(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151057
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】印刷装置および印刷制御方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20220929BHJP
B41J 2/165 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
B41J2/01 303
B41J2/01 401
B41J2/165 301
B41J2/165 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021053954
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000201113
【氏名又は名称】船井電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148460
【弁理士】
【氏名又は名称】小俣 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100168125
【弁理士】
【氏名又は名称】三藤 誠司
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 真吾
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA16
2C056EB11
2C056EC11
2C056EC22
2C056EC23
2C056EC36
2C056EC67
2C056FB01
2C056HA32
2C056HA37
2C056KD06
(57)【要約】
【課題】汚れが内部機構に広がるのを防止する印刷装置を提供する。
【解決手段】印刷装置2は、印刷対象物にインクを射出する複数のインクノズルを有するヘッド面を含むカートリッジ20と、カートリッジ20の移動を駆動する移動駆動部5と、印刷対象物とヘッド面とが接触したことを検知する接触検知部9と、接触検知部9により接触したことが検知された場合、印刷動作を禁止し、かつ、カートリッジの移動を制限する制限モードに移行する制御部74とを備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷対象物にインクを射出する複数のインクノズルを有するヘッド面を含むカートリッジと、
前記カートリッジの移動を駆動する移動駆動部と、
前記印刷対象物と前記ヘッド面とが接触したことを検知する接触検知部と、
前記接触検知部により接触したことが検知された場合、印刷動作を禁止し、かつ、前記カートリッジの移動を制限する制限モードに移行する制御部と、を備える
印刷装置。
【請求項2】
前記接触検知部は、
前記印刷対象物と前記ヘッド面との隙間に光を発する発光素子と、
前記印刷対象物と前記ヘッド面との隙間を通過する前記光を検知する受光素子と、
前記受光素子の検知結果に基づいて前記印刷対象物と前記ヘッド面とが接触したか否かを判定する判定部と、
を備える
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記発光素子および前記受光素子は、前記印刷対象物が前記ヘッド面の方向へ一定以上に近づいた場合に、前記光の一部または全部が遮られるように配置される
請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記ヘッド面を良好な状態に維持するためのメンテナンス機構を備え、
前記メンテナンス機構は、前記ヘッド面を清掃するワイパー機構、および、前記ヘッド面にキャップを脱着するキャップ機構の少なくとも1つを含み、
前記制御部は、前記制限モードにおいて、前記ヘッド面が前記メンテナンス機構に接触しない経路をたどって、カートリッジ交換可能な位置へ前記カートリッジを移動させる
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記制限モードにおいて所定のユーザ操作がなされたとき前記制限モードを解除する
請求項4に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記制限モードにおいて前記カートリッジが新カートリッジに交換されたことを検知したとき、または、前記カートリッジが取り外され再度取り付けられたことを検知したとき、前記制限モードを解除する
請求項4に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記制限モードを解除したとき、前記メンテナンス機構を用いたメンテナンス動作を実施する
請求項5または6に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記制限モードを解除したときに実施される前記メンテナンス動作の時間は、通常の動作モードで実施されるメンテナンス動作の時間より長い
請求項7に記載の印刷装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記制限モードに移行したとき、前記印刷装置が前記制限モードにあることを示すモード情報をメモリに保存する
請求項1から8のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項10】
前記メモリは、前記印刷装置の電源がオフになっても前記モード情報を保持する
請求項9に記載の印刷装置。
【請求項11】
前記メモリは、前記印刷装置の本体内のメモリ、前記カートリッジ内のメモリ、および、前記印刷装置の外部の装置内のメモリのうちの少なくとも1つを含む
請求項10に記載の印刷装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記制限モードを解除したとき、前記印刷装置が前記制限モードにないことを示すように前記モード情報を更新、または、前記モード情報を削除する
請求項9から11のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記印刷装置の電源投入時に、前記制限モードにあることを示す前記モード情報が前記メモリに保存されている場合には、前記印刷装置を制限モードに起動する
請求項9から12のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項14】
前記制御部は、前記制限モードにおいて、前記メンテナンス機構を用いたメンテナンス動作を禁止する
請求項4に記載の印刷装置。
【請求項15】
前記制御部は、前記制限モードにおいて、電源をオフするユーザ操作がなされたとき、前記メンテナンス機構を用いたメンテナンス動作をすることなく、電源オフ状態に移行する
請求項14に記載の印刷装置。
【請求項16】
前記制御部は、
前記制限モードに移行したとき、前記印刷装置が前記制限モードにあることを示すモード情報をメモリに保存し、
前記印刷装置の電源投入時に、前記制限モードにあることを示す前記モード情報が前記メモリに保存されている場合には、前記メンテナンス機構を用いたメンテナンス動作をすることなく、前記印刷装置を制限モードに起動する
請求項4に記載の印刷装置。
【請求項17】
前記接触検知部は、
前記印刷対象物と前記ヘッド面との隙間を撮影するカメラと、
前記カメラで撮像された画像に基づいて前記印刷対象物と前記ヘッド面とが接触したか否かを判定する判定部と、を備える
請求項1、4から16のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項18】
前記接触検知部は、前記印刷対象物と前記ヘッド面との隙間に配置されたワイヤーと、
前記ワイヤーの変位を検出する機械的なスイッチと、
前記スイッチの検出結果に基づいて前記印刷対象物と前記ヘッド面とが接触したか否かを判定する判定部と、
を備える
請求項1、4から16のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項19】
前記印刷対象物は、人の指先の爪であり、
前記印刷装置は、前記ヘッド面と対向する指置台を備え、
前記接触検知部は、前記指置台に乗せられた指の圧力を検知する圧力センサと、
前記圧力センサの検知結果に基づいて前記印刷対象物と前記ヘッド面とが接触したか否かを判定する判定部と、を備え、
前記圧力の変化により前記爪が前記ヘッド面と接触したか否かを判定する、
請求項1、4から16のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項20】
印刷対象物にインクを射出する複数のインクノズルを有するヘッド面を含むカートリッジと、前記カートリッジの移動を駆動する移動駆動部と、を備える印刷装置の制御方法であって、
前記印刷対象物と前記ヘッド面との接触を検知し、
前記接触を検知した場合、印刷動作を禁止し、かつ、前記カートリッジの移動を制限する制限モードに移行する
印刷制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷対象物に印刷を施す印刷装置および印刷制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、記録ヘッドを搭載したキャリッジを記録媒体上で走査させて記録を行う記録装置において、キャリッジ上の部品と記録媒体とが接触したことを検出する技術を開示している。これにより、カールした紙媒体による部品の損傷や劣化を最小限の留めることを図っている。
【0003】
特許文献2は、キャリッジ動作異常検出手段がキャリッジの移動状態が異常であることを検出したときに、キャリッジを主走査方向における移動方向と逆方向に移動範囲の端部に向かって退避移動させるとともに、退避移動中にキャリッジ動作異常検出手段がキャリッジの移動状態が異常であることを検出したときにはキャリッジの退避移動を停止する技術を開示している。これにより、記録ヘッドとジャム用紙の接触によるヘッドの損傷を確実に防止することを図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-55030号公報
【特許文献2】特開2009-166370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、印刷装置が例えばネイルプリンタ等である場合には次の課題がある。
【0006】
ネイルプリンタでは、印刷対象物である爪の表面に予め塗られるベースコート剤、プリコート剤などの下地となる基材が用いられる。ネイルプリンタにて印刷中に爪先がインクカートリッジのヘッド面に接触した場合、ベースコート剤、プリコート剤などの基材が爪から擦り取られてインクカートリッジのヘッド面に付着する可能性がある。
【0007】
図25は、カートリッジ20のヘッド面32に、人の指8の先の爪10が接触する様子を示す模式図である。爪10に予め塗られたベースコート剤、プリコート剤などの基材は、ヘッド面32に付着した後は、汚れd0となる。
【0008】
インクカートリッジのヘッド面に付着した基材は、プリンタ内部のメンテナンス機構を構成するワイパー機構は、インク汚れを清掃して除去することができるが、ベースコート剤、プリコート剤などの汚れを除去ことが困難である。
【0009】
図26は、ヘッド面32に付着した基材である汚れd0を含む画像例を示す。
図26中の汚れ汚れd0は、ヘッド面32中の白っぽい部分である。
【0010】
従来の印刷装置は、メンテナンスシーケンスの実施することにより、インクカートリッジのヘッド面に付着した基材を、プリンタ内部のメンテナンス機構を構成するワイパーやキャップなどの機構部品に次々と転移させ汚れを広げることがある。それらの汚れの影響により、その後の印刷において、インク混色や吐出不良など印刷品質の低下の要因となる問題がある。
【0011】
さらに、インクカートリッジのヘッド面に付着した基材による汚れ、および、ヘッド面からワイプ機構やキャップ機構等に転移して汚れは、内部機構であるため一般ユーザが清掃や除去を行うのが困難であり、修理を依頼するのが一般的でありコストがかかるという問題もある。
【0012】
図27は、ヘッド面32に付着た汚れd0が転移する例を示す模式図である。ヘッド面32の汚れd0は、ワイパー38に転移しワイパー38の汚れd1となる。さらに、カートリッジ20が新品のカートリッジ20に交換された場合、ワイパー38の汚れd1は、新品のカートリッジ20のヘッド面32の汚れd12と、ワイパー38の汚れd11に転移する。
【0013】
図28は、ヘッド面32に付着た汚れd0が転移する他の例を示す模式図である。ヘッド面32の汚れd0は、ノズルキャップ36に転移しノズルキャップ36の汚れd2となる。さらに、カートリッジ20が新品のカートリッジ20に交換された場合、ノズルキャップ36の汚れd2は、新品カートリッジ20のヘッド面32の汚れd21と、ノズルキャップ36の汚れd22となる。
【0014】
本発明の目的は、インクカートリッジのヘッド面に付着した汚れが内部機構に広がるのを防止する印刷装置および印刷制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る印刷装置は、印刷対象物にインクを射出する複数のインクノズルを有するヘッド面を含むカートリッジと、前記カートリッジの移動を駆動する移動駆動部と、前記印刷対象物と前記ヘッド面とが接触したことを検知する接触検知部と、前記接触検知部により接触したことが検知された場合、印刷動作を禁止し、かつ、前記カートリッジの移動を制限する制限モードに移行する制御部と、を備える。
【0016】
これによれば、インクカートリッジのヘッド面に付着した汚れが内部機構に広がるのを防止することができる。カートリッジへの印刷対象物の接触が発生した場合、メンテナンス機構の保護、保全を優先するために、印刷動作を禁止し、前記制限モードに移行するので内部機構へのダメージを回避することができる。
【0017】
たとえば、前記接触検知部は、前記印刷対象物と前記ヘッド面との隙間に光を発する発光素子と、前記印刷対象物と前記ヘッド面との隙間を通過する前記光を検知する受光素子と、前記受光素子の検知結果に基づいて前記印刷対象物と前記ヘッド面とが接触したか否かを判定する判定部と、を備えてもよい。
【0018】
これによれば、印刷対象物とインクカートリッジの接触を光学的に検知することができる。光学的な検知なので、インク吐出経路や印刷面への影響を抑えることができる。
【0019】
たとえば、前記発光素子および前記受光素子は、前記印刷対象物が前記ヘッド面の方向へ一定以上に近づいた場合に、前記光の一部または全部が遮られるように配置されてもよい。
【0020】
これによれば、前記発光素子および前記受光素子の配置を調整することで、印刷対象物がインクカートリッジに接触する前に、未然に検知することが可能になる。
【0021】
たとえば、前記ヘッド面を良好な状態に維持するためのメンテナンス機構を備え、前記メンテナンス機構は、前記ヘッド面を清掃するワイパー機構、および、前記ヘッド面にキャップを脱着するキャップ機構の少なくとも1つを含み、前記制御部は、前記制限モードにおいて、前記ヘッド面が前記メンテナンス機構に接触しない経路をたどって、カートリッジ交換可能な位置へ前記カートリッジを移動させてもよい。
【0022】
これによれば、印刷対象物からインクカートリッジのヘッド面に付着した汚れとしての基材が、プリンタ内部のメンテナンス機構やキャップ機構に再転移して、印刷装置2内部に汚れが広がることを防ぐことが可能である。しかも、ユーザがカートリッジ交換をすれば修理を依頼することに比べて、短時間かつ低コストでの汚れのない状態に復帰することが可能である。
【0023】
たとえば、前記制御部は、前記制限モードにおいて所定のユーザ操作がなされたとき前記制限モードを解除してもよい。
【0024】
これによれば、ユーザ自身が実施できる手順で、インクカートリッジのヘッド面に付着した汚れを除去し、汚れのない状態に復帰することを可能にする。
【0025】
たとえば、前記制御部は、前記制限モードにおいて前記カートリッジが新カートリッジに交換されたことを検知したとき、または、前記カートリッジが取り外され再度取り付けられたことを検知したとき、前記制限モードを解除してもよい。
【0026】
これによれば、ユーザがカートリッジの交換または、取り外して汚れを除去する掃除をすれば、汚れのない通常動作へと復帰することができる。しかも、修理を依頼することに比べて、短時間かつ低コストでの汚れのない状態に復帰することが可能である。
【0027】
たとえば、前記制御部は、前記制限モードを解除したとき、前記メンテナンス機構を用いたメンテナンス動作を実施してもよい。
【0028】
これによれば、前記制限モードにおいてカートリッジはキャップされない状態で放置されており、インクカートリッジのヘッド面が外気にさらされるのでインク蒸発や乾燥によってインク吐出不良の懸念がある。前記制限モードが解除されて通常モードに復帰する際にメンテナンス動作を実施することで、インク吐出不良の回避が図れる。
【0029】
たとえば、前記制限モードを解除したときに実施される前記メンテナンス動作の時間は、通常の動作モードで実施されるメンテナンス動作の時間より長くてもよい。
【0030】
これによれば、前記制限モードが解除されて通常モードに復帰する際に、メンテナンス動作をより長い時間をかけて実施することで、インク吐出不良の回避がより確実に図れる。
【0031】
たとえば、前記制御部は、前記制限モードに移行したとき、前記印刷装置が前記制限モードにあることを示すモード情報をメモリに保存してもよい。
【0032】
これによれば、インクカートリッジのヘッド面に印刷対象物からの汚れが転移した事象の発生を記憶することが可能である。
【0033】
たとえば、前記メモリは、前記印刷装置の電源がオフになっても前記モード情報を保持してもよい。
【0034】
これによれば、メモリはフラッシュメモリ、バッテリバックアップメモリなどであり、前記印刷装置の電源のオフ状態およびオフ状態に関わらず、制限モードを維持させることを容易にする。
【0035】
たとえば、前記メモリは、前記印刷装置の本体内のメモリ、前記カートリッジ内のメモリ、および、前記印刷装置の外部の装置内のメモリのうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0036】
これによれば、汚れた状態のカートリッジの再利用を防止し、外部の装置(例えばスマートフォンなど)がユーザにカートリッジ交換を促すことを可能にする。
【0037】
たとえば、前記制御部は、前記制限モードを解除したとき、前記印刷装置が前記制限モードにないことを示すように前記モード情報を更新、または、前記モード情報を削除してもよい。
【0038】
これによれば、モード情報と汚れ有無とを容易に整合させることができる。
【0039】
たとえば、前記制御部は、前記印刷装置の電源投入時に、前記制限モードにあることを示す前記モード情報が前記メモリに保存されている場合には、前記印刷装置を制限モードに起動してもよい。
【0040】
これによれば、制限モードで電源が切断された場合に、次の電源投入後も、制限モードを維持することができるので、ヘッド面の汚れが、プリンタ内部のメンテナンス機構やキャップ機構に転移して、プリンタ内部に汚れが広がることを防止し続けることが可能である。
【0041】
たとえば、前記制御部は、前記制限モードにおいて、前記メンテナンス機構を用いたメンテナンス動作を禁止してもよい。
【0042】
これによれば、通常モードにおいて実施されるメンテナンス動作が、制限モードでは禁止される。よって、印刷対象物からインクカートリッジのヘッド面に転移した汚れが、プリンタ内部のメンテナンス機構やキャップ機構に再転移して、プリンタ内部に汚れが広がることを防ぎ続けることが可能である。
【0043】
たとえば、前記制御部は、前記制限モードにおいて、電源をオフするユーザ操作がなされたとき、前記メンテナンス機構を用いたメンテナンス動作をすることなく、電源オフ状態に移行してもよい。
【0044】
これによれば、通常モードにおいて電源オフシーケンスで実施されるメンテナンス動作が制限モードでは禁止される。よって、印刷対象物からインクカートリッジのヘッド面に転移した汚れが、プリンタ内部のメンテナンス機構やキャップ機構に再転移して、プリンタ内部に汚れが広がることを防ぎ続けることが可能である。
【0045】
たとえば、前記制御部は、前記制限モードに移行したとき、前記印刷装置が前記制限モードにあることを示すモード情報をメモリに保存し、前記印刷装置の電源投入時に、前記制限モードにあることを示す前記モード情報が前記メモリに保存されている場合には、前記メンテナンス機構を用いたメンテナンス動作をすることなく、前記印刷装置を制限モードに起動してもよい。
【0046】
これによれば、通常モードにおける電源オン時に実施されるメンテナンス動作は、制限モードでは禁止される。よって、電源投入後も制限モードが維持され、印刷対象物からインクカートリッジのヘッド面に転移した汚れが、プリンタ内部のメンテナンス機構やキャップ機構に再転移して、プリンタ内部に汚れが広がることを防止することが可能である。
【0047】
たとえば、前記接触検知部は、前記印刷対象物と前記ヘッド面との隙間を撮影するカメラと、前記カメラで撮像された画像に基づいて前記印刷対象物と前記ヘッド面とが接触したか否かを判定する判定部と、を備えてもよい。
【0048】
これによれば、発光素子と受光素子による光線を用いた方式よりも高精度の検知と判断を実施することが可能である。光線を用いると、光線の反射や拡散の影響により、検知精度が落ちる懸念がある。カメラで撮影した画像を画像処理によって、より高精度な検知と判断を行うことが可能となる。
【0049】
たとえば、前記接触検知部は、前記印刷対象物と前記ヘッド面との隙間に配置されたワイヤーと、前記ワイヤーの変位を検出する機械的なスイッチと、前記スイッチの検出結果に基づいて前記印刷対象物と前記ヘッド面とが接触したか否かを判定する判定部と、を備えてもよい。
【0050】
これによれば、光線を用いた方式よりも耐久性のある検知と判断を実施することが可能である。光線を扱うための光学部品であれば、インクミストといった印刷中の浮遊インク粒子によって、光学部品の汚れにより光学系の耐久性が低下する懸念がある。機械式であればインクミストの影響を受けることなく耐久性を保つことが可能となる。
【0051】
たとえば、前記印刷対象物は、人の指先の爪であり、前記印刷装置は、前記ヘッド面と対向する指置台を備え、前記接触検知部は、前記指置台に乗せられた指の圧力を検知する圧力センサと、前記圧力センサの検知結果に基づいて前記印刷対象物と前記ヘッド面とが接触したか否かを判定する判定部と、を備えてもよい。
【0052】
これによれば、圧力を検知するので、インクミストなどの影響は受けず、インクカートリッジと印刷対象物に異物を挟むことがないので、印刷に影響することもない。
【0053】
また、上記課題を解決するために本発明の一態様に係る印刷制御方法は、印刷対象物にインクを射出する複数のインクノズルを有するヘッド面を含むカートリッジと、前記カートリッジの移動を駆動する移動駆動部と、を備える印刷装置の制御方法であって、前記印刷対象物と前記ヘッド面との接触を検知し、前記接触を検知した場合、印刷動作を禁止し、かつ、前記カートリッジの移動を制限する制限モードに移行する。
【0054】
これによれば、インクカートリッジのヘッド面に付着した汚れが内部機構に広がるのを防止することができる。カートリッジへの印刷対象物の接触が発生した場合、メンテナンス機構の保護、保全を優先するために、印刷動作を禁止し、前記制限モードに移行するので内部機構へのダメージを回避することができる。
【0055】
なお、これらの全般包括的または具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能な記録媒体で実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムおよび記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【0056】
なお、本発明は、プリンタに含まれる特徴的な処理部としてコンピュータを機能させるためのプログラム又はプリンタの制御方法に含まれる特徴的なステップをコンピュータに実行させるプログラムとして実現することもできる。そして、そのようなプログラムを、CD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory)等のコンピュータ読取可能な非一時的な記録媒体やインターネット等の通信ネットワークを介して流通させることができるのは、言うまでもない。
【発明の効果】
【0057】
本発明の印刷装置および印刷制御方法によれば、インクカートリッジのヘッド面に付着した汚れが内部機構に広がるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【
図1】
図1は、実施の形態1における印刷装置の外観例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施の形態1に係るプリンタの印刷ユニットを示す斜視図である。
【
図3】
図3は、ヘッド部及びY軸駆動機構を省略した状態での、実施の形態1に係るプリンタの印刷ユニットを示す斜視図である。
【
図4】
図4は、実施の形態1に係る印刷装置の構成例を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、実施の形態1に係る印刷装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、実施の形態2に係る印刷装置におけるセンサの構成例および周辺を示す図である。
【
図7】
図7は、爪がヘッド面に接触したときのセンサの様子を示す説明図である。
【
図8】
図8は、実施の形態2に係る印刷装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、
図8の処理の一部を割り込み処理で実施する動作例を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、カートリッジの可動範囲内におけるキャップ位置、ワイパー位置、印刷可能範囲、カートリッジ交換位置の配置を模式的に示す説明図である。
【
図11】
図11は、通常の印刷開始時における印刷開始位置までの爪の動線の一例を表す図である。
【
図12】
図12は、通常の印刷終了時におけるキャップ位置までのカートリッジの動線の一例を表す図である。
【
図13】
図13は、実施の形態3における印刷装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図14】
図14は、印刷装置が制限モードとなった場合の、カートリッジ停止位置からのカートリッジ交換位置までの動線の一例を表す図である。
【
図15】
図15は、印刷装置における制限モードをユーザ操作に基づいて解除した場合の、カートリッジ交換位置からのキャップ位置までの動線の一例を表す構成図である。
【
図16】
図16は、実施の形態4における印刷装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図17】
図17は、
図16のステップS29bで制限モードに移行した後に、ユーザ操作を受けて制限ノードを解除する動作例を示すフローチャートである。
【
図18】
図18は、実施の形態4における電源オン時の動作例を示すフローチャートである。
【
図19】
図19は、実施の形態5における電源オフ時の動作例を示すフローチャートである。
【
図20】
図20は、実施の形態7に係る印刷装置におけるセンサの構成例および周辺を示す図である。
【
図21】
図21は、実施の形態7に係る印刷装置におけるセンサの変形例および周辺を示す図である。
【
図22】
図22は、撮像部で撮像された画像例を模式的に示す図である。
【
図23】
図23は、実施の形態8に係る印刷装置におけるセンサの構成例および周辺を示す図である。
【
図24】
図24は、実施の形態8に係る印刷装置におけるセンサの構成例および周辺を示す図である。
【
図25】
図25は、カートリッジのヘッド面に、人の指の先の爪が接触する様子を示す模式図である。
【
図26】
図26は、ヘッド面に付着した基材である汚れを含む画像例を示す図である。
【
図27】
図27は、ヘッド面に付着た汚れが転移する例を示す模式図である。
【
図28】
図28は、ヘッド面に付着た汚れが転移する他の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の一包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0060】
(実施の形態1)
[1-1.印刷装置の機械的構成]
まず、
図1~
図5を参照しながら、実施の形態1に係る印刷装置2の構造について説明する。
図1は、実施の形態1に係る印刷装置2の外観を示す斜視図である。
図2は、実施の形態1に係る印刷装置2の印刷ユニット6を示す斜視図である。
図3は、カートリッジ20及びY軸駆動機構22bを省略した状態での、実施の形態1に係る印刷装置2の印刷ユニット6を示す斜視図である。なお、説明の都合上、
図2では、筐体4の一部の図示を省略してある。
【0061】
図1~
図3に示すように、印刷装置2は、筐体4と、筐体4の内部に配置された印刷ユニット6とを備えている。本実施の形態では、印刷装置2は、ユーザの手の指8の爪10に例えば色又は絵柄等のマニキュア用の印刷を施すための、いわゆるネイル印刷装置である。
【0062】
なお、印刷装置2は、例えばスマートフォン又はタブレット端末等の外部端末70と無線通信可能である。ユーザは、外部端末70にインストールされたアプリケーションソフトウェアをインタフェースとして用いることにより、印刷装置2を操作することができる。
【0063】
図1に示すように、筐体4は、例えば樹脂製であり、箱形状に形成されている。筐体4の天面4aには、印刷装置2の電源をオン・オフするための電源スイッチ12が配置されている。
【0064】
図1に示すように、筐体4の前面4bには、ユーザの指8を挿入するための開口部14が配置されている。
図1~
図3に示すように、開口部14の下側(Z軸のマイナス側)には、ユーザの指8を載置するためのフィンガーホルダ16が配置されている。また、
図1に示すように、開口部14の上側(Z軸のプラス側)には、ユーザの指8を上方から押さえるための押さえカバー18が配置されている。フィンガーホルダ16は、押さえカバー18に対して上下方向(Z軸方向)に移動可能であり、押さえカバー18に近付く方向にバネで付勢されている。
【0065】
図2及び
図3に示すように、ユーザは、指8の爪10が上側を向くようにして、指8を真っ直ぐに伸ばした状態で筐体4の
図1の開口部14に挿入し、指8の腹側をフィンガーホルダ16に載置する。これにより、指8の爪10を含む部分(例えば、指8の先端から第一関節の近傍までの部分)が筐体4の内部に配置される。このとき、フィンガーホルダ16が押さえカバー18に近付く方向に付勢されることにより、例えば指8の第一関節付近がフィンガーホルダ16及び押さえカバー18により上下から挟持される。
【0066】
なお、
図4に示すように、ユーザは、指8をフィンガーホルダ16とともに上下方向に移動させることにより、カートリッジ20のノズルを有するヘッド面32に対する指8の爪10の高さ位置(Z軸方向における位置)を任意の高さ位置に調節することができる。これにより、ユーザは、ヘッド面32に対する指8の爪10の高さ位置を、ヘッド面32から所定距離D(例えば2mm)だけ離れた目標高さ位置に調節することができる。
【0067】
印刷ユニット6は、筐体4の内部に配置された指8の爪10にマニキュア用の印刷を施すためのユニットである。印刷ユニット6の印刷方式は、指8の爪10にミスト状のインクを吹き付けることにより印刷を施すインクジェット方式である。
【0068】
図2及び
図3に示すように、印刷ユニット6は、カートリッジ20と、駆動機構22と、ヘッド維持機構24と、ミラー26と、撮像ユニット28とを有している。
【0069】
図2に示すように、カートリッジ20は、交換可能はカートリッジであり、ヘッド支持部30と、ヘッド支持部30に搭載されたインクヘッド31とを有している。インクヘッド31の内部には、インクタンクが形成され、複数色又は単色のインクが充填されている。カートリッジ20の下面には、指8の爪10の正面に向けて下方にインクを吐出するヘッド面32が形成されている。ヘッド面32は、下方にインクを吐出する複数のインクノズルを有する。
【0070】
駆動機構22は、カートリッジ20を、第1の方向(X軸方向)(所定方向の一例)及び第1の方向と略直交する第2の方向(Y軸方向)(所定方向の一例)に二次元的に移動させるための機構である。駆動機構22の具体的な構成については後述する。
【0071】
ヘッド維持機構24は、カートリッジ20のヘッド面32をメンテナンスするための機構である。ヘッド維持機構24は、キャップ支持部34と、ノズルキャップ36と、ワイパー38とを有している。
【0072】
キャップ支持部34は、待機位置(
図2に示す位置)にあるカートリッジ20のヘッド面32に近付く方向及びヘッド面32から離れる方向に移動可能である。ノズルキャップ36は、待機位置にあるカートリッジ20のヘッド面32をキャッピング(封止)するためのキャップであり、キャップ支持部34に支持されている。ワイパー38は、カートリッジ20のヘッド面32をワイピング(清掃)するためのワイパーブレードであり、キャップ支持部34に支持されている。ワイパー38は、例えば可撓性を有するゴム又はエラストマー樹脂等で形成されている。
【0073】
ミラー26は、フィンガーホルダ16に載置された指8の爪10の側面を映すための鏡面26aを有するサイドビューミラーである。ミラー26は、フィンガーホルダ16の側方に配置されている。また、ミラー26は、その鏡面26aが斜め上方を向くように、垂直方向(Z軸方向)に対して傾斜するように配置されている。
【0074】
撮像ユニット28は、フィンガーホルダ16に載置された指8の爪10を撮像するためのカメラユニットである。撮像ユニット28は、フィンガーホルダ16の上方に対向して配置された配線基板28aと、配線基板28aの下面に実装された撮像部28bとを有している。なお、配線基板28aは、例えば筐体4の内部に配置されたインナーカバー等(図示せず)に支持されている。
図5に示すように、撮像部28bは、フィンガーホルダ16に載置された指8の爪10の正面を直接撮像することにより、指8の爪10の正面を示す爪正面画像37を生成する。また、撮像部28bは、ミラー26の鏡面26aに映った指8の爪10の側面を撮像することにより、指8の爪10の側面を示す爪側面画像39を生成する。
【0075】
ここで、
図2及び
図3を参照しながら、駆動機構22の構成について説明する。駆動機構22は、カートリッジ20を第1の方向に移動させるためのX軸駆動機構22aと、カートリッジ20を第2の方向に移動させるためのY軸駆動機構22bとを有している。
【0076】
図2に示すように、Y軸駆動機構22bは、移動テーブル40と、Y軸ガイドシャフト42と、Y軸モータ44と、タイミングベルト46とを有している。
【0077】
Y軸ガイドシャフト42は、筐体4の内部に配置された移動テーブル40に支持されており、第2の方向に長尺状に延びている。Y軸ガイドシャフト42には、カートリッジ20が移動可能に支持されている。Y軸モータ44は、例えばサーボモータで構成され、移動テーブル40の下面に支持されている。
【0078】
Y軸モータ44の駆動力は、タイミングベルト46を介してカートリッジ20に伝達される。これにより、カートリッジ20は、移動テーブル40に対して、Y軸ガイドシャフト42に沿って第2の方向に往復移動する。
【0079】
図3に示すように、X軸駆動機構22aは、移動テーブル40(
図2参照)と、ベアリング部材48と、X軸ガイドシャフト50と、X軸モータ52と、ウォームギア54と、ウォームホイール56と、駆動変換機構58とを有している。
【0080】
X軸ガイドシャフト50は、筐体4の内部に配置された支持プレート59に支持されており、第1の方向に長尺状に延びている。X軸ガイドシャフト50には、移動テーブル40の下面に固定されたベアリング部材48が移動可能に支持されている。すなわち、移動テーブル40は、ベアリング部材48を介してX軸ガイドシャフト50に移動可能に支持されている。X軸モータ52は、例えばサーボモータで構成され、支持プレート59に支持されている。ウォームギア54は、X軸モータ52の駆動軸に回転可能に支持されている。ウォームホイール56は、支持プレート59に回転可能に支持されており、ウォームギア54と噛み合わされている。
【0081】
駆動変換機構58は、ウォームホイール56の回転をカートリッジ20の第1の方向における直線移動に変換するための機構である。駆動変換機構58は、ウォームホイール56に形成されたピニオン歯車60と、ベアリング部材48に形成されたラック歯車62とを有している。ピニオン歯車60及びラック歯車62は、互いに噛み合わされている。
【0082】
X軸モータ52の駆動力は、ウォームギア54、ウォームホイール56、ピニオン歯車60及びラック歯車62を介して移動テーブル40に伝達される。これにより、カートリッジ20は、移動テーブル40と一体的に、X軸ガイドシャフト50に沿って第1の方向に往復移動する。
【0083】
カートリッジ20が第2の方向に往復移動しながら、第1の方向における他方側から一方側(X軸のプラス側からマイナス側)に向けて移動している状態で、カートリッジ20のヘッド面32から指8の爪10の正面に向けてインクが吐出されることにより、指8の爪10の全域に印刷が施される。
【0084】
[1-2.印刷装置の機能的構成]
図4は、実施の形態1に係る印刷装置2の構成例を示すブロック図である。
【0085】
図4に示すように、印刷装置2は、通信部94と、記憶部96と、画像処理部88と、センサ11と、判定部13と、ヘッド制御部19と、カートリッジ20と、X軸駆動部90と、X軸モータ52と、X位置検知部91と、Y軸駆動部86と、Y軸モータ44と、Y位置検知部87と、判定部72と、制御部74とを備えている。なお、カートリッジ20、X軸モータ52及びY軸モータ44については既述したので、ここでの説明を省略する。
【0086】
センサ11および判定部13は、接触検知部9を構成する。接触検知部9は、印刷対象物である爪10とヘッド面32とが接触したことを検知する。センサ11は、爪10とヘッド面32と間の接触の有無または距離に応じた物理量を出力するセンサである。判定部13は、センサ11からの得られる物理量に基づいて爪10とヘッド面32とが接触したか否かを判定する。
【0087】
ヘッド制御部19は、カートリッジ20の移動位置に応じてカートリッジ20が有する複数のインクノズルによるインクの吐出を制御する。
【0088】
カートリッジ20は、印刷対象物である爪10にインクを射出する複数のインクノズルを有するヘッド面、複数色に対応する複数のインクタンクを含む。カートリッジ20は、インクジェット方式のプリンタヘッドであり、交換可能である。
【0089】
通信部94は、例えばスマートフォン又はタブレット端末等の外部の装置(図示せず)と無線通信を行う。具体的には、通信部94は、例えば印刷装置2に対して印刷の開始を指示するための印刷開始信号等を外部端末から受信する。通信部94は、受信した印刷開始信号等を画像処理部88に出力する。
【0090】
記憶部96は、印刷すべき画像データ、印刷装置2の動作モードを示すモード情報等を記憶するためのメモリである。記憶部96の一部の記憶領域は、フラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ素子で構成される。
【0091】
画像処理部88は、通信部94からの印刷開始信号に基づいて、記憶部96に記憶された画像データを読み出し、読み出した画像データに画像処理を施す。画像処理部88は、画像処理を施した画像データを制御部74に出力する。
【0092】
X軸制御部89は、カートリッジ20を主走査方向であるX軸方向に移動させる駆動信号を生成する。
【0093】
X軸駆動部90は、X軸モータ52を駆動するためのモータドライバである。すなわち、X軸駆動部90は、X軸制御部89で生成された駆動信号に基づいて、X軸モータ52に電圧を印加することにより、指8の爪10に対してカートリッジ20を主走査方向に移動させる。
【0094】
X位置検知部91は、カートリッジ20の主走査方向における位置に応じたA相のパルス信号及びB相のパルス信号を出力する。X位置検知部91は、例えば移動テーブル40に配置されたリニアエンコーダである。A相のパルス信号及びB相のパルス信号は、90°の位相差を有している。X位置検知部91は、A相のパルス信号及びB相のパルス信号をX位置検知部91に出力する。
【0095】
X位置検知部91は、X軸エンコーダとX軸カウンタを含み、カートリッジ20のX軸方向における位置を検知する。X軸カウンタは、X軸エンコーダからのA相のパルス信号及びB相のパルス信号に基づいて、X軸の位置に対応するカウント値をカウントする。X位置検知部91は、カウント値をX軸制御部89に出力する。
【0096】
Y軸制御部85は、カートリッジ20を副走査方向であるY軸方向に移動させる駆動信号を生成する。
【0097】
Y軸駆動部86は、Y軸制御部85で生成された駆動信号に基づいて、Y軸モータ44を駆動するためのモータドライバである。すなわち、Y軸駆動部86は、Y軸モータ44に電圧を印加することにより、指8の爪10に対してカートリッジ20を副走査方向に移動させる。
【0098】
Y位置検知部87は、Y軸エンコーダとY軸カウンタを含み、カートリッジ20のY軸方向における位置を検知する。Y軸カウンタは、Y軸エンコーダからのA相のパルス信号及びB相のパルス信号に基づいて、Y軸の位置に対応するカウント値をカウントする。Y位置検知部87は、カウント値をY軸制御部85に出力する。
【0099】
制御部74は、主に、第1の制御と第2の制御とを行う。第1の制御は、印刷動作の制御である。第2の制御は、爪10とヘッド面32との接触による汚れの転位防止のための制御である。
【0100】
第1の制御は、指8の爪10に画像処理部88からの画像データに基づく印刷が施されるように、カートリッジ20、X軸駆動部90(X軸モータ52)及びY軸駆動部86(Y軸モータ44)を駆動するための制御である。制御部74は、第1の制御では、X位置検知部91からのカウント値に基づいて、X軸モータ52に所定電圧が第1の時間よりも長い第2の時間(例えば数秒~数十秒程度)印加されるようにX軸駆動部90を駆動する。すなわち、制御部74は、第1の制御では、X軸駆動部90を駆動させる際に、X位置検知部91からのカウント値に基づくフィードバック制御を行う。また、制御部74は、第1の制御では、Y位置検知部87からのカウント値に基づいて、Y軸モータ44に所定電圧が第1の時間よりも長い第2の時間印加されるようにY軸駆動部86を駆動する。すなわち、制御部74は、第1の制御では、Y軸駆動部86を駆動する際に、Y位置検知部87からのカウント値に基づくフィードバック制御を行う。これにより、第1の制御では、カートリッジ20は、副走査方向における前方に第1の距離よりも長い第2の距離(例えば数cm)だけ移動するようになる。
【0101】
第2の制御では、制御部74は、接触検知部9により爪10とヘッド面32とが接触したことが検知された場合、印刷動作を禁止し、かつ、カートリッジ20の移動を制限する制限モードに移行する。これにより、爪10とヘッド面32との接触による汚れの転位を防止する。
【0102】
[1-3.印刷装置の動作]
印刷装置2の動作として上記第2の制御による動作の例を説明する。
【0103】
図5は、実施の形態1に係る印刷装置2の動作例を示すフローチャートである。同図の動作は、印刷装置2の電源オン状態であるときに常時実施してもよいし、印刷動作の実行に際して実施してもよい。
【0104】
同図において、まず、制御部74は、センサ11からセンサ信号を取得し(S11)、センサ信号に基づいて印刷対象物である爪10とヘッド面32とが接触したか否かをする(S12)。制御部74は、接触していないと判定した場合には(S12でno)、ステップS11に戻る。制御部74は、接触したと判定しt場合には(S12でyes)、印刷動作を禁止し(S13)、かつ、カートリッジの移動を制限する制限モードに移行する(S14)。ここで、制限モードは、カートリッジ20が移動可能な範囲のうち、メンテナンス機構の位置への移動、および、メンテナンス機構の位置を通過する移動を禁止する動作モードである。制限モードでは、メンテナンス機構の位置を避けてカートリッジ交換位置への移動は制限されない。メンテナンス機構は、ヘッド面を清掃するワイパー機構、および、乾燥によるインクノズルのインクの固化を防ぐためにヘッド面32にキャップを脱着するキャップ機構を含む。
【0105】
制限モードでは、カートリッジ20のヘッド面32に付着した汚れが内部機構に広がるのを防止することができる。カートリッジ20への爪10の接触が発生した場合、メンテナンス機構の保護、保全を優先するために、印刷動作を禁止して制限モードに移行するので内部機構へのダメージを回避することができる。
【0106】
制限モードに移行した後、制御部74は、カートリッジ20を、メンテナンス機構を通過しない移動経路でカートリッジ交換位置に移動させる(S15)。これにより、ユーザによるカートリッジ20の交換が可能な状態にある。さらに、制御部74は、カートリッジ20の交換が完了したか否かを判定する(S16)。この判定は、例えば、カートリッジ交換したことを指示するユーザ操作の有無による。あるいは、制御部74が、カートリッジ20が新カートリッジに交換されたことを検知したとき、または、カートリッジ20が取り外され再度取り付けられたことを検知してもよい。この検知は、カートリッジ20のインク残量を管理するICチップの読み取ることによっても可能である。
【0107】
制御部74は、カートリッジ20の交換が完了していないと判定した場合には(S16でno)、ステップS16に戻る。制御部74は、カートリッジ20の交換が完了したと判定した場合には(S16でyes)、制限モードを解除し(S17)、ステップS11に戻る。
【0108】
これによれば、ユーザがカートリッジ交換をすれば。修理を依頼することと比べて、短時間かつ低コストでの汚れのない状態に復帰することが可能である。
【0109】
以上説明してきたように、実施の形態1に係る印刷装置2は、印刷対象物にインクを射出する複数のインクノズルを有するヘッド面32を含むカートリッジ20と、カートリッジ20の移動を駆動する移動駆動部5と、印刷対象物とヘッド面32とが接触したことを検知する接触検知部9と、接触検知部9により接触したことが検知された場合、印刷動作を禁止し、かつ、カートリッジの移動を制限する制限モードに移行する制御部74と、を備える。
【0110】
これによれば、インクカートリッジのヘッド面に付着した汚れが内部機構に広がるのを防止することができる。カートリッジへの印刷対象物の接触が発生した場合、メンテナンス機構の保護、保全を優先するために、印刷動作を禁止し、前記制限モードに移行するので内部機構へのダメージを回避することができる。
【0111】
また、実施の形態1に係る印刷制御方法は、印刷対象物にインクを射出する複数のインクノズルを有するヘッド面32を含むカートリッジ20と、カートリッジ20の移動を駆動する移動駆動部5と、を備える印刷装置の制御方法であって、印刷対象物とヘッド面32との接触を検知し、接触を検知した場合、印刷動作を禁止し、かつ、カートリッジの移動を制限する制限モードに移行する。
【0112】
なお、接触検知部9が検知する接触とは、印刷対象物である爪10とヘッド面32とが直接接触することだけでなく、爪10に塗られたベースコート剤、プリコート剤などの基材とヘッド面32とが接触することも含み、さらに、基材とヘッド面32とが接触していなくても、印刷対象物とヘッド面32との隙間が極微小であることも含むことがある。
。接触検知部9は、基材とヘッド面32とが接触していなくても、印刷対象物とヘッド面32との隙間が極微小である場合も接触したと判定する場合がある。ここでいう極微小は、センサ11の種類および精度に依存し、例えば、0.5mm以下である。
【0113】
(実施の形態2)
本実施の形態では、センサ11として光学センサを用いる接触検知部9を備える印刷装置2について説明する。
【0114】
[2-1.印刷装置の構成]
本実施の形態における印刷装置2の構成は、
図1から4と同じである。ただし、接触検知部9は、センサ11として光学センサを備えている点が異なる。以下異なる点を中心に説明する。
【0115】
図6は、実施の形態2に係る印刷装置におけるセンサ11の構成例および周辺を示す図である。同図において、センサ11は、発光素子111と、受光素子112とを備える。
【0116】
発光素子111は、例えばレーザダイオードであり、印刷対象物である爪10とヘッド面32との隙間に光線を発する。光線は、例えば赤外線でもよいし、可視光線でもよい。
【0117】
受光素子112は、例えばフォトダイオードであり、爪10とヘッド面32との隙間を通過する光線を検知する光電変換素子である。
【0118】
判定部13は、受光素子112の検知結果に基づいて印刷対象物とヘッド面32とが接触したか否かを判定する。例えば、判定部13は、爪10が光線の全部を遮ったとき、つまり、受光素子112の出力信号がほぼ0の受光量を示すとき、接触したと判定する。あるいは、判定部13は、判定部13は、爪10が光線の一部を遮ったとき、つまり、受光素子112の出力信号がしきい値より小さくなったとき、接触したと判定してもよい。
【0119】
図7は、爪10がヘッド面32に接触したときのセンサ11の様子を示す説明図である。同図では発光素子111が発した光線は、爪10に遮られ、受光素子112に入射しない。この場合の受光素子112の出力信号はほぼ0の受光量を示す。また、ヘッド面32には、爪10に塗られたベースコート剤、プリコート剤などの基材が付着してしまう。ヘッド面32に付着した基材は単なる汚れd0となり、インクノズルを覆う可能性がある。
【0120】
[2-2.印刷装置の動作]
本実施形態の印刷装置2の動作について説明する。
【0121】
図8は、実施の形態2に係る印刷装置2の動作例を示すフローチャートである。同図のフローチャートは、
図5のフローチャートと比べて、ステップS11およびS12の代わりに、ステップS11aおよびステップS12aを有する点が異なっている。以下異なる点を中心に説明する。
【0122】
図8において、まず、制御部74は、受光素子112の出力信号を取得し(S11a)、爪10が光線を遮ったか否か、つまり、出力信号のほぼ0であるか否かに応じて印刷対象物である爪10とヘッド面32とが接触したか否かを判定する(S12a)。
図8のこれ以降の動作は、
図5と同じである。
【0123】
以上のように実施の形態2に係る印刷装置2において、接触検知部9は、印刷対象物とヘッド面32との隙間に光を発する発光素子111と、印刷対象物とヘッド面32との隙間を通過する光を検知する受光素子112と、受光素子112の検知結果に基づいて印刷対象物とヘッド面32とが接触したか否かを判定する判定部13と、を備える。
【0124】
これによれば、印刷対象物とインクカートリッジの接触を光学的に検知することができる。光学的な検知なので、インク吐出経路や印刷面への影響を抑えることができる。
【0125】
また、発光素子および受光素子は、印刷対象物がヘッド面32の方向へ一定以上に近づいた場合に、光の一部または全部が遮られるように配置されてもよい。
【0126】
これによれば、前記発光素子および前記受光素子の配置を調整することで、印刷対象物がインクカートリッジに接触する前に、未然に検知することが可能になる。
【0127】
なお、
図6において、発光素子111は、レーザダイオードではなく、発光ダイオード(LED)であってもよい。発光素子111が発する光は光線でなく、進行するに連れて広がる光であってもよい。
【0128】
また、
図6において、光は隙間を通っていれば良いので、光路中に反射鏡や導光部材を用いて光路を設計することができる。
【0129】
(実施の形態3)
本実施の形態では、主に、制限モードでのカートリッジ20の移動制限と、制限モードの解除条件について説明する。
【0130】
[3-1.印刷装置の構成]
本実施の形態における印刷装置2の構成は、
図1から4と同じでよい。印刷装置2は、ヘッド面32を良好な状態に維持するためのメンテナンス機構を備えている。メンテナンス機構は、ヘッド面32を清掃するワイパー機構、および、ヘッド面32にキャップを脱着するキャップ機構を含む。
【0131】
制御部74は、制限モードにおいて、ヘッド面32がメンテナンス機構に接触しない経路をたどって、カートリッジ交換可能な位置へカートリッジ20を移動させる。つまり、制限モードにおいて、カートリッジ20の移動可能な範囲は、メンテナンス機構に接触しない経路に制限される。
【0132】
図10は、カートリッジ20の可動範囲120内におけるキャップ位置、ワイパー位置、印刷可能範囲、カートリッジ交換位置の配置を模式的に示す説明図である。同図において、可動範囲120は、移動駆動部5によってX軸方向およびY軸方向にカートリッジ20が移動可能な範囲を示す。X軸、Y軸は、主走査方向、副走査方向を示す。
【0133】
キャップ位置121は、カートリッジ20のヘッド面32にキャップを取り付け、または、取り外すキャップ機構の位置を示す。
【0134】
ワイパー位置122は、ヘッド面32を清掃するワイパー機構の位置を示す。
【0135】
交換位置123は、ユーザによるカートリッジ20の交換が可能な位置を示す。
【0136】
印刷範囲124は、ヘッド面32からインクを吐出して印刷することが可能な範囲を示す。
【0137】
図11は、通常の印刷開始時における印刷開始位置までの爪10の動線の一例を表す図である。印刷装置2は印刷開始が指示されると、カートリッジ20を搭載したキャリアをキャップ位置121からワイパー位置122へと移動させる。この移動により、カートリッジ20のヘッド面32はワイパー38により清掃され、いわゆるメンテナンス動作が行われる。メンテナンス動作を行った後に、カートリッジ20は印刷開始位置まで移動し、爪10への印刷動作が開始される。
【0138】
図12は、通常の印刷終了時におけるキャップ位置121までのカートリッジ20の動線の一例を表す図である。印刷装置2は印刷が終了すると、カートリッジ20を搭載したキャリアを印刷終了位置からキャップ位置121へと移動させる。この移動経路にはメンテナンス動作のためにワイパー位置122の通過が含まれる。カートリッジ20は、ワイパー位置122を通過することにより、ワイパー効果を得ることができる。
図11および
図12においてワイパー位置122を通過する方向は左から右および右から左のいずれの方向でも同様の効果を得ることができる。また、ワンパー38の形状によっては、カートリッジ20がワイパー位置122を通過する方向は、X軸の方向に限らず、Y軸の方向、または、X軸およびY軸以外の方向であってもよい。
【0139】
[3-2.印刷装置の動作]
図13は、実施の形態3における印刷装置2の動作例を示すフローチャートである。同図は、
図5の動作例と比べて、ステップ15aが追加されている点が異なっている。以下、異なる点を中心に説明する。
【0140】
制限モードに移行した後、制御部74は、ユーザ操作によりカートリッジ20の移動指示を受けたか否かを判定する(S15a)。カートリッジ20の移動指示を受けたと判定していない場合(S15aでno)、制御部74は、ステップ15aに戻り、指示を待つ。カートリッジ20の移動指示を受けたと判定した場合(S15aでyes)、制御部74は、カートリッジ20を、メンテナンス機構を通過しない移動経路でカートリッジ20をカートリッジ20の交換位置123に移動させる(S15)。
【0141】
図13によれば、交換位置123への移動に際して、制限モードに移行してカートリッジ20の移動が禁止された後、自動的に交換位置123まで移動させた場合、再びヘッド面32が爪10に接触する可能性がある。ステップS15aではユーザが交換位置への移動を指示するユーザ操作を必要とするので、再びヘッド面32が爪10に接触することを回避することができる。
【0142】
図14は、印刷装置2における、印刷中にヘッド面32と爪10とが接触して制限モードとなった場合の、カートリッジ20停止位置からのカートリッジ交換位置123までの動線の一例を表す図である。この移動に際しては、キャップ機構やワイパー機構は通らずに、カートリッジ交換位置123まで移動する。カートリッジ20はカートリッジ交換位置にて停止し、ユーザのカートリッジ20交換待ちとなる。
【0143】
図15は、印刷装置2における制限モードをユーザ操作に基づいて解除した場合の、カートリッジ交換位置123からのキャップ位置までの動線の一例を表す構成図である。この移動に際しては、ユーザが制限モードの解除指示を行った際に移動を開始する。この移動経路にはメンテナンス動作のためにワイパー位置の通過が含まれ、最終的にはキャップ位置へと到達し、キャップ位置にて停止する。カートリッジ20のヘッド面32はノズルキャップ36により乾燥から保護される。
【0144】
以上のように実施の形態3に係る印刷装置2は、ヘッド面32を良好な状態に維持するためのメンテナンス機構を備え、メンテナンス機構は、ヘッド面32を清掃するワイパー機構、および、ヘッド面32にキャップを脱着するキャップ機構の少なくとも1つを含み、制御部74は、制限モードにおいて、ヘッド面32がメンテナンス機構に接触しない経路をたどって、カートリッジ交換可能な位置へカートリッジ20を移動させる。
【0145】
これによれば、印刷対象物からインクカートリッジ20のヘッド面32に付着した汚れとしての基材が、印刷装置2内部のメンテナンス機構やキャップ機構に再転移して、プリンタ内部に汚れが広がることを防ぐことが可能である。しかも、ユーザがカートリッジ交換をすれば。修理を依頼することに比べて、短時間かつ低コストでの汚れのない状態に復帰することが可能である。
【0146】
ここで、制御部74は、制限モードにおいて所定のユーザ操作がなされたとき制限モードを解除してもよい。
【0147】
これによれば、ユーザ自身が実施できる手順で、インクカートリッジのヘッド面に付着した汚れを除去し、汚れのない状態に復帰することを可能にする。
【0148】
ここで、制御部74は、制限モードにおいてカートリッジ20が新カートリッジに交換されたことを検知したとき、または、カートリッジ20が取り外され再度取り付けられたことを検知したとき、制限モードを解除してもよい。
【0149】
これによれば、ユーザがカートリッジ20の交換、または、取り外して汚れを除去する掃除をすれば、汚れのない通常動作へと復帰することができる。しかも、修理を依頼することに比べて、短時間かつ低コストでの汚れのない状態に復帰することが可能である。
【0150】
ここで、制御部74は、制限モードを解除したとき、メンテナンス機構を用いたメンテナンス動作を実施してもよい。
【0151】
これによれば、前記制限モードにおいてカートリッジはキャップされない状態で放置されており、インクカートリッジのヘッド面が外気にさらされるのでインク蒸発や乾燥によってインク吐出不良の懸念がある。前記制限モードが解除されて通常モードに復帰する際にメンテナンス動作を実施することで、インク吐出不良の回避が図れる。
【0152】
ここで、制限モードを解除したときに実施されるメンテナンス動作の時間は、通常の動作モードで実施されるメンテナンス動作の時間より長くてもよい。
【0153】
これによれば、前記制限モードが解除されて通常モードに復帰する際に、メンテナンス動作をより長い時間をかけて実施することで、インク吐出不良の回避がより確実に図れる。
【0154】
(実施の形態2)
本実施の形態では、センサ11として光学センサを用いる接触検知部9を備える印刷装置2について説明する。
【0155】
[2-1.印刷装置の構成]
本実施の形態における印刷装置2の構成は、
図1から4と同じである。ただし、接触検知部9は、センサ11として光学センサを備えている点が異なる。以下異なる点を中心に説明する。
【0156】
図6は、実施の形態2に係る印刷装置におけるセンサ11の構成例および周辺を示す図である。同図において、センサ11は、発光素子111と、受光素子112とを備える。
【0157】
発光素子111は、例えばレーザダイオードであり、印刷対象物である爪10とヘッド面32との隙間に光線を発する。光線は、例えば赤外線でもよいし、可視光線でもよい。
【0158】
受光素子112は、例えばフォトダイオードであり、爪10とヘッド面32との隙間を通過する光線を検知する光電変換素子である。
【0159】
判定部13は、受光素子112の検知結果に基づいて印刷対象物とヘッド面32とが接触したか否かを判定する。例えば、判定部13は、爪10が光線の全部を遮ったとき、つまり、受光素子112の出力信号がほぼ0の受光量を示すとき、接触したと判定する。あるいは、判定部13は、判定部13は、爪10が光線の一部を遮ったとき、つまり、受光素子112の出力信号がしきい値より小さくなったとき、接触したと判定してもよい。
【0160】
図7は、爪10がヘッド面32に接触したときのセンサ11の様子を示す説明図である。同図では発光素子111が発した光線は、爪10に遮られ、受光素子112に入射しない。この場合の受光素子112の出力信号はほぼ0の受光量を示す。また、ヘッド面32には、爪10に塗られたベースコート剤、プリコート剤などの基材が付着してしまう。ヘッド面32に付着した基材は単なる汚れd0となり、インクノズルを覆う可能性がある。
【0161】
[2-2.印刷装置の動作]
本実施形態の印刷装置2の動作について説明する。
【0162】
図8は、実施の形態2に係る印刷装置2の動作例を示すフローチャートである。同図のフローチャートは、
図5のフローチャートと比べて、ステップS11およびS12の代わりに、ステップS11aおよびステップS12aを有する点が異なっている。以下異なる点を中心に説明する。
【0163】
図8において、まず、制御部74は、受光素子112の出力信号を取得し(S11a)、爪10が光線を遮ったか否か、つまり、出力信号のほぼ0であるか否かに応じて印刷対象物である爪10とヘッド面32とが接触したか否かを判定する(S12a)。
図8のこれ以降の動作は、
図5と同じである。
【0164】
図9は、
図8の処理の一部を割り込み処理で実施する動作例を示すフローチャートである。
図9では、ステップ12aにおいてセンサ11の出力信号がほぼ0になったことを要因として割り込み信号を発生する(S18)。
【0165】
この割り込み信号の発生によってステップS13およびS14が割り込み処理とて実行される。この割り込み処理完了後は、制限モードの動作としてステップS15からS17が実行される。
【0166】
図9によれば、受光素子112の入光状態の変化をハードウェア割り込みで監視しており、定期的な監視よりもより即応性の高めることが可能となっている。
【0167】
以上のように実施の形態2に係る印刷装置2において、接触検知部9は、印刷対象物とヘッド面32との隙間に光を発する発光素子111と、印刷対象物とヘッド面32との隙間を通過する光を検知する受光素子112と、受光素子112の検知結果に基づいて印刷対象物とヘッド面32とが接触したか否かを判定する判定部13と、を備える。
【0168】
これによれば、印刷対象物とインクカートリッジの接触を光学的に検知することができる。光学的な検知なので、インク吐出経路や印刷面への影響を抑えることができる。
【0169】
また、発光素子および受光素子は、印刷対象物がヘッド面32の方向へ一定以上に近づいた場合に、光の一部または全部が遮られるように配置されてもよい。
【0170】
これによれば、前記発光素子および前記受光素子の配置を調整することで、印刷対象物がインクカートリッジに接触する前に、未然に検知することが可能になる。
【0171】
なお、
図6において、発光素子111は、レーザダイオードではなく、発光ダイオード(LED)であってもよい。発光素子111が発する光は光線でなく、進行するに連れて広がる光であってもよい。
【0172】
また、
図6において、光は隙間を通っていれば良いので、光路中に反射鏡や導光部材を用いて光路を設計することができる。
【0173】
(実施の形態3)
本実施の形態では、主に、制限モードでのカートリッジ20の移動制限と、制限モードの解除条件について説明する。
【0174】
[3-1.印刷装置の構成]
印刷装置2は、ヘッド面32を良好な状態に維持するためのメンテナンス機構を備えている。メンテナンス機構は、ヘッド面32を清掃するワイパー機構、および、ヘッド面32にキャップを脱着するキャップ機構を含む。
【0175】
制御部74は、制限モードにおいて、ヘッド面32がメンテナンス機構に接触しない経路をたどって、カートリッジ交換可能な位置へカートリッジ20を移動させる。つまり、制限モードにおいて、カートリッジ20の移動可能な範囲は、メンテナンス機構に接触しない経路に制限される。
【0176】
図10は、カートリッジ20の可動範囲120内におけるキャップ位置、ワイパー位置、印刷可能範囲、カートリッジ交換位置の配置を模式的に示す説明図である。同図において、可動範囲120は、移動駆動部5によってX軸方向およびY軸方向にカートリッジ20が移動可能な範囲を示す。X軸、Y軸は、主走査方向、副走査方向を示す。
【0177】
キャップ位置121は、カートリッジ20のヘッド面32にキャップを取り付け、または、取り外すキャップ機構の位置を示す。
【0178】
ワイパー位置122は、ヘッド面32を清掃するワイパー機構の位置を示す。
【0179】
交換位置123は、ユーザによるカートリッジ20の交換が可能な位置を示す。
【0180】
印刷範囲124は、ヘッド面32からインクを吐出して印刷することが可能な範囲を示す。
【0181】
図11は、通常の印刷開始時における印刷開始位置までの爪10の動線の一例を表す図である。印刷装置2は印刷開始が指示されると、カートリッジ20を搭載したキャリアをキャップ位置121からワイパー位置122へと移動させる。この移動により、カートリッジ20のヘッド面32はワイパー38により清掃され、いわゆるメンテナンス動作が行われる。メンテナンス動作を行った後に、カートリッジ20は印刷開始位置まで移動し、爪10への印刷動作が開始される。
【0182】
図12は、通常の印刷終了時におけるキャップ位置121までのカートリッジ20の動線の一例を表す図である。印刷装置2は印刷が終了すると、カートリッジ20を搭載したキャリアを印刷終了位置からキャップ位置121へと移動させる。この移動経路にはメンテナンス動作のためにワイパー位置122の通過が含まれる。
【0183】
[3-2.印刷装置の動作]
図13は、実施の形態3における印刷装置2の動作例を示すフローチャートである。同図は、
図5の動作例と比べて、ステップ15aが追加されている点が異なっている。以下、異なる点を中心に説明する。
【0184】
制限モードに移行した後、制御部74は、ユーザ操作によりカートリッジ20の移動指示を受けたか否かを判定する(S15a)。カートリッジ20の移動指示を受けたと判定していない場合(S15aでno)、制御部74は、ステップ15aに戻り、指示を待つ。カートリッジ20の移動指示を受けたと判定した場合(S15aでyes)、制御部74は、カートリッジ20を、メンテナンス機構を通過しない移動経路でカートリッジ20をカートリッジ20の交換位置123に移動させる(S15)。
【0185】
図13によれば、交換位置123への移動に際して、制限モードに移行してカートリッジ20の移動が禁止された後、自動的に交換位置123まで移動させた場合、再びヘッド面32が爪10に接触する可能性がある。ステップS15aではユーザが交換位置への移動を指示するユーザ操作を必要とするので、再びヘッド面32が爪10に接触することを回避することができる。
【0186】
図14は、印刷装置2における、印刷中にヘッド面32と爪10とが接触して制限モードとなった場合の、カートリッジ20の停止位置からのカートリッジ20の交換位置123までの動線の一例を表す図である。この移動に際しては、キャップ機構やワイパー機構は通らずに、カートリッジ交換位置123まで移動する。カートリッジ20はカートリッジ交換位置にて停止し、ユーザのカートリッジ20交換待ちとなる。
【0187】
図15は、印刷装置2における制限モードをユーザ操作に基づいて解除した場合の、カートリッジ交換位置123からのキャップ位置までの動線の一例を表す構成図である。この移動に際しては、ユーザが制限モードの解除指示を行った際に移動を開始する。この移動経路にはメンテナンス動作のためにワイパー位置の通過が含まれ、最終的にはキャップ位置へと到達し、キャップ位置にて停止する。カートリッジ20のヘッド面32はノズルキャップ36により乾燥から保護される。
【0188】
以上のように実施の形態3に係る印刷装置2は、ヘッド面32を良好な状態に維持するためのメンテナンス機構を備え、メンテナンス機構は、ヘッド面32を清掃するワイパー機構、および、ヘッド面32にキャップを脱着するキャップ機構の少なくとも1つを含み、制御部74は、制限モードにおいて、ヘッド面32がメンテナンス機構に接触しない経路をたどって、カートリッジ交換可能な位置へカートリッジ20を移動させる。
【0189】
これによれば、印刷対象物からインクカートリッジ20のヘッド面32に付着した汚れとしての基材が、印刷装置2内部のメンテナンス機構やキャップ機構に再転移して、プリンタ内部に汚れが広がることを防ぐことが可能である。しかも、ユーザがカートリッジ交換をすれば。修理を依頼することに比べて、短時間かつ低コストでの汚れのない状態に復帰することが可能である。
【0190】
ここで、制御部74は、制限モードにおいて所定のユーザ操作がなされたとき制限モードを解除してもよい。
【0191】
これによれば、ユーザ自身が実施できる手順で、インクカートリッジのヘッド面に付着した汚れを除去し、汚れのない状態に復帰することを可能にする。
【0192】
ここで、制御部74は、制限モードにおいてカートリッジ20が新カートリッジに交換されたことを検知したとき、または、カートリッジ20が取り外され再度取り付けられたことを検知したとき、制限モードを解除してもよい。
【0193】
これによれば、ユーザがカートリッジ20の交換、または、取り外して汚れを除去する掃除をすれば、汚れのない通常動作へと復帰することができる。しかも、修理を依頼することに比べて、短時間かつ低コストでの汚れのない状態に復帰することが可能である。
【0194】
ここで、制御部74は、制限モードを解除したとき、メンテナンス機構を用いたメンテナンス動作を実施してもよい。
【0195】
これによれば、前記制限モードにおいてカートリッジはキャップされない状態で放置されており、インクカートリッジのヘッド面が外気にさらされるのでインク蒸発や乾燥によってインク吐出不良の懸念がある。前記制限モードが解除されて通常モードに復帰する際にメンテナンス動作を実施することで、インク吐出不良の回避が図れる。
【0196】
ここで、制限モードを解除したときに実施されるメンテナンス動作の時間は、通常の動作モードで実施されるメンテナンス動作の時間より長くてもよい。
【0197】
これによれば、前記制限モードが解除されて通常モードに復帰する際に、メンテナンス動作をより長い時間をかけて実施することで、インク吐出不良の回避がより確実に図れる。
【0198】
(実施の形態4)
本実施の形態では、制限モードを示すモード情報を不揮発性のメモリに保存することにより、制限モードで電源オフした後に電源オンした場合に、制限モードの整合性を確保する構成例について説明する。
【0199】
[4-1.印刷装置の構成]
本実施の形態における印刷装置2の構成は、
図1から4と同じでよい。
【0200】
[4-2.印刷装置の動作]
図16は、実施の形態4における印刷装置2の動作例を示すフローチャートである。同図は、ユーザ操作により印刷指示を受けて印刷動作を開始した直後の動作例を示す。制御部74は、まず、ヘッド面32のノズルキャップ36を外すアンキャップ動作を制御し(S21)、カートリッジ20をワイパー位置122に移動させてヘッド面32を清掃するワイプ動作を制御し(S22)、さらに他のメンテナンス動作を制御してから(S23)、インクの吐出つまり印刷を開始する(S24)。
【0201】
印刷開始から印刷完了まで(S26でno)、制御部74は、接触検知部9で爪10とヘッド面32との接触を検知したか否かを繰り返し判定する(S25)。接触検知部9が接触を検知したと判定した場合(S25でyes)、制御部74は、印刷動作中のカートリッジ20の移動を停止し(S29)、つまり、印刷動作を禁止し、制限モードに移行し(S29a)、印刷装置2が制限モードにあることを示すモード情報をメモリに保存する(S30)。このメモリは、記憶部96を含む。モード情報が保存される記憶領域は、印刷装置2の電源がオフになってもモード情報を保持する不揮発性メモリ、またはバッテリバックアップメモリである。
【0202】
一方、印刷完了まで接触検知部9が接触を検知したと判定しなかった場合(S26でyes)、制御部74は、カートリッジ20をワイパー位置122に移動させてヘッド面32を清掃するワイプ動作を制御し(S27)、さらに、カートリッジ20をキャップ位置121に移動させてノズルキャップ36をヘッド面32に取り付けるキャップ動作を制御する(S28)。
【0203】
これによれば、インクカートリッジのヘッド面に印刷対象物からの汚れが転移した事象の発生を記憶することが可能である。また、メモリはフラッシュメモリ、バッテリバックアップメモリなどであり、印刷装置2の電源のオフ状態およびオフ状態に関わらず、制限モードを整合的に維持させることを容易にする。
【0204】
図17は、
図16のステップS29bで制限モードに移行した後に、ユーザ操作を受けて制限ノードを解除する動作例を示すフローチャートである。
図17は、
図13で説明したステップS15aからS17と比べて、S16の代わりにS16aを実施する点と、S18が追加された点とが異なっている。以下異なる点を中心に説明する。
【0205】
制御部74は、ステップS16において、制限モード解除を指示するユーザ操作を受けたか否かを判定する(S16a)。制限モード解除を指示するユーザ操作は、ユーザがカートリッジ20のヘッド面32を清掃したこと、または、カートリッジ20をカートリッジ20に交換したことを前提にしている。
【0206】
このように、
図17の動作例は、接触を検知して印刷動作を停止した後のユーザ操作によるエラー解除手順の一例を示している。同図によれば、ユーザは接触の検知で停止したカートリッジの交換や清掃を実施するために、カートリッジ20をカートリッジ交換位置まで移動する指示を行う。この際、カートリッジ20のヘッド面32は、ワイパー機構やキャップ機構に触れない経路で動作する。カートリッジ20はカートリッジ交換位置で待機しユーザがエラー解除を指示するまでカートリッジ交換位置で停止している。解除操作が行われた場合、メモリに記録されている当該のエラー情報を消去または更新し(S18)、通常モードへ復帰する。
【0207】
図18は、実施の形態4における電源オン時の動作例を示すフローチャートである。印刷装置2の電源がオンされたとき、制御部74は、まず、XY軸の原点確定動作を行う(S31)。原点確定動作は、X軸Y軸の原点を検知する動作である。ここでの原点確定動作は、キャップ位置およびワイパー位置を通過することなく原点検知するシーケンスになっている。
【0208】
次に、制御部74は、メモリからモード情報を読み出し、モード情報が制限モードを示すか否かを判定する(S33)。制限モードを示していないと判定された場合(S33でno)、制御部74は、通常モードの電源オンシーケンスとして、ワイパー動作を制御し(S35)、メンテナンス動作を制御し(S36)、キャップ動作を制御してから(S37)、ユーザ操作を待つ待機状態になる。
【0209】
一方、制限モードを示していると判定された場合(S33でyes)、制御部74は、カートリッジ20が交換位置に有る場合にはカートリッジ20の位置を維持する(S38)。このとき、もしカートリッジ20が交換位置にない場合には、交換位置に移動させてから、カートリッジ20の位置を維持する。この後のS16aからS18は、
図17のS16aからS18と同じであり、ステップS18の後ステップS35に進み通常モードの電源オンシーケンスを行う。
【0210】
図18では、電源投入時にメモリからモード情報を読み取り、爪10とヘッド面32の接触による制限モードを示すモード情報が保存されている場合は、カートリッジ20を交換位置で停止させてプ制限モードの動作をし、ユーザからの解除操作を待つ状態に遷移する。この際、カートリッジ20のヘッド面32は、ワイパー機構やキャップ機構に触れない経路で移動可能である。
【0211】
ユーザにより解除操作が行われた場合、メモリに記録されているモード情報を更新または消去し、通常モードとして起動する。
【0212】
以上のように実施の形態4に係る印刷装置2は、制御部74は、制限モードに移行したとき、印刷装置が制限モードにあることを示すモード情報をメモリに保存する。このメモリは、例えば記憶部96でよい。
【0213】
これによれば、インクカートリッジのヘッド面に印刷対象物からの汚れが転移した事象の発生を記憶することが可能である。
【0214】
ここで、メモリは、印刷装置2の電源がオフになってもモード情報を保持してもよい。
【0215】
ここで、メモリは、印刷装置2の本体内のメモリ(つまり記憶部96)、カートリッジ内のメモリ、および、印刷装置2の外部の装置内のメモリのうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0216】
これによれば、メモリはフラッシュメモリ、バッテリバックアップメモリなどであり、前記印刷装置の電源のオフ状態およびオフ状態に関わらず、制限モードを維持させることを容易にする。
【0217】
ここで、制御部74は、制限モードを解除したとき、印刷装置が制限モードにないことを示すようにモード情報を更新、または、モード情報を削除してもよい。
【0218】
これによれば、モード情報と汚れ有無とを容易に整合させることができる。
【0219】
ここで制御部74は、印刷装置の電源投入時に、制限モードにあることを示すモード情報がメモリに保存されている場合には、印刷装置を制限モードに起動してもよい。
【0220】
これによれば、制限モードで電源が切断された場合に、次の電源投入後も、制限モードを維持することができるので、ヘッド面の汚れが、プリンタ内部のメンテナンス機構やキャップ機構に転移して、プリンタ内部に汚れが広がることを防止し続けることが可能である。
【0221】
(実施の形態5)
本実施の形態では、制限モードを示すモード情報を不揮発性のメモリに保存することにより、制限モードで電源オフする動作例について説明する。
【0222】
[5-1.印刷装置の構成]
本実施の形態における印刷装置2の構成は、
図1から4と同じでよく、実施の形態4と同じでよい。
【0223】
[5-2.印刷装置の動作]
図19は、実施の形態5における電源オフ時の動作例を示すフローチャートである。制御部74は、ユーザによる電源オフ操作を受けたとき(S41でyes)、メモリからモード情報を読み出し(S42)、モード情報が制限モードを示すか否かを判定する(S43)。モード情報が制限モードを示さないと判定した場合(S43でno)、制御部74は、通常モードの電源オフシーケンスとして、メンテナンス動作を制御してから(S45)、電源装置に対して電源供給を停止させる(S45)。ここでの、メンテナンス動作は、ワイパー動作とキャップ動作とを含む。
【0224】
一方、モード情報が制限モードを示すと判定した場合(S43でno)、制御部74は、メンテナンス動作を実施することなく、電源装置に対して電源供給を停止させる(S45)。この場合、ヘッド面32にノズルキャップ36が取り付けられない状態で、電源オフすることになる。
【0225】
以上のように実施の形態5の印刷装置2において、制御部74は、制限モードにおいて、メンテナンス機構を用いたメンテナンス動作を禁止する。
【0226】
これによれば、通常モードにおいて実施されるメンテナンス動作が、制限モードでは禁止される。よって、印刷対象物からカートリッジ20のヘッド面32に転移した汚れが、プリンタ内部のメンテナンス機構やキャップ機構に再転移して、プリンタ内部に汚れが広がることを防ぎ続けることが可能である。
【0227】
また、制御部74は、制限モードにおいて、電源をオフするユーザ操作がなされたとき、メンテナンス機構を用いたメンテナンス動作をすることなく、電源オフ状態に移行する。
【0228】
これによれば、印刷対象物からカートリッジ20のヘッド面に転移した汚れが、プリンタ内部のメンテナンス機構やキャップ機構に再転移して、プリンタ内部に汚れが広がることを防ぎ続けることが可能である。
【0229】
(実施の形態6)
本実施の形態では、メモリにモード情報を保存している場合の電源オン時の動作例について説明する。
【0230】
実施の形態6の印刷装置2は、電源オン時にメモリからモード情報を読み取り、モード情報が制限モードを示す場合、カートリッジ20の移動を制限し、通常モードで実施している一連のキャップ動作などを実施せず、キャップ解放状態(カートリッジがキャップされていない状態)電源ON状態に遷移する。この動作は、
図18のステップS31、S32、S33、S38と同じでよい。
【0231】
制限モードを示す情報がメモリに記録されていない場合も、
図18のS34~S37と同様に、カートリッジ20がキャップされた状態で電源ON状態に遷移する。
【0232】
以上のように、実施の形態6の印刷装置2において制御部74は、制限モードに移行したとき、印刷装置が制限モードにあることを示すモード情報をメモリに保存し、印刷装置の電源投入時に、制限モードにあることを示すモード情報がメモリに保存されている場合には、メンテナンス機構を用いたメンテナンス動作をすることなく、印刷装置を制限モードに起動する。
【0233】
これによれば、通常モードにおける電源オン時に実施されるメンテナンス動作は、制限モードでは禁止される。よって、電源投入後も制限モードが維持され、印刷対象物からインクカートリッジのヘッド面に転移した汚れが、プリンタ内部のメンテナンス機構やキャップ機構に再転移して、プリンタ内部に汚れが広がることを防止することが可能である。
【0234】
(実施の形態7)
本実施の形態では、センサ11としてカメラを用いる接触検知部9を備える印刷装置2について説明する。
【0235】
[7-1.印刷装置の構成]
図20は、実施の形態7に係る印刷装置におけるセンサ11の構成例および周辺を示す図である。同図において、センサ11は、カメラである撮像部28bを含む。
【0236】
撮像部28bは、印刷対象物とヘッド面32との隙間を撮影する。
【0237】
判定部13は、撮像部28bで撮像された画像に基づいて印刷対象物とヘッド面32とが接触したか否かを判定する。
【0238】
図21は、実施の形態7に係る印刷装置におけるセンサ11の変形例および周辺を示す図である。同図において、センサ11は、カメラである撮像部28bと、ミラー26とを含む。
【0239】
撮像部28bは、印刷対象物とヘッド面32との隙間を、ミラー26を介して撮影する。
【0240】
[7-2.印刷装置の動作]
図22は、撮像部28bで撮像された画像例を模式的に示す図である。
図22の画像281は、ヘッド面32と爪10とを側方から見た画像である。
【0241】
判定部13は、例えば、画像281上のヘッド面32と爪10とのギャップG1は、画像上の距離から実空間上の距離に換算し、換算した距離が微小なしきい値よりも小さければ接触と判定する。
【0242】
これによれば、発光素子と受光素子による光線を用いた方式よりも高精度の検知と判断を実施することが可能である。光線を用いると、光線の反射や拡散の影響により、検知精度が落ちる懸念がある。カメラで撮影した画像を画像処理によって、より高精度な検知と判断を行うことが可能となる。
【0243】
以上のように、実施の形態7の印刷装置2において接触検知部9は、印刷対象物とヘッド面32との隙間を撮影するカメラと、カメラで撮像された画像に基づいて印刷対象物とヘッド面32とが接触したか否かを判定する判定部13と、を備え、カメラから得られる画像を解析することによって印刷対象物がヘッド面32と接触したか否かを判定する。
【0244】
これによれば、カメラで撮影した画像を画像処理によって、より高精度な検知と判断を行うことが可能となる。
【0245】
なお、撮像部28bは、印刷準備段階として指置台上の爪10の位置合わせを正確に行うためのカメラと兼用することができる。
【0246】
(実施の形態8)
本実施の形態では、センサ11として機械的なワイヤーとスイッチとを用いる接触検知部9を備える印刷装置2について説明する。
【0247】
[8-1.印刷装置の構成]
図23は、実施の形態8に係る印刷装置におけるセンサ11の構成例および周辺を示す図である。同図において、センサ11は、ワイヤー113とスイッチ114とを含む。
【0248】
ワイヤー113は、印刷対象物とヘッド面32との隙間に配置される。
【0249】
スイッチ114は、ワイヤーの変位を検出する機械的なスイッチである。
【0250】
判定部13は、スイッチの検出結果に基づいて印刷対象物とヘッド面32とが接触したか否かを判定する。
【0251】
これによれば、光線を用いた方式よりも耐久性のある検知と判断を実施することが可能である。光線を扱うための光学部品であれば、インクミストといった印刷中の浮遊インク粒子によって、光学部品の汚れにより光学系の耐久性が低下する懸念がある。機械式であればインクミストの影響を受けることなく耐久性を保つことが可能となる。
【0252】
以上のように、実施の形態8の印刷装置2において、接触検知部9は、印刷対象物とヘッド面32との隙間に配置されたワイヤーと、ワイヤーの変位を検出する機械的なスイッチと、スイッチの検出結果に基づいて印刷対象物とヘッド面32とが接触したか否かを判定する判定部13と、を備える。
【0253】
(実施の形態9)
本実施の形態では、センサ11として圧力センサを用いる接触検知部9を備える印刷装置2について説明する。
【0254】
図24は、実施の形態8に係る印刷装置におけるセンサ11の構成例および周辺を示す図である。同図において、センサ11は、指置台の上に配置された圧力センサ115を備える。
【0255】
圧力センサ115は、その上に置かれた指8の圧力を検知する。
【0256】
判定部13は、圧力センサ115で検知された圧力がしきい値よりも小さいとき、爪10とヘッド面32とが接触したと判定する。
【0257】
以上のように、実施の形態9の印刷装置2において、印刷対象物は、人の指先の爪であり、印刷装置2は、ヘッド面32と対向する指置台を備え、接触検知部9は、指置台に乗せられた指の圧力を検知する圧力センサ115と、圧力センサ115の検知結果に基づいて印刷対象物とヘッド面32とが接触したか否かを判定する判定部13と、を備える。
【0258】
これによれば、圧力を検知するので、インクミストなどの影響は受けず、インクカートリッジと印刷対象物に異物を挟むことがないので、印刷に影響することもない。
【0259】
なお、印刷対象物として爪10を例示したが、印刷対象物はこれに限らない。印刷対象物は、例えば、ペン、定規などの文具類、付け爪、ゴルフボール類、紙媒体類、小物類等であってもよく、これ以外でも、コート剤の塗布によりインクを定着可能な物体であれば印刷対象物となり得る。
【0260】
なお、上記各実施の形態において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPUまたはプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0261】
以上、本発明の一つまたは複数の態様に係る印刷装置について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の一つまたは複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0262】
本発明は、インクを射出する複数のインクノズルを有するヘッド面を含むカートリッジを備える印刷装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0263】
2 印刷装置
4 筐体
4a 天面
4b 前面
5 移動駆動部
6 印刷ユニット
8 指
9 接触検知部
10 爪
11 センサ
12 電源スイッチ
13 判定部
14 開口部
16 フィンガーホルダ
18 カバー
19 ヘッド制御部
20 カートリッジ
22 駆動機構
22a X軸駆動機構
22b Y軸駆動機構
24 ヘッド維持機構
26 ミラー
26a 鏡面
28 撮像ユニット
28a 配線基板
28b 撮像部
30 ヘッド支持部
31 インクヘッド
32 ヘッド面
34 キャップ支持部
36 ノズルキャップ
37 爪正面画像
38 ワイパー
39 爪側面画像
40 移動テーブル
42 軸ガイドシャフト
44 軸モータ
46 タイミングベルト
48 ベアリング部材
50 軸ガイドシャフト
52 軸モータ
54 ウォームギア
56 ウォームホイール
58 駆動変換機構
59 支持プレート
60 ピニオン歯車
62 ラック歯車
70 外部端末
72 判定部
74 制御部
85 Y軸制御部
86 Y軸駆動部
87 Y位置検知部
88 画像処理部
89 X軸制御部
90 X軸駆動部
91 X位置検知部
94 通信部
96 記憶部
G1 ギャップ
ON 電源
111 発光素子
112 受光素子
113 ワイヤー
114 スイッチ
115 圧力センサ
120 可動範囲
121 キャップ位置
122 ワイパー位置
123 カートリッジ交換位置
123 交換位置
124 印刷範囲
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