(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151048
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】多孔中空糸膜および多孔中空糸膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
B01D 69/00 20060101AFI20220929BHJP
B01D 67/00 20060101ALI20220929BHJP
B01D 69/02 20060101ALI20220929BHJP
B01D 69/08 20060101ALI20220929BHJP
B01D 71/10 20060101ALI20220929BHJP
B01D 71/38 20060101ALI20220929BHJP
B01D 71/40 20060101ALI20220929BHJP
B01D 71/48 20060101ALI20220929BHJP
B01D 71/52 20060101ALI20220929BHJP
B01D 71/62 20060101ALI20220929BHJP
B01D 71/68 20060101ALI20220929BHJP
C02F 1/44 20060101ALI20220929BHJP
C08J 9/26 20060101ALI20220929BHJP
D01F 6/04 20060101ALI20220929BHJP
D01F 6/10 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
B01D69/00
B01D67/00
B01D69/02
B01D69/08
B01D71/10
B01D71/38
B01D71/40
B01D71/48
B01D71/52
B01D71/62
B01D71/68
C02F1/44 C
C08J9/26 102
C08J9/26 CER
C08J9/26 CEZ
D01F6/04 C
D01F6/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021053939
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】小川 大地
(72)【発明者】
【氏名】松尾 龍一
(72)【発明者】
【氏名】金澤 正晃
【テーマコード(参考)】
4D006
4F074
4L035
【Fターム(参考)】
4D006GA02
4D006HA18
4D006KC03
4D006MA01
4D006MA21
4D006MA22
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4D006MC11
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4L035FF01
(57)【要約】
【課題】逆洗回復性に優れた多孔中空糸膜を提供する。
【解決手段】 多孔中空糸膜は、樹脂を含み、膜厚が0.4~5.0mmである。多孔中空糸膜の内側表面の平均孔径D1および外側表面の平均孔径D2が、水中に浸漬して走査型プローブ顕微鏡(SPM)により測定した時、下記(A)~(B)を充足する。(A)10≦D1≦700nm、(B)1.1D1≦D2≦2.0D1。膜間差圧100kPaにおける純水の透過水量が250~1200L/m2/hrである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂を含む多孔中空糸膜であって、
膜厚が0.4~5.0mmであり、
多孔中空糸膜の内側表面の平均孔径D1および外側表面の平均孔径D2が、水中に浸漬して走査型プローブ顕微鏡(SPM)により測定した時、下記(A)~(B)を充足し、
(A) 10≦D1≦700nm
(B) 1.1D1≦D2≦2.0D1
膜間差圧100kPaにおける純水の透過水量が250~1200L/m2/hrである、
多孔中空糸膜。
【請求項2】
前記樹脂は親水性樹脂であり、前記親水性樹脂の水中での気泡接触角が105~150°である、
請求項1に記載の多孔中空糸膜。
【請求項3】
前記樹脂は、ポリアルキレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリアセタール、アクリル樹脂、セルロース、ポリビニルピロリドン及びそれらの誘導体から選ばれる1種またはそれらの組み合わせである、
請求項1または2に記載の多孔中空糸膜。
【請求項4】
(a)樹脂と、溶剤とを含む製膜原液を準備し、
(b)前記製膜原液を外部凝固液および内部凝固液に接触させて製膜する、
多孔中空糸膜の製造方法であって、
多孔中空糸膜の膜間差圧100kPaにおける純水の透過水量が250~1200L/m2/hrであり、
外部凝固液の凝固性は内部凝固液の凝固性よりも低く、かつ、外部凝固液は、前記製膜原液と同じ溶剤を3~15重量%含有する、
多孔中空糸膜の製造方法。
【請求項5】
(b)において、前記製膜原液を外部凝固液に浸漬させるとともに、前記製膜原液の内部に内部凝固液を供給して、多孔中空糸膜を形成する、
請求項4に記載の多孔中空糸膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、多孔中空糸膜および多孔中空糸膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ろ過膜を用いた水処理は、下水及び産業排水等の処理に広く利用されている。しかしながら、ろ過を継続するうちに、被ろ過水中に含まれる物質が膜表面及び流路に付着、蓄積し、流路が閉塞することにより、ろ過能力が低下していくという問題点がある。
【0003】
一般にMBR(メンブレンバイオリアクター)のように活性汚泥をろ過する場合、ろ過を続けていくと膜表面又は膜内部に排水や微生物由来の有機物等(ファウラント)が堆積し(目詰り)、それらがろ過抵抗となるため、ろ過能力が落ちてしまうことが知られている。そのため、ろ過運転の途中にろ過をせずに高流速の水流で堆積物を剥ぎ取るフラッシング、気泡を膜にあてて堆積物を剥ぎ取るエアースクラビング、ろ過と逆方向に処理水やエアー等の気体を流し洗浄する逆洗等が取り入れられている。更には、定期的に薬品洗浄を行ってろ過能力を高く維持することも行われている。
【0004】
このように膜の目詰まりが発生しやすいと、上記のような逆洗を頻繁に行う必要がある。また、逆洗によっても、中空糸膜に堆積したファウラントを充分に除去できず、ろ過性能が充分に回復しないときは、逆洗の際に、化学薬品を用いること等も考えられる。このように、逆洗の回数を増加させたり、化学薬品を用いたりすることは、ろ過による分離作業の効率を低下させ、さらに、ランニングコストを増加させる。このため、ろ過の作業効率を高め、ランニングコストを抑えるために、化学薬品を用いなくても、好適に逆洗できることや、逆洗回数を減らしても、安定したろ過効率を確保できること等が求められている。
【0005】
逆洗にて効率よくろ過性能を回復させるために膜素材の親水化によるアプローチでの検討されている。以下にその例を示す。
【0006】
フッ化ビニリデン系樹脂を用いた膜のように疎水性の素材を用いた高分子多孔膜は、高い化学的耐久性と高い物理的強度および物理的耐久性を有する素材として注目されている。一方で、疎水性であることから汚れやすいため、有機物等による汚染(目詰り)が起きやすいことが課題であり、素材に親水性を付与することが検討されている(特許文献1)。
【0007】
また、特許文献2には、親水性の非イオン性基含有モノマーとの共重合により得られた塩化ビニル系共重合体を用いることで耐汚染性と機械的強度、耐薬品性及び透水性を確保した高分子多孔膜の検討がされている。
【0008】
これらの高分子多孔膜は、素材の親水化により耐汚染性を向上させ、膜処理性能を向上させている。しかしながら、親水性材料は比較的機械的強度が低く、逆洗などの負荷に機械的に耐えるためには、膜厚を厚くせざる得なくなり、その結果、逆洗による洗浄効果の向上が限定的になる問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2016-55215号公報
【特許文献2】特開2012-503210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、従来技術の上述した問題点に鑑み、排水処理などの水処理分野、食品工業分野等において、膜厚が大きくとも、原水中の有機物吸着が少なく耐汚染性に優れ、かつ好適な細孔構造を有することにより、高透過性能工程制御性に優れた親水性樹脂多孔中空糸膜を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、原水(被処理水)側表面である中空糸膜内側が緻密で処理水側表面(中空糸膜外側表面)が粗大になるように細孔構造を制御することにより、肉厚な膜であっても逆洗による原水中の有機物吸着物の除去による逆洗回復性に優れた多孔中空糸膜が得られることを見出し、本発明をなすに至った。
【0012】
本発明の第1観点の多孔中空糸膜は、樹脂を含み、膜厚が0.4~5.0mmであり、
多孔中空糸膜の内側表面の平均孔径D1および外側表面の平均孔径D2が、水中に浸漬して走査型プローブ顕微鏡(SPM)により測定した時、下記(A)~(B)を充足し、
(A) 10≦D1≦700nm
(B) 1.1D1≦D2≦2.0D1
膜間差圧100kPaにおける純水の透過水量が250~1200L/m2/hrである。
第2観点の多孔中空糸膜は、第1観点の多孔中空糸膜であって、前記樹脂は親水性樹脂であり、前記親水性樹脂の水中での気泡接触角が105~150°である。
第3観点の多孔中空糸膜は、第1観点または第2観点の多孔中空糸膜であって、前記樹脂は、ポリアルキレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリアセタール、アクリル樹脂、セルロース、ポリビニルピロリドン及びそれらの誘導体から選ばれる1種またはそれらの組み合わせである。
第4観点の多孔中空糸膜の製造方法は、
(a)樹脂と、溶剤とを含む製膜原液を準備し、
(b)前記製膜原液を外部凝固液および内部凝固液に接触させて製膜する、
多孔中空糸膜の製造方法であって、
多孔中空糸膜の膜間差圧100kPaにおける純水の透過水量が250~1200L/m2/hrであり、
外部凝固液の凝固性は内部凝固液の凝固性よりも低く、かつ、外部凝固液は、前記製膜原液と同じ溶剤を3~15重量%含有する。
第5観点の多孔中空糸膜の製造方法は、第4観点の製造方法であって、
(b)において、前記製膜原液を外部凝固液に浸漬させるとともに、前記製膜原液の内部に内部凝固液を供給して、多孔中空糸膜を形成する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の多孔中空糸膜によれば、多孔中空糸膜内表面よりも外表面の平均孔径が大きい構造を有することにより、原水を多孔中空糸膜内表面に供給して濾過を行うと、原水中の微生物やその代謝物が孔径の小さい内表面で捕捉され(高分画性)、一方、内表面から外表面へ向かって孔径が大きくなることにより、高透過性が得られる。上記特長を有する膜を用いることにより、使用膜面積の低減や運転圧力の低減が可能となる。また、膜の使用期間(寿命)を延ばすことができ、薬品洗浄頻度を少なくすることができる。ひいては造水コストの低減を達成できる。
【0014】
本発明の多孔中空糸膜の製造方法によれば、親水性樹脂を溶剤に溶解させて紡糸原液を作製するに当たり、製孔剤を加えることにより、得られる中空糸膜に多孔性を与える。さらに、外部凝固浴に製膜原液と同じ溶剤を加えて中空糸内面を形成することにより、中空糸膜外面の凝固を緩慢させて、中空糸外面に疎大孔が形成され、内部表面孔よりも外部表面孔の方が大きい親水性樹脂多孔中空糸膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態の多孔質中空糸膜の製造方法の製造工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(1)多孔中空糸膜
(樹脂)
本開示の多孔中空糸膜は、樹脂で構成されている。このような樹脂としては、当該分野で用いられているものであればよい。例えば、塩化ビニル系重合体、フッ化ビニリデン系重合体、ポリオレフィン系重合体(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、スルホン系重合体、酢酸セルロース系重合体、アクリロニトリル系重合体、ビニルアルコール系重合体、イミド系重合体等の種々の高分子材料が挙げられる。なかでも、塩化ビニル系重合体、フッ化ビニリデン系重合体、ポリオレフィン系重合体(ポリエチレン、ポリプロピレン等)等が好ましく、塩化ビニル系重合体がより好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
【0017】
塩化ビニル系重合体は、塩化ビニルモノマーのホモポリマーであってもよいが、例えば、塩化ビニルモノマーに由来する構造単位を、中空糸膜を構成する全樹脂において、40質量%以上(好ましくは50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、85質量%以上)を占めるものが挙げられる。
【0018】
塩化ビニルモノマーと共重合可能なモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン等のα-オレフィン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;ブチルビニルエーテル、セチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;スチレン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニル類;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル類;N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等のN-置換マレイミド類、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、アクリロニトリル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0019】
(親水性樹脂)
中空糸膜を構成する樹脂は、汚染物質の吸着抑制および、洗浄による回復性の観点から親水性基を有していていることが望ましい。親水性基を有するモノマーは、例えば、中空糸膜を構成する全樹脂におけるモノマーにおいて、40モル%以下(好ましくは35モル%以下、30モル%下、25モル%下、20モル%下、15モル%以下)を占めるものが挙げられる。
【0020】
親水性モノマーとしては、例えば、(1)アミノ基、アンモニウム基、ピリジル基、イミノ基、ベタイン構造等のカチオン性基含有ビニルモノマー及び/又はその塩(以下、「カチオン性モノマー」と記載することがある)、(2)水酸基、アミド基、エステル構造、エーテル構造等の親水性の非イオン性基含有ビニルモノマー(以下、「非イオン性モノマー」と記載することがある)、(3)カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等のアニオン性基含有ビニルモノマー及び/又はその塩(以下、「アニオン性モノマー」と記載することがある)(4)その他のモノマー等が挙げられる。
【0021】
具体的には、(1)カチオン性モノマーとしては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-又は4-ビニルピリジン等のビニルピリジン、N-ビニルイミダゾール等のN-ビニル複素環化合物類等が挙げられ、(2)非イオン性モノマーとしては、ビニルアルコール、ポリビニルブチラール、N-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(エチレングリコールの重合度が1~30)等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられ、(3)アニオン性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等の重合性の不飽和基を有するカルボン酸モノマー及び/又はその酸無水物等が挙げられ、(4)N-ビニル-2-ピロリドン、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート等が挙げられる。さらに、特許第5097298号、特許第5791592号の公報に記載された親水性モノマー、架橋性モノマー、塩化ビニルモノマー等と共重合可能なモノマー等の樹脂材料を用いることができる。親水性モノマーは、ホモポリマー又は共重合体として中空糸膜を構成する樹脂にブレンドしてもよいし、中空糸膜を構成する樹脂との共重合体としてもよい。共重合体、二元系、三元以上の系であってもよく、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体、ペンダント共重合体等のいずれであってもよい。
【0022】
また、上述した膜モジュールを構成し得る樹脂に加えて、親水性を有する重合体を組み合わせて用いてもよい。親水性を有する重合体としては、例えば、ポリアルキレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ポリアセタール、アクリル樹脂、セルロース、ポリビニルピロリドン及びこれらの誘導体から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0023】
ポリアルキレングリコール誘導体としては、例えば、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジアセテート等のジエチレングリコール誘導体;トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールジアセテート等のトリエチレングリコール誘導体;テトラエチレングリコール、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、テトラエチレングリコールジアセテート等のテトラエチレングリコール誘導体;ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジアセテート等のジプロピレングリコール誘導体;トリプロピレングリコール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエール、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールジアセテート等のトリプロピレングリコール誘導体;テトラプロピレングリコール、テトラプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノエチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、テトラプロピレングリコールジアセテート等のテトラプロピレングリコール誘導体などが挙げられる。
【0024】
ポリビニルアルコール誘導体としては、末端アルキル基変性ポリビニルアルコール、末端メルカプト基変性ポリビニルアルコール等が挙げられる。ポリビニルブチラール誘導体としては、積水化学製の「エスレックB」シリーズ、「エスレックK(KS)」シリーズも好ましい。さらに好ましくは、アルコール溶解性(特にエタノール)の観点で積水化学製の「エスレックB」シリーズが挙げられる。
【0025】
ポリ酢酸ビニル誘導体としては、酢酸ビニルと各種ビニルモノマーと共重合させて鹸化させてもよい。共重合用モノマーとしては、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ヒドロキシエチル、スチレン、ブタジエン、アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、ジアセトンアクリルアミド(活性メチレン基導入用)等を挙げることができる。
【0026】
アクリル誘導体としては、アクリル酸、アクリル酸エステル又はアクリロニトリルが挙げられる。セルロース誘導体としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。
【0027】
ポリビニルピロリドン誘導体としては、下記の一般式(1)で表される構造単位を有するビニルピロリドン誘導体のホモポリマー、ビニルピロリドンと他のモノマーとのコポリマー及びビニルピロリドン誘導体と他のモノマーとのコポリマー等が挙げられる。
【0028】
一般式(1)のR1~R3はそれぞれ水素原子又は炭素数1~8の炭化水素基を表す。R1~R3の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ターシャリブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、イソペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基等のアルケニル基;フェニル基、トルイル基、キシリル基等のアリール基が挙げられる。
【0029】
親水性を有する重合体は、例えば、中空糸膜を構成する全樹脂において、40質量%以下(好ましくは35質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下)を占めるものが挙げられる。下限値は、5重量%以上、8重量%以上、10重量%以上を占めるものが挙げられる。この範囲内とすることにより、中空糸膜への被ろ過水の浸透を確保すると同時に、十分な膜強度を確保することができ、座屈、折れ、剥離などを防止することができる。
【0030】
このような重合体を用いることにより、汚染物質が中空糸膜に付着し難くなる。仮に付着しても逆洗等の洗浄工程により容易に汚染物質を除去することができる。つまり、中空糸膜を構成する樹脂として、親水性を有する樹脂又は親水性基を有するモノマーを用いる場合には、中空糸膜が有する細孔に被ろ過水等が浸透する際、中空糸膜表面との接触角が小さくなり、つまり、濡れ安く、被ろ過水が細孔へ浸透しやすくなる。その結果、細孔へ浸透する被ろ過水が増加し、ろ過性能が向上する。特に、中空糸膜において、上述した親水性重合体と疎水性重合体との共重合体とすることにより、防汚性、ろ過性、強度をバランスよく維持することができる。例えば、このようなバランスを良好に維持するために、中空糸膜を構成する材料を、(a)ポリ塩化ビニルと親水性を有する重合体とのブレンド樹脂、(b)塩化ビニルモノマーと親水性モノマーとの共重合体によるろ過膜とすることができる。このような材料としては、具体的には、塩化ビニルモノマー由来の構造単位とポリアルキレングリコールとの共重合体、塩化ビニルモノマー由来の構造単位とポリ酢酸ビニル又はポリビニルピロリドンとの共重合体が好ましい。
【0031】
中空糸膜は、このような材料を用いて中空糸膜を作製することにより、防汚性と高い機械的強度とを確保することができ、逆洗等の洗浄工程により容易に汚染物質を除去することができる。
【0032】
(水中接触角)
水中における中空糸膜の表面に対する気泡の接触角は105°~150°が好ましく、より好ましくは110°~140°が好ましい。この範囲の接触角を有することにより、中空糸膜に対する被ろ過水の浸透性が高まるため、ろ過性能を向上させることができる。また、この範囲の接触角を有することにより、肉厚な中空膜であっても、ろ過側表面(内表面)より透過側表面(外表面)が大きい場合は、逆洗時に汚染物質が剥がれ、排出されるため汚染物質の蓄積性が回避される。
【0033】
上述した中空糸膜を構成する材料における親水性基又は親水性を有する重合体の種類又は含有率を調整することにより、このような接触角を得ることができる。
【0034】
(多孔中空糸膜の内径および肉厚)
中空糸膜の内径は1mm~10mmであることが好ましい。逆洗においても十分耐える強度を担保する観点からは、1mm~5mmがより好ましい。膜厚は、0.4mm~5mmであることが好ましく、ろ過性能の観点からは膜厚は0.4mm~2.0mmがより好ましい。このような中空糸膜を用いることにより、例えば、上述したように、水中における中空糸膜の表面に対する気泡の接触角が105°~150°の膜を用いた場合において、その親水性の構成材料と相まって、通常の中空糸膜(肉厚0.05~0.4mm程度)より肉厚が大きくとも逆洗等の洗浄工程により容易に汚染物質を除去することができる。
【0035】
(平均孔径と内表面と外表面の平均孔径比率)
本発明における多孔中空糸膜の特徴は、多孔中空糸膜の外表面の平均孔径が、内表面の平均孔径よりも大きいことである。したがって、被処理液(原水)を多孔中空糸膜の内表面に供給し、内表面層で被処理液中の除去すべき粒子を捕捉し、外表面側で孔径が大きくなっていることにより、被処理液の透過性の向上および、逆洗における汚染物質の除去が確保され、汚染が蓄積されることが回避できる。
【0036】
多孔中空糸膜の平均孔径としては、内表面の平均孔径D1nmと外表面の平均孔径D2nmは次式を満足する範囲内にあることが好ましい。
【0037】
10≦D1≦700nm
1.1D1≦D2≦2.5D1
より好ましくは、
10≦D1≦400nm
1.1D1≦D2≦2.2D1
である。上記よりもさらに好ましくは、次式で示される範囲である。
【0038】
10≦D1≦90nm
1.1D1≦D2≦2.0D1
内表面の孔径が小さすぎると微粒子の捕捉は可能ではあるが、透過性が不十分になり、孔径が大きすぎると多孔中空糸膜の強度が低下する場合がある。
【0039】
本発明の多孔中空糸膜の膜断面は、フィンガーライク構造やボイドを有していても良い。また、多孔膜内の空間の体積比である空隙率は50~90%が好ましく、より好ましくは60~90%である。空隙率が小さすぎると十分な純水透過速度を得ることが困難であり、大きすぎると膜の強度が低下し、膜濾過の実施中に多孔膜の破断や折れが発生し、膜としての耐久性に欠ける。
【0040】
また、本発明の平均孔径の測定は、測定試験片を水中に浸漬させ、水中における走査型プローブ顕微鏡(SPM)により測定されることが好ましい。親水性樹脂でできた膜は、その特性上、乾燥すると膜の微細構造が変化し、膜細孔が収縮する。排水処理などの実運転では、膜は水に常に触れた状態でろ過を行うため、膜孔径の測定は、実使用条件である水中で行うことが好ましい。
【0041】
(純水透過水量)
本発明の多孔中空糸膜は、膜間差圧100kPaにおける純水の透過水量が250L/(m2・h)以上、1300L/(m2・h)以下であることが適しており、400L/(m2・h)以上、1000L/(m2・h)以下であることがより好ましく、630L/(m2・h)以上、900L/(m2・h)以下であることがより好ましい。
【0042】
純水透過水量が低すぎると、処理量に対し、多くの膜面積が必要になるために設置面積の増大やコスト増大の懸念があり、純水透過水量が高すぎると処理対象物質の阻止性能が下がり、処理水質が下がる懸念がある。
【0043】
(逆洗回復性)
多孔中空膜の逆洗における回復性の評価は、特に限定されないが、たとえば、ろ過試験における膜間差圧の変化を確認することで評価できる。被処理液を多孔中空膜で定流量ろ過を行い、一定のろ過時間経過後にろ過水側、つまり、膜の外側からろ過水を流す逆洗を行うことで、逆洗ができる。この逆洗後の膜間差圧の経過時間毎に確認することで逆洗での回復性を確認できる。定流量ろ過の条件は、単位膜面積当たりの処理量である透過流束は、0.5~1.5m/dであることが望ましい。また、ろ過・逆洗サイクルをくり返す積算時間は、汚染物質の蓄積性を評価する上では、3日以上が好ましく、7日以上がより好ましい。
【0044】
(2)多孔中空糸膜の製造方法
多孔中空糸膜は、熱誘起相分離法(TIPS)、非溶媒誘起相分離法(NIPS)、延伸法など、当該分野で公知の方法のいずれを利用して製造してもよい。なかでも、NIPS法によって製造することは、親水性樹脂が細孔表面に析出し、その親水性の効果を最大限に発揮させることができるため好ましい。
【0045】
例えば、NIPS法を利用する場合、膜を構成する材料(樹脂)及びその良溶媒(溶剤)を含む樹脂溶液を調製する。樹脂溶液は、製孔剤のような任意の添加物を含んでもよい。この場合の良溶媒は特に限定されるものではなく、材料(樹脂)の種類等によって適宜選択することができる。例えば、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等が挙げられる。添加物としては、リチウムクロライド、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0046】
上述した樹脂溶液を凝固させるために、通常、
図1に示すような多孔中空糸膜製造装置100が用いられる。多孔中空糸膜製造装置100は、凝固槽30と、凝固槽内に溜められた非溶媒2と、紡糸金型20と、紡糸金型から吐出された樹脂溶液1を搬送するローラ5と、を備えている。紡糸金型20は、樹脂溶液1を紡糸する。紡糸金型20の吐出口20aは、同心円状の2重ノズル形状となっている。この紡糸金型20は、凝固槽30に紡糸できるように凝固槽30の内又は外あるいは外から内に及んで配置されていてもよい。例えば、吐出口20aを供えた紡糸金型20が、凝固槽30内部に、つまり、非溶媒2に浸漬されて配置されているものが挙げられる。このように、凝固槽30内部に紡糸金型20が配置されている場合には、樹脂溶液1が空気に触れることなく非溶媒2中に直接吐出され、速やかに相分離が開始されるため、多孔質な表面となる。
【0047】
中空糸膜の形成過程は、凝固槽30内の非溶媒2と樹脂溶液1中の溶媒との拡散により引き起こされる。この際、中空糸膜内表面の形成は、2重ノズルの内側の内部凝固液(非溶媒)との拡散で成り立つ。外表面も凝固槽30内の非溶媒2(外部凝固液)との拡散にて成り立つ。ここで膜内外表面あたりの非溶媒の量を比べる。2重ノズル内側の内部凝固液(非溶媒)の量は、中空糸膜の内径約0.4~5.0といった空間にしか存在できず、凝固槽30内の非溶媒2(外部凝固液)と比べて圧倒的に量が少ない。樹脂溶液1から非溶媒2へ溶媒が拡散した非溶媒(内部凝固液)と溶媒の混合液は、周囲に拡散しづらい。そのために、樹脂溶液1中の溶媒の拡散速度は、内表面形成に関わる方が圧倒的に小さくなる。膜細孔形成において、拡散がある程度進行すると、樹脂溶液1は、固化が始まるために孔の成長が停止する。そのため、通常、膜形成における孔の成長時間がより稼げる内表面の孔の大きさが大きくなる。すなわち、被処理液が接触する内表面の孔が外表面より大きくなる。結果として、中空糸膜は汚染物質が膜肉厚部に蓄積し、ろ過性能が低下する。本発明は、本現象に鑑み、検討を行ったものであり、以下を行うことで内表面より外表面の孔を大きくすることを突き止めた。
【0048】
つまり、多孔中空糸膜の製造において、樹脂溶液中の溶媒の拡散速度を内表面より外表面の方を下げることで孔の成長時間を稼ぐことで、孔が大きくなることを突き止めた。
【0049】
その方法としては、内部凝固液よりも凝固性が低く、かつ製膜原液と同じ溶剤(溶媒)を3~15重量%(対外部凝固液重量)含有する外部凝固液に接触させる。溶剤の濃度は、3~10重量%(対外部凝固液重量)がより好ましい。比率が大きいほど、外表面の孔の大きさを大きくすることができるが、重量比を大きくしすぎると凝固浴中の比重が高くなり、吐出した中空膜が浮くことにより中空状に形成できなくなる。
【実施例0050】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明は本実施例によりなんら限定されるものではない。
【0051】
(純水透過水量の測定)
有効長が30cmの片端開放型の多孔中空糸膜モジュールを用いて、原水として純水を利用し、濾過圧力が50kPa、温度が25℃の条件で多孔中空糸膜の内側から外側に濾過(内圧濾過)して時間当たりの透水量を測定し、単位膜面積、単位時間、単位圧力当たりの透水量に換算した数値で算出した。
【0052】
(平均孔径の測定)
膜表面の平均孔径は、走査型プローブ顕微鏡で測定した。中空糸膜を横0.5mm×縦10mmのサイズにカットしたものを、試料台に設置し、25℃、大気圧環境下で水に浸漬させた状態で試料台を走査型プローブ顕微鏡にセットし、サンプルの表面状態を測定した。カンチレバーは、日立ハイテクサイエンス製のSI-DF3P2を使用し、1μm×1μmの範囲をスキャンした。得られた画像データに対して、画像計測ソフトWinROOFを用いて解析し、孔径とその分布から平均孔径を算出した。測定は、最低でも3か所行い、3か所の平均を平均孔径とした。
【0053】
(膜の気泡の接触角の測定)
水中において気泡が中空糸膜表面に接触する際の接触角を、接触角測定装置(協和界面科学社製、型番DMo-501)により測定した。中空糸膜を長さ1cmのサイズにカットし、中空部を半割りしたものを試料片とした。試料台に試料片を設置し、25℃、大気圧環境下で水に浸漬させた状態で、試料台を固定し、5uLの気泡を膜外表面に吸着し、測定した。
【0054】
(逆洗回復性の評価)
逆洗回復性の評価は、被ろ過水として500ppmのウシ血清アルブミン(シグマアルドリッチ社製:A7906-10G)のリン酸緩衝溶液を用いた。有効長10cmの膜をハウジングに固定し、両端解放型のモジュールを作製し、内圧式ろ過にて試験を行った。運転サイクルは、ろ過フラックス1.0m/日(フラックス(m/日)はろ過流量(m3/日)を中空糸膜内面積m2で割った値)の定量ろ過を10分間、その後、逆洗フラックス1.5m/日の定量制御での逆洗を1分間とした。運転は、少なくとも3日間は、行い、12時間後の逆洗終了後の膜間差圧をT1[kPa]、3日後の逆洗終了後の膜間差圧をT2[kPa]とし、逆洗回復性の指標として、T2-T1[kPa]を用いた。
なお、T2-T1の評価基準を以下に示す。
【0055】
X:3未満
Y:3以上15未満
Z:15以上
【0056】
(実施例1)
膜基材樹脂として塩化ビニル系共重合樹脂(積水化学工業株式会社製)と、溶剤としてジメチルアセトアミド(三菱ガス化学株式会社製、DMAc)を重量比で20:80の割合となるように樹脂溶液を調製した。水を二重管ノズルの内側に注入させ、また樹脂溶液を二重管ノズルの外側に連続的に凝固浴に吐出させ相分離により多孔質の中空糸膜を得た。凝固浴の組成は、水とDMAcの重量比が95:5の割合となるように調整した。得られた中空糸状の膜は、内径3.0mm、肉厚0.95mmであった。また、水中の気泡接触角は、134°であった。内表面の平均孔径D1は、47nm、外孔径は、52nmであった。100kPaにおける純水透水量は、833L/m2/hrであった。逆洗回復性の試験結果は、3kPaであった。
【0057】
(実施例2)
膜基材樹脂として酢酸セルロース樹脂(富士フイルム和光純薬株式会社製)と、溶剤としてジメチルスルホキシド80重量%(富士フイルム和光純薬株式会社製、試薬特級、DMSO)を重量比で20:80の割合となるように樹脂溶液を調製した。水を二重管ノズルの内側に注入させ、また樹脂溶液を二重管ノズルの外側に連続的に凝固浴に吐出させ相分離により多孔質の中空糸膜を得た。凝固浴の組成は、水とDMSOの重量比が85:15の割合となるように調整した。得られた中空糸状の試験結果は、表1の通りである。
【0058】
(比較例1)
膜基材樹脂としてポリフッ化ビニリデン樹脂(アルケマ株式会社製、Kynar 761A)と、溶剤としてN-メチル2--ピロリドン75重量%(富士フイルム和光純薬株式会社製、NMP)、ポリビニルピロリドン(富士フイルム和光純薬株式会社製、K30)を重量比で17:75:8の割合となるように樹脂溶液を調製した。水を二重管ノズルの内側に注入させ、また樹脂溶液を二重管ノズルの外側に連続的に凝固浴に吐出させ相分離により多孔質の中空糸膜を得た。凝固浴の組成は、水とNMPの重量比が85:15の割合となるように調整した。得られた中空糸状の試験結果は、表1の通りである。
【0059】
(比較例2)
膜基材樹脂として塩化ビニル系共重合樹脂(積水化学工業株式会社製)と、溶剤としてジメチルアセトアミド(三菱ガス化学株式会社製、DMAc)を重量比で20:80の割合となるように樹脂溶液を調製した。水を二重管ノズルの内側に注入させ、また樹脂溶液を二重管ノズルの外側に連続的に凝固浴に吐出させ相分離により多孔質の中空糸膜を得た。凝固浴の組成は、水を用いた。得られた中空糸状の膜は、内径0.5mm、肉厚0.2mmであった。得られた中空糸状の試験結果は、表1の通りである。
【0060】
(比較例3)
膜基材樹脂として塩化ビニル系共重合樹脂(積水化学工業株式会社製)と、溶剤としてジメチルアセトアミド(三菱ガス化学株式会社製、DMAc)を重量比で20:80の割合となるように樹脂溶液を調製した。水を二重管ノズルの内側に注入させ、また樹脂溶液を二重管ノズルの外側に連続的に凝固浴に吐出させ相分離により多孔質の中空糸膜を得た。凝固浴の組成は、水を用いた。得られた中空糸状の膜は、内径3.0mm、肉厚0.95mmであった。得られた中空糸状の試験結果は、表1の通りである。
【0061】