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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151030
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】電機子及び電機子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/34 20060101AFI20220929BHJP
   H02K 15/085 20060101ALI20220929BHJP
   H02K 15/12 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
H02K3/34 C
H02K15/085
H02K15/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021053914
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】荒井 安成
【テーマコード(参考)】
5H604
5H615
【Fターム(参考)】
5H604AA01
5H604AA08
5H604BB08
5H604BB14
5H604CC01
5H604CC05
5H604CC14
5H604DB26
5H604PB03
5H615AA01
5H615BB05
5H615BB14
5H615PP01
5H615PP10
5H615PP13
5H615QQ03
5H615QQ12
5H615RR02
5H615SS09
(57)【要約】
【課題】鉄心の鉄損を抑制しつつ、鉄心の形状を維持することができる電機子及び電機子の製造方法を提供する。
【解決手段】ステータは、複数のスロット23を有するステータコア20と、スロット23の内部に配置されたコイル40と、スロット23の内面とコイル40の外面との間に配置された絶縁シート50とを備える。絶縁シート50は、スロット23の内面を覆う本体部51と、本体部51からコイル40とは反対側に突出するとともにステータコア20の積層方向に互いに間隔をおいて設けられた複数の突出部52とを有している。複数の突出部52は、積層方向において1枚または複数枚の鉄心片30を挟み込んで保持している。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状をなす複数枚の鉄心片が積層されてなり、複数のスロットを有する鉄心と、前記スロットの内部に配置されたコイルと、前記スロットの内面と前記コイルの外面との間に配置された絶縁シートと、を備える電機子であって、
前記絶縁シートは、
前記スロットの内面を覆う本体部と、
前記本体部から前記コイルとは反対側に突出するとともに前記鉄心の積層方向に互いに間隔をおいて設けられた複数の突出部と、を有しており、
前記複数の突出部は、前記積層方向において1枚または複数枚の前記鉄心片を挟み込んで保持している、
電機子。
【請求項2】
前記複数の突出部は、前記積層方向における前記鉄心の両側から前記鉄心全体を挟み込んで保持する2つの外側突出部を含んでいる、
請求項1に記載の電機子。
【請求項3】
前記複数の突出部は、前記積層方向において隣り合う前記鉄心片同士の間に位置し、1枚または複数枚の前記鉄心片を挟み込んで保持する複数の内側突出部を含んでいる、
請求項1または請求項2に記載の電機子。
【請求項4】
前記内側突出部を挟んで前記積層方向の両側に位置する2枚の前記鉄心片同士の間には、隙間が設けられている、
請求項3に記載の電機子。
【請求項5】
前記積層方向において隣り合う前記鉄心片同士は、前記積層方向において互いに接触しており、
前記スロットの内面には、前記積層方向において隣り合う2つの前記鉄心片によって形成され、前記コイルとは反対側に窪む凹部が設けられており、
前記内側突出部は、前記凹部の内部に位置している、
請求項3に記載の電機子。
【請求項6】
板状をなす複数枚の鉄心片が積層されてなり、複数のスロットを有する鉄心と、前記スロットの内部に配置されたコイルと、前記スロットの内面と前記コイルの外面との間に配置された絶縁シートと、を備える電機子の製造方法であって、
前記スロットの内部に前記絶縁シートを配置する絶縁シート配置工程と、
前記絶縁シートが配置された前記スロットの内部に前記コイルを配置するコイル配置工程と、
前記スロットの内部に配置された前記コイルを前記スロットの内面に向けて押圧することで、当該コイルを前記スロットの内面に沿って塑性変形させつつ、前記絶縁シートから前記コイルとは反対側に突出するとともに前記鉄心の積層方向において1枚または複数枚の前記鉄心片を挟み込んで保持する複数の突出部を形成する押圧工程と、を備える、
電機子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電機子及び電機子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転電機を構成するステータなどの電機子は、複数のスロットを有する鉄心と、スロットの内部に配置され、導体により構成されるコイルとを備えている(例えば、特許文献1参照)。スロットの内部には、鉄心とコイルとを絶縁するための絶縁シートが設けられている。
【0003】
こうした鉄心は、電磁鋼板から打ち抜かれた複数枚の鉄心片を積層することにより構成されている。鉄心片には、厚さ方向に凹凸が形成されている。鉄心の積層方向において隣り合う2枚の鉄心片同士は、互いの凹凸がかしめられることで接合されている。これにより、鉄心の形状が維持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2014/041637号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、互いの凹凸をかしめることで鉄心片同士を接合する場合、当該凹凸を介して鉄心片同士が導通することで短絡が生じるおそれがある。これにより、鉄心に渦電流が生じやすくなり、鉄心の鉄損が増大するおそれがある。しかしながら、上記凹凸同士のかしめを省略した場合には、鉄心片同士が接合されなくなるため、鉄心の形状を維持できなくなるおそれがある。このため、電機子においては、鉄心の鉄損を抑制しつつ、鉄心の形状を維持することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための電機子は、板状をなす複数枚の鉄心片が積層されてなり、複数のスロットを有する鉄心と、前記スロットの内部に配置されたコイルと、前記スロットの内面と前記コイルの外面との間に配置された絶縁シートと、を備える電機子であって、前記絶縁シートは、前記スロットの内面を覆う本体部と、前記本体部から前記コイルとは反対側に突出するとともに前記鉄心の積層方向に互いに間隔をおいて設けられた複数の突出部と、を有しており、前記複数の突出部は、前記積層方向において1枚または複数枚の前記鉄心片を挟み込んで保持している。
【0007】
同構成によれば、1枚または複数枚の鉄心片は、絶縁シートの複数の突出部によって挟み込まれて保持されることで、積層方向において位置決めされる。これにより、複数の突出部によって挟み込まれた1枚または複数枚の鉄心片と、当該鉄心片に隣り合う鉄心片とがかしめられる部分を減らすことができる。したがって、鉄心の鉄損を抑制しつつ、鉄心の形状を維持することができる。
【0008】
また、上記課題を解決するための電機子の製造方法は、板状をなす複数枚の鉄心片が積層されてなり、複数のスロットを有する鉄心と、前記スロットの内部に配置されたコイルと、前記スロットの内面と前記コイルの外面との間に配置された絶縁シートと、を備える電機子の製造方法であって、前記スロットの内部に前記絶縁シートを配置する絶縁シート配置工程と、前記絶縁シートが配置された前記スロットの内部に前記コイルを配置するコイル配置工程と、前記スロットの内部に配置された前記コイルを前記スロットの内面に向けて押圧することで、当該コイルを前記スロットの内面に沿って塑性変形させつつ、前記絶縁シートから前記コイルとは反対側に突出するとともに前記鉄心の積層方向において1枚または複数枚の前記鉄心片を挟み込んで保持する複数の突出部を形成する押圧工程と、を備える。
【0009】
同方法によれば、絶縁シート配置工程において、スロットの内部に絶縁シートが配置される。次に、コイル配置工程において、絶縁シートが配置されたスロットの内部にコイルが配置される。次に、押圧工程において、スロットの内部に配置されたコイルがスロットの内面に向けて押圧される。これにより、当該コイルがスロットの内面に沿って塑性変形されつつ、絶縁シートからコイルとは反対側に突出するとともに積層方向において1枚または複数枚の鉄心片を挟み込んで保持する複数の突出部が形成される。したがって、上述した電機子の作用効果に準じた作用効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態のステータを示す断面図。
図2】ステータの一部を拡大して示す拡大断面図。
図3図2の3-3線に沿った断面図。
図4図2の4-4線に沿った断面図。
図5】絶縁シート配置工程において、スロットの内部に絶縁シートを配置した状態を示す断面図。
図6】コイル配置工程において、スロットの内部にコイルを配置した状態を示す断面図。
図7】押圧工程において、複数の配置部を押圧した状態を示す断面図。
図8】押圧工程において、全ての配置部を押圧した状態を示す断面図。
図9】第1変更例のステータを示す断面図。
図10】第2変更例のステータを示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図1図8を参照して、電機子及び電機子の製造方法をステータ及びステータの製造方法として具体化した一実施形態について説明する。
各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率については実際と異なる場合がある。
【0012】
(ステータ10)
図1及び図2に示すように、回転電機のステータ10は、中心孔20aを有する筒状のステータコア20と、ステータコア20に巻回されたコイル40と、コイル40の外面を覆う複数の絶縁シート50とを備えている。なお、図1では、絶縁シート50の図示が省略されている。
【0013】
本実施形態のステータ10は、三相同期型の回転電機に用いられるものであり、図示しないロータを取り囲むように設けられている。ステータコア20は、「鉄心」に相当する。
【0014】
(ステータコア20)
ステータコア20は、円環状のヨーク21と、ヨーク21からヨーク21の径方向の内側に向かって延びる複数のティース22とを有している。複数のティース22は、ヨーク21の周方向に互いに間隔をおいて設けられている。
【0015】
ヨーク21の周方向において互いに隣り合うティース22同士の間には、径方向の内側に開口するとともに径方向に延びるスロット23が形成されている。本実施形態のステータコア20は、都合48個のスロット23を有している。
【0016】
図3に示すように、ステータコア20は、板状をなす複数枚の鉄心片30が積層されることにより構成されている。鉄心片30は、電磁鋼板を打ち抜くことにより形成されている。
【0017】
以降において、ステータコア20の積層方向を単に積層方向と称し、ステータコア20の軸線を中心とするステータコア20の周方向を単に周方向と称し、同軸線を中心とするステータコア20の径方向を単に径方向と称する。また、ステータコア20の積層方向における両端を構成する鉄心片30を鉄心片30aとし、鉄心片30a同士の間に位置する鉄心片30を鉄心片30bとして区別する場合がある。
【0018】
(コイル40)
図2に示すように、コイル40は、スロット23の内部において、例えば径方向に8列に並んで配置されている。本実施形態では、U相、V相、及びW相を構成するコイル40が、複数のティース22に跨がって分布巻きにより巻回されている。
【0019】
コイル40は、例えばアルミニウム合金などの金属材料により形成された平角線と、平角線の外周面を覆う絶縁被膜とを有している。なお、各図では、絶縁被膜の図示が省略されている。
【0020】
図3に示すように、コイル40は、スロット23の内部に配置される配置部41と、配置部41に連なるとともに積層方向の両側においてスロット23から突出したコイルエンド42とを有している。
【0021】
配置部41は、積層方向において直線状に延びている。図示は省略するが、コイルエンド42は、異なる2つのスロット23の内部に配置された配置部41同士を連結している。
【0022】
図2に示すように、スロット23の内部には、8つの配置部41が径方向に隣り合って設けられている。
本実施形態のコイル40の長さ方向に直交する断面形状は、長辺及び短辺を有する長方形状をなしている。配置部41の断面形状における長辺は、スロット23の幅方向に延びており、配置部41の断面形状における短辺は、径方向に延びている。なお、スロット23の幅方向は、積層方向と径方向との双方に直交する方向である。
【0023】
(絶縁シート50)
絶縁シート50は、スロット23の内面とコイル40の外面との間に配置されている。絶縁シート50は、スロット23の内面全体を覆うように設けられている。絶縁シート50は、スロット23と同様に径方向の内側に開口している。
【0024】
図示は省略するが、絶縁シート50は、樹脂製の基材と、当該基材の両面に設けられた絶縁層とを有している。絶縁層は、例えば、不織布に樹脂材料を含浸させることによって構成されている。
【0025】
図3及び図4に示すように、絶縁シート50は、コイル40の外面を覆う本体部51と、本体部51からコイル40とは反対側に突出するとともに積層方向に互いに間隔をおいて設けられた複数の突出部52とを有している。
【0026】
本体部51は、配置部41に沿って積層方向に延びている。本体部51の積層方向における両端は、スロット23から突出している。
突出部52は、上述した絶縁層の一部がコイル40とは反対側に突出することにより構成されている。突出部52は、2つの外側突出部52aと、複数の内側突出部52bとを含んでいる。複数の内側突出部52bは、積層方向における2つの外側突出部52aの間に設けられている。
【0027】
2つの外側突出部52aは、積層方向におけるステータコア20の両側からステータコア20の全体を挟み込んで保持している。外側突出部52aは、本体部51のうちスロット23の外部に位置する部分から突出している。各外側突出部52aは、鉄心片30aの外面に接触している。
【0028】
内側突出部52bは、積層方向において隣り合う鉄心片30同士の間に位置している。内側突出部52bと鉄心片30bとは、積層方向において交互に設けられている。したがって、積層方向において隣り合う2つの内側突出部52bは、1枚の鉄心片30bを挟み込んで保持している。なお、鉄心片30aは、外側突出部52aと内側突出部52bとにより挟み込まれている。
【0029】
内側突出部52bを挟んで積層方向の両側に位置する2枚の鉄心片30同士の間には、隙間Gが設けられている。隙間Gは、上記2枚の鉄心片30同士の間における全体にわたって設けられている。したがって、鉄心片30同士は、積層方向において互いに離れている。
【0030】
外側突出部52a及び内側突出部52bは、スロット23の略全周にわたって延びている。すなわち、外側突出部52a及び内側突出部52bの双方は、本体部51から径方向の外側に突出した部分と、本体部51からスロット23の幅方向の両側に突出した部分とが連なって構成されている。外側突出部52a及び内側突出部52bは、平面視において略U字状をなしている。
【0031】
(ステータ10の製造方法)
次に、ステータ10の製造方法について説明する。
図5に示すように、まず、ステータコア20のスロット23の内部に絶縁シート50を配置する(絶縁シート配置工程)。このとき、絶縁シート50は、径方向の内側からスロット23の内部に挿入されてもよいし、積層方向においてスロット23の内部に挿入されてもよい。なお、積層方向において隣り合う鉄心片30同士は、積層方向において互いに接触している。
【0032】
ここで、積層方向におけるステータコア20の両側には、押さえ治具60が配置されている。各押さえ治具60は、鉄心片30aにおけるヨーク21及びティース22を構成する部分の外面に接触している。なお、図6図8では、押さえ治具60の図示が省略されている。
【0033】
図6に示すように、次に、絶縁シート50が配置されたスロット23の内部にコイル40の配置部41を配置する(コイル配置工程)。このとき、配置部41の長辺が延びる方向と径方向とが一致するようにスロット23の内部に配置部41を配置する。本実施形態のコイル配置工程では、まず、スロット23の内部に配置部41が径方向に5列に並ぶように配置する。
【0034】
図7に示すように、次に、配置部41を押圧するための押圧治具70をスロット23の内部に挿入する。ここで、押圧治具70の押圧面70aは、積層方向におけるスロット23の全体にわたって延びている。
【0035】
次に、スロット23の内部に配置された配置部41を、押圧治具70により、スロット23の内面に向けて、より詳しくは、径方向の外側に向けて押圧する。これにより、配置部41をスロット23の内面に沿って塑性変形させる。このとき、配置部41は、径方向における厚さが減少するとともに幅方向における厚さが増大するように塑性変形する。これにより、配置部41は、スロット23の幅方向に延びる長辺と、径方向に延びる短辺とを有することとなる。
【0036】
配置部41が塑性変形する過程において、絶縁シート50は、配置部41を介してスロット23の内面に向けて押圧される。このとき、絶縁シート50は、径方向の外側及び幅方向の両側に向けて押圧される。これにより、図3及び図4に示すように、絶縁シート50の本体部51からコイル40とは反対側に突出する複数の突出部52を形成する(押圧工程)。このとき、本体部51は、積層方向に伸びることとなる。
【0037】
押圧工程では、図3及び図4に二点鎖線にて示すように、押さえ治具60と鉄心片30aとの間に絶縁シート50の一部が入り込むことで外側突出部52aが形成される。このとき、押さえ治具60と鉄心片30aとは、積層方向において互いに離れる方向に移動する。
【0038】
また、積層方向において隣り合う2枚の鉄心片30同士の間に絶縁シート50の一部が入り込むことで内側突出部52bが形成される。このとき、上記2枚の鉄心片30は、積層方向において互いに離れる方向に移動する。
【0039】
図8に示すように、同様にして、更に3つの配置部41を押圧治具70により押圧することで塑性変形させつつ、スロット23の略全周にわたって外側突出部52a及び内側突出部52bを形成する。なお、本実施形態では、まず、上記3つの配置部41のうち2つの配置部41をスロット23の内部に配置するとともに、当該2つの配置部41を押圧治具70により押圧する。続いて、残り1つの配置部41をスロット23の内部に配置するとともに、当該1つの配置部41を押圧治具70により押圧する。
【0040】
このようにして、ステータ10が製造される。
本実施形態の作用について説明する。
ステータコア20は、2つの外側突出部52aによって、ステータコア20の全体が積層方向の両側から挟み込まれて保持される。このため、各鉄心片30が積層方向において位置決めされる。これにより、ステータコア20の全体において、鉄心片30同士がかしめられる部分を減らすことができる(以上、作用1)。
【0041】
また、積層方向において隣り合う鉄心片30同士の間にそれぞれ位置する複数の内側突出部52bによって、各鉄心片30bが積層方向において挟み込まれて保持される。これにより、2つの内側突出部52bによって挟み込まれた各鉄心片30bと、当該鉄心片30bに隣り合う鉄心片30bとがかしめられる部分を減らすことができる(以上、作用2)。
【0042】
本実施形態の効果について説明する。
(1)ステータ10は、複数のスロット23を有するステータコア20と、スロット23の内部に配置されたコイル40と、スロット23の内面とコイル40の外面との間に配置された絶縁シート50とを備える。絶縁シート50は、スロット23の内面を覆う本体部51と、本体部51からコイル40とは反対側に突出するとともにステータコア20の積層方向に互いに間隔をおいて設けられた複数の突出部52とを有している。複数の突出部52は、積層方向におけるステータコア20の両側からステータコア20の全体を挟み込んで保持する2つの外側突出部52aと、積層方向において隣り合う鉄心片30同士の間に位置し、各鉄心片30を挟み込んで保持する複数の内側突出部52bとを含んでいる。
【0043】
こうした構成によれば、上述した作用1及び作用2を奏することから、ステータコア20の鉄損を抑制しつつ、ステータコア20の形状を維持することができる。
(2)内側突出部52bを挟んで積層方向の両側に位置する2枚の鉄心片30同士の間には、隙間Gが設けられている。
【0044】
こうした構成によれば、鉄心片30同士の隙間Gに、例えば、オイルなどの冷却媒体を流すことができる。これにより、ステータコア20を冷却することができる。
(3)絶縁シート配置工程では、スロット23の内部に絶縁シート50を配置する。コイル配置工程では、絶縁シート50が配置されたスロット23の内部にコイル40を配置する。押圧工程では、スロット23の内部に配置されたコイル40をスロット23の内面に向けて押圧することで、コイル40をスロット23の内面に沿って塑性変形させつつ、絶縁シート50からコイル40とは反対側に突出するとともに積層方向において各鉄心片30を挟み込んで保持する複数の突出部52を形成する。
【0045】
こうした方法によれば、絶縁シート配置工程において、スロット23の内部に絶縁シート50が配置される。次に、コイル配置工程において、絶縁シート50が配置されたスロット23の内部にコイル40が配置される。次に、押圧工程において、スロット23の内部に配置されたコイル40がスロット23の内面に向けて押圧される。これにより、コイル40がスロット23の内面に沿って塑性変形されつつ、絶縁シート50からコイル40とは反対側に突出するとともに積層方向において各鉄心片30を挟み込んで保持する複数の突出部52が形成される。
【0046】
こうして製造されたステータ10においては、各鉄心片30が、絶縁シート50の複数の突出部52によって挟み込まれて保持されることで、積層方向において位置決めされる。これにより、複数の突出部52によって挟み込まれた各鉄心片30と、当該鉄心片30に隣り合う鉄心片30とがかしめられる部分を減らすことができる。したがって、ステータコア20の鉄損を抑制しつつ、ステータコア20の形状を維持することができる。
【0047】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0048】
・押圧工程では、複数の配置部41を1つずつ押圧してもよいし、複数の配置部41を一括して押圧してもよい。
図9に示すように、スロット23の内面において、積層方向において互いに接触する2枚の鉄心片30によって形成され、コイル40とは反対側に窪む凹部23aを設けることもできる。凹部23aの内部には、内側突出部52bが位置している。本変更例の凹部23aは、各鉄心片30に切り欠き31を設けることによって形成されている。切り欠き31は、例えば、鉄心片30におけるスロット23の内面を構成する端縁をスロット23の全周にわたって面取りすることにより形成することができる。こうした構成によれば、凹部23aの内部に内側突出部52bが位置している。このため、鉄心片30同士を積層方向において互いに接触させた状態で、各鉄心片30を複数の内側突出部52bによって容易に挟み込んで保持することができる。したがって、ステータコア20の形状を好適に維持することができる。
【0049】
・上記第1変更例において、ステータコア20は、切り欠き31の積層方向における向きが互いに異なる複数枚の鉄心片30を積層させてなるものであってもよい。こうしたステータコア20としては、例えば、図10に示すように、第1積層体20Aと第2積層体20Bとを積層させて形成することができる。第1積層体20Aは、切り欠き31が積層方向の一方を向いた複数枚の鉄心片30が積層されてなるものである。第2積層体20Bは、切り欠き31が積層方向の他方を向いた複数枚の鉄心片30が積層されてなるものである。この場合、第1積層体20A及び第2積層体20Bは、各内側突出部52bによって、積層方向において互いに近付く方向に押し付けられやすくなる。これにより、ステータコア20の形状が維持されやすくなる。
【0050】
・上記各変更例における凹部23aは、スロット23の内面を構成する端縁の外形が異なる2枚の鉄心片30を、積層方向において互いに接触させることで形成することもできる。この場合、一方の鉄心片30における端縁が他方の鉄心片30における端縁よりも外周側に位置するため、スロット23の内面には、これら2枚の鉄心片30の端縁によって段差が生じる。そして、当該段差によって凹部23aが形成される。こうした構成であっても、鉄心片30同士を積層方向において互いに接触させた状態で、複数の内側突出部52bによって鉄心片30を1枚おきに挟み込んで保持することができる。したがって、ステータコア20の形状を好適に維持することができる。
【0051】
・隙間Gは、内側突出部52bの近傍にのみ設けられていてもよい。すなわち、2枚の鉄心片30は、内側突出部52bから離れた部分において互いに接触していてもよい。
・絶縁シート50から内側突出部52bを省略することができる。すなわち、絶縁シート50は、外側突出部52aのみを有するものであってもよい。
【0052】
・絶縁シート50から外側突出部52aを省略することができる。すなわち、絶縁シート50は、内側突出部52bのみを有するものであってもよい。
・積層方向において隣り合う2つの内側突出部52bは、複数枚の鉄心片30を挟み込んで保持するものであってもよい。すなわち、ステータコア20の内部における内側突出部52bの数及び位置は、適宜設定することができる。
【0053】
・鉄心片30に凹凸を設けるとともに、互いの凹凸をかしめることで鉄心片30同士を接合してもよい。この場合、当該凹凸のかしめと、複数の突出部52とを併用することによってステータコア20の形状を維持することができる。
【0054】
・突出部52は、スロット23の周方向における一部に設けられていてもよいし、同周方向において不連続的に設けられていてもよい。
・本実施形態では、電機子の一例として回転電機のステータを例示したが、同様の構成を回転電機のロータに対しても適用することも可能である。また、本実施形態では、電機子の製造方法の一例として回転電機のステータの製造方法を例示したが、同様の方法を回転電機のロータの製造方法に対して適用することも可能である。
【符号の説明】
【0055】
G…隙間
10…ステータ
20…ステータコア
20a…中心孔
20A…第1積層体
20B…第2積層体
21…ヨーク
22…ティース
23…スロット
23a…凹部
30…鉄心片
30a…鉄心片
30b…鉄心片
31…切り欠き
40…コイル
41…配置部
42…コイルエンド
50…絶縁シート
51…本体部
52…突出部
52a…外側突出部
52b…内側突出部
60…押さえ治具
70…押圧治具
70a…押圧面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10