IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士通セミコンダクターメモリソリューション株式会社の特許一覧

特開2022-150998半導体記憶装置及び半導体記憶装置の制御方法
<>
  • 特開-半導体記憶装置及び半導体記憶装置の制御方法 図1
  • 特開-半導体記憶装置及び半導体記憶装置の制御方法 図2
  • 特開-半導体記憶装置及び半導体記憶装置の制御方法 図3
  • 特開-半導体記憶装置及び半導体記憶装置の制御方法 図4
  • 特開-半導体記憶装置及び半導体記憶装置の制御方法 図5
  • 特開-半導体記憶装置及び半導体記憶装置の制御方法 図6
  • 特開-半導体記憶装置及び半導体記憶装置の制御方法 図7
  • 特開-半導体記憶装置及び半導体記憶装置の制御方法 図8
  • 特開-半導体記憶装置及び半導体記憶装置の制御方法 図9
  • 特開-半導体記憶装置及び半導体記憶装置の制御方法 図10
  • 特開-半導体記憶装置及び半導体記憶装置の制御方法 図11
  • 特開-半導体記憶装置及び半導体記憶装置の制御方法 図12
  • 特開-半導体記憶装置及び半導体記憶装置の制御方法 図13
  • 特開-半導体記憶装置及び半導体記憶装置の制御方法 図14
  • 特開-半導体記憶装置及び半導体記憶装置の制御方法 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022150998
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】半導体記憶装置及び半導体記憶装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   G11C 11/22 20060101AFI20220929BHJP
   G11C 29/24 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
G11C11/22 270
G11C11/22 240
G11C29/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021053855
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】520233375
【氏名又は名称】富士通セミコンダクターメモリソリューション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002918
【氏名又は名称】特許業務法人扶桑国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山根 和章
【テーマコード(参考)】
5L206
【Fターム(参考)】
5L206AA28
5L206DD11
5L206DD25
5L206DD33
5L206DD45
5L206DD50
5L206FF08
5L206HH11
(57)【要約】
【課題】強誘電体メモリセルを用いた半導体記憶装置の製品寿命を長寿命化する。
【解決手段】半導体記憶装置10が起動するたび、処理回路12は、第2メモリ領域11a2と、第3メモリ領域11a3からデータの読み出しを行い不良が発生しているか否かを判定するとともに、第3メモリ領域11a3に、第1メモリ領域11a1及び第2メモリ領域11a2に対する書き込み強度よりも低い書き込み強度で書き戻しを行う、起動時処理を行い、起動時処理の後、第1メモリ領域11a1に対するアクセスが発生するたびに第2メモリ領域11a2にデータを書き込み、書き込み強度調整回路13は、第2メモリ領域11a2で不良が発生していると判定された場合、第1メモリ領域11a1に対する書き込み強度を下げ、第3メモリ領域11a3で不良が発生していると判定された場合、第1メモリ領域11a1に対する書き込み強度を上げる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
強誘電体を用いた半導体記憶装置において、
複数の第1の強誘電体メモリセルを含む第1のメモリ領域と、
第2の強誘電体メモリセルを含む第2のメモリ領域と、
第3の強誘電体メモリセルを含む第3のメモリ領域と、
前記半導体記憶装置が起動するたびに、前記第2のメモリ領域から第1のデータの読み出しを行い第1の不良が発生しているか否かを判定し、前記第3のメモリ領域から第2のデータの読み出しを行い第2の不良が発生しているか否かを判定し、前記第3のメモリ領域に、前記第1のメモリ領域及び前記第2のメモリ領域に対する書き込み強度よりも低い書き込み強度で前記第2のデータを書き戻す、起動時処理を行い、前記起動時処理の後、前記第1のメモリ領域に対するアクセスが発生するたびに前記第2のメモリ領域に前記第1のデータを書き込む処理回路と、
前記処理回路が前記第1の不良が発生していると判定した場合、前記第1のメモリ領域に対する書き込み強度を下げ、前記処理回路が前記第2の不良が発生していると判定した場合、前記第1のメモリ領域に対する書き込み強度を上げる書き込み強度調整回路と、
を有する半導体記憶装置。
【請求項2】
前記処理回路は、前記半導体記憶装置が起動するたびに、前記第1のデータの読み出しを行う前に、前記第2のメモリ領域に対して前記第1のデータの書き込みを所定回数行う、請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項3】
前記処理回路によって、前記第1の不良と前記第2の不良の一方が発生していると判定された後、前記第1の不良と前記第2の不良の他方が発生したと判定された場合、前記書き込み強度調整回路は、前記他方に対応した書き込み強度の調整を行う、請求項1または2に記載の半導体記憶装置。
【請求項4】
前記処理回路に前記起動時処理を実行させるクロック信号を発生するクロック信号発生回路を、さらに有し、
前記クロック信号発生回路は、前記半導体記憶装置の電源がオンした場合と、前記クロック信号発生回路に外部制御信号が入力された場合に、前記クロック信号を発生する、
請求項1乃至3の何れか一項に記載の半導体記憶装置。
【請求項5】
前記第2のメモリ領域または前記第3のメモリ領域は、前記第2の強誘電体メモリセルまたは前記第3の強誘電体メモリセルを含む複数の強誘電体メモリセルを有し、
前記処理回路は、前記複数の強誘電体メモリセルのうち、前記第1のデータまたは前記第2のデータが正しく読み出されなかった強誘電体メモリセルの数が、前記第1のデータまたは前記第2のデータが正しく読み出された強誘電体メモリセルの数より多い場合に、前記第1の不良または前記第2の不良が発生していると判定する、
請求項1乃至4の何れか一項に記載の半導体記憶装置。
【請求項6】
前記処理回路によって前記第1の不良または前記第2の不良が発生していると判定された回数を記憶する第4のメモリ領域を有し、
前記書き込み強度調整回路は、前記第1の不良が発生していると判定された前記回数が多いほど前記第1のメモリ領域に対する書き込み強度を低くし、前記第2の不良が発生していると判定された前記回数が多いほど前記第1のメモリ領域に対する書き込み強度を高くする、
請求項1乃至5の何れか一項に記載の半導体記憶装置。
【請求項7】
劣化を検知する処理を行うか否かの設定を記憶する第5のメモリ領域を有し、
前記第5のメモリ領域に記憶されている前記設定が、前記劣化を検知する処理を行わないことを示す場合、前記処理回路は、前記起動時処理を行わない、
請求項1乃至6の何れか一項に記載の半導体記憶装置。
【請求項8】
強誘電体を用いた半導体記憶装置の制御方法において、
複数の第1の強誘電体メモリセルを含む第1のメモリ領域と、第2の強誘電体メモリセルを含む第2のメモリ領域と、第3の強誘電体メモリセルを含む第3のメモリ領域と、を含む前記半導体記憶装置が起動するたびに、処理回路が、前記第2のメモリ領域から第1のデータの読み出しを行い第1の不良が発生しているか否かを判定し、前記第3のメモリ領域から第2のデータの読み出しを行い第2の不良が発生しているか否かを判定し、前記第3のメモリ領域に、前記第1のメモリ領域及び前記第2のメモリ領域に対する書き込み強度よりも低い書き込み強度で前記第2のデータを書き戻す、起動時処理を行い、前記起動時処理の後、前記第1のメモリ領域に対するアクセスが発生するたびに前記第2のメモリ領域に前記第1のデータを書き込み、
書き込み強度調整回路が、前記処理回路が前記第1の不良が発生していると判定した場合、前記第1のメモリ領域に対する書き込み強度を下げ、前記処理回路が前記第2の不良が発生していると判定した場合、前記第1のメモリ領域に対する書き込み強度を上げる、
半導体記憶装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体記憶装置及び半導体記憶装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
強誘電体を用いた半導体記憶装置において、強誘電体キャパシタを含むメモリセルである強誘電体メモリセルは、強誘電体の分極状態によって“1”または“0”のデータを記憶する。
【0003】
強誘電体を用いた半導体記憶装置では、エンデュランス性能(書き換えに対する耐性)がよいことが望ましい。書き換え回数が多くなると、ファティーグ劣化により、強誘電体メモリセルに含まれる強誘電体のヒステリシス・ループ特性において分極量が減少し、“1”と“0”の読み出しマージンが減少し、半導体記憶装置の動作不良が発生する可能性があるためである。
【0004】
また、強誘電体を用いた半導体記憶装置では、リテンション性能(データ保持性能)がよいことが望ましい。強誘電体メモリセルにおいて同じデータを長期間保持したままの場合、インプリント劣化により、ヒステリシス・ループ特性がシフトし、上記の場合と同様に動作不良が発生する可能性があるためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-351373号公報
【特許文献2】特開2012-252758号公報
【特許文献3】特開2001-229698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、半導体記憶装置では、ファティーグ劣化によるエンデュランス性能の低下やインプリント劣化によるリテンション性能の低下によって製品寿命が短くなる可能性があった。
【0007】
半導体記憶装置の使い方は様々であり、頻繁に書き換える場合や、長時間書き換えない場合などがあり、エンデュランス性能とリテンション性能のどちらが重要となるかは使い方によって異なる。
【0008】
そこで、半導体記憶装置が両性能の何れを重視する用途で用いられるのかに応じて品種分けし、その用途に適した半導体記憶装置を設計することが考えられるが、幅広い用途で使用される汎用向けの半導体記憶装置の場合、各用途を想定して設計することは困難である。また、半導体記憶装置の出荷時のオプション切替や、バージョン分けのような細分化手段ではコストも増加してしまう。
【0009】
1つの側面では、本発明は、強誘電体メモリセルを用いた半導体記憶装置の製品寿命の長寿命化が可能な半導体記憶装置及び半導体記憶装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
1つの実施態様では、強誘電体を用いた半導体記憶装置において、複数の第1の強誘電体メモリセルを含む第1のメモリ領域と、第2の強誘電体メモリセルを含む第2のメモリ領域と、第3の強誘電体メモリセルを含む第3のメモリ領域と、前記半導体記憶装置が起動するたびに、前記第2のメモリ領域から第1のデータの読み出しを行い第1の不良が発生しているか否かを判定し、前記第3のメモリ領域から第2のデータの読み出しを行い第2の不良が発生しているか否かを判定し、前記第3のメモリ領域に、前記第1のメモリ領域及び前記第2のメモリ領域に対する書き込み強度よりも低い書き込み強度で前記第2のデータを書き戻す、起動時処理を行い、前記起動時処理の後、前記第1のメモリ領域に対するアクセスが発生するたびに前記第2のメモリ領域に前記第1のデータを書き込む処理回路と、前記処理回路が前記第1の不良が発生していると判定した場合、前記第1のメモリ領域に対する書き込み強度を下げ、前記処理回路が前記第2の不良が発生していると判定した場合、前記第1のメモリ領域に対する書き込み強度を上げる書き込み強度調整回路と、を有する半導体記憶装置が提供される。
【0011】
また、1つの実施態様では、半導体記憶装置の制御方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
1つの側面では、本発明は、強誘電体メモリセルを用いた半導体記憶装置の製品寿命の長寿命化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1の実施の形態の半導体記憶装置及びその制御方法の一例を示す図である。
図2】2種類の劣化の例を示す図である。
図3】第2の実施の形態の半導体記憶装置の一例を示す図である。
図4】強誘電体メモリセルアレイの一例を示す図である。
図5】クロック信号発生回路の一例を示す図である。
図6】電圧調整回路の一例を示す図である。
図7】タイミング回路に含まれる回路例を示す図である。
図8】第2の実施の形態の半導体記憶装置の制御方法の一例の流れを示すフローチャートである。
図9】起動時処理とメインメモリ動作の処理期間の例を示すタイミングチャートである。
図10】書き込み強度の調整結果の例を示す図である(その1)。
図11】書き込み強度の調整結果の例を示す図である(その2)。
図12】書き込み強度の調整結果の例を示す図である(その3)。
図13】書き込み強度の調整結果の例を示す図である(その4)。
図14】第3の実施の形態の半導体記憶装置の一例を示す図である。
図15】第4の実施の形態の半導体記憶装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、発明を実施するための形態を、図面を参照しつつ説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態の半導体記憶装置及びその制御方法の一例を示す図である。
【0015】
半導体記憶装置10は、メモリ領域部11、処理回路12、書き込み強度調整回路13を有する。
メモリ領域部11は、強誘電体メモリセルアレイ11aを有し、強誘電体メモリセルアレイ11aは、第1メモリ領域11a1、第2メモリ領域11a2、第3メモリ領域11a3を含む。
【0016】
第1メモリ領域11a1は、複数の強誘電体メモリセルを含んでおり、半導体記憶装置10のユーザが外部からアクセス可能なユーザ領域として機能する。
第2メモリ領域11a2は、1または複数の強誘電体メモリセルを含む。第2メモリ領域11a2は、後述のように、ファティーグ劣化が検知されやすくなるように多数回の書き込みが行われる領域である。つまり、第2メモリ領域11a2は、ファティーグ劣化を検知するためのモニタ(以下ファティーグモニタという)として機能する。
【0017】
第3メモリ領域11a3は、1または複数の強誘電体メモリセルを含む。第3メモリ領域11a3は、後述のように、インプリント劣化が検知されやすくなるように、読み出しが行われた後に、第1メモリ領域11a1及び第2メモリ領域11a2に対する書込み強度よりも低い書き込み強度で所定のデータが書き戻される領域である。つまり、第3メモリ領域11a3は、インプリント劣化を検知するためのモニタ(以下インプリントモニタという)として機能する。
【0018】
強誘電体メモリセルアレイ11aに含まれる各強誘電体メモリセルは、後述のようにワード線、ビット線及びプレート線に接続されている(図4参照)。
なお、図示が省略されているが、メモリ領域部11は、入力されるアドレス、コマンドまたはライトデータに応じて、ワード線、ビット線またはプレート線を選択して所定の電圧を印加する構成(デコーダやドライバなど)や、センスアンプなどを含む。
【0019】
処理回路12は、半導体記憶装置10の電源がオンになり、半導体記憶装置10が起動するたびに、以下に示すような起動時処理を行う。なお、処理回路12は、起動時処理中における第1メモリ領域11a1への外部からのアクセスを制限する(たとえば、アクセスできないようにする、または待機させる)ようにしてもよい。
【0020】
処理回路12は、起動時処理において、第2メモリ領域11a2からデータの読み出しを行い不良が発生しているか否かを判定する。データは予め第2メモリ領域11a2に記憶されている。
【0021】
なお、処理回路12は、第2メモリ領域11a2のファティーグ劣化を加速させるために、所定のデータを所定回数書き込んだ後に上記の読み出しを行ってもよい。たとえば、処理回路12は、第2メモリ領域11a2の強誘電体メモリセルに、“1”を、100回書き込む。そして、処理回路12は、書き込みを行った強誘電体メモリセルの読み出しを行い、読み出したデータが“1”であるか否かを判定することにより不良が発生しているか否かを判定する。処理回路12は、読み出したデータが“1”の場合、不良が発生していないと判定し、読み出したデータが“0”の場合、不良が発生していると判定する。
【0022】
また、処理回路12は、起動時処理において、第3メモリ領域11a3に予め記憶されているデータの読み出しを行い不良が発生しているか否かを判定する。なお、強誘電体メモリセルからの読み出しは、データ破壊読み出しと呼ばれ、記憶されていたデータが失われるため、読み出し後に書き戻しが行われる。ここで、処理回路12は、第3メモリ領域11a3に、インプリント劣化を加速させるために第1メモリ領域11a1及び第2メモリ領域11a2に対する書き込み強度よりも低い書き込み強度で、同じデータの書き込み(書き戻し)を行う。
【0023】
たとえば、第3メモリ領域11a3のある強誘電体メモリセルに予め“1”が記憶されている場合、処理回路12は、その強誘電体メモリセルに対する読み出しを行う。そして、処理回路12は、読み出したデータが“1”であるか否かを判定することにより不良が発生しているか否かを判定する。処理回路12は、読み出したデータが“1”の場合、不良が発生していないと判定し、読み出したデータが“0”の場合、不良が発生していると判定する。また、処理回路12は、読み出しを行った強誘電体メモリセルに対して、第1メモリ領域11a1及び第2メモリ領域11a2に対する書き込み強度よりも低い書き込み強度で、“1”を書き戻す。
【0024】
処理回路12は、第2メモリ領域11a2、第3メモリ領域11a3のそれぞれについての不良が発生しているか否かの判定結果を示す信号を書き込み強度調整回路13に供給する。
【0025】
なお、第2メモリ領域11a2や第3メモリ領域11a3に書き込まれるデータは、1ビットのデータではなく、2ビット以上のデータであってもよい。
起動時処理の後、処理回路12は、第1メモリ領域11a1へのアクセスを制限している場合にはその制限を解除する。そして、処理回路12は、ライトアクセスやリードアクセスなど、第1メモリ領域11a1へのアクセスが発生するたびに、そのアクセスに同期して、第2メモリ領域11a2に上記と同じデータ(上記の例では“1”)を書き込む。これにより、第2メモリ領域11a2におけるファティーグ劣化を加速させることができる。
【0026】
以上のような処理回路12は、たとえば、セレクタと、上記不良が発生しているか否かを判定する論理回路などによって実現できる。たとえば、セレクタは、外部から供給されるアドレス信号やコマンド信号をメモリ領域部11に供給するか否かを選択することで、起動時処理を行うか、第1メモリ領域11a1に対する動作(通常メモリ動作)を行うかを切り替える。
【0027】
書き込み強度調整回路13は、起動時処理において処理回路12が、第2メモリ領域11a2において不良が発生していると判定した場合、第1メモリ領域11a1に対する書き込み強度を下げる。また、書き込み強度調整回路13は、起動時処理において処理回路12が、第3メモリ領域11a3において不良が発生していると判定した場合、第1メモリ領域11a1に対する書き込み強度を上げる。
【0028】
書き込み強度調整回路13は、たとえば、書き込み電圧を調整すること、また書き込み時間を調整すること、またはこれらの両方を調整することで書き込み強度を調整する。書き込み電圧を大きくする、または書き込み時間を長くすることで書き込み強度は上がり、書き込み電圧を小さくする、または書き込み時間を短くすることで書き込み強度は下がる。
【0029】
なお、書き込み強度調整回路13は、第1メモリ領域11a1、第2メモリ領域11a2、第3メモリ領域11a3のそれぞれに対する書き込み強度を表すパラメータを別々に保持するレジスタなどを有していてもよい。ただし、第1メモリ領域11a1と第2メモリ領域11a2に対する書き込み強度は同じであってもよい。その場合、保持されるパラメータは共通でよい。
【0030】
書き込み強度調整回路13は、たとえば、電圧調整回路(たとえば、降圧回路)や、各種のタイミング信号を発生させるタイミング回路により実現できる。
なお、半導体記憶装置10は、上記の要素の他に、半導体記憶装置10の電源がオンしたことを検知する回路として、パワーオンリセット回路を有していてもよい。また、半導体記憶装置10は、処理回路12が上記の起動時処理を実行するために用いるクロック信号を発生するクロック信号発生回路を有していてもよい。なお、このクロック信号発生回路は処理回路12内にあってもよい。
【0031】
図1には、半導体記憶装置10の制御方法の一例の流れを示すフローチャートが示されている。
半導体記憶装置10の電源がオンになると、起動時処理が行われる。
【0032】
起動時処理において、処理回路12は、第2メモリ領域11a2に対して所定のデータを所定回数書き込む(ステップS1)。
そして、処理回路12は、第2メモリ領域11a2と第3メモリ領域11a3からデータの読み出しを行う(ステップS2)。このとき、第3メモリ領域11a3に対しては、第1メモリ領域11a1及び第2メモリ領域11a2に対する書き込み強度よりも低い書き込み強度で書き戻しが行われる。なお、ステップS2の処理では、第2メモリ領域11a2と第3メモリ領域11a3の何れの読み出しを先に行ってもよい。
【0033】
処理回路12は、読み出し結果に基づいて、第2メモリ領域11a2、第3メモリ領域11a3の何れかにおいて不良が発生しているか否かを判定する(ステップS3)。
第2メモリ領域11a2、第3メモリ領域11a3の何れかにおいて不良が発生していると判定された場合、書き込み強度調整回路13は、第1メモリ領域11a1に対する書き込み強度を変更する(ステップS4)。ステップS4の処理では、第2メモリ領域11a2において不良が発生していると判定された場合、書き込み強度調整回路13は、第1メモリ領域11a1に対する書き込み強度を下げる。第3メモリ領域11a3において不良が発生していると判定された場合、書き込み強度調整回路13は、第1メモリ領域11a1に対する書き込み強度を上げる。
【0034】
処理回路12は、ステップS3の処理において、不良が発生していないと判定した場合、またはステップS4の処理後、起動時処理を終える。その後、処理回路12は、ユーザによる第1メモリ領域11a1へのアクセス(ライトアクセスやリードアクセス)が発生するたびに、第2メモリ領域11a2へ書き込みを行う(ステップS5)。ステップS5の処理では、処理回路12は、ステップS1の処理において書き込んだデータと同じデータを、ステップS1の処理において書き込みを行った強誘電体メモリセルに書き込む。なお、処理回路12は、第1メモリ領域11a1へのアクセスが発生するたびに、ファティーグ劣化がより加速するように第2メモリ領域11a2へ複数回の書き込みを行うようにしてもよい。
【0035】
半導体記憶装置10は、上記のような処理を、電源がオンして起動するたびに行う。
なお、一度、第2メモリ領域11a2、第3メモリ領域11a3の何れかにおいて不良が発生していると判定された場合、上記の起動時処理や第1メモリ領域11a1へのアクセスが発生するたびに、第2メモリ領域11a2へ書き込みを行わなくてもよい。
【0036】
ただし、初めに第2メモリ領域11a2、第3メモリ領域11a3の一方において不良が発生し、その後、半導体記憶装置10の使用状況が変化するなどして、第2メモリ領域11a2、第3メモリ領域11a3の他方において不良が発生する場合がある。このような場合にも、上記の制御方法によれば、現在の使用状況に応じて書き込み強度が調整される。
【0037】
以上のような半導体記憶装置10及びその制御方法によれば、半導体記憶装置10の使用状況が反映された書き込み強度の調整が可能になり、製品寿命を長くすることができる。
【0038】
図2は、2種類の劣化の例を示す図である。
図2には、強誘電体メモリに含まれる強誘電体キャパシタのヒステリシス・ループ特性が示されている。横軸は電圧、縦軸は分極量を表す。図2に示すように、強誘電体キャパシタは、電圧が印加されていない場合に分極量が異なる2つの安定点をもち、正側の安定点が“0”、負側の安定点が“1”に対応する。
【0039】
書き込みが多数回繰り返されるような使用状況では、ファティーグ劣化により、図2に示すように分極量が減少し、“1”と“0”の読み出しマージンが減少する。
たとえば、半導体記憶装置10を、頻繁に読み書きが行われるキャッシュメモリなどとして用いる場合、このような使用状況となる。
【0040】
一方、同じデータを長期間保持するような使用状況では、インプリント劣化により、図2に示すようにヒステリシス・ループ特性がシフトし、同様に“1”と“0”の読み出しマージンが減少する。
【0041】
たとえば、半導体記憶装置10を、あまり読み書きが行われないBIOS(Basic Input/Output System)メモリなどとして用いる場合、このような使用状況となる。
書き込みが多数回繰り返される(ファティーグ劣化が起きやすい)使用状況では、半導体記憶装置10の第2メモリ領域11a2において不良が発生する可能性が高くなる。前述のように第2メモリ領域11a2において不良が発生したと判定された場合、書き込み強度調整回路13は、第1メモリ領域11a1に対する書き込み強度を下げるため、第1メモリ領域11a1では、ファティーグ劣化に対する耐性が上がる。これにより、エンデュランス性能が向上し、半導体記憶装置10がこの性能を重視するような製品に適用される場合に、製品寿命を長くすることができる。
【0042】
同じデータを長期間保持するような(インプリント劣化が起きやすい)使用状況では、半導体記憶装置10の第3メモリ領域11a3において不良が発生する可能性が高くなる。前述のように第3メモリ領域11a3において不良が発生したと判定された場合、書き込み強度調整回路13は、第1メモリ領域11a1に対する書き込み強度を上げるため、第1メモリ領域11a1では、インプリント劣化に対する耐性が上がる。これにより、リテンション性能が向上し、半導体記憶装置10がこの性能を重視するような製品に適用される場合に、製品寿命を長くすることができる。
【0043】
(第2の実施の形態)
図3は、第2の実施の形態の半導体記憶装置の一例を示す図である。
半導体記憶装置20は、メモリ領域部21、パワーオンリセット回路22、処理回路23,クロック信号発生回路24、電圧調整回路25を有する。
【0044】
メモリ領域部21は、強誘電体メモリセルアレイ21a、アドレスバッファ21b、コマンドバッファ21c、ロウデコーダ21d、タイミング回路21e、コラムデコーダ21f、ドライバ回路部21gを有する。さらにメモリ領域部21は、コラムスイッチ21h、センスアンプ21i、入出力回路21jを有する。
【0045】
強誘電体メモリセルアレイ21aは、マトリクス状に配置された複数のメモリセルと、複数のビット線、複数のワード線及び複数のプレート線を有する(後述の図4参照)。強誘電体メモリセルアレイ21aは、図1の第1メモリ領域11a1に対応するユーザ領域21a1、図1の第2メモリ領域11a2に対応するファティーグモニタ21a2、図1の第3メモリ領域11a3に対応するインプリントモニタ21a3を含む。
【0046】
アドレスバッファ21bは、処理回路23からアドレス信号を受信し、受信したアドレス信号を、ロウデコーダ21d及びコラムデコーダ21fに供給する。
コマンドバッファ21cは、処理回路23からコマンド信号(チップセレクト信号、ライトイネーブル信号、出力イネーブル信号など)を受信する。そして、コマンドバッファ21cは、受信したコマンド信号を、タイミング回路21eに供給する。
【0047】
ロウデコーダ21dは、アドレス信号に含まれるロウアドレス(たとえば、アドレス信号の上位側のビット)をデコードすることでロウデコード信号を生成し、生成したロウデコード信号をドライバ回路部21gに供給する。
【0048】
タイミング回路21eは、コマンド信号が示す動作モードをデコードする。そして、タイミング回路21eは、そのデコード結果に基づいて、ドライバ回路部21g、センスアンプ21iなどを動作させる各種のタイミング信号を生成し、各部に供給する。
【0049】
なお、タイミング回路21eは、図1の書き込み強度調整回路13としても機能し、処理回路23からの信号に基づいて、書き込み時間の調整を行う。
コラムデコーダ21fは、アドレス信号に含まれるコラムアドレス(たとえば、アドレス信号の下位側のビット)をデコードすることでコラムデコード信号を生成し、生成したコラムデコード信号をコラムスイッチ21hに供給する。
【0050】
ドライバ回路部21gは、複数のプレート線(図3では図示が省略されている)のうち、ロウデコード信号により指定されるプレート線に、タイミング信号に基づいたタイミングで、所定期間、所定の電圧を印加する。また、ドライバ回路部21gは、複数のワード線(図3では図示が省略されている)のうち、ロウデコード信号により指定されるワード線に、タイミング信号に基づいたタイミングで、所定期間、所定の電圧を印加する。
【0051】
コラムスイッチ21hは、コラムデコード信号に基づいて、強誘電体メモリセルアレイ21aの複数のビット線のうち、センスアンプ21iと入出力回路21jに接続するビット線を選択する。
【0052】
センスアンプ21iは、タイミング回路21eから供給される複数のタイミング信号に基づいたタイミングで、強誘電体メモリセルアレイ21aからのデータの読み出しを行う。
【0053】
入出力回路21jは、たとえば、処理回路23から供給されるライトデータを保持するライトバッファを含む。ライトバッファは、書き戻しのため、センスアンプ21iが読み出したデータを保持する機能も有する。
【0054】
また、入出力回路21jは、センスアンプ21iにより強誘電体メモリセルアレイ21aから読み出されたリードデータを保持する。リードデータは、たとえば、処理回路23に供給される。
【0055】
パワーオンリセット回路22は、半導体記憶装置20の電源がオンした場合(半導体記憶装置20に電源電圧VDD1が供給された場合)に、パワーオンリセット信号を出力する。
【0056】
処理回路23は、図1の処理回路12と同様の機能を有する。すなわち、処理回路23は、半導体記憶装置20の電源がオンし、半導体記憶装置20が起動するたびに、以下に示すような起動時処理を行う。
【0057】
なお、処理回路23は、パワーオンリセット回路22が出力するパワーオンリセット信号によって、半導体記憶装置20の電源がオンしたことを検知する。また、処理回路23は、起動時処理中は、ユーザ領域21a1へのユーザアクセスを制限する。たとえば、処理回路23は、半導体記憶装置20の図示しない外部端子を介して入力されたアドレス信号やコマンド信号が、アドレスバッファ21bやコマンドバッファ21cに供給されないようにする。
【0058】
処理回路23は、起動時処理において、ファティーグモニタ21a2に対して所定のデータを所定回数書き込む。この処理のため、処理回路23は、ファティーグモニタ21a2においてデータを書き込む強誘電体メモリセルを指定するアドレス信号をアドレスバッファ21bに送信するとともに、書き込みを実行するためのコマンド信号をコマンドバッファ21cに送信する。また、処理回路23は、ファティーグモニタ21a2に書き込むデータ(ライトデータ)を、入出力回路21jに供給する。
【0059】
そして、処理回路23は、上記の書き込み後、ファティーグモニタ21a2においてデータを書き込んだ強誘電体メモリセルを指定するアドレス信号をアドレスバッファ21bに送信するとともに、読み出しを実行するためのコマンド信号をコマンドバッファ21cに送信する。また、処理回路23は、ファティーグモニタ21a2から読み出されたデータ(リードデータ)を、入出力回路21jから取得する。
【0060】
そして、処理回路23は、リードデータがファティーグモニタ21a2に対するライトデータと一致しているか否かを判定することで、不良が発生しているか否かを判定する。
不良が発生していると判定した場合、処理回路23は、電圧調整回路25にメモリ領域部21に供給する電源電圧VDD2を降圧させる、またはタイミング回路21eに書き込み時間を短くさせる、またはこれらの両方を実行させる。これにより、起動時処理後のユーザ領域21a1に対する書き込み強度が下がる。
【0061】
また、処理回路23は、インプリントモニタ21a3に予め記憶されているデータの読み出しを行う。この処理のため、処理回路23は、インプリントモニタ21a3においてデータが記憶されている強誘電体メモリセルを指定するアドレス信号をアドレスバッファ21bに送信するとともに、読み出しを実行するためのコマンド信号をコマンドバッファ21cに送信する。また、処理回路23は、インプリントモニタ21a3から読み出されたデータ(リードデータ)を、入出力回路21jから取得する。
【0062】
また、処理回路23は、インプリントモニタ21a3に対して、インプリント劣化を加速させるためにユーザ領域21a1及びファティーグモニタ21a2に対する書き込み強度よりも低い書き込み強度で、同じデータの書き戻しを行う。この処理のため、処理回路23は、書き込みを実行するためのコマンド信号をコマンドバッファ21cに送信する。さらに、処理回路23は、電圧調整回路25にメモリ領域部21に供給する電源電圧VDD2を降圧させる、またはタイミング回路21eに書き込み時間を短くさせる、またはこれらの両方を実行させることで書き込み強度の調整が行われる。
【0063】
そして、処理回路23は、リードデータがインプリントモニタ21a3に予め記憶されているデータ(期待されているデータ)と一致しているか否かを判定することで、不良が発生しているか否かを判定する。
【0064】
不良が発生していると判定した場合、処理回路23は、電圧調整回路25にメモリ領域部21に供給する電源電圧VDD2を昇圧させる、またはタイミング回路21eに書き込み時間を長くさせる、またはこれらの両方を実行させる。これにより、起動時処理後のユーザ領域21a1に対する書き込み強度が上がる。
【0065】
起動時処理の後、処理回路23は、ユーザ領域21a1へのユーザアクセスの制限を解除する。そして、処理回路23は、ライトアクセスやリードアクセスなど、ユーザ領域21a1へのアクセスが発生するたびに、そのアクセスに同期して、ファティーグモニタ21a2へ書き込みを行う。この書き込みは、起動時処理時に書き込みが行われたファティーグモニタ21a2の強誘電体メモリセルに対し、起動時処理において書き込まれたデータと同じデータを書き込むことで行われる。
【0066】
処理回路23は、たとえば、外部端子を介して入力されたアドレス信号やコマンド信号を、アドレスバッファ21bやコマンドバッファ21cに供給するか否かを選択するセレクタや、上記の不良が発生しているか否かを判定する論理回路などによって実現できる。
【0067】
クロック信号発生回路24は、半導体記憶装置20の電源がオンした場合に、処理回路23に起動時処理を実行させるクロック信号を発生する。なお、図3のように、クロック信号発生回路24は、半導体記憶装置20の外部から外部制御信号が入力された場合にクロック信号を発生するようにしてもよい。これにより、半導体記憶装置20の起動時以外のとき、たとえば、スタンバイ状態のときにも、起動時処理と同様の処理を行うことができる。
【0068】
電圧調整回路25は、処理回路23の制御のもと、半導体記憶装置20の外部から供給される電源電圧VDD1を調整して、メモリ領域部21に供給する電源電圧VDD2を出力する。メモリ領域部21に供給する電源電圧VDD2は、書き込み電圧に反映されるため、電源電圧VDD2が小さくなると、書き込み電圧も小さくなり、電源電圧VDD2が大きくなると、書き込み電圧も大きくなる。
【0069】
図4は、強誘電体メモリセルアレイの一例を示す図である。
図4において、BL1,BL2,BL3,…,BLnはビット線を表し、WL1,WL2,WL3,WL4,WL5,…,WLmはワード線を表し、PL1,PL2,PL3,PL4,PL5,…,PLmはプレート線を表す。
【0070】
強誘電体メモリセルアレイ21aに含まれる各強誘電体メモリセルは、BL1~BLnの何れかと、WL1~WLmの何れかと、PL1~PLmの何れかに接続されている。
たとえば、強誘電体メモリセル30aは、BL1、WLm、PLmに接続されており、強誘電体メモリセル30bは、BL2、WLm、PLmに接続されている。
【0071】
各強誘電体メモリセルは、nチャネル型MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor )(アクセストランジスタ、またはアクセスゲートなどと呼ばれる場合もある)と、強誘電体キャパシタを有する。
【0072】
たとえば、強誘電体メモリセル30aは、nチャネル型MOSFET31と、強誘電体キャパシタ32を有する。nチャネル型MOSFET31のゲートはWLmに接続され、ドレイン及びソースの一方はBL1に接続され、ドレイン及びソースの他方は強誘電体キャパシタ32の一端に接続されている。強誘電体キャパシタ32の他端は、PLmに接続されている。他の強誘電体メモリセルも同様の回路構成である。
【0073】
上記のような強誘電体メモリセルアレイ21aにおいて、たとえば、WL3~WLm、PL3~PLmにより選択される複数の強誘電体メモリセルからなる領域が、ユーザ領域21a1である。また、たとえば、WL2、PL2により選択される複数の強誘電体メモリセルからなる領域が、ファティーグモニタ21a2であり、たとえば、WL1、PL1により選択される複数の強誘電体メモリセルからなる領域が、インプリントモニタ21a3である。
【0074】
ユーザ領域21a1、ファティーグモニタ21a2及びインプリントモニタ21a3に含まれる強誘電体メモリセルから読み出されるリードデータは、BL1~BLnの電位に基づいて、センスアンプ21iによって判定される。
【0075】
図4に示すように、ファティーグモニタ21a2及びインプリントモニタ21a3は、ユーザ領域21a1の構造と変わらず、ユーザ領域21a1のアレイを延長することで実現可能である。
【0076】
図5は、クロック信号発生回路の一例を示す図である。
クロック信号発生回路24は、NAND(否定論理積)回路24aと、NAND回路24aの出力端子に直列に接続されたインバータ回路24b,24c,24dを有する。
【0077】
NAND回路24aの2つの入力端子のうち一方には、処理回路23から供給される信号が入力され、他方には、インバータ回路24cの出力信号が入力される。インバータ回路24dの出力端子は、処理回路23に接続されている。
【0078】
このようなクロック信号発生回路24では、処理回路23から供給される信号が論理値“0”の場合、NAND回路24aの出力信号は論理値“1”で固定であるため、最後段のインバータ回路24dの出力信号は論理値“0”で固定される。このため、クロック信号は発生しない。一方、処理回路23から供給される信号が論理値“1”の場合、NAND回路24aの出力信号はインバータ回路24cの出力信号に応じて決まり、インバータ回路24dからクロック信号が発生し、処理回路23に供給される。
【0079】
なお、図3に示したように、クロック信号発生回路24に外部制御信号が入力される場合、処理回路23から供給される信号と、外部制御信号との論理和が、NAND回路24aの一方の入力端子に入力されるようにすればよい。
【0080】
図6は、電圧調整回路の一例を示す図である。
電圧調整回路25は、比較器25aと、比較器25aの出力端子に一端が接続された抵抗素子25bと、抵抗素子25bの他端に一端が接続され他端が接地された可変抵抗素子25cを有する。
【0081】
比較器25aの電源端子には電源電圧VDD1が供給され、+入力端子は基準電位Vbgrとなっている。比較器25aの-入力端子は、抵抗素子25bと可変抵抗素子25cとを接続するノードに接続されている。
【0082】
このような電圧調整回路25では、処理回路23から供給される信号によって可変抵抗素子25cの抵抗値が調整されることで、比較器25aの出力信号である電源電圧VDD2の大きさが調整される。
【0083】
図7は、タイミング回路に含まれる回路例を示す図である。
タイミング回路21eは、インバータ回路21e1,21e2,21e3,21e4、セレクタ21e5を有する。
【0084】
たとえば、書き込み動作の終了タイミングを決定するタイミング信号ts1が、遅延素子として機能するインバータ回路21e1~21e4を介してセレクタ21e5の一方の入力端子に入力される。セレクタ21e5の他方の入力端子には、タイミング信号ts1が直接入力される。
【0085】
セレクタ21e5は、処理回路23から供給される選択信号に応じて、タイミング信号ts1かタイミング信号ts1を遅延させた信号の一方を選択して、タイミング信号ts2として出力する。
【0086】
なお、セレクタ21e5に、選択信号が入力される端子以外に、3つ以上の入力端子を設け、タイミング信号ts1を遅延させる遅延素子の段数が異なる3以上のパスをそれらの入力端子に接続し、遅延時間を3通り以上、選択できるようにしてもよい。
【0087】
次に、第2の実施の形態の半導体記憶装置20の制御方法の一例を示す。
図8は、第2の実施の形態の半導体記憶装置の制御方法の一例の流れを示すフローチャートである。
【0088】
処理回路23は、パワーオンリセット回路22から供給されるパワーオンリセット信号を検知したか否かを判定する(ステップS10)。処理回路23は、パワーオンリセット信号を検知していないと判定した場合、ステップS10の処理を繰り返す。
【0089】
処理回路23は、パワーオンリセット信号を検知したと判定した場合、クロック信号発生回路24にクロック信号を発生させ、そのクロック信号を用いて起動時処理を行う。また、電圧調整回路25も動作を開始する。また、処理回路23は、起動時処理中は、ユーザ領域21a1へのユーザアクセスを制限する。
【0090】
起動時処理において、処理回路23は、ファティーグモニタ21a2に対して所定のデータを所定回数書き込む(ステップS11)。
たとえば、処理回路23は、ファティーグモニタ21a2に、#55というデータを100回書き込む。
【0091】
処理回路23は、ファティーグモニタ21a2とインプリントモニタ21a3からデータの読み出しを行う(ステップS12)。このとき、インプリントモニタ21a3に対しては、ユーザ領域21a1及びファティーグモニタ21a2に対する書き込み強度よりも低い書き込み強度で書き戻しが行われる。たとえば、インプリントモニタ21a3にも#55というデータが予め書き込まれている場合、そのデータが書き戻される。
【0092】
なお、ファティーグモニタ21a2とインプリントモニタ21a3からのデータの読み出しは、何れを先に行ってもよい。
処理回路23は、読み出し結果に基づいて、ファティーグモニタ21a2とインプリントモニタ21a3の何れかにおいて不良が発生しているか否かを判定する(ステップS13)。
【0093】
たとえば、読み出し結果として#55というデータが期待されている場合、そのデータが読み出されなかった場合に、不良が発生していると判定される。
なお、処理回路23は、ファティーグモニタ21a2またはインプリントモニタ21a3の複数の強誘電体メモリセルにデータが書き込まれている場合、期待された値が読み出されなかったセル数と、期待された値が読み出されたセル数とを比較してもよい。そして、処理回路23は、期待された値が正しく読み出されなかったセル数が、期待された値が正しく読み出されたセル数よりも多い場合に不良が発生したと判定してもよい。これにより、判定精度が向上する。
【0094】
ファティーグモニタ21a2とインプリントモニタ21a3の何れかにおいて不良が発生していると判定された場合、電圧調整回路25またはタイミング回路21eによって、ユーザ領域21a1に対する書き込み強度の調整が行われる(ステップS14)。
【0095】
ステップS14の処理では、ファティーグモニタ21a2において不良が発生していると判定された場合、書き込み強度が下がるように調整が行われる。処理回路23は、電圧調整回路25にメモリ領域部21に供給する電源電圧VDD2を降圧させる、またはタイミング回路21eに書き込み時間を短くさせる、またはこれらの両方を実行させる。これにより、起動時処理後のユーザ領域21a1に対する書き込み強度が下がる。
【0096】
また、ステップS14の処理では、インプリントモニタ21a3において不良が発生していると判定された場合、書き込み強度が上がるように調整が行われる。処理回路23は、電圧調整回路25にメモリ領域部21に供給する電源電圧VDD2を昇圧させる、またはタイミング回路21eに書き込み時間を長くさせる、またはこれらの両方を実行させる。これにより、起動時処理後のユーザ領域21a1に対する書き込み強度が上がる。
【0097】
なお、ファティーグモニタ21a2またはインプリントモニタ21a3の複数の強誘電体メモリセルにデータが書き込まれている場合、処理回路23は、期待したデータが読み出されなかったセル数に応じて、書き込み強度の調整量を変えるようにしてもよい。
【0098】
たとえば、ファティーグモニタ21a2において、期待したデータが読み出されなかったセル数が1つの場合には、処理回路23は、電圧調整回路25に電圧VDD2を0.1V下げさせる。ファティーグモニタ21a2において、期待したデータが読み出されなかったセル数が2つの場合には、処理回路23は、電圧調整回路25に電圧VDD2を0.2V下げさせる。
【0099】
また、たとえば、インプリントモニタ21a3において、期待したデータが読み出されなかったセル数が1つの場合には、処理回路23は、電圧調整回路25に電圧VDD2を0.1V上げさせる。インプリントモニタ21a3において、期待したデータが読み出されなかったセル数が2つの場合には、処理回路23は、電圧調整回路25に電圧VDD2を0.2V上げさせる。
【0100】
処理回路23は、ステップS13の処理において、不良が発生していないと判定した場合、またはステップS14の処理後、起動時処理を終える。
その後、処理回路23は、ユーザ領域21a1へのアクセスの制限を解除することで以下のような動作(メインメモリ動作と呼ぶ)が行われる。
【0101】
ユーザ領域21a1へのアクセスが発生した場合(ステップS15:YES)、ユーザ領域21a1に対する動作(読み出しまたは書き込み)が実行される(ステップS16)。
【0102】
また、この動作に同期して、処理回路23は、ファティーグモニタ21a2に書き込みを行う(ステップS17)。ステップS17の処理では、処理回路23は、ステップS11の処理において書き込んだデータと同じデータを、ステップS11の処理において書き込みを行った強誘電体メモリセルに書き込む。
【0103】
ステップS17の処理後、またはユーザ領域にアクセスが発生していない場合(ステップS15:NO)、半導体記憶装置20の電源がオフになると(ステップS18:YES)、処理が終了する。電源がオンの場合(ステップS18:NO)、ステップS15からの処理が繰り返される。
【0104】
上記のような処理は、電源がオンし、半導体記憶装置20が起動するたびに行われる。
図9は、起動時処理とメインメモリ動作の処理期間の例を示すタイミングチャートである。
【0105】
電源電圧VDD1が0Vから所定の値であるVDDに立ち上がると(タイミングt1)、起動時処理が開始し、起動時処理が終了すると(タイミングt2)、メインメモリ動作が開始する。
【0106】
起動時処理は、たとえば、数msecの期間で行われる。前述のステップS11の処理であるファティーグモニタ21a2への書き込みが多数回行われても、同じアドレス(強誘電体メモリセル)に対して行われるため、比較的短時間で実行可能である。
【0107】
図10図11図12図13は、書き込み強度の調整結果の例を示す図である。
図10図13には、図4に示した、ユーザ領域21a1の強誘電体メモリセル30a,30bにデータを書き込む場合のWLm、PLm、BL1、BL2の電圧の時間変化が示されている。また、図10図13には、強誘電体メモリセル30aに“0”を書き込み、強誘電体メモリセル30bに“1”を書き込む例が示されている。また、図10~13において、点線の電圧波形は、書き込み強度の調整前(デフォルト状態(工場出荷時))の電圧波形を表している。
【0108】
図10図11には、電源電圧VDD2を調整することで書き込み強度を調整した例が示されている。
タイミングt10において、WLmとPLmに所定の電圧が印加され、BL1、BL2が、たとえば、0Vのままの場合、強誘電体メモリセル30aに“0”が書き込まれる。
【0109】
その後、PLmの電圧が、たとえば、0Vに立ち下がり(タイミングt11)、WLmにさらに高い電圧が印加されるとともに、BL2に“1”を書き込むための電圧が印加されると、強誘電体メモリセル30bに“1”が書き込まれる。WLmとBL2の電圧が立ち下がると、“1”の書き込みが終了する(タイミングt12)。
【0110】
メモリ領域部21に供給される電源電圧VDD2が下がると(たとえば、-0.1V)、図10に示すように、書き込み時のWLm、PLm、BL2の電圧も下がる。このため、書き込み強度が下がる。
【0111】
これに対して、メモリ領域部21に供給される電源電圧VDD2が上がると(たとえば、+0.1V)、図11に示すように、書き込み時のWLm、PLm、BL2の電圧も上がる。このため、書き込み強度が上がる。
【0112】
図12図13には、書き込み時間を調整することで書き込み強度を調整した例が示されている。
タイミングt10において、WLmとPLmに所定の電圧が印加され、BL1、BL2が、たとえば、0Vのままの場合、強誘電体メモリセル30aに“0”が書き込まれる。
【0113】
その後、PLmの電圧が、たとえば、0Vに立ち下がり(タイミングt11a,t11b)、WLmにさらに高い電圧が印加されるとともに、BL2に“1”を書き込むための電圧が印加されると、強誘電体メモリセル30bに“1”が書き込まれる。WLmとBL2の電圧が立ち下がると、“1”の書き込みが終了する(タイミングt12a,t12b)。
【0114】
図12に示すように、書き込み時間(タイミングt10~タイミングt11aの期間及びタイミングt11a~タイミングt12aの期間)を短くした場合(たとえば、-50ns)、書き込み強度が下がる。これに対して、図13に示すように、書き込み時間(タイミングt10~タイミングt11bの期間及びタイミングt11b~タイミングt12bの期間)を長くした場合(たとえば、+50ns)、書き込み強度が上がる。
【0115】
以上のような半導体記憶装置20及びその制御方法によれば、半導体記憶装置20の使用状況が反映された書き込み強度の調整が可能になり、製品寿命を長くすることができる。
【0116】
ところで、ファティーグ劣化が起きやすい使用状況のために、図8に示したステップS13の処理で、最初にファティーグモニタ21a2において不良が発生したと判定された場合、ユーザ領域21a1に対する書き込み強度が下がる。その後、使用状況が変化し、インプリント劣化が起きやすい使用状況となった場合、インプリントモニタ21a3においても不良が発生したと判定される可能性がある。
【0117】
このような状況が発生した場合、ファティーグモニタ21a2において不良が発生したと判定されていないとき(ファティーグモニタ21a2における不良が解消しているとき)は、書き込み強度を上げるように調整が行われるようにすればよい。
【0118】
また、特に書き込みが多数回行われ、ファティーグ劣化がひどく進んだ状況では、ファティーグモニタ21a2とインプリントモニタ21a3の双方で不良が発生する可能性がある。このような劣化モードに対する耐性は、リテンションアフターファティーグ性能と呼ばれている。このような状況では、処理回路23は、書き込み強度が上がるように調整を行うことが望ましい。
【0119】
(第3の実施の形態)
図14は、第3の実施の形態の半導体記憶装置の一例を示す図である。図14において、図3に示した要素と同じ要素については同じ符号が付されている。
【0120】
第3の実施の形態の半導体記憶装置20aの強誘電体メモリセルアレイ21aは、不良検知回数メモリ領域21a4を有する。
不良検知回数メモリ領域21a4は、ファティーグモニタ21a2及びインプリントモニタ21a3において、処理回路23aによって不良が発生したと判定された回数(不良検知回数)を記憶する。
【0121】
不良検知回数メモリ領域21a4は、たとえば、ファティーグモニタ21a2やインプリントモニタ21a3において、不良判定のためのデータが書き込まれる領域とは別の領域に設けられるが、これに限定されるわけではない。不良検知回数メモリ領域21a4は、ユーザが参照できるようにユーザ領域21a1に含まれていてもよいし、ユーザ領域21a1、ファティーグモニタ21a2、インプリントモニタ21a3とは別の領域に設けられていてもよい。
【0122】
処理回路23aは、図3に示した処理回路23とほぼ同様の処理を行うが、図8に示したステップS12の読み出し処理を行う際に、不良検知回数メモリ領域21a4からファティーグモニタ21a2及びインプリントモニタ21a3の不良検知回数を読み出す。
【0123】
そして、処理回路23aは、ファティーグモニタ21a2とインプリントモニタ21a3のうち、不良が発生したと判定したモニタについての不良検知回数を+1して、不良検知回数メモリ領域21a4に書き戻す。
【0124】
また、処理回路23aは、図8に示したステップS14の処理において、不良検知回数に応じて、書き込み強度の調整を行う。たとえば、不良検知回数メモリ領域21a4において、ファティーグモニタ21a2及びインプリントモニタ21a3の不良検知回数を記憶する領域がそれぞれ3ビットであるとする。その場合、不良検知回数の計数値は、3’b000から始まり、計数値が3’b001になると、処理回路23aは、たとえば、電圧調整回路25に電圧VDD2を+0.1Vまたは-0.1V変化させる。そして、計数値が3’b011になると、処理回路23aは、たとえば、電圧調整回路25に電圧VDD2を+0.2Vまたは-0.2V変化させる。計数値が3’b11になると、処理回路23aは、たとえば、電圧調整回路25に電圧VDD2を+0.3Vまたは-0.3V変化させる。
【0125】
以上のような第3の実施の形態の半導体記憶装置20aによれば、劣化の度合いに応じた書き込み強度の調整が可能になる。
(第4の実施の形態)
図15は、第4の実施の形態の半導体記憶装置の一例を示す図である。図14において、図3に示した要素と同じ要素については同じ符号が付されている。
【0126】
第4の実施の形態の半導体記憶装置20bの強誘電体メモリセルアレイ21aは、劣化検知可否設定領域21a5を有する。
劣化検知可否設定領域21a5は、ファティーグモニタ21a2及びインプリントモニタ21a3に対する書き込み、読み出し及び不良の発生を判定する処理(劣化を検知する処理)を行うか否かの設定を記憶する。劣化検知可否設定領域21a5は、たとえば、劣化を検知する処理が行われる場合、“1”を記憶し、劣化を検知する処理が行われない場合、“0”を記憶する。
【0127】
劣化検知可否設定領域21a5は、たとえば、ファティーグモニタ21a2やインプリントモニタ21a3において、不良判定のためのデータが書き込まれる領域とは別の領域に設けられるが、これに限定されるわけではない。劣化検知可否設定領域21a5は、ユーザが設定できるようにユーザ領域21a1に含まれていてもよいし、ユーザ領域21a1、ファティーグモニタ21a2、インプリントモニタ21a3とは別の領域に設けられていてもよい。
【0128】
処理回路23bは、図3に示した処理回路23とほぼ同様の処理を行うが、図8に示した起動時処理を行う前に、劣化検知可否設定領域21a5の設定値を読み出す。
そして、処理回路23bは、設定値が劣化を検知する処理を行うことを示す値である場合、図9に示した起動時処理を行わず、メインメモリ動作を開始する。なお、この場合、ステップS17のファティーグモニタ21a2への書き込みを行わなくてもよい。
【0129】
処理回路23bは、たとえば、ユーザによる書き込み強度の調整用のパラメータの入力を受け付けてもよい。その場合、処理回路23bは、入力されたパラメータに基づいて、電圧調整回路25やタイミング回路21eに書き込み強度を調整させてもよい。
【0130】
第4の実施の形態の半導体記憶装置20bによれば、ファティーグ劣化が起きやすい使用状況となるか、インプリント劣化が起きやすい使用状況となるかが予めわかっている場合などにおいて、書き込み強度を適した強度に固定しておくことができる。
【0131】
なお、上記の第3の実施の形態の半導体記憶装置20aと第4の実施の形態の半導体記憶装置20bとを組み合わせることも可能である。
以上、実施の形態に基づき、本発明の半導体記憶装置及び半導体記憶装置の制御方法の一観点について説明してきたが、これらは一例にすぎず、上記の記載に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0132】
10 半導体記憶装置
11 メモリ領域部
11a 強誘電体メモリセルアレイ
11a1 第1メモリ領域(ユーザ領域)
11a2 第2メモリ領域(ファティーグモニタ)
11a3 第3メモリ領域(インプリントモニタ)
12 処理回路
13 書き込み強度調整回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15