(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151107
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】素子
(51)【国際特許分類】
H01L 51/44 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
H01L31/04 130
H01L31/04 112Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021054023
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】519259342
【氏名又は名称】株式会社エネコートテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】高濱 豪
(72)【発明者】
【氏名】藪本 利彦
【テーマコード(参考)】
5F151
【Fターム(参考)】
5F151AA20
5F151BA11
5F151CB13
5F151CB14
5F151CB15
5F151CB22
5F151CB27
5F151FA02
5F151FA03
5F151FA04
5F151FA06
5F151FA13
5F151FA15
5F151FA16
5F151FA17
5F151FA21
5F151GA03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】エッチングによるショート(短絡)を生じさせず,電極の構造が複雑とならない,太陽電池を提供する。
【解決手段】裏面電極と,光電変換層9と,表面電極とをこの順に有する太陽電池であって,裏面電極は,第1裏面電極部5aと第2裏面電極部5bを含み,第1裏面電極部は,第1の裏面電極本体部と,第1の裏面電極本体部と接続された第1の裏面電極導通部とを含み,第2裏面電極部は,第2の裏面電極本体部と,第2の裏面電極本体部と接続された第2の裏面電極導通部とを含み,表面電極は,第1の裏面電極本体部と第2の裏面電極本体部とを含む領域に対応した第1の表面電極本体部と,第1の裏面電極導通部及び第2の裏面電極導通部と導通がとられる第1の裏面電極導通部とを有する太陽電池。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏面電極(5)と,光電変換層(7,9,11)と,表面電極(13)とをこの順に有する太陽電池であって,
前記裏面電極(5)は,
第1の裏面電極部(21)と第2の裏面電極部(23)を含み,
第1の裏面電極部(21)は,
第1の裏面電極本体部(31)と,第1の裏面電極本体部(31)と接続された第1の裏面電極導通部(33)とを含み,
第2の裏面電極部(23)は,
第2の裏面電極本体部(41)と,第2の裏面電極本体部(41)と接続された第2の裏面電極導通部(43)とを含み,
前記表面電極(13)は,
第1の裏面電極本体部(31)と第2の裏面電極本体部(41)とを含む領域に対応した第1の表面電極本体部(61)と,
第1の裏面電極導通部(33)及び第2の裏面電極導通部(43)と導通がとられる第1の表面電極導通部(63)とを有する,
太陽電池(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の太陽電池であって,
前記裏面電極(5)は,
第3の裏面電極部(25)をさらに含み,
第3の裏面電極部(25)は,
第3の裏面電極本体部(51)と,第3の裏面電極本体部(51)と接続された第3の裏面電極導通部(53)とを含み,
第1の表面電極本体部(61)は,
第1の裏面電極本体部(31),第2の裏面電極本体部(41)及び第3の裏面電極本体部(51)を含む領域に対応し,
第1の表面電極導通部(63)は,第1の裏面電極導通部(33),第2の裏面電極導通部(43)及び第3の裏面電極導通部(53)と導通がとられる,
太陽電池(1)
【請求項3】
請求項1に記載の太陽電池であって,第1の表面電極本体部(61)は,隣接するセルと導通をとるためのセル間接続部(65)をさらに有する,
太陽電池。
【請求項4】
請求項1に記載の太陽電池であって,
前記光電変換層(7,9,11)は,ペロブスカイト層を含む,太陽電池(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,太陽電池などの素子に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2018-163938号公報には,太陽電池が記載されている。
【0003】
従来,太陽電池の複数の電極(例えば,表面電極と裏面電極)を互いに対応させる場合,表面電極側の1つの電極部を,裏面電極側の1つの電極部に対応させていた。しかし,そのような対応にすると,導通部等の構造が複雑なることで積層体に対する,より精密な加工が求められた。また,そのような複雑な構造,対応が,ショート(短絡)等を起こす原因となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで,この明細書に記載されるある発明は,表面電極側の1つの電極を裏面電極側の複数の電極に対応させ,電極の構造を単純化して製造された太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この明細書に記載されるある発明は,表面電極側の1つの電極を裏面電極側の複数の電極に対応させ,表面電極の構造が複雑になることを防ぎ,その加工を容易にする。それにより,太陽電池における,ショート(短絡)等の発生を防ぎ,他の技術への組込を容易にすることができるという知見に基づく。
【0007】
この明細書に記載されるある発明は,裏面電極5と,光電変換層7,9,11と,表面電極13とをこの順に有する太陽電池である。
裏面電極5は,第1の裏面電極部21と第2の裏面電極部23を含む。
第1の裏面電極部21は,第1の裏面電極本体部31と,第1の裏面電極本体部31と接続された第1の裏面電極導通部33とを含む。
第2の裏面電極部23は,第2の裏面電極本体部41と,第2の裏面電極本体部41と接続された第2の裏面電極導通部43とを含む。
表面電極13は,第1の表面電極本体部61と,第1の表面電極導通部63とを有する。
第1の表面電極本体部61は,第1の裏面電極本体部31と第2の裏面電極本体部41とを含む領域に対応する。
第1の表面電極導通部63は,第1の裏面電極導通部33及び第2の裏面電極導通部43と導通がとられる。
【0008】
この発明の好ましい例は,以下の態様のものである。裏面電極5は,第3の裏面電極部25をさらに含む。第3の裏面電極部25は,第3の裏面電極本体部51と,第3の裏面電極本体部51と接続された第3の裏面電極導通部53とを含む。
第1の表面電極本体部61は,第1の裏面電極本体部31,第2の裏面電極本体部41及び第3の裏面電極本体部51を含む領域に対応する。第1の表面電極導通部63は,第1の裏面電極導通部33,第2の裏面電極導通部43及び第3の裏面電極導通部53と導通がとられる。
【0009】
この発明の好ましい例は,第1の表面電極本体部61は,隣接するセルと導通をとるためのセル間接続部65をさらに有するものである。
【0010】
この発明の好ましい例は,光電変換層(7,9,11)は,ペロブスカイト層を含む,ものである。
【発明の効果】
【0011】
この明細書に記載されるある発明は,表面電極側の1つの電極を裏面電極側の複数の電極に対応させ,表面電極の構造が複雑になることを防ぎ,その加工が容易となる太陽電池を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は,製造途中の素子材料の構成例を示す概念図である。
【
図2】
図2は,製造途中の素子材料の構成例を示す概念図である。
【
図3】
図3は,製造途中の素子材料の構成例,実施例を示す概念図である。
【
図4】
図4は,3段直列の場合における,裏面電極と表面電極の構成例を示す概念図である。
【
図5】
図5は,2段直列の場合における,裏面電極と表面電極の構成例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜修正したものも含む。
【0014】
図1は,製造途中の素子材料の例を示す概念図である。ここで,この素子の例は,太陽電池,及び有機EL素子である。太陽電池の例は,ペロブスカイト太陽電池である。ペロブスカイト太陽電池は,例えば,裏面電極,電子輸送層,ペロブスカイト層(光吸収層),正孔輸送層,及び表面電極をこの順に備える。ペロブスカイト太陽電池は,電極上にn型半導体層が設けられた順型であってもよいし,電極上にp型半導体層が設けられた逆型(基板,電極,正孔輸送層,ペロブスカイト層,電子輸送層,電極及び接続電極がこの順に形成されたもの)であってもよい。以下に,裏面電極,電子輸送層,ペロブスカイト層(光吸収層),正孔輸送層,及び表面電極をこの順に備えるペロブスカイト太陽電池を例にして,ペロブスカイト太陽電池を説明する。
【0015】
図1に示されるように,素子材料は,基板3と,第1裏面電極5a及び第2裏面電極5bを含む裏面電極5と,第1電子輸送層7a及び第2電子輸送層7bと,ペロブスカイト層9と正孔輸送層11を有する。
この例では,第1電子輸送層7a,第2電子輸送層7b,ペロブスカイト層9及び正孔輸送層11が,光電変換層として機能する。素子材料は,第1正孔輸送層,第2正孔輸送層,ペロブスカイト層及び電子輸送層をこの順で含む光電変換層を有するものであってもよい。
【0016】
図2は,エッチング後の製造途中の素子を示す概念図である。
図2に示されるように,エッチングを行うことで,裏面電極が形成されていない部分のペロブスカイト層9及び正孔輸送層11が除去される。すると,裏面電極が存在しない部位の電子輸送層7a~7bの一部や電極の一部5a~5bが露出することとなる。なお,第1裏面電極5a及び第2裏面電極5b上の光電変換層を第1光電変換層6a及び第2光電変換層6bともよぶ。第1光電変換層6aは,第1電子輸送層7a,第1ペロブスカイト層9a,及び第1正孔輸送層11aを含み,第2光電変換層6bは,第2電子輸送層7b,第2ペロブスカイト層9b,及び第2正孔輸送層11bを含む。
【0017】
図3は,接続電極を形成した後であり製造途中の素子を示す概念図である。この例では,例えば第1表面電極13aと第2裏面電極5bとが第1接続電極15により接続されている。
【0018】
基板
基板3として,ペロブスカイト太陽電池や有機EL素子における公知の基板を適宜用いることができる。基板の例は,ガラス基板,絶縁体基板,半導体基板,金属基板及び導電性基板(導電性フィルムも含む)である。また,これらの表面の一部又は全部の上に,金属膜,半導体膜,導電性膜及び絶縁性膜の少なくとも1種の膜が形成されている基板も好適に用いることができる。
【0019】
金属膜の構成金属の例は,ガリウム,鉄,インジウム,アルミニウム,バナジウム,チタン,クロム,ロジウム,ニッケル,コバルト,亜鉛,マグネシウム,カルシウム,シリコン,イットリウム,ストロンチウム及びバリウムから選ばれる1種又は2種以上の金属である。半導体膜の構成材料の例は,シリコン,ゲルマニウム等の元素単体,周期表の第3族~第5族,第13族~第15族の元素を有する化合物,金属酸化物,金属硫化物,金属セレン化物,金属窒化物等が挙げられる。また,導電性膜の構成材料の例は,スズドープ酸化インジウム(ITO),フッ素ドープ酸化インジウム(FTO),酸化亜鉛(ZnO),アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO),ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO),酸化スズ(SnO2),酸化インジウム(In2O3),及び酸化タングステン(WO3)である。絶縁性膜の構成材料の例は,酸化アルミニウム(Al2O3),酸化チタン(TiO2),酸化シリコン(SiO2),窒化シリコン(Si3N4),及び酸窒化シリコン(Si4O5N3)である。
【0020】
基板3の形状の例は,平板や円板等の板状,繊維状,棒状,円柱状,角柱状,筒状,螺旋状,球状,リング状であり,多孔質構造体であってもよい。本発明においては,これらのうちでは板状の基板が好ましい。基板の厚さの例は,0.1μm~100mmが好ましく,1μm~10mmがより好ましい。
【0021】
電子輸送層
素子材料は,電子輸送層を有する。電子輸送層7は,ペロブスカイト層(光吸収層)の活性表面積を増加させ,光電変換効率を向上させるとともに,電子収集しやすくするために形成される。電子輸送層はフラーレン誘導体等有機半導体材料を用いた平坦な層でもよい。また,電子輸送層は,酸化チタン(TiO2)(メソポーラスTiO2を含む),酸化スズ(SnO2),酸化亜鉛(ZnO)等の金属酸化物を含む層であってもよい。電子輸送層の厚みは,特に制限されず,ペロブスカイト層(光吸収層)からの電子をより収集できる観点から,10~300nm程度が好ましく,10~250nm程度がより好ましい。
【0022】
電子輸送層7は,第1裏面電極5a及び第2裏面電極5b上にそれぞれ形成された第1電子輸送層7a及び第2電子輸送層7bを有する。通常,電子輸送層は,その下部にある電極と同じ形となるようにパターニングされる。第1電子輸送層7a及び第2電子輸送層7bは,例えば,それぞれ第1裏面電極5a及び第2裏面電極5bと同じ形状を有する。もっとも,同じ形状とは厳密な意味での同一を意味せず,同じ形状とは,およそ同じ形状となるように設計されていればよい。
【0023】
ペロブスカイト層
ペロブスカイト太陽電池におけるペロブスカイト層(光活性層,光吸収層)9は,光を吸収し,励起された電子と正孔を移動させることにより,光電変換を行う層である。ペロブスカイト層(光吸収層)9は,ペロブスカイト材料や,ペロブスカイト錯体を含む。混合液をスピンコート,ディップコート,スクリーン印刷法,ロールコート,ダイコート法,転写印刷法,スプレー法,スリットコート法等,好ましくはスピンコートにより基板上に塗布することが好ましい。
【0024】
ペロブスカイト層(光活性層,光吸収層)9の膜厚は,光吸収効率と励起子拡散長とのバランス及び透明電極で反射した光の吸収効率の観点から,例えば,50~1000nmが好ましく,200~800nmがより好ましい。なお,本発明のペロブスカイト層(光吸収層)9の膜厚は,100~1000nmの範囲内であることが好ましく,250~500nmの範囲内であることがより好ましい。本発明のペロブスカイト層(光活性層,光吸収層)9の膜厚は,膜の断面走査型電子顕微鏡(断面SEM)により測定する。
【0025】
また,本発明のペロブスカイト層(光活性層,光吸収層)9の平坦性は,走査型電子顕微鏡により測定した表面の水平方向500nm×500nmの範囲において高低差が50nm以下(-25nm~+25nm)であるものが好ましく,高低差が40nm以下(-20nm~+20nm)であるのがより好ましい。これにより,光吸収効率と励起子拡散長とのバランスをより取りやすくし,透明電極で反射した光の吸収効率をより向上させることができる。なお,ペロブスカイト層(光吸収層)9の平坦性とは,任意に決定した測定点を基準点とし,測定範囲内において最も膜厚が大きいところとの差を上限値,最も小さいところとの差を下限値としており,本発明のペロブスカイト層(光吸収層)9の断面走査型電子顕微鏡(断面SEM)により測定する。
【0026】
スズ系ペロブスカイト層は,0価のスズ,ピラジン系化合物,ケイ素系化合物,及びゲルマニウム系化合物から選ばれる1種又は2種以上を合計で0.01ppm以上1000ppm以下含む。このスズ系ペロブスカイト層は,上記のスズ系ペロブスカイト層の製造方法に基づいて得ることができ,還元剤などの残留物が所定量存在する。所定量の特定の物質が残留することで,スズ系ペロブスカイト層は,パッシベーションに優れたものとなる。これらの物質の含有量は,スズ系ペロブスカイト層を成分分析することにより分析できる。
【0027】
以下に説明する実施例において実際にスズ系ペロブスカイト層が得られている。そして,上記の含有量には,臨界性がある(上記の数値の範囲外と範囲内とではパッシベーションに有意差がある)。ピラジン系化合物及びケイ素系化合物の例は,式(I)~式(V)で示される化合物である。ゲルマニウム系化合物は,先に説明したゲルマニウム系還元剤や,それらの還元剤と,溶液中の化合物が反応して生成された化合物である。上記の合計量は,0.1ppm以上500ppm以下でもよいし,1ppm以上500ppm以下でもよい。このようなスズ系ペロブスカイト層を有する発光性材料や,光電変換素子は,上記の特性を生かし,良好な特性を有することとなる。なお,ペロブスカイト層9はスズ系のペロブスカイト層に限らず,鉛系など他の材料からなるペロブスカイト層を用いてもよい。
【0028】
正孔輸送層
正孔輸送層11は,電荷を輸送する機能を有する層である。正孔輸送層には,例えば,導電体,半導体,有機正孔輸送材料等を用いることができる。当該材料は,ペロブスカイト層(光吸収層)から正孔を受け取り,正孔を輸送する正孔輸送材料として機能し得る。正孔輸送層はペロブスカイト層(光吸収層)上に形成される。当該導電体及び半導体としては,例えば,CuI,CuInSe2,CuS等の1価銅を含む化合物半導体;GaP,NiO,CoO,FeO,Bi2O3,MoO2,Cr2O3等の銅以外の金属を含む化合物が挙げられる。なかでも,より効率的に正孔のみを受け取り,より高い正孔移動度を得る観点から,1価銅を含む半導体が好ましく,CuIがより好ましい。有機正孔輸送材料としては,例えば,ポリ-3-ヘキシルチオフェン(P3HT),ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等のポリチオフェン誘導体;2,2’,7,7’-テトラキス-(N,N-ジ-p-メトキシフェニルアミン)-9,9’-スピロビフルオレン(Spiro-OMeTAD)等のフルオレン誘導体;ポリビニルカルバゾール等のカルバゾール誘導体;ポリ[ビス(4-フェニル)(2,4,6-トリメチルフェニル)アミン](PTAA)等のトリフェニルアミン誘導体;ジフェニルアミン誘導体;ポリシラン誘導体;ポリアニリン誘導体等が挙げられる。なかでも,より効率的に正孔のみを受け取り,より高い正孔移動度を得る観点から,トリフェニルアミン誘導体,フルオレン誘導体等が好ましく,PTAA,Spiro-OMeTADなどがより好ましい。
【0029】
正孔輸送層中には,正孔輸送特性をさらに向上させることを目的として,リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(LiTFSI),銀ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド,トリフルオロメチルスルホニルオキシ銀,NOSbF6,SbCl5,SbF5,トリス(2-(1H-ピラゾール-1-イル)-4-tert-ブチルピリジン)コバルト(III)トリ[ビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド]等の酸化剤を含むこともできる。また,正孔輸送層中には,t-ブチルピリジン(TBP),2-ピコリン,2,6-ルチジン等の塩基性化合物を含むこともできる。酸化剤及び塩基性化合物の含有量は,従来から通常使用される量とすることができる。正孔輸送層の膜厚は,より効率的に正孔のみを受け取り,より高い正孔移動度を得る観点から,例えば,50~500nmが好ましく,100~300nmがより好ましい。正孔輸送層を成膜する方法は,例えば,乾燥雰囲気下で行うことが好ましい。例えば,有機正孔輸送材料を含む溶液を,乾燥雰囲気下,ペロブスカイト層(光吸収層)上に塗布(スピンコート等)し,30~180℃(特に100~150℃)で加熱することが好ましい。
【0030】
電子輸送層7,ペロブスカイト層9,及び正孔輸送層11は,第1裏面電極5a,第2裏面電極5b上にこの順で形成されてもよい。また,電子輸送層7,ペロブスカイト層9,及び正孔輸送層13は,第1裏面電極5a,第2裏面電極5b上に,正孔輸送層11,ペロブスカイト層9,及び電子輸送層7の順で形成されてもよい。光電変換層は,電子輸送層7,ペロブスカイト層9,及び正孔輸送層11のみから構成されていてもよいし,電子輸送層7,ペロブスカイト層9,及び正孔輸送層11以外の層が適宜含まれていてもよい。
【0031】
表面電極(表面電極部,表面電極本体部,表面電極導通部)
【0032】
表面電極13は,裏面電極5に対向配置され,正孔輸送層11の上に形成されることで,正孔輸送層11と電荷のやり取りが可能である。
表面電極13は,それが金属のものの場合,金属電極ともよばれる電極である。表面電極13としては,当業界で用いられる公知の素材を用いることが可能であり,例えば,白金,チタン,ステンレス,アルミニウム,金,銀,ニッケル等の金属又はこれらの合金が挙げられる。これらの中でも金属電極は,乾燥雰囲気下で電極を形成することができる点から,蒸着等の方法で形成できる材料が好ましい。
【0033】
図4は,裏面電極5と表面電極13の対応関係を例示した図である。
図4の(a)は裏面電極5の概略図である。
図4の(b)は,表面電極13の概略図である。
図4の(b)では,表面電極13が,3つのセルからなる場合を例示している。
図4の(c)は,
図4の(a)の裏面電極5と,
図4の(b)の表面電極13を重ね合わせた場合の概略図である。
図5もまた,裏面電極5と表面電極13の対応関係を例示した図である。
図5の(a)は裏面電極5の概略図である。
図5の(b)は,表面電極13の概略図である。
図5の(b)では,裏面電極が,2つのセルからなる場合を例示している。
図5の(c)は,
図5の(a)の裏面電極5と,
図5の(b)の表面電極13を重ね合わせた場合の概略図である。
【0034】
図4及び
図5のように表面電極13は,表面電極本体部61と,表面電極導通部63とを有する。表面電極本体部61は,表面電極13の本体を形成する部分である。
図4,
図5において示されるように,表面電極本体部61は,長方形であってよい。
第1の表面電極本体部61は,第1の裏面電極本体部31と,第2の裏面電極本体部41と,第3の裏面電極本体部51とを含む領域に対応してよい。
【0035】
具体的には,
図4(c)または
図5(c)の様に,裏面電極5と,表面電極13とを重ね合わせた場合に,表面電極本体部61と裏面電極本体部は位置的に重なりあってよい。
第1の表面電極本体部61が対応する領域の裏面電極本体部は1つでもよいし,2つ(
図4にて3段直列)でもよいし,3つ(
図5にて2段直列)でもよいし,4つでもよい。
表面電極導通部63は,裏面電極導通部と電気的に導通する部分である。表面電極導通部63は,1つの裏面電極導通部と導通がとられてもよいし,2つの裏面電極導通部と導通がとられてもよいし(
図4の3段直列),3つの裏面電極導通部と導通がとられてもよい(
図5の2段直列)。
【0036】
表面電極導通部63は,
図4,
図5において,表面電極本体部61の上部に配置され,表面電極本体部61と分離した部分であってよい。
図4,
図5において示されるように,
表面電極本体部61は,長方形であってよい。
セル間接続部65は,他の電極,隣接するセルと電気的に導通する部分である。セル間接続部65は,裏面電極本体部61に繋がった部分であり,その上部に位置してよい。セル間接続部の形状は,鉤形であってもよい。また,セル間接続部65の一部領域は,そのセル間接続部の裏面電極本体の上面には位置しておらず,隣接する別の裏面電極部本体の上面の平面上に位置してよい。
【0037】
裏面電極(裏面電極本体部,セル間接続部,裏面電極導通部)
裏面電極5は,電子輸送層7の支持体であるとともに,ペロブスカイト層9(光吸収層)より電子を取り出す機能を有する層である。裏面電極5は,基板3上に形成され,離間した第1裏面電極5a及び第2裏面電極5bを含む。離間したとは,物理的に接触していないことや,第1裏面電極5a及び第2裏面電極5bが短絡していないことを意味する。裏面電極5は,透明電極又は金属電極であることが好ましい。
【0038】
透明電極の例は,スズドープ酸化インジウム(ITO)膜,不純物ドープの酸化インジウム(In2O3)膜,不純物ドープの酸化亜鉛(ZnO)膜,フッ素ドープ二酸化スズ(FTO)膜,これらを積層してなる積層膜である。金属電極は,金属を含む電極を意味する。そして,金属電極の例は,金,銀,及び銅である。金属電極は,金属のみならず,金属の表面にスズドープ酸化インジウム(ITO)膜,不純物ドープの酸化インジウム(In2O3)膜,不純物ドープの酸化亜鉛(ZnO)膜,フッ素ドープ二酸化スズ(FTO)膜,これらを積層してなる積層膜を有していてもよい。これらの膜は,例えば拡散防止層として機能するものであってもよい。これら電極の厚みは特に制限されず,通常,シート抵抗が5~15Ω/□(単位面積当たり)となるように調整することが好ましい。裏面電極5は,形成する材料に応じ,公知の成膜方法により得ることができる。
【0039】
図3は,裏面電極5の例を示す概念図である。
図3に示されるように,裏面電極5は,第1裏面電極5a,及び第2裏面電極5bを含み,これらは接続しないように離れているものであってもよい。
図3の例では,裏面電極5が2つ描画されているものの,裏面電極5は3個以上であってもよい。
図4,
図5に示すように,裏面電極5は,第1の裏面電極部21と,第2の裏面電極部23を有する。裏面電極5は,さらに第3の裏面電極部25や,さらなる裏面電極部を有してよい。このように,裏面電極部は,1つの表面電極13に対して複数存在してよい。表面電極部同士は,空間的に離間されており,絶縁されていることが好ましい。
第1の裏面電極部21は,第1の裏面電極本体部31と,第1の裏面電極導通部33を有する。第1の裏面電極導通部33は,第1の裏面電極本体部31と通電できる態様で接続されている。また同様に,第2の裏面電極部23は,第2の裏面電極本体部41と,第2の裏面電極導通部43を有する。第3の裏面電極部25は,第3の裏面電極本体部51と,第3の裏面電極導通部53を有する。
裏面電極本体部は,裏面電極部の本体を形成する部分である。裏面電極本体部は,対応する裏面電極導通部と通電できる態様で接続されている。裏面電極本体部は,発電などに寄与する電極部位であり,裏面電極導通部は,表面電極と裏面電極との導通に寄与する電極部位である。
図4,
図5において示されるように,裏面電極本体部は,長方形であってよいし,素子の形状に合わせて円形や楕円形,正方形,又は多角形であってもよい。裏面電極本体部の面積は,裏面電極導通部の面積より大きいことが好ましい。
【0040】
第1の裏面電極本体部31と,第2の裏面電極本体部41を含む領域(好ましくは,さらに第3の裏面電極本体部51)を含む領域は,第1の表面電極本体部61と対応する。つまり,第1の表面電極本体部61の多くの領域は,第1の裏面電極本体部31及び第2の裏面電極本体部41(好ましくは,さらに第3の裏面電極本体部51)と重なり合う。このように表面電極と裏面電極とに重なる部分があることで,素子として機能しやすくなる。
図4(c)または
図5(c)の様に,裏面電極5と,表面電極13とを重ね合わせた場合に,表面電極本体部61と裏面電極本体部が,位置的に重なりあってよい。
図4の例では,第1の表面電極本体部61が,2つの裏面電極本体部を含む領域と対応する場合を示した。第1の表面電極本体部61が対応する領域の裏面電極本体部の個数は,1つでもよいし,2つでもよいし(
図4の3段直列),3つでもよいし(
図5の2段直列),4つでもよい。第1の表面電極本体部61に対応する裏面電極本体部は,
図4及び
図5に示されるように一方向に並んだ複数の裏面電極本体部であってもよいし,複数段に並んだ複数の裏面電極本体部であってもよい。
【0041】
裏面電極導通部は,対応する裏面電極導通部と電気的に接続される。第1の裏面電極導通部33と,第2の裏面電極導通部43と,第3の裏面電極導通部53は,第1の裏面電極導通部63と導通がとられてよい。第1の裏面電極導通部63と導通される裏面電極導通部の個数は,1つでもよいし,2つでもよいし(
図4の3段直列),3つでもよいし(
図5の2段直列),4つでもよい。
【0042】
図4,及び
図5において,裏面電極部本体の上部に裏面電極導通部が位置している。裏面電極導通部の一部領域が,隣接する裏面電極部の裏面電極本体部の上部に位置してよい。裏面電極導通部の形状は,鉤形であってもよい。また,裏面電極導通部の形状は,裏面電極本体部の長方形の一辺よりも短い長さの辺からなる四角形を,複数結合させたものであってもよい。
【0043】
有機EL素子は,例えば特開2017-123352号公報,特開2015-071619号公報に記載される通り,公知の素子であり,その製造方法も公知である。有機EL素子の例は,基板と,陽極と,陰極と,陽極と陰極との間に配置された有機層と,を有する。そして,有機層は,陽極側から順に,正孔注入層,正孔輸送層,発光層,電子輸送層,および電子注入層が,この順番で積層されて構成される。
【実施例0044】
以下,実施例を用いてこの明細書に記載された発明の例を具体的に説明する。この明細書に記載された発明は,以下の実施例に限定されず,公知の要素を適宜追加したものを含む。
【0045】
図3は,実施例における太陽電池を説明するための概念図である。
ガラス基板3にあらかじめ所定の形状にパターン化された裏面電極5のITO(酸化インジウムスズ)があり,電子輸送層7,ペロブスカイト層9,正孔輸送層11を順次塗布する。電子輸送層7は,コロイド状のSnO
2水溶液をスピンコートし,乾燥させることで形成できる。ペロブスカイト層9は,前述のスピンコートにより所定の材料を塗布後,貧溶媒をさらにコートすることで高品質なものが得られる。正孔輸送層11はSpiro-MeOTADを含む溶液をスピンコートし,乾燥させることによって得られる。
上記の層は,スピンコートを基本にしているので基板全面に積層される。
【0046】
先に,表面電極13を形成する。表面電極を形成する方法として,パターンをあらかじめ作るために,メタルマスクを使用し,所望の材料をターゲットにしたスパッタ装置で形成する。メタルマスクは上記積層された基板3に密着させて形成する。ターゲット材料は酸化モリブデン(MoO3),銅(Cu),酸化インジウムスズ(ITO)を使用した。
【0047】
次に,表面電極13がない領域の積層膜を除去するために,CF4とO2を使用したドライエッチングを行う。この時,表面電極がマスクとなり正孔輸送層11やペロブスカイト層9の一部が除去される。これにより,裏面電極13の無い部分に電極5の一部を露出させることができる。積層膜の除去方法としては,パルスレーザーを使用してもよい。
次に,セル間接続部65を形成する。表面電極13と同じ方法で,メタルマスクを使用したスパッタ装置により形成する。また,導電性ペーストをスクリーン印刷によって形成することもできる。以上により,集積型構造の太陽電池モジュールを得ることができる。