(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151197
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】化合物、密着剤および樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C07D 249/12 20060101AFI20220929BHJP
G03F 7/085 20060101ALI20220929BHJP
G03F 7/027 20060101ALI20220929BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20220929BHJP
C08K 5/3472 20060101ALI20220929BHJP
C07D 257/04 20060101ALI20220929BHJP
C07D 257/06 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
C07D249/12 512
G03F7/085
G03F7/027 502
C08L101/00
C08K5/3472
C07D257/04 N CSP
C07D257/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021054153
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕馬
(72)【発明者】
【氏名】川崎 律也
【テーマコード(参考)】
2H225
4J002
【Fターム(参考)】
2H225AC21
2H225AC23
2H225AC31
2H225AC32
2H225AC35
2H225AC36
2H225AC66
2H225AC74
2H225AC75
2H225AD06
2H225AD26
2H225AE15P
2H225AM77P
2H225AM99P
2H225AN54P
2H225AN57P
2H225AN79P
2H225BA05P
2H225BA06P
2H225BA22P
2H225BA32P
2H225CA12
2H225CB06
2H225CC01
2H225CC13
4J002BK001
4J002CC031
4J002CL001
4J002CM021
4J002CM041
4J002EU156
4J002FD206
4J002GG02
4J002GQ00
4J002GQ01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】樹脂組成物に配合することで、樹脂組成物と基材との密着を向上させることができる化合物を提供する。
【解決手段】下記一般式(I)で表される化合物。
式中、R
1は、水素原子またはメチル基;R
2は、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~20である置換もしくは非置換のアルキル基、炭素原子数3~15である置換もしくは非置換のシクロアルキル基、または炭素原子数6~20である置換もしくは非置換の芳香族炭化水素基;Xは、-S-または-NH-;Yは、-N=または-CH=;Aは、-O-(CH
2)
m-または単結合であり、mは、1~10の正の整数;nは、1~10の正の整数である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される化合物。
【化1】
前記一般式(I)において、
R
1は、水素原子またはメチル基であり、
R
2は、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~20である置換もしくは非置換のアルキル基、炭素原子数3~15である置換もしくは非置換のシクロアルキル基、または炭素原子数6~20である置換もしくは非置換の芳香族炭化水素基であり、
Xは、-S-または-NH-であり、
Yは、-N=または-CH=であり、
Aは、-O-(CH
2)
m-または単結合であり、mは、1~10の正の整数であり、
nは、1~10の正の整数である。
【請求項2】
前記一般式(I)において、Xが-S-である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記一般式(I)において、Xが-NH-である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
前記一般式(I)において、Yが-N=である、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
前記一般式(I)において、Yが-CH=である、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
前記一般式(I)において、R1がメチル基である、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
前記一般式(I)において、R1が水素原子である、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
前記一般式(I)において、nが1~4の正の整数である、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物を含む、密着剤。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物を含む、樹脂組成物。
【請求項11】
さらに感光剤を含む、請求項10に記載の樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、密着剤および樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂組成物を用いて電子装置中に硬化膜を形成するにあたっては、まず、樹脂組成物を基材上に塗布して膜形成し、その膜を熱処理することで、硬化膜を形成する。
上記のような硬化膜の形成においては、樹脂組成物と基材との密着性が高いことが好ましい。特に、近年では段差を有する基材上に平坦な硬化膜を形成することが求められているため、樹脂組成物と基材との密着性向上がより一層求められる。
【0003】
特許文献1には、銅箔とプリプレグの接着性を向上させる銅箔表面処理剤に関する発明が記載されている。この文献には、表面処理剤の成分として、イミダゾール環を有するトリアルコキシシランが挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
樹脂組成物を用いて電子装置中に硬化膜を形成するにあたっては、樹脂組成物と基材との密着性が高いことが好ましい。本発明はこのような事情に鑑みてなされたものである。
本発明は、樹脂組成物に配合することで樹脂組成物と基材との密着を向上させることができる化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、以下に提供される発明を完成させ、上記課題を解決した。
【0007】
本発明によれば、下記一般式(I)で表される化合物が提供される。
【化1】
上記一般式(I)において、
R
1は、水素原子またはメチル基であり、
R
2は、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~20である置換もしくは非置換のアルキル基、炭素原子数3~15である置換もしくは非置換のシクロアルキル基、または炭素原子数6~20である置換もしくは非置換の芳香族炭化水素基であり、
Xは、-S-または-NH-であり、
Yは、-N=または-CH=であり、
Aは、-O-(CH
2)
m-または単結合であり、mは、1~10の正の整数であり、
nは、1~10の正の整数である。
【0008】
また、本発明によれば、上記の化合物を含む密着剤が提供される。
【0009】
また、本発明によれば、上記の化合物を含む樹脂組成物が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、樹脂組成物に配合することで、樹脂組成物と基材との密着を向上させることができる化合物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書中、数値範囲の説明における「X~Y」との表記は、特に断らない限り、X以上Y以下のことを表す。例えば、「1~5質量%」とは「1質量%以上5質量%以下」を意味する。
本明細書における「(メタ)アクリル」との表記は、アクリルとメタクリルの両方を包含する概念を表す。「(メタ)アクリレート」等の類似の表記についても同様である。
本明細書における「有機基」の語は、特に断りが無い限り、有機化合物から1つ以上の水素原子を除いた原子団のことを意味する。例えば、「1価の有機基」とは、任意の有機化合物から1つの水素原子を除いた原子団のことを表す。
本明細書における「電子装置」の語は、半導体チップ、半導体素子、プリント配線基板、電気回路ディスプレイ装置、情報通信端末、発光ダイオード、物理電池、化学電池など、電子工学の技術が適用された素子、デバイス、最終製品等を包含する意味で用いられる。
【0012】
[化合物]
本実施形態の化合物は、下記一般式(I)で表される化合物である。
【化2】
上記一般式(I)において、
R
1は、水素原子またはメチル基であり、
R
2は、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~20である置換もしくは非置換のアルキル基、炭素原子数3~15である置換もしくは非置換のシクロアルキル基、または炭素原子数6~20である置換もしくは非置換の芳香族炭化水素基であり、
Xは、-S-または-NH-であり、
Yは、-N=または-CH=であり、
Aは、-O-(CH
2)
m-または単結合であり、mは、1~10の正の整数であり、
nは、1~10の正の整数である。
【0013】
電子装置中の硬化膜には、基材との密着性が求められるが、本実施形態の化合物は、樹脂組成物に配合することで、樹脂組成物から形成される硬化膜と基材の密着を向上させることができる。
詳細は不明であるが、本実施形態の化合物が有する含窒素複素環と基材表面との相互作用が、硬化膜と基材との密着性向上に寄与するものと考えられる。
さらに、本実施形態の化合物が、(メタ)アクリロイル基から選択される反応性基を有することで、本実施形態の化合物と樹脂組成物に含まれる他の成分が反応したり、本実施形態の化合物どうしで重合したりするようになり、本実施形態の化合物が樹脂組成物と密接に絡み合うようになる。このことが硬化膜と基材との密着性をより一層向上させるものと考えられる。
【0014】
本実施形態の化合物が有する5員環の含窒素複素環基は、金属の中でも特に銅との親和性が高いため、本実施形態の化合物が配合された樹脂組成物は、銅めっきされた基材など、基材表面に銅が存在する基材との密着性が特に優れる傾向にある。
【0015】
本実施形態の化合物は、感光性樹脂組成物に配合された場合にその効果をより一層発揮する。電子装置の製造に感光性樹脂組成物が用いられる場合、基材上に塗布した感光性樹脂組成物を露光や現像により微細にパターニングするため、形成された微細なパターンにおける剥がれの発生を防止するために、より高度な密着性が求められるのである。
【0016】
上述の通り、一般式(I)において、Xは-S-または-NH-である。
【0017】
一般式(I)において、Xは-S-であることが好ましい。
Xが-S-であることにより、本実施形態の化合物の塩基性の増大が抑制される。塩基性の増大が抑制されることにより、本実施形態の化合物を配合した樹脂組成物の保存性を向上させることができる。
【0018】
一般式(I)において、Xは-NH-であることが好ましい。
Xが-NH-であることにより、本実施形態の化合物が、複素環だけでなく、Xでも基材表面と相互作用するようになる。よって、硬化膜と基材との密着性をより向上させることができる。
【0019】
上述の通り、一般式(I)において、Yは-N=または-CH=である。
【0020】
一般式(I)において、Yは-N=であることが好ましい。
一般式(I)においてYが-N=である場合、本実施形態の化合物は含窒素複素環基としてテトラゾール基を有することになる。テトラゾール基は塩基性が小さいため、本実施形態の化合物を配合した樹脂組成物の保存性を向上させる観点から有利である。
【0021】
一般式(I)において、Yは-CH=であることが好ましい。
一般式(I)においてYが-CH=である場合、本実施形態の化合物は含窒素複素環基としてトリアゾール基を有することになる。トリアゾール基は塩基性が小さいため、本実施形態の化合物を配合した樹脂組成物の保存性を向上させる観点から有利である。
【0022】
上述の通り、一般式(I)において、R1は水素原子またはメチル基である。
【0023】
一般式(I)において、R1はメチル基であることが好ましい。
一般式(I)においてR1がメチル基である場合、本実施形態の化合物を配合した樹脂組成物の強度が向上される傾向がある。
【0024】
一般式(I)において、R1は水素原子であることが好ましい。
一般式(I)においてR1が水素原子である場合、本実施形態の化合物を配合した樹脂組成物の柔軟性が向上される傾向がある。
【0025】
一般式(I)において、上述の通り、R2は、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~20である置換もしくは非置換のアルキル基、炭素原子数3~15である置換もしくは非置換のシクロアルキル基、または炭素原子数6~20である置換もしくは非置換の芳香族炭化水素基である。
炭素原子数1~20である置換もしくは非置換のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、n-へプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基などが挙げられる。
炭素原子数3~15である置換もしくは非置換のシクロアルキル基としては、具体的には、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基、シクロオクチル基などが挙げられる。
炭素原子数6~20である置換もしくは非置換の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基などが挙げられる。
【0026】
上述の通り、一般式(I)において、Aは、-O-(CH2)m-または単結合であり、mは、1~10の正の整数である。
【0027】
一般式(I)において、Aは、-O-(CH2)m-であってmが1~2の正の整数であること、または単結合であることが好ましい。
【0028】
上述の通り、一般式(I)において、nは1~10の正の整数である。
【0029】
一般式(I)において、nは1~6の正の整数であることが好ましく、1~4の正の整数であることがより好ましく、1~2の正の整数であることがさらに好ましい。
【0030】
本実施形態の化合物の具体例としては、以下を挙げることができる。もちろん、本実施形態の化合物はこれらのみに限定されない。
【0031】
【0032】
本実施形態の化合物は、 化学式(II)で示されるアゾール化合物(以下、アゾール化合物(II)という)と、化学式(III)で示される(メタ)アクリル化合物(以下、(メタ)アクリル化合物(III)という)を、適量の反応溶媒中において、適宜の反応温度および反応時間にて、反応させることにより合成することができる。
下記にアゾール化合物(II)と(メタ)アクリル化合物(III)の反応式を示す。反応式中、X、Y、n、A、R1およびR2は前述の通りである。
【0033】
【0034】
アゾール化合物(II)と(メタ)アクリル化合物(III)を反応させる溶媒としては、両者に対して不活性な溶剤であれば特に限定されないが、溶解性の高さや高沸点である等といった観点から、γ-ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホロアミド等を挙げることができる。
【0035】
アゾール化合物(II)と(メタ)アクリル化合物(III) との反応は、化学量論的に進行するが、アゾール化合物(II)の仕込量に対する(メタ)アクリル化合物(III)の仕込量は、反応温度や反応時間の他、使用する原料や反応溶媒の種類、反応スケール等の要因を考慮して、0.8~1.2倍モルの範囲における適宜の割合とすることが好ましい。
【0036】
アゾール化合物(II)と(メタ)アクリル化合物(III) との反応温度は、両者が反応する温度範囲であれば特に限定されないが、0~200℃の範囲が好ましく、20~100℃の範囲がより好ましい。反応時間は、設定した反応温度に応じて適宜決定されるが、10分~24時間の範囲が好ましく、1~8時間の範囲がより好ましい。
【0037】
[密着剤]
本実施形態の密着剤は、上述の化合物を含む。
上述の化合物は、樹脂組成物に配合することで、樹脂組成物と基材との密着を向上させることができるため、これを密着剤して用いることができるというわけである。
【0038】
本実施形態の密着剤は、必要に応じて、上述の化合物以外の成分を含んでいてもよい。たとえば、酸化防止剤、pH調整剤等を含んでいてもよい。
【0039】
[樹脂組成物]
本実施形態の樹脂組成物は、上述の化合物を含む。
【0040】
本実施形態の樹脂組成物は、上述の化合物に加え、さらに感光剤を含むこと、つまりは感光性樹脂組成物であることが好適である。
上述の化合物が感光性樹脂組成物に配合された場合に、密着性の効果をより一層発揮されるためである。電子装置の製造に感光性樹脂組成物が用いられる場合、基材上に塗布した感光性樹脂組成物を露光や現像により微細にパターニングするため、形成された微細なパターンにおける剥がれの発生を防止するために、より高度な密着性が求められるのである。
【0041】
本実施形態の樹脂組成物は、ポリイミド樹脂およびその前駆体、ポリベンゾオキサゾール樹脂およびその前駆体、ポリアミド樹脂、ノボラック樹脂、ならびにシクロオレフィン樹脂、から成る群より選択される1種以上の樹脂を含有することが好ましく、加熱による収縮を抑えることができるという観点から、ポリイミド樹脂を含有することがより好ましい。
【0042】
本実施形態の樹脂組成物における樹脂の含有量は、上記樹脂組成物の全固形分中、好適には20質量%以上、より好適には30質量%以上、さらに好適には40質量%以上である。ある程度多量の樹脂を用いることで、適度な厚さの硬化膜を形成しやすくなる。また、樹脂の上限値は特に限定されないが、通常は90質量%以下、好適には80質量%以下である。
本実施形態の樹脂組成物における樹脂に対する、上述の化合物の含有量は、樹脂組成物と基材との密着性向上の観点から、好適には1質量%以上、より好適には2質量%以上、より好適には5質量%以上、より好適には10質量%である。また、本実施形態の樹脂組成物における樹脂に対する、上述の化合物の含有量は、硬化膜の強度維持の観点から、通常は100質量%以下、好適には50質量%以下である。
【0043】
本実施形態の樹脂組成物は、好ましくは多官能(メタ)アクリル化合物を含む。
多官能(メタ)アクリル化合物とは、(メタ)アクリロイル基の個数が2以上である樹脂のことを指す。多官能(メタ)アクリル化合物は、重合により、ポリイミド樹脂のイミド環を「包む」ようなネットワーク構造を形成するものと考えられる。このような複雑に絡み合った構造が形成されることにより、硬化膜の性能が良化すると推測される。
【0044】
(メタ)アクリロイル基の個数に上限は特に無いが、原料入手の容易性などから、例えば11程度である。
【0045】
大まかな傾向として、(メタ)アクリロイル基の個数が多い場合、硬化膜の耐薬品性が高まる傾向がある。一方、(メタ)アクリロイル基の個数が少ない場合、硬化膜の引張り伸びなどの機械物性が良好となる傾向がある。
【0046】
多官能(メタ)アクリル化合物としては、一例として、以下一般式で表される多官能(メタ)アクリル化合物を用いることができる。以下一般式において、R´は水素原子またはメチル基、nは0~3、Rは水素原子または(メタ)アクリロイル基である。
【0047】
【0048】
多官能(メタ)アクリル化合物を用いる場合、樹脂100質量部に対する多官能(メタ)アクリル化合物の量は、好ましくは50~150質量部、より好ましくは60~100質量部である。
【0049】
本実施形態の樹脂組成物は、好ましくは感光剤を含む。
感光剤は、光により活性種を発生して感光性樹脂組成物を硬化させることが可能なものである限り、特に限定されない。
感光剤は、好ましくは光ラジカル発生剤を含む。光ラジカル発生剤は、特に、多官能(メタ)アクリレート化合物を重合させるのに効果的である。
【0050】
用いることができる光ラジカル発生剤は特に限定されず、公知のものを適宜用いることができる。
例えば、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシー2-フェニルアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-〔4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル〕フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-〔(4-メチルフェニル)メチル〕-1-〔4-(4-モルホリニル)フェニル〕-1-ブタノン等のアルキルフェノン系化合物;ベンゾフェノン、4,4′-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、2-カルボキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテ等のベンゾイン系化合物;チオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系化合物;2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-メトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-エトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-エトキシカルボキニルナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン等のハロメチル化トリアジン系化合物;2-トリクロロメチル-5-(2′-ベンゾフリル)-1,3,4-オキサジアゾール、2-トリクロロメチル-5-〔β-(2′-ベンゾフリル)ビニル〕-1,3,4-オキサジアゾール、4-オキサジアゾール、2-トリクロロメチル-5-フリル-1,3,4-オキサジアゾール等のハロメチル化オキサジアゾール系化合物;2,2′-ビス(2-クロロフェニル)-4,4′,5,5′-テトラフェニル-1,2′-ビイミダゾール、2,2′-ビス(2,4-ジクロロフェニル)-4,4′,5,5′-テトラフェニル-1,2′-ビイミダゾール、2,2′-ビス(2,4,6-トリクロロフェニル)-4,4′,5,5′-テトラフェニル-1,2′-ビイミダゾール等のビイミダゾール系化合物;1,2-オクタンジオン,1-〔4-(フェニルチオ)フェニル〕-2-(O-ベンゾイルオキシム)、エタノン,1-〔9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル〕-,1-(O-アセチルオキシム)等のオキシムエステル系化合物;ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム等のチタノセン系化合物;p-ジメチルアミノ安息香酸、p-ジエチルアミノ安息香酸等の安息香酸エステル系化合物;9-フェニルアクリジン等のアクリジン系化合物;等を挙げることができる。これらの中でも、特にオキシムエステル系化合物を好ましく用いることができる。
【0051】
感光剤を用いる場合、1のみの感光剤を用いてもよいし、2以上の感光剤を用いてもよい。
感光剤の含有量は、多官能(メタ)アクリル化合物100質量部に対して、例えば1~30質量部であり、好ましくは5~20質量部である。
【0052】
本実施形態の樹脂組成物は、上記の成分に加えて、必要に応じて、上掲の成分以外の成分を含んでもよい。そのような成分としては、例えば、熱ラジカル開始剤、エポキシ樹脂、硬化触媒、シランカップリング剤、界面活性剤、水、溶剤、酸化防止剤、シリカ等の充填材、増感剤、フィルム化剤等が挙げられる。
【0053】
本実施形態の樹脂組成物は電子装置の製造に好適に用いられる。
【0054】
たとえば、本実施形態の樹脂組成物は、
基材上に、上述の樹脂組成物を用いて樹脂膜を形成する膜形成工程と、
樹脂膜を露光する露光工程と、
露光された樹脂膜を現像する現像工程と、
を含む製造工程により得られる電子装置の製造に好適に用いられる。
【0055】
膜形成工程は、通常、基材上に樹脂組成物を塗布することで行われる。膜形成工程は、スピンコーター、バーコーター、スプレー装置、インクジェット装置等を用いて行うことができる。
次の露光工程の前に、塗布された樹脂組成物中の溶剤を乾燥させるなどの目的で、適切な加熱を行うことが好ましい。この際の加熱は、例えば80~150℃の温度で、1~60分間加熱することで行う。
乾燥後の樹脂膜の厚みは、最終的に得ようとする電子装置の構造に応じて適宜変わるが、例えば1~100μm程度、具体的には1~50μm程度である。
【0056】
露光工程における露光量は、特に限定されない。100~2000mJ/cm2が好ましく、200~1000mJ/cm2がより好ましい。
露光に用いられる光源は特に限定されず、感光性樹脂組成物中の感光剤が反応する波長の光(例えばg線やi線)を発する光源であればよい。典型的には高圧水銀灯が用いられる。
必要に応じて、露光後ベークを施してもよい。露光後ベークの温度は、特に限定されない。好ましくは50~150℃、より好ましくは50~130℃、さらに好ましくは55~120℃、特に好ましくは60~110℃である。また、露光後ベークの時間は、好ましくは1~30分間、より好ましくは1~20分間、さらに好ましくは1~15分間である。
露光工程においては、フォトマスクを用いることができる。これにより、樹脂組成物を用いて所望の「パターン」を形成することができる。
【0057】
現像液としては、例えば、有機系現像液、水溶性現像液等が挙げられる。現像液は、有機溶剤を含有することが好ましい。より具体的には、現像液は、有機溶剤を主成分とする現像液(成分の95質量%以上が有機溶剤である現像液)であることが好ましい。有機溶剤を含有する現像液で現像することにより、アルカリ現像液(水系)で現像する場合よりも、現像液によるパターンの膨潤を抑えること等が可能になる。つまり、よりファインなパターンを得やすい。
現像液を樹脂膜に接触させる方法は特に限定されない。一般的に知られている、浸漬法、パドル法、スプレー法などを適宜適用することができる。
現像工程の時間は、通常5~300秒程度、好ましくは10~120秒程度の範囲で、樹脂膜の膜厚や形成されるパターンの形状などに基づき適宜調整される。
【0058】
本実施形態の樹脂組成物を用いた電子装置の製造工程には、必要に応じて熱硬化工程を設けてもよい。熱硬化工程の条件は特に限定されないが、例えば160~250℃程度の加熱温度で、30~240分程度とすることができる。
【0059】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
【実施例0060】
本発明の実施態様を、実施例および比較例に基づき詳細に説明する。念のため述べておくと、本発明は実施例のみに限定されない。
【0061】
<化合物(A-1)の合成>
撹拌装置付きのセパラブルフラスコに、メタクリル酸グリシジル142.15g(1.00mol)、ガンマブチロラクトン<GBL>589gを仕込み、室温で撹拌溶解した。更に攪拌しながら5-メルカプト-1-メチルテトラゾール110.3g(0.95mol)を添加した。次いでオイルバスにて溶液を60℃まで加熱し、更に60℃で6時間反応を行い、本実施形態の化合物(A-1)の30%GBL溶液を得た。化合物(A-1)の合成にかかる反応式を下記に示す。
【0062】
【0063】
<化合物(A-1)の構造解析>
得られた化合物(A-1)について、13C-NMR及びGPCにより定性分析を行った。GPCのチャートから各原料のピーク(リテンションタイム22.3分および22.5分)の消失、ならびに化合物(A-1)に相当するピーク(リテンションタイム21.4分)の検出が確認できたことから、反応が100%完了していることを確認した。
更に、13C-NMRより、メタクリル酸グリシジルのエポキシ基由来のピーク(a)44.6ppmおよびピーク(b)49.4ppm)の消失および化合物(A-1)由来のピーク(c)28ppmの検出を確認した。
【0064】
【0065】
<化合物(A-2)の合成>
撹拌装置付きのセパラブルフラスコに、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル200.23g(1.00mol)、GBL691gを仕込み、室温で撹拌溶解した。更に攪拌しながら3-メルカプト-1,2,4-トリアゾール96.07g(0.95mol)を添加した。次いでオイルバスにて溶液を60℃まで加熱し、更に60℃で6時間反応を行い、本実施形態の化合物(A-2)の30%GBL溶液を得た。化合物(A-2)の合成にかかる反応式を下記に示す。
【0066】
【0067】
<化合物(A-2)の構造解析>
得られた化合物(A-2)について、13C-NMR及びGPCにより定性分析を行った。GPCのチャートから各原料のピーク(リテンションタイム22.1分および22.6分)の消失、ならびに化合物(A-2)に相当するピーク(リテンションタイム21.0分)の検出が確認できたことから、反応が100%完了していることを確認した。
更に、13C-NMRより、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテルのエポキシ基由来のピーク(e)44.6ppmおよびピーク(f)49.4ppmの消失および化合物(A-2)由来のピーク(d)28ppmの検出を確認した。
【0068】
【0069】
<化合物(A-3)の合成>
撹拌装置付きのセパラブルフラスコに、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル200.23g(1.00mol)、GBL589gを仕込み、室温で撹拌溶解した。更に攪拌しながら5-アミノ-1H-テトラゾール80.82g(0.95mol)を添加した。次いでオイルバスにて溶液を60℃まで加熱し、更に60℃で6時間反応を行い、本実施形態の化合物(A-3)の30%GBL溶液を得た。化合物(A-3)の合成にかかる反応式を下記に示す。
【0070】
【0071】
<化合物(A-3)の構造解析>
得られた化合物(A-3)について、13C-NMR及びGPCにより定性分析を行った。GPCのチャートから各原料のピーク(リテンションタイム22.1分および22.5分)の消失、ならびに化合物(A-3)に相当するピーク(リテンションタイム21.1分)の検出が確認できたことから、反応が100%完了していることを確認した。
更に、13C-NMRより、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテルのエポキシ基由来のピーク(e)44.6ppmおよびピーク(f)49.4ppmの消失および化合物(A-3)由来のピーク(g)58ppmの検出を確認した。
【0072】
【0073】
GPCの測定条件は下記の通りである。
・測定装置 :東ソー(株)社製、機種名:HPLC-8320GPC
・カラム :東ソー(株)社製、製品名:TSKgel SuperMultiporeXZ-M
・溶出溶媒 :テトラヒドロフラン
・流量 :0.35ml/分
・カラム温度:40℃
・検出器 :示差屈折率(RI)検出器(東ソー(株)製)
【0074】
13C-NMR測定の条件は以下の通りである。
・測定サンプル:秤量した試料に測定溶媒を加えて濃度調製した後、NMR測定用試料管に規定分量注いで作製した。
・測定装置 :日本電子JNM-ECA400超伝導FT-NMR装置
・共鳴周波数:100.53MHz
・測定核 :13C
・測定法 :NNE測定(インバースゲートデカップリング法)
・パルス幅 :3.83μsec
・パルス繰り返し待ち時間:30s
・積算回数 :4096回
・測定温度 :室温
・測定溶媒 :DMSO-d6(重水素化ジメチルスルホキシド)
【0075】
<樹脂(B-1)の合成>
撹拌機および冷却管を備えた3Lのセパラブルフラスコに、2,2´-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン304.2g(0.95モル)、4,4´-オキシジフタル酸二無水物310.22g(1.00モル)及びGBL1434gを加えて窒素雰囲気下で室温にて16時間反応し重合反応を行った。続いてオイルバスにて反応液温度を180℃まで上げ3時間反応を行ったのち室温まで冷却してポリイミド樹脂溶液を作成した。
続いて、反応液をイソプロパノール/水=4/7の混合溶液に撹拌しながら滴下し、樹脂固体を析出させた。得られた固体を荒濾過したのち、更にイソプロパノール/水=4/7で洗浄してポリイミドの白色固体を得た。得られた白色固体を200℃にて真空乾燥し、樹脂(B-1)を得た。
樹脂(B-1)のGPC測定による重量平均分子量(Mw)は50,000であった。
また、樹脂(B-1)を1H-NMR測定し、ポリイミドの芳香環のピークに対するアミドピークの定量値から、イミド化率(定義は前述)を計算した。イミド化率は99%以上であった。
【0076】
<樹脂(B-2)の合成>
2Lのセパラブルフラスコに、γ-ブチロラクトン428g、4,4´-オキシジフタル酸二無水物155.11gおよび2-ヒドロキシエチルメタクリレート130.14gを入れ、室温でフラスコ内の成分を撹拌し完全に溶解させた。続いて室温下で攪拌しながらピリジン79.1gを加えて、更に室温で16時間撹拌した。
上記のようにして得られた溶液を氷冷下で冷却攪拌しながら、その溶液に、ジシクロヘキシルカルボジイミド206.3gをγ-ブチロラクトン206gに溶解した溶液を30分かけて加えた。続いて4,4´-ジアミノジフェニルエーテル120.1gおよびγ-ブチロラクトン240gを加え、更に室温で2時間攪拌を継続した。
反応終了後、エタノール30gを加えて1時間攪拌した。その後、γ-ブチロラクトン400gを加え更に撹拌し、生じた沈殿物をろ過により取り除いた。これによりポリアミド酸エステルの反応液を得た。
得られた反応液を、室温下で、大量の30質量%メタノール水溶液に撹拌しながら滴下し、ポリマーを沈殿させた。得られた沈殿物を濾取し、真空乾燥することにより、樹脂(B-2)を得た。
【0077】
<硬化触媒(G-1)の合成>
撹拌装置付きのセパラブルフラスコに、4,4´-ビスフェノールS 37.5g(0.15mol)、メタノール100mLを仕込み、室温で撹拌溶解し、更に攪拌しながら予め50mLのメタノールに水酸化ナトリウム4.0g(0.1mol)を溶解した溶液を添加した。次いで予め150mLのメタノールにテトラフェニルホスホニウムブロマイド41.9g(0.1mol)を溶解した溶液を加えた。しばらく攪拌を継続し、300mLのメタノールを追加した後、フラスコ内の溶液を大量の水に撹拌しながら滴下し、白色沈殿を得た。沈殿を濾過、乾燥し白色結晶の硬化触媒(G-1)を得た。
【0078】
<感光性樹脂組成物の調製>
後掲の表1に従い配合された各原料を、室温下で原料が完全に溶解するまで撹拌し、溶液を得た。その後、その溶液を孔径0.2μmのナイロンフィルターで濾過した。このようにして、ワニス状の感光性樹脂組成物を得た。
【0079】
表1に各成分の配合量(質量部)を示す。また、各成分の詳細は下記のとおりである。
【0080】
<(A)化合物>
(A-1)上記で合成したテトラゾール環とメタクリル基を有する化合物
(A-2)上記で合成したトリアゾール環とアクリル基を有する化合物
(A-3)上記で合成したテトラゾール環とアクリル基を有する化合物
【0081】
<(B)樹脂>
(B-1)上記で合成したポリマー(ポリイミド樹脂)
(B-2)上記で合成したポリマー(ポリアミド酸エステル樹脂)
【0082】
<(C)多官能(メタ)アクリル化合物>
(C-1)ビスコート#802(大阪有機工業(株)製、多官能アクリル化合物)
(C-2)A―9550(新中村化学(株)製、多官能アクリル化合物)
(C-3)ビスコート#300(大阪有機工業(株)製、多官能アクリル化合物)
(C-4)ビスコート#230(大阪有機工業(株)製、多官能アクリル化合物)
【0083】
<(D)感光剤>
(D-1)Irgacure OXE02(BASF社製、オキシムエステル型光ラジカル発生剤)
【0084】
<(E)エポキシ樹脂>
(E-1)EXA-830CRP(DIC(株)、エポキシ樹脂)
【0085】
<(F)熱ラジカル発生剤>
(F-1)パーカドックスBC(化薬ヌーリオン(株)製)
【0086】
<(G)硬化触媒>
(G-1)上記で合成した硬化触媒(ホスホニウム塩)
【0087】
<(H)シランカップリング剤>
(H-1)X-12-967C(信越化学工業(株)製)
(H-2)KBM-503(信越化学工業(株)製)
【0088】
<(J)界面活性剤>
(J-1)FC4432(3M社製、フッ素系)
【0089】
<(K)(溶剤)>
(K-1)乳酸エチル(EL)
(K-2)ガンマ-ブチロラクトン(GBL)
【0090】
<密着性:テープテスト評価>
(テープテスト評価用基板の作成)
感光性樹脂組成物を表面に3000Åのメッキ銅層を有した12インチシリコンウェハ上に乾燥後の膜厚が10μmとなるようにスピンコートにて塗布し、続いて120℃で3分間加熱することで感光性樹脂膜を得た。得られた感光性樹脂膜に、i線ステッパーにてフォトマスクを介さずに300mJ/cm2の露光を行った。その後、露光された樹脂膜をシリコンウェハごとスプレー現像機にてシクロペンタノン及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートにて現像し、更にスピンドライにて風乾後、120℃で2分間、ホットプレート上で乾燥を行った。さらにその後、窒素雰囲気下、200℃で90分間熱処理した。以上により、テープテスト評価用基板を得た。
【0091】
(テープテスト評価)
テープテスト評価用基板の作成にて得られた基板上のフィルムについてカッターを用いて1mm×1mmのパターンを100個作成した。次いで、かかるパターンの表面に対し、剥離強度が3.0mN/10mmのセロテープ(登録商標)をよく貼り付けた後に、セロテープ(登録商標)を垂直に剥がした。次いで、剥離したパターンの数を数えた。なお、本評価においては、パターンの剥離数が少ないほど基板への密着性が良好であると評価した。結果を表1に示す。
【0092】
<密着性:90度ピール強度評価>
(90度ピール強度評価用基板の作成)
感光性樹脂組成物を表面に3000Åのメッキ銅層を有した12インチシリコンウェハ上に乾燥後の膜厚が10μmとなるようにスピンコートにて塗布し、続いて120℃で3分間加熱することで感光性樹脂膜を得た。得られた感光性樹脂膜に、i線ステッパーにて幅6.5mm、長さ50mmの範囲が露光されるようにフォトマスクを介して300mJ/cm2の露光を行った。その後、露光された樹脂膜をシリコンウェハごとスプレー現像機にてシクロペンタノン及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートにて現像し、更にスピンドライにて風乾後、120℃で2分間、ホットプレート上で乾燥を行った。さらにその後、窒素雰囲気下、200℃で90分間熱処理し、硬化膜を得た。
続いて、得られた幅6.5mm、長さ50mmの硬化膜が残るようにシリコンウェハをカットし、硬化膜の端部(5mm)をCuエッチング液に23度で24時間浸漬後、水洗・乾燥し、端部のフィルムが剥離した90度ピール強度評価用基板を得た。
【0093】
(90度ピール強評価)
90度ピール強度評価用基板の作成にて得られた基板について、90度ピール強度測定装置(AUTOGRAPH AG-Xplus、島津製作所(株)製)にセットし、剥離速度20mm/分にて1cm剥離を行い、剥離強度の平均値を評価した。90度ピール強度の単位はN/cmである。90度ピール強度は信頼性の面から高い方が好ましい。結果を表1に示す。
【0094】
<パターニング性>
感光性樹脂組成物を表面に3000Åのメッキ銅層を有した12インチシリコンウェハ上に乾燥後の膜厚が5μmとなるようにスピンコートにて塗布し、ホットプレートにて100℃で3分間乾燥し、感光性樹脂膜を得た。この感光性樹脂膜に、凸版印刷社製マスク(テストチャートNo.1:幅0.5~50μmの残しパターン及び抜きパターンが描かれている)を通して、i線ステッパー(ニコン社製・NSR-4425i)を用いて、露光量を変化させながらi線を照射した。
スプレー現像機にてシクロペンタノンを用いて2500回転で30秒、続いてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを用いて2500回転で10秒現像し、更に2500回転で10秒スピンドライにて風乾後、ホットプレート上120℃で2分間の乾燥を行った。さらにその後、窒素雰囲気下、200℃で90分間熱処理し、パターン付きの硬化膜を得た。
得られたパターンについて観察し、7μmΦのビアホールが開口したものを◎(とても良い)、10μmΦのビアホールが開口したものを○(良い)、10μmのビアホールが開口しなかったものを×(悪い)として評価した。結果を表1に示す。
【0095】
<常温粘度変化率>
配合直後の感光性樹脂組成物の粘度を、E型粘度計(TVE-25L)にて測定した。この時の粘度をAとした。その後、感光性樹脂組成物のワニスを23℃にて7日間保管を行い、再度粘度を測定した。この時の粘度をBとした。
粘度A及び粘度Bを下記式に代入して、粘度変化率を算出した。粘度変化率が5%以下のものを◎(とても良い)、5%超10%以下のものを○(良い)、10%を超えたものを×(悪い)として評価した。粘度変化率は、安定した膜厚を得るために、低いほうが好ましい。結果を表1に示す。
粘度変化率[%]={(粘度B-粘度A)/粘度A}×100
【0096】
<熱サイクル試験>
(熱サイクル試験用サンプルの作製)
酸化膜付きの12インチシリコンウェハ上に、幅5μm/ピッチ5μm、高さ5μmの櫛歯型のCu配線を形成したCu配線基板を作製した。
感光性樹脂組成物を、上記Cu配線基板上に、スピンコートによって、乾燥後の膜厚(配線がない部分の厚み)が10μmになるように塗布し、120℃で3分乾燥して感光性樹脂膜を形成した。
得られた感光性樹脂膜に、i線ステッパーを用いて、フォトマスクを介さずに300mJ/cm2の露光を行った。その後スプレー現像機にてシクロペンタノンを用いて2500回転で30秒、続いてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを用いて2500回転で10秒現像し、更に2500回転で10秒スピンドライにて風乾後、ホットプレート上120℃で2分間の乾燥を行った。さらにその後、窒素雰囲気下、200℃で90分間熱処理し、熱サイクル試験用サンプルを得た。
【0097】
(熱サイクル試験評価)
熱サイクル試験用サンプルの作製にて得られた試験サンプルを温度サイクル試験装置(TCT装置)(エスペック製、TSA-72EH-W)にセットし、-60℃から200℃への昇温およびその後の-60℃への降温を1サイクルとして、200サイクルの処理を行った。続いて、FIB(集束イオンビーム)処理にて、Cu配線部の断面を出し、SEMにて観察した。各実施例および比較例において、それぞれ、合計10か所の配線と樹脂膜の界面を観察した。
10か所すべてで剥離が観察されなかった場合を◎(良い)、1か所でも剥離が観察されたものを×(悪い)と評価した。結果を表1に示す。
【0098】
【0099】
表1に示されるとおり、本実施形態の化合物(A-1)~(A-3)が配合された実施例1~6の感光性樹脂組成物は、比較例1と比較して、テープテスト、90℃ピール試験、パターニング性、常温粘度変化率および熱サイクル評価の結果がいずれも優れていた。これらの評価結果により、本実施形態の化合物を樹脂組成物に配合することで、樹脂組成物と基材との密着が向上することが理解される。