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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151096
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】位置推定システム及び位置推定方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 17/10 20200101AFI20220929BHJP
   B65G 57/03 20060101ALI20220929BHJP
   B65G 57/18 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
G01S17/10
B65G57/03 C
B65G57/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021054010
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(71)【出願人】
【識別番号】000198363
【氏名又は名称】IHI運搬機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】坂野 肇
(72)【発明者】
【氏名】渋川 文哉
(72)【発明者】
【氏名】水崎 紀彦
【テーマコード(参考)】
3F029
5J084
【Fターム(参考)】
3F029AA01
3F029BA04
3F029CA52
3F029CA64
3F029EA03
5J084AA04
5J084AA05
5J084AB09
5J084AC07
5J084AD01
5J084BA03
5J084BA20
5J084BA31
5J084BA56
5J084CA03
(57)【要約】
【課題】コイルを載置させるための枕木の位置を効率よく推定することが可能な位置推定装置を提供する。
【解決手段】位置推定システム1は、固定台の延伸方向の両端側に設置されたマーカと、移動機構と、センサ6と、移動機構を制御する駆動制御部114と、センサ情報取得部111と、位置情報算出部112と、中心位置算出部113とを備える。移動機構は、床面と平行な平面上を移動する。センサ6は、マーカの位置情報及びマーカを検知したか否かを示す検知情報を収集する。センサ情報取得部111は、センサにより収集された位置情報及び検知情報を取得する。位置情報算出部112は、位置情報及び検知情報に基づいて固定台の一端側に設置されたマーカの第1の位置情報及び他端側に設置されたマーカの第2の位置情報を算出する。中心位置算出部113は、第1の位置情報と、第2の位置情報とに基づいて、固定台の中心位置を算出する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形又は円柱形の荷を載置するために床面に設置された一対の固定台の位置を推定する位置推定システムであって、
前記固定台の延伸方向の両端側に設置されたマーカと、
前記床面に対して垂直な方向の上部に位置し、前記床面と平行な平面上を移動する移動機構と、
前記移動機構に備えられ、前記マーカの位置情報及び前記マーカを検知したか否かを示す検知情報を収集するセンサと、
前記位置情報及び前記検知情報を前記センサに収集させるように前記移動機構を制御する駆動制御部と、
前記センサにより収集された前記位置情報及び前記検知情報を取得するセンサ情報取得部と、
前記位置情報及び前記検知情報に基づいて、前記固定台の延伸方向の一端側に設置された前記マーカの第1の位置情報、及び前記固定台の延伸方向の他端側に設置された前記マーカの第2の位置情報を算出する位置情報算出部と、
前記第1の位置情報と、前記第2の位置情報とに基づいて、前記固定台の中心位置を算出する中心位置算出部と、を備える位置推定システム。
【請求項2】
一対の前記マーカは、前記一対の前記固定台の短手方向の設置間隔だけ距離を空けて並行に固定され、前記固定台に接触させて設置することが可能な請求項1に記載の位置推定システム。
【請求項3】
前記固定台の延伸方向における前記マーカの長さは、前記固定台の短手方向における前記マーカの長さより長い、請求項1又は2に記載の位置推定システム。
【請求項4】
前記センサは、前記マーカの相対位置情報及び前記検知情報を検知する検知センサと、前記移動機構の位置を前記位置情報として収集する位置センサとを含み、
前記センサ情報取得部は、前記相対位置情報、前記検知情報、及び前記移動機構の前記位置情報を取得し、前記相対位置情報、及び前記移動機構の前記位置情報に基づいて前記マーカの座標情報を算出し、
前記位置情報算出部は、前記座標情報及び前記検知情報に基づいて、前記第1の位置情報、及び前記第2の位置情報を算出する請求項1~3のいずれか一項に記載の位置推定システム。
【請求項5】
前記マーカは、一対の前記固定台と、他の一対の前記固定台と、を区別することが可能な形状で構成される、請求項1~4のいずれか一項に記載の位置推定システム。
【請求項6】
前記マーカは、高い反射率を持つ部分を備え、
前記位置情報算出部は、計測された高い反射率の計測点の分布から前記第1の位置情報、及び前記第2の位置情報を算出する請求項1~5のいずれか一項に記載の位置推定システム。
【請求項7】
コンピュータによって実行される位置推定方法であって、
円筒形又は円柱形の荷を載置するために設置された一対の固定台の延伸方向である第1方向の両端側に設置されたマーカに関する情報であって、前記マーカの位置情報及び前記マーカを検知したか否かを示す検知情報を収集するセンサを備える移動機構を、前記第1方向に直交する第2方向に移動するよう制御する制御工程と、
前記センサにより収集された前記位置情報及び前記検知情報を取得するセンサ情報取得工程と、
前記センサによって収集された前記固定台の一端側に設置された前記マーカの前記位置情報を、第1の位置情報として算出する第1位置情報算出工程と、
前記センサによって収集された前記固定台の他端側に設置された前記マーカの前記位置情報を、第2の位置情報として算出する第2位置情報算出工程と、
前記第1の位置情報と、前記第2の位置情報とに基づいて、前記固定台の中心位置を算出する中心位置算出工程と、
を含む、位置推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、位置推定システム及び位置推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼板等の金属板を円筒状(コイル状)に巻いた状態の鉄鋼製品を、倉庫等に一時的に保管し、荷役装置を用いたコイルの搬入出が行われている。このコイルの保管に際し、コイルが載置される床面には、円筒状のコイルの転がりを抑止するために枕木が用いられる。この枕木の上にコイルを段積みして載置させることにより、複数のコイルを保管することが可能となる。特許文献1には、枕木として固定台を用いて保管対象の製品を載置させるための荷役作業決定装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-222455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている荷役作業決定装置は、固定台(枕木)の位置を識別する情報をあらかじめデータベースに格納し、この位置情報に基づいて、保管対象の製品の搬入出が行われる。しかし、コイルの大きさは、供給する金属の長さや、一枚の厚みにより異なる。そのため、載置対象となるコイルに応じて、枕木の位置の変更が必要となる。例えば、特許文献1に開示された荷役作業決定装置においては、枕木の位置を変更するたびに、手動で枕木の位置を計測しなおし、データベースに登録する必要があり、その都度手間を要する。
【0005】
そこで、本開示は、コイルを載置させるための枕木の位置を効率よく推定することが可能な位置推定装置及び位置推定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、円筒形又は円柱形の荷を載置するために床面に設置された一対の固定台の位置を推定する位置推定システムであって、固定台の延伸方向の両端側に設置されたマーカと、床面に対して垂直な方向の上部に位置し、床面と平行な平面上を移動する移動機構と、移動機構に備えられ、マーカの位置情報及びマーカを検知したか否かを示す検知情報を収集するセンサと、位置情報及び検知情報をセンサに収集させるように移動機構を制御する駆動制御部と、センサにより収集された位置情報及び検知情報を取得するセンサ情報取得部と、位置情報及び検知情報に基づいて固定台の延伸方向の一端に設置されたマーカの第1の位置情報、及び固定台の延伸方向の他端側に設置されたマーカの第2の位置情報を算出する位置情報算出部と、第1の位置情報と、第2の位置情報とに基づいて、固定台の中心位置を算出する中心位置算出部と、を備える。
【0007】
一対のマーカは、一対の固定台の短手方向の設置間隔だけ距離を空けて並行に固定され、固定台に接触させて位置決めをしてもよい。上記の位置推定システムでは、固定台の延伸方向におけるマーカの長さは、固定台の短手方向におけるマーカの長さより長くてもよい。センサは、マーカの相対位置情報及び検知情報を検知する検知センサと、移動機構の位置を位置情報として収集する位置センサとを含み、センサ情報取得部は、相対位置情報、検知情報、及び移動機構の位置情報を取得し、相対位置情報、及び移動機構の位置情報に基づいてマーカの座標情報を算出し、位置情報算出部は、座標情報及び検知情報に基づいて、第1の位置情報、及び第2の位置情報を算出してもよい。マーカは、一対の固定台と、他の一対の固定台と、を区別することが可能な形状で構成されてもよい。さらに、上記マーカは、高い反射率を持つ部分を備え、位置情報算出部は、計測された高い反射率の計測点の分布から第1の位置情報、及び第2の位置情報を算出してもよい。
【0008】
また、本開示の他の態様は、コンピュータによって実行される位置推定方法であって、円筒形又は円柱形の荷を載置するために設置された一対の固定台の延伸方向である第1方向の両端側に設置されたマーカに関する情報であって、マーカの位置情報及びマーカを検知したか否かを示す検知情報を収集するセンサを備える移動機構を、第1方向に直交する第2方向に移動するよう制御する制御工程と、センサにより収集された位置情報及び検知情報を取得するセンサ情報取得工程と、センサによって収集された固定台の一端側に設置されたマーカの位置情報を、第1の位置情報として算出する第1位置情報算出工程と、センサによって収集された固定台の他端側に設置されたマーカの位置情報を、第2の位置情報として算出する第2位置情報算出工程と、第1の位置情報と、第2の位置情報とに基づいて、固定台の中心位置を算出する中心位置算出工程と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、コイルを載置させるための枕木の位置を効率よく推定することが可能な位置推定装置及び位置推定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係る位置推定システムの概略構成を示す図である。
図2】一実施形態に係るトロリーに備えられた位置センサについて説明するための模式図である。
図3A】一実施形態に係る物体の検知センサについて、YZ方向に対して物体を検知する例を説明するための模式図である。
図3B】一実施形態に係る物体の検知センサについて、XZ方向に対して物体を検知する例を説明するための模式図である。
図4】一実施形態に係る位置推定装置の概略構成を示すブロック図である。
図5】一実施形態に係る位置推定システムの機能的構成を説明するためのブロック図である。
図6】センサ情報DBに格納されたセンサ情報の一例を示す図である。
図7】一実施形態に係る位置推定システムのマーカの位置及び枕木の中心位置を説明するための図である。
図8】位置情報DBに格納された位置情報の一例を示す図である。
図9】一実施形態に係るセンサによる情報取得に関する処理の一例を示すフローチャートである。
図10】一実施形態に係る枕木の中心位置の算出処理の一例を示すフローチャートである。
図11A】他の実施形態に係るマーカ部材及びマーカ反射部の別な形態を示す図である。
図11B】他の実施形態に係るマーカ部材及びマーカ反射部の別な形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、例示的な実施形態について、図面を参照して説明する。ここで、実施形態に示す寸法、材料、その他、具体的な数値等は例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。また、実質的に同一の機能及び構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、本開示に直接関係のない要素については図示を省略する。
【0012】
図1は、一実施形態に係る位置推定システム1の構成を示す概略斜視図である。本実施形態における位置推定システム1は、工場又は倉庫等の建屋内の床面に対して垂直な方向の上部に設置される天井クレーンによって搬送される荷を載置する枕木の位置を推定するものである。なお、本実施形態において、枕木は固定台に相当する。
【0013】
本実施形態において天井クレーンが搬送対象とする荷は、一例として、薄い鋼板が円筒形又は円柱形に巻かれた鉄板コイル(以下、単に「コイル」という)である。複数のコイルCは、建屋内の敷地で一時的に保管される。天井クレーンは、コイルCを吊り上げて移動させることで、別の場所からコイルCを当該敷地に搬入させることができるとともに、当該敷地からコイルCを別の場所へ搬出させることができる。
【0014】
また、敷地には、XY平面として表される床面がある。複数のコイルCは、各々のコイルCの中心軸が床面と平行となる姿勢で、床面の側に設置される。本実施形態では、複数のコイルCが床面の側に設置されているとき、各々のコイルCの軸方向は、Y方向に沿っている。また、複数のコイルCが床面の側に設置されているとき、各々のコイルCは、Y方向に対して垂直なX方向に沿って並ぶ。この場合、コイルCの断面方向は、X方向に沿っている。さらに、複数のコイルCは、XY平面に対して垂直なZ方向に沿って2段に積載される。このうち、下段側のコイルCは、それぞれ、一組を構成する2つの棒状の枕木200を介して床面上に載置される。枕木200の延伸方向は、コイルCの軸方向に沿っている。また、一組を構成する2つの枕木は、コイルCの断面方向で互いに隣り合う。このような枕木200の組は、載置するコイルCの位置決めを行うことができ、また、コイルCの転がりを抑止することができる。一方、上段側のコイルCは、それぞれ、X方向で互いに隣り合う2つの下段側のコイルCに直接支えられながら、下段側のコイルC上に載置される。
【0015】
さらに、本実施形態においては、枕木200の延伸方向(Y方向)の両端側に、枕木200の中心位置を推定するために用いるマーカ部材300を設置することができる。すなわち、一対のマーカ部材300は、一対の枕木200の短手方向(X方向)の設置間隔だけ距離を空けて並行に固定される。また、マーカ部材300は、枕木200に接触させて設置することができる。このようにマーカ部材300を枕木200に接触させて設置することで、測定されたマーカ部材300の位置によって、枕木200の正確な中心位置が推定可能となる。また、マーカ部材300の上面には、マーカ反射部310が設けられている。マーカ反射部310は、後述のセンサ6によりマーカ反射部310を検知する際に用いられる。なお、本実施形態において、マーカ反射部310のY方向(枕木200の延伸方向)の長さは、マーカ反射部310のX方向(枕木200の短手方向)の長さより長い。なお、本実施形態において、マーカ反射部310は、マーカに相当する。センサ6、マーカ部材300、及びマーカ反射部310の詳細については、後述する。
【0016】
位置推定システム1における天井クレーンは、図1に示すように、ガーダー2と、ランウェイ3と、トロリー4と、トング5と、センサ6と、運転室7とを備える。
【0017】
ガーダー2は、建屋内の天井付近で、トロリー4を移動自在に支持する構造体である。ガーダー2は、XY平面上の第2方向に沿ってそれぞれ延び、かつ、XY平面上で第2方向とは直交する第1方向で離間しつつ互いに対向する2つの直線状の剛体部を含む。本実施形態では、一例として、第2方向はX方向であり、第1方向はY方向である。この場合、2つの剛体部は、X方向の一方の端部と他方の端部との両側で互いに一体化されている(図示なし)。ガーダー2のX方向の少なくとも一方の端部は、モータ等のガーダー用アクチュエータ25(図5参照)を備える。
【0018】
ランウェイ3は、建屋内の天井付近で、ガーダー2を移動自在に支持する走行レーンである。ランウェイ3は、Y方向に沿ってそれぞれ延び、かつ、X方向で離間しつつ互いに対向する2箇所の位置に設置されている。ランウェイ3は、例えば、建屋の壁部8(図2参照)に設置される場合もあるし、建屋内の床面上に設けられた高架台に設置される場合もある。ガーダー2のX方向の一方の端部は、一方のランウェイ3上に位置し、ガーダー2のX方向の他方の端部は、他方のランウェイ3上に位置する。ガーダー用アクチュエータ25が運転室7からの移動指令に基づいて駆動することで、ガーダー2は、ランウェイ3上をY方向に沿って移動することができる。
【0019】
トロリー4は、ガーダー2上で2つの剛体部に支持されながらX方向に沿って移動自在で、かつ、トング5をZ方向に沿って移動自在に支持する構造体である。トロリー4は、モータ等のトロリー用アクチュエータ26(図5参照)を備える。トロリー用アクチュエータ26が運転室7からの移動指令に基づいて駆動することで、トロリー4は、ガーダー2の剛体部上をX方向に沿って移動することができる。また、ガーダー2は、Y方向に沿って移動することができるので、トロリー4は、XY平面上の目標とする位置に移動することができる。なお、本実施形態において、トロリー4及びガーダー2は、移動機構に相当する。
【0020】
トング5は、コイルCを把持して昇降する把持部である。ここで、トロリー4は、ワイヤーロープ(図示なし)を介してトング5を吊り上げたり吊り下げたりするための回転ドラム(図示なし)と、回転ドラムに回転力を与えるモータ等のトング用アクチュエータ(図示なし)とを備える。トング用アクチュエータが運転室7からの昇降指令に基づいて駆動することで、トング5は、トロリー4の高さ位置を基準としてZ方向に沿って移動することができる。
【0021】
また、トング5は、基部10と、一対のアームである第1アーム11a及び第2アーム11bとを備える。基部10は、ワイヤーロープに接続され、かつ、第1アーム11a及び第2アーム11bを支持する。第1アーム11a及び第2アーム11bは、それぞれ、基部10からZ方向に沿って下方に延びており、互いにY方向で対向する。第1アーム11aは、基部10のY方向の一方の端部に接続され、第2アーム11bは、基部10のY方向の他方の端部に接続される。第1アーム11a及び第2アーム11bは、それぞれ、Z方向に沿った姿勢を維持しながら、Y方向に沿ってスライドすることができる。
【0022】
センサ6は、トロリー4の移動範囲内にある少なくともいずれかの構造体に設置され、XY平面上におけるトロリー4の位置を計測する位置センサ6aを備える。さらにセンサ6は、床面側にある物体を検知する検知センサ6bを備える。ここで、トロリー4の移動範囲とは、トロリー4がX方向及びY方向で移動することができるXY領域の範囲をいう。トロリー4の移動範囲内にある構造体とは、例えば、トロリー4自体、トング5の基部10、又は、ガーダー2の剛体部をいう。ただし、センサ6は、いずれの構造体に設置される場合であっても、トロリー4の位置、及び下方にある床面を検出することができる位置に設置される。本実施形態では、センサ6は、トロリー4に設置される。この場合、センサ6がトロリー4の特に側面の側に設置されるものとすると、トロリー4が支持しているトング5に検出範囲を遮られづらいという利点がある。
【0023】
また、本実施形態では、位置センサ6aは、レーザを用いて距離を計測するレーザ距離センサである。ただし、ある物体までの距離を計測することができるものであれば、センサ6の種類等は限定されない。例えば、TOF(Time-Of-Flight)カメラ等の画像センサを一般にいう距離センサとして代用し、位置センサ6aとして採用してもよい。
【0024】
図2は、位置センサ6aによるトロリー4の位置の計測を説明するための図である。図2に示すように、位置センサ6aは、トロリー4にセンサ6が設けられている側のX方向のランウェイ3との距離を計測する。この計測により、トロリー4が位置するX方向の距離が計測することができる。すなわち、トロリー4のX方向に関する位置を計測することができる。
【0025】
また、図2に示すように、位置センサ6aは、Y方向において壁部8との距離を計測する。この計測により、トロリー4が位置するY方向の距離が計測することができる。すなわち、トロリー4のY方向に関する位置を計測することができる。なお、トロリー4の位置を計測する手段としてレーザを用いる方法は、本実施形態の構成を限定するものではない。例えば、トロリー4の位置を計測する手段として、上述のTOFカメラ等の画像センサ、エンコーダ、又はビーコンを用いて計測する手段を用いてもよい。位置センサ6aで取得されたトロリー4の位置情報(X方向距離、Y方向距離)は、運転室7に送られる。
【0026】
さらに、センサ6は、図3A及び図3Bに示すように、床面側にある物体を検知する検知センサ6bを備える。本実施形態において、床面側にある物体の検知には、2つのLiDAR(Light Detection And Ranging)が用いられる。図3A及び図3Bに示す例では、床面側にあるコイルCを検知する例を示している。
【0027】
図3Aに示す例においては、コイルCの軸方向(Y方向)に対して物体を検知する例を示している。また、図3Bに示す例においては、コイルCの周方向(X方向)に対して物体を検知する例を示している。検知センサ6bは、物体の検知情報、検知センサ6bからの相対位置情報を検知する。検知センサ6bで取得された物体の検知結果は、上述の位置情報(X方向距離、Y方向距離)とともに運転室7に送られる。なお、検知センサ6bとしてのLiDARは、本実施形態の構成を限定するものではなく、LiDAR以外のセンサとして、対象物体を識別することが可能な識別センサを検知センサ6bとして用いてもよい。
【0028】
本実施形態においては、検知センサ6bの検知対象となる床面側にある物体は、マーカ部材300に備えられたマーカ反射部310である。すなわち、検知センサ6bは、レーザを使って可視スペクトル外の光のパルスを発射し、マーカ反射部310で反射したパルスが戻ってくる時間を計測することで、マーカ反射部310の位置を検知する。検知対象となる床面側にある物体は、例えば高い反射率を持つ再帰反射性のものを用いるが、本実施形態の構成に限定されるものではない。例えば、検知対象となる床面側にある物体は、TOFカメラを用いて特定の色が塗布された部分を検出する、もしくは特定の凹凸パターンを持つ部分など、外部と明確に区別できる特徴をもつものであればよい。
【0029】
運転室7は、ガーダー2の一方の端部に固定され、天井クレーンを運転するユーザ(運転者)を常駐させる。また、運転室7には、天井クレーンを制御し、さらに枕木の位置を推定する位置推定装置100を備える。位置推定装置100は、例えば、パーソナルコンピュータ等のコンピュータによって実現される。
【0030】
(位置推定装置100の構成及び機能)
次に、位置推定装置100の構成及び機能について説明する。図4に、位置推定装置100の概略構成を示す。また、図5には、位置推定システム1における位置推定装置100の機能的構成を示す。図4に示すように、位置推定装置100は、例えば、コンピュータによって実現され、一般的なコンピュータの構成として、制御部110と、記憶部120と、入出力IF130と、ネットワークIF140とを備える。制御部110の詳細については後述する。
【0031】
記憶部120は、図5に示すように、センサ情報DB121(DB:Database)と、位置情報DB122と、に含まれる情報をデータとして格納する。なお、これらの各データを格納する記憶部120は、1つであっても複数であってもよい。例えば、1つの記憶部120に対し、領域を分けて記憶する構成としてもよい。あるいは、物理的に離れた場所に設置された複数の記憶装置に、データが分散して格納されていてもよい。
【0032】
入出力IF130は、例えば、運転室7のユーザ(運転者)が位置推定装置100との間においてデータをやり取りするための構成要素(インタフェース)である。入出力IF130は、入力部と、出力部とを備える(図示なし)。
【0033】
入出力IF130における入力部は、ユーザによるさまざまな情報を入力するためのインタフェース機能を有し、位置推定装置100の外部より情報が入力される。入力部には、位置推定装置100と接続された、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、トラックボール、及び、音声認識デバイス等を通じてユーザによって情報が入力される。また、入力部は、外部記憶装置(図示なし)等からデータを入力するためのデータ入力端子として、情報を入力することができる。
【0034】
入出力IF130における出力部は、位置推定装置100に接続された表示装置(図示なし)に、コイルCや枕木等の位置情報、作業状況等を表示させる。表示装置は、例えば、ディスプレイ装置、プロジェクター装置などである。
【0035】
通信IF140は、有線及び/又は無線ネットワークを介して、トロリー4及びガーダー2と、位置推定装置100との相互の通信を可能にするためのインタフェースである。具体的には、位置推定装置100は、通信IF140を介して、トロリー4に備えられたセンサ6からの情報を取得する。また、位置推定装置100は、通信IF140を介して、トロリー4及びガーダー2にそれぞれ備えられたトロリー用アクチュエータ26及びガーダー用アクチュエータ25に対し、制御指示を送り、トロリー4及びガーダー2を制御する。
【0036】
次に、図5に示す制御ブロックに基づいて、位置推定システム1における制御の流れを説明する。位置推定装置100は、制御部110に、センサ情報取得部111と、位置情報算出部112と、中心位置算出部113と、駆動制御部114とを、機能として備える。また、制御部110は、例えば、オペレーションシステムを動作させて、位置推定装置100全体を制御する。さらに、制御部110は、記憶部120に格納されたプログラムに基づいて動作し、センサ情報取得部111と、位置情報算出部112と、中心位置算出部113と、駆動制御部114とに備える各機能を実行する。なお、プログラムは、記憶部120に格納される形態に限定されず、例えば、位置推定装置100内の、ROM(Read Only Memorry)等(図示なし)に記憶された構成としてもよい。
【0037】
センサ情報取得部111は、センサ6によって検知され、位置推定装置100に送られてきたトロリー4の位置情報(X方向距離、Y方向距離)、及び床面の検知対象物体を検知したか否かを示す検知情報と、トロリー4からの相対位置情報とを取得する。さらに、センサ情報取得部111は、検知対象の相対位置情報をトロリー4の位置情報で補正し、地上の固定した点からの絶対座標に変換した座標情報をセンサ情報DB121に格納する。図6にセンサ情報DB121に格納されたセンサ情報の一例を示す。上述の通り、センサ情報は、X方向距離、Y方向距離、検知対象物体のトロリー4からの相対位置情報、検知対象の相対位置情報をトロリー4の位置情報で補正し、地上の固定した点からの絶対座標に変換した座標情報及び物体検知に関する情報を含む。なお、検知対象物体の座標情報は、トロリー4の位置情報と検知対象物体のセンサ6からの相対位置情報とを加減算することにより変換する。さらに、検知対象物体の座標情報は、トロリー4の種類によって、回転補正などを加えてもよい。
【0038】
図6に示すセンサ情報においては、特定の物体を検知した場合には、「物体検知」の欄に物体を検知したことを示す情報として「○」が格納されている。本実施形態において、特定の物体は、マーカ反射部310である。
【0039】
位置情報算出部112は、センサ情報DB121に格納された床面の検知対象物体の座標情報及び検知情報に基づいて、第1の位置情報及び第2の位置情報を算出する。図7に、枕木200、マーカ部材300及びマーカ反射部310の位置関係を示す。図7は、枕木200を天井側から床面方向を見た場合の図である。また、図7に示すように、枕木200の短手方向(X方向)に向かい合うマーカ部材300は、マーカ部材固定部301により、一対のマーカ部材300として固定される。このように、向かい合うマーカ部材300の間にマーカ部材固定部301を設けることにより、一対のマーカ部材300としての持ち運び、及び枕木200へのセットが容易となる。さらに、本実施形態においては、図7に示すように、2つ以上のマーカ部材固定部301を用いて、一対のマーカ部材300を固定してもよい。このように、一対のマーカ部材300に対し、2つ以上のマーカ部材固定部301を用いることで、一対のマーカ部材300を平行状態に保つことができる。これにより、センサ6によって、より正確なマーカ反射部310の位置情報の計測が可能となり、枕木200の中心位置の推定の精度を向上させることができる。
【0040】
なお、位置情報算出部112による第1の位置情報及び第2の位置情報を算出は、センサ情報DB121に格納された床面の検知対象物体の座標情報及び検知情報に基づいて行う形態には限定されない。例えば、位置情報算出部112は、センサ情報DB121に格納されたトロリー4の位置情報(X方向距離、Y方向距離)、床面の検知対象物体の相対位置情報及び検知情報に基づいて、第1の位置情報及び第2の位置情報を算出してもよい。
【0041】
本実施形態において、第1の位置情報は、例えば、図7に示すマーカ反射部310a及びマーカ反射部310bの位置に関する情報である。すなわち第1の位置情報は、枕木200の延伸方向(Y方向)の一端側に設置されたマーカ反射部310a及びマーカ反射部310bの位置情報である。また、第2の位置情報は、図7に示すマーカ反射部310c及び310dの位置に関する情報である。すなわち第2の位置情報は、枕木200の延伸方向(Y方向)の他端側に設置されたマーカ反射部310c及びマーカ反射部310dの位置情報である。
【0042】
位置情報算出部112は、センサ情報DB121に格納されたセンサ情報のうち、検知対象となるマーカ反射部310の座標情報に基づいて、第1及び第2の位置情報を算出する。具体的には、位置情報算出部112は、センサ情報DB121に格納されたセンサ情報に対し、クラスタリング処理を行い、枕木単位にグルーピングを行う。このグルーピング処理は、例えば、K平均法を用いて行われる。なお、グループ化(クラスタリング)の手法としてのK平均法は本実施形態を限定するものではなく、例えばグループ化の手法として、最短距離法やウォード方などの階層的手法を用いてもよい。例えば、図7に示す例では、領域311a、311b、311c、及び311dの中に、それぞれ、マーカ反射部310a、310b、310c、及び310dの検知されたデータがグループ化される。例えば、マーカ反射部310が高い反射率を持つ部分を備える場合に、位置情報算出部112は、計測された高い反射率の計測点の分布に基づいて、グループ化を行うことができる。
【0043】
位置情報算出部112は、グループ化された各データの重心を算出し、算出順に位置情報DB122に格納する。例えば、図8に示す例においては、枕木セット番号が1の枕木に対して、2つの第1の位置情報(Xc1、Yc1)及び(Xc2、Yc2)と、2つの第2の位置情報(Xc5、Yc5)及び(Xc6、Yc6)とが格納されている。例えば、(Xc1、Yc1)は、図7に示す領域311bに含まれるマーカ反射部310bの重心を示す情報であり、(Xc2、Yc2)は、図7に示す領域311aに含まれるマーカ反射部310aの重心を示す情報である。同様に、(Xc5、Yc5)は、図7に示す領域311dに含まれるマーカ反射部310dの重心を示す情報であり、(Xc6、Yc6)は、図7に示す領域311cに含まれるマーカ反射部310cの重心を示す情報である。
【0044】
中心位置算出部113は、位置情報DB122に格納された位置情報に基づいて、枕木の中心位置を算出する。具体的には、中心位置算出部113は、位置情報DB122に格納された位置情報の対応する枕木セット番号と、第1の位置情報及び第2の位置情報とに基づいて、枕木の中心位置を算出し、位置情報DB122の位置情報に格納する。本実施形態においては、中心位置は、枕木セット番号に対応する2つの第1の位置情報及び2つの第2の位置情報の平均値として定まる値である。中心位置算出部113で算出された値が、枕木の中心位置として推定される。図7に示す例においては、中心位置400が算出され、枕木の中心位置として推定される。
【0045】
例えば、図8に示す例において、枕木セット番号が1の枕木の中心位置(C1、C2)は、以下の数式(1)及び式(2)により定まる。
【0046】
C1=(Xc1+Xc2+Xc5+Xc6)/4 ・・・(1)
C2=(Yc1+Yc2+Yc5+Yc6)/4 ・・・(2)
駆動制御部114は、天井クレーンに含まれる各種アクチュエータに対して動作信号を送信する。まず、駆動制御部114は、入出力IF130より、運転者が直接的に指定した、各種アクチュエータへ指示する移動位置を受信することができる。
【0047】
次に、駆動制御部114は、ガーダー用アクチュエータ25に対して、ガーダー2の移動目標となる移動位置を指示し、当該移動位置へガーダー2を移動させることができる。また、駆動制御部114は、トロリー用アクチュエータ26に対して、トロリー4の移動目標となる移動位置を指示し、当該移動位置へトロリー4を移動させることができる。
【0048】
(位置推定システム1の処理フローの概略)
次に、図9及び図10に示すフローチャートを用いて位置推定システム1における位置推定処理の流れを示す。図9に示すフローチャートは、センサ6によるトロリー4の位置情報、対象物体の相対位置情報及び対象物体の検知情報の取得処理に関するフローチャートである。また、図10に示すフローチャートは、第1、第2の位置情報及び枕木の中心位置を算出する処理についてのフローチャートである。図9及び図10のフローチャートに示す位置推定装置100の一連の動作は、位置推定装置100が起動されると開始され、作業終了により処理を終了する。また、図9及び図10に示すフローチャートは、電源オフや処理終了の割り込みによっても処理は終了する。また、以下のフローチャートの説明において、上述の位置推定装置100の説明で記載した内容と同じ内容については、省略又は簡略化して説明する。
【0049】
まず、図9に示すフローチャートに基づいて、センサ6による情報取得の処理について説明する。
【0050】
ステップS901において、駆動制御部114は、トロリー4を第1の始点へ移動させる。本実施形態において、第1の始点とは、枕木200の延伸方向(Y方向)の両端側に設置されたマーカ部材300の一端側のZ方向上部であって、トロリー4がガーダー2のX方向の一方の端部(すなわち一方のランウェイ3)上に位置する場所である。
【0051】
ステップS902において、駆動制御部114は、トロリー4を移動させる。具体的には、駆動制御部114は、トロリー4を、ステップS901で移動した第1の始点から、他方のランウェイ3に向かってガーダー2上を移動させる。すなわち、駆動制御部114は、枕木200の延伸方向(Y方向)の両端側に設置されたマーカ部材300の一端側の上部を、X方向に沿ってランウェイ3の一方から他方まで、トロリー4を移動させる。
【0052】
ステップS903において、センサ情報取得部111は、センサ6から送られてくる情報を取得し、センサ情報DB121に格納する。センサ情報取得部111が取得する情報は、トロリー4の位置情報(X方向距離、Y方向距離)、対象となる物体の相対位置情報、及び対象となる物体を検知したか否かを示す検知情報である。さらに、センサ情報取得部111は、検出対象の相対位置情報をトロリー4の位置情報で補正し、地上の固定した点からの絶対座標に変換した座標情報をセンサ情報DB121に格納する。本実施形態において、対象となる物体はマーカ部材300に備えらえたマーカ反射部310が該当する。
【0053】
ステップS904において、駆動制御部114は、トロリー4が第1の終点に到達したか否かを判定する。本実施形態において、第1の終点は、第1の始点である一方のランウェイ3から移動を開始したトロリー4がガーダー2上を移動して到達する他方のランウェイ3に位置する場所である。ステップS904において、駆動制御部114は、トロリー4が第1の終点に到達したと判定した場合(ステップS904:YES)には、ステップS905に進む。一方で、ステップS904において、駆動制御部114は、トロリー4が第1の終点に到達していないと判定した場合(ステップS904:NO)には、ステップS903に戻り、センサ情報取得部111により、センサ情報の取得が行われる。すなわち、トロリー4が第1の終点に到達するまで、センサ情報の取得が行われる。
【0054】
ステップS905において、駆動制御部114は、トロリー4を停止させる。
【0055】
ステップS906において、駆動制御部114は、トロリー4を第2の始点へ移動させる。本実施形態において、第2の始点とは、枕木200の延伸方向(Y方向)の両端側に設置されたマーカ部材300の他端側のZ方向上部であって、トロリー4がガーダー2のX方向の一方の端部(すなわち一方のランウェイ3)上に位置する場所である。
【0056】
ステップS907において、駆動制御部114は、トロリー4の移動を開始する。具体的には、駆動制御部114は、トロリー4を、ステップS906で移動した第2の始点から、他方のランウェイ3に向かってガーダー2上を移動させる。すなわち、駆動制御部114は、枕木200の延伸方向(Y方向)の両端側に設置されたマーカ部材300の他端側の上部を、X方向に沿ってランウェイ3の一方から他方まで、トロリー4を移動させる。
【0057】
ステップS908において、センサ情報取得部111は、上述のステップS903と同様に、センサ6から送られてくる情報を取得し、センサ情報DB121に格納する。センサ情報取得部111が取得する情報は、トロリー4の位置情報(X方向距離、Y方向距離)、対象となる物体の相対位置情報、及び対象となる物体を検知したか否かを示す検知情報である。さらに、センサ情報取得部111は、検出対象の相対位置情報をトロリー4の位置情報で補正し、地上の固定した点からの絶対座標に変換した座標情報をセンサ情報DB121に格納する。本実施形態において、対象となる物体はマーカ部材300に備えらえたマーカ反射部310が該当する。
【0058】
ステップS909において、駆動制御部114は、トロリー4が第2の終点に到達したか否かを判定する。本実施形態において、第2の終点は、第2の始点である一方のランウェイ3から移動を開始したトロリー4がガーダー2上を移動して到達する他方のランウェイ3に位置する場所である。ステップS909において、駆動制御部114は、トロリー4が第2の終点に到達したと判定した場合(ステップS909:YES)には、ステップS910に進む。一方で、ステップS909において、駆動制御部114は、トロリー4が第2の終点に到達していないと判定した場合(ステップS909:NO)には、ステップS908に戻り、センサ情報取得部111により、センサ情報の取得が行われる。すなわち、トロリー4が第2の終点に到達するまで、センサ情報の取得が行われる。
【0059】
ステップS910において、駆動制御部114は、トロリー4を停止させる。
【0060】
なお、本実施形態において、ステップS903及びステップS908に関する処理は、センサ情報取得工程に相当する。また、ステップS901からステップS910までのステップのうち、ステップS903及びステップS908以外に関する処理は、制御工程に相当する。
【0061】
次に、図10に示すフローチャートに基づいて、第1、第2の位置情報の算出、及び枕木の中心位置の算出に関する処理を説明する。
【0062】
ステップS1001において、位置情報算出部112は、第1の位置情報を算出する。具体的には、位置情報算出部112は、センサ情報DB121に格納された、対象となる物体(マーカ反射部310)の座標情報、及び対象となる物体を検知したか否かを示す検知情報に基づいて、第1の位置情報を算出する。また、位置情報算出部112は、算出した第1の位置情報を位置情報DB122に格納する。なお、ステップS1001における処理は、第1位置情報算出工程に相当する。また、第1の位置情報は、枕木200の延伸方向(Y方向)の一端側に設置されたマーカ反射部310の位置情報に相当する。なお、本実施形態においては移動後に第1の位置情報を算出しているが、ステップS903の移動中に第1の位置情報を算出してよい。具体的には図3Bのように枕木を横切ってスキャンした計測結果から位置情報算出部112が直接、第1の位置情報を算出し、位置情報DB122を格納してもよい。
【0063】
ステップS1002において、位置情報算出部112は、第2の位置情報を算出する。具体的には、位置情報算出部112は、センサ情報DB121に格納された、対象となる物体(マーカ反射部310)の座標情報、及び対象となる物体を検知したか否かを示す検知情報に基づいて、第2の位置情報を算出する。また、位置情報算出部112は、算出した第2の位置情報を位置情報DB122に格納する。なお、ステップS1002における処理は、第2位置情報算出工程に相当する。また、第2の位置情報は、枕木200の延伸方向(Y方向)の他端側に設置されたマーカ反射部310の位置情報に相当する。なお、本実施形態においては移動後に第2の位置情報を算出しているが、ステップS907の移動中に第2の位置情報を算出してよい。具体的には図3Bのように枕木を横切ってスキャンした計測結果から位置情報算出部112が直接、第2の位置情報を算出し、位置情報DB122を格納してもよい。
【0064】
ステップS1003において、中心位置算出部113は、位置情報DB122に格納されている第1の位置情報及び第2の位置情報に基づいて、枕木の中心位置を算出する。具体的には、中心位置算出部113は、位置情報DB122に格納された位置情報の対応する枕木セット番号と、第1の位置情報及び第2の位置情報とに基づいて、枕木の中心位置を算出し、位置情報DB122の位置情報に格納する。本実施形態においては、中心位置は、枕木セット番号に対応する2つの第1の位置情報及び2つの第2の位置情報の平均値として定まる値である。中心位置算出部113で算出された値が、枕木の中心位置として推定される。なお、ステップS1003における処理は、中心位置算出工程に相当する。
【0065】
なお、本実施形態においては第1の始点から第1の終点までの移動の間に第1の位置情報、第2の始点から第2の終点までの移動の間に第2の位置情報を収集しているが、実施形態はこの工程に限定されない。例えば、コイルCが載置されておらず、枕木の真上からでも同時に両端のマーカを計測できる場合には、枕木の中心軸にそって一回の移動のみを行い同時に両方の端部の結果を検出してもよい。さらに、センサ情報DB121から、第1、第2の位置情報の算出、及び枕木の中心位置の算出に関する処理を行ってもよい。
【0066】
次に、本実施形態に係る位置推定システム1の効果について説明する。
【0067】
位置推定システム1は、固定台の延伸方向の両端側に設置されたマーカと、移動機構と、センサ6と、移動機構を制御する駆動制御部114と、センサ情報取得部111と、位置情報算出部112と、中心位置算出部113とを備える。移動機構は、床面に対して垂直な方向の上部に位置し、床面と平行な平面上を移動する。センサ6は、マーカの位置情報及びマーカを検知したか否かを示す検知情報を収集する。センサ情報取得部111は、センサにより収集されたマーカの位置情報及び検知情報を取得する。位置情報算出部112は、マーカの位置情報及び検知情報に基づいて固定台の延伸方向の一端側に設置されたマーカの第1の位置情報及び固定台の延伸方向の他端側に設置されたマーカの第2の位置情報を算出する。中心位置算出部113は、第1の位置情報と、第2の位置情報とに基づいて、固定台の中心位置を算出する。
【0068】
又は、コンピュータによって実行される位置推定方法は、以下の工程を含む。位置推定方法は、マーカの位置情報及びマーカを検知したか否かを示す検知情報を収集するセンサを備える移動機構を、第1方向に直交する第2方向に移動するよう制御する制御工程を含む。なお、マーカの位置情報及び検知情報は、円筒形又は円柱形の荷を載置するために設置された一対の固定台の延伸方向である第1方向の両端側に設置されたマーカに関する情報である。また、位置推定方法は、センサにより収集された位置情報及び検知情報を取得するセンサ情報取得工程を含む。また、位置推定方法は、センサによって収集された固定台の一端側に設置されたマーカの位置情報を、第1の位置情報として算出する第1位置情報算出工程を含む。また、位置推定方法は、センサによって収集された固定台の他端側に設置されたマーカの位置情報を、第2の位置情報として算出する第2位置情報算出工程を含む。さらに、位置推定方法は、第1の位置情報と、第2の位置情報とに基づいて、固定台の中心位置を算出する中心位置算出工程を含む。
【0069】
ここで、固定台は、本実施形態では、枕木200に相当する。また、移動機構は、本実施形態では、トロリー4及びガーダー2に相当する。さらに、第1方向は、枕木の延伸方向(Y方向)、第2方向は、枕木の短手方向(X方向)に相当する。
【0070】
この位置推定システム1によれば、枕木の延伸方向の両端側に設置されたマーカ反射部310の位置情報を計測し、この位置情報に基づいて、枕木の中心位置を算出することで、1対の枕木ごとの中心位置をより正確に推定することが可能となる。
【0071】
また、位置推定システム1は、コイルCの搬入出を行うトロリー4に備えたセンサ6を用いることで、効率よくトロリー4の位置情報、マーカ反射部310の相対位置情報及び検知情報を取得することが可能となる。
【0072】
また、位置推定システム1は、枕木の延伸方向の両端側に設置されたマーカ反射部310の位置情報を計測し、この位置情報に基づいて、枕木の中心位置を算出する。そのため、枕木にコイルCが載置された状態においても、枕木の中心位置の推定を行うことができる。
【0073】
また、位置推定システム1の一対のマーカは、一対の固定台の短手方向の設置間隔だけ距離を空けて並行に固定され、固定台に接触させて設置してもよい。なお、マーカは、本実施形態では、マーカ反射部310に相当する。
【0074】
この位置推定システム1によれば、このようにマーカ部材300を枕木200に接触させて設置することで、測定されたマーカ部材300の位置によって、枕木200の正確な中心位置が推定可能となる。
【0075】
また、位置推定システム1では、固定台の延伸方向におけるマーカの長さは、固定台の短手方向におけるマーカの長さより長くてもよい。なお、マーカは、本実施形態では、マーカ反射部310に相当する。
【0076】
この位置推定システム1によれば、トロリー4が、枕木の短手方向(X方向)に進みながら、センサ6は、X方向及びY方向に対して、レーザを使って可視スペクトル外の光のパルスを発射し、マーカ反射部310で反射したパルスが戻ってくる時間を計測する。すなわち、トロリー4がX方向に進みながら、マーカ反射部310の検知を行うため、マーカ反射部310が枕木の延伸方向(Y方向)に長いことで、より正確にマーカ反射部310の検知を行うことが可能となる。
【0077】
また、センサ6は、マーカの相対位置情報及び検知情報を検知する検知センサ6bと、移動機構の位置を位置情報として収集する位置センサ6aとを含んでもよい。また、センサ情報取得部111は、相対位置情報、検知情報、及び移動機構の位置情報を取得し、相対位置情報、及び移動機構の位置情報に基づいてマーカの座標情報を算出してもよい。さらに、位置情報算出部112は、座標情報及び検知情報に基づいて、第1の位置情報、及び第2の位置情報を算出してもよい。
【0078】
これにより、マーカ反射部310の相対位置情報の収集、マーカ反射部310の有無の検知、及びトロリー4の位置情報(X方向距離、Y方向距離)の計測をより正確に、行うことが可能となる。これらの情報を用いて、枕木200の中心位置の算出を行うことで、中心位置をより正確に推定することが可能となる。
【0079】
また、マーカは、高い反射率を持つ部分を備えてもよい。さらに、位置情報算出部112は、計測された高い反射率の計測点の分布から第1の位置情報、及び第2の位置情報を算出してもよい。
【0080】
これにより、高い反射率を持つ部分を備えるマーカに対して、正確に検知することが可能となる。さらに、位置情報算出部112は、この計測された高い反射率の計測点の分布から第1の位置情報、及び第2の位置情報を算出することにより、より正確な位置情報の算出が可能となる。
【0081】
(他の実施形態)
いくつかの実施形態を説明したが、上記開示内容に基づいて実施形態の修正又は変形をすることが可能である。上記の実施形態のすべての構成要素、及び請求の範囲に記載されたすべての特徴は、それらが互いに矛盾しない限り、個々に抜き出して組み合わせてもよい。
【0082】
上述の実施形態において、図8に示すように第1の位置情報及び第2の位置情報は、算出された順番に枕木セットと対応づける例を示したが、この対応づけの手段は、実施形態の構成を限定するものではない。例えば、図11Aに示すように、枕木セットに対応する一対のマーカ部材300の間に、別途、マーカ反射部310eを設けてもよい。例えば、マーカ反射部310eは、マーカ部材固定部301の上部に設けられる。位置推定装置100は、このマーカ反射部310eの前後で検知されたマーカ反射部310を、同じ枕木セットに対応するマーカ部材300及びマーカ反射部310であるとしてもよい。例えば、センサ情報DB121に、マーカ反射部310eを検知したか否かの情報を格納する欄を設けてもよい。位置情報算出部112は、センサ情報DB121のX方向距離、Y方向距離、物体検知、及びマーカ反射部310eを検知した情報に基づいて、第1の位置情報、及び第2の位置情報を算出し、枕木セットと対応づけてもよい。このようにマーカ反射部310の間に、枕木との対応関係を示すための追加のマーカ反射部310eを設けることにより、一対の枕木と、他の一対の枕木とを区別することが可能となる。
【0083】
また、図11Bに示すように、マーカ部材300及びマーカ反射部310のX方向の幅(形状)を変えることにより、対応する枕木セットにおけるマーカ部材300のペアを検知する構成としてもよい。図11Bに示すように、マーカ反射部310のX方向の幅を変えることで、センサ情報DB121に格納されたセンサ情報において、物体検知に関する情報「○」が格納される間隔が異なる。位置情報算出部112は、X方向距離、Y方向距離、及び物体検知に関する情報に加え、この物体検知に関する情報が格納される間隔の情報を用いて、第1の位置情報、及び第2の位置情報を算出することにより、枕木セットの対応づけを容易に行うことがでる。さらに、位置推定装置100は、枕木セットの対応づけにおける誤差(間違い)を防ぐことが可能となる。
【0084】
また、上述の実施形態において、センサ情報取得部111が、トロリー4の位置情報、マーカ反射部310(検知対象物体)の相対位置情報、及びマーカ反射部310を検知したか否かを示す検知情報をセンサ6より取得する構成を示した。上述の実施形態においては、センサ情報取得部111が、マーカ反射部310の相対位置情報をトロリー4の位置情報で補正し、地上の固定した点からの絶対座標に変換した座標情報を算出する形態を示したが、実施形態はこれに限定されない。例えば、トロリー4に設けられた演算装置(図示なし)により、マーカ反射部310の相対位置情報をトロリー4の位置情報で補正し、地上の固定した点からの絶対座標に変換した座標情報を算出し、位置推定装置100に送信する構成としてもよい。この場合、センサ情報取得部111は、センサ6からマーカ部材300の座標情報、及び検知情報を取得しセンサ情報DB121に格納する。例えば、センサ6によって、マーカ部材300の絶対座標を取得可能な場合にも、当該位置推定装置100を適用することが可能となる。
【0085】
また、上述した位置推定装置100における処理(位置推定方法)をコンピュータに実行させるコンピュータプログラム、及びそのプログラムを記録したコンピュータで読み取り可能な記録媒体は、本実施形態の範囲に含まれる。ここで、コンピュータで読み取り可能な記録媒体の種類は任意である。また、上記コンピュータプログラムは、上記記録媒体に記録されたものに限られず、電気通信回線、無線又は有線通信回線、インターネットを代表とするネットワーク等を経由して伝送されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0086】
1 位置推定システム
4 トロリー
6 センサ
6a 位置センサ
6b 検知センサ
111 センサ情報取得部
112 位置情報算出部
113 中心位置算出部
114 駆動制御部
300 マーカ部材
310 マーカ反射部
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B