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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151031
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】送電装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/10 20160101AFI20220929BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20220929BHJP
   B60L 53/302 20190101ALI20220929BHJP
   B60L 53/12 20190101ALI20220929BHJP
【FI】
H02J50/10
H02J7/00 P
H02J7/00 301D
B60L53/302
B60L53/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021053917
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】中島 剛
【テーマコード(参考)】
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503FA06
5G503GB08
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC26
5H125BE02
5H125DD03
5H125DD04
5H125EE61
5H125FF14
5H125FF21
(57)【要約】
【課題】ベローズ内、又は、可動部を短時間で冷却して、電力の供給の効率を低下させず、電力の供給に対する温度による制限を緩和することが可能な送電装置を提供する。
【解決手段】送電装置は、車両に設けられた受電コイルへ非接触で電力を供給する送電コイルを有する可動部と、可動部を昇降させる昇降機構と、可動部に隣接して昇降機構を覆うカバー部材と、を備える。昇降機構によって可動部が地上に対して垂直方向に昇降する際、カバー部材の内部の体積が変化し、カバー部材の内部と外部とを連通する換気口を介してカバー部材の内部が換気される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上側に設けられた送電装置であって、
地上に対して垂直方向に昇降する可動部と、
前記可動部の下側に配置され、前記可動部を昇降させる昇降機構と、
前記可動部に隣接して前記昇降機構を覆うカバー部材と、を備え、
前記可動部は、車両に設けられた受電コイルへ非接触で電力を供給する送電コイルを有し、
前記カバー部材は、前記カバー部材の内部と外部とを連通させる換気口を有し、
前記昇降機構による前記可動部の昇降に伴って前記内部の体積が変化することで、前記換気口を介して前記内部が換気されること
を特徴とする送電装置。
【請求項2】
請求項1に記載の送電装置であって、
前記換気口には、
前記外部の空気を前記内部に導入する吸気口と、
前記内部の空気を前記外部に排出する排気口と、
が含まれること
を特徴とする送電装置。
【請求項3】
請求項2に記載の送電装置であって、
前記カバー部材の上端と下端の中間位置を基準として、
前記吸気口は、前記中間位置よりも低い位置に設けられ、
前記排気口は、前記中間位置よりも高い位置に設けられること
を特徴とする送電装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の送電装置であって、
前記吸気口は、前記外部から前記内部への空気の通過を許容し、前記内部から前記外部への空気の通過を許容しない吸気バルブを有し、
前記排気口は、前記内部から前記外部への空気の通過を許容し、前記外部から前記内部への空気の通過を許容しない排気バルブを有すること
を特徴とする送電装置。
【請求項5】
請求項2~4のいずれか一項に記載の送電装置であって、
前記吸気口を介して前記外部から前記内部に導入された空気は、前記内部において、前記垂直方向の軸の周りに旋回する流れを有すること
を特徴とする送電装置。
【請求項6】
請求項2~5のいずれか一項に記載の送電装置であって、
前記カバー部材は、複数の前記吸気口を有すること
を特徴とする送電装置。
【請求項7】
請求項6に記載の送電装置であって、
前記垂直方向に直交し前記吸気口を通過する面での前記カバー部材の断面形状は四角形状であって、
複数の前記吸気口は、前記四角形状の辺の中央部から前記四角形状の角部に向けて同方向にオフセットした位置に設けられること
を特徴とする送電装置。
【請求項8】
請求項2~7のいずれか一項に記載の送電装置であって、
空気が流入する流入口と前記空気が流出する流出口とを有し、前記外部に位置する補助部材を更に有し、
前記流出口は前記吸気口に接続され、
前記内部が換気されるタイミングで、前記流入口は前記吸気口よりも高い位置にあること
を特徴とする送電装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の送電装置であって、
前記換気口を介して前記内部に導入された空気は、前記送電コイルの近傍又は内部を通過すること
を特徴とする送電装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の送電装置であって、
前記換気口を介して前記外部に排出された空気は、前記送電コイルに電力を供給する給電装置の近傍又は内部を通過すること
を特徴とする送電装置。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の送電装置であって、
前記昇降機構を制御するコントローラを更に備え、
前記コントローラは、前記送電コイルへ電力を供給する前に、前記可動部を少なくとも所定回数だけ昇降させること
を特徴とする送電装置。
【請求項12】
請求項11に記載の送電装置であって、
前記コントローラは、前記可動部の高さに基づいて前記所定回数を設定すること
を特徴とする送電装置。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の送電装置であって、
前記受電コイルと前記送電コイルの間の距離を測る距離センサを更に備え、
前記コントローラは、
前記距離センサから前記距離を取得し、
前記距離に基づいて前記所定回数を設定すること
を特徴とする送電装置。
【請求項14】
請求項11~13のいずれか一項に記載の送電装置であって、
前記車両の底面よりも下側の、前記可動部の昇降可能範囲において、
前記可動部を最も低い位置まで下降させた際の前記内部の体積をVIとし、
前記可動部を最も高い位置まで下降させた際の前記内部の体積をVFとし、
前記コントローラは、前記所定回数として、VI/(VF-VI)以下の最大の整数を設定すること
を特徴とする送電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、地上に設けられた送電コイルから、車両に設けられた受電コイルに非接触で電力を供給する技術が開示されている。特に、地上に対して垂直方向に昇降する可動部に送電コイルは格納され、昇降機構によって送電コイルと受電コイルの間の距離が調整される。異物の侵入を防ぐため、昇降機構はベローズの中に格納される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2017-512453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された発明によれば、例えば日射を受けて、ベローズ内、又は、可動部が高温になってしまい、電力の供給の効率が悪くなったり、電力の供給に対する温度による制限が生じたりしやすいという課題がある。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ベローズ内、又は、可動部を短時間で冷却して、電力の供給の効率を低下させず、電力の供給に対する温度による制限を緩和することが可能な送電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様に係る送電装置は、車両に設けられた受電コイルへ非接触で電力を供給する送電コイルを有する可動部と、可動部を昇降させる昇降機構と、可動部に隣接して昇降機構を覆うカバー部材と、を備える。昇降機構によって可動部が地上に対して垂直方向に昇降する際、カバー部材の内部の体積が変化し、カバー部材の内部と外部とを連通する換気口を介してカバー部材の内部が換気される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ベローズ内、又は、可動部を短時間で冷却して、電力の供給の効率を低下させず、電力の供給に対する温度による制限を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施形態に係る非接触給電システムの概略構成図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る非接触給電の概略回路図である。
図3A図3Aは、本発明の実施形態に係る送電装置を説明する図である。
図3B図3Bは、本発明の実施形態に係る送電装置を説明する図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係るベローズの第1の例を説明する図である。
図5図5は、本発明の実施形態に係るベローズの第2の例を説明する図である。
図6図6は、本発明の実施形態に係るベローズの第3の例を説明する図である。
図7図7は、本発明の実施形態に係るベローズの第4の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0010】
[非接触給電システムの構成]
図1及び図2を参照して、非接触給電システムの構成を説明する。図1に示すように、非接触給電システムは、地上側ユニットである給電装置100と、車両側ユニットである受電装置200を備えている。非接触給電システムは、給電スタンド等に配置された給電装置100から電気自動車、ハイブリッド車等の車両10に搭載された受電装置200に非接触で電力を供給し、車両10に搭載されたバッテリ27を充電する。
【0011】
給電装置100は、給電スタンド近傍の駐車スペースに配置された送電装置300を備えている。送電装置300は、可動部12と、固定部15と、昇降機構17と、駆動制御部18と、温度センサ19と、距離センサ20と、を備えている。
【0012】
可動部12は、送電コイル41(図2参照)を含む。一方、受電装置200は、車両10の底面に設けられた受電コイル22を備えている。
【0013】
受電コイル22は、車両10が駐車スペースの所定位置(給電可能位置)に停車したときに送電コイル41に対向するように配置されている。また、受電コイル22は、車両10の床下の揺動構造を介して揺動可能に設けられてもよい。なお、可動部12及び受電装置200は、共振コンデンサを含んでもよい。
【0014】
送電コイル41(図2参照)は、リッツ線からなる一次コイルによって構成され、受電コイル22に電力を送電する。また、受電コイル22は、同じくリッツ線からなる二次コイルによって構成され、送電コイル41から電力を受電する。
【0015】
両コイル間における電磁誘導作用により、送電コイル41から受電コイル22へ非接触で電力を供給することが可能となる。なお、非接触給電の方式は、電磁誘導式に限定されず、磁界共振式などでもよい。
【0016】
固定部15は、地上に固定される装置である。可動部12は、固定部15に対して上昇及び下降する。換言すれば、可動部12は、地上に対して上昇及び下降する。
【0017】
駆動制御部18は、制御部14から信号を受信し、受信した信号に基づいてアクチュエータ44(図3B参照)を制御する。駆動制御部18及びアクチュエータ44の詳細は、後述する。
【0018】
昇降機構17は、アクチュエータ44から動力を受けて、可動部12を垂直方向に上昇させたり、下降させたり、停止させたりする。
【0019】
温度センサ19は、送電装置300の温度を計測する。温度センサ19は、計測した温度を制御部14に送信する。
【0020】
距離センサ20は、可動部12(又は送電コイル41)と受電コイル22との間の距離を計測する。また、距離センサ20は、計測した距離を制御部14に送信する。
【0021】
制御部14は、温度センサ19から取得した温度または距離センサ20から取得した距離に基づいて、駆動制御部18を制御する。制御部14は、温度センサ19から取得した温度、及び距離センサ20から取得した距離に基づいて、駆動制御部18を制御してもよい。なお、図示は省略するが、可動部12は、異物検知コイルを含んでもよい。
【0022】
異物検知コイルとは、送電装置300の表面のインダクタンスの変化を検知し金属異物を検知するためのコイルである。なお、受電コイル22が、可動部12と同様に、垂直方向に移動してもよい。
【0023】
給電装置100は、電力制御部11と、無線通信部13と、制御部14と、を備えている。
【0024】
電力制御部11は、交流電源110から送電される交流電力を高周波の交流電力に変換して送電コイル41に送電するための回路である。電力制御部11は、整流部111と、PFC回路112と、DC電源114と、インバータ113とを備えている。
【0025】
整流部111は、交流電源110に電気的に接続され、交流電源110から出力される交流電力を整流する回路である。PFC回路112は、整流部111から出力される波形を整形することで力率を改善するための回路(Power Factor Correction)であり、整流部111とインバータ113との間に接続されている。
【0026】
インバータ113は、IGBT等のスイッチング素子で構成されたPWM制御回路を備え、スイッチング制御信号に基づいて直流電力を交流電力に変換して送電コイル41に電力を供給する。DC電源114は、送電コイル41を微弱励磁する際の直流電圧を出力する。
【0027】
無線通信部13は、車両10に設けられた無線通信部23とwifi通信を行う。
【0028】
制御部14は、給電装置100全体を制御するコントローラであり、インバータ制御部141と、PFC制御部142と、シーケンス制御部143とを備えている。
【0029】
制御部14は、車両10が駐車スペースに駐車するときに、駐車位置の判定処理を実行する。この際、PFC制御部142は励磁電力指令を生成し、インバータ制御部141は励磁電力の周波数指令、デューティーなどを生成してインバータ113を制御する。これにより、制御部14は、駐車位置を判定するための電力を送電コイル41から受電コイル22へ送電する。
【0030】
制御部14は、駐車位置の判定処理を実施する際、送電コイル41を微弱励磁、または弱励磁することにより駐車位置判定用の電力を送電する。
【0031】
また、シーケンス制御部143は、無線通信部13を介して受電装置200とシーケンス情報をやり取りする。なお、微弱励磁、または弱励磁は、いずれも、通常の充電時よりも弱い励磁であり、周囲に影響を及ぼさない程度に弱い励磁である。
【0032】
また、制御部14及び駆動制御部18は、例えば、CPU(中央処理装置)、メモリ、及び入出力部を備える汎用のマイクロコンピュータである。なお、制御部14は、インバータ113を含んでもよい。
【0033】
受電装置200は、受電コイル22と、無線通信部23と、充電制御部24と、整流部25と、リレースイッチ26と、バッテリ27と、インバータ28と、モータ29と、通知部30とを備えている。
【0034】
無線通信部23は、給電装置100に設けられた無線通信部13と双方向の通信を行う。
【0035】
充電制御部24は、バッテリ27の充電を制御するためのコントローラである。充電制御部24は、車両10が駐車スペースに駐車するときに、駐車位置の判定処理を実行する。この際、充電制御部24は、受電コイル22で受電される電力を監視する。
【0036】
充電制御部24は、送電コイル41が励磁されたときに受電コイル22が受電した電圧に基づいて受電コイル22の位置を検出する。
【0037】
また、充電制御部24は、無線通信部23、通知部30、リレースイッチ26等を制御しており、充電を開始する旨の信号を、無線通信部23を介して給電装置100の制御部14に送信する。
【0038】
整流部25は、受電コイル22に接続され、受電コイル22が受電した交流電力を直流に整流して、バッテリ27、またはインバータ28に電力を出力する(図2を参照)。
【0039】
リレースイッチ26は、充電制御部24の制御によってオンオフが切り換えられる。また、リレースイッチ26がオフの場合、バッテリ27と整流部25とが電気的に切り離される(図2を参照)。バッテリ27は、複数の二次電池を接続して構成され、車両10の電力源となる。
【0040】
インバータ28は、IGBT等のスイッチング素子で構成されたPWM制御回路を備え、スイッチング制御信号に基づいてバッテリ27から出力される直流電力を交流電力に変換してモータ29に供給する。
【0041】
モータ29は、例えば三相の交流電動機によって構成され、車両10を駆動するための駆動源となる。
【0042】
通知部30は、警告ランプ、ナビゲーション装置のディスプレイまたはスピーカ等によって構成され、充電制御部24の制御に基づいて、ユーザに対して光、画像または音声等を出力する。
【0043】
次に、図3A及び図3Bを参照して、送電装置300の詳細、及び可動部12の上昇及び下降について説明する。
【0044】
図3A及び図3Bに示すように、可動部12の内部には、板状の非磁性体板42が配置されている。非磁性体板42は、非磁性体の金属で形成され、例えばアルミニウムで形成される。非磁性体板42の垂直方向上方には、フェライトコア40が配置される。
【0045】
フェライトコア40の垂直方向上方には、送電コイル41が配置される。非磁性体板42、フェライトコア40、及び送電コイル41は、カバー43によって、覆われている。
【0046】
図3A及び図3Bに示すように、可動部12は、昇降機構17によって垂直方向(上下方向)に移動が可能となっている。昇降機構17は、可動部12の垂直方向下側に配置される。昇降機構17は、2つのアーム45と、アーム45が交差する位置に設けられる回転摺動部47と、アーム45の先端に設けられるスライド摺動部46と、レール49と、アクチュエータ44と、駆動制御部18と、を備える。
【0047】
昇降機構17の外周部には、ベローズ50(カバー部材)が配置され、昇降機構17は、ベローズ50によって覆われる。なお、ベローズ50は、可動部12及び固定部15に隣接して配置される。なお、ベローズ50は、前述のカバー43と一体となってカバー部材を構成するものであってもよい。
【0048】
ベローズ50は、ゴム、樹脂、金属などから構成される。ベローズ50は、固定部15と可動部12との間に、水、異物などが侵入することを防止する。駆動制御部18は、制御部14から信号を受信し、受信した信号に基づいてアクチュエータ44を制御する。アクチュエータ44の駆動により、アーム45は駆動する。アーム45の駆動により、スライド摺動部46はレール49に沿って移動する。なお、アクチュエータ44には、電動モータ、油圧、空圧などが用いられる。
【0049】
昇降機構17が垂直方向に移動することにより、可動部12も垂直方向に移動する。これにより、送電コイル41と受電コイル22との距離(いわゆるギャップ)が調整される。これにより、送電コイル41と受電コイル22との結合係数が向上し、効率的な充電が実現しうる。なお、図3Aに示すように、充電が行われていないとき、可動部12は、地上に近づいた状態となる。
【0050】
[ベローズの構成]
次に、図4図7を用いて、ベローズ50の構成に関する、いくつかの例を説明する。あわせて、ベローズ50内外での空気の流れについて説明する。
【0051】
図4は、ベローズ50の第1の例を説明する図である。図4は、ベローズ50を垂直方向で切断した断面を模式的に示しており、ベローズ50の構成を見やすくするため、送電装置300のうち、可動部12及び固定部15を示している。図4に示すように、ベローズ50は、ベローズ50の内部と外部とを連通させる換気口(吸気口51、排気口52)を備える。なお、ベローズ50が備える換気口の個数は、図4に示した例に限定されず、1個であってもよいし、複数個であってもよい。
【0052】
吸気口51は、ベローズ50の外部の空気をベローズ50の内部に導入する。また、排気口52は、ベローズ50の内部の空気をベローズ50の外部に排出する。なお、図4では、吸気口51と排気口52はそれぞれ異なるものとして示しているが、ベローズ50の内部と外部とを双方向に空気が移動可能な換気口が、吸気口51と排気口52の両者を兼ねるものであってもよい。
【0053】
なお、昇降機構17による可動部12の昇降に伴ってベローズ50の内部の体積が変化し、ベローズ50に設けた換気口を介して、ベローズ50の内部の換気が行われる。例えば、昇降機構17によって可動部12を上昇させる場合には、ベローズ50の内部の体積が増加する。そのため、吸気口51を介してベローズ50の外部から内部に空気が導入されることになる。また、昇降機構17によって可動部12を下降させる場合には、ベローズ50の内部の体積が減少する。そのため、排気口52を介してベローズ50の内部から外部に空気が排出されることになる。
【0054】
その他、吸気口51には、ベローズ50の外部から内部への空気の通過を許容し、ベローズ50の内部から外部への空気の通過を許容しない吸気バルブが設けられていてもよい。また、排気口52には、ベローズ50の内部から外部への空気の通過を許容し、ベローズ50の外部から内部への空気の通過を許容しない排気バルブが設けられていてもよい。
【0055】
図4では、ベローズ50の上端(可動部12の底面)とベローズ50の下端(固定部15の上面)の中間位置を基準として、吸気口51は、中間位置よりも低い位置に設けられている。すなわち、吸気口51は、可動部12よりも固定部15に近い側に設けられている。一方、排気口52は、中間位置よりも高い位置に設けられている。すなわち、排気口52は、固定部15よりも可動部12に近い側に設けられている。
【0056】
吸気口51が設けられる位置と比較して、排気口52が設けられる位置が高い理由は、ベローズ50内での空気の流れを促進することにある。低温の空気に比べて高温の空気は上昇しやすいため、排気口52を吸気口51よりも高い位置に設けることで、ベローズ50内の高温の空気がベローズ50の外部に排出されやすくなる(図4の矢印を参照)。さらに、排気口52をベローズ50の上端に近づけて配置することで、ベローズ50の内部のうち、可動部12の底面近傍の領域に高温の空気が滞留することが抑制される。
【0057】
次に、図5は、ベローズ50の第2の例を説明する図である。図5は、ベローズ50を、吸気口51を通る水平面(垂直方向に直交する面)で切断した断面を模式的に示している。図5に示すように、ベローズ50の断面形状は四角形状であって、ベローズ50の断面形状に現れる各辺に吸気口51が設けられている。そのため、ベローズ50には複数個の吸気口51が設けられている。
【0058】
なお、図5において、吸気口51は、四角形状の辺の中央部から四角形状の角部に向けて同方向にオフセットした位置に設けられている。すなわち、図5に示す例では、吸気口51は、四角形状の辺の中央部から反時計回りに角部に向けて偏った位置に設けられている。そのため、吸気口51を介してベローズ50の内部に導入された空気は、ベローズ50の内部において、垂直方向の軸(図5におけるベローズ50の中心部)の周りに旋回する流れを形成する。
【0059】
図5に示す例では、ベローズ50の内部で旋回する空気の流れを形成するため、吸気口51をオフセットした位置に設けたが、この例に限定されない。
【0060】
図6は、ベローズ50の第3の例を説明する図である。図5と同様に、図6は、ベローズ50を水平面で切断した断面を模式的に示している。図6のように、吸気口51に取り付けたフィン55によって、吸気口51を介してベローズ50の内部に進入した空気をベローズ50の壁側に偏向させて、旋回する空気の流れを形成してもよい。
【0061】
次に、図7は、ベローズ50の第4の例を説明する図である。図4と同様に、図7は、ベローズ50を垂直方向で切断した断面を模式的に示している。図7に示すように、ベローズ50の外部には、吸気口51と接続するダクト状の補助部材56が設けられていてもよい。補助部材56は、空気が流入する流入口と空気が流出する流出口とを有し、流出口は、吸気口51に接続されている。
【0062】
なお、ベローズ50の内部が換気されるタイミングで、補助部材56の流入口は、吸気口51よりも高い位置にあるものであってもよい。例えば、ベローズ50の内部を換気しないタイミングでは、補助部材56を固定部15に沿って横倒しの状態で保持し、ベローズ50の内部を換気するタイミングでは、補助部材56を垂直方向に立てた状態とするものであってもよい。補助部材56を横倒しの状態と垂直方向に立てた状態との間で遷移させるため、図示しないモータや、昇降機構17を用いてもよい。
【0063】
ベローズ50の内部が換気されるタイミングで、補助部材56の流入口が吸気口51よりも高い位置にあることにより、補助部材56を介して、地上から離れた位置での空気をベローズ50の内部に導入することができる。地上付近の空気は、地上からの照り返しなどによって高温となっている場合がある。一方、地上から離れた位置での空気は、地上付近の空気と比較して低温である場合が多い。そのため、低温である地上から離れた位置での空気をベローズ50の内部に導入することで、ベローズ50の内部や、可動部12を、短時間で冷却することができる。
【0064】
その他、吸気口51(換気口)を介してベローズ50の内部に導入された空気は、可動部12の近傍又は内部を通過した後、ベローズ50の外部に排出されるものであってもよい。すなわち、可動部12の送電コイル41と、ベローズ50の内部に導入された空気との間で、熱交換が可能なように空気の流れを形成してもよい。例えば、可動部12の底面に空冷用のフィンを設け、ベローズ50の内部の空気の流路上に当該空冷用のフィンが配置されてもよい。又は、可動部12の内部に空気が通過可能な通風管を形成し、送電コイル41の近傍又は内部に当該通風管が配置されてもよい。
【0065】
その他、排気口52(換気口)を介してベローズ50の外部に排出された空気は、送電コイル41に電力を供給する給電装置100の近傍又は内部を通過するものであってもよい。すなわち、給電装置100と、ベローズ50の外部に排出された空気との間で、熱交換が可能なように、空気の流れを形成してもよい。例えば、給電装置100の表面に空冷用のフィンを設け、ベローズ50の外部に排出された空気の流路上に当該空冷用のフィンが配置されてもよい。又は、給電装置100の内部に空気が通過可能な通風管を形成し、給電装置100を構成する部品の近傍又は内部に当該通風管が配置されてもよい。
【0066】
[昇降機構による昇降回数]
次に、昇降機構17による昇降回数について説明する。昇降機構17による可動部12の昇降に伴ってベローズ50の内部の体積が変化し、ベローズ50に設けた換気口を介して、ベローズ50の内部の換気が行われる。送電コイル41へ電力を供給する前に、制御部14は、昇降機構17を制御して可動部12を少なくとも所定回数だけ昇降させる。所定回数は事前に設定されたものであってもよいし、受電コイル22と送電コイル41の位置関係に基づいて設定されるものであってもよい。
【0067】
例えば、制御部14は、可動部12の高さに基づいて所定回数を設定してもよい。より具体的には、充電が行われていないときの可動部12(図3A参照)の高さと、充電が行われるときの可動部12(図3B参照)の高さの差が小さいほど、所定回数を多く設定してもよい。この理由は、高さの差が小さいほど、可動部12の昇降に伴うベローズ50の内部の体積の変化の割合が小さく、換気口を介して移動する空気の量が少なくなるためである。
【0068】
また、制御部14は、距離センサ20によって計測した、可動部12(又は送電コイル41)と受電コイル22との間の距離に基づいて所定回数を設定してもよい。より具体的には、充電が行われていないときの距離と、充電が行われるときの距離の差が小さいほど、所定回数を多く設定してもよい。
【0069】
さらに、制御部14は、上述した可動部12の高さ、又は、距離に基づいて、ベローズ50の内部の体積を推定し、推定した体積に基づいて、所定回数を設定してもよい。より具体的には、受電装置200の底面よりも下側の、可動部12の昇降可能範囲における、ベローズ50の内部の体積の変化を、制御部14は推定する。可動部12を最も低い位置まで下降させた際(図3A参照)の内部の体積をVIとし、可動部12を最も高い位置まで下降させた際(図3B参照)の内部の体積をVFとして、制御部14は、所定回数として、VI/(VF-VI)以下の最大の整数を設定してもよい。
【0070】
これにより、所定回数だけ行われる可動部12の昇降に伴って、ベローズ50の内部の体積に相当する量の空気が換気口を介して移動することになる。そのため、ベローズ50の内部が十分に換気される。
【0071】
[実施形態の効果]
以上詳細に説明したように、本実施形態に係る送電装置は、地上側に設けられ、地上に対して垂直方向に昇降する可動部と、可動部の下側に配置され、可動部を昇降させる昇降機構と、可動部に隣接して昇降機構を覆うカバー部材と、を備える。可動部は、車両に設けられた受電コイルへ非接触で電力を供給する送電コイルを有し、カバー部材は、カバー部材の内部と外部とを連通させる換気口を有し、昇降機構による可動部の昇降に伴って内部の体積が変化することで、換気口を介して内部が換気される。
【0072】
これにより、カバー部材内、又は、可動部を短時間で冷却して、電力の供給の効率を低下させず、電力の供給に対する温度による制限を緩和することができる。特に、充電が行われていないときに、例えば、日射を受けて、カバー部材内、又は、可動部が高温になったとしても、充電を開始する前に、カバー部材内、又は、可動部を短時間で冷却できる。その結果、電力の供給の効率を低下を抑制できる。さらには、温度による制限を緩和して、電力の供給を行うことができる。
【0073】
また、本実施形態に係る送電装置において、換気口には、外部の空気を内部に導入する吸気口と、内部の空気を外部に排出する排気口と、が含まれていてもよい。吸気口によって、カバー部材の外部の空気をカバー部材の内部に導入することができ、排気口によって、カバー部材の内部の空気をカバー部材の外部に排出することができる。その結果、カバー部材の内部が換気を行うことができる。その結果、カバー部材内、又は、可動部を短時間で冷却できる。
【0074】
また、本実施形態に係る送電装置において、カバー部材の上端と下端の中間位置を基準として、吸気口は、中間位置よりも低い位置に設けられ、排気口は、中間位置よりも高い位置に設けられていてもよい。低温の空気に比べて高温の空気は上昇しやすいため、排気口を吸気口よりも高い位置に設けることで、カバー部材内での空気の流れを促進することができる。さらに、排気口をカバー部材の上端に近づけて配置することで、カバー部材の内部のうち、可動部の底面近傍の領域に高温の空気が滞留することが抑制される。その結果、カバー部材内、又は、可動部を短時間で冷却できる。
【0075】
さらに、本実施形態に係る送電装置において、吸気口は、外部から内部への空気の通過を許容し、内部から外部への空気の通過を許容しない吸気バルブを有し、排気口は、内部から外部への空気の通過を許容し、外部から内部への空気の通過を許容しない排気バルブを有していてもよい。これにより、空気の逆流を防ぎつつ、カバー部材の内部の換気を行うことができる。その結果、カバー部材内、又は、可動部を短時間で冷却できる。
【0076】
また、本実施形態に係る送電装置において、吸気口を介して外部から内部に導入された空気は、内部において、垂直方向の軸の周りに旋回する流れを有するものであってもよい。これにより、カバー部材の内部に高温の空気が滞留することが抑制され、カバー部材の内部の換気を行うことができる。その結果、カバー部材内、又は、可動部を短時間で冷却できる。
【0077】
さらに、本実施形態に係る送電装置において、カバー部材は、複数の吸気口を有するものであってもよい。これにより、カバー部材の内部の換気を速めることができる。
【0078】
また、本実施形態に係る送電装置において、垂直方向に直交し吸気口を通過する面でのカバー部材の断面形状は四角形状であって、複数の吸気口は、四角形状の辺の中央部から四角形状の角部に向けて同方向にオフセットした位置に設けられるものであってもよい。これにより、吸気口を介して外部から内部に導入された空気が、垂直方向の軸の周りに旋回する流れを形成し、カバー部材の内部に高温の空気が滞留することが抑制される。その結果、カバー部材の内部の換気を行うことができ、カバー部材内、又は、可動部を短時間で冷却できる。
【0079】
さらに、本実施形態に係る送電装置は、カバー部材の外部に位置する補助部材であって、空気が流入する流入口と空気が流出する流出口とを有する補助部材を更に有していてもよい。ここで、流出口は吸気口に接続され、内部が換気されるタイミングで、流入口は吸気口よりも高い位置にあるものであってもよい。これにより、低温である地上から離れた位置での空気をカバー部材の内部に導入して、カバー部材の内部や、可動部を、短時間で冷却することができる。
【0080】
また、本実施形態に係る送電装置において、換気口を介して内部に導入された空気は、送電コイルの近傍又は内部を通過するものであってもよい。これにより、送電コイルを短時間で冷却することができる。
【0081】
さらに、本実施形態に係る送電装置において、換気口を介して外部に排出された空気は、送電コイルに電力を供給する給電装置の近傍又は内部を通過するものであってもよい。これにより、給電装置を短時間で冷却することができる。
【0082】
また、本実施形態に係る送電装置は、昇降機構を制御するコントローラを更に備え、コントローラは、送電コイルへ電力を供給する前に、可動部を少なくとも所定回数だけ昇降させるものであってもよい。これにより、カバー部材の内部や可動部を確実に換気できる。
【0083】
さらに、本実施形態に係る送電装置において、昇降機構を制御するコントローラは、可動部の高さに基づいて所定回数を設定するものであってもよい。また、充電が行われていないときの可動部の高さと、充電が行われるときの可動部の高さの差が小さいほど、所定回数を多く設定してもよい。これにより、可動部を必要以上に昇降させることなく、カバー部材の内部や可動部を確実に換気できる。その結果、充電を開始するまでの時間を短縮できる。
【0084】
また、本実施形態に係る送電装置は、受電コイルと送電コイルの間の距離を測る距離センサを更に備え、昇降機構を制御するコントローラは、距離センサから距離を取得し、距離に基づいて所定回数を設定するものであってもよい。また、充電が行われていないときの距離と、充電が行われるときの距離の差が小さいほど、所定回数を多く設定してもよい。これにより、可動部を必要以上に昇降させることなく、カバー部材の内部や可動部を確実に換気できる。その結果、充電を開始するまでの時間を短縮できる。
【0085】
さらに、本実施形態に係る送電装置において、車両の底面よりも下側の、可動部の昇降可能範囲において、可動部を最も低い位置まで下降させた際の内部の体積をVIとし、可動部を最も高い位置まで下降させた際の内部の体積をVFとし、昇降機構を制御するコントローラは、所定回数として、VI/(VF-VI)以下の最大の整数を設定するものであってもよい。これにより、所定回数だけ行われる可動部の昇降に伴って、カバー部材の内部の体積に相当する量の空気が換気口を介して移動することになる。そのため、カバー部材の内部が十分に換気される。
【0086】
上述の実施形態で示した各機能は、1又は複数の処理回路によって実装されうる。処理回路には、プログラムされたプロセッサや、電気回路などが含まれ、さらには、特定用途向けの集積回路(ASIC)のような装置や、記載された機能を実行するよう配置された回路構成要素なども含まれる。
【0087】
以上、実施形態に沿って本発明の内容を説明したが、本発明はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変形及び改良が可能であることは、当業者には自明である。この開示の一部をなす論述および図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【0088】
本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0089】
12 可動部
14 制御部
15 固定部
17 昇降機構
18 駆動制御部
19 温度センサ
20 距離センサ
22 受電コイル
41 送電コイル
43 カバー(カバー部材)
50 ベローズ(カバー部材)
51 吸気口(換気口)
52 排気口(換気口)
55 フィン
56 補助部材
100 給電装置
113 インバータ
200 受電装置
300 送電装置
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7