(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151192
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】研削装置及びそれを用いた研削加工品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B24B 41/047 20060101AFI20220929BHJP
B24B 7/07 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
B24B41/047
B24B7/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021054145
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(74)【代理人】
【識別番号】100149249
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】枡田 健太
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 成人
【テーマコード(参考)】
3C034
3C043
【Fターム(参考)】
3C034AA07
3C034BB30
3C043BA05
3C043BA13
3C043BA14
3C043BA15
3C043CC03
3C043DD02
3C043DD04
3C043DD06
(57)【要約】
【課題】片削りを効率的に抑制し、もって効率的な研削加工を可能にすることができる、研削装置及びそれを用いた研削加工品の製造方法を提供する。
【解決手段】研削装置1は、ワーク2の被加工面2aを研削する研削面4aを備える研削部材4と、研削部材4の研削面4aとワーク2の被加工面2aとが互いに押し付けられることで平行に近づくように研削部材4を傾動可能に支持する支持ヘッド5と、を有する。研削加工品の製造方法は、研削装置1を用いて研削部材4の研削面4aとワーク2の被加工面2aとが互いに押し付けられることで平行に近づくように研削部材4を傾動させながらワーク2を研削する工程を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの被加工面を研削する研削面を備える研削部材と、
前記研削部材の前記研削面と前記ワークの前記被加工面とが互いに押し付けられることで平行に近づくように前記研削部材を傾動可能に支持する支持ヘッドと、
を有する、研削装置。
【請求項2】
前記研削部材が前記ワークからの反力によって傾動する、請求項1に記載の研削装置。
【請求項3】
前記支持ヘッドが、ベースと、前記研削部材を保持するホルダと、前記ホルダを前記ベースに回動可能に連結する回動連結部材と、を有する、請求項1又は2に記載の研削装置。
【請求項4】
前記回動連結部材を介した前記研削部材の傾動を規制する規制部材を有する、請求項3に記載の研削装置。
【請求項5】
前記規制部材が、前記研削部材を前記回動連結部材を介して所定位置に向けて傾動させる付勢部材を有する、請求項4に記載の研削装置。
【請求項6】
前記回動連結部材が前記ホルダを前記ベースに回動軸線に沿って延びる軸部材を介して回動可能に連結する、請求項3~5の何れか1項に記載の研削装置。
【請求項7】
前記回動軸線が前記研削部材から見て前記ワークの反対側に位置する、請求項6に記載の研削装置。
【請求項8】
前記回動軸線が前記研削部材を通る、請求項6に記載の研削装置。
【請求項9】
前記研削部材が、回転によって前記ワークを研削する外周面を有する、請求項1~8の何れか1項に記載の研削装置。
【請求項10】
請求項1~9の何れか1項に記載の研削装置を用いて前記研削部材の前記研削面と前記ワークの前記被加工面とが互いに押し付けられることで平行に近づくように前記研削部材を傾動させながら前記ワークを研削する工程を有する、研削加工品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研削装置及びそれを用いた研削加工品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
砥石や研磨布紙等からなる研削部材(例えば特許文献1参照)を支持する支持ヘッドを有し、支持ヘッドによって研削部材を鋼板、鋼管等のワークに押し付けてワークを研削する研削装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
研削時に研削部材がワークに片当たりしていると、被加工面が片削り状態になるため、研削加工精度が低下する。このため、片当たりができるだけ抑制されるように研削加工前にワークの被加工面に対する支持ヘッド全体の傾斜角度をアライメント調整機構を介して調整することが一般的に行われている。しかし、ワーク毎に被加工面の傾斜角度がばらついていたり、ワークの被加工面内でも傾斜角度が不均一であったりする場合もあり、被加工面の傾斜角度が変わるたびにアライメント調整を実施することは非効率的であった。
【0005】
そこで、本発明は、片削りを効率的に抑制し、もって効率的な研削加工を可能にすることができる、研削装置及びそれを用いた研削加工品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要旨は次の通りである。
【0007】
1.ワークの被加工面を研削する研削面を備える研削部材と、
前記研削部材の前記研削面と前記ワークの前記被加工面とが互いに押し付けられることで平行に近づくように前記研削部材を傾動可能に支持する支持ヘッドと、
を有する、研削装置。
【0008】
2.前記研削部材が前記ワークからの反力によって傾動する、前記1.に記載の研削装置。
【0009】
3.前記支持ヘッドが、ベースと、前記研削部材を保持するホルダと、前記ホルダを前記ベースに回動可能に連結する回動連結部材と、を有する、前記1.又は2.に記載の研削装置。
【0010】
4.前記回動連結部材を介した前記研削部材の傾動を規制する規制部材を有する、前記3.に記載の研削装置。
【0011】
5.前記規制部材が、前記研削部材を前記回動連結部材を介して所定位置に向けて傾動させる付勢部材を有する、前記4.に記載の研削装置。
【0012】
6.前記回動連結部材が前記ホルダを前記ベースに回動軸線に沿って延びる軸部材を介して回動可能に連結する、前記3.~5.の何れか1項に記載の研削装置。
【0013】
7.前記回動軸線が前記研削部材から見て前記ワークの反対側に位置する、前記6.に記載の研削装置。
【0014】
8.前記回動軸線が前記研削部材を通る、前記6.に記載の研削装置。
【0015】
9.前記研削部材が、回転によって前記ワークを研削する外周面を有する、前記1.~8.の何れか1項に記載の研削装置。
【0016】
10.前記1.~9.の何れか1項に記載の研削装置を用いて前記研削部材の前記研削面と前記ワークの前記被加工面とが互いに押し付けられることで平行に近づくように前記研削部材を傾動させながら前記ワークを研削する工程を有する、研削加工品の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、片削りを効率的に抑制し、もって効率的な研削加工を可能にすることができる、研削装置及びそれを用いた研削加工品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る研削装置を示す外観図である。
【
図2A】本発明の第2実施形態に係る研削装置の回動連結部材を示す平面図である。
【
図3】本発明の第3実施形態に係る研削装置を示す外観図である。
【
図4】
図3に示す研削装置の一部を90°異なる角度から見た時の外観図である。
【
図5A】
図3に示す研削装置の研削部材の被加工面への押し付け開始時の状態を示す外観図である。
【
図5B】
図5Aに示す状態から押し付けを完了した時の状態を示す外観図である。
【
図6】比較例としての研削装置を示す外観図である。
【
図7】実施例としての
図3に示す研削装置を用いて作成した被加工面を示す外観図である。
【
図8】比較例に対する実施例の片削り抑制効果を示す実験データであり、横軸をパス回数、縦軸を被加工面の研削幅として示すグラフである。
【
図9】比較例に対する実施例の片削り抑制効果を示す実験データであり、横軸を研削幅方向位置、縦軸を研削深さとして示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について例示説明する。なお、
図1中において、前後方向をX方向、X方向に垂直な方向(左右方向)をY方向、X方向及びY方向に垂直な方向(上下方向)をZ方向とする。
【0020】
図1に示すように、本発明の第1実施形態に係る研削装置1は、平板状の鋼材であるワーク2(被加工材)を研削することにより、研削加工品として表面が研削加工された鋼板を製造する装置である。なおワーク2は平板状に限らず例えば、湾曲板状であってもよいし、管状であってもよい。またワーク2は鋼製に限らず例えば、鋼以外の金属製等であってもよい。
【0021】
研削装置1は、研削部材4と支持ヘッド5とで構成される研削ヘッド3を有している。
【0022】
研削部材4は例えば砥石からなる砥石車で構成され、
図1中のY方向に延びる回転軸線Oを中心に回転することで円柱面状の外周面によってワーク2を研削することができる。つまり、研削部材4は、回転によってワーク2を研削する外周面で構成される研削面4aを有している。研削部材4は図示しないアクチュエータを含む駆動装置6により、回転軸線Oに沿って延びる回転軸7を介して回転駆動される。回転軸7は、回転軸線Oに沿う方向(以下、説明の便宜上、左右方向ともいう)において研削部材4からその両側に突出する2つの突出部7aを有している。なお、研削部材4の研削面4aを構成する外周面は、図示するように周方向(或いはZ方向)に向けて直線状に延びる直線形帯状をなしているが、これに限らず例えば、周方向に向けて左右に蛇行して延びる波形帯状をなしていてもよい。
【0023】
支持ヘッド5は、ベース8と、研削部材4を回転軸7を介して保持するホルダ9と、ホルダ9をベース8に回動可能に連結する回動連結部材10と、を有している。
【0024】
ベース8は、支持部材11と、アクチュエータ12と、
図1中にZ方向に延びる両方向矢印で示すようにアクチュエータ12によって支持部材11に対して被加工面2aに向かう方向である押し付け方向とその反対方向(以下、説明の便宜上、押し付け方向を下方ともいい、その反対方向を上方ともいう)に直線的に相対移動させられる可動部材13と、を有している。つまり可動部材13はアクチュエータ12によってワーク2に対して相対的に上下方向に沿って平行移動することができる。なお押し付け方向は例えば鉛直下方である。支持部材11は、アクチュエータ12を支持するとともに図示しないヘッド移動装置に取り付けられており、ヘッド移動装置を介して押し付け方向に垂直な任意の方向に移動可能である。ヘッド移動装置は、押し付け方向に垂直な第1方向(例えば、X方向とY方向の一方)に支持部材11を平行移動させる第1並進機構と、押し付け方向と第1方向の両方に垂直な第2方向(例えば、X方向とY方向の他方)に支持部材11を平行移動させる第2並進機構と、を有する構成であってよい。なお、ヘッド移動装置はこれに限らず、例えばロボットアームで構成してもよい。ベース8全体の傾斜角度は、押し付け方向がワーク2の被加工面2aに略垂直となるように図示しないアライメント調整機構を介して適宜調整される。
【0025】
ホルダ9は、回転軸7の2つの突出部7aを軸受け部を介して回転可能に支持する左右方向(Y方向)に垂直な平板状の2つの側方部材9aと、これらの側方部材9aの上端を一体に連結する上下方向(Z方向)に垂直な平板状の上方部材9bと、を有している。一方の側方部材9aは左右方向の一方側から研削部材4に対向するとともに一方の突出部7aを支持し、他方の側方部材9aは左右方向の他方側から研削部材4に対向するとともに他方の突出部7aを支持している。上方部材9bは上方側から研削部材4に対向するとともに可動部材13よりも下方に位置している。なお、側方部材9aは必ずしも研削部材4の左右方向両側に設けられている必要はなく、研削部材4の片側のみ(例えば駆動装置6が設けられている側のみ)に設けられていてもよい。
【0026】
回動連結部材10は、上下方向(押し付け方向に沿う方向)と左右方向(回転軸線Oに沿う方向)との両方に垂直な回動軸線P(
図1中のX方向に延びる軸線)に沿って延びる軸部材である回動軸14を介して上方部材9bを可動部材13に回動可能に連結している。したがって、ホルダ9とホルダ9に保持された研削部材4とは、回動軸線Pを中心にワーク2の被加工面2aに対して傾動することができる。
【0027】
また、回動連結部材10は、回動連結部材10を介した研削部材4の傾動を規制する規制部材として、所定位置に向けて研削部材4を回動連結部材10を介して傾動させる付勢部材15を有している。付勢部材15は回動軸線Pの左右方向両側に設けられた2つの引張ばねで構成されている。所定位置は、回転軸線Oが押し付け方向、すなわち上下方向(Z方向)に垂直となる中立位置にできるだけ近いことが好ましく、本実施形態では中立位置とされている。規制部材を設けることにより、被加工面2aへの研削部材4の非押し付け時に前後方向(或いは回動軸線P)に垂直な面内において研削面4aを被加工面2aに略平行に保つことができる。
【0028】
駆動装置6、アクチュエータ12及びヘッド移動装置は、図示しないコンピュータで構成される制御装置によって統合制御される。制御装置により、研削部材4が回転状態でワーク2の被加工面2a(板厚方向の一方側の面)にアクチュエータ12を介して例えば位置制御又は力制御によって押し付けられ、研削ヘッド3が被加工面2aを研削しながらヘッド移動装置を介して上下方向に垂直な方向(例えば、左右方向及び前後方向)に所定の経路に沿って走査させられる。走査は例えば一定速度で行われる。
【0029】
なお、第1実施形態では上述したように回動連結部材10の付勢部材15は回動軸線Pの左右方向両側に位置する2つの引張ばねで構成されているが、付勢部材15は
図2A~
図2Bに示す第2実施形態のように、回動軸線Pの左右方向両側に位置する部分を含むゴム製等の塊状の弾性部材で構成してもよい。弾性部材は図示するように2つの部分からなっていてもよいし、これらの2つの部分が一体に連なった1つの部分からなっていてもよい。また、塊状でなく圧縮コイルばね状などの弾性部材を用いてもよい。付勢部材15に代えてオイルダンパ等のダンパ部材を規制部材として設けてもよい。第2実施形態では回動軸14は前後方向に分離した2つの部分からなっている。また、これらの部分により、前後方向に分離した2つのヒンジ16が構成されている(
図2A~
図2Bでは1つのヒンジ16のみ図示)。
【0030】
また、第1実施形態では回動軸線Pは研削部材4から見てワーク2の反対側に位置しており、これにより、回動軸線Pは研削部材4よりも上方に位置している。しかし、
図3~
図5Bに示す第3実施形態の場合のように、回動軸線Pは研削部材4を通り、これにより、研削部材4の上端と同じ高さ又はそれより下方に位置していてもよい。
【0031】
第3実施形態では、ホルダ9は、前後方向(X方向)に垂直な平板状の2つの対向部材9cを有している。一方の対向部材9cは前後方向の一方側から研削部材4に対向し、他方の対向部材9cは前後方向の他方側から研削部材4に対向している。2つの対向部材9cの上端は上方部材9bによって一体に連結されている。また、可動部材13は、前後方向に垂直な平板状の2つの支持壁13aと、これらの支持壁13aの上端を一体に連結する上下方向(Z方向)に垂直な平板状の天壁13bと、を有している。天壁13bは上方部材9bに上方から対向し、2つの支持壁13aの間には2つの対向部材9cが位置している。また、回動軸14は研削部材4の前後方向両側に位置する2つの部分(以下、部分軸14aともいう)からなっている。また、これらの部分軸14aにより、前後方向に分離した2つのヒンジ16が構成されている。研削部材4に対して前後方向の一方側に位置する部分軸14a、対向部材9c及び支持壁13aによって一方のヒンジ16が構成され、研削部材4に対して前後方向の他方側に位置する部分軸14a、対向部材9c及び支持壁13aによって他方のヒンジ16が構成されている。
【0032】
上方部材9bと天壁13bとの間には規制部材として、回動軸線Pの左右方向両側に位置する部分を含むゴム製等の塊状の弾性部材で構成される付勢部材15が設けられている。
【0033】
図5Aに示すように、研削加工時に前後方向(或いは回動軸線P)に垂直な面内においてワーク2の被加工面2aが研削面4aに対して傾斜している(つまり押し付け方向に垂直でない)場合、研削部材4が被加工面2aに押し付けられる時に被加工面2aから受ける反力Fは、研削部材4を回動軸線Pを中心に研削面4aとワーク2の被加工面2aとが平行に近づくように傾動させる、すなわち片当たりを抑制する方向に傾動させる回転モーメントを生じさせる。そしてこの回転モーメントにより、
図5B中に白抜き矢印で示すように、付勢部材15の付勢力に抗して研削部材4がホルダ9とともに回動軸14を介して傾動させられる。このように、研削部材4の研削面4aとワーク2の被加工面2aとが互いに押し付けられることで平行に近づくように研削部材4を回動連結部材10を介して傾動、すなわち、被加工面2aからの反力Fによって研削部材4を受動的に傾動させながら研削ヘッド3を走査させて研削加工を行うことにより、片削りを効率的に抑制し、もって効率的な研削加工を可能にすることができる。
【0034】
このように片削りを抑制できる点は第1、第2実施形態においても第3実施形態の場合と同様であるが、第3実施形態では回動軸線Pが研削部材4を通る構成とされており、それにより回動軸線Pがより下方に位置していることから、傾動時の研削面4aの左右方向へのずれ幅がより小さいため、研削部材4が被加工面2aの傾斜角度の変化に対してよりスムーズに追従して傾動することができるので、片削りをより効率的に抑制することができる。なお、回動軸線Pは回転軸線Oと同じ高さ又はそれより下方に位置することが好ましい。
【0035】
被加工面2aがどちらに傾いている場合でも片削りを抑制できるようにする観点から、回動軸線Pは研削面4aの幅範囲内(研削面4aの右端よりも左側で且つ研削面4aの左端よりも右側)に位置することが好ましい。すなわち、回動軸線Pが研削部材4の上端と同じ高さ又はそれより下方に位置している場合は第3実施形態のように回動軸線Pが研削部材4を通ることが好ましく、回動軸線Pが研削部材4の上端より上方に位置している場合は第1、第2実施形態のように回動軸線Pが研削部材4から見てワーク2の反対側に位置することが好ましい。
【0036】
また、研削時に研削面4aから被加工面2aに作用する荷重をより均一化し、それにより片削りをより抑制する観点から、回動軸線Pは研削面4aの幅範囲の中央のできるだけ近くに位置することが好ましい。
【0037】
上述したように、第1~第3実施形態のいずれかの研削装置1を用いて、研削部材4の研削面4aとワーク2の被加工面2aとが互いに押し付けられることで平行に近づくように研削部材4を傾動させながらワーク2を研削する工程を経ることにより、片削りを効率的に抑制し、もって効率的な研削加工を可能にすることができる。
【0038】
本発明は前記実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない限り種々変更可能である。
【0039】
したがって、前記実施形態の研削装置1及びそれを用いた研削加工品の製造方法は、例えば以下に述べるような種々の変更が可能である。
【0040】
前記実施形態の研削装置1は、ワーク2の被加工面2aを研削する研削面4aを備える研削部材4と、研削部材4の研削面4aとワーク2の被加工面2aとが互いに押し付けられることで平行に近づくように研削部材4を傾動可能に支持する支持ヘッド5と、を有する限り、種々変更可能である。
【0041】
例えば、研削部材4は、上下方向(Z方向)に沿って延びる回転軸線Oを中心に回転するとともに回転軸線Oに垂直な平面状の研削面4aを有する型式であってもよいし、ベルト状の研削材を複数のローラで駆動する型式であってもよい。また、研削部材の材質や形状についても、全体が砥石から構成されているものであってもよいし、砥粒が接着された研磨布紙を回転軸線Oに沿う方向に複数積層したディスクホイールタイプのものや、砥粒が接着された研磨布紙を回転軸線Oを中心に周方向に複数並べて固定(つまり、放射状に複数配置し固定)したフラップホイールタイプのものであってもよい。
【0042】
なお、研削装置1は、研削部材4がワーク2からの反力によって傾動することが好ましい。
【0043】
また、研削装置1は、支持ヘッド5が、ベース8と、研削部材4を保持するホルダ9と、ホルダ9をベース8に回動可能に連結する回動連結部材10と、を有することが好ましい。
【0044】
例えば、回動連結部材10は、玉継手等の自在継手であってもよいし、ゴム製等の塊状の弾性部材であってもよい。
【0045】
また、研削装置1は、回動連結部材10を介した研削部材4の傾動を規制する規制部材を有することが好ましい。
【0046】
また、研削装置1は、規制部材が、研削部材4を回動連結部材10を介して所定位置に向けて傾動させる付勢部材15を有することが好ましい。
【0047】
また、研削装置1は、回動連結部材10がホルダ9をベース8に回動軸線Pに沿って延びる軸部材を介して回動可能に連結することが好ましい。
【0048】
また、研削装置1は、回動軸線Pが研削部材4から見てワーク2の反対側に位置することが好ましい。
【0049】
また、研削装置1は、回動軸線Pが研削部材4を通ることが好ましい。
【0050】
また、研削装置1は、研削部材4が、回転によってワーク2を研削する外周面を有することが好ましい。
【0051】
前記実施形態の研削加工品の製造方法は、研削装置1を用いて研削部材4の研削面4aとワーク2の被加工面2aとが互いに押し付けられることで平行に近づくように研削部材4を傾動させながらワーク2を研削する工程を有する限り、種々変更可能である。
【実施例0052】
本発明の実施例として第3実施形態の研削装置を用い、
図6に示す比較例としての研削装置を用いた場合に対する片削り抑制効果を評価した。その評価は、
図7にハッチングで示す研削痕の長手方向中央の研削幅Wとそのプロファイルで行った。比較例は、可動部材を回動連結部材を介さずにホルダに一体に連結した点以外は実施例と同じ構成とした。実施例、比較例ともに同一条件で研削痕を作成した。具体的には、引張強度590MPa級、板厚10mmの平板状の鋼板の板厚方向の一方側の表面を、研削部材として直径300mm、幅100mmの砥石車を用いて研削し、長手方向に1000mmの長さとなる帯状の研削痕を作成した。その際、アクチュエータを押し付け荷重が40Nとなるように、また駆動装置を研削部材の回転速度が3000rpmとなるように、またヘッド移動装置を研削ヘッドが前後方向に沿って10mm/sで移動するように制御装置に設定し、作動させた。
【0053】
実施例と比較例とで同じ方向に同じ場所を繰り返し研削し、研削回数(以下、パス回数ともいう)毎に研削幅Wを測定した。その際、実施例、比較例ともに、分解能0.1度のデジタル勾配計の測定値が被加工面と回転軸とで同一となるようにアライメント調整機構を介してアライメントを精密調整した。また、比較例では、目視でアライメントを荒調整した場合の測定も行った。その結果を
図8に示す。
【0054】
実施例では1パス目から比較例(精密調整)に比べて顕著に研削幅が広がり、3パス目ですでに研削部材の略全幅で研削できていることが分かる。一方、比較例(精密調整)では全てのパス回数において実施例の結果を下回り、6パス目でも研削部材の全幅の60%程度までしか到達しなかった。また、比較例(精密調整)と比較例(荒調整)との結果を比較すると、幅100mmの研削部材をできるだけ幅広に被加工面に接触させて研削するためには極めて精密なアライメント調整が必要であることが分かる。
【0055】
また、実施例と比較例(精密調整)との4パス目での研削断面プロファイルを
図9に示す。
図9から分かるように、比較例では幅方向に研削深さが不均一であるのに対し、実施例では幅方向に略全幅にわたって研削深さが均一となっている。
【0056】
以上の評価結果から、実施例によれば顕著な片削り抑制効果を得られることが確認された。