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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151178
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】ろ過体及びろ過装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 29/62 20060101AFI20220929BHJP
   B01D 29/96 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
B01D29/38 580E
B01D29/02 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021054119
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】507214083
【氏名又は名称】メタウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100174001
【弁理士】
【氏名又は名称】結城 仁美
(72)【発明者】
【氏名】國谷 正
【テーマコード(参考)】
4D116
【Fターム(参考)】
4D116BB02
4D116BC01
4D116BC03
4D116BC77
4D116EE02
4D116EE12
4D116FF13B
4D116QA41C
4D116QA41F
4D116QB15
4D116QB22
4D116QB23
4D116QB42
4D116RR01
4D116VV07
4D116VV09
4D116VV12
(57)【要約】
【課題】洗浄容易性に優れるろ過体を提供する。
【解決手段】複数枚のシート状部材が積層された積層体と、複数枚のシート状部材のそれぞれを支持する支持部材と、支持部材のうちの少なくとも一つを移動させることにより、複数枚のシート状部材のそれぞれの少なくとも一部に隣接する空間を拡張可能である拡張部材とを備えた、ろ過体である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚のシート状部材が積層された積層体と、
前記複数枚のシート状部材のそれぞれを支持する支持部材と、
前記支持部材のうちの少なくとも一つを移動させることにより、前記複数枚のシート状部材のそれぞれの少なくとも一部に隣接する空間を拡張可能である拡張部材とを備えた、
ろ過体。
【請求項2】
前記支持部材が、前記シート状部材を片面側から支持する板状部材及び前記シート状部材を側面側から支持する棒状部材のうちの少なくとも一方を含む、請求項1に記載のろ過体。
【請求項3】
前記支持部材が、前記複数枚のシート状部材のうちの、少なくとも一対の隣接するシート状部材間の面間距離を変更するように移動可能に構成されてなる、請求項1又は2に記載のろ過体。
【請求項4】
前記拡張部材は、前記支持部材のうちの少なくとも一部を、前記シート状部材の表面に対して水平な方向にて移動可能に構成されてなる、
請求項1又は2に記載のろ過体。
【請求項5】
請求項1~4の何れかに記載のろ過体を備える、ろ過装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ろ過体及びろ過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体又は気体等の流体から、汚染物質及び固形分などを除去する方法及び装置などが種々検討されている(例えば、特許文献1及び2参照)。また、従来、水分及び固形分を含有する対象物を脱水する方法が検討されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-176762号公報
【特許文献2】特開2020-146615号公報
【特許文献3】特開2020-065973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ろ過の過程で分離(ろ取とも呼ぶ)された物質がろ過体内に蓄積すると、ろ過体が閉塞し、ろ過効率が低下する。そこで、ろ過体を洗浄して蓄積された物質を洗い流す必要がある。ろ過体を容易に洗浄することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のろ過体は、複数枚のシート状部材が積層された積層体と、前記複数枚のシート状部材のそれぞれを支持する支持部材と、前記支持部材を移動させることにより、前記複数枚のシート状部材のそれぞれの少なくとも一部に隣接する空間を拡張可能である拡張部材とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ろ過体を容易に洗浄できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態のろ過体の概略図である。
図2図1に示すろ過体の洗浄時の様子を説明する概略図である。
図3】板状部材である支持部材によるシート状部材の支持態様の一例を示す図である。
図4A】第2の実施形態のろ過体の概略図である。
図4B図4Aに示したろ過体を非積層状態とした様子を示す概略図である。
図5図4Aに示したろ過体の一部拡大側面図である。
図6】一例にかかるシート状部材及び支持部材の上面図を示す。
図7】他の一例にかかるシート状部材及び支持部材の正面図を示す。
図8A】硬質部材に対するシート状部材の接続態様の一例を示す図である。
図8B】シート状部材の端部が硬質部材と一体化している態様の一例を示す図である。
図8C】支持部材に対するシート状部材の接続態様の一例を示す図である。
図9】第3の実施形態のろ過体の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。各図面において、同一の部材については同じ参照符号を付して示し、基本的な機能などの点で共通するが構造などが異なる部材については「100」を加算した符号、或いは、「’」を付した符号を用いて示す。
【0009】
(ろ過体)
本発明のろ過体は、複数枚のシート状部材が積層された積層体(ろ材とも呼ぶ)と、複数枚のシート状部材のそれぞれを支持する支持部材と、支持部材を移動させることにより、複数枚のシート状部材のそれぞれの少なくとも一部に隣接する空間を拡張可能である拡張部材とを備える。本発明のろ過体は、洗浄に際して、拡張部材により支持部材を移動させることにより複数枚のシート状部材の相互の空間を拡張できるため、シート状部材を容易に洗浄できる。以下、図1図9を参照して、本発明のろ過体について説明する。
【0010】
[第1の実施形態]
図1に、第1の実施形態のろ過体100の構成を概略的に示す。ろ過体100は、複数枚のシート状部材(101,102)が積層された積層体110と、複数枚のシート状部材(101,102)のそれぞれを支持する支持部材(121,122)と、支持部材(121,122)のうちの少なくとも一つを移動させることにより、複数枚のシート状部材(101,102)のそれぞれの少なくとも一部に隣接する空間を拡張可能である拡張部材(131,132)とを備える。
【0011】
被処理水は、図1に示す矢印の方向からろ過体100に流入する。なお、図1では、明瞭のために、積層体110を構成するシート状部材101とシート状部材102とが相互に離間した状態を図示したが、ろ過時には、シート状部材101とシート状部材102とは相互に接した状態となり積層体110を構成している。矢印の方向からろ過体100に流入した被処理水は、シート状部材101とシート状部材102の間隙を移動する。かかる移動過程において、被処理水中に含有されていた汚泥などの固形分が、積層体110により分離されることにより、被処理水から固形分が除去され、処理水、即ちろ過水となって、筒状部材133の内面により画定される空間(以下、内部)に流入する。また、図示しないが、筒状部材133の内部に流入した処理水は、ろ過体100の後段に配置された水処理装置の構成部、例えば、処理水流出管などに送出されてもよい。
【0012】
上側シート状部材101は上側支持部材121によって支持されており、下側シート状部材102は下側支持部材122によって支持されている。ここで、図1に示した上側支持部材121及び下側支持部材122は、双方とも板状部材である。上側支持部材121は、上側シート状部材101を片面側(図示例では、上側。)から支持している。下側支持部材122は、下側シート状部材102を片面側(図示例では、下側。)から支持している。なお、上側シート状部材101及び下側シート状部材102の種類(材質)は、特に限定されない。例えば、上側シート状部材101及び下側シート状部材102は、ろ布である。上側シート状部材101及び下側シート状部材102の種類(材質)は、ろ過体100のろ過対象物に応じて適宜決定できる。
【0013】
ここで、本例に係るろ過体100において、上側拡張部材131は上側支持部材121に接続されており、下側拡張部材132は下側支持部材122に接続されている。
上側拡張部材131、下側拡張部材132、筒状部材133の形状は、円筒であり、円筒の長軸方向に沿って長方形状の開口部(図示しない)を有している。上側拡張部材131の開口部の上側の端部に沿って上側支持部材121の長手方向の端部が接続する。下側拡張部材132の開口部の下側の端部に沿って下側支持部材122の長手方向の端部が接続する。
上側拡張部材131、下側拡張部材132は、入れ子構造である。例えば、下側拡張部材132内に上側拡張部材131が挿入され、下側拡張部材132の内面と上側拡張部材131の外面とが接する。そして、円筒形状の、上側拡張部材131と下側拡張部材132とは、図2で説明するように、周方向に沿って移動可能である。更に、筒状部材133は、上側拡張部材131内に挿入され、上側拡張部材131の内面と筒状部材133の外面とが接し、図2で説明するように、円筒形状の上側拡張部材131は、筒状部材133に対して周方向に移動可能である。
積層体110の外部から流入した被処理水は、上側シート状部材101及び下側シート状部材102によりろ過され、処理水として、上側拡張部材131、下側拡張部材132、筒状部材133の開口部を介して、筒状部材133の内面により画定されうる空間(以下、内部と記す)に流入する。その後、前記したように、この処理水は、ろ過体100の後段に配置された水処理装置の構成部、例えば、処理水流出管などに送出されてもよい。
なお、図1に示すXYZ座標系におけるX軸に一致する矢印の方向からろ過体100に流入した被処理水は、毛細管現象に従って積層体110内部を移動することができる。この際、処理水が筒状部材133の内部に効率的に流入するように、矢印と同じ方向の積層体110の端部には、処理水の流出又は被処理水の流入を防止可能な部材が設けられていてもよい。或いは、積層体110は、かかる部材を有さず、被処理水が図1に示すXYZ座標系におけるY軸方向からも積層体110に対して流入し、得られた処理水が筒状部材133の内部に流入するように構成されていてもよい。
【0014】
(洗浄)
図1のろ過体100により被処理水のろ過を継続すると、積層体110により分離された被処理水中の固形物が積層体110に蓄積し、ろ過効率が低下する。そこで、この固形物を除去するため、積層体110を洗浄する必要がある。この洗浄を容易にするろ過体100について図2を参照して説明する。
図2に、図1に示すろ過体の洗浄時の様子を説明するための概略図を示す。図2に矢印を付して示すように、上側拡張部材131及び下側拡張部材132は、上側支持部材121及び下側支持部材122のうちの少なくとも一つを移動させることにより、上側シート状部材101及び下側シート状部材102の間の面間距離を変更するように移動可能である。すなわち、上側拡張部材131及び下側拡張部材132を相対的に移動させることにより、上側支持部材121及び下側支持部材122間の相対距離を変更して、上側シート状部材101及び下側シート状部材102の間の面間距離を変更できる。
【0015】
より具体的には、(1)それぞれが円筒状である上側拡張部材131及び下側拡張部材132の双方を逆方向に回転移動させることにより、又は、(2)それぞれが円筒状である上側拡張部材131及び下側拡張部材132の少なくとも一方を時計回り方向又は反時計回り方向に回転移動させることにより、上側シート状部材101及び下側シート状部材102の間に空間を創出できる。
このように空間を創出することができるので、洗浄器具をこの空間に移動させて上側シート状部材101及び下側シート状部材102を洗浄しやすくなる。すなわち、ろ過体の洗浄が容易となる。なお、上側拡張部材131及び下側拡張部材132の構造及び配置態様は図示の態様に限定されない。また、上側拡張部材131及び下側拡張部材132は、例えば、配管により形成することができるが、これに限定されない。さらに、図示のように、上側拡張部材131の内面に当接するように筒状部材133が設けられていてもよい。
【0016】
図1及び図2に示したろ過体100においては、筒状部材133の内部が、処理水の流路又は貯蔵槽を形成し得る。しかし、ろ過体100が筒状部材133を備えない場合においては、上側拡張部材131の内面及び下側拡張部材132の内部が、処理水の流路又は貯蔵槽を形成してもよい。
【0017】
図3に、板状部材である支持部材によるシート状部材の支持態様の一例を示す。上側支持部材121に取り付けられた爪部材(Nk、kは1から4の整数)に対して、上側シート状部材101に備えられたU字型の部材(Ck)が係合することにより、上側シート状部材101が上側支持部材121に対して支持されている。
なお、上側支持部材121及び下側支持部材122が板状部材であれば、下側支持部材122、下側シート状部材102、上側シート状部材101、及び上側支持部材121が積層されている状態において、板状部材である両支持部材(121,122)により、両シート状部材(101,102)を支持しつつ固定できる。このようにして、上側支持部材121及び下側支持部材122は、上側シート状部材101及び下側シート状部材102のたわみを抑制できる。
【0018】
図1及び図2に示したろ過体100は、シート状部材を図面の上下方向に移動する構成を有し、この構成により、シート状部材のそれぞれの少なくとも一部に隣接する空間を拡張した。次に、図4図9を参照して、シート状部材を左右方向に移動することで、この空間を拡張するろ過体を説明する。
【0019】
[第2の実施形態]
図4A~Bに、第2の実施形態のろ過体200の構成を概略的に示す。図4Aは、ろ過時におけるろ過体200の積層状態を示す概略図であり、図4Bは、洗浄時におけるろ過体200の非積層状態を示す概略図である。図4Aに示すろ過体200は、複数枚のシート状部材(201~208)が積層された積層体210を備える。
【0020】
被処理水は、図4Aに示す矢印の方向からろ過体200に流入する。すなわち、図4A~Bに示すXYZ座標系のX軸方向は、図4A中矢印で示す被処理水の積層体に対する流入方向に一致する。なお、Y軸方向は、円筒状の中空部材として図示した左側拡張部材231及び右側拡張部材232の軸線方向(図中、軸線は、一点鎖線で図示する。)に一致する。さらに、Z軸方向は、積層体210の積層方向に一致する。
なお、明確のために、図4Aでは、8枚のシート状部材(201~208)の厚み及び間隙を誇張して図示した。実際のろ過体においては、シート状部材の厚みは薄く、且つシート状部材間の間隙は毛細管効果を呈し得る程度に狭くてよい。
【0021】
複数枚のシート状部材(201~208)のうち、積層体210の最上層に配置されたシート状部材201、及び積層体210の最下層に配置されたシート状部材208は、それぞれ、図5で図示する板状の支持部材により支持されている。言い換えると、積層体210の上面及び下面は板状の支持部材により構成されている。また、積層体210を構成する、その他のシート状部材(202~207)は、それぞれを側面側から支持する棒状部材である支持部材(222~227)により支持されている。棒状部材である支持部材(222~227)の一部、及び、図示しない板状の支持部材により支持されるシート状部材201及び208の一端部は、取付凹部234内に収容されている。図4Bでは、図示の都合上、右側拡張部材232に設けられた取付凹部234のみを図示しているが、左側拡張部材231にも取付凹部234と同様の機能を有する取付凹部が設けられている。
【0022】
そして、左側拡張部材231は支持部材(222~224)に対して接続されており、右側拡張部材232は支持部材(225~227)に対して接続されている。
なお、左側拡張部材231及び右側拡張部材232において、円筒の長軸方向に沿って長方形状の開口部(図示しない)を有している。積層体210の外部から流入した被処理水は、処理水として、この開口部を介して左側拡張部材231及び右側拡張部材232の内部に流入する。
また、積層体210の最上層に配置されたシート状部材201を支持する板状の支持部材(図示しない)は、左側拡張部材231に対して接続されており、積層体210の最下層に配置されたシート状部材208を支持する板状の支持部材(図示しない)は、右側拡張部材232に対して接続されている。したがって、図4Bに示すように、左側拡張部材231及び右側拡張部材232のうちの少なくとも一方を移動させて両者の間隔(後述する、Y軸方向における間隔)を広げることにより、複数枚のシート状部材(201~208)のそれぞれの少なくとも一部に隣接する空間を拡張できる。
【0023】
図4Bでは、明確のために、シート状部材205を支持する支持部材225、シート状部材206を支持する支持部材226、及びシート状部材207を支持する支持部材227を図示し、シート状部材(202~204)を支持する棒状の支持部材の図示は省略した。支持部材として棒状部材を採用することで、設計上、積層体を構成する支持部材の積層枚数の自由度が高まるとともに、ろ過体を軽量化できる。
【0024】
図4Bより明らかなように、左側拡張部材231及び右側拡張部材232が、Y軸方向、換言すれば、シート状部材(201~208)の表面に対して水平な方向にて相対的に逆方向に移動することで、積層体210中では隣接配置されていた8枚のシート状部材(201~208)のそれぞれについて、各表面に隣接していた空間が拡張される。これにより、8枚のシート状部材(201~208)の洗浄が一層容易となる。なお、拡張部材の構造及び配置態様は図示の態様に限定されない。ここで、本明細書において「シート状部材の表面に対して水平な方向」とは、シート状部材にたわみが生じていないと仮定した状態における、シート状部材の表面を基準とした水平方向を意味する。
【0025】
さらに、それぞれが中空部材である左側拡張部材231及び右側拡張部材232よりも内側に、第三の中空部材233が配置されていてもよい。かかる第三の中空部材233が端部にストッパー(図示しない。)を有しており、積層体210の洗浄時に左側拡張部材231及び右側拡張部材232を移動させた際に、第三の中空部材233から外れないように構成されていてもよい。なお、この場合、第三の中空部材233は、積層体210を経て流出してきたろ過水を流入させるための開口(図示しない。)を有している。
【0026】
なお、図4A~Bに示すろ過体200に関しては、8枚のシート状部材(201~208)を備える構成を例示して説明したが、勿論、本発明にかかるろ過体に含まれるシート状部材の枚数は、8枚に限定されない。さらに、本発明の他の例に係るろ過体では、例えば2枚のシート状部材が、図4A~Bに示したような左側拡張部材231及び右側拡張部材232の軸線方向に対して、斜めに配置されていてもよい。この場合における左側拡張部材及び右側拡張部材の接続部分は、2枚のシート状部材の配置方向と同じく、斜めである。
【0027】
図5は、図4A図4Bに示したXYZ座標系におけるY軸に沿って、ろ過体200を右側拡張部材232側から見た場合の側面図である。なお、図5では、ろ過体200のうちの一部を拡大図示した。図5において、破線で図示した部分は、図4A~Bにて示した、右側拡張部材232に設けられた取付凹部234内に収容されている部分である。なお、右側拡張部材232に設けられた取付凹部234内には、右側拡張部材232に対して、各軸部(225a~227a)を固定するための複数の軸固定部(図示しない)及び支持部材228を固定するための固定部(図示しない)と、左側拡張部材231の各軸部(222a~224a)及び支持部材221を長手方向に移動可能な態様で支持する複数の受け部(図示しない)とが備えられている。
また、図示しないが、左側拡張部材231にも同様の取付凹部が設けられている。すなわち、左側拡張部材231に設けられた取付凹部(図示しない)内には、左側拡張部材231に対して、各軸部(222a~224a)を固定するための複数の軸固定部(図示しない)及び支持部材221を固定するための固定部(図示しない)と、右側拡張部材232の各軸部(225a~227a)及び支持部材228を長手方向に移動可能な態様で支持する複数の受け部(図示しない)とが備えられている。
【0028】
支持部材(222~227)は、軸部(222a~227a)と取り付け部(222b~227b)とを、それぞれ備える。例えば、支持部材225は、軸部225aと、取付部225bとを備える。他の支持部材(222~224,226、及び227)についても同様である。そして、取付部225bに対してシート状部材205の側面が接着剤などを介して接着されるなどして、シート状部材205が側面側で支持部材225により支持された構造が形成される。他のシート状部材(222~224,226、及び227)についても同様である。なお、図5に示すシート状部材201は板状の支持部材221により支持されている。同様に、シート状部材208は板状の支持部材228により支持されている。この際の支持態様は、図3を参照して説明した態様に従うことができる。
【0029】
図6に、図5を参照して説明した一例にかかるシート状部材及び支持部材の上面図を示す。図6からわかるように、軸部225aとシート状部材205とは、取付部225bを介して接続されている。取付部225bは軸部225aの長手方向の一部に存在する。なお、明確のために、本図においては、軸部225aとシート状部材205との間の間隙を誇張図示したが、実際には、かかる間隔は狭くてよい。また、図示の態様に限定されず、取付部225bが軸部225aとシート状部材205との間の全域に存在してもよい。さらに、棒状である軸部225aの直径は、シート状部材205の厚みと同等以下であってもよい。
【0030】
また、図7に、他の一例にかかるシート状部材及び支持部材の構造の一例を示す。図7は、図4A~B、及び図5に示す積層体210に代えて適用することができる他の積層体の構造を説明するための概略図である。図7は、図4A~Bに示したXYZ座標系におけるX方向から見た正面図である。図7の上側では、左側拡張部材231及び右側拡張部材232の境界線は一点鎖線として図示する。図7の上側には、シート状部材(202’~207’)が相互に積層された積層状態にある場合の概略構造を示し、図7の下側には、左側拡張部材231及び右側拡張部材232を矢印の方向に移動させることにより、シート状部材(202’~207’)を積層状態から非積層状態に移行させた状態における概略構造を示す。
【0031】
図7に示すシート状部材(202’~207’)及び支持部材(240~243,250~253)は、図4に示す積層体210に代えて、適用することができる。図7においては、明瞭のために、シート状部材202’~207’の厚みを省略して図示する。シート状部材205’は、一対の端部が支持部材により支持されている。シート状部材205’を支持する支持部材は、受け側支持部材240と、差し込み側支持部材241とにより構成される。その他のシート状部材(202’~204’,206’~207’)についても同様の構造を有する。差し込み側支持部材(241~243,251~253)と、受け側支持部材(240,250)とは、図7の上側に示す積層状態においては、受け側支持部材(240,250)に対して、差し込み側支持部材(241~243,251~253)が差し込まれた状態で存在する。そして、図7の下側に示す非積層状態では、差し込み側支持部材(241~243,251~253)同士が互いに組み合わされた状態で存在する。言い換えると、差し込み側支持部材(241~243,251~253)同士が相互にストッパーとして機能して、シート状部材(205’~207’)と、シート状部材(202’~204’)とが洗浄時に外れないようにすることができる。このような構造とすることで、洗浄時におけるシート状部材(202’~207’)間の重複部分を少なくすることができ、シート状部材(202’~207’)の洗浄容易性を一層高めることができる。さらに、このような構造により、洗浄後に積層構造を復帰させる際に、容易に積層構造を形成することができるようになる。
【0032】
なお、図7に示したシート状部材(202’~207’)の端部が、硬質部材を有していてもよい。より具体的には、図7に示したシート状部材(202’~207’)の一対の端部が、硬質部材に対して接続されていてもよいし、硬質部材と一体化していてもよい。図8Aに、硬質部材(261,262)に対するシート状部材202’の一対の端部の接続態様の一例を示す。図8Aは、図7と同じ方向の正面図であり、硬質部材(261,262)に対して、シート状部材202’の端部が接続されている構造を示す。例えば、硬質部材(261,262)とシート状部材202’の各端部との接続部は、硬質部材(261,262)から突出した針状部材(図示しない。)に対してシート状部材202’が接着又は溶着されることにより形成されていてもよい。また、図8Bに、シート状部材202’の端部が硬質部材と一体化している態様の一例を示す。図8Bもまた図7と同じ方向の正面図である。図8Bに示したように、シート状部材202’の端部に対して樹脂等を含侵して硬化させて所望の形状の硬質部材(261,262)を形成することができる。以上、図8A及び図8Bを参照して説明したように、シート状部材202’の端部を、硬質部材(261,262)に対して接続する、または、硬質部材(261,262)と一体化させることにより、シート状部材202’に強度を付与することができ、繰り返し使用による劣化を抑制できる。
【0033】
そして、図8A~Bに例示したような構造を満たすシート状部材は、図7を参照して説明した構造と組み合わせた場合に、図8A~Bに示す硬質部材(261,262)のうちの一方が図7に示す差し込み側支持部材241として機能してもよい。さらに、図7に示す差し込み側支持部材241として機能する硬質部材とは逆側の端部に設けられた硬質部材が、図8Cに示すように、受け側支持部材250に対して、受け側支持部材250から突出した針状部材271を介して接続されていてもよい。かかる接続態様は、接着又は溶着であり得る。このような接続態様とすることで、積層体に強度を付与することができ、繰り返し使用による劣化を抑制できる。
【0034】
[第3の実施形態]
図9に、第3の実施形態のろ過体を概略的に示す。第2の実施形態では、拡張部材の形状が円筒であったが、第3の実施形態では、拡張部材の形状が長方形状の箱状である例について説明する。
図9に示すろ過体300は、複数枚のシート状部材(301,302)が積層された積層体310と、複数枚のシート状部材(301,302)のそれぞれを支持する支持部材(321,322)と、支持部材(321,322)のうちの少なくとも一つを移動させることにより、複数枚のシート状部材(301,302)のそれぞれの少なくとも一部に隣接する空間を拡張可能である拡張部材(331,332)とを備える。
【0035】
図9に示すろ過体300は、板状部材である上側支持部材321により支持された上側シート状部材301と、板状部材である下側支持部材322により支持された下側シート状部材302とを備えている。そして、上側支持部材321及び上側シート状部材301は、左側拡張部材331に対して接続され、下側支持部材322及び下側シート状部材302は、右側拡張部材332に対して接続されている。そして、左側拡張部材331及び右側拡張部材332が、図中矢印で示したように、上側シート状部材301及び下側シート状部材302の表面に対して水平な方向にて相互に逆方向に移動することにより、上側シート状部材301が図中左手奥方向に移動し、下側シート状部材302が図中右手前方向に移動する。このようにして、上側シート状部材301及び下側シート状部材302の表面に隣接していた空間が拡張される。これにより、上側シート状部材301及び下側シート状部材302の洗浄が一層容易となる。図示のように、左側拡張部材331及び右側拡張部材332は、直方体形状であってもよい。また、図示に限定されることなく、左側拡張部材及び右側拡張部材は筒状であってもよい。
第1~第3の実施の形態で説明したろ過体は、洗浄に際して、拡張部材により支持部材を移動させることにより複数枚のシート状部材の相互の空間を拡張できるため、容易に洗浄できる。さらに、拡張部材により支持部材を移動させることにより、複数枚のシート状部材間の空間を拡張するという構造を採用することにより、洗浄に際してシート状部材にかかる負担が少なく、シート状部材の劣化を抑制できる。
【0036】
[ろ過装置]
本発明のろ過装置は、上述した本発明のろ過体の何れかを備える。本発明のろ過体と同様の用途に好適に用いることができる。任意で、本発明のろ過装置は、ろ過体によりろ過された処理水を貯留する処理水貯留槽、及び、処理水貯留部に接続され処理水を装置外へ流出させる処理水流出管400(図9に示す。)、などの構造部を備えることができる。例えば、図9に示すように、ろ過体300は、処理水流出管400に接続されており、ろ過体300及び処理水流出管400を含むろ過装置を構成できる。本発明のろ過装置は本発明のろ過体を備えるため、洗浄容易性に優れる。
以上説明したろ過体は、汚泥等の固形分を含有する被処理水の処理施設において好適に採用されうる。中でも、本発明のろ過体は、上下水道の水処理工程で発生する被処理水を処理する際等に好適に用いることができる。本発明のろ過体は、既存の水処理装置に用いられているろ過部材に置換して、比較的容易に実装できる。
【符号の説明】
【0037】
100,200,300 ろ過体
101 上側シート状部材
102 下側シート状部材
110,210,310 積層体
121 上側支持部材
122 下側支持部材
131 上側拡張部材
132 下側拡張部材
133 筒状部材
201~208,202’~207’,301,302 シート状部材
221,228 板状の支持部材
225~227,321,322 支持部材
225a 軸部
225b 取付部
231,331 左側拡張部材
232,332 右側拡張部材
233 第三の中空部材
234 取付凹部
240,250 受け側支持部材
241~243,251~253 差し込み側支持部材
261,262 硬質部材
400 処理水流出管
C1~C4 U字型の部材
N1~N4 爪部材
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9