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特開2022-151189シューズ用ソール構造及びそれを備えたシューズ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151189
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】シューズ用ソール構造及びそれを備えたシューズ
(51)【国際特許分類】
   A43B 13/14 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
A43B13/14 Z
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021054140
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005935
【氏名又は名称】美津濃株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】串田 啓介
(72)【発明者】
【氏名】藤井 まりあ
(72)【発明者】
【氏名】中村 勉
【テーマコード(参考)】
4F050
【Fターム(参考)】
4F050BA56
(57)【要約】
【課題】初期接地時にシューズ着用者の足裏に作用する初期衝撃を低減する。
【解決手段】ソール構造1は、前足部領域から後足部領域に亘って延び、上面がシューズ着用者の足裏を支持する足裏支持面となるミッドソール20を備えている。ミッドソール20は、少なくとも後足部領域に設けられる弾性材からなる上部ミッドソール21と、上部ミッドソール21の下側の少なくとも後端部に設けられる上部ミッドソール21よりも硬度が低い弾性材からなる下部ミッドソール22とを有している。上部ミッドソール21の下面は、上部ミッドソール21の後端部において外甲側端部から足幅方向に延び、外甲側から内甲側に向かう程、下方に位置する傾斜面部21Aを有している。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前足部領域から後足部領域に亘って延び、上面がシューズ着用者の足裏を支持する足裏支持面となるミッドソールを備え、
上記ミッドソールは、
少なくとも上記後足部領域に設けられる弾性材からなる上部ミッドソールと、
上記上部ミッドソールの下側の少なくとも後端部に設けられる上記上部ミッドソールよりも硬度が低い弾性材からなる下部ミッドソールとを有し、
上記上部ミッドソールの下面は、該上部ミッドソールの後端部において外甲側端部から足幅方向に延び、外甲側から内甲側に向かう程、下方に位置する傾斜面部を有している
シューズ用ソール構造。
【請求項2】
請求項1に記載のシューズ用ソール構造において、
上記傾斜面部は、上記上部ミッドソールの下面の後端部において、上記外甲側端部から足幅方向の中央位置まで延びている
シューズ用ソール構造。
【請求項3】
請求項1に記載のシューズ用ソール構造において、
上記傾斜面部は、上記上部ミッドソールの下面の後端部において、上記外甲側端部から足幅方向の中央よりも内甲側の位置まで延びている
シューズ用ソール構造。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載のシューズ用ソール構造において、
上記上部ミッドソールの下面は、上記傾斜面部の前側に設けられ、下方へ膨らむ凸面部と上方へ凹む凹面部とが前後方向に交互に連続する波形面部を有している
シューズ用ソール構造。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載のシューズ用ソール構造において、
上記上部ミッドソールと上記下部ミッドソールとの間には、上記上部ミッドソールよりも硬度が高い弾性材からなるプレートが設けられ、
上記プレートは、該プレートの後端部において上記上部ミッドソールの上記傾斜面部に対応して外甲側端部から足幅方向に延び、外甲側から内甲側に向かう程、下方に位置する傾斜部を有している
シューズ用ソール構造。
【請求項6】
請求項5に記載のシューズ用ソール構造において、
上記プレートは、上記傾斜部の前側に設けられ、下方へ膨らむ下湾曲部と上方へ膨らむ上湾曲部とが前後方向に交互に連続する波形部を有している
ことを特徴とするシューズ用ソール構造。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1つに記載のシューズ用ソール構造を備えるシューズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シューズ用ソール構造及びそれを備えたシューズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、弾性材からなるミッドソールと、該ミッドソールの下面に貼り合わされたアウトソールとを主な構成要素とするシューズ用ソール構造が一般に広く知られている。
【0003】
特許文献1には、前足部と後足部とに分割されたアウトソールと、アウトソールの上方に前足部から後足部に亘って積層配置された弾性材からなるミッドソールとを備えたシューズ用のソール構造が開示されている。上記ソール構造では、ミッドソールの踏まず部の下面に樹脂板を設けることにより、ミッドソールの踏まず部での変形を抑制してシューズ着用者の足にかかる負担を軽減するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-333707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一般的に、歩行中の人の足は、足裏が外下がりに傾いた状態(外甲側が内甲側より低い状態)で踵から接地する。従来のソール構造では、シューズを平坦面に載置した際に、シューズ着用者の足裏を支持するミッドソールの下面が載置面に略平行であるため、初期接地時に反作用として路面から受ける上向きの力が、ソール構造の後端部の外甲側端部に集中してしまい、シューズ着用者の足裏に与える初期衝撃が大きなものとなっていた。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、初期接地時にシューズ着用者の足裏に作用する初期衝撃を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の形態は、前足部領域から後足部領域に亘って延び、上面がシューズ着用者の足裏を支持する足裏支持面となるミッドソールを備え、上記ミッドソールは、少なくとも上記後足部領域に設けられる弾性材からなる上部ミッドソールと、上記上部ミッドソールの下側の少なくとも後端部に設けられる上記上部ミッドソールよりも硬度が低い弾性材からなる下部ミッドソールとを有し、上記上部ミッドソールの下面は、該上部ミッドソールの後端部において外甲側端部から足幅方向に延び、外甲側から内甲側に向かう程、下方に位置する傾斜面部を有しているものである。
【0008】
第1の形態のソール構造では、ミッドソールを、上部ミッドソールと、該上部ミッドソールの下方の少なくとも後端部に設けられた上部ミッドソールよりも柔らかい下部ミッドソールとで構成している。そのため、シューズが踵部から接地する際に、後端部では、柔らかい下部ミッドソールが、下部ミッドソールよりも硬い上部ミッドソールの下面によって下方に押し付けられて歪む。このように下部ミッドソールが歪むことにより、初期接地時に反作用として路面からソール構造を介してシューズ着用者の足裏に作用する初期衝撃を低減することができる。
【0009】
また、第1の形態のソール構造では、上部ミッドソールの下面の後端部に、外甲側端部から足幅方向に延びる内下がりの傾斜面部を設けることとしている。内下がりの傾斜面部は、初期接地時には、シューズ着用者の足が外下がりに傾くことにより、路面に略平行な姿勢となる。そのため、上記ソール構造では、初期接地時に反作用として路面から受ける上向きの力を路面に略平行な傾斜面部で受け止めることができ、反作用力を傾斜面部で分散させることができる。よって、上記ソール構造によれば、このような構成によっても、初期接地時に反作用として路面からソール構造を介してシューズ着用者の足裏に作用する初期衝撃を低減することができる。
【0010】
また、第1の形態のソール構造では、上述のように傾斜面部を形成することにより、最初に路面に当接する後端部の外甲側端部で、上部ミッドソールよりも柔らかい下部ミッドソールが最も分厚くなり、クッション性が向上する。従って、第1の形態によれば、このような構成によっても、初期接地時に反作用として路面からソール構造を介してシューズ着用者の足裏に作用する初期衝撃を低減することができる。
【0011】
さらに、第1の形態のソール構造では、上述のように傾斜面部を形成することにより、後端部の内甲側において上部ミッドソールが外甲側よりも分厚く形成される。これにより、初期接地時に外下がりに傾いていたシューズ着用者の足裏が路面に平行になるときに、シューズ着用者の荷重が硬い上部ミッドソールの分厚い内甲側の部分によって支持されるため、シューズ着用者の足が内甲側に倒れ込むプロネーションを抑制することができる。
【0012】
第2の形態は、第1の形態において、上記傾斜面部は、上記上部ミッドソールの下面の後端部において、上記外甲側端部から足幅方向の中央位置まで延びているものである。
【0013】
第2の形態のソール構造では、傾斜面部の足幅方向の範囲を、外甲側端部から足幅方向の中央位置までとしている。このように、上部ミッドソールの下面の後端部の足幅方向の全域に亘って傾斜面部とするのではなく、外甲側端部から足幅方向の中央位置までの範囲に限ることにより、下部ミッドソールの内甲側の部分が薄くなり過ぎないため、ソール構造の内甲側のクッション性を向上させることができる。
【0014】
第3の形態は、第1の形態において、上記傾斜面部は、上記上部ミッドソールの下面の後端部において、上記外甲側端部から足幅方向の中央よりも内甲側の位置まで延びているものである。
【0015】
第3の形態のソール構造では、傾斜面部を、外甲側端部から足幅方向の中央位置を超えるように足幅方向に長く形成している。このように、傾斜面部を足幅方向に長く形成することにより、初期接地時に路面から受ける上向きの力を傾斜面部でより分散させることができるため、初期接地時に反作用として路面からソール構造を介してシューズ着用者の足裏に作用する初期衝撃をより低減することができる。
【0016】
第4の形態は、第1~第3のいずれか1つの形態において、上記上部ミッドソールの下面は、上記傾斜面部の前側に設けられ、下方へ膨らむ凸面部と上方へ凹む凹面部とが前後方向に交互に連続する波形面部を有しているものである。
【0017】
第4の形態のソール構造では、上部ミッドソールの下面が、傾斜面部の前側に波形面部を有している。このように波形面部に形成された部分では、前後方向に硬度の異なる上部ミッドソールと下部ミッドソールとが交互に並ぶ。そのため、上記ソール構造では、初期接地後に路面に当接する部分(後端部より前側の部分)について、柔らかい下部ミッドソールによってある程度のクッション性を担保しつつ、硬い上部ミッドソールによって足幅方向の曲げ剛性を増大させることができる。よって、上記ソール構造によれば、初期接地後にも路面からシューズ着用者の足裏に作用する衝撃を低減することができ、さらに、横振れを抑制することもできる。
【0018】
第5の形態は、第1~第4のいずれか1つの形態において、上記上部ミッドソールと上記下部ミッドソールとの間には、上記上部ミッドソールよりも硬度が高い弾性材からなるプレートが設けられ、上記プレートは、該プレートの後端部において上記上部ミッドソールの上記傾斜面部に対応して外甲側端部から足幅方向に延び、外甲側から内甲側に向かう程、下方に位置する傾斜部を有しているものである。
【0019】
第5の形態のソール構造では、上部ミッドソールと下部ミッドソールとの間に、上部ミッドソールよりも硬度の高い弾性材からなるプレートが設けられている。そして、プレートは、上部ミッドソールの傾斜面部に対応する内下がり形状の傾斜部を有している。このような構成によれば、上部ミッドソールよりも硬度の高いプレートの傾斜部により、初期接地時に下部ミッドソールの変形(歪み)がより促される。よって、初期接地時の初期衝撃をより低減することができる。
【0020】
第6の形態は、第5の形態において、上記プレートは、上記傾斜部の前側に設けられ、下方へ膨らむ下湾曲部と上方へ膨らむ上湾曲部とが前後方向に交互に連続する波形部を有しているものである。
【0021】
第6の形態のソール構造では、プレートが、傾斜部の前側に波形部を有している。プレートの波形部では、前後方向に硬度の異なる上部ミッドソールと下部ミッドソールとが交互に並ぶ。そのため、上記ソール構造では、初期接地後に路面に当接する部分(後端部より前側の部分)について、柔らかい下部ミッドソールによってある程度のクッション性を担保しつつ、硬い上部ミッドソールによって足幅方向の曲げ剛性を増大させることができる。よって、上記ソール構造によれば、初期接地後にも路面からシューズ着用者の足裏に作用する衝撃を低減することができ、さらに、横振れを抑制することもできる。
【0022】
第7の形態は、第1~第6のいずれか1つの形態のシューズ用ソール構造を備えるシューズである。
【0023】
第7の形態によれば、上記第1乃至第6の形態と同様の作用効果を奏するシューズを得ることができる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明によると、初期接地時にシューズ着用者の足裏に作用する初期衝撃を低減することができるシューズ用ソール構造及びそれを備えたシューズを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、実施形態1のソール構造を備えたシューズの斜視図である。
図2図2は、実施形態1のソール構造の分解斜視図である。
図3図3は、実施形態1のソール構造の底面図である。
図4図4は、実施形態1のソール構造を内甲側から視た側面図である。
図5図5は、実施形態1のソール構造を外甲側から視た側面図である。
図6図6は、図3のVI-VI線断面図である。
図7図7は、図3のVII-VII線断面図である。
図8図8は、実施形態1のソール構造の補強部の帯状部分の形状を示す図であり、図8(A)は下側帯状部分を示し、図8(B)は上側帯状部分を示している。
図9図9は、実施形態1のソール構造の背面図である。
図10図10は、図3のX-X線断面図である。
図11図11は、図3のXI-XI線断面図である。
図12図12は、図3のXII-XII線断面図である。
図13図13は、実施形態1の変形例1のソール構造における図6相当図である。
図14図14は、実施形態1の変形例1のソール構造における図10相当図である。
図15図15は、実施形態2のソール構造における図10相当図である。
図16図16は、実施形態3のソール構造における図10相当図である。
図17図17は、実施形態4のソール構造における図10相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態は、本質的に好ましい例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0027】
《発明の実施形態1》
図1は、本発明の実施形態1に係るシューズSの左足側部分のみを示している。なお、本発明に係るシューズは、日常使用のスニーカーや各種スポーツ競技者に着用されるスポーツシューズに適用可能であるが、ここでは、歩行用のシューズSについて説明する。
【0028】
シューズSは、図1に示す左足側部分と、この左足側部分と左右対称形状の右足側部分(図示省略)とで構成されている。以下の説明では、シューズSの左足側部分とそのソール構造1のみについて説明し、シューズSの右脚側部分とそのソール構造1についての説明を省略する。
【0029】
また、以下の説明では、上方(上側)及び下方(下側)とは、シューズS及びソール構造1の上下方向の位置関係(シューズS及びソール構造1を平坦面の上に載置したときの載置面に直交する高さ方向の位置関係)を表すものとする。前方(前側)及び後方(後側)とは、シューズS及びソール構造1の足長方向の位置関係を表すものとする。内甲側及び外甲側とは、シューズS及びソール構造1の足幅方向の位置関係を表すものとする。
【0030】
また、以下の説明では、「略平行な面」は、大部分が平行な面であればよく、端部が若干湾曲したものも含む。
【0031】
さらに、図6では、シューズ着用者の足の前足部(基節骨、中節骨及び末節骨を含む部分)に対応するシューズSの前足部領域を符号Fにより示し、シューズ着用者の足の中足部(立方骨、舟状骨、楔状骨及び中足骨を含む部分)に対応するシューズSの中足部領域を符号Mにより示し、シューズ着用者の足の後足部(踵骨及び距骨を含む部分)に対応するシューズSの後足部領域を符号Hにより示すものとする。
【0032】
シューズSは、ソール構造1と、その上に配置されるアッパー(甲被部)2とを備えている。アッパー2は、図1において二点鎖線で外形のみを示しているが、シューズ着用者の足の甲を被覆できるものであればいかなる形態であってもよい。
【0033】
〈ソール構造〉
図1図6に示すように、ソール構造1は、アウトソール10と、ミッドソール20と、プレート30とを備えている。
【0034】
[アウトソール]
アウトソール10は、ソール構造1の前端から後端に亘る(前足部領域Fから後足部領域H(踵部)に亘る)範囲に設けられている。アウトソール10は、後述するミッドソール20よりも硬度の高い硬質の弾性材によって構成されている。具体的には、アウトソール10の材料としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等の熱可塑性樹脂、ポリウレタン(PU)等の熱硬化性樹脂、又はブタジエンラバーやクロロプレンラバー等のラバー素材が適している。アウトソール10の硬度は、ショアAスケールで、例えば、40A~90A(より好ましくは、60A~70A)に設定されているのが好ましい。
【0035】
アウトソール10は、前部アウトソール10aと、前部アウトソール10aとは分離されて前部アウトソール10aの後側に設けられた後部アウトソール10bとを有している。前部アウトソール10aは、前足部領域Fから中足部領域Mの前部までの足幅方向の全範囲と、足幅方向の外甲側において中足部領域Mの後部から後足部領域Hの前部に亘る範囲とを支持する。一方、後部アウトソール10bは、平面視において馬蹄形状に形成され、内甲側では中足部領域Mの後端部から後足部領域Hの後端まで、外甲側では後足部領域Hの前部から後端までの範囲を支持する。
【0036】
このようにミッドソール20よりも硬度の高い硬質の弾性材によって構成されたアウトソール10の下面が、歩行時又は走行時に路面に接地する接地面となる。
【0037】
[ミッドソール]
ミッドソール20は、図4図6に示すように、ソール構造1の前端から後端に亘る(前足部領域Fから後足部領域H(踵部)に亘る)範囲に設けられている。ミッドソール20は、アウトソール10よりも硬度が低い軟質の弾性材によって形成されている。具体的には、ミッドソール20の材料としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等の熱可塑性合成樹脂やその発泡体、ポリウレタン(PU)等の熱硬化性樹脂やその発泡体、ブタジエンラバーやクロロプレンラバー等のラバー素材やその発泡体等が適している。ミッドソール20は、接着剤等によってアウトソール10に固着されることにより、アウトソール10の上側に積層されている。
【0038】
ミッドソール20は、上下に分離されている。具体的には、ミッドソール20は、上部ミッドソール21と、上部ミッドソール21の下側に設けられる下部ミッドソール22とを有している。
【0039】
上部ミッドソール21は、ソール構造1の前後方向の前端から後端に亘り(前足部領域Fから後足部領域H(踵部)に亘り)、また、ソール構造1の足幅方向の内甲端から外甲端に亘る全範囲に設けられている。上部ミッドソール21の上面は、シューズ着用者の足の足裏面に沿うように湾曲形状に形成され、インソール(図示省略)を介してシューズ着用者の足の足裏面を支持する足裏支持面となる。上部ミッドソール21の上面に、アッパー2が固定されている。また、上部ミッドソール21の下面は、前半部分は、接着剤等によって前部アウトソール10aの上面に固着され、後半部分は、後述するプレート30の上面に固着されている。つまり、上部ミッドソール21は、前半部分はアウトソール10の上側に積層され、後半部分はプレート30の上側に積層されている。
【0040】
図2及び図6に示すように、上部ミッドソール21の下面は、後端部において足幅方向に延びて内下がりに傾斜した(外甲側から内甲側に向かう程、下方に位置する)傾斜面部21Aと、該傾斜面部21Aよりも前側において波形形状の波形面部21Bとを有している。傾斜面部21Aと波形面部21Bの詳細な構成については後述する。
【0041】
下部ミッドソール22は、平面視において馬蹄形状に形成され、中足部領域Mの後端部から後足部領域Hの後端までの範囲に設けられている。下部ミッドソール22は、上面が接着剤等によって後述するプレート30の下面に固着されている。また、下部ミッドソール22は、下面が接着剤等により、内甲側では後部アウトソール10bに固着され、外甲側では前部アウトソール10aの後端部と後部アウトソール10bとに固着されることにより、アウトソール10の上側に積層されている。
【0042】
図2及び図6に示すように、下部ミッドソール22の上面は、後端部において足幅方向に延びて内下がりに傾斜した(外甲側から内甲側に向かう程、下方に位置する)傾斜面部22Aと、該傾斜面部22Aよりも前側において波形形状の波形面部22Bとを有している。傾斜面部22Aと波形面部22Bの詳細な構成については後述する。
【0043】
上部ミッドソール21と下部ミッドソール22とは、硬度の異なる材料で構成されている。下部ミッドソール22は、上部ミッドソール21よりも硬度の低い材料で構成されている。具体的には、上部ミッドソール21は、アスカーCスケールで、例えば、47C~78Cの範囲内の硬度に設定されているのが好ましく、下部ミッドソール22は、アスカーCスケールで、例えば、47C~78Cの範囲内で上部ミッドソール21よりも低い硬度に設定されているのが好ましい。このように下部ミッドソール22を、上部ミッドソール21よりも硬度の低い柔らかい弾性材で形成することにより、下部ミッドソール22は、着地時において、特にシューズ着用者の足の踵部(図6に示した踵骨HL)に対する鉛直方向の衝撃を緩和することが可能となる。
【0044】
[プレート]
図4図6に示すように、プレート30は、ソール構造1の中足部領域Mの前後方向の中程の位置(前後方向の中央よりも前側の位置)から後端までの範囲に設けられている。また、プレート30は、足幅方向においてミッドソール20の内甲側端部から外甲側端部に亘る範囲に設けられている。
【0045】
図2及び図6に示すように、プレート30は、ソール構造1を平坦面の上に載置したときに載置面に対して内下がりに傾斜した(外甲側から内甲側に向かう程、下方に位置する)傾斜部31と、該傾斜部31よりも前側において波形形状の波形部32とを有している。傾斜部31と波形部32の詳細な構成については後述する。
【0046】
プレート30は、ミッドソール20よりも硬度の高い(上部ミッドソール21よりも硬度の高い)弾性材によって薄板状に形成されている。具体的には、プレート30の材料としては、例えば、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリアミドエラストマー(PAE)、ポリアミド等の熱可塑性合成樹脂や、これらの樹脂にグラスファイバー、カーボンファイバー等の繊維材料を添加したものが適している。また、プレート30は、上述の熱可塑性樹脂材料(繊維材料が添加されたものを含む)を射出成形することによって得られる射出成形物である。プレート30の曲げ弾性率は、例えば、100MPa~400MPa(具体的には、390MPa)に設定されているのが好ましい。
【0047】
なお、プレート30は、熱硬化性の繊維強化プラスチック材を熱プレス成形することによって得られる熱プレス成形物であってもよく、熱可塑性の繊維強化プラスチック材又は樹脂シート材を熱プレス成形することによって得られる熱プレス成形物であってもよい。
【0048】
プレート30の上面は、接着剤等により、上部ミッドソール21の下面に固着されている。一方、プレート30の下面は、接着剤等により、前端部は前部アウトソール10aの上面に固着され、前後方向の中程の部分は、外甲側のみが前部アウトソール10aの上面に固着され、後半部分は馬蹄形状の下部ミッドソール22の上面に固着されている。このような構成により、プレート30は、前端部は、前部アウトソール10aの上側に位置し、中足部領域Mの後部から後端までの範囲(概ね後足部領域H)では、柔らかい下部ミッドソール22の上側に位置し、上部ミッドソール21と下部ミッドソール22との間に挟まれる。また、プレート30の内甲側の前後方向の中程の部分及び中足部領域Mから後足部領域Hに亘る足幅方向の中程の部分は、下側に何も設けられず、下面が露出した露出部分となる。
【0049】
〈ミッドソール及びプレートの詳細な構成〉
上述したように、上部ミッドソール21の下面と下部ミッドソール22の上面とは、傾斜面部21A,22Aと、該傾斜面部21A,22Aの前側に連続する波形面部21B,22Bとをそれぞれ有している。また、プレート30は、傾斜部31と、傾斜部31の前側に連続する波形部32とを有している。
【0050】
図4図6図9~12に示すように、上部ミッドソール21とプレート30と下部ミッドソール22とは、上方から下方へこの順に積層されている。プレート30の傾斜部31と波形部32の上面は、上部ミッドソール21の傾斜面部21Aと波形面部21Bにそれぞれ当接している。また、プレート30の傾斜部31と波形部32の下面は、下部ミッドソール22の傾斜面部22Aと波形面部22Bにそれぞれ当接している。以下、上部ミッドソール21の傾斜面部21A及び波形面部21B、プレート30の傾斜部31及び波形部32、下部ミッドソール22の傾斜面部22A及び波形面部22Bについてそれぞれ詳述する。
【0051】
図9及び図10に示すように、上部ミッドソール21の傾斜面部21Aは、上部ミッドソール21の後端部において外甲側端部から足幅方向に延び、外甲側から内甲側に向かう程、下方に位置するように傾斜している。本実施形態1では、傾斜面部21Aは、上部ミッドソール21の下面の後端部の足幅方向の外甲側端から内甲側端までの範囲(足幅方向の全範囲)に形成されている。つまり、上部ミッドソール21の下面の後端部全体が、傾斜面部21Aで構成されている。
【0052】
図4図6図11及び図12に示すように、上部ミッドソール21の波形面部21Bは、上部ミッドソール21の傾斜面部21Aの前側に連続して形成され、傾斜面部21Aの前端から中足部領域Mの前後方向の中程の位置(プレート30の前端の位置)まで延びている。波形面部21Bは、下方へ膨らむ凸面部21B1と上方へ凹む凹面部21B2とが前後方向に交互に連続することによって形成されている。凸面部21B1と凹面部21B2とは、それぞれ足幅方向に延び、外甲側端部から内甲側端部に亘る範囲に形成されている。本実施形態1では、波形面部21Bは、凸面部21B1と凹面部21B2を2つずつ有している。具体的には、上部ミッドソール21の傾斜面部21Aの前側には、凸面部21B1、凹面部21B2、凸面部21B1、凹面部21B2が、この順に連続して形成されている。
【0053】
図4図6図9及び図10に示すように、プレート30の傾斜部31は、上部ミッドソール21の傾斜面部21Aに対応する形状に形成され、上面が傾斜面部21Aに当接している。具体的には、傾斜部31は、後端部において外甲側端部から足幅方向に延び、ソール構造1を平坦面の上に載置したときに載置面に対して傾斜している。具体的には、傾斜部31は、後端部において外甲側端部から足幅方向に延び、外甲側から内甲側に向かう程、下方に位置する。本実施形態1では、傾斜部31は、プレート30の後端部の足幅方向の外甲側端から内甲側端までの範囲(足幅方向の全範囲)に設けられている。つまり、プレート30の後端部全体が、傾斜部31で構成されている。
【0054】
図4図6図11及び図12に示すように、プレート30の波形部32は、傾斜部31の前側に連続して形成され、傾斜部31の前端から中足部領域Mの前後方向の中程の位置(プレート30の前端の位置)まで延びている。波形部32は、上部ミッドソール21の波形面部21Bに対応する形状に形成され、上面が波形面部21Bに当接している。波形部32は、下方へ膨らむ下湾曲部32aと上方へ膨らむ上湾曲部32bとが前後方向に交互に連続することによって形成されている。下湾曲部32aと上湾曲部32bとは、それぞれ足幅方向に延び、外甲側端部から内甲側端部に亘る範囲に形成されている。本実施形態1では、波形部32は、下湾曲部32aと上湾曲部32bを2つずつ有している。具体的には、プレート30の傾斜部31の前側には、下湾曲部32a、上湾曲部32b、下湾曲部32a、上湾曲部32bが、この順に連続して形成されている。波形部32の下湾曲部32aには、上部ミッドソール21の対応する凸面部21B1が当接し、上湾曲部32bには、上部ミッドソール21の対応する凹面部21B2が当接している。
【0055】
また、図3図7及び図12に示すように、プレート30の波形部32の前後方向の端部を除く足幅方向の中程の部分(露出部分)は、横振れを抑制するために足幅方向の曲げ剛性を高めた補強部33に構成されている。具体的には、補強部33は、前方内甲側から後方外甲側へ延びる複数の下側帯状部分33a,…,33aと複数の上側帯状部分33b,…,33bとによって構成されている。下側帯状部分33aと上側帯状部分33bは、補強部33において前後方向に交互に設けられている。前後方向に交互に並ぶ複数の下側帯状部分33a,…,33aと複数の上側帯状部分33b,…,33bとは、長さ方向の両端部(内甲側端部と外甲側端部)で連結されている。
【0056】
図8(A)に示すように、複数の下側帯状部分33a,…,33aは、長さ方向の中程が下方へ膨らむ湾曲形状に形成されている。一方、図8(B)に示すように、複数の上側帯状部分33b,…,33bは、長さ方向の一端から他端に亘り、高さが変化しない平坦形状に形成されている。また、下側帯状部分33aは、上側帯状部分33bよりも幅広に形成されている。
【0057】
以上により、補強部33では、湾曲形状で幅広の下側帯状部分33aと平坦形状で幅狭の上側帯状部分33bとが前後方向に交互に並ぶこととなる。このような構成により、補強部33では、足幅方向の曲げ剛性が増大し、足幅方向に撓み難くなる。よって、補強部33を設けることにより、横振れが抑制される。一方、補強部33では、下側帯状部分33aと上側帯状部分33bとが分離されていることにより、前後方向の曲げ剛性は低下し、前後方向に撓み易くなる。よって、補強部33を設けることにより、プレート30が中足部領域Mから後足部領域Hにおいて大きく撓り易くなる。
【0058】
図4図6図9及び図10に示すように、下部ミッドソール22の傾斜面部22Aは、プレート30の傾斜部31に対応する形状に形成され、上面が傾斜部31に当接している。具体的には、下部ミッドソール22の後端部において外甲側端部から足幅方向に延び、外甲側から内甲側に向かう程、下方に位置するように傾斜している。本実施形態1では、傾斜面部22Aは、下部ミッドソール22の上面の後端部の足幅方向の外甲側端から内甲側端までの範囲(足幅方向の全範囲)に形成されている。つまり、下部ミッドソール22の上面の後端部全体が、傾斜面部22Aで構成されている。傾斜面部22Aは、プレート30の傾斜部31の下側において該傾斜部31の下面に当接して足幅方向に延びている。
【0059】
図4図6図11及び図12に示すように、下部ミッドソール22の波形面部22Bは、傾斜面部22Aの前側に連続して形成され、傾斜面部22Aの前端から中足部領域Mの後端部(下部ミッドソール22の前端)まで延びている。波形面部22Bは、下方へ凹む凹面部22B1と上方へ膨らむ凸面部22B2とが前後方向に交互に連続することによって形成されている。凹面部22B1と凸面部22B2とは、それぞれ足幅方向に延び、外甲側端部から内甲側端部に亘る範囲に形成されている。本実施形態1では、波形面部22Bは、2つの凹面部22B1と1つの凸面部22B2とを有している。具体的には、上部ミッドソール21の傾斜面部22Aの前側には、凹面部22B1、凸面部22B2、凹面部22B1が、この順に連続して形成されている。波形面部22Bの凹面部22B1には、プレート30の対応する下湾曲部32aの下面が当接し、凸面部22B2には、プレート30の対応する上湾曲部32bの下面が当接している。
【0060】
〈ミッドソール及びプレートによる作用〉
以上のような構成により、ソール構造1の後端部では、プレート30の傾斜部31により、上部ミッドソール21の下面と下部ミッドソール22の上面とが、プレート30の傾斜部31と同様に、外甲側から内甲側に向かう程、下方に位置する内下がり形状に形成される。そのため、ソール構造1の後端部では、上部ミッドソール21は、内甲側が外甲側よりも分厚くなり、下部ミッドソール22は、外甲側が内甲側よりも分厚くなる。
【0061】
ところで、初期接地時に、人の足裏が外下がりに傾いているために、反作用として路面から受ける上向きの力がソール構造1の後端部の外甲側端部に集中する。これに対し、本実施形態1では、ソール構造1の後端部の外甲側において柔らかい下部ミッドソール22を分厚く形成することにより、応力が集中する後端部の外甲側のクッション性を向上させている。本実施形態1では、このように構成することにより、初期接地時に反作用として路面からソール構造1を介してシューズ着用者の足裏に作用する初期衝撃が低減されるようにしている。
【0062】
また、ソール構造1の後端部の内甲側のクッション性が高すぎると、初期接地後、シューズ着用者の足裏が路面に平行になってソール構造1の後端部が全体的に路面に当接する際に、内甲側が必要以上に下方に沈み込み、シューズ着用者の足が内甲側に倒れ込むプロネーションが生じる虞がある。これに対し、本実施形態1では、ソール構造1の後端部の内甲側において硬い上部ミッドソール21を分厚く形成することにより、初期接地後、シューズ着用者の足裏が路面に平行になるときに、シューズ着用者の荷重が硬い上部ミッドソールの分厚い内甲側の部分によって支持されるようにしている。本実施形態1では、これにより、プロネーションが抑制されるようにしている。
【0063】
また、本実施形態1では、初期接地時に人の足裏が外下がりに傾くことに鑑みて、上部ミッドソール21の下面の後端部に、外甲側端部から足幅方向に延びて内下がりに傾斜する傾斜面部21Aを設けている。初期接地時に、内下がりの傾斜面部21Aは、シューズ着用者の足が外下がりに傾くことにより、路面に略平行な姿勢となる。よって、本実施形態1のソール構造1では、初期接地時に路面から受ける上向きの力が、上部ミッドソール21の傾斜面部21Aで分散され、シューズ着用者の足裏の踵の外甲側端部に集中的に作用しなくなる。本実施形態1では、このように構成することによっても、初期接地時に反作用として路面からソール構造1を介してシューズ着用者の足裏に作用する初期衝撃が低減されるようにしている。
【0064】
また、本実施形態1では、上述のように、ソール構造1の後端部の上部ミッドソール21の傾斜面部21Aと下部ミッドソール22の傾斜面部22Aとの間に、上部ミッドソール21よりも硬度の高い材料で構成されたプレート30の内下がり形状の傾斜部31が設けられている。そのため、初期接地時に、上部ミッドソール21よりも硬度の高いプレート30の傾斜部31により、下部ミッドソール22の変形(歪み)がより促される。本実施形態1では、このように構成することにより、初期接地時に反作用として路面からソール構造1を介してシューズ着用者の足裏に作用する初期衝撃がより低減されるようにしている。
【0065】
また、ソール構造1のプレート30の傾斜部31の前端から中足部領域Mの前後方向の中程の位置までの範囲では、プレート30の波形部32により、上部ミッドソール21の下面と下部ミッドソール22の上面とが、後方から前方に向かって上下に波打った波形形状に形成される。ソール構造1のプレート30の波形部32が設けられた部分では、前後方向に硬度の異なる上部ミッドソール21と下部ミッドソール22とが交互に並ぶこととなる。そのため、当該部分を、上部ミッドソール21のみで形成した場合に比べて、柔らかい下部ミッドソール22が存在することによってクッション性が向上する。また、当該部分を、下部ミッドソール22のみで形成した場合に比べて、硬い上部ミッドソール21によって足幅方向の曲げ剛性が増大する。本実施形態1では、このように、初期接地後に路面に当接する部分(後端部より前側の部分)についても、ある程度のクッション性を担保しつつ、足幅方向の曲げ剛性が増大するように構成することにより、初期接地後も路面からシューズ着用者の足裏に作用する衝撃が低減され、横振れが抑制されるようにしている。
【0066】
-実施形態1の効果-
以上のように、本実施形態1のソール構造1では、ミッドソール20を、上部ミッドソール21と、上部ミッドソール21の下方の少なくとも後端部に設けられた上部ミッドソール21よりも柔らかい下部ミッドソール22とで構成している。そのため、シューズSが踵部から接地する際に、後端部では、柔らかい下部ミッドソール22が、下部ミッドソール22よりも硬い上部ミッドソール21の下面によって下方に押し付けられて歪む。このように下部ミッドソール22が歪むことにより、初期接地時に反作用として路面からソール構造1を介してシューズ着用者の足裏に作用する初期衝撃を低減することができる。
【0067】
また、本実施形態1のソール構造1では、上部ミッドソール21の下面の後端部に、外甲側端部から足幅方向に延びる内下がりの傾斜面部21Aを設けることとしている。内下がりの傾斜面部21Aは、初期接地時には、シューズ着用者の足が外下がりに傾くことにより、路面に略平行な姿勢となる。そのため、上記ソール構造1では、初期接地時に反作用として路面から受ける上向きの力を路面に略平行な傾斜面部21Aで受け止めることができ、反作用力を傾斜面部21Aで分散させることができる。よって、上記ソール構造1によれば、このような構成によっても、初期接地時に反作用として路面からソール構造1を介してシューズ着用者の足裏に作用する初期衝撃を低減することができる。
【0068】
また、本実施形態1のソール構造1では、上述のように傾斜面部21Aを形成することにより、最初に路面に当接する後端部の外甲側端部で、上部ミッドソール21よりも柔らかい下部ミッドソール22が最も分厚くなり、クッション性が向上する。従って、第1の形態によれば、このような構成によっても、初期接地時に反作用として路面からソール構造を介してシューズ着用者の足裏に作用する初期衝撃を低減することができる。
【0069】
さらに、本実施形態1のソール構造1では、上述のように傾斜面部21Aを形成することにより、後端部の内甲側において上部ミッドソール21が外甲側よりも分厚く形成される。これにより、初期接地時に外下がりに傾いていたシューズ着用者の足裏が路面に平行になるときに、シューズ着用者の荷重が硬い上部ミッドソール21の分厚い内甲側の部分によって支持されるため、シューズ着用者の足が内甲側に倒れ込むプロネーションを抑制することができる。
【0070】
また、本実施形態1のソール構造1では、上部ミッドソール21の傾斜面部21Aを、外甲側端部から足幅方向に内甲側端まで延びるように足幅方向に長く形成している。このように、傾斜面部21Aを足幅方向に長く形成することにより、初期接地時に路面から受ける上向きの力を傾斜面部21Aでより分散させることができるため、初期接地時に反作用として路面からソール構造1を介してシューズ着用者の足裏に作用する初期衝撃をより低減することができる。
【0071】
また、本実施形態1のソール構造1では、上部ミッドソール21の下面が、傾斜面部21Aの前側に波形面部21Bを有している。このように波形面部21Bに形成された部分では、前後方向に硬度の異なる上部ミッドソール21と下部ミッドソール22とが交互に並ぶ。そのため、上記ソール構造1では、初期接地後に路面に当接する部分(後端部より前側の部分)について、柔らかい下部ミッドソール22によってある程度のクッション性を担保しつつ、硬い上部ミッドソール21によって足幅方向の曲げ剛性を増大させることができる。よって、上記ソール構造1によれば、初期接地後にも路面からシューズ着用者の足裏に作用する衝撃を低減することができ、さらに、横振れを抑制することもできる。
【0072】
また、本実施形態1のソール構造1では、上部ミッドソール21と下部ミッドソール22との間に、上部ミッドソール21よりも硬度の高い弾性材からなるプレート30が設けられている。そして、プレート30は、上部ミッドソール21の傾斜面部21Aに対応する内下がり形状の傾斜部31を有している。このような構成によれば、上部ミッドソール21よりも硬度の高いプレート30の傾斜部31により、初期接地時に下部ミッドソール22の変形(歪み)がより促される。よって、初期接地時の初期衝撃をより低減することができる。
【0073】
さらに、本実施形態1ソール構造1では、プレート30が、傾斜部31の前側に波形部32を有している。プレート30の波形部32では、前後方向に硬度の異なる上部ミッドソール21と下部ミッドソール22とが交互に並ぶ。そのため、上記ソール構造1では、初期接地後に路面に当接する部分(後端部より前側の部分)について、柔らかい下部ミッドソール22によってある程度のクッション性を担保しつつ、硬い上部ミッドソール21によって足幅方向の曲げ剛性を増大させることができる。よって、上記ソール構造1によれば、初期接地後にも路面からシューズ着用者の足裏に作用する衝撃を低減することができ、さらに、横振れを抑制することもできる。
【0074】
また、本実施形態1のソール構造1を備えたシューズSにおいても、上述の作用効果と同様の作用効果を奏することができる。
【0075】
-実施形態1の変形例1-
本発明の実施形態1の変形例1は、実施形態1のソール構造1からプレート30を削除したものである。
【0076】
具体的には、図13及び図14に示すように、変形例1では、ソール構造1は、アウトソール10とミッドソール20とで構成されている。アウトソール10とミッドソール20は、実施形態1と同様に構成されている。
【0077】
変形例1では、プレート30がないため、ミッドソール20の上部ミッドソール21の下面と下部ミッドソール22の上面とが当接する点が、実施形態1と異なる。具体的には、変形例1では、図14に示すように、上部ミッドソール21の下面の傾斜面部21Aは、下部ミッドソール22の上面の傾斜面部22Aと当接し、上部ミッドソール21の下面の波形面部21Bは、下部ミッドソール22の上面の波形面部22Bと当接している。その他は、実施形態1と同様に構成されている。
【0078】
このような構成により、変形例1に係るソール構造1及びシューズSも、実施形態1においてプレート30が奏する作用効果以外の全ての作用効果を奏する。
【0079】
《発明の実施形態2》
実施形態2は、実施形態1のソール構造1の一部の構成を変更したものである。
【0080】
具体的には、図15に示すように、実施形態2では、実施形態1において、上部ミッドソール21の下面の後端部の足幅方向の外甲側端から内甲側端までの範囲(足幅方向の全範囲)に形成されていた傾斜面部21Aが、外甲側端部から正中面(足幅方向の中央を通る鉛直面)までの範囲に限られている。実施形態2では、傾斜面部21Aの内甲側、即ち、上部ミッドソール21の下面の後端部の正中面から内甲側端までの範囲には、傾斜面部21Aのようには傾斜しない非傾斜面部21Cが形成されている。非傾斜面部21Cは、ソール構造1を平坦面の上に載置したときに載置面に略平行な面で構成されている。
【0081】
また、実施形態2では、プレート30及び下部ミッドソール22の上面の後端部の形状が、上部ミッドソール21の下面の後端部の形状に合わせて実施形態1から変更されている。
【0082】
具体的には、プレート30では、実施形態1において、プレート30の後端部の足幅方向の外甲側端から内甲側端までの範囲(足幅方向の全範囲)に形成されていた傾斜部31が、外甲側端部から正中面までの範囲に限られている。実施形態2では、傾斜部31の内甲側、即ち、プレート30の後端部の正中面から内甲側端までの範囲には、傾斜部31のようには傾斜しない非傾斜部34が形成されている。非傾斜部34は、ソール構造1を平坦面の上に載置したときに載置面に略平行な板状片部で構成されている。
【0083】
また、下部ミッドソール22の上面では、実施形態1において、下部ミッドソール22の上面の後端部の足幅方向の外甲側端から内甲側端までの範囲(足幅方向の全範囲)に形成されていた傾斜面部22Aが、外甲側端部から正中面までの範囲に限られている。実施形態2では、傾斜面部22Aの内甲側、即ち、下部ミッドソール22の上面の後端部の正中面から内甲側端までの範囲には、傾斜面部22Aのようには傾斜しない非傾斜面部22Cが形成されている。非傾斜面部22Cは、ソール構造1を平坦面の上に載置したときに載置面に略平行な面で構成されている。
【0084】
その他は、実施形態1と同様に構成されている。
【0085】
実施形態2に係るソール構造1及びシューズSも、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0086】
また、実施形態2のソール構造1では、上部ミッドソール21の傾斜面部21Aの足幅方向の範囲を、外甲側端部から足幅方向の中央位置(正中面)までとしている。このような形態によれば、上部ミッドソール21の下面の後端部の足幅方向の全域に亘って傾斜面部21Aとするのではなく、外甲側端部から足幅方向の中央位置までの範囲に限ることにより、下部ミッドソール22の内甲側の部分が薄くなり過ぎないため、ソール構造1の内甲側のクッション性を向上させることができる。
【0087】
《発明の実施形態3》
実施形態3は、実施形態1のソール構造1の一部の構成を変更したものである。
【0088】
具体的には、図16に示すように、実施形態3では、実施形態2と同様に、上部ミッドソール21の下面が、後端部において足幅方向に延びる傾斜面部21Aと非傾斜面部21Cとを有している。実施形態3では、傾斜面部21Aは、上部ミッドソール21の下面の後端部において、外甲側端部から正中面よりも内甲側の位置まで延びている。図16では、傾斜面部21Aは、終端が正中面と内甲側端との真ん中辺りに位置するように形成されている。これにより、非傾斜面部21Cは、上部ミッドソール21の下面の後端部において、足幅方向において正中面と内甲側端との真ん中から内甲側端までの範囲に形成されている。実施形態3においても、非傾斜面部21Cは、ソール構造1を平坦面の上に載置したときに載置面に略平行な面で構成されている。
【0089】
また、実施形態3においても、実施形態2と同様に、プレート30及び下部ミッドソール22の上面の後端部の形状が、上部ミッドソール21の下面の後端部の形状に合わせて実施形態1から変更されている。
【0090】
具体的には、プレート30では、実施形態1において、プレート30の後端部の足幅方向の外甲側端から内甲側端までの範囲(足幅方向の全範囲)に形成されていた傾斜部31が、外甲側端部から正中面よりも内甲側の位置(正中面と内甲側端との真ん中辺り)までの範囲に形成されている。実施形態3では、傾斜部31の内甲側、即ち、プレート30の後端部の正中面と内甲側端との真ん中辺りから内甲側端までの範囲には、傾斜部31のようには傾斜しない非傾斜部34が形成されている。非傾斜部34は、ソール構造1を平坦面の上に載置したときに載置面に略平行な板状片部で構成されている。
【0091】
また、下部ミッドソール22の上面では、実施形態1において、下部ミッドソール22の上面の後端部の足幅方向の外甲側端から内甲側端までの範囲(足幅方向の全範囲)に形成されていた傾斜面部22Aが、外甲側端部から正中面よりも内甲側の位置(正中面と内甲側端との真ん中辺り)までの範囲に形成されている。実施形態3では、傾斜面部22Aの内甲側、即ち、下部ミッドソール22の上面の後端部の正中面と内甲側端との真ん中辺りから内甲側端までの範囲には、傾斜面部22Aのようには傾斜しない非傾斜面部22Cが形成されている。非傾斜面部22Cは、ソール構造1を平坦面の上に載置したときに載置面に略平行な面で構成されている。
【0092】
その他は、実施形態1と同様に構成されている。
【0093】
実施形態3に係るソール構造1及びシューズSも、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0094】
また、実施形態3のソール構造1では、上部ミッドソール21の傾斜面部21Aの足幅方向の範囲を、外甲側端部から正中面よりも内甲側の位置までとしている。このような形態によれば、上部ミッドソール21の下面の後端部の足幅方向の全域に亘って傾斜面部21Aとするのではなく、外甲側端部から足幅方向の中央位置までの範囲に限ることにより、下部ミッドソール22の内甲側の部分が薄くなり過ぎないため、ソール構造1の内甲側のクッション性を向上させることができる。
【0095】
一方、実施形態3のソール構造1では、上部ミッドソール21の傾斜面部21Aを、外甲側端部から足幅方向の中央位置を超えるように足幅方向に長く形成している。このように、傾斜面部21Aを足幅方向に長く形成することにより、初期接地時に路面から受ける上向きの力を傾斜面部21Aでより分散させることができるため、初期接地時に反作用として路面からソール構造1を介してシューズ着用者の足裏に作用する初期衝撃をより低減することができる。
【0096】
《発明の実施形態4》
実施形態4は、実施形態1のソール構造1の一部の構成を変更したものである。
【0097】
具体的には、図17に示すように、実施形態4では、実施形態2と同様に、上部ミッドソール21の下面が、後端部において足幅方向に延びる傾斜面部21Aと非傾斜面部21Cとを有している。実施形態4では、傾斜面部21Aは、上部ミッドソール21の下面の後端部において、外甲側端部から正中面よりも外甲側の位置までに限られている。図17では、傾斜面部21Aは、終端が外甲側端と正中面との真ん中辺りに位置するように形成されている。これにより、非傾斜面部21Cは、上部ミッドソール21の下面の後端部において、足幅方向において外甲側端と正中面との真ん中から内甲側端までの範囲に形成されている。実施形態4においても、非傾斜面部21Cは、ソール構造1を平坦面の上に載置したときに載置面に略平行な面で構成されている。
【0098】
また、実施形態4においても、実施形態2と同様に、プレート30及び下部ミッドソール22の上面の後端部の形状が、上部ミッドソール21の下面の後端部の形状に合わせて実施形態1から変更されている。
【0099】
具体的には、プレート30では、実施形態1において、プレート30の後端部の足幅方向の外甲側端から内甲側端までの範囲(足幅方向の全範囲)に形成されていた傾斜部31が、外甲側端部から正中面よりも外甲側の位置(外甲側端と正中面との真ん中辺り)までの範囲に限られている。実施形態4では、傾斜部31の内甲側、即ち、プレート30の後端部の外甲側端と正中面との真ん中辺りから内甲側端までの範囲には、傾斜部31のようには傾斜しない非傾斜部34が形成されている。非傾斜部34は、ソール構造1を平坦面の上に載置したときに載置面に略平行な板状片部で構成されている。
【0100】
また、下部ミッドソール22の上面では、実施形態1において、下部ミッドソール22の上面の後端部の足幅方向の外甲側端から内甲側端までの範囲(足幅方向の全範囲)に形成されていた傾斜面部22Aが、外甲側端部から正中面よりも外甲側の位置(外甲側端と正中面との真ん中辺り)までの範囲に限られている。実施形態4では、傾斜面部22Aの内甲側、即ち、下部ミッドソール22の上面の後端部の外甲側端と正中面との真ん中辺りから内甲側端までの範囲には、傾斜面部22Aのようには傾斜しない非傾斜面部22Cが形成されている。非傾斜面部22Cは、ソール構造1を平坦面の上に載置したときに載置面に略平行な面で構成されている。
【0101】
その他は、実施形態1と同様に構成されている。
【0102】
実施形態4に係るソール構造1及びシューズSも、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0103】
また、実施形態4のソール構造1では、上部ミッドソール21の傾斜面部21Aの足幅方向の範囲を、外甲側端部の周辺部(外甲側端から外甲側端と正中面との真ん中まで)に限ることとしている。このように、初期接地時に反作用力が作用するソール構造1の後端部の外甲側端部の周辺部には傾斜面部21Aを設け、後端部の内甲側の部分には非傾斜面部21Cを設けて下部ミッドソール22の内甲側の部分が薄くなり過ぎないようにすることにより、初期接地時に反作用として路面からソール構造1を介してシューズ着用者の足裏に作用する初期衝撃を低減しつつ、ソール構造1の内甲側のクッション性を向上させることができる。
【0104】
《その他の実施形態》
上記実施形態1~4では、プレート30が、ソール構造1の中足部領域Mの前後方向の中程の位置(前後方向の中央よりも前側の位置)から後端までの範囲に設けられていたが、プレート30は、後足部領域Hのみに設けられるものであってもよい。また、プレート30は、波形部32を有さず、傾斜部31のみを有するものであってもよい。逆に、プレート30は、ソール構造1の後端から前足部領域Fまで前後方向に長く形成されていてもよい。
【0105】
また、上記実施形態1~4では、プレート30の波形部32の上面と上部ミッドソール21の波形面部21B、プレート30の波形部32の下面と下部ミッドソール22の波形面部22Bは、それぞれ当接していた。しかしながら、プレート30の波形部32の上面と上部ミッドソール21の波形面部21Bとの間、プレート30の波形部32の下面と下部ミッドソール22の波形面部22Bとの間には、隙間が形成されていてもよい。
【0106】
また、上記実施形態1~4では、アウトソール10は、ミッドソール20とは別体に構成されていたが、ミッドソール20と一体に形成されるものであってもよい。
【0107】
また、上記実施形態1~4では、上部ミッドソール21が、前足部領域Fから後足部領域Hに亘って延び、上部ミッドソール21の上面がシューズ着用者の足裏を支持する足裏支持面を構成していた。しかしながら、ミッドソール20の構成は、上記実施形態1~4の構成に限られない。ミッドソール20が、前足部領域Fから後足部領域Hに亘って延び、上面がシューズ着用者の足裏を支持する足裏支持面となり、少なくとも後足部領域Hに上部ミッドソール21が設けられるものであればいかなるものであってもよい。例えば、上部ミッドソール21が後足部領域H(踵部)のみに設けられ、下部ミッドソール22が前足部領域Fから後足部領域Hに亘って延びるものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0108】
以上説明したように、本発明は、シューズ用ソール構造及びそれを備えたシューズについて有用である。
【符号の説明】
【0109】
1 ソール構造
10 アウトソール
20 ミッドソール
21 上部ミッドソール
21A 傾斜面部
21B 波形面部
21B1 凹面部
21B2 凸面部
22 下部ミッドソール
30 プレート
31 傾斜部
32 波形部
32a 下湾曲部
32b 上湾曲部
S シューズ
F 前足部領域
M 中足部領域
H 後足部領域
図1
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