送り装置の少なくとも1つが前記距離増加部材であり、少なくとも1つが前記距離減少部材である請求項5に記載のカメラ。
【請求項7】
0℃~80℃における前記離間距離の変動は、25℃における前記離間距離に対して±0.005mm以下である請求項4ないし6のいずれか1項に記載のカメラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラの設計方法およびカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、レンズユニットと、レンズユニットの後方に配置されレンズユニットから入った光を受光する撮像素子と、を有し、レンズユニットと撮像素子との離間距離を一定に固定した固定焦点式のデジタルカメラが開示されている。特許文献1のデジタルカメラでは、撮像素子は、前方に位置する圧縮ゴムと、後方に位置する膨縮プレートとにより挟持された状態でレンズユニットに固定されている。このようなデジタルカメラによれば、レンズユニットの鏡胴と共に膨縮プレートが温度によって収縮または膨張するため、膨縮プレートがない場合と比べてレンズユニットと撮像素子との離間距離の変化が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-147188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のデジタルカメラでは、撮像素子を圧縮ゴムと膨縮プレートとにより前後からバランスよく挟持されていないと、膨縮プレートの収縮または膨張によって撮像素子がレンズユニットに対して傾いてしまい、撮像特性が不安定となる。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、レンズユニットと撮像素子とを繋ぐ各部の材質を選定することにより、レンズユニットと撮像素子との離間距離の変化とレンズユニットに対する撮像素子の傾斜とを抑制することのできるカメラの設計方法およびカメラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、以下の(1)~(7)の本発明により達成される。
【0007】
(1) レンズユニットと前記レンズユニットから入った光を受光する撮像素子とを、
熱変動により前記レンズユニットと前記撮像素子との離間距離を増加させる距離増加部材と、
熱変動により前記レンズユニットと前記撮像素子との離間距離を減少させる距離減少部材と、を介して接続することを特徴とするカメラの設計方法。
【0008】
(2) ケーシングと、
前記ケーシングに装着されたシリンダーと、
前記シリンダー内に配置され、前記シリンダーに対して光軸方向に移動可能であり、前記レンズユニットを保持するスリーブと、
前記シリンダーに固定され、前記撮像素子を支持する回路基板と、
前記スリーブの前記光軸方向の結像側に位置し、前記スリーブの基端部に接続されたロッドと、
前記ケーシングに装着され、前記ロッドを前記光軸方向の受光側に送り出す送り装置と、を有し、
前記ケーシング、前記シリンダー、前記スリーブ、前記ロッドおよび前記送り装置の少なくとも1つを前記距離増加部材とし、少なくとも1つを前記距離減少部材とする上記(1)に記載のカメラの設計方法。
【0009】
(3) 0℃~80℃における前記離間距離の変動を25℃における前記離間距離に対して±0.005mm以下とする上記(1)または(2)に記載のカメラの設計方法。
【0010】
(4) レンズユニットと前記レンズユニットから入った光を受光する撮像素子とが、
熱変動により前記レンズユニットと前記撮像素子との離間距離を増加させる距離増加部材と、
熱変動により前記レンズユニットと前記撮像素子との離間距離を減少させる距離減少部材と、を介して接続されていることを特徴とするカメラ。
【0011】
(5) ケーシングと、
前記ケーシングに装着されたシリンダーと、
前記シリンダー内に配置され、前記シリンダーに対して光軸方向に移動可能であり、前記レンズユニットを保持するスリーブと、
前記シリンダーに固定され、前記撮像素子を支持する回路基板と、
前記スリーブの前記光軸方向の結像側に位置し、前記スリーブの基端部に接続されたロッドと、
前記ケーシングに装着され、前記ロッドを前記光軸方向の受光側に送り出す送り装置と、を有する上記(4)に記載のカメラ。
【0012】
(6) 前記ケーシング、前記シリンダー、前記スリーブ、前記ロッドおよび前記送り装置の少なくとも1つが前記距離増加部材であり、少なくとも1つが前記距離減少部材である上記(5)に記載のカメラ。
【0013】
(7) 0℃~80℃における前記離間距離の変動は、25℃における前記離間距離に対して±0.005mm以下である上記(4)ないし(6)のいずれかに記載のカメラ。
【発明の効果】
【0014】
本発明のカメラの設計方法およびカメラでは、レンズユニットと撮像素子とを、熱変動によりレンズユニットと撮像素子との離間距離を増加させる距離増加部材と、熱変動によりレンズユニットと撮像素子との離間距離を減少させる距離減少部材と、を介して接続する。そのため、距離増加部材による離間距離の増加分と、距離減少部材による離間距離の減少分と、が相殺され、離間距離の変動を抑制することができる。また、このような構成によれば、撮像素子をその両側から挟み込む構成としなくても離間距離の変動を抑制することができるため、熱変動による光軸に対する撮像素子の傾斜を抑制することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の好適な実施形態に係るカメラを前方から見た斜視図である。
図2図1に示すカメラの断面図である。
図3図1に示すカメラを後方から見た斜視図である。
図4】移動機構を示す分解斜視図である。
図5】送り装置の変形例を示す断面斜視図である。
図6】カメラの各部が熱膨張する様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のカメラの設計方法およびカメラを添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の好適な実施形態に係るカメラを前方から見た斜視図である。図2は、図1に示すカメラの断面図である。図3は、図1に示すカメラを後方から見た斜視図である。図4は、移動機構を示す分解斜視図である。図5は、送り装置の変形例を示す断面斜視図である。図6は、カメラの各部が熱膨張する様子を示す断面図である。なお、以下では、説明の便宜上、図1図2および図6中の左側を前方(先端、光軸方向の受光側)とし、右側を後方(基端、光軸方向の結像側)とする。
【0018】
図1に示すカメラ100は、FA(ファクトリーオートメーション)用のカメラである。典型的には、カメラ100は、部品の組み立て、加工、検査等を実行するFA用のロボットのアーム等に取り付けられ、部品の形状や位置、部品とロボットのアームとの間の相対関係等を取得するために部品を撮影する。ただし、カメラ100の用途は、これに限定されない。
【0019】
図2に示すように、カメラ100は、ケーシング200と、ケーシング200の前方に装着されたシリンダー300と、シリンダー300内に配置されたレンズアッセンブリー400と、レンズアッセンブリー400をシリンダー300内で光軸Lに沿って移動させる移動機構500と、シリンダー300の前方開口300Aに装着されたレンズカバー900と、図示しない外部装置との接続を行うレセプタクル群800と、を有する。
【0020】
また、カメラ100は、レンズアッセンブリー400から入った光を受光する撮像素子600と、撮像素子600を支持する第1回路基板710と、第1回路基板710と電気的に接続された第2回路基板720と、を有する。撮像素子600、第1回路基板710および第2回路基板720は、それぞれ、ケーシング200に収容されている。なお、以下では、説明の便宜上、光軸Lに沿う方向すなわち光軸Lと平行な方向を「光軸方向LL」とも言う。
【0021】
カメラ100では、移動機構500によってレンズアッセンブリー400を光軸方向LLに移動させることによりレンズアッセンブリー400(後述するレンズユニット420)と撮像素子600との離間距離Dを変更、調整することができる。そのため、撮影距離(被写体との距離)に応じて離間距離Dを調整することによりフォーカス調整(ピント合わせ)が可能となる。特に、後述するように、移動機構500は、レンズアッセンブリー400に対してその後方から光軸方向LLの力Fを加える。そのため、レンズアッセンブリー400の光軸方向LL以外への変位が抑制され、レンズアッセンブリー400が光軸Lに対して偏心したり、傾斜したりするのを抑制することができる。そのため、カメラ100は、安定した撮像特性を発揮することができ、良質な画像を取得することができる。
【0022】
以下、カメラ100を構成する各部について、順次詳細に説明する。
【0023】
<シリンダー300>
まずは、シリンダー300について説明する。図2に示すように、シリンダー300は、円筒形状を有する。また、シリンダー300の内径は、その軸方向に沿って一定である。また、シリンダー300は、その内周面から中心軸に向けて突出するよう形成されたリング状のフランジ390を有する。フランジ390は、シリンダー300の前方開口300A付近の内周面上に設けられている。フランジ390は、シリンダー300の強度を高めるリブとしての機能や、レンズカバー900の度当たりとしての機能や、レンズアッセンブリー400のそれ以上の前方側への移動を規制するストッパーとしての機能を有する。また、シリンダー300の前方開口300Aとフランジ390との間の内周面にはネジ溝380が形成されている。ネジ溝380は、レンズカバー900をシリンダー300に取り付けるのに用いられる。ただし、フランジ390およびネジ溝380は、省略してもよいし、別の用途に用いられてもよい。
【0024】
また、シリンダー300は、小外径部310と、小外径部310よりも外径が大きい中外径部320と、中外径部320よりも外径が大きい大外径部330と、を有する。これらは、前方から小外径部310、中外径部320、大外径部330の順に光軸方向LLに並んで一体的に形成されている。また、シリンダー300は、小外径部310と中外径部320との境界に形成され前方を向く段差面340と、中外径部320と大外径部330との境界に形成され前方を向く段差面350と、を有する。段差面340、350は、それぞれ、光軸Lに直交する平坦面である。
【0025】
小外径部310の外周には、ネジ溝311が形成されている。また、中外径部320の外周面の上部と下部には、円筒状の外周面の一部を切り欠いた平坦面であるDカット面321がそれぞれ形成されている。Dカット面321は、中外径部320の上側と下側とに等間隔(180°間隔)で一対形成されており、互いに対向している。同様に、大外径部330の外周面の上部と下部には、円筒状の外周面の一部を切り欠いた平坦面であるDカット面331がそれぞれ形成されている。Dカット面331は、大外径部330の上側と下側とに等間隔(180°間隔)で一対形成されており、互いに対向している。ただし、シリンダー300の構成としては、特に限定されず、例えば、ネジ溝311、Dカット面321およびDカット面331を省略してもよい。
【0026】
また、シリンダー300の基端部には、ケーシング200とのねじ止めに用いられる取付ねじ孔360が設けられている。取付ねじ孔360には、ケーシング200を貫通するねじB4が螺合しており、これにより、シリンダー300がケーシング200に固定されている。
【0027】
このような構成のシリンダー300は、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属材料で構成されている。これにより、十分な剛性を有するシリンダー300が得られ、内部に収容されたレンズアッセンブリー400を安定して保持することができる。また、シリンダー300は、例えば、NC(Numerical Control)旋盤加工により形成されている。NC旋盤加工を用いることにより、優れた寸法精度でシリンダー300を形成することができる。そのため、シリンダー300内でのレンズアッセンブリー400のがたつきを抑え、かつ、レンズアッセンブリー400をシリンダー300内でスムーズに動かすことができる。ただし、シリンダー300の材質や形成方法は、特に限定されない。
【0028】
以上、シリンダー300について説明した。
【0029】
<ケーシング200>
次に、ケーシング200について説明する。図2に示すように、ケーシング200は、シリンダー300の後方に設けられている。また、ケーシング200は、後方上部を略矩形状に切り欠いた形状となっている。そのため、ケーシング200は、シリンダー300を保持する高背部201と、高背部201の後方に位置し、高背部201よりも背が低い低背部202と、を有する。そして、高背部201の後面201Bから後述する送り装置550が突出している。また、低背部202の後面202Bにはレセプタクル群800が設けられている。
【0030】
このように、低背部202の後面202Bすなわちケーシング200の最後方に位置する部分にレセプタクル群800を設けることにより、レセプタクル群800の周囲にスペースを確保し易くなり、レセプタクル群800へのアプローチが容易となる。また、図示しないが、レセプタクル群800にケーブルを接続した状態ではケーブルが後方へ延びるため、ケーブルを含めたカメラ100全体の光軸Lに直交する方向への広がり、換言すると、光軸方向LLからの平面視でのカメラ100の輪郭の広がりを抑えることができる。そのため、カメラ100の小型化を図ることができる。
【0031】
なお、図2および図3に示すように、本実施形態のレセプタクル群800は、カメラ100で撮像した画像データを送信する画像データ出力用のレセプタクル810と、制御信号が入力されるレセプタクル820と、を有する。レセプタクル810は、USB Type-Cコネクターであり、レセプタクル820は、丸型M5コネクターである。ただし、レセプタクル群800に含まれるレセプタクルの数や機能は、特に限定されない。
【0032】
また、図2に示すように、ケーシング200は、その下側部分を構成するベースシャーシ210と、上側部分を構成するアッパーケース220と、を有する。そして、ベースシャーシ210とアッパーケース220とでシリンダー300の基端部を挟み込むことにより、シリンダー300を保持している。また、ベースシャーシ210には、ねじB4を挿通するための挿通孔211が形成されている。そして、この挿通孔211に挿通されたねじB4がシリンダー300の取付ねじ孔360に螺合することにより、ベースシャーシ210とシリンダー300とが共締めされ、これららが固定されている。ただし、ケーシング200の構成は、特に限定されない。
【0033】
ベースシャーシ210およびアッパーケース220は、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属材料で構成されている。これにより、十分な剛性を有するケーシング200が得られ、シリンダー300を安定して保持することができる。特に、本実施形態では、ベースシャーシ210およびアッパーケース220は、それぞれ、ダイカストすなわち鋳造品である。ダイカストを用いることにより、安価なベースシャーシ210及びアッパーケース220が得られる。また、二次加工により部分的に高い寸法精度を出すことができる。また、製造コストを抑えることもできる。ただし、ベースシャーシ210およびアッパーケース220の材質や形成方法は、特に限定されない。
【0034】
以上、ケーシング200について説明した。
【0035】
<レンズアッセンブリー400>
次に、レンズアッセンブリー400について説明する。図2に示すように、レンズアッセンブリー400は、シリンダー300内にシリンダー300と同軸的に配置されている。また、レンズアッセンブリー400は、シリンダー300に対して光軸方向LLに移動(摺動)可能な円筒状のスリーブ410と、スリーブ410の内側に設けられたレンズユニット420と、を有する。また、レンズユニット420は、スリーブ410に固定された円筒状の鏡筒430と、鏡筒430内に配置されたレンズ群440および絞り450と、を有する。
【0036】
なお、本実施形態のレンズユニット420は、単焦点(固定焦点)のレンズユニットである。単焦点のレンズユニット420を用いることにより、ズーム機能を有するレンズユニット420を用いる場合と比べてレンズの数を減らすことができる。そのため、その分、レンズユニット420を小型化および低コスト化することができる。また、ズーム機能を有するレンズユニット420を用いる場合と比べて明るい画像を取得し易くなる。ただし、レンズユニット420の構成は、特に限定されない。
【0037】
スリーブ410は、円筒形状を有する。また、スリーブ410は、外周面から外側へ突出する一対のリング状のフランジ411、412を有する。フランジ411は、スリーブ410の外周面の先端部に位置し、フランジ412は、スリーブ410の外周面の基端部に位置している。スリーブ410は、これらフランジ411、412の外周面においてシリンダー300の内周面と接触している。つまり、スリーブ410は、その中央部を除く両端部においてシリンダー300と接触している。このような構成とすることにより、シリンダー300内でのスリーブ410の姿勢を安定させつつ、シリンダー300とスリーブ410との接触面積を小さくすることができる。そのため、シリンダー300内でのスリーブ410の安定した移動が可能となる。ただし、スリーブ410の構成としては、特に限定されず、例えば、フランジ411、412を省略し、スリーブ410の外周面の全域がシリンダー300の内周面と接触していてもよい。
【0038】
また、スリーブ410は、前方開口410Aに臨むレンズユニット挿入部413を有する。そして、レンズユニット挿入部413にレンズユニット420が挿入、装着されている。また、レンズユニット挿入部413は、その後方の部分よりも内径が大きい。そのため、レンズユニット挿入部413の基端側には、前方を向く段差面414が形成されている。段差面414は、光軸Lに直交する平坦面であり、レンズユニット420の度当たりとして機能する。そのため、スリーブ410に対するレンズユニット420の位置決めが容易となる。
【0039】
なお、本実施形態では、レンズユニット挿入部413は、Sマウント規格で構成されている。そのため、Sマウント規格に対応したものであれば、用途に合わせてレンズユニット420を交換することもできる。また、Sマウント規格で構成することにより、レンズユニット420を小型化することができ、カメラ100の小型化を図ることができる。ただし、レンズユニット挿入部413の規格としては、特に限定されず、例えば、Cマウント規格で構成されていてもよい。
【0040】
このような構成のスリーブ410は、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属材料で構成されている。これにより、十分な剛性を有するスリーブ410が得られ、レンズユニット420を安定して保持することができる。特に、本実施形態のスリーブ410は、シリンダー300と同一の材料で構成されている。これにより、シリンダー300とスリーブ410の線膨張係数が等しくなり、昇温によってシリンダー300とスリーブ410との間にガタが生じたり、反対に、スリーブ410の動きが鈍くなったりするのを効果的に抑制することができる。また、スリーブ410は、例えば、NC旋盤加工により形成されている。NC旋盤加工を用いることにより、優れた寸法精度でスリーブ410を形成することができる。ただし、スリーブ410の材質や形成方法は、特に限定されない。
【0041】
このように、本実施形態では、シリンダー300およびスリーブ410が共にNC旋盤加工により形成されている。そのため、これらのクリアランスを高精度に管理することができ、スリーブ410をシリンダー300に精度よく組み付けることができる。したがって、レンズアッセンブリー400をシリンダー300内でスムーズに動かすことができると共に、シリンダー300内でのレンズアッセンブリー400の光軸Lに対する偏心や傾斜を抑制することができる。
【0042】
シリンダー300の内周面とスリーブ410の外周面との間には、これらの摺動抵抗を低減するための図示しない潤滑剤が設けられている。そのため、レンズアッセンブリー400をシリンダー300内でスムーズに動かすことができる。なお、潤滑剤としては、特に限定されないが、本実施形態では、モリブテン系、グラファイト系、フッ素系等の各種固体潤滑剤を用いている。
【0043】
鏡筒430は、円筒形状を有しており、内部にレンズ群440および絞り450が設けられている。このような構成の鏡筒430は、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属材料で構成されている。これにより、十分な剛性を有する鏡筒430が得られ、レンズ群440および絞り450を安定して保持することができる。また、鏡筒430は、例えば、NC旋盤加工により形成されている。NC旋盤加工を用いることにより、優れた寸法精度で鏡筒430を形成することができる。そのため、鏡筒430をスリーブ410に精度よく組み付けることができる。ただし、鏡筒430の材質や形成方法は、特に限定されない。
【0044】
以上、レンズアッセンブリー400について説明した。
【0045】
<撮像素子600>
次に、撮像素子600について説明する。図2に示すように、撮像素子600は、レンズアッセンブリー400の後方に設けられ、受光面が光軸Lに直交している。撮像素子600は、レンズアッセンブリー400から入った光を受光する。撮像素子600としては、特に限定されず、CCDイメージセンサー、CMOSイメージセンサー等を用いることができる。また、撮像素子600の素子サイズ(寸法)、解像度等の各種スペックは、カメラ100に求められるスペックに合わせて適宜設定することができる。
【0046】
以上、撮像素子600について説明した。
【0047】
<第1回路基板710>
次に、第1回路基板710について説明する。図2に示すように、第1回路基板710は、撮像素子600の後方に設けられ、光軸Lに直交する姿勢で配置されている。また、第1回路基板710は、撮像素子600を支持している。つまり、第1回路基板710は、撮像素子600が搭載されたセンサー基板である。第1回路基板710は、ネジB1によってシリンダー300の基端面にネジ止めされている。ここで、上述したように、シリンダー300は、NC旋盤加工により形成されているため、基端面の形成精度が高く、光軸Lに対する垂直度を高精度に管理することができる。そのため、第1回路基板710をシリンダー300の基端面に固定することにより、撮像素子600を光軸Lに対して精度よく位置決めすることができる。ただし、第1回路基板710の固定方法や固定される対象としては、特に限定されない。
【0048】
以上、第1回路基板710について説明した。
【0049】
<第2回路基板720>
次に、第2回路基板720について説明する。図2に示すように、第2回路基板720は、ケーシング200内において、第1回路基板710の後方に設けられ、光軸Lと平行な向きで配置されている。また、第2回路基板720は、ネジB2によってベースシャーシ210にネジ止めされている。ただし、第2回路基板720の固定方法や固定される対象としては、特に限定されない。また、例えば、第2回路基板720を省略し、その機能を第1回路基板710に持たせてもよい。
【0050】
第2回路基板720には、カメラ100の駆動を制御する回路素子であるICチップ730が搭載されている。ICチップ730は、第1回路基板710およびレセプタクル群800と電気的に接続されている。ICチップ730は、レセプタクル820を介して受信した制御信号に基づいてカメラ100を制御する。また、ICチップ730は、撮像素子600から出力された光電変換信号に基づいて画像データを生成し、生成した画像データをレセプタクル810から出力する。
【0051】
以上、第2回路基板720について説明した。
【0052】
<移動機構500>
次に、移動機構500について説明する。移動機構500は、レンズアッセンブリー400を光軸方向LLに移動させ、レンズユニット420と撮像素子600との離間距離Dを変更、調整するための機構である。移動機構500は、図2および図4に示すように、レンズアッセンブリー400に接続されたロッド510と、ロッド510の基端に接続されたロッドヘッド520と、ロッド510を光軸方向LLに誘導するロッドガイド530と、ロッド510を後方に向けて付勢する付勢部材としての圧縮コイルばね540と、圧縮コイルばね540の力に抗してロッド510を前方に向けて送り出す送り装置550と、を有する。
【0053】
ロッド510は、ケーシング200内において、レンズアッセンブリー400の後方に設けられている。また、ロッド510は、棒状であり、光軸方向LLに延在している。また、光軸方向LLからの平面視で、ロッド510は、スリーブ410と重なっている。また、ロッド510は、その先端部においてスリーブ410の基端部に接続されている。具体的には、ロッド510の先端部がスリーブ410の基端面に形成されたネジ穴415に螺合している。そのため、ロッド510が前方に移動すると、ロッド510に押されてレンズアッセンブリー400が前方に移動する。反対に、ロッド510が後方に移動すると、ロッド510に引っ張られてレンズアッセンブリー400が後方に移動する。
【0054】
ロッド510をこのような形状および配置とすることにより、カメラ100の光軸Lに直交する方向への広がり、換言すると、光軸方向LLからの平面視でのカメラ100の輪郭の広がりを抑えることができ、カメラ100の小型化を図ることができる。また、ロッド510をスリーブ410に接続することにより、レンズユニット420がロッド510によって直接押圧されないため、レンズユニット420に加わる負荷を低減することができる。
【0055】
このような構成のロッド510は、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属材料で構成されている。これにより、十分な剛性を有するロッド510が得られ、送り装置550からの押圧力を効率的にレンズアッセンブリー400に伝達することができる。そのため、レンズアッセンブリー400をスムーズに移動させることができる。
【0056】
ロッドヘッド520は、ロッド510の基端部に接続されている。また、ロッドヘッド520は、ロッド510よりも大径な頭部521を有する。頭部521の前面521aおよび後面521bは、それぞれ、光軸Lに直交する平坦面である。前面521aは、圧縮コイルばね540が当接する当接面であり、後面521bは、送り装置550が当接する当接面である。
【0057】
このような構成のロッドヘッド520は、例えば、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)等の各種樹脂材料で構成されている。PEEKで構成することにより、優れた機械的強度、耐摩擦特性を発揮することができるため、圧縮コイルばね540および送り装置550との接点に用いるのに適した材質となる。ただし、これに限定されず、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属材料で構成してもよい。これにより、PEEKに比べてロッドヘッド520を安価に製造することができる。
【0058】
ロッドガイド530は、ケーシング200内において、第1回路基板710の後方に設けられている。ロッドガイド530は、第1回路基板710と共に、ネジB1によってシリンダー300の基端面にネジ止めされている。ロッドガイド530は、第1回路基板710に支持された基部531と、基部531から後方に突出する円錐台形の突出部532と、を有する。
【0059】
基部531は、光軸方向LLを厚さ方向とする板状部分である。基部531の後面531bは、圧縮コイルばね540が当接する当接面である。基部531には、その外縁部から後方に突出するフランジ533が設けられている。フランジ533は、圧縮コイルばね540の外周を囲み、ロッドガイド530に対して圧縮コイルばね540を位置決めしている。
【0060】
また、突出部532の頂面と第1回路基板710の前面との間には、これらを貫通し光軸方向LLに延在する貫通孔Hが形成されている。そして、この貫通孔Hにロッド510が挿通されている。そのため、ロッド510は、光軸方向LLへの移動が許容され、それ以外の方向への移動、特に光軸Lまわりの回転が規制される。これにより、ロッド510の操作性が向上し、レンズアッセンブリー400を光軸方向LLにスムーズに移動させることができる。特に、本実施形態のように突出部532を後方に突出させた構成とすることにより、貫通孔Hを光軸方向LLに長く形成することができる。そのため、上述の効果がより顕著となり、ロッド510の操作性がより向上する。
【0061】
貫通孔Hの内面とロッド510との間には、これらの摺動抵抗を低減するための図示しない潤滑剤が設けられている。そのため、貫通孔Hに対してロッド510をスムーズに動かすことができる。なお、潤滑剤としては、特に限定されないが、本実施形態では、モリブテン系、グラファイト系、フッ素系等の各種固体潤滑剤を用いている。
【0062】
圧縮コイルばね540は、ロッド510の周囲に設けられている。換言すると、ロッド510は、圧縮コイルばね540に挿通されている。また、圧縮コイルばね540は、ロッドガイド530の基部531とロッドヘッド520との間に収縮した状態で配置されている。そのため、圧縮コイルばね540の復元力によって、ロッド510が後方に付勢されている。上述したように、圧縮コイルばね540は、ロッドガイド530によって位置決めされており、その中心軸がロッド510の中心軸J1と一致している。つまり、圧縮コイルばね540は、ロッド510と同軸的に配置されている。そのため、圧縮コイルばね540からロッド510に光軸Lに対して傾斜する方向の力が加わり難くなる。したがって、ロッド510を光軸方向LLにスムーズに移動させることができる。
【0063】
また、圧縮コイルばね540は、前方から後方に向けて径が漸減する円錐形状を有する。つまり、圧縮コイルばね540は、円錐コイルばねである。そのため、ロッド510の中心軸J1に向けて力を集中させ易くなる。したがって、当該構成によっても、圧縮コイルばね540からロッド510に光軸Lに対して傾斜する方向の力が加わり難くなる。よって、ロッド510を光軸方向LLにスムーズに移動させることができる。ただし、圧縮コイルばね540としては、特に限定されず、例えば、円筒コイルばね、樽型コイルばね、鼓型コイルばね等を用いてもよい。また、圧縮コイルばね540に替えて、引張コイルばね、板バネ等を付勢部材として用いてもよい。また、引張コイルばねを用いてロッド510を後方へ付勢してもよい。
【0064】
なお、ロッドガイド530の突出部532を円錐台形にしているのは、圧縮コイルばね540の形状に合わせるためである。このように、突出部532および圧縮コイルばね540を共に円錐台形とすることにより、圧縮コイルばね540が収縮する際のこれらの接触を効果的に抑制することができ、ロッド510を光軸方向LLにスムーズに移動させることができる。特に本実施形態では、突出部532のテーパー角は、レンズアッセンブリー400が最も前方に位置する状態(フランジ390に当接した状態)における圧縮コイルばね540のテーパー角と等しい。これにより、上述の効果がより顕著となる。
【0065】
送り装置550は、圧縮コイルばね540の力に抗してロッド510を前方に向けて押圧する。本実施形態では、送り装置550として、マイクロメーターヘッド550Aを用いている。マイクロメーターヘッド550Aは、公知の構成であり、押圧子としてのスピンドル551と、スリーブ552と、操作部としてのシンブル553と、ラチェットストップ554と、を有する。マイクロメーターヘッド550Aを用いることにより、離間距離Dをより微細にかつ精度よく調整することができる。なお、本実施形態では、ラチェットストップ554を使用しないため、省略してもよい。
【0066】
マイクロメーターヘッド550Aは、スリーブ552においてケーシング200のアッパーケース220に固定されている。本実施形態では、アッパーケース220に形成された挿通孔221にマイクロメーターヘッド550Aが挿通され、さらにイモネジB3によってケーシング200に対して固定、位置決めされている。
【0067】
マイクロメーターヘッド550Aがケーシング200に固定された状態では、スピンドル551がケーシング200内に位置し、その先端面がロッドヘッド520の後面521bに当接している。スピンドル551の先端面は、球面形状を有する。そのため、例えば、平坦面で構成されている場合と比べて、スピンドル551およびロッドヘッド520の摩耗や、マイクロメーターヘッド550Aの傾きによる誤差を抑えることができる。一方、シンブル553およびラチェットストップ554は、ケーシング200外に突出し、露出している。そして、ケーシング200外に突出した部分は、低背部202の上方であって、切り欠かれた部分に位置している。
【0068】
シンブル553を順回転させるとスピンドル551が前進し、スピンドル551に押されたロッド510が圧縮コイルばね540の付勢力に抗して前方へ移動し、ロッド510に押されたレンズアッセンブリー400が前方へ移動する。これにより、レンズユニット420と撮像素子600との離間距離Dが大きくなる。反対に、シンブル553を逆回転させるとスピンドル551が後退し、圧縮コイルばね540の付勢力によってロッド510が後方へ移動し、ロッド510に引っ張られたレンズアッセンブリー400が後方へ移動する。これにより、レンズユニット420と撮像素子600との離間距離Dが小さくなる。このようなマイクロメーターヘッド550Aの操作によりカメラ100のフォーカス調整(ピント合わせ)が可能となる。そのため、レンズユニット420を交換することなく、カメラ100の撮影距離および分解能(物理的解像度)を変更することができる。
【0069】
このように、マイクロメーターヘッド550Aによれば、シンブル553を回転させるだけで離間距離Dを変更することができるため、使用者の操作による過度な応力がカメラ100に加わり難い。そのため、カメラ100を構成する各部品の破損が抑制される。また、マイクロメーターヘッド550Aにはスピンドル551の繰り出し量を表示する図示しない目盛が設けられているため、当該目盛から離間距離Dを読み取ることも可能である。
【0070】
なお、フォーカス調整の方法としては、特に限定されない。例えば、カメラ100で撮像した画像をモニター等に表示し、操作者が当該画像を目視しながらマイクロメーターヘッド550Aを操作することによりフォーカス調整を行ってもよい。また、物理的解像度が最も高くなるようにフォーカス調整を自動で行うソフトウェアを用いてもよい。
【0071】
スピンドル551の移動軸すなわちスピンドル551の中心軸J2は、後方が上側に位置するように、光軸L(=中心軸J1)に対して傾斜している。このように、中心軸J2を光軸Lに対して傾斜させることにより、マイクロメーターヘッド550Aとケーシング200との干渉を防ぎ、マイクロメーターヘッド550Aを配置し易くなる。また、シンブル553の周囲にスペースを確保し易くなり、シンブル553を操作し易くなる。また、中心軸J2が光軸Lと平行な場合と比べて、シンブル553の回転量に対するレンズアッセンブリー400の変位量を小さくすることができる。そのため、離間距離Dをより微細に調整することができる。
【0072】
なお、中心軸J2を光軸Lに対して傾斜させることにより、マイクロメーターヘッド550Aに表示されるシンブル553の送り量とレンズアッセンブリー400の実際の変位量との間に誤差が生じるが、上述したように、フォーカス調整の際にマイクロメーターヘッド550Aの表示を使用しないため特段の問題とならない。光軸Lに対する中心軸J2の傾斜角θとしては、特に限定されないが、例えば、5°~10°程度とすることが好ましく、7°~9°程度とすることがより好ましい。これにより、上述した効果を十分に発揮しつつ、マイクロメーターヘッド550Aのケーシング200から突出している部分(シンブル553およびラチェットストップ554)がケーシング200の上方へ過度に突出するのを抑制することができる。そのため、カメラ100の大型化を抑制することができる。
【0073】
以上、移動機構500について説明した。このような移動機構500によれば、レンズアッセンブリー400に対して、その後方側から光軸方向LLの力Fを加えることにより、シリンダー300内でレンズアッセンブリー400を光軸方向LLに移動させる。そのため、レンズアッセンブリー400に光軸Lに対して傾斜した力が加わり難くなり、レンズアッセンブリー400がシリンダー300内で偏心したり、光軸Lに対して傾いたりし難くなる。したがって、安定した撮像特性を発揮することができるカメラ100となる。
【0074】
特に、移動機構500は、レンズアッセンブリー400の後方に位置し、レンズアッセンブリー400の基端部に接続されたロッド510と、ロッド510を光軸方向LLの前方側に送り出す送り装置550と、ロッド510を光軸方向LLの後方側に付勢する付勢部材としての圧縮コイルばね540と、を有する。このようなパーツを組み合わせることにより、移動機構500の構成が簡単となる。
【0075】
ただし、送り装置550としては、ロッド510を前方に送り出すことができれば、特に限定されない。例えば、図5に示すように、ケーシング200に固定された送りねじガイド557と、送りねじガイド557に螺号し、先端がロッドヘッド520に当接する送りねじシャフト558と、送りねじシャフト558を後方に付勢し、送りねじシャフト558の回転を規制する圧縮コイルばね559と、を有する構成であってもよい。このような構成では、圧縮コイルばね559の付勢力に抗して送りねじシャフト558を順回転させることによりロッド510を前方へ移動させることができる。反対に、送りねじシャフト558を逆回転させることによりロッド510を後方へ移動させることができる。なお、図5では、送りねじガイド557の内周面および送りねじシャフト558の外周面に形成されたねじ溝の図示を省略している。
【0076】
以上、カメラ100の構成について説明した。次に、カメラ100の設計方法について説明する。
【0077】
例えば、雰囲気温度の変化やカメラ100内でのICチップ730等の発熱による昇温(以下、単に「熱変動」とも言う)によりカメラ100の各部が膨張または収縮し、これに起因してレンズユニット420と撮像素子600との離間距離Dが変動する。そのため、移動機構500を用いてピントを合わせたにも関わらず、その後の熱変動によってピントが再びずれてしまうといった不具合が発生するおそれがある。そこで、本実施形態では、カメラ100を構成する各部の材料や寸法を管理し、各部の光軸方向LLへの膨張量を相殺することにより、熱変動に起因した離間距離Dの変動を抑制する。以下、詳細に説明する。
【0078】
カメラ100では、レンズユニット420と撮像素子600とを、熱変動に伴う膨張または収縮により離間距離Dを増加させる距離増加部材110と、熱変動に伴う膨張または収縮により離間距離Dを減少させる距離減少部材120と、を介して接続している。そして、距離増加部材110の膨張または収縮による離間距離Dの増加分と、距離減少部材120の膨張または収縮による離間距離Dの減少分と、を相殺することにより熱変動に起因する離間距離Dの変動を抑制する。なお、熱変動に起因する離間距離Dの変動量としては、特に限定されず、小さい程好ましいが、25℃の室温状態における離間距離Dに対して±0.005mm以下であることが好ましく、±0.002mm以下であることがより好ましい。これにより、熱変動に起因する離間距離Dの変動を十分に抑えることができる。
【0079】
このように、レンズユニット420と撮像素子600とを距離増加部材110と距離減少部材120とを介して接続する構成とすることにより、距離増加部材110および距離減少部材120の膨張量または収縮量を管理するだけで、比較的簡単に熱変動に起因する離間距離Dの変動を抑制することができる。また、このような構成によれば、従来のような撮像素子600をその両側から挟み込む構成としなくても、熱変動に起因する離間距離Dの変動を抑制することができるため、熱変動に起因した光軸Lに対する撮像素子600の傾斜を抑制することもできる。なお、膨張量または収縮量は、各部材の材質および寸法により容易に管理することができる。
【0080】
上述したように、撮像素子600は、第1回路基板710に搭載され、第1回路基板710は、シリンダー300に固定されている。シリンダー300は、ケーシング200に固定され、ケーシング200にはマイクロメーターヘッド550Aが固定されている。マイクロメーターヘッド550Aの先端部は、ロッドヘッド520に当接し、ロッドヘッド520にはロッド510が固定されている。ロッド510は、スリーブ410に固定され、スリーブ410にはレンズユニット420が固定されている。以上のように、レンズユニット420と撮像素子600とは、第1回路基板710、シリンダー300、ケーシング200、マイクロメーターヘッド550A、ロッドヘッド520、ロッド510およびスリーブ410を介して接続されている。
【0081】
以下、説明の便宜上、第1回路基板710の撮像素子600が搭載された面を基準面Cとする。また、以下では、カメラ100の温度が基準温度を超えて、各部が基準温度の状態から膨張する膨張時と、反対に、カメラ100の温度が基準温度未満となり、各部が基準温度の状態から収縮する収縮時と、について説明する。基準温度としては、特に限定されないが、本実施形態では、室温である25℃とする。
【0082】
≪膨張時≫
図6に示すように、シリンダー300が膨張すると、取付ねじ孔360の位置が前方に変位し、それに伴ってレンズユニット420が前方に変位する。そのため、シリンダー300は、距離増加部材110として機能する。ケーシング200が膨張すると、マイクロメーターヘッド550Aが後方に変位し、それに伴ってスリーブ410が後方に変位し、それに伴ってレンズユニット420が後方に変位する。そのため、ケーシング200は、距離減少部材120として機能する。マイクロメーターヘッド550Aが膨張すると、スピンドル551の先端部が前方に変位し、それに伴ってスリーブ410が前方に変位し、それに伴ってレンズユニット420が前方に変位する。そのため、マイクロメーターヘッド550Aは、距離増加部材110として機能する。ロッドヘッド520が膨張すると、ロッド510が前方に変位し、それに伴ってスリーブ410が前方に変位し、それに伴ってレンズユニット420が前方に変位する。そのため、ロッドヘッド520は、距離増加部材110として機能する。ロッド510が膨張すると、スリーブ410が前方に変位し、それに伴ってレンズユニット420が前方に変位する。そのため、ロッド510は、距離増加部材110として機能する。スリーブ410が膨張すると、レンズユニット420が前方に変位する。そのため、スリーブ410は、距離増加部材110として機能する。
【0083】
以上のように、膨張時には、シリンダー300、ケーシング200、マイクロメーターヘッド550A、ロッドヘッド520、ロッド510およびスリーブ410のうち、シリンダー300、マイクロメーターヘッド550A、ロッドヘッド520、ロッド510およびスリーブ410が距離増加部材110として機能し、ケーシング200が距離減少部材120として機能する。
【0084】
≪収縮時≫
シリンダー300が収縮すると、シリンダー300内に位置する取付ねじ孔360の位置が後方に変位し、それに伴ってレンズユニット420が後方に変位する。そのため、シリンダー300は、距離減少部材120として機能する。ケーシング200が収縮すると、マイクロメーターヘッド550Aが前方に変位し、それに伴ってスリーブ410が前方に変位し、それに伴ってレンズユニット420が前方に変位する。そのため、ケーシング200は、距離増加部材110として機能する。マイクロメーターヘッド550Aが収縮すると、スピンドル551の先端部が後方に変位し、それに伴ってスリーブ410が後方に変位し、それに伴ってレンズユニット420が後方に変位する。そのため、マイクロメーターヘッド550Aは、距離減少部材120として機能する。ロッドヘッド520が収縮すると、ロッド510が後方に変位し、それに伴ってスリーブ410が後方に変位し、それに伴ってレンズユニット420が後方に変位する。そのため、ロッドヘッド520は、距離減少部材120として機能する。ロッド510が収縮すると、スリーブ410が後方に変位し、それに伴ってレンズユニット420が後方に変位する。そのため、ロッド510は、距離減少部材120として機能する。スリーブ410が収縮すると、レンズユニット420が後方に変位する。そのため、スリーブ410は、距離減少部材120として機能する。
【0085】
以上のように、収縮時には、シリンダー300、ケーシング200、マイクロメーターヘッド550A、ロッドヘッド520、ロッド510およびスリーブ410のうち、シリンダー300、マイクロメーターヘッド550A、ロッドヘッド520、ロッド510およびスリーブ410が距離減少部材120として機能し、ケーシング200が距離増加部材110として機能する。
【0086】
このように、カメラ100がもともと持っている部材を距離増加部材110や距離減少部材120として用いることにより、距離増加部材110や距離減少部材120を別途設ける必要がなく、カメラ100の構成の複雑化を抑制することができる。
【0087】
以上より、カメラ100では、各距離増加部材110による離間距離Dの増加量ΔD(+)と、各距離減少部材120による離間距離Dの減少量ΔD(-)とを等しくし、これらが相殺されるように、各部の膨張量を材質および寸法に基づいて管理すればよい。以下の表1に具体的な設計例を示す。なお、表1中のL寸法は、各部の離間距離Dの変動に起因する領域の25℃での寸法を言う。
【0088】
【表1】
【0089】
表1に示す設計例では、シリンダー300については、アルミニウム合金A2011で構成し、L寸法すなわちシリンダー300の基端面からネジB4との螺合部P1までの距離を1.37mmとした。また、ベースシャーシ210については、ダイカスト用のアルミニウム合金ADC12で構成し、L寸法すなわち螺合部P1からネジB2との螺合部P2までの距離を7.65mmとした。また、アッパーケース220については、ダイカスト用のアルミニウム合金ADC12で構成し、L寸法すなわち螺合部P2からイモネジB3の螺合部P3までの距離を18.47mmとした。また、マイクロメーターヘッド550Aについては、ステンレス鋼SUS304で構成し、L寸法すなわち螺合部P3からスピンドル551の先端までの距離を5.05mmとした。また、ロッドヘッド520については、PEEKで構成し、L寸法すなわちロッドヘッド520の長さを5.2mmとした。また、ロッド510については、ステンレス鋼SUS304で構成し、L寸法すなわちロッド510のネジ部を除く長さを7.45mmとした。また、スリーブ410については、アルミニウム合金A2011で構成し、L寸法すなわち基端から段差面414までの距離を10.8mmとした。
【0090】
上記の表1から分かるように、60℃では、25℃と比べて、離間距離Dの増加量ΔD(+)=0.018mmであり、離間距離Dの減少量ΔD(-)=0.020mmであった。その結果、これらが相殺されて、25℃に対する離間距離Dの変動が-0.002mmに抑えられた。また、80℃では、25℃と比べて、離間距離Dの増加量ΔD(+)=0.028mmであり、離間距離Dの減少量ΔD(-)=0.030mmであった。その結果、これらが相殺されて、25℃に対する離間距離Dの変動が-0.002mmに抑えられた。また、0℃では、25℃と比べて、離間距離Dの増加量ΔD(+)=0.014mmであり、離間距離Dの減少量ΔD(-)=0.013mmであった。その結果、これらが相殺されて、25℃に対する離間距離Dの変動が+0.001mmに抑えられた。以上のように、表1の設計によれば、0℃~80℃の広い温度範囲において、熱変動による離間距離Dの変動を効果的に抑制できることが分かる。そのため、移動機構500を用いてピントを合わせた後の熱変動によるピントずれを効果的に抑制することができる。
【0091】
以上、本発明のカメラの設計方法およびカメラを図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。
【符号の説明】
【0092】
100…カメラ 110…距離増加部材 120…距離減少部材 200…ケーシング 201…高背部 201B…後面 202…低背部 202B…後面 210…ベースシャーシ 220…アッパーケース 221…挿通孔 300…シリンダー 300A…前方開口 310…小外径部 311…ネジ溝 320…中外径部 321…Dカット面 330…大外径部 331…Dカット面 340…段差面 350…段差面 360…取付ねじ孔 380…ネジ溝 390…フランジ 400…レンズアッセンブリー 410…スリーブ 410A…前方開口 411、412…フランジ 413…レンズユニット挿入部 414…段差面 415…ネジ穴 420…レンズユニット 430…鏡筒 440…レンズ群 450…絞り 500…移動機構 510…ロッド 520…ロッドヘッド 521…頭部 521a…前面 521b…後面 530…ロッドガイド 531…基部 531b…後面 532…突出部 533…フランジ 540…圧縮コイルばね 550…送り装置 550A…マイクロメーターヘッド 551…スピンドル 552…スリーブ 553…シンブル 554…ラチェットストップ 557…送りねじガイド 558…送りねじシャフト 559…圧縮コイルばね 600…撮像素子 710…第1回路基板 720…第2回路基板 730…ICチップ 800…レセプタクル群 810…レセプタクル 820…レセプタクル 900…レンズカバー B1、B2、B4…ネジ B3…イモネジ C…基準面 D…離間距離 F…力 H…貫通孔 J1、J2…中心軸 L…光軸 LL…光軸方向 P1、P2、P3…螺合部 θ…傾斜角
図1
図2
図3
図4
図5
図6