(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151177
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】封止用樹脂組成物および半導体素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 59/40 20060101AFI20220929BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20220929BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20220929BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20220929BHJP
H01L 21/56 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
C08G59/40
C08K3/36
C08L63/00 B
H01L23/30 R
H01L21/56 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021054118
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】岩井 正寛
(72)【発明者】
【氏名】市澤 豪
(72)【発明者】
【氏名】楠 賢
【テーマコード(参考)】
4J002
4J036
4M109
5F061
【Fターム(参考)】
4J002CC045
4J002CC054
4J002CD051
4J002CD052
4J002CE003
4J002CP035
4J002DA039
4J002DJ016
4J002DJ017
4J002DJ018
4J002EW179
4J002FD016
4J002FD017
4J002FD018
4J002FD099
4J002FD143
4J002FD144
4J002FD145
4J002FD159
4J002GQ05
4J036AA05
4J036AD07
4J036DA07
4J036FA02
4J036FA05
4J036FB06
4J036FB07
4J036FB08
4J036FB16
4J036GA23
4J036GA28
4J036JA07
4M109AA01
4M109CA21
4M109EA02
4M109EB03
4M109EB12
4M109EC04
4M109EC09
5F061AA01
5F061CA21
(57)【要約】 (修正有)
【課題】弾性率低減と密着性向上の両立により半導体素子の信頼性向上が可能な封止用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】エポキシ樹脂と、フェノール樹脂硬化剤と、無機充填材と、を含み、上記フェノール樹脂硬化剤が、下記の一般式(1)で表されるフェノール樹脂硬化剤(A)を含む2種類のフェノール樹脂硬化剤から成る、封止用樹脂組成物が提供される。
〔式(1)中において、R
1は、水素原子又は炭素数4以上8以下のアルキル基であり、aは0.1以上2.5以下の数であり、nは1以上20以下の数である。〕
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂と、
フェノール樹脂硬化剤と、
無機充填材と、
を含み、
前記フェノール樹脂硬化剤が、下記の一般式(1)で表されるフェノール樹脂硬化剤(A)および下記の一般式(2)で表されるフェノール樹脂硬化剤(B)を含む、封止用樹脂組成物。
【化1】
〔式(1)中において、R
1は、水素原子又は炭素数4以上8以下のアルキル基であり、aは0.1以上2.5以下の数であり、nは1以上20以下の数である。〕
【化2】
〔式(2)中において、nは1以上20以下の数である。〕
【請求項2】
前記フェノール樹脂硬化剤(A)の重量平均分子量が、100以上100,000以下である、請求項1に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項3】
前記フェノール樹脂硬化剤(B)の重量平均分子量が、100以上100,000以下である、請求項1または2に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項4】
前記フェノール樹脂硬化剤中の前記フェノール樹脂硬化剤(B)の含有比率は、前記フェノール樹脂硬化剤(A)に対して、当量比基準で、0.1以上10以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項5】
当該封止用樹脂組成物の全固形分100質量%に対して、シリコーンオイルを、0.01質量%以上10質量%以下含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項6】
当該封止用樹脂組成物を175℃120秒の条件で硬化し、さらに175℃で4時間加熱して得られる試験片が、以下の条件(i)および(ii)を満たす、請求項1~5のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物。
(i)JISK6911に準拠して測定される、25℃における、前記試験片の曲げ弾性率が、0.1GPa以上30GPa以下である。
(ii)JISK6911に準拠して測定される、260℃における、前記試験片の曲げ弾性率が、0.1GPa以上1.5GPa以下である。
【請求項7】
当該封止用樹脂組成物を、シリコン(Si)板を配置した金型内に、トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃条件で注入し、175℃180秒の条件で硬化し、さらに、175℃で3時間加熱して得られる前記封止用樹脂組成物と前記シリコン(Si)板の接合体が、
以下の条件(iii)および(iv)を満たす、請求項1~6のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物。
(iii)25℃における、前記封止用樹脂組成物の硬化物と前記シリコン(Si)板とのダイシェア強度が、20N/mm2以上である。
(iv)260℃における、前記封止用樹脂組成物の硬化物と前記シリコン板(Si)板とのダイシェア強度が、2.5N/mm2以上である。
【請求項8】
ウェーハレベルパッケージまたはパネルレベルパッケージの封止に用いられる、請求項1~7のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項9】
シリコンウェーハ上に、複数の半導体素子領域を形成する工程と、
請求項1~8のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物により複数の前記半導体素子領域を封止した後、当該封止用樹脂組成物を硬化させる工程と、
前記封止用樹脂組成物の硬化物および前記シリコンウェーハを切断して前記半導体素子領域を個片化し、複数の半導体素子を得る工程と、
を含む、
半導体素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止用樹脂組成物および半導体素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、集積回路等の半導体素子の封止材料としてセラミックや熱硬化性樹脂が一般に用いられている。トランジスタ、IC等の半導体素子の封止の分野では生産性、コスト等の面から樹脂封止が主流となり、エポキシ樹脂組成物が封止材料として広く用いられている。この理由としては、エポキシ樹脂組成物は電気特性、耐湿性、耐熱性、機械特性、インサート品との接着性等の諸特性のバランスが良く、経済性と性能とのバランスにも優れている点等が挙げられる。
【0003】
近年では半導体パッケージのタイプとして大型の半導体パッケージが増加してきている。それに伴い、ダイパッドといった基材のサイズも大きくなり、エポキシ樹脂組成物が収縮する際にこれまで以上の応力が発生するため、基材に反りが生じること、基材とエポキシ樹脂組成物の界面に剥離が発生しやすくなり、半導体素子の信頼性低下の原因となってしまうことが課題となっている。
【0004】
基材の反りの防止、また基材とエポキシ樹脂組成物の界面剥離の防止のため、従来、低応力化剤を使用するなどして、樹脂組成物の弾性率を低減させることが行われている。特許文献1には、樹脂組成物の弾性率を低減するために、エポキシ樹脂を含む封止用樹脂組成物に、水酸基をアクリル樹脂にグラフト化した水酸基当量4000~6000g/eqの低応力化剤を含有することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者が検討した結果、上記特許文献1記載の封止用樹脂組成物においては、半導体素子の信頼性向上に関して、なお改善の余地があることが明らかになった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、所定の構造を有するフェノール樹脂硬化剤(A)および(B)を用いることにより、封止用樹脂組成物の弾性率低減のみならず、密着性向上をも達成させることができ、このことにより当該封止用樹脂組成物を用いた半導体素子の信頼性を向上できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下に示すことができる。
【0008】
本発明によれば、
エポキシ樹脂と、
フェノール樹脂硬化剤と、
無機充填材と、
を含み、
上記フェノール樹脂硬化剤が、下記の一般式(1)で表されるフェノール樹脂硬化剤(A)および下記の一般式(2)で表されるフェノール樹脂硬化剤(B)を含む、封止用樹脂組成物が提供される。
【0009】
【化1】
〔式(1)中において、R
1は、水素原子又は炭素数4以上8以下のアルキル基であり、aは0.1以上2.5以下の数であり、nは1以上20以下の数である。〕
【0010】
【化2】
〔式(2)中において、nは1以上20以下の数である。〕
【0011】
また、本発明によれば、
シリコンウェーハ上に、複数の半導体素子領域を形成する工程と、
上記封止用樹脂組成物により複数の上記半導体素子領域を封止した後、上記封止用樹脂組成物を硬化させる工程と、
上記封止用樹脂組成物の硬化物および上記シリコンウェーハを切断して上記半導体素子領域を個片化し、複数の半導体素子を得る工程と、
を含む、
半導体素子の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、低弾性率と高密着性が両立された封止用樹脂組成物、およびその封止用樹脂組成物を用いた半導体素子の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態に係る半導体装置の一例を示す断面図である。
【
図2】本実施形態に係る半導体装置の別の例を示す断面図である。
【
図3】Wafer Level Package(:WLP)の電子装置の製造方法の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0015】
<封止用樹脂組成物>
本実施形態の封止用樹脂組成物は、
エポキシ樹脂と、
フェノール樹脂硬化剤と、
無機充填材と、
を含み、
上記フェノール樹脂硬化剤が、下記の一般式(1)で表されるフェノール樹脂硬化剤(A)および下記の一般式(2)で表されるフェノール樹脂硬化剤(B)を含む。
【0016】
【化3】
〔式(1)中において、R
1は、水素原子又は炭素数4以上8以下のアルキル基であり、aは0.1以上2.5以下の数であり、nは1以上20以下の数である。〕
【0017】
【化4】
〔式(2)中において、nは1以上20以下の数である。〕
【0018】
まず、本実施形態に係る封止用樹脂組成物の各成分について説明する。
【0019】
[エポキシ樹脂]
エポキシ樹脂は、その分子量、分子構造に関係なく、1分子内にエポキシ基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般を使用することが可能である。
【0020】
エポキシ樹脂の具体例としては、例えば、
ビフェニル型エポキシ樹脂;
ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;
スチルベン型エポキシ樹脂;
フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;
トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂等に例示されるトリフェニルメタン型エポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂;
フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂等のフェノールアラルキル型エポキシ樹脂;
ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレンの2量体をグリシジルエーテル化して得られるエポキシ樹脂等のナフトール型エポキシ樹脂;
トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート等のトリアジン核含有エポキシ樹脂;
ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂等の有橋環状炭化水素化合物変性フェノール型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0021】
エポキシ樹脂としては、これらの中から1種を単独で用いてよいし、異なる2種類以上を併用してもよい。
【0022】
封止用樹脂組成物中のエポキシ樹脂の含有量は、低弾性化を実現し、封止用樹脂組成物の流動性を向上させ、より安定的な封止材の形成を可能とする観点から、封止用樹脂組成物の全固形分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上である。
また、弾性率の低減を実現し、半導体装置の耐湿信頼性や耐リフロー性を向上させる観点から、封止用樹脂組成物中のエポキシ樹脂の含有量は、封止用樹脂組成物の全固形分100質量%に対して、好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは8質量%以下である。
【0023】
[フェノール樹脂硬化剤(A)および(B)を含むフェノール樹脂硬化剤]
フェノール樹脂硬化剤は、エポキシ樹脂と架橋してネットワークを形成する。
【0024】
本発明において、フェノール樹脂硬化剤は、下記の一般式(1)で表されるフェノール樹脂硬化剤(A)および下記の一般式(2)で表されるフェノール樹脂硬化剤(B)を含む。
【0025】
【化5】
〔式(1)中において、R
1は、水素原子又は炭素数4以上8以下のアルキル基であり、aは0.1以上2.5以下の数であり、nは1以上20以下の数である。〕
【0026】
【化6】
〔式(2)中において、nは1以上20以下の数である。〕
【0027】
式(1)のおける炭素数4以上8以下のアルキル基の具体例としては、例えば、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、へプチル基、オクチル基等が挙げられる。これらの中でも、特にブチル基、ブチル基のなかでもtert-ブチル基が好ましい。
【0028】
式(1)において、aは0.1以上2.5以下の数であり、0.5以上2.0以下の数であることが好ましく、0.8以上1.7以下の数であることがより好ましい。尚、aは、フェノール樹脂硬化剤(A)全体の平均値である。
【0029】
式(1)において、nは1以上20以下の数であり、2以上18以下の数であることが好ましく、3以上17以下の数であることがより好ましい。
【0030】
式(2)において、nは1以上20以下の数であり、2以上18以下の数であることが好ましく、3以上17以下の数であることがより好ましい。
【0031】
フェノール樹脂硬化剤(A)の重量平均分子量は、100以上100,000以下であることが好ましく、200以上5,000以下であることがより好ましく、300以上4,000以下であることが更に好ましい。フェノール樹脂硬化剤(A)の重量平均分子量が100以上であることにより、エポキシ樹脂が十分硬化されるようになる。また、フェノール樹脂硬化剤(A)の重量平均分子量が100,000以下であることにより、封止用樹脂組成物の弾性率が上昇するのを抑制することができる。
【0032】
フェノール樹脂硬化剤(B)の重量平均分子量は、100以上100,000以下であることが好ましく、200以上5,000以下であることがより好ましく、300以上4,000以下であることが更に好ましい。フェノール樹脂硬化剤(B)の重量平均分子量が100以上であることにより、エポキシ樹脂が十分硬化されるようになる。また、フェノール樹脂硬化剤(B)の重量平均分子量が100,000以下であることにより、封止用樹脂組成物の弾性率が上昇するのを抑制することができる。
【0033】
フェノール樹脂硬化剤中のフェノール樹脂硬化剤(A)の含有比率は、エポキシ樹脂に対して、当量比基準で、0.7~1.3、好ましくは0.8~1.2である。
【0034】
フェノール樹脂硬化剤中のフェノール樹脂硬化剤(B)の含有比率は、フェノール樹脂硬化剤(A)に対して、当量比基準で、0.1以上10以下であることが好ましく、0.2以上9以下であることがより好ましい。フェノール樹脂硬化剤(B)の含有比率が上記の範囲内にあることで、エポキシ樹脂組成物と基材(ダイパッド)との密着性が十分に向上する。
【0035】
[無機充填材]
無機充填剤は、封止用樹脂組成物から得られる封止材に適度な剛性を付与し、低弾性率化を実現するために用いられる。
無機充填剤としては、具体的には、
溶融破砕シリカ、溶融球状シリカ、結晶性シリカ、2次凝集シリカ、微粉シリカなどのシリカ;
アルミナ、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化チタン、炭化ケイ素、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、チタンホワイトなどの金属化合物;
タルク;
クレー;
マイカ;
ガラス繊維などが挙げられ、これら1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
また、無機充填剤は、表面処理が施されたものであってもよい。
【0037】
無機充填剤のメジアン径D50は、封止用樹脂組成物の適度な弾性率を保持しつつ充填特性を向上させる観点から、好ましくは1μm以上であり、より好ましくは3μm以上であり、一方、低応力剤との良好な作用を得つつ、低弾性率化を実現する観点から、好ましくは20μm以下であり、より好ましくは15μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。
【0038】
封止用樹脂組成物中の無機充填剤の含有量の下限値は、封止用樹脂組成物の全固形分100質量%に対して、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、75質量%以上であることが好ましい。これにより、封止用樹脂組成物の熱膨張係数、弾性率といった物性に対する、封止用樹脂組成物中の各成分の寄与のうち、無機充填剤の寄与を大きくすることができる。したがって、熱膨張係数を低減しながら、弾性率の上昇を抑制することができる。
また、封止用樹脂組成物中の無機充填剤の含有量の上限値は、封止用樹脂組成物の全固形分100質量%に対して、例えば、97質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましく、90質量%以下であることが好ましい。これにより、封止用樹脂組成物の粘度が上昇しすぎることを抑制できる。
【0039】
[その他の成分]
封止用樹脂組成物中には、必要に応じて、シリコーンオイル、低応力剤、硬化剤、カップリング剤、硬化促進剤、離型剤、着色剤、流動性付与剤、イオン捕捉剤及び難燃剤等の各種添加剤のうち一種または二種以上を適宜配合することができる。
【0040】
(シリコーンオイル)
シリコーンオイルは、封止用樹脂組成物の硬化物の弾性率を低くする低応力剤として用いられる。
シリコーンオイルは、60℃において液状である液状成分を含むことが好ましい。
【0041】
シリコーンオイルの好ましい分子量は、1,000~50,000であり、より好ましい分子量は5,000~25,000である。分子量を上記の下限値以上とすることにより、分子の鎖状部分がクッションとなり、弾性率を低下させることができる。一方、分子量を上記の上限値以下とすることにより、封止材としての適度な弾性を保持できる。
【0042】
シリコーンオイルとしては、具体的には、オルガノポリシロキサンなどを挙げることができる。ここで、オルガノポリシロキサンとしては、その構造中にエポキシ基、アミノ基、メトキシ基、フェニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アルキル基、ビニル基、メルカプト基などの官能基を導入したものを用いてもよい。オルガノポリシロキサンがその構造中に導入する官能基としては、例えば、カルボキシル基、エポキシ基、ポリエーテル基が好ましい。
【0043】
また、上記シリコーンオイルは、エポキシ樹脂との相溶性等の観点から、側鎖にポリエチレンオキシドまたはブチルグリシジルエーテルが導入されたものであることが好ましい。
【0044】
上記シリコーンオイルの市販品としては、例えば、東レ・ダウコーニング社製のFZ-3730、BY-750などが挙げられる。上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
従来、封止用樹脂組成物にシリコーンオイルを含有させると、基材との密着性が低減してしまうという課題があった。しかし、本実施形態の封止用樹脂組成物は、シリコーンオイルの配合によっても基材との密着性が低減しづらい傾向がある。
【0046】
封止用樹脂組成物の固形分全体100質量%に対して、シリコーンオイルの含有量は、0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上10質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上9質量%以下であることがより好ましく、0.2質量%以上8質量%以下であることがより好ましい。
シリコーンオイルの含有量が0.01質量%以上であることにより、封止用樹脂組成物の内部応力を適切に緩和することができ、エポキシ樹脂組成物の弾性率を効果的に低減することができる。また、シリコーンオイルの含有量が10質量%以下であることにより、密着性の低下が抑制され、低弾性率化と密着性とのバランスを良好にできる。
【0047】
(低応力剤)
低応力剤として、シリコーンオイル以外のものを用いてもよい。例えば、ポリブタジエン化合物、アクリロニトリルブタジエン共重合化合物などを挙げることができる。
上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
(硬化剤)
本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、上述したフェノール樹脂硬化剤(A)および(B)を含むフェノール樹脂硬化剤以外の硬化剤を含有していてもよい。これにより、封止用樹脂組成物の硬化性を一段と向上させることができる。
【0049】
上記硬化剤の具体例として、上述したフェノール樹脂硬化剤(A)および(B)を含むフェノール樹脂硬化剤を除くフェノール樹脂系硬化剤、アミン系硬化剤、および酸無水物系硬化剤からなる群から選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
フェノール樹脂硬化剤(A)および(B)を含むフェノール樹脂硬化剤を除くフェノール樹脂系硬化剤の具体例として、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールノボラック等のノボラック型樹脂;ポリビニルフェノール;トリスメタンフェノール型樹脂等の多官能型フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂等の変性フェノール樹脂;フェニレン骨格及び/又はビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレン及び/又はビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール化合物;レゾール型フェノール樹脂等からなる群から選択される1種または2種以上が挙げられる。
【0051】
アミン系硬化剤の具体例として、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、メタキシリレンジアミン(MXDA)等の脂肪族ポリアミン;ジアミノジフェニルメタン(DDM)、m-フェニレンジアミン(MPDA)、ジアミノジフェニルスルホン(DDS)等の芳香族ポリアミン;ベンジルジメチルアミン(BDMA)、2,4,6-トリスジメチルアミノメチルフェノール(DMP-30)などの3級アミン化合物;ジシアンジアミド(DICY)、有機酸ジヒドラジドなどを含む他のアミン化合物からなる群から選択される1種または2種以上が挙げられる。
【0052】
酸無水物系硬化剤の具体例として、ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)等の脂環族酸無水物;無水トリメリット酸(TMA)、無水ピロメリット酸(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸(BTDA)等の芳香族酸無水物からなる群から選択される1種または2種以上が挙げられる。
【0053】
(カップリング剤)
カップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、アルミニウム/ジルコニウムカップリング剤等を用いることができる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0054】
上記のシランカップリング剤としては、たとえばエポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン、メタクリルシラン等の各種シラン系化合物を用いることができる。
これらを例示すると、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ-アニリノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-[ビス(β-ヒドロキシエチル)]アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(β-アミノエチル)アミノプロピルジメトキシメチルシラン、N-(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N-(ジメトキシメチルシリルイソプロピル)エチレンジアミン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラン、ビニルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルーブチリデン)プロピルアミンの加水分解物等のシラン系カップリング剤が挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
本実施形態において、封止用樹脂組成物中のカップリング剤の含有量は、封止用樹脂組成物の全固形分100質量%に対して、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.03質量%以上、さらに好ましくは0.05質量%以上である。
また、封止用樹脂組成物の硬化性を向上させる観点から、カップリング剤の含有量は、封止用樹脂組成物の全固形分100質量%に対して、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
【0056】
(硬化促進剤)
硬化促進剤は、エポキシ樹脂の硬化を促進させるものであればよく、熱硬化性樹脂の種類に応じて選択される。
硬化促進剤としては、例えば、有機ホスフィン、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等のリン原子含有化合物;1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7、ベンジルジメチルアミン、2-メチルイミダゾール等が例示されるアミジンや3級アミン、アミジンやアミンの4級塩等の窒素原子含有化合物から選択される1種類または2種類以上を含むことができる。
【0057】
これらの中でも、硬化性を向上させる観点からはリン原子含有化合物を含むことがより好ましい。また、成形性と硬化性のバランスを向上させる観点からは、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等の潜伏性を有するものを含むことがより好ましい。
【0058】
有機ホスフィンとしては、例えばエチルホスフィン、フェニルホスフィン等の第1ホスフィン;ジメチルホスフィン、ジフェニルホスフィン等の第2ホスフィン;トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の第3ホスフィンが挙げられる。
【0059】
(離型剤)
離型剤としては、具体的には、カルナバワックスなどの天然ワックス;モンタン酸エステルワックス、酸化ポリエチレンワックスなどの合成ワックス;ステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸及びその金属塩、パラフィンなどが挙げられる。離型剤としては、上記具体例のうち1種または2種以上を配合することができる。
【0060】
(着色剤)
上記着色剤としては、具体的には、カーボンブラック、ベンガラ、酸化チタンなどを挙げることができる。着色剤としては、上記具体例のうち1種または2種以上を配合することができる。
【0061】
(イオン捕捉剤)
上記イオン捕捉剤は、具体的には、ハイドロタルサイト類;マグネシウム、アルミニウム、ビスマス、チタン、ジルコニウムから選ばれる元素の含水酸化物などが挙げられる。イオン捕捉剤としては、上記具体例のうち1種または2種以上を配合することができる。
【0062】
(流動性付与剤)
流動性付与剤は、リン原子含有硬化促進剤などの潜伏性を有さない硬化促進剤が、樹脂組成物の溶融混練時に反応することを抑制できる。これにより、封止用樹脂組成物の生産性を向上できる。
流動性付与剤としては、具体的には、カテコール、ピロガロール、没食子酸、没食子酸エステル、1,2-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン及びこれらの誘導体などの芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物などが挙げられる。
【0063】
(難燃剤)
上記難燃剤としては、具体的には、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、ホスファゼン、カーボンブラックなどを挙げることができる。難燃剤としては、上記具体例のうち1種または2種以上を配合することができる。
【0064】
<封止用樹脂組成物の物性>
次に、封止用樹脂組成物またはその硬化物の物性について説明する。
【0065】
本実施形態の封止用樹脂組成物は、封止用樹脂組成物を175℃120秒の条件で硬化し、さらに175℃で4時間加熱して得られる試験片が、以下の条件(i)および(ii)を満たすことが好ましい。
(i)JISK6911に準拠して測定される、25℃における、上記試験片の曲げ弾性率(FM(25℃))が、0.1GPa以上30GPa以下である。
(ii)JISK6911に準拠して測定される、260℃における、上記試験片の曲げ弾性率(FM(260℃))が、0.1GPa以上1.5GPa以下である。
【0066】
本実施形態の封止用樹脂組成物から得られる硬化物は、弾性率が低減されているため、本実施形態の封止用樹脂組成物を用いた半導体素子では、基材の反りや、基材-樹脂界面の剥離が抑制され、このことにより半導体素子の信頼が向上する。特に、260℃における弾性率が低減されることにより、たとえばHASTやHTSL等の高温保管特性が向上する。
【0067】
FM(25℃)は、好ましくは20GPa以下、より好ましくは15GPa以下、さらに好ましくは13GPa以下である。また、下限は特に限定されないが0.1GPa以上とすることができる。
【0068】
FM(260℃)は、好ましくは1GPa以下、より好ましくは0.8GPa以下、さらに好ましくは0.7GPa以下である。また、下限は特に限定されないが0.1GPa以上とすることができる。
【0069】
本実施形態の封止用樹脂組成物は、封止用樹脂組成物を、シリコン(Si)板を配置した金型内に、トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃条件で注入し、175℃180秒の条件で硬化し、さらに、175℃で3時間加熱して得られる上記封止用樹脂組成物と上記シリコン(Si)板の接合体が、以下の条件(iii)および(iv)を満たすことが好ましい。
(iii)25℃における、上記封止用樹脂組成物の硬化物と上記シリコン(Si)板とのダイシェア強度(DS(25℃))が、20N/mm2以上である。
(iv)260℃における、上記封止用樹脂組成物の硬化物と上記シリコン板(Si)とのダイシェア強度(DS(260℃))が、2.5N/mm2以上である。
【0070】
本実施形態の封止用樹脂組成物から得られる硬化物は、基材との密着性に優れており、本実施形態の封止用樹脂組成物を用いた半導体素子では、基材の反りや、基材-樹脂界面の剥離が抑制され、このことにより半導体素子の信頼性が向上する。特に、260℃における密着性が優れることにより、HASTやHTSL等の高温保管特性が向上する。
【0071】
DS(25℃)は、好ましくは20N/mm2以上、より好ましくは18N/mm2以上、さらに好ましくは17N/mm2以上である。また、上限は特に限定されないが、通常40N/mm2以下である。
【0072】
DS(260℃)は、好ましくは2.5N/mm2以上、より好ましくは2.0N/mm2以上、さらに好ましくは1.8N/mm2以上である。また、上限は特に限定されないが、通常5N/mm2以下である。
【0073】
<封止用樹脂組成物の用途>
本実施形態に係る封止用樹脂組成物は、半導体素子の封止に用いることができ、また、半導体素子の封止用に限定されず、その他の素子の封止、ECU(engine control unit)の一括封止、ローターコアの封止等様々な封止用途に用いることができる。半導体素子の封止に用いる場合、上記半導体素子としては、例えば、集積回路、大規模集積回路、トランジスタ、サイリスタ、ダイオード、固体撮像素子等が挙げられる。半導体素子を備える半導体パッケージの構造としては、例えば、ボール・グリッド・アレイ(BGA)、MAPタイプのBGA等が挙げられる。また、チップ・サイズ・パッケージ(CSP);クワッド・フラット・ノンリーデッド・パッケージ(QFN);embedded WLP(eWLP)、Fan In WLPおよびFan Out WLP等のウェーハレベルパッケージ(WLP);パネルレベルパッケージ(PLP);スモールアウトライン・ノンリーデッド・パッケージ(SON);リードフレーム・BGA(LF-BGA)等が挙げられる。
【0074】
本実施形態の封止用樹脂組成物は、低弾性率と高密着性が両立されており、基材の反りや、基材とエポキシ樹脂組成物の界面における剥離が抑制されるため、ウェーハレベルパッケージまたはパネルレベルパッケージの封止に好適に用いられる。
【0075】
<半導体装置>
本実施形態における半導体装置は、上述した本実施形態における封止用樹脂組成物の硬化物により半導体素子が封止されているものである。半導体素子の具体例としては、集積回路、大規模集積回路、トランジスタ、サイリスタ、ダイオード、固体撮像素子等が挙げられる。半導体素子は、好ましくは、受光素子および発光素子(発光ダイオード等)等の光半導体素子を除く、いわゆる、光の入出を伴わない素子である。
【0076】
半導体装置の基材は、たとえば、インターポーザ等の配線基板、またはリードフレームである。また、半導体素子は、ワイヤボンディングまたはフリップチップ接続等により、基材に電気的に接続される。
【0077】
封止用樹脂組成物を用いた封止成形により半導体素子を封止して得られる半導体素子を備える半導体パッケージの構造としては、前述したものを挙げることができる。
以下、図面を参照してさらに具体的に説明する。
【0078】
図1および
図2は、いずれも、半導体装置の構成を示す断面図である。なお、本実施形態において、半導体装置の構成は、
図1および
図2に示すものには限られない。
【0079】
まず、
図1に示した半導体装置100は、基板30上に搭載された半導体素子20と、半導体素子20を封止してなる封止材50と、を備えている。
また、
図1には、基板30が回路基板である場合が例示されている。この場合、
図1に示すように、基板30のうちの半導体素子20を搭載する一面とは反対側の他面には、たとえば複数の半田ボール60が形成される。半導体素子20は、基板30上に搭載され、かつ金属製ワイヤ40を介して基板30と電気的に接続される。一方で、半導体素子20は、基板30に対してフリップチップ実装されていてもよい。
【0080】
封止材50は、たとえば半導体素子20のうちの基板30と対向する一面とは反対側の他面を覆うように半導体素子20を封止する。
図1に示す例においては、半導体素子20の上記他面と側面を覆うように封止材50が形成されている。
本実施形態において、封止材50は、上述の封止用樹脂組成物の硬化物により構成される。このため、半導体装置100においては、封止材50とワイヤ40との密着性に優れており、これにより、半導体装置100は信頼性に優れるものである。
封止材50は、たとえば封止用樹脂組成物をトランスファー成形法または圧縮成形法等の公知の方法を用いて封止成形することにより形成することができる。
【0081】
図2は、本実施形態における半導体装置100の変形例を示す断面図であって、
図1とは異なる例を示すものである。
図2に示す半導体装置100は、基板30としてリードフレームを使用している。この場合、半導体素子20は、たとえば基板30のうちのダイパッド32上に搭載され、かつワイヤ40を介してアウターリード34へ電気的に接続される。また、封止材50は、
図1に示す例と同様にして、本実施形態における封止用樹脂組成物の硬化物により構成される。
【0082】
<半導体装置の製造方法>
本実施形態の半導体装置の製造方法は、
シリコンウェーハ上に、複数の半導体素子領域を形成する工程と、
上述の封止用樹脂組成物により複数の上記半導体素子領域を封止した後、当該封止用樹脂組成物を硬化させる工程と、
上記封止用樹脂組成物の硬化物および上記シリコンウェーハを切断して上記半導体素子領域を個片化し、複数の半導体素子を得る工程と、
を含むことが好ましい。
尚、上記の方法は Wafer Level Package(:WLP)方式と呼ばれる製造方法である。
【0083】
上述の封止用樹脂組成物は、低弾性率と密着性が両立されているため、上記したWLP方式の製造方法に適用することができる。
WLP方式の電子装置の製造方法について、
図3(a)-(f)に記載の各工程と共に詳細を説明する。
まず、配設工程として、例えば、
図3(a)に示すように、ウェーハなどの基材10上に、図示しない複数の電子部品を配設する。これにより、回路面21を形成する。次いで、例えば、
図3(b)に示すように、回路面21の上に、半田ボールと、電子部品とを電気的に接続するために、メタルポストなどのバンプ22を形成する。
次いで、封止工程として、例えば、
図3(c)に示すように、上述した回路面21を覆うように封止用樹脂組成物を用いて封止し、封止材層70を形成する。次いで、例えば、
図3(d)に示すように、封止材層70を削ることで、封止材層30からバンプ22を露出させる。なお、封止材層70を形成する際に、
図3(d)に示すように、バンプ22が露出するように封止材層70を形成する場合、封止材層70は削らなくてもよい。
次いで、配線工程として、例えば、
図3(e)に示すように、バンプ22に半田ボール96を接続する。
次いで、個片化工程として、例えば、
図3(f)に示すように、封止材層30及び基材10をダイシングブレード、レーザーなどで切断し、電子装置200(たとえば半導体装置)を得る。なお、個片化する電子装置200に接続されるバンプ22及び半田ボール96の数は限定されず、電子装置200の種類に応じて設定することができる。
【0084】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例0085】
以下、本実施形態を、実施例および比較例を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0086】
表1に示された実施例および比較例で用いた成分の詳細について以下に示す。
【0087】
(無機充填材)
無機充填材1(シリカ、製品名:TS-6026、マイクロン社製)
無機充填材2(シリカ、製品名:MUF-4、龍森社製)
無機充填材3(シリカ、製品名:SC-5500-SQ、アドマテックス社製)
【0088】
(着色剤)
着色剤1(カーボンブラック、製品名:ESR-2001、東海カーボン社製)
【0089】
(カップリング剤)
カップリング剤1(製品名:CF-4083、東レ・ダウコーニング社製)
【0090】
(エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂1(製品名:YX4000K、三菱ケミカル社製)
エポキシ樹脂2(製品名:YL6677、三菱ケミカル社製)
【0091】
(フェノール樹脂硬化剤(A)および(B)を含むフェノール樹脂硬化剤)
実施例で用いた「フェノール樹脂硬化剤(A)および(B)を含むフェノール樹脂硬化剤1」について説明する。
フェノール樹脂硬化剤(A)および(B)を含むフェノール樹脂硬化剤1は、以下のフェノール樹脂硬化剤(A)および(B)成分を含む。(A)に対する(B)の含有比率は、(B)/(A)=4/6~6/4である。
【0092】
・フェノール樹脂硬化剤(A)
下記式(3)で表されるフェノール樹脂硬化剤である。式(3)中、nの平均値は3である。また、重量平均分子量は2,000である。
なお、フェノール樹脂硬化剤(A)の合成方法としては、例えば、温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、p-t-ブチルフェノール、蓚酸を仕込み、室温から98℃まで45分かけて昇温しながら撹拌し、続いて、42質量%ホルマリン水溶液を2時間要して滴下し、滴下終了後、さらに98℃で1時間攪拌し、その後180℃まで3時間で昇温し、反応終了後、反応系内に残った水分と未反応物を加熱減圧下に除去することで、フェノール樹脂硬化剤(A)を得ることができる。
【0093】
【0094】
・フェノール樹脂硬化剤(B)
下記式(4)で表されるフェノール樹脂硬化剤である。式(4)中、nの平均値は3である。平均分子量は2,000である。
なお、フェノール樹脂硬化剤(B)の合成方法としては、例えば、フェノールを、温度計、滴下ロート、冷却管、撹拌機を取り付けた反応器に仕込み、70℃に加熱して、三フッ化ホウ素-エーテル錯体を添加した後、反応温度を70℃に制御しながら、ジシクロペンタジエンを1.5時間かけて徐々に滴下し、滴下終了後、100℃で5時間反応を行い、反応終了後、得られた反応生成物にトリエチルアミンを添加し、30分間撹拌して触媒を失活させた後、未反応フェノールを濃縮回収して粗多価ヒドロキシ化合物を得、次いで、得られた触媒残差を含む粗多価ヒドロキシ化合物をメチルイソブチルケトンに溶解した後、水で3回水洗し、溶剤を濃縮回収することで、フェノール樹脂硬化剤(B)を得ることができる。
【0095】
【0096】
(その他の硬化剤)
その他の硬化剤1(フェノールノボラック樹脂、製品名:MEH-7851SS、明和化成社製)
その他の硬化剤2(フェノールノボラック樹脂、製品名:PR-55617、住友ベークライト社製)
その他の硬化剤3(トリスフェニルメタン混合型フェノール樹脂、製品名:HE910-20:、エア・ウォーター社製)
その他の硬化剤4(ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂、製品名:MEH-7851SS、明和化成社製)
【0097】
(硬化促進剤)
硬化促進剤1(テトラフェニルホスホニウム・4,4'-スルフォニルジフェノラート)
硬化促進剤2(テトラフェニルホスホニウムビス(ナフタレン-2,3-ジオキシ)フェニルシリケート)
【0098】
(離型剤)
離型剤1(製品名:SR-サクラ、日油社製)
【0099】
(イオン捕捉剤)
イオン捕捉剤1 (ハイドロタルサイト、マグネシウム・アルミニウム・ハイドロオキサイド・カーボネート・ハイドレート、東亞合成社製)
【0100】
(シリコーンオイル)
シリコーンオイル1 (製品名:FZ-3730、東レ・ダウコーニング社製)
【0101】
(実施例1~2、比較例1~2)
表1に示す各成分をミキサーにより混合した。次いで、得られた混合物を、ロール混練した後、冷却、粉砕して粉粒体である封止用樹脂組成物を得た。
【0102】
<評価>
各例で得られた樹脂組成物または当該組成物を用いて以下の方法で評価用試料を作製し、得られた試料の物性および信頼性を以下の方法で評価した。評価結果を表1に示す。
【0103】
[スパイラルフロー]
実施例および比較例の封止用樹脂組成物を用いてスパイラルフロー試験を行った。
試験は、低圧トランスファー成形機(コータキ精機(株)製「KTS-15」)を用いて、EMMI-1-66に準じたスパイラルフロー測定用の金型に、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、硬化時間120秒の条件で封止用樹脂組成物を注入し、流動長を測定することにより行った。数値が大きいほど、流動性が良好であることを示す。
【0104】
[ゲルタイム]
175℃に加熱した熱板上で実施例および比較例の封止用樹脂組成物をそれぞれ溶融後、へらで練りながら硬化するまでの時間(単位:秒)を測定した。
【0105】
[曲げ弾性率および曲げ強度]
封止用樹脂組成物を、低圧トランスファー成形機(コータキ精機株式会社製「KTS-30」)を用いて、金型温度175℃、注入圧力10.0MPa、硬化時間120秒の条件で金型に注入成形した。これにより、幅10mm、厚み4mm、長さ80mmの成形品を得た。次いで、得られた成形品を175℃、4時間の条件で後硬化させた。これにより、機械的強度の評価用の試験片を作製した。そして、試験片の25℃(室温)または260℃における曲げ弾性率および曲げ強度を、JIS K 6911に準拠して測定した。
【0106】
[ダイシェア強度]
密着性の指標として、以下の方法でポストモールドキュア(PMC)におけるダイシェア強度を測定した。
封止用樹脂組成物を、低圧トランスファー成形機(山城精機社製、「AV-600-50-TF」)を用いて、金型温度175℃、注入圧力10MPa、硬化時間180秒の条件で、9×29mmの短冊状のシリコン(Si)板上に、3.6mmφ×3mmの試験片を10個成形した。
その後、175℃3時間の条件で硬化したサンプルについて、自動ダイシェア測定装置(ノードソン・アドバンスド・テクノロジー社製、DAGE4000型)を用い、ヘッドスピード5mm/minの条件で、25℃(室温)または260℃にてダイシェア強度を測定した。10個の試験片のダイシェア強度の平均値を表1に示す。
【0107】
[硬化収縮率]
まず、円盤状の金型の室温における寸法を4箇所測定し、その平均値を算出した。続いて、金型に熱硬化性樹脂組成物を投入し、トランスファー成形(175℃、120秒)により、上記熱硬化性樹脂組成物の硬化物を得た。得られた硬化物の室温における直径を、当該金型で測定した箇所に対応する4箇所で測定し、その平均値を算出し、得られた平均値を、次式:〔(室温における金型寸法-硬化物の室温における寸法)/室温における金型寸法〕×100(%)に当てはめて、硬化収縮率(ASM)(%)を算出した。
また、得られた硬化物に熱処理(175℃、4時間)を施した後の室温における直径を、当該金型で測定した箇所に対応する4箇所で測定し、その平均値を算出し、得られた平均値を、次式:〔(室温における金型寸法-処理後の硬化物の室温における寸法)/室温における金型寸法〕×100(%)に当てはめて、硬化収縮率(PMC175)(%)を算出した。
【0108】
[高温保管特性]
(パッケージの作製)
アルミニウム製電極パッドを備えるTEGチップ(TEGはTest Element Groupの頭文字、1チップ3回路、大きさ3.5×3.5mm)を、16pSOP(42Alloyリードフレーム、パッケージ外寸:7.2mm×11.5mm×1.95mm厚)のアイランド部に接着した。そして、TEGチップのアルミニウム製電極パッドと基板の電極パッドとを、デイジーチェーン接続となるように、金ワイヤ(金純度99.99重量%)を用いてワイヤボンディングし、試験用素子構造を作製した。
得られた試験用素子構造を、低圧トランスファー成形機(コータキ精機(株)社製、商品名「KTS-125」)により封止用樹脂組成物で封止成形し、パッケージを作製した。封止条件は、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、硬化時間2分間とした。また、パッケージは、175℃、4時間の条件で後硬化させた。
【0109】
(HTSL(Au,225℃,20h))
得られたパッケージを、225℃、20時間の条件で保管し、初期抵抗値(試験開始時の抵抗値)を基準として、抵抗値が1.2倍以下の物を合格、1.2倍を超えたものを不合格とした。10個のパッケージについてHTSL試験を行った。10個中の不合格品の個数を表1に示す。
【0110】
(HAST(Au,130℃,85%,20V,240h))
得られたパッケージを用いて、IEC68-2-66に準拠して、HAST試験を行った。試験条件は、130℃、85%RH、DC20V、240時間とし、初期抵抗値(試験開始時の抵抗値)を基準として、抵抗値が1.2倍以下の物を合格、1.2倍を超えたものを不合格とした。10個のパッケージについてHAST試験を行った。10個中の不合格品の個数を表1に示す。
【0111】
(HTSL(Cu,150℃,1000h))
また、金ワイヤの代わりに銅ワイヤ(銅純度100重量%)を用いたことと、保管条件を150℃、1000時間としたこと以外は上記と同じ方法でHTSL試験を行った。10個中の不合格品の個数を表1に示す。
【0112】
(HAST(Cu,130℃,85%,20V,1200h))
また、金ワイヤの代わりに銅ワイヤ(銅純度100重量%)を用いたことと、試験条件を130℃、85%RH、DC20V、1200時間としたこと以外は上記と同じ方法でHAST試験を行った。10個中の不合格品の個数を表1に示す。
【0113】
表1に各実施例の配合および評価結果を示す。なお、配合量がゼロの場合は「-」と記載する。
【0114】
【0115】
表1によると、実施例の樹脂組成物では、曲げ弾性率が十分に低減しつつ、比較例と比べてダイシェア強度が向上していた。よって、本実施形態の樹脂組成物は、弾性率低減と密着性向上とがより高度に両立されており、このことにより、HTSLやHASTといった半導体素子の信頼性に係る項目の評価結果が良好であったものと理解される。