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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022150994
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】電動圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/12 20060101AFI20220929BHJP
   F04B 39/00 20060101ALI20220929BHJP
   F04C 29/00 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
F04B39/12 G
F04B39/00 106B
F04B39/00 102Q
F04C29/00 T
F04C29/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021053849
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】深谷 美博
(72)【発明者】
【氏名】中野 泰明
(72)【発明者】
【氏名】椿井 慎治
【テーマコード(参考)】
3H003
3H129
【Fターム(参考)】
3H003AA01
3H003AB06
3H003AC03
3H003BB06
3H003CD01
3H003CF03
3H129AA01
3H129AA16
3H129AB03
3H129BB21
3H129BB32
3H129CC09
3H129CC27
(57)【要約】
【課題】大型化を抑制しつつワイヤハーネスを容易に固定することができる電動圧縮機を提供する。
【解決手段】圧縮部20と電動モータ30とインバータ装置40と筐体50とワイヤハーネス60,61を備える。筐体50には、車両取付ブラケット100に締結される取付足51,52が設けられている。取付足51,52には、車両取付ブラケット100への締結と併せてワイヤハーネス固定ブラケット90及びクランプ装置97,98が取り付けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮部と、
前記圧縮部を圧縮動作させる電動モータと、
前記電動モータを駆動するインバータ装置と、
前記圧縮部と前記電動モータと前記インバータ装置を収容する筐体と、
前記インバータ装置に繋がるワイヤハーネスと、
を備え、
前記筐体には、前記筐体の取付位置を決めるための被取付部材に締結される取付足が設けられ、
前記取付足には、前記被取付部材への締結と併せて、前記ワイヤハーネスを把持する支持部材が取り付けられていることを特徴とする電動圧縮機。
【請求項2】
前記取付足は柱状であり、前記取付足の一端部には第1の雌ねじ部が設けられ、前記取付足の他端部には第2の雌ねじ部が設けられ、前記第1の雌ねじ部に対して第1のボルトを螺合して前記被取付部材を締結し、前記第2の雌ねじ部に対して第2のボルトを螺合して前記支持部材を締結していることを特徴とする請求項1に記載の電動圧縮機。
【請求項3】
前記取付足は柱状であり、前記取付足の一端部には第1の雄ねじ部が設けられ、前記取付足の他端部には第2の雄ねじ部が設けられ、前記第1の雄ねじ部に対して第1のナットを螺合して前記被取付部材を締結し、前記第2の雄ねじ部に対して第2のナットを螺合して前記支持部材を締結していることを特徴とする請求項1に記載の電動圧縮機。
【請求項4】
前記第1のボルトと前記第2のボルトとは、同軸上に締結されていることを特徴とする請求項2に記載の電動圧縮機。
【請求項5】
前記第1の雄ねじ部と前記第2の雄ねじ部とは、同軸上に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の電動圧縮機。
【請求項6】
前記取付足は柱状であり、前記取付足には一端から他端にかけて貫通する貫通孔が設けられ、前記被取付部材及び前記支持部材のうち一方には前記貫通孔を貫通するスタッドボルトが植付けられ、前記スタッドボルトに対してナットを螺合して、前記取付足に対して前記被取付部材及び前記支持部材のうち一方を締結するとともに、前記取付足と前記ナットとの間に前記被取付部材及び前記支持部材のうち他方を取り付けていることを特徴とする請求項1に記載の電動圧縮機。
【請求項7】
前記取付足と前記被取付部材との間には防振部材が介在していることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の電動圧縮機。
【請求項8】
前記取付足は前記筐体に対して複数設けられ、前記支持部材は複数の前記取付足に取り付けられる複数の取付足を有することを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の電動圧縮機。
【請求項9】
前記取付足は前記筐体に対して複数設けられ、前記被取付部材はブラケットであり、前記ブラケットは複数の前記取付足に固定される複数の締結部を有することを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の電動圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動圧縮機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
圧縮機において、筐体に設けた取付足を車体側に締結することにより取り付けることが行われている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-67037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電動モータを駆動するインバータ装置を、圧縮部及び電動モータと共に一体化した電動圧縮機において、インバータ装置に繋がるワイヤハーネスはベルト駆動式圧縮機に用いられるワイヤハーネスに比べて太くなる。この太いワイヤハーネス専用の座を筐体に設けようとすると、その座自身も大きくなり、電動圧縮機全体としても大型化につながる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための電動圧縮機は、圧縮部と、前記圧縮部を圧縮動作させる電動モータと、前記電動モータを駆動するインバータ装置と、前記圧縮部と前記電動モータと前記インバータ装置を収容する筐体と、前記インバータ装置に繋がるワイヤハーネスと、を備え、前記筐体には、前記筐体の取付位置を決めるための被取付部材に締結される取付足が設けられ、前記取付足には、前記被取付部材への締結と併せて、前記ワイヤハーネスを把持する支持部材が取り付けられていることを要旨とする。
【0006】
これによれば、取付足に、ワイヤハーネスを把持する支持部材を取り付けることにより、ワイヤハーネス専用の座を筐体に別に設ける場合に比べ、電動圧縮機全体の大型化を抑制しつつワイヤハーネスを容易に固定することができる。
【0007】
また、電動圧縮機において、前記取付足は柱状であり、前記取付足の一端部には第1の雌ねじ部が設けられ、前記取付足の他端部には第2の雌ねじ部が設けられ、前記第1の雌ねじ部に対して第1のボルトを螺合して前記被取付部材を締結し、前記第2の雌ねじ部に対して第2のボルトを螺合して前記支持部材を締結しているとよい。
【0008】
また、電動圧縮機において、前記取付足は柱状であり、前記取付足の一端部には第1の雄ねじ部が設けられ、前記取付足の他端部には第2の雄ねじ部が設けられ、前記第1の雄ねじ部に対して第1のナットを螺合して前記被取付部材を締結し、前記第2の雄ねじ部に対して第2のナットを螺合して前記支持部材を締結しているとよい。
【0009】
また、電動圧縮機において、前記第1のボルトと前記第2のボルトとは、同軸上に締結されているとよい。
また、電動圧縮機において、前記第1の雄ねじ部と前記第2の雄ねじ部とは、同軸上に設けられているとよい。
【0010】
また、電動圧縮機において、前記取付足は柱状であり、前記取付足には一端から他端にかけて貫通する貫通孔が設けられ、前記被取付部材及び前記支持部材のうち一方には前記貫通孔を貫通するスタッドボルトが植付けられ、前記スタッドボルトに対してナットを螺合して、前記取付足に対して前記被取付部材及び前記支持部材のうち一方を締結するとともに、前記取付足と前記ナットとの間に前記被取付部材及び前記支持部材のうち他方を取り付けているとよい。この場合、一つのナットを締め付けるだけでよく、締結作業性が向上する。
【0011】
また、電動圧縮機において、前記取付足と前記被取付部材との間には防振部材が介在しているとよい。この場合、筐体に設けられた取付足と被取付部材との間には防振部材が介在されているので、ワイヤハーネスの振動を抑制することができる。
【0012】
また、電動圧縮機において、前記取付足は前記筐体に対して複数設けられ、前記支持部材は複数の前記取付足に取り付けられる複数の取付足を有するとよい。
また、電動圧縮機において、前記取付足は前記筐体に対して複数設けられ、前記被取付部材はブラケットであり、前記ブラケットは複数の前記取付足に固定される複数の締結部を有するとよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、大型化を抑制しつつワイヤハーネスを容易に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(a)は実施形態における電動圧縮機の平面図、(b)は(a)のA矢視図。
図2】(a)は図1(a)のB矢視図、(b)は図1(a)のC-C線での断面図。
図3】電動圧縮機の分解斜視図。
図4】(a)は別例の電動圧縮機の平面図、(b)は(a)のA矢視図。
図5】別例を説明するための図1(a)のC-C線に対応する部位での断面図。
図6】別例を説明するための図1(a)のC-C線に対応する部位での断面図。
図7】別例を説明するための図1(a)のC-C線に対応する部位での断面図。
図8】(a)は別例の電動圧縮機の平面図、(b)は(a)のD-D線での断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。本実施形態の電動圧縮機は、例えば電気自動車やハイブリッド自動車や燃料電池自動車に搭載されるものであって、流体としての冷媒を圧縮する圧縮部を備えており、車載用空調装置に用いられる。即ち、本実施形態における電動圧縮機の圧縮対象の流体は冷媒である。
【0016】
車載用空調装置は、電動圧縮機に対して流体としての冷媒を供給して、電動圧縮機において冷媒が圧縮された後、冷媒の熱交換及び膨張が行われることによって、車内の冷暖房を行う。車載用空調装置は、当該車載用空調装置の全体を制御する空調ECUを備え、空調ECUは、車内温度やカーエアコンの設定温度等を把握可能に構成されており、これらのパラメータに基づいて、電動圧縮機に対してON/OFF指令等といった各種指令を送信する。
【0017】
なお、図において、水平面を直交するX方向及びY方向で規定するとともに、水平面(X-Y平面)に直交する上下方向をZ方向で規定している。
図3に示すように、電動圧縮機10は、筐体50と高圧ワイヤハーネス60と低圧ワイヤハーネス61と防振部材70とワイヤハーネス固定ブラケット90と高圧ワイヤハーネス用クランプ装置97と低圧ワイヤハーネス用クランプ装置98を備える。ワイヤハーネス固定ブラケット90と高圧ワイヤハーネス用クランプ装置97と低圧ワイヤハーネス用クランプ装置98により、ワイヤハーネス60,61を把持する支持部材が構成されている。
【0018】
筐体50は、全体形状として円筒状をなしている。筐体50は、伝熱性を有する材料(例えばアルミニウム等の金属)で形成されている。筐体50内には内部空間が形成されている。
【0019】
図1(a)に示すように、電動圧縮機10は、圧縮部20と電動モータ30とインバータ装置40を備える。電動モータ30は、圧縮部20を圧縮動作させる。インバータ装置40は、電動モータ30を駆動する。筐体50は、圧縮部20と電動モータ30とインバータ装置40を収容する。つまり、本実施形態における電動圧縮機10は、インバータ装置40が一体化された電動圧縮機である。円筒状の筐体50の軸線がX方向に延び、筐体50内において一端側に圧縮部20が配置されているとともに他端側にインバータ装置40が配置されている。圧縮部20の具体的な構成は、スクロールタイプ、ピストンタイプ、ベーンタイプ等任意である。図示しない吸入口から冷媒が筐体50内に吸入される。筐体50には、冷媒が吐出される吐出口50aが形成されている。筐体50内に回転軸Shが配置されている。回転軸Shは、筐体50に対して回転可能な状態で支持されている。回転軸Shと圧縮部20とは連結されている。圧縮部20は回転軸Shが回転することによって、吸入口から筐体50内に吸入された冷媒を圧縮し、その圧縮された冷媒を吐出口50aから吐出させる。
【0020】
電動モータ30は、筐体50内における圧縮部20と隣接して配置されている。電動モータ30は、筐体50内の回転軸Shを回転させることにより、圧縮部20を駆動させる。電動モータ30は、例えば回転軸Shに対して固定された円筒形状のロータと、筐体50に固定されたステータとを有する。ステータは、円筒形状のステータコアと、ステータコアに形成されたティースに捲回されたコイルとを有している。ロータ及びステータは、回転軸Shの径方向に対向している。コイルが通電されることによりロータ及び回転軸Shが回転し、圧縮部20による冷媒の圧縮が行われる。
【0021】
インバータ装置40は、例えばインバータ回路と制御部を備えている。インバータ回路は、直流電力を交流電力に変換するためのものである。詳しくは、インバータ回路は複数のスイッチング素子を有し、制御部によってスイッチング素子がオンオフ制御されることにより直流電源としての高圧バッテリからの直流電力を交流電力に変換して電動モータ30に供給する。車両に搭載された高圧バッテリは例えば400Vバッテリである。制御部は空調ECUからの指令に基づいてスイッチング素子をオンオフ制御する。
【0022】
図1(a)、図1(b)、図2(a)、図2(b)、図3に示すように、高圧ワイヤハーネス60は、高圧(例えば400V)の電力線であり、車両側機器としての高圧バッテリ(例えば400Vバッテリ)からインバータ装置40に繋がる。低圧ワイヤハーネス61は、低圧(例えば12V)の電力線及び信号線であり、車両側機器としての低圧バッテリ(例えば12Vバッテリ)及び空調ECUからインバータ装置40に繋がる。
【0023】
高圧ワイヤハーネス60は、モータ駆動用電力である高圧(例えば400V)用の正負のラインよりなる。高圧ワイヤハーネス60は、一端に高圧コネクタ62を有する。インバータ装置40には相手側高圧コネクタ41が設けられている。コネクタ62,41は、雄雌一対のコネクタであって、高圧コネクタ62と相手側高圧コネクタ41とが着脱可能となっている。
【0024】
低圧ワイヤハーネス61は、低圧(例えば12V)供給用の正負のライン、及び信号伝達用の信号線よりなる。低圧ワイヤハーネス61は、一端に低圧コネクタ63を有する。インバータ装置40には相手側低圧コネクタ42が設けられている。コネクタ63,42は、雄雌一対のコネクタであって、低圧コネクタ63と相手側低圧コネクタ42とが着脱可能となっている。
【0025】
筐体50には水平方向に延びる4本の取付足51,52,53,54が設けられている。取付足51,52,53,54は柱状である。筐体50におけるX方向での同一位置において取付足51,52がY方向において互いに逆方向に延びている。筐体50における取付足51,52に対しX方向に離間する位置において取付足53,54がY方向において互いに逆方向に延びている。取付足51,52は、軸線がX方向に延びる筐体50における圧縮部20側に設けられている。取付足53,54は、軸線がX方向に延びる筐体50におけるインバータ装置40側に設けられている。取付足51,52,53,54は、筐体50の取付位置を決めるための被取付部材としての車両取付ブラケット100,110に締結される。
【0026】
取付足51,52には、上下方向(Z方向)に貫通する貫通孔55が、それぞれ設けられている。図2(b)に示すように、貫通孔55の下端側、即ち、取付足51,52の一端部が第1の雌ねじ部55aとなっている。貫通孔55の上端側、即ち、取付足51,52の他端部が第2の雌ねじ部55bとなっている。第1の雌ねじ部55aと第2の雌ねじ部55bとは同軸上に形成されている。
【0027】
図3に示すように、取付足53,54の下面には、上下方向(Z方向)に延びる雌ねじ孔56が、それぞれ設けられている。
取付足51,52には、ワイヤハーネス60,61を把持する支持部材としてのワイヤハーネス固定ブラケット90及びクランプ装置97,98が取り付けられている。取付足51,52には、車両取付ブラケット100への締結と併せて、ワイヤハーネス固定ブラケット90及びクランプ装置97,98が取り付けられている。
【0028】
取付足51,52が車両取付ブラケット100に締結されるとともに取付足53,54が車両取付ブラケット110に締結される。車両取付ブラケット100は、帯状の金属板を屈曲形成することにより構成されている。車両取付ブラケット100は、中央の水平部101と、その両側の上方において離間して位置する水平部102,103と、水平部101と水平部102とを繋ぐ斜状部104と、水平部101と水平部103とを繋ぐ斜状部105を有する。水平部102,103には貫通孔106がそれぞれ形成されている。
【0029】
車両取付ブラケット110は、帯状の金属板を屈曲形成することにより構成されている。車両取付ブラケット110は、中央の水平部111と、その両側の上方において離間して位置する水平部112,113と、水平部111と水平部112とを繋ぐ斜状部114と、水平部111と水平部113とを繋ぐ斜状部115を有する。水平部112,113には貫通孔116がそれぞれ形成されている。
【0030】
防振部材70は、主に電動モータ30で発生する振動を抑えるためのものである。防振部材70は、例えば防振ゴムである。防振部材70は、他にもワッシャを積層して構成してもよい。防振部材70には貫通孔71が形成されている。防振部材70は、筐体50に設けられた取付足51,52,53,54と車両取付ブラケット100,110との間に介在している。つまり、インバータ装置一体型の電動圧縮機が防振部材70を介して車両取付ブラケット100,110に取り付けられている。
【0031】
第1のボルトとしての4つの車両取付ボルト80が、下側から車両取付ブラケット100の貫通孔106と防振部材70の貫通孔71を通して取付足51,52の第1の雌ねじ部55aに螺合している。これにより、取付足51,52に車両取付ブラケット100を締結している。車両取付ボルト80が、下側から車両取付ブラケット110の貫通孔116と防振部材70の貫通孔71を通して取付足53,54の雌ねじ孔56に螺合している。これにより、取付足53,54に車両取付ブラケット110を締結している。
【0032】
ワイヤハーネス固定ブラケット90は、帯状の金属板を屈曲形成することにより構成されている。ワイヤハーネス固定ブラケット90は、中央の水平部91と、その両側の下方において離間して位置する水平部92,93と、水平部91と水平部92とを繋ぐ斜状部94と、水平部91と水平部93とを繋ぐ斜状部95を有する。水平部92,93には貫通孔96がそれぞれ形成されている。
【0033】
第2のボルトとしての2つのワイヤハーネス固定部材用ボルト81が、上側からワイヤハーネス固定ブラケット90の貫通孔96を通して取付足51,52の第2の雌ねじ部55bに螺合している。これにより、取付足51,52にワイヤハーネス固定ブラケット90を締結している。
【0034】
車両取付ボルト80とワイヤハーネス固定部材用ボルト81とは、同軸上に締結されている。
取付足は筐体50に対し複数設けられ、ワイヤハーネス固定ブラケット90は、複数の取付足51,52に取り付けられる複数の取付足としての水平部92,93を有する構成となっている。また、取付足は筐体50に対して複数設けられ、車両取付ブラケット100は車両に取り付けられるブラケットであり、ブラケット100は、複数の取付足51,52に固定される複数の締結部としての水平部102,103を有する構成となっている。
【0035】
車両取付ブラケット100と防振部材70と取付足51とワイヤハーネス固定ブラケット90とが、同軸上において、ねじ締結されている。また、車両取付ブラケット100と防振部材70と取付足52とワイヤハーネス固定ブラケット90とが、同軸上において、ねじ締結されている。
【0036】
車両取付ブラケット100と防振部材70と取付足51,52とワイヤハーネス固定ブラケット90とが、取付足51,52の雌ねじ部55a,55bに対し取付足51,52の両側からボルト締結されている。
【0037】
ワイヤハーネス固定ブラケット90の中央部の水平部91には高圧ワイヤハーネス用クランプ装置97及び低圧ワイヤハーネス用クランプ装置98が設けられている。高圧ワイヤハーネス用クランプ装置97において高圧ワイヤハーネス60が支持(クランプ)される。また、低圧ワイヤハーネス用クランプ装置98において低圧ワイヤハーネス61が支持(クランプ)される。
【0038】
次に、作用について説明する。
電動圧縮機10を車両へ取り付ける際に固定する順番は次のとおりである。
車両取付ボルト80を、車両取付ブラケット100,110の貫通孔106,116、防振部材70の貫通孔71を通して取付足51,52,53,54の第1の雌ねじ部55a及び雌ねじ孔56に螺入する。次に、高圧ワイヤハーネス60の一端の高圧コネクタ62をインバータ装置40の相手側高圧コネクタ41に嵌め込む。また、低圧ワイヤハーネス61の一端の低圧コネクタ63をインバータ装置40の相手側低圧コネクタ42に嵌め込む。
【0039】
引き続き、ワイヤハーネス固定部材用ボルト81を、ワイヤハーネス固定ブラケット90の貫通孔96を通して取付足51,52の第2の雌ねじ部55bに螺入する。
さらに、ワイヤハーネス60をクランプ装置97で支持する。また、ワイヤハーネス61をクランプ装置98で支持する。
【0040】
以上により、電動圧縮機10が車両に組付けられる。
従来、電動圧縮機を車両側に取り付ける際には、電動圧縮機を車両に取り付け後にワイハーネスの一端をインバータ装置に繋ぎ、その後にワイヤハーネスの他端側を遊びを付けた状態で筐体に止める。このとき、電動圧縮機を取付足側から車両に向かう方向にボルト締結される。この場合、ワイヤハーネスの弛み防止や作業性の観点から、ワイヤハーネス固定より先に電動圧縮機本体を車両に取り付ける必要があり、ワイヤハーネス固定用の座を別に設ける必要があった。
【0041】
また、ワイヤハーネスの固定座を取付足から離れた場所に設けた場合、ワイヤハーネスの振動位相が電動圧縮機本体とずれたり、相対的な振動値が変化することでコネクタ部に過大な力が作用する懸念がある。
【0042】
また、電動圧縮機を防振部材を介して車両側に取り付けた場合には、インバータ装置にコネクタを介して駆動用電力や信号を伝えるためにワイヤハーネスが取り付けられる。ワイヤハーネスが電動圧縮機や車両の振動によって揺れた際にコネクタ部に過大な力が作用しないようにする必要がある。そのため、電動圧縮機の筐体にワイヤハーネス固定用の座を設け、そこにワイヤハーネスを固定することが一般的である。
【0043】
本実施形態では、取付足51,52及び防振部材70と同軸上にワイヤハーネス固定ブラケット90を固定する。こうすることで、ワイヤハーネス60,61の振動を抑制するとともに電動圧縮機本体の振動と同期・一致させてコネクタ41,42,62,63に無理な力が作用するのを防止することができる。また、既存の取付足51,52に第1の雌ねじ部55a及び第2の雌ねじ部55bを設け、取付足51,52に対し下側から車両取付ボルト80を螺入するとともに上側からワイヤハーネス固定部材用ボルト81を螺入する。このように、取付足51,52の両側からボルト締結できるようにすることでワイヤハーネス固定用の座を別に設ける必要がなくなる。
【0044】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)電動圧縮機10の構成として、圧縮部20と、圧縮部20を圧縮動作させる電動モータ30と、電動モータ30を駆動するインバータ装置40を備える。電動圧縮機10は、圧縮部20と電動モータ30とインバータ装置40を収容する筐体50と、インバータ装置40に繋がるワイヤハーネス60,61を備える。筐体50には、筐体50の取付位置を決めるための被取付部材としての車両取付ブラケット100に締結される取付足51,52が設けられている。取付足51,52には、車両取付ブラケット100への締結と併せて、ワイヤハーネス60,61を把持する支持部材としてのワイヤハーネス固定ブラケット90及びクランプ装置97,98が取り付けられている。
【0045】
例えば、電気自動車に搭載されるインバータ一体型電動圧縮機においては、インバータ装置に繋がるワイヤハーネスは太い。太いワイヤハーネス専用の座を筐体に設けようとすると、その座自身も大きくなり、電動圧縮機全体としても大型化につながる。これに対し本実施形態では、既存の取付足51,52に、ワイヤハーネス60,61を把持する支持部材(ワイヤハーネス固定ブラケット90及びクランプ装置97,98)が取り付けられる。この構成により、ワイヤハーネス専用の座を筐体に別に設ける場合に比べ、電動圧縮機全体の大型化を抑制しつつワイヤハーネスを容易に固定することができる。
【0046】
(2)取付足51,52は柱状であり、取付足51,52の一端部には第1の雌ねじ部55aが設けられ、取付足51,52の他端部には第2の雌ねじ部55bが設けられている。第1の雌ねじ部55aに対して第1のボルトとしての車両取付ボルト80を螺合して車両取付ブラケット100を締結している。第2の雌ねじ部55bに対して第2のボルトとしてのワイヤハーネス固定部材用ボルト81を螺合してワイヤハーネス固定ブラケット90を締結している。よって、取付足51,52の両側からのボルト締結によりワイヤハーネス固定ブラケット90を固定することができる。
【0047】
(3)車両取付ボルト80とワイヤハーネス固定部材用ボルト81とは、同軸上に締結されている。よって、ワイヤハーネス固定ブラケット90を安定して固定することができる。
【0048】
(4)取付足51,52と車両取付ブラケット100との間には防振部材70が介在している。よって、筐体50に設けられた取付足51,52と車両取付ブラケット100との間には防振部材70が介在されているので、ワイヤハーネス60,61の振動を抑制することができる。
【0049】
また、防振部材70の近くにワイヤハーネスの固定部材が位置することによりワイヤハーネスのクランプ装置に振動による負荷が加わりにくくなり、信頼性が向上する。特に、取付足51,52及び防振部材70と同軸上にワイヤハーネス固定ブラケット90を固定する。こうすることにより、ワイヤハーネス60,61の振動を抑制するとともに電動圧縮機本体の振動と同期・一致させてワイヤハーネス60,61とインバータ装置40を繋ぐコネクタ41,42,62,63に無理な力が作用するのを防止することができる。
【0050】
(5)取付足は筐体50に対して複数(51,52)設けられ、ワイヤハーネス固定ブラケット90は複数の取付足51,52に取り付けられる複数の取付足としての水平部92,93を有する。よって、ワイヤハーネス固定位置を取付足51,52と別の位置とすることができ、ワイヤハーネス配索の自由度が上がる。
【0051】
(6)取付足は筐体50に対して複数(51,52)設けられ、車両取付ブラケット100は、車両に取り付けられるブラケットであり、ブラケット100は複数の取付足51,52に固定される複数の締結部としての水平部102,103を有する。よって、電動圧縮機10の筐体50を安定して固定することができる。
【0052】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
図4(a)、図4(b)に示すように、ワイヤハーネス60,61を把持する支持部材としてのクランプ装置99を1本の取付足51に取り付けるようにしてもよい。この場合においても、取付足51及び防振部材70と同軸上にワイヤハーネスクランプ装置99を設ける。こうすることで、ワイヤハーネス60,61の振動を抑制するとともに電動圧縮機本体の振動と同期・一致させてワイヤハーネスのコネクタ部に無理な力が作用することを防止することができる。また、筐体50にワイヤハーネス固定用の座を別に設ける必要がなくなる。
【0053】
図5に示すように、両側に雄ねじ部を有するスタッドボルト120における一方の雄ねじ部を車両取付ブラケット100にねじ込むことにより車両取付ブラケット100側からスタッドボルト120を立てる。一方、取付足51,52には貫通孔57を形成する。車両取付ブラケット100に植込んだスタッドボルト120に対し、防振部材70の貫通孔71と取付足51,52の貫通孔57とワイヤハーネス固定ブラケット90の貫通孔96を通してワイヤハーネス固定ブラケット90側からナット121で共締めする。即ち、車両取付ブラケット100に植込んだスタッドボルト120に対し、防振部材70と取付足51,52とワイヤハーネス固定ブラケット90を貫通する状態でナット121を螺合する。
【0054】
このように、取付足51,52は柱状であり、取付足51,52には一端から他端にかけて貫通する貫通孔57が設けられ、被取付部材としての車両取付ブラケット100には貫通孔57を貫通するスタッドボルト120が植付けられている。スタッドボルト120に対してナット121を螺合して、取付足51,52に対して車両取付ブラケット100を締結するとともに、取付足51,52とナット121との間に支持部材を構成するワイヤハーネス固定ブラケット90を取り付けている。
【0055】
この場合、一つのナットを締め付けるだけでよく、締結作業性が向上する。即ち、一方向からの作業で済む。また、電動圧縮機の取付足51,52にねじを切る必要がなくなる。なお、スタッドボルト120はブラケット100に貫通していなくてもよい。
【0056】
また、スタッドボルト120は車両取付ブラケット100ではなく、ワイヤハーネス固定ブラケット90に立ててもよい。図6を用いて説明する。図6に示すように、両側に雄ねじ部を有するスタッドボルト130における一方の雄ねじ部をワイヤハーネス固定ブラケット90にねじ込むことによりワイヤハーネス固定ブラケット90側からスタッドボルト130を立てる。一方、取付足51,52には貫通孔57を形成する。ワイヤハーネス固定ブラケット90に植込んだスタッドボルト130に対し、取付足51,52の貫通孔57と防振部材70の貫通孔71と車両取付ブラケット100の貫通孔106を通して車両取付ブラケット100側からナット131で共締めする。即ち、ワイヤハーネス固定ブラケット90に植込んだスタッドボルト130に対し、取付足51,52と防振部材70と車両取付ブラケット100を貫通する状態でナット131を螺合する。このように、取付足51,52は柱状であり、取付足51,52には一端から他端にかけて貫通する貫通孔57が設けられ、支持部材を構成するワイヤハーネス固定ブラケット90には貫通孔57を貫通するスタッドボルト130が植付けられている。スタッドボルト130に対してナット131を螺合して、取付足51,52に対してワイヤハーネス固定ブラケット90を締結するとともに、取付足51,52とナット131との間に被取付部材としての車両取付ブラケット100を取り付けるようにしてもよい。
【0057】
図7に示すように、第1の雄ねじ部141及び第2の雄ねじ部142を有するスタッドボルト140を取付足51,52から立ててもよい。この場合、例えば、スタッドボルト140を第1ボルトB1と第2ボルトB2で構成するとともに、取付足51,52の両端に雌ねじ部150,151を設けるようにしてもよい。一端側の雌ねじ部150に第1の雄ねじ部141を有する第1ボルトB1を立てるとともに、他端側の雌ねじ部151に第2の雄ねじ部142を有する第2ボルトB2を立てる。スタッドボルト140の一端側の第1ボルトB1を防振部材70の貫通孔71と車両取付ブラケット100の貫通孔106に通すとともに第1のナット143で共締めする。スタッドボルト140の他端側の第2ボルトB2をワイヤハーネス固定ブラケット90の貫通孔96に通すとともに第2のナット144で締結する。
【0058】
このように、取付足51,52は柱状である。取付足51,52の一端部には第1の雄ねじ部141が設けられ、取付足51,52の他端部には第2の雄ねじ部142が設けられている。第1の雄ねじ部141に対して第1のナット143を螺合して被取付部材としての車両取付ブラケット100を締結する。第2の雄ねじ部142に対して第2のナット144を螺合して支持部材を構成するワイヤハーネス固定ブラケット90を締結する。第1の雄ねじ部141と第2の雄ねじ部142とは、同軸上に設けられている。
【0059】
図1(a)、図2(b)で示したように車両取付ブラケット100と防振部材70と取付足51,52とワイヤハーネス固定ブラケット90とを同軸上においてねじ締結した。これに代わり、図8(a)、図8(b)に示すようにしてもよい。図8(a)、図8(b)において、取付足51,52は雌ねじ孔58及び雌ねじ孔59がずれて形成されている。取付足51,52の雌ねじ孔58に車両取付ボルト80を、車両取付ブラケット100と防振部材70を貫通する状態で螺合する。取付足51,52の雌ねじ孔59にワイヤハーネス固定部材用ボルト81を、ワイヤハーネス固定ブラケット90を貫通する状態で螺合する。これにより、車両取付ブラケット100と防振部材70と取付足51,52とワイヤハーネス固定ブラケット90とを、ずれた位置においてねじ締結した構成とする。
【0060】
図8(a)、図8(b)の構成に比べ図1(a)、図2(b)の構成では、1つの貫通孔に形成した雌ねじ部で車両取付ブラケット100とワイヤハーネス固定ブラケット90を固定することができる。
【0061】
・取付足に対しブラケットをねじ締結したが、これに限らない。ねじ締結に代わり、例えば、リベットでかしめる等で締結してもよい。
・ワイヤハーネス60及びワイヤハーネス61を取付足51,52に取り付けたが、ワイヤハーネス60のみ、もしくは、ワイヤハーネス61のみを取付足51,52に取り付けてもよい。
【0062】
・筐体50に取付足を4つ設けたが、取付足は4つ以外にも、1つでも、2つでも、3つでも、5つ以上であってもよい。
・車両取付ブラケット100は車両に取り付けられるブラケットとしたが、例えば、車両のボディ(車体)や車両に搭載されたエンジンや主機モータの筐体等に取り付けられてもよい。
【符号の説明】
【0063】
10…電動圧縮機、20…圧縮部、30…電動モータ、40…インバータ装置、50…筐体、51,52…取付足、55a…第1の雌ねじ部、55b…第2の雌ねじ部、57…貫通孔、60…高圧ワイヤハーネス、61…低圧ワイヤハーネス、70…防振部材、80…車両取付ボルト(第1のボルト)、81…ワイヤハーネス固定部材用ボルト(第2のボルト)、90…ワイヤハーネス固定ブラケット(支持部材)、92,93…水平部(取付足)、97,98…クランプ装置(支持部材)、99…クランプ装置(支持部材)、100…車両取付ブラケット(被取付部材)、102,103…水平部(締結部)、120…スタッドボルト、121…ナット、130…スタッドボルト、131…ナット、141…第1の雄ねじ部、142…第2の雄ねじ部、143…第1のナット、144…第2のナット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8