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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151212
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】プリント配線板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/46 20060101AFI20220929BHJP
   C08G 59/62 20060101ALI20220929BHJP
   C08G 59/00 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
H05K3/46 T
C08G59/62
C08G59/00
H05K3/46 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021054180
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大石 凌平
(72)【発明者】
【氏名】川合 賢司
【テーマコード(参考)】
4J036
5E316
【Fターム(参考)】
4J036AA04
4J036AA06
4J036AC01
4J036AD08
4J036AE05
4J036DB09
4J036DC32
4J036DC38
4J036FA05
4J036FB08
4J036FB12
4J036HA12
4J036JA08
5E316AA02
5E316AA12
5E316AA43
5E316CC04
5E316CC06
5E316CC09
5E316CC32
5E316CC33
5E316CC34
5E316CC36
5E316CC37
5E316CC38
5E316CC39
5E316CC54
5E316DD02
5E316DD25
5E316DD33
5E316DD47
5E316FF03
5E316FF15
5E316GG15
5E316GG17
5E316GG22
5E316GG23
5E316GG27
5E316GG28
5E316HH24
5E316JJ02
5E316JJ12
(57)【要約】
【課題】デスミア処理(粗化処理)後のクラックの発生を抑制することができるプリント配線板の製造方法の提供。
【解決手段】(A)内層基板と、該内層基板上に接合した樹脂組成物層とを備える積層体の樹脂組成物層を熱硬化させ、ガラス転移温度がT(℃)である絶縁層を形成する工程、(B)絶縁層をT(℃)で加熱処理する工程、及び(C)絶縁層を酸化剤溶液でデスミア処理する工程をこの順で含み、樹脂組成物層が、エポキシ樹脂及び活性エステル系硬化剤を含み、且つ下記式(1)及び(2)を共に満たす、プリント配線板の製造方法。
-20≦T-T≦20 (1)
60≦T≦150 (2)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)内層基板と、該内層基板上に接合した樹脂組成物層とを備える積層体の樹脂組成物層を熱硬化させ、ガラス転移温度がT(℃)である絶縁層を形成する工程、
(B)絶縁層をT(℃)で加熱処理する工程、及び
(C)絶縁層を酸化剤溶液でデスミア処理する工程
をこの順で含み、
樹脂組成物層が、エポキシ樹脂及び活性エステル系硬化剤を含み、且つ
下記式(1)及び(2)を共に満たす、プリント配線板の製造方法。
-20≦T-T≦20 (1)
60≦T≦150 (2)
【請求項2】
(A)工程が、
(A-1)支持体と、該支持体上に設けられた樹脂組成物層とを備える樹脂シートを準備する工程、
(A-2)樹脂組成物層が内層基板と接合するように樹脂シートを積層し、積層体を得る工程、及び
(A-3)樹脂組成物層を熱硬化させ、ガラス転移温度がT(℃)である絶縁層を形成する工程
をこの順で含む、請求項1に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項3】
(A-3)工程が、
(A-31)樹脂組成物層を硬化加熱温度よりも低い予備加熱温度にて予備加熱する工程、及び
(A-32)樹脂組成物層を硬化加熱温度にて加熱して、樹脂組成物層を熱硬化させ、ガラス転移温度がT(℃)である絶縁層を形成する工程
をこの順で含む、請求項2に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項4】
硬化加熱温度が150℃~210℃であり、且つ予備加熱温度が100℃~150℃である、請求項3に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項5】
(A)工程が、(A-3)工程後に、
(A-4)絶縁層を30℃以下に冷却する工程
をさらに含む、請求項2~4の何れか1項に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項6】
(A)工程が、
(A-5)絶縁層又は樹脂組成物層に穴あけする工程
をさらに含む、請求項1~5の何れか1項に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項7】
(A-5)工程が、レーザーを使用して実施される、請求項6に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項8】
(A-5)工程により形成される穴が、トップ径100μm以下のものを含む、請求項6又は7に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項9】
(B)工程の加熱処理時間が、10分間以上である、請求項1~8の何れか1項に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項10】
(B)工程の加熱処理が、気体雰囲気下で絶縁層を加熱することにより行われる、請求項1~9の何れか1項に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項11】
(C)工程後に、(D)絶縁層の表面に導体層を形成する工程をさらに含む、請求項1~10の何れか1項に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項12】
(℃)が、100(℃)以上である、請求項1~11の何れか1項に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項13】
-T(℃)が、-5(℃)~10(℃)である、請求項1~12の何れか1項に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項14】
樹脂組成物層が、無機充填材をさらに含む、請求項1~13の何れか1項に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項15】
無機充填材の含有量が、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合、50質量%以上である、請求項14に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項16】
樹脂組成物層が、フェノキシ樹脂をさらに含む、請求項1~15の何れか1項に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項17】
樹脂組成物層が、ラジカル重合性化合物をさらに含む、請求項1~16の何れか1項に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項18】
樹脂組成物層が、シアネートエステル系硬化剤をさらに含む、請求項1~17の何れか1項に記載のプリント配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多層プリント配線板の製造技術としては、内層基板上に絶縁層と導体層を交互に積み重ねるビルドアップ方式による製造方法が知られている。絶縁層は、一般に、樹脂組成物を硬化させることにより形成される。例えば、特許文献1には、シアネートエステル樹脂、特定のエポキシ樹脂及び活性エステル硬化剤を含む樹脂組成物を用いて、プリント配線板における絶縁層を形成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-144361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、電子機器や電子部品の小型化が顕著になっており、それに伴って、プリント配線板をより薄型化するためにプリント配線板の絶縁層をより薄層にする必要が求められている。
【0005】
しかし、絶縁層を薄層化すると、プリント配線板プロセスにおけるデスミア処理(粗化処理)工程後に内層基板中の配線やパッドなどの下層銅形状に沿った割れ、また、レーザー等によって開けられた穴の周辺の割れ、すなわちクラックの発生が増加することが知られている。
【0006】
本発明の課題は、デスミア処理(粗化処理)後のクラックの発生を抑制することができるプリント配線板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の課題を達成すべく、本発明者らは鋭意検討した結果、絶縁層の形成に活性エステル系硬化剤を使用し、絶縁層形成後に絶縁層をそのガラス転移温度T(℃)付近(±20℃以内)の温度T(℃)で加熱処理することにより、デスミア処理(粗化処理)後のクラックの発生を抑えることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の内容を含む。
[1] (A)内層基板と、該内層基板上に接合した樹脂組成物層とを備える積層体の樹脂組成物層を熱硬化させ、ガラス転移温度がT(℃)である絶縁層を形成する工程、
(B)絶縁層をT(℃)で加熱処理する工程、及び
(C)絶縁層を酸化剤溶液でデスミア処理する工程
をこの順で含み、
樹脂組成物層が、エポキシ樹脂及び活性エステル系硬化剤を含み、且つ
下記式(1)及び(2)を共に満たす、プリント配線板の製造方法。
-20≦T-T≦20 (1)
60≦T≦150 (2)
[2] (A)工程が、
(A-1)支持体と、該支持体上に設けられた樹脂組成物層とを備える樹脂シートを準備する工程、
(A-2)樹脂組成物層が内層基板と接合するように樹脂シートを積層し、積層体を得る工程、及び
(A-3)樹脂組成物層を熱硬化させ、ガラス転移温度がT(℃)である絶縁層を形成する工程
をこの順で含む、上記[1]に記載のプリント配線板の製造方法。
[3] (A-3)工程が、
(A-31)樹脂組成物層を硬化加熱温度よりも低い予備加熱温度にて予備加熱する工程、及び
(A-32)樹脂組成物層を硬化加熱温度にて加熱して、樹脂組成物層を熱硬化させ、ガラス転移温度がT(℃)である絶縁層を形成する工程
をこの順で含む、上記[2]に記載のプリント配線板の製造方法。
[4] 硬化加熱温度が150℃~210℃であり、且つ予備加熱温度が100℃~150℃である、上記[3]に記載のプリント配線板の製造方法。
[5] (A)工程が、(A-3)工程後に、
(A-4)絶縁層を30℃以下に冷却する工程
をさらに含む、上記[2]~[4]の何れかに記載のプリント配線板の製造方法。
[6] (A)工程が、
(A-5)絶縁層又は樹脂組成物層に穴あけする工程
をさらに含む、上記[1]~[5]の何れかに記載のプリント配線板の製造方法。
[7] (A-5)工程が、レーザーを使用して実施される、上記[6]に記載のプリント配線板の製造方法。
[8] (A-5)工程により形成される穴が、トップ径100μm以下のものを含む、上記[6]又は[7]に記載のプリント配線板の製造方法。
[9] (B)工程の加熱処理時間が、10分間以上である、上記[1]~[8]の何れかに記載のプリント配線板の製造方法。
[10] (B)工程の加熱処理が、気体雰囲気下で絶縁層を加熱することにより行われる、上記[1]~[9]の何れかに記載のプリント配線板の製造方法。
[11] (C)工程後に、(D)絶縁層の表面に導体層を形成する工程をさらに含む、上記[1]~[10]の何れかに記載のプリント配線板の製造方法。
[12] T(℃)が、100(℃)以上である、上記[1]~[11]の何れかに記載のプリント配線板の製造方法。
[13] T-T(℃)が、-5(℃)~10(℃)である、上記[1]~[12]の何れかに記載のプリント配線板の製造方法。
[14] 樹脂組成物層が、無機充填材をさらに含む、上記[1]~[13]の何れかに記載のプリント配線板の製造方法。
[15] 無機充填材の含有量が、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合、50質量%以上である、上記[14]に記載のプリント配線板の製造方法。
[16] 樹脂組成物層が、フェノキシ樹脂をさらに含む、上記[1]~[15]の何れかに記載のプリント配線板の製造方法。
[17] 樹脂組成物層が、ラジカル重合性化合物をさらに含む、上記[1]~[16]の何れかに記載のプリント配線板の製造方法。
[18] 樹脂組成物層が、シアネートエステル系硬化剤をさらに含む、上記[1]~[17]の何れかに記載のプリント配線板の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、デスミア処理(粗化処理)後のクラックの発生を抑制することができるプリント配線板の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。ただし、本発明は、下記実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施され得る。
【0011】
<プリント配線板の製造方法>
本発明のプリント配線板の製造方法は、
(A)内層基板と、該内層基板上に接合した樹脂組成物層とを備える積層体の樹脂組成物層を熱硬化させ、ガラス転移温度がT(℃)である絶縁層を形成する工程、
(B)絶縁層をT(℃)で加熱処理する工程、及び
(C)絶縁層を酸化剤溶液でデスミア処理する工程
をこの順で含み、
樹脂組成物層が、エポキシ樹脂及び活性エステル系硬化剤を含み、且つ
下記式(1)及び(2)を共に満たす。
-20≦T-T≦20 (1)
60≦T≦150 (2)
ここで、「≦」は左の数値が右の数値以下の数値であることを表す。
【0012】
このような製造方法によれば、デスミア処理(粗化処理)後のクラックの発生を抑制することができる。これは、絶縁層形成後に、絶縁層をそのガラス転移温度T(℃)付近(±20℃以内)の温度T(℃)で加熱処理することにより、樹脂組成物層の熱硬化により絶縁層内部に蓄積された応力が徐々に緩和されることによるものであると推定される。
【0013】
以下、本発明のプリント配線板の製造方法における各工程について説明する。
【0014】
<(A)工程>
(A)工程では、内層基板と、該内層基板上に接合した樹脂組成物層とを備える積層体の樹脂組成物層を熱硬化させ、ガラス転移温度がT(℃)である絶縁層を形成する。
【0015】
(A)工程は、下記(A-1)~(A-3)工程をこの順で含むことが好ましい。
(A-1)支持体と、該支持体上に設けられた樹脂組成物層とを備える樹脂シートを準備する工程
(A-2)樹脂組成物層が内層基板と接合するように樹脂シートを積層し、積層体を得る工程
(A-3)樹脂組成物層を熱硬化させ、ガラス転移温度がT(℃)である絶縁層を形成する工程
【0016】
(A-1)工程では、支持体と、該支持体上に設けられた樹脂組成物層とを備える樹脂シートを準備する。
【0017】
樹脂シートは、例えば、ワニス状の樹脂組成物を、ダイコーター等の塗布装置を用いて支持体上に塗布し、さらに、必要に応じて乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。
【0018】
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の公知の方法により実施してよい。乾燥条件は特に限定されないが、樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。ワニス状の樹脂組成物中の有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%~60質量%の有機溶剤を含む樹脂組成物を用いる場合、50℃~150℃(好ましくは80~120℃)で1分間~10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
【0019】
樹脂シートに用いる支持体としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。
【0020】
支持体としてプラスチック材料からなるフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」と略称することがある。)等のポリエステル、ポリカーボネート(以下「PC」と略称することがある。)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミド等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0021】
支持体として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
【0022】
支持体は、樹脂組成物層と接合する面にマット処理、コロナ処理、帯電防止処理を施してあってもよい。
【0023】
また、支持体としては、樹脂組成物層と接合する面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型層付き支持体は、市販品を用いてもよく、例えば、アルキド樹脂系離型剤を主成分とする離型層を有するPETフィルムである、リンテック社製の「SK-1」、「AL-5」、「AL-7」、東レ社製の「ルミラーT60」、帝人社製の「ピューレックス」、ユニチカ社製の「ユニピール」等が挙げられる。
【0024】
支持体の厚みとしては、特に限定されないが、5μm~75μmの範囲が好ましく、10μm~60μmの範囲がより好ましい。なお、離型層付き支持体を使用する場合、離型層付き支持体全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
【0025】
樹脂シートにおいて、樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)に、支持体に準じた保護フィルムをさらに積層してもよい。保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、1μm~40μmである。保護フィルムを積層することにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。このような樹脂シートは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。樹脂シートが保護フィルムを有する場合、保護フィルムを剥がしてから、内層基板に積層する。
【0026】
(A-2)工程では、樹脂組成物層が内層基板と接合するように樹脂シートを積層し、積層体を得る。
【0027】
内層基板とは、プリント配線板の基板となる部材であって、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。また、該基板は、その片面又は両面に導体層を有していてもよく、この導体層はパターン加工されていてもよい。またプリント配線板を製造する際に、さらに絶縁層及び/又は導体層が形成されるべき中間製造物も内層基板に含まれる。プリント配線板が部品内蔵回路板である場合、部品を内蔵した内層基板を使用し得る。
【0028】
樹脂組成物層が、内層基板と接合するように、内層基板に樹脂シートを積層し、積層体を得る。一実施形態において、内層基板と樹脂シートの積層は、例えば、支持体側から樹脂シートを内層基板に加熱圧着することにより行うことができる。樹脂シートを内層基板に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ともいう。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール)等が挙げられる。なお、加熱圧着部材を樹脂シートに直接プレスするのではなく、内層基板の表面凹凸に樹脂シートが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスするのが好ましい。
【0029】
内層基板と樹脂シートの積層は、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法において、加熱圧着温度は、好ましくは60℃~160℃、より好ましくは80℃~140℃の範囲であり、加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa~1.77MPa、より好ましくは0.29MPa~1.47MPaの範囲であり、加熱圧着時間は、好ましくは10秒間~400秒間、より好ましくは20秒間~300秒間の範囲である。
【0030】
積層は、市販の真空ラミネーターによって行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、名機製作所社製の真空加圧式ラミネーター、ニッコー・マテリアルズ社製のバキュームアップリケーター、バッチ式真空加圧ラミネーター等が挙げられる。
【0031】
積層の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材を支持体側からプレスすることにより、積層された樹脂シートの平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。平滑化処理は、市販のラミネーターによって行うことができる。なお、積層と平滑化処理は、上記の市販の真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
【0032】
(A-3)工程では、樹脂組成物層を熱硬化させ、ガラス転移温度がT(℃)である絶縁層を形成する。
【0033】
樹脂組成物層の硬化加熱温度は、樹脂組成物の種類等によっても異なるが、好ましくは100℃以上、より好ましくは150℃以上、さらに好ましくは160℃以上である。上限は、好ましくは220℃以下、より好ましくは210℃以下、さらに好ましくは200℃以下である。
【0034】
樹脂組成物層の硬化加熱時間は、樹脂組成物の種類等によっても異なるが、好ましくは5分間以上、より好ましくは10分間以上、さらに好ましくは15分間以上であり、上限は、特に限定されるものではないが、好ましくは120分間以下、より好ましくは100分間以下、さらに好ましくは90分間以下である。樹脂組成物層の硬化加熱時間とは、樹脂組成物層の硬化加熱温度を維持する時間を意味する。熱硬化は、通常、気体(例えば空気、アルゴンガス、窒素ガス又はそれらの混合ガス)雰囲気下で行われ、例えば0.05MPa~0.15MPa、好ましくは0.08~0.12MPaの圧力下で行われる。
【0035】
(A-3)工程は、下記(A-31)工程及び(A-32)工程をこの順で含むことが好ましい。
(A-31)樹脂組成物層を硬化加熱温度よりも低い予備加熱温度にて予備加熱する工程、及び
(A-32)樹脂組成物層を硬化加熱温度にて加熱して、樹脂組成物層を熱硬化させ、ガラス転移温度がT(℃)である絶縁層を形成する工程
【0036】
樹脂組成物層の予備加熱温度としては、好ましくは50℃以上、より好ましくは100℃以上、さらに好ましくは120℃以上であり、好ましくは160℃以下、より好ましくは150℃以下、さらに好ましくは140℃以下である。樹脂組成物層の予備加熱時間としては、好ましくは5分間以上、より好ましくは10分間以上、さらに好ましくは15分間以上であり、好ましくは150分間以下、より好ましくは130分間以下、さらに好ましくは120分間以下である。予備加熱は、通常、気体(例えば空気、アルゴンガス、窒素ガス又はそれらの混合ガス)雰囲気下で行われ、例えば0.05MPa~0.15MPa、好ましくは0.08~0.12MPaの圧力下で行われる。
【0037】
熱硬化により形成される絶縁層のガラス転移温度(T)は、絶縁層の耐熱性の観点から、好ましくは60(℃)以上、より好ましくは70(℃)以上、さらに好ましくは80(℃)以上、さらにより好ましくは90(℃)以上、さらに一層好ましくは100(℃)以上、特に好ましくは110(℃)以上であり得、上限は、特に限定されないが、好ましくは160(℃)以下、より好ましくは150(℃)以下であり得る。
【0038】
(A-31)工程と(A-32)工程の間においては、室温にもどすことなく(好ましくは予備加熱温度から硬化加熱温度へとそのまま昇温して)、連続的に加熱してもよいし、或いは、(A-31)工程後(A-32)工程前にさらに(A-33)絶縁層を30℃以下に冷却する工程を含んでいてもよい。(A-33)工程の冷却温度は、好ましくは10℃~30℃、より好ましくは20℃~30℃であり得る。冷却する方法は、特に限定されず、絶縁層を放冷してもよく、絶縁層に冷風を吹きあてる方法、絶縁層を冷却したロールに押し当てる方法などによりを冷却してもよい。(A-33)工程の冷却は、通常、気体(例えば空気、アルゴンガス、窒素ガス又はそれらの混合ガス)雰囲気下で行われ、例えば0.05MPa~0.15MPa、好ましくは0.08~0.12MPaの圧力下で行われる。
【0039】
(A-3)工程の熱硬化により形成される絶縁層の厚みは、準備した樹脂シートの樹脂組成物層の厚みに依存するが、例えば200μm以下、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下、さらに好ましくは60μm以下、特に好ましくは50μm以下であり、下限は、特に限定されないが、通常、1μm以上、5μm以上、10μm以上等とし得る。
【0040】
(A)工程は、(A-3)工程後に、(A-4)絶縁層を30℃以下に冷却する工程をさらに含むことが好ましい。
【0041】
(A-4)工程を行うことで、樹脂組成物の熱硬化で生じる応力が過剰となることを抑制できる。よって、(B)工程にて絶縁層での応力の残留をより抑制でき、クラックの発生を効果的に抑制することができる。(A-4)工程の冷却温度は、好ましくは10℃~30℃、より好ましくは20℃~30℃であり得る。冷却する方法は、特に限定されず、絶縁層を放冷してもよく、絶縁層に冷風を吹きあてる方法、絶縁層を冷却したロールに押し当てる方法などによりを冷却してもよい。(A-4)工程の冷却は、通常、気体(例えば空気、アルゴンガス、窒素ガス又はそれらの混合ガス)雰囲気下で行われ、例えば0.05MPa~0.15MPa、好ましくは0.08~0.12MPaの圧力下で行われる。
【0042】
(A)工程は、(A-5)絶縁層又は樹脂組成物層に穴あけする工程をさらに含むことが好ましい。(A-5)工程は、例えば、(A-31)工程後(ただし(A-33)工程が含まれる場合は好ましくは(A-33)工程後)(A-32)工程前、或いは(A-3)工程後(ただし(A-4)工程が含まれる場合は好ましくは(A-4)工程後)に含まれ得る。
【0043】
(A-5)工程は、プリント配線板の製造に用いられる当業者に公知の各種方法に従って実施してよい。(A-5)工程により、絶縁層(樹脂組成物層)にビアホール、スルーホールを形成することができる。(A-5)工程は、例えば、ドリル、レーザー(CO(炭酸ガス)レーザー、YAGレーザー等)、プラズマ等を使用して実施することができる。(A-5)工程は、レーザーを使用して実施されることが好ましい。
【0044】
(A-5)工程により形成される穴(ビアホール、スルーホール)は、絶縁層(樹脂組成物層)を貫通する形態であり得る。(A-5)工程により形成される穴(ビアホール、スルーホール)の形状は、特に限定されないが、例えば、円形(略円形)であり得る。(A-5)工程により形成される穴(ビアホール、スルーホール)は、そのトップ径が、例えば100μm以下、好ましくは70μm以下、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは40μm以下のものを含み得る。ここで、ビアホールのトップ径とは、絶縁層の表面(内層基板と接合していない側)でのビアホールの開口の直径をいう。
【0045】
<(B)工程>
(B)工程は、絶縁層をT(℃)で加熱処理する。(B)工程を行うことで、(C)工程後に発生するクラックの発生を抑制することができる。これは、内層基板のパターン形状に依存した応力を緩和させることができるからであると推定される。
【0046】
(B)工程の加熱処理温度(T)は、(A)工程における樹脂組成物層の硬化加熱温度よりも低い温度であることが好ましい。加熱処理温度(T)としては、60(℃)以上150(℃)以下であり、クラックの発生をより一層抑制する観点から、好ましくは70(℃)以上、より好ましくは80(℃)以上、さらに好ましくは90(℃)以上、特に好ましくは100(℃)以上であり得る。
【0047】
絶縁層のガラス転移温度(T)と加熱処理温度(T)の値の差(T-T)は、20(℃)以下であり、好ましくは15(℃)以下、より好ましくは10(℃)以下、特に好ましくは5(℃)以下であり、T-Tの下限は、-20(℃)以上であり、好ましくは-15(℃)以上、より好ましくは-10(℃)以上、さらに好ましくは-5(℃)以上、特に好ましくは0(℃)以上である。
【0048】
(B)工程の加熱処理時間は、クラックの発生を抑制する観点から、好ましくは1分間以上、より好ましくは10分間以上、さらに好ましくは20分間以上であり、上限は、特に限定されるものではないが、例えば、120分間以下、90分間以下等とすればよい。加熱処理時間とは、加熱処理温度を維持する時間を意味する。
【0049】
(B)工程の加熱処理は、気体雰囲気下で絶縁層を加熱することにより行われてもよく、液体中に絶縁層を浸漬させて絶縁層を加熱することにより行われてもよいが、気体雰囲気下で絶縁層を加熱することにより行われることが好ましい。加熱処理は、例えば0.05MPa~0.15MPa、好ましくは0.08~0.12MPaの圧力下で行われる。
【0050】
気体雰囲気下で加熱する場合に用いる気体としては、空気、アルゴンガス、窒素ガス又はそれらの混合ガスを用いることができる。
【0051】
液体中で加熱する場合に用いる液体としては、沸点が加熱処理温度(T)以上の液体を用いることができる。このような液体としては、例えば、下記で説明する膨潤液を用いることができる。膨潤液を用いる場合は、その加熱温度を加熱処理温度(T)に設定すればよく、そのpHは、好ましくは6以上、より好ましくは6.5以上、さらに好ましくは7以上であり、好ましくは14以下、さらに好ましくは13.5以下、12以下、12.5以下、11以下、10以下、8以下、7.5以下であり得る。
【0052】
(B)工程は、絶縁層をT(℃)で加熱処理した後、絶縁層を30℃以下に冷却する工程を含んでいてもよい。当該工程の冷却温度は、好ましくは10℃~30℃、より好ましくは20℃~30℃であり得る。冷却する方法は、特に限定されず、絶縁層を放冷してもよく、絶縁層に冷風を吹きあてる方法、絶縁層を冷却したロールに押し当てる方法などによりを冷却してもよい。当該工程の冷却は、通常、気体(例えば空気、アルゴンガス、窒素ガス又はそれらの混合ガス)雰囲気下で行われ、例えば0.05MPa~0.15MPa、好ましくは0.08~0.12MPaの圧力下で行われる。
【0053】
加熱処理は、1回のみ行ってもよく、2回行ってもよい。加熱処理を2回行う場合、一実施形態として、例えば、T(℃)で1回目の絶縁層の加熱処理を行った後、絶縁層を30℃以下に冷却し、再びT(℃)で絶縁層の加熱処理を行う。冷却温度、冷却する方法は上記と同様である。2回目の加熱処理温度及び加熱処理時間は1回目と相違してもよい。
【0054】
<(C)工程>
(C)工程は、絶縁層を酸化剤溶液でデスミア処理する。デスミア処理の手順、条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常使用される公知の手順、条件を採用することができる。デスミア処理は、例えば、絶縁層を酸化剤溶液に浸漬することにより行うことができる。
【0055】
酸化剤溶液としては、通常のデスミア処理にて用いる酸化剤溶液を用いることができる。このような酸化剤溶液としては、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に酸化剤として過マンガン酸カリウムや過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。また、酸化剤溶液の酸化剤濃度としては、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは7質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
【0056】
酸化剤溶液は、市販品を用いてもよい。酸化剤溶液の市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製「コンセントレート・コンパクトCP」、「ドージングソリューション・セキュリガンスP」等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。
【0057】
酸化剤溶液は、絶縁層浸漬時に加熱して使用することが好ましい。酸化剤溶液の加熱温度としては、好ましくは60℃以上、より好ましくは65℃以上、さらに好ましくは70℃以上であり、好ましくは100℃以下、より好ましくは95℃以下、さらに好ましくは90℃以下である。
【0058】
酸化剤溶液への絶縁層の浸漬時間としては、好ましくは5分間以上、より好ましくは10分間以上、さらに好ましくは15分間以上であり、好ましくは40分間以下、より好ましくは30分間以下、さらに好ましくは25分間以下である。
【0059】
(C)工程では、絶縁層を酸化剤溶液でデスミア処理する前に、絶縁層を膨潤液に浸漬して膨潤処理を行ってもよい。
【0060】
膨潤液としては、例えば、水、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等の膨潤液等が挙げられ、中でも、水、膨潤液が好ましく、水であることがより好ましい。膨潤液は市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU」等が挙げられる。
【0061】
膨潤液は、絶縁層浸漬時に加熱して使用することが好ましい。膨潤液の加熱温度としては、好ましくは、30℃以上、より好ましくは35℃以上、さらに好ましくは40℃以上であり、好ましくは100℃以下、より好ましくは95℃以下、さらに好ましくは90℃以下である。
【0062】
膨潤液への絶縁層の浸漬時間としては、好ましくは1分間以上、より好ましくは3分間以上、さらに好ましくは5分間以上であり、好ましくは40分間以下、より好ましくは30分間以下、さらに好ましくは25分間以下である。
【0063】
膨潤液のpHとしては、好ましくは6以上、より好ましくは6.5以上、さらに好ましくは7以上であり、好ましくは14以下、さらに好ましくは13.5以下、12以下、12.5以下、11以下、10以下、8以下、7.5以下である。
【0064】
(C)工程では、絶縁層を酸化剤溶液でデスミア処理した後、酸化剤の塩の残渣物等を除去する観点から、絶縁層を中和液に浸漬して中和処理を行ってもよい。
【0065】
中和液としては、酸性の水溶液を用いることが好ましい。中和液は市販品を用いてもよく、中和液の市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製の「リダクションソリューション・セキュリガントP」等が挙げられる。
【0066】
中和液は、絶縁層浸漬時に加熱して使用することが好ましい。中和液の加熱温度としては、酸化剤の塩の残渣物等を除去する観点から、好ましくは30℃以上、より好ましくは35℃以上であり、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下、さらに好ましくは60℃以下である。
【0067】
中和液への絶縁層の浸漬時間としては、酸化剤の塩の残渣物等を除去する観点から、好ましくは1分間以上、より好ましくは3分間以上であり、好ましくは30分間以下、より好ましくは20分間以下である。
【0068】
(C)工程では、絶縁層を酸化剤溶液でデスミア処理(任意で絶縁層を中和液に浸漬して中和処理)した後、大気中で乾燥を行ってもよい。
【0069】
乾燥時温度としては、好ましくは40℃以上、より好ましくは60℃以上であり、好ましくは120℃以下、より好ましくは100℃以下である。乾燥時間としては、好ましくは10分間以上、より好ましくは20分間以上であり、好ましくは60分間以下、より好ましくは40分間以下である。
【0070】
<(D)工程>
本発明のプリント配線板の製造方法は、(C)工程後に、(D)絶縁層の表面に導体層を形成する工程をさらに含んでもよい。
【0071】
(D)工程における導体層に使用される導体材料は特に限定されない。好適な実施形態では、導体層は、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む。導体層は、単金属層であっても合金層であってもよく、合金層としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)から形成された層が挙げられる。中でも、導体層の形成の容易性、コスト、パターン加工の容易性等の観点から、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金層が好ましく、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層がより好ましく、銅の単金属層が更に好ましい。
【0072】
導体層は、単層構造であっても、異なる種類の金属若しくは合金からなる単金属層又は合金層が2層以上積層した複層構造であってもよい。導体層が複層構造である場合、絶縁層と接する層は、クロム、亜鉛若しくはチタンの単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層であることが好ましい。
【0073】
導体層の厚さは、所望のプリント配線板のデザインによるが、一般に3μm~35μm、好ましくは5μm~30μmである。
【0074】
一実施形態において、導体層は、めっきにより形成してよい。例えば、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の従来公知の技術により絶縁層の表面にめっきして、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができ、製造の簡便性の観点から、セミアディティブ法により形成することが好ましい。以下、導体層をセミアディティブ法により形成する例を示す。
【0075】
まず、絶縁層の表面に、無電解めっきによりめっきシード層を形成する。次いで、形成されためっきシード層上に、所望の配線パターンに対応してめっきシード層の一部を露出させるマスクパターンを形成する。露出しためっきシード層上に、電解めっきにより金属層を形成した後、マスクパターンを除去する。その後、不要なめっきシード層をエッチング等により除去して、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
【0076】
支持体は、(A)工程の途中(例えば(A-2)工程と(A-3)工程との間、(A-2)工程と(A-3)工程との間、(A-3)工程と(A-4)工程との間、又は(A-4)工程と(A-5)工程との間)、(A)工程と(B)工程との間、又は(B)工程と(C)工程との間に除去してもよい。支持体は、(B)工程と(C)工程との間に除去されることが好ましい。また、各工程終了後、必要に応じて水洗処理を行ってもよい。
【0077】
<樹脂組成物層>
以下、積層体において内層基板上に接合した樹脂組成物層(樹脂シートにおいて支持体上に設けられた樹脂組成物層)の含まれる成分について説明する。
【0078】
樹脂組成物層は、(a)エポキシ樹脂及び(b)活性エステル系硬化剤を含む。
【0079】
<(a)エポキシ樹脂>
(a)エポキシ樹脂は、エポキシ基を有する硬化性樹脂である。ここで説明する(a)エポキシ樹脂は、エポキシ当量5,000g/eq.以下のものである。
【0080】
(a)エポキシ樹脂としては、例えば、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、イソシアヌラート型エポキシ樹脂、フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂等が挙げられる。(a)エポキシ樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0081】
樹脂組成物層は、(a)エポキシ樹脂として、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。(a)エポキシ樹脂の不揮発成分100質量%に対して、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。
【0082】
エポキシ樹脂には、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」ということがある。)と、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」ということがある。)とがある。樹脂組成物層は、エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、或いは固体状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、或いは液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との両方を含んでいてもよいが、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との両方を含んでいることが好ましい。
【0083】
液状エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する液状エポキシ樹脂が好ましい。
【0084】
液状エポキシ樹脂としては、グリシロール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、環状脂肪族グリシジルエーテル、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましい。
【0085】
液状エポキシ樹脂の具体例としては、ナガセケムテックス社製の「EX-992L」、三菱ケミカル社製の「YX7400」、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「828US」、「828EL」、「825」、「エピコート828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER807」、「1750」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「630」、「630LSD」、「604」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);ADEKA社製の「ED-523T」(グリシロール型エポキシ樹脂);ADEKA社製の「EP-3950L」、「EP-3980S」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);ADEKA社製の「EP-4088S」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品);ナガセケムテックス社製の「EX-721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂);ナガセケムテックス社製の「EX-991L」(アルキレンオキシ骨格及びブタジエン骨格含有エポキシ樹脂);ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂);ダイセル社製の「PB-3600」、日本曹達社製の「JP-100」、「JP-200」、「JP-400」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4-グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「EG-280」(フルオレン構造含有エポキシ樹脂);ナガセケムテックス社製「EX-201」(環状脂肪族グリシジルエーテル)等が挙げられる。
【0086】
固体状エポキシ樹脂としては、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する固体状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する芳香族系の固体状エポキシ樹脂がより好ましい。
【0087】
固体状エポキシ樹脂としては、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂が好ましい。
【0088】
固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂);DIC社製の「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-7200」、「HP-7200HH」、「HP-7200H」、「HP-7200L」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);DIC社製の「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP6000」、「HP6000L」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3000FH」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN475V」、「ESN4100V」(ナフタレン型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN485」(ナフトール型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN375」(ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000H」、「YX4000」、「YX4000HK」、「YL7890」(ビキシレノール型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX7700」(フェノールアラルキル型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG-100」、「CG-500」;三菱ケミカル社製の「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1010」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「WHR991S」(フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0089】
(a)エポキシ樹脂として、固体状エポキシ樹脂と液状エポキシ樹脂とを組み合わせて用いる場合、それらの質量比(固体状エポキシ樹脂:液状エポキシ樹脂)は、好ましくは10:1~1:50、より好ましくは2:1~1:20、特に好ましくは1:1~1:10である。
【0090】
(a)エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50g/eq.~5,000g/eq.、より好ましくは60g/eq.~2,000g/eq.、さらに好ましくは70g/eq.~1,000g/eq.、さらにより好ましくは80g/eq.~500g/eq.である。エポキシ当量は、エポキシ基1当量あたりの樹脂の質量である。このエポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができる。
【0091】
(a)エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは100~5,000、より好ましくは250~3,000、さらに好ましくは400~1,500である。樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0092】
樹脂組成物層中の(a)エポキシ樹脂の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは70質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下、特に好ましくは20質量%以下である。樹脂組成物層中の(a)エポキシ樹脂の含有量の下限は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上、特に好ましくは10質量%以上である。
【0093】
<(b)活性エステル系硬化剤>
(b)活性エステル系硬化剤は、(a)エポキシ樹脂と反応して硬化させる機能を有し得るエポキシ樹脂硬化剤である。(b)活性エステル系硬化剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0094】
(b)活性エステル系硬化剤としては、一般にフェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の、反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましく用いられる。当該活性エステル化合物は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル化合物が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル化合物がより好ましい。カルボン酸化合物としては、例えば安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
【0095】
(b)活性エステル系硬化剤としては、具体的には、ジシクロペンタジエン型活性エステル化合物、ナフタレン構造を含むナフタレン型活性エステル化合物、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物が好ましく、中でもジシクロペンタジエン型活性エステル化合物、及びナフタレン型活性エステル化合物から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。ジシクロペンタジエン型活性エステル化合物としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物が好ましい。
【0096】
(b)活性エステル系硬化剤の市販品としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物として「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC-8000L-65TM」、「HPC-8000-65T」、「HPC-8000H」、「HPC-8000H-65TM」(DIC社製);ナフタレン構造を含む活性エステル化合物として「HP-B-8151-62T」、「EXB-8100L-65T」、「EXB-9416-70BK」、「HPC-8150-62T」、「EXB-8」(DIC社製);りん含有活性エステル化合物として、「EXB9401」(DIC社製)、フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル化合物として「DC808」(三菱ケミカル社製)、フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル化合物として「YLH1026」、「YLH1030」、「YLH1048」(三菱ケミカル社製)、スチリル基及びナフタレン構造を含む活性エステル化合物として「PC1300-02-65MA」(エア・ウォーター社製)等が挙げられる。
【0097】
(b)活性エステル系硬化剤の活性エステル基当量は、好ましくは50g/eq.~500g/eq.、より好ましくは50g/eq.~400g/eq.、さらに好ましくは100g/eq.~300g/eq.である。活性エステル基当量は、活性エステル基1当量あたりの(b)活性エステル系硬化剤の質量である。
【0098】
樹脂組成物層中の(b)活性エステル系硬化剤の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは70質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下、特に好ましくは25質量%以下である。樹脂組成物層中の(b)活性エステル系硬化剤の含有量の下限は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さら好ましくは5質量%以上、特に好ましくは7質量%以上であり得る。
【0099】
<(b’)その他の硬化剤>
樹脂組成物層は、(b)活性エステル系硬化剤に加えて、任意成分として(b’)その他の硬化剤を含有していてもよい。ここで説明する(b’)その他の硬化剤は、上記で説明した(b)活性エステル系硬化剤に該当するもの以外の成分である。(b’)その他の硬化剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。(b’)その他の硬化剤は、(b)活性エステル系硬化剤同様、(a)エポキシ樹脂と反応して硬化させる機能を有し得るエポキシ樹脂硬化剤である。
【0100】
(b’)その他の硬化剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、フェノール系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、及びチオール系硬化剤等が挙げられる。樹脂組成物層は、(b’)その他の硬化剤として、フェノール系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤、及びシアネートエステル系硬化剤から選択させる1種以上の硬化剤を含むことが好ましく、フェノール系硬化剤、及びシアネートエステル系硬化剤から選択させる1種以上の硬化剤を含むことがより好ましく、シアネートエステル系硬化剤を含むことが特に好ましい。
【0101】
フェノール系硬化剤としては、耐熱性及び耐水性の観点から、ノボラック構造を有するフェノール系硬化剤が好ましい。また、被着体に対する密着性の観点から、含窒素フェノール系硬化剤が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤がより好ましい。中でも、耐熱性、耐水性、及び密着性を高度に満足させる観点から、トリアジン骨格含有フェノールノボラック樹脂が好ましい。フェノール系硬化剤の具体例としては、例えば、明和化成社製の「MEH-7700」、「MEH-7810」、「MEH-7851」、日本化薬社製の「NHN」、「CBN」、「GPH」、日鉄ケミカル&マテリアル社製の「SN-170」、「SN-180」、「SN-190」、「SN-475」、「SN-485」、「SN-495」、「SN-375」、「SN-395」、DIC社製の「LA-7052」、「LA-7054」、「LA-3018」、「LA-3018-50P」、「LA-1356」、「TD2090」、「KA-1160」等が挙げられる。
【0102】
カルボジイミド系硬化剤としては、1分子内中に1個以上、好ましくは2個以上のカルボジイミド構造を有する硬化剤が挙げられ、例えば、テトラメチレン-ビス(t-ブチルカルボジイミド)、シクロヘキサンビス(メチレン-t-ブチルカルボジイミド)等の脂肪族ビスカルボジイミド;フェニレン-ビス(キシリルカルボジイミド)等の芳香族ビスカルボジイミド等のビスカルボジイミド;ポリヘキサメチレンカルボジイミド、ポリトリメチルヘキサメチレンカルボジイミド、ポリシクロヘキシレンカルボジイミド、ポリ(メチレンビスシクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(イソホロンカルボジイミド)等の脂肪族ポリカルボジイミド;ポリ(フェニレンカルボジイミド)、ポリ(ナフチレンカルボジイミド)、ポリ(トリレンカルボジイミド)、ポリ(メチルジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリエチルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(ジエチルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(キシリレンカルボジイミド)、ポリ(テトラメチルキシリレンカルボジイミド)、ポリ(メチレンジフェニレンカルボジイミド)、ポリ[メチレンビス(メチルフェニレン)カルボジイミド]等の芳香族ポリカルボジイミド等のポリカルボジイミドが挙げられる。
【0103】
カルボジイミド系硬化剤の市販品としては、例えば、日清紡ケミカル社製の「カルボジライトV-02B」、「カルボジライトV-03」、「カルボジライトV-04K」、「カルボジライトV-07」及び「カルボジライトV-09」;ラインケミー社製の「スタバクゾールP」、「スタバクゾールP400」、「ハイカジル510」等が挙げられる。
【0104】
酸無水物系硬化剤としては、1分子内中に1個以上の酸無水物基を有する硬化剤が挙げられ、1分子内中に2個以上の酸無水物基を有する硬化剤が好ましい。酸無水物系硬化剤の具体例としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンソフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、3,3’-4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-C]フラン-1,3-ジオン、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、スチレンとマレイン酸とが共重合したスチレン・マレイン酸樹脂などのポリマー型の酸無水物などが挙げられる。酸無水物系硬化剤の市販品としては、新日本理化社製の「HNA-100」、「MH-700」、「MTA-15」、「DDSA」、「OSA」、三菱ケミカル社製の「YH-306」、「YH-307」、日立化成社製の「HN-2200」、「HN-5500」、クレイバレイ社製「EF-30」、「EF-40」「EF-60」、「EF-80」等が挙げられる。
【0105】
アミン系硬化剤としては、1分子内中に1個以上、好ましくは2個以上のアミノ基を有する硬化剤が挙げられ、例えば、脂肪族アミン類、ポリエーテルアミン類、脂環式アミン類、芳香族アミン類等が挙げられ、中でも、本発明の所望の効果を奏する観点から、芳香族アミン類が好ましい。アミン系硬化剤は、第1級アミン又は第2級アミンが好ましく、第1級アミンがより好ましい。アミン系硬化剤の具体例としては、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルアニリン)、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、m-フェニレンジアミン、m-キシリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジヒドロキシベンジジン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3-ジメチル-5,5-ジエチル-4,4-ジフェニルメタンジアミン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、等が挙げられる。アミン系硬化剤は市販品を用いてもよく、例えば、セイカ社製「SEIKACURE-S」、日本化薬社製の「KAYABOND C-200S」、「KAYABOND C-100」、「カヤハードA-A」、「カヤハードA-B」、「カヤハードA-S」、三菱ケミカル社製の「エピキュアW」等が挙げられる。
【0106】
ベンゾオキサジン系硬化剤の具体例としては、JFEケミカル社製の「JBZ-OP100D」、「ODA-BOZ」;昭和高分子社製の「HFB2006M」;四国化成工業社製の「P-d」、「F-a」などが挙げられる。
【0107】
シアネートエステル系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート(オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート))、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4’-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4-シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネート樹脂、フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂、これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。シアネートエステル系硬化剤の具体例としては、ロンザジャパン社製の「PT30」及び「PT60」(いずれもフェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「BA230」、「BA230S75」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。
【0108】
チオール系硬化剤としては、例えば、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、トリス(3-メルカプトプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0109】
(b’)その他の硬化剤の反応基当量は、好ましくは50g/eq.~3000g/eq.、より好ましくは100g/eq.~1000g/eq.、さらに好ましくは100g/eq.~500g/eq.、特に好ましくは100g/eq.~300g/eq.である。反応基当量は、反応基1当量あたりの(b’)その他の硬化剤の質量である。
【0110】
樹脂組成物層中の(b’)その他の硬化剤の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。樹脂組成物層中の(b’)その他の硬化剤の含有量の下限は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合、例えば、0質量%以上、又は0.01質量%以上であり得、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、特に好ましくは1質量%以上であり得る。
【0111】
<(c)無機充填材>
樹脂組成物層は、任意成分として(c)無機充填材を含有していてもよい。(c)無機充填材は、粒子の状態で樹脂組成物層に含まれる。
【0112】
(c)無機充填材の材料としては、無機化合物を用いる。(c)無機充填材の材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でも、シリカが特に好適である。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。また、シリカとしては球形シリカが好ましい。(c)無機充填材は、1種類単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0113】
(c)無機充填材の市販品としては、例えば、日鉄ケミカル&マテリアル社製の「SP60-05」、「SP507-05」;アドマテックス社製の「YC100C」、「YA050C」、「YA050C-MJE」、「YA010C」;デンカ社製の「UFP-30」;トクヤマ社製の「シルフィルNSS-3N」、「シルフィルNSS-4N」、「シルフィルNSS-5N」;アドマテックス社製の「SC2500SQ」、「SO-C4」、「SO-C2」、「SO-C1」;デンカ社製の「DAW-03」、「FB-105FD」などが挙げられる。
【0114】
(c)無機充填材の平均粒径は、特に限定されるものではないが、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは3μm以下、さらにより好ましくは2μm以下、特に好ましくは1.5μm以下である。(c)無機充填材の平均粒径の下限は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、さらに好ましくは0.1μm以上、特に好ましくは0.2μm以上である。(c)無機充填材の平均粒径は、ミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的には、レーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、無機充填材の粒径分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材100mg、メチルエチルケトン10gをバイアル瓶に秤取り、超音波にて10分間分散させたものを使用することができる。測定サンプルを、レーザー回折式粒径分布測定装置を使用して、使用光源波長を青色及び赤色とし、フローセル方式で無機充填材の体積基準の粒径分布を測定し、得られた粒径分布からメディアン径として平均粒径を算出した。レーザー回折式粒径分布測定装置としては、例えば堀場製作所社製「LA-960」等が挙げられる。
【0115】
(c)無機充填材の比表面積は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.1m/g以上、より好ましくは0.5m/g以上、さらに好ましくは1m/g以上、特に好ましくは3m/g以上である。(c)無機充填材の比表面積の上限は、特に限定されるものではないが、好ましくは100m/g以下、より好ましくは70m/g以下、さらに好ましくは50m/g以下、さらにより好ましくは30m/g以下、特に好ましくは10m/g以下である。無機充填材の比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置(マウンテック社製Macsorb HM-1210)を使用して試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出することで得られる。
【0116】
(c)無機充填材は、耐湿性及び分散性を高める観点から、表面処理剤で処理されていることが好ましい。表面処理剤としては、例えば、フッ素含有シランカップリング剤、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、アルコキシシラン、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等が挙げられる。また、表面処理剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0117】
表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製「KBM403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBE903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「SZ-31」(ヘキサメチルジシラザン)、信越化学工業社製「KBM103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM-4803」(長鎖エポキシ型シランカップリング剤)、信越化学工業社製「KBM-7103」(3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン)等が挙げられる。
【0118】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の分散性向上の観点から、所定の範囲に収まることが好ましい。具体的には、無機充填材100質量%は、0.2質量%~5質量%の表面処理剤で表面処理されていることが好ましく、0.2質量%~3質量%で表面処理されていることがより好ましく、0.3質量%~2質量%で表面処理されていることがさらに好ましい。
【0119】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、無機充填材の分散性向上の観点から、0.02mg/m以上が好ましく、0.1mg/m以上がより好ましく、0.2mg/m以上がさらに好ましい。一方、樹脂組成物の溶融粘度やシート形態での溶融粘度の上昇を防止する観点から、1.0mg/m以下が好ましく、0.8mg/m以下がより好ましく、0.5mg/m以下がさらに好ましい。
【0120】
(c)無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、堀場製作所社製「EMIA-320V」等を使用することができる。
【0121】
樹脂組成物層中の(c)無機充填材の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは85質量%以下、特に好ましくは80質量%以下であり得る。樹脂組成物層中の(c)無機充填材の含有量の下限は、特に限定されるものではないが、誘電正接をより低く抑える観点から、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合、例えば0質量%以上、1質量%以上、又は5質量%以上であり得、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上、さらにより好ましくは50質量%以上、特に好ましくは60質量%以上である。
【0122】
<(d)ラジカル重合性化合物>
樹脂組成物層は、任意の成分として(d)ラジカル重合性化合物を含有してもいてもよい。(d)ラジカル重合性化合物は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0123】
(d)ラジカル重合性化合物は、一実施形態において、エチレン性不飽和結合を有するラジカル重合性化合物である。(d)ラジカル重合性化合物は、特に限定されるものではないが、例えば、アリル基、3-シクロヘキセニル基、3-シクロペンテニル基、2-ビニルフェニル基、3-ビニルフェニル基、4-ビニルフェニル基等の不飽和炭化水素基;アクリロイル基、メタクリロイル基、マレイミド基(2,5-ジヒドロ-2,5-ジオキソ-1H-ピロール-1-イル基)等のα,β-不飽和カルボニル基等のラジカル重合性基を有し得る。(d)ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合性基を2個以上有することが好ましい。
【0124】
(d)ラジカル重合性化合物は、第一の実施形態において、好ましくは、ビニルフェニル基及び/又は(メタ)アクリロイル基を有する熱可塑性樹脂を含む。(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基又はメタクリロイル基を意味する。ビニルフェニル基は、2-ビニルフェニル基、3-ビニルフェニル基、4-ビニルフェニル基、又はこれらの芳香族炭素原子がさらに1個以上のアルキル基で置換されたものを含む。ビニルフェニル基及び/又は(メタ)アクリロイル基は、1分子中に2個以上有することが好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられ、(d)ラジカル重合性化合物は、当該実施形態において、これらの樹脂のビニルフェニル基及び/又は(メタ)アクリロイル基を有する変性樹脂を含む。
【0125】
(d)ラジカル重合性化合物は、第一の実施形態において、より好ましくは、ビニルフェニル基及び/又は(メタ)アクリロイル基を有する変性ポリフェニレンエーテル樹脂、並びにビニルフェニル基及び/又は(メタ)アクリロイル基を有する変性ポリスチレン樹脂から選ばれる樹脂を含み、さらに好ましくは、ビニルフェニル基及び/又は(メタ)アクリロイル基を有する変性ポリフェニレンエーテル樹脂を含み、特に好ましくは、式(B-1):
【0126】
【化1】
【0127】
[式中、R11及びR12は、それぞれ独立して、アルキル基を示し;R13、R14、R21、R22、R23及びR24は、それぞれ独立して、水素原子、又はアルキル基を示し;R31及びR32は、それぞれ独立して、ビニルフェニル基又は(メタ)アクリロイル基を示し;Yは、単結合、-C(R-、-O-、-CO-、-S-、-SO-、又は-SO-を示し;Rは、それぞれ独立して、水素原子、又はアルキル基を示し;Yは、単結合、又はアルキレン基を示し;pは、0又は1を示し;q及びrは、それぞれ独立して、1以上の整数を示す。]
で表される樹脂を含む。q単位及びr単位は、それぞれ、単位毎に同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0128】
11及びR12は、それぞれ独立して、アルキル基を示し、好ましくは、メチル基である。R13及びR14は、それぞれ独立して、水素原子、又はアルキル基を示し、好ましくは、水素原子、又はアルキル基であり、より好ましくは、水素原子である。R21及びR22は、それぞれ独立して、水素原子、又はアルキル基を示し、好ましくは、水素原子、又はメチル基であり、より好ましくは、メチル基である。R23及びR24は、それぞれ独立して、水素原子、又はアルキル基を示し、好ましくは、水素原子、又はメチル基である。
【0129】
アルキル基とは、直鎖、分枝鎖及び/又は環状の1価の脂肪族飽和炭化水素基を意味する。アルキル基は、特に指定がない限り、炭素原子数1~14のアルキル(基)が好ましく、炭素原子数1~10のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1~6のアルキル基がさらに好ましい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、トリメチルシクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基等が挙げられる。
【0130】
31及びR32は、それぞれ独立して、ビニルフェニル基又は(メタ)アクリロイル基を示し、Yは、単結合、又はアルキレン基を示す。アルキレン基とは、直鎖、分枝鎖、及び/又は環状の2価の脂肪族飽和炭化水素基を意味する。アルキレン基は、好ましくは炭素原子数1~14のアルキレン基であり、好ましくは炭素原子数1~10のアルキレン基であり、好ましくは炭素原子数1~6のアルキレン基である。アルキレン基としては、例えば、-CH-、-CH-CH-、-CH(CH)-、-CH-CH-CH-、-CH-CH(CH)-、-CH(CH)-CH-、-C(CH-等が挙げられる。好ましくは、R31及びR32が、ビニルフェニル基であり、且つYが、アルキレン基(特に好ましくは-CH-)であるか、或いはR31及びR32が、(メタ)アクリロイル基であり、且つYは、単結合である。
【0131】
は、単結合、-C(R-、-O-、-CO-、-S-、-SO-、又は-SO-を示し、好ましくは、単結合、-C(R-、又は-O-である。Rは、それぞれ独立して、水素原子、又はアルキル基を示し、好ましくは、水素原子、又はメチル基である。pは、0又は1を示し、好ましくは1である。q及びrは、それぞれ独立して、1以上の整数を示し、好ましくは、1~200の整数であり、より好ましくは、1~100の整数である。
【0132】
第一の実施形態における(d)ラジカル重合性化合物の市販品としては、例えば、三菱ガス化学社製の「OPE-2St 1200」、「OPE-2St 2200」(ビニルベンジル変性ポリフェニレンエーテル樹脂);SABICイノベーティブプラスチックス社製の「SA9000」、「SA9000-111」(メタクリル変性ポリフェニレンエーテル樹脂)等が挙げられる。
【0133】
樹脂組成物層中の(d)ラジカル重合性化合物の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、特に好ましくは10質量%以下であり得る。樹脂組成物層中の(d)ラジカル重合性化合物の含有量の下限は、特に限定されるものではないが、誘電正接をより低く抑える観点から、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合、例えば0質量%以上、0.01質量%以上であり得、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上、特に好ましくは3質量%以上である。
【0134】
<(e)熱可塑性樹脂>
樹脂組成物層は、さらに任意成分として(e)熱可塑性樹脂を含有していてもよい。ここで説明する(e)熱可塑性樹脂は、(a)エポキシ樹脂、(b)その他の硬化剤及び(d)ラジカル重合性化合物に該当しない成分である。
【0135】
(e)熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリイミド樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。樹脂組成物層は、一実施形態において、ポリイミド樹脂及びフェノキシ樹脂からなる群から選ばれる熱可塑性樹脂を含むことが好ましく、フェノキシ樹脂を含むことがより好ましい。また、熱可塑性樹脂は、1種類単独で用いてもよく、又は2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0136】
ポリイミド樹脂の具体例としては、信越化学工業社製「SLK-6100」、新日本理化社製の「リカコートSN20」及び「リカコートPN20」等が挙げられる。
【0137】
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、及びトリメチルシクロヘキサン骨格からなる群から選択される1種類以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。
【0138】
フェノキシ樹脂の具体例としては、三菱ケミカル社製の「1256」及び「4250」(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8100」(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX6954」(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「FX280」及び「FX293」;三菱ケミカル社製の「YL7500BH30」、「YX6954BH30」、「YX7553」、「YX7553BH30」、「YL7769BH30」、「YL6794」、「YL7213」、「YL7290」、「YL7482」及び「YL7891BH30」;等が挙げられる。
【0139】
ポリビニルアセタール樹脂としては、例えば、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂が挙げられ、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、電気化学工業社製の「電化ブチラール4000-2」、「電化ブチラール5000-A」、「電化ブチラール6000-C」、「電化ブチラール6000-EP」;積水化学工業社製のエスレックBHシリーズ、BXシリーズ(例えばBX-5Z)、KSシリーズ(例えばKS-1)、BLシリーズ、BMシリーズ;等が挙げられる。
【0140】
ポリオレフィン樹脂としては、例えば低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体等のエチレン系共重合樹脂;ポリプロピレン、エチレン-プロピレンブロック共重合体等のポリオレフィン系重合体等が挙げられる。
【0141】
ポリブタジエン樹脂としては、例えば、水素化ポリブタジエン骨格含有樹脂、ヒドロキシ基含有ポリブタジエン樹脂、フェノール性水酸基含有ポリブタジエン樹脂、カルボキシ基含有ポリブタジエン樹脂、酸無水物基含有ポリブタジエン樹脂、エポキシ基含有ポリブタジエン樹脂、イソシアネート基含有ポリブタジエン樹脂、ウレタン基含有ポリブタジエン樹脂、ポリフェニレンエーテル-ポリブタジエン樹脂等が挙げられる。
【0142】
ポリアミドイミド樹脂の具体例としては、東洋紡社製の「バイロマックスHR11NN」及び「バイロマックスHR16NN」が挙げられる。ポリアミドイミド樹脂の具体例としてはまた、日立化成社製の「KS9100」、「KS9300」(ポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド)等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。
【0143】
ポリエーテルスルホン樹脂の具体例としては、住友化学社製の「PES5003P」等が挙げられる。
【0144】
ポリスルホン樹脂の具体例としては、ソルベイアドバンストポリマーズ社製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。
【0145】
ポリフェニレンエーテル樹脂の具体例としては、SABIC製「NORYL SA90」等が挙げられる。ポリエーテルイミド樹脂の具体例としては、GE社製の「ウルテム」等が挙げられる。
【0146】
ポリカーボネート樹脂としては、ヒドロキシ基含有カーボネート樹脂、フェノール性水酸基含有カーボネート樹脂、カルボキシ基含有カーボネート樹脂、酸無水物基含有カーボネート樹脂、イソシアネート基含有カーボネート樹脂、ウレタン基含有カーボネート樹脂等が挙げられる。ポリカーボネート樹脂の具体例としては、三菱瓦斯化学社製の「FPC0220」、旭化成ケミカルズ社製の「T6002」、「T6001」(ポリカーボネートジオール)、クラレ社製の「C-1090」、「C-2090」、「C-3090」(ポリカーボネートジオール)等が挙げられる。ポリエーテルエーテルケトン樹脂の具体例としては、住友化学社製の「スミプロイK」等が挙げられる。
【0147】
ポリエステル樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンナフタレート樹脂、ポリシクロヘキサンジメチルテレフタレート樹脂等が挙げられる。
【0148】
(e)熱可塑性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、本発明の効果を顕著に得る観点から好ましくは5,000以上、より好ましくは8,000以上、さらに好ましくは10,000以上、特に好ましくは20,000以上であり、好ましくは100,000以下、より好ましくは70,000以下、さらに好ましくは60,000以下、特に好ましくは50,000以下である。
【0149】
樹脂組成物層中の(e)熱可塑性樹脂の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、特に好ましくは2質量%以下であり得る。樹脂組成物層中の(e)熱可塑性樹脂の含有量の下限は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合、例えば、0質量%以上、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.5質量%以上であり得る。
【0150】
<(f)硬化促進剤>
樹脂組成物層は、さらに任意成分として(f)硬化促進剤を含んでいてもよい。(f)硬化促進剤は、(a)エポキシ樹脂の硬化を促進させる硬化触媒としての機能を有する。
【0151】
(f)硬化促進剤としては、例えば、リン系硬化促進剤、ウレア系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、金属系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤等が挙げられる。(f)硬化促進剤は、イミダゾール系硬化促進剤及びアミン系硬化促進剤から選ばれる硬化促進剤を含むことが好ましい。(f)硬化促進剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0152】
リン系硬化促進剤としては、例えば、テトラブチルホスホニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムアセテート、テトラブチルホスホニウムデカノエート、テトラブチルホスホニウムラウレート、ビス(テトラブチルホスホニウム)ピロメリテート、テトラブチルホスホニウムハイドロジェンヘキサヒドロフタレート、テトラブチルホスホニウム2,6-ビス[(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノラート、ジ-tert-ブチルメチルホスホニウムテトラフェニルボレート等の脂肪族ホスホニウム塩;メチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、プロピルトリフェニルホスホニウムブロマイド、ブチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、p-トリルトリフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラp-トリルボレート、トリフェニルエチルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリス(3-メチルフェニル)エチルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリス(2-メトキシフェニル)エチルホスホニウムテトラフェニルボレート、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等の芳香族ホスホニウム塩;トリフェニルホスフィン・トリフェニルボラン等の芳香族ホスフィン・ボラン複合体;トリフェニルホスフィン・p-ベンゾキノン付加反応物等の芳香族ホスフィン・キノン付加反応物;トリブチルホスフィン、トリ-tert-ブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、ジ-tert-ブチル(2-ブテニル)ホスフィン、ジ-tert-ブチル(3-メチル-2-ブテニル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン等の脂肪族ホスフィン;ジブチルフェニルホスフィン、ジ-tert-ブチルフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、エチルジフェニルホスフィン、ブチルジフェニルホスフィン、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ-o-トリルホスフィン、トリ-m-トリルホスフィン、トリ-p-トリルホスフィン、トリス(4-エチルフェニル)ホスフィン、トリス(4-プロピルフェニル)ホスフィン、トリス(4-イソプロピルフェニル)ホスフィン、トリス(4-ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(4-tert-ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,4-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,5-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,6-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(3,5-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,4,6-トリメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,6-ジメチル-4-エトキシフェニル)ホスフィン、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-エトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-tert-ブトキシフェニル)ホスフィン、ジフェニル-2-ピリジルホスフィン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)アセチレン、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)ジフェニルエーテル等の芳香族ホスフィン等が挙げられる。
【0153】
ウレア系硬化促進剤としては、例えば、1,1-ジメチル尿素;1,1,3-トリメチル尿素、3-エチル-1,1-ジメチル尿素、3-シクロヘキシル-1,1-ジメチル尿素、3-シクロオクチル-1,1-ジメチル尿素等の脂肪族ジメチルウレア;3-フェニル-1,1-ジメチル尿素、3-(4-クロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(2-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3,4-ジメチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-イソプロピルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-メトキシフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-ニトロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-[4-(4-メトキシフェノキシ)フェニル]-1,1-ジメチル尿素、3-[4-(4-クロロフェノキシ)フェニル]-1,1-ジメチル尿素、3-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,1-ジメチル尿素、N,N-(1,4-フェニレン)ビス(N’,N’-ジメチル尿素)、N,N-(4-メチル-1,3-フェニレン)ビス(N’,N’-ジメチル尿素)〔トルエンビスジメチルウレア〕等の芳香族ジメチルウレア等が挙げられる。
【0154】
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、1-(o-トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-n-ブチルビグアニド、1-n-オクタデシルビグアニド、1,1-ジメチルビグアニド、1,1-ジエチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド、1-(o-トリル)ビグアニド等が挙げられる。
【0155】
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられる。
【0156】
イミダゾール系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、四国化成工業社製の「1B2PZ」、「2MZA-PW」、「2PHZ-PW」、三菱ケミカル社製の「P200-H50」等が挙げられる。
【0157】
金属系硬化促進剤としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体等が挙げられる。有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0158】
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン等が挙げられる。
【0159】
アミン系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、味の素ファインテクノ社製の「MY-25」等が挙げられる。
【0160】
樹脂組成物層中の(f)硬化促進剤の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下、特に好ましくは0.2質量%以下である。樹脂組成物層中の(f)硬化促進剤の含有量の下限は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合、例えば、0質量%以上、0.01質量%以上、0.1質量%以上等であり得る。
【0161】
<(g)その他の添加剤>
本発明の樹脂組成物は、不揮発成分として、さらに任意の添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤としては、例えば、過酸化物系ラジカル重合開始剤、アゾ系ラジカル重合開始剤等のラジカル重合開始剤;エポキシアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ウレタン樹脂、シアネート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂等のエポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂;ゴム粒子等の有機充填材;有機銅化合物、有機亜鉛化合物、有機コバルト化合物等の有機金属化合物;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アイオディングリーン、ジアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック等の着色剤;ハイドロキノン、カテコール、ピロガロール、フェノチアジン等の重合禁止剤;シリコーン系レベリング剤、アクリルポリマー系レベリング剤等のレベリング剤;ベントン、モンモリロナイト等の増粘剤;シリコーン系消泡剤、アクリル系消泡剤、フッ素系消泡剤、ビニル樹脂系消泡剤等の消泡剤;ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等の紫外線吸収剤;尿素シラン等の接着性向上剤;トリアゾール系密着性付与剤、テトラゾール系密着性付与剤、トリアジン系密着性付与剤等の密着性付与剤;ヒンダードフェノール系酸化防止剤等の酸化防止剤;スチルベン誘導体等の蛍光増白剤;フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等の界面活性剤;リン系難燃剤(例えばリン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、ホスフィン酸化合物、赤リン)、窒素系難燃剤(例えば硫酸メラミン)、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤(例えば三酸化アンチモン)等の難燃剤;リン酸エステル系分散剤、ポリオキシアルキレン系分散剤、アセチレン系分散剤、シリコーン系分散剤、アニオン性分散剤、カチオン性分散剤等の分散剤;ボレート系安定剤、チタネート系安定剤、アルミネート系安定剤、ジルコネート系安定剤、イソシアネート系安定剤、カルボン酸系安定剤、カルボン酸無水物系安定剤等の安定剤等が挙げられる。(g)その他の添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。(g)その他の添加剤の含有量は当業者であれば適宜設定できる。
【0162】
<(h)有機溶剤>
本発明の樹脂組成物は、上述した不揮発成分以外に、揮発性成分として、さらに任意の有機溶剤を含有する場合がある。(h)有機溶剤としては、公知のものを適宜用いることができ、その種類は特に限定されるものではない。(h)有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル系溶剤;テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル、アニソール等のエーテル系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール等のアルコール系溶剤;酢酸2-エトキシエチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチルジグリコールアセテート、γ-ブチロラクトン、メトキシプロピオン酸メチル等のエーテルエステル系溶剤;乳酸メチル、乳酸エチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル等のエステルアルコール系溶剤;2-メトキシプロパノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)等のエーテルアルコール系溶剤;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶剤;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶剤;ヘキサン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤等を挙げることができる。(h)有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0163】
乾燥後の樹脂組成物層中の(h)有機溶剤の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物層中の全成分を100質量%とした場合、好ましく5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下、特に好ましくは1質量%以下である。
【0164】
<半導体装置>
本発明の製造方法により得られたプリント配線板を用いて、プリント配線板を含む半導体装置を製造することができる。
【0165】
半導体装置としては、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
【0166】
半導体装置は、プリント配線板の導通箇所に、部品(半導体チップ)を実装することにより製造することができる。導通箇所とは、プリント配線板における電気信号を伝える箇所であって、その場所は表面であっても、埋め込まれた箇所であってもいずれでも構わない。また、半導体チップは半導体を材料とする電気回路素子であれば特に限定されない。
【0167】
半導体装置を製造する際の半導体チップの実装方法は、半導体チップが有効に機能しさえすれば、特に限定されないが、具体的には、ワイヤボンディング実装方法、フリップチップ実装方法、バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法、異方性導電フィルム(ACF)による実装方法、非導電性フィルム(NCF)による実装方法、等が挙げられる。
【実施例0168】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示のない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。下記の説明における温度条件は、特に温度の指定が無い場合、常温(25℃)下であり、圧力条件は、特に圧力の指定が無い場合、常圧(0.1MPa)下である。
【0169】
<作製例A:樹脂シートAの作製>
ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC-3000H」、エポキシ当量約271g/eq.)5部、ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC社製の「HP4032SS」、エポキシ当量約145g/eq.)10部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂およびビスフェノールF型エポキシ混合品(日鉄ケミカル&マテリアル社製「ZX1059」、エポキシ当量165g/eq.)5部、活性エステル系硬化剤(DIC社製「HPC-8150-62T」、活性基当量約229g/eq.、固形分61.5質量%のトルエン溶液)30部、フェノール系硬化剤(DIC社製「LA-3018-50P」、活性基当量約151、固形分50%の2-メトキシプロパノール溶液)5部、フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX7553BH30」、固形分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)5部、4-ジメチルアミノピリジン(固形分5質量%のMEK溶液)4部、MEK30部、及びアミン系アルコキシシラン化合物(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm)80部を、ミキサーを用いて均一に分散して、ワニス状の樹脂組成物を得た。
【0170】
得られたワニス状の樹脂組成物を、PETフィルム(リンテック社製「AL5」、厚さ38μm)上に、乾燥後の厚さが25μmになるよう、ダイコーターにて均一に塗布し、80~120℃(平均100℃)で4分間乾燥させて樹脂シートAを作製した。
【0171】
<作製例B:樹脂シートBの作製>
アミン系アルコキシシラン化合物(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm)の使用量を80部から120部に変更し、活性エステル系硬化剤(DIC社製「HPC-8150-62T」)30部の代わりに、活性エステル系硬化剤(DIC社製「HPC-8000-65T」、活性基当量約223g/eq.、固形分65質量%のトルエン溶液)30部を使用した以外は、作製例Aと同様にして樹脂シートBを作製した。
【0172】
<作製例C:樹脂シートCの作製>
アミン系アルコキシシラン化合物(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm)の使用量を80部から60部に変更し、活性エステル系硬化剤(DIC社製「HPC-8150-62T」)の使用量を30部から45部に変更した以外は、作製例Aと同様にして樹脂シートCを作製した。
【0173】
<作製例D:樹脂シートDの作製>
アミン系アルコキシシラン化合物(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm)の使用量を80部から100部に変更し、活性エステル系硬化剤(DIC社製「HPC-8150-62T」)の使用量を30部から45部に変更し、カルボジイミド系硬化剤(日清紡ケミカル社製「V-03」、活性基当量約216g/eq.、不揮発分50質量%のトルエン溶液)5部をさらに使用した以外は、作製例Aと同様にして樹脂シートDを作製した。
【0174】
<作製例E:樹脂シートEの作製>
アミン系アルコキシシラン化合物(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm)の使用量を80部から140部に変更し、フェノール系硬化剤(DIC社製「LA-3018-50P」)の使用量を5部から10部に変更し、オリゴフェニレンエーテル・スチレン樹脂(三菱瓦斯化学社製「OPE-2St 1200」、固形分65質量%のトルエン溶液)15部をさらに使用した以外は、作製例Aと同様にして樹脂シートEを作製した。
【0175】
<作製例F:樹脂シートFの作製>
アミン系アルコキシシラン化合物(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm)の使用量を80部から140部に変更し、活性エステル系硬化剤(DIC社製「HPC-8150-62T」)の使用量を30部から25部に変更し、フェノール系硬化剤(DIC社製「LA-3018-50P」)を使用せず、ビスフェノールAジシアネート(ロンザジャパン社製「BA230S75」、シアネート当量約232、g/eq.、固形分75質量%のMEK溶液)15部をさらに使用し、4-ジメチルアミノピリジン(固形分5質量%のMEK溶液)の使用量を4部から2部に変更し、1-ベンジルー2-フェニルイミダゾール(固形分5質量%のMEK溶液)2部をさらに使用した以外は、作製例Aと同様にして樹脂シートFを作製した。
【0176】
<作製例G:樹脂シートGの作製>
アミン系アルコキシシラン化合物(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm)の使用量を80部から120部に変更し、活性エステル系硬化剤(DIC社製「HPC-8150-62T」)を使用せず、フェノール系硬化剤(DIC社製「LA-3018-50P」)を使用せず、ビスフェノールAジシアネート(ロンザジャパン社製「BA230S75」、シアネート当量約232g/eq.、固形分75質量%のMEK溶液)30部をさらに使用し、4-ジメチルアミノピリジン(固形分5質量%のMEK溶液)4部の代わりに1-ベンジルー2-フェニルイミダゾール(固形分5質量%のMEK溶液)4部を使用した以外は、作製例Aと同様にして樹脂シートGを作製した。
【0177】
<作製例H:樹脂シートHの作製>
活性エステル系硬化剤(DIC社製「HPC-8150-62T」)を使用せず、フェノール系硬化剤(DIC社製「LA-3018-50P」)を使用せず、フェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン社製「PT30」、シアネート当量約124g/eq.、固形分80質量%のMEK溶液)25部をさらに使用し、4-ジメチルアミノピリジン(固形分5質量%のMEK溶液)4部の代わりに1-ベンジルー2-フェニルイミダゾール(固形分5質量%のMEK溶液)4部を使用した以外は、作製例Aと同様にして樹脂シートHを作製した。
【0178】
作製例におけるワニス状の樹脂組成物を得るための原料使用量及び不揮発成分量を下記表1にまとめる。
【0179】
【表1】
【0180】
<実施例1>
(樹脂シートが積層された内層基板を準備する工程)
両面の表面に銅層を有するガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅層の厚さ18μm、基板の厚さ0.8mm、パナソニック電工社製「R1515A」)を内層基板として用意した。内層基板の両面を、メック社製「CZ8100」に浸漬することにより銅層の表面の粗化処理を行った。
【0181】
作製例Aで作製した樹脂シートAを、粗化処理を行った内層基板の両面に、樹脂組成物層が内層基板と接合するように積層した。積層は、名機製作所社製の真空加圧式ラミネーターMVLP-500を用い、温度100℃にて30秒間真空吸引後、温度100℃、圧力7.0kg/cmの条件で、PETフィルム上から、耐熱ゴムを介して30秒間プレスすることにより行った。次に、大気圧下で、SUS鏡板を用いて、温度100℃、圧力5.5kg/cmの条件で60秒間プレスを行って、樹脂シートが積層された内層基板を作製した。
【0182】
(絶縁層を形成する工程)
樹脂シートが積層された内層基板を、支持体を付けたまま、130℃で30分間(予備加熱条件)加熱し、次いで室温に戻すことなく、180℃で30分間(熱硬化条件)加熱することにより、樹脂組成物層を熱硬化させて、室温(25℃)に戻し、絶縁層を形成し、積層体を得た。得られた絶縁層の最大厚み(内層基板の銅層と絶縁層の界面から絶縁層と支持体の界面までの距離)は25μmであった。熱硬化後室温(25℃)に戻した。
【0183】
(絶縁層に穴あけする工程)
絶縁層形成後、支持体を付けたまま、積層体の一方の主面側にある絶縁層に対して、COレーザー加工機(HITACHI社製「LC-K212」)を使用して、パワー:1.35W、ショット数:2、狙いトップ径:30μmの条件で、3か所個所以上穴あけ加工した。これにより、内層基板の回路導体上に開口する上面視略円形及び断面外形矩形のビアホールが複数形成され、各ビアホール底面において内層基板の導体層が露出した。
【0184】
(絶縁層をT(℃)で加熱処理する工程)
レーザーによる穴あけ工程後、常圧(0.1MPa)の空気中にて、加熱処理温度130℃(T)、加熱処理時間30分の条件で加熱処理(アニール処理)を行った。その後、室温(25℃)に戻し、支持体を除去した。
【0185】
(酸化剤溶液でデスミア処理する工程)
絶縁層表面を、膨潤液であるアトテックジャパン社製のスウェリング・ディップ・セキュリガンスP(Swelling Dip Securiganth P)に80℃で10分間浸漬し、次に、酸化剤としてアトテックジャパン社製のコンセントレート・コンパクト CPに80℃で20分間浸漬し、最後に、中和液としてアトテックジャパン社製のリダクションソリューシン・セキュリガントPに40℃で5分間浸漬した。その後80℃で30分間乾燥し、評価基板を作製した。
【0186】
<実施例2>
実施例1と同様の方法で作製した樹脂シートが積層された内層基板を、支持体を付けたまま、130℃で30分間(予備加熱条件)加熱し、その後、室温(25℃)に戻した。その後、支持体を付けたまま、樹脂シートが積層された内層基板の一方の主面側にある樹脂組成物層に対して、COレーザー加工機(HITACHI社製「LC-K212」)を使用して、パワー:1.35W、ショット数:2及び狙いトップ径:30μmの条件で、10か所個所以上にわたって、穴あけ加工した。これにより、内層基板の回路導体上に開口する上面視略円形及び断面外形矩形のビアホールが複数形成され、各ビアホール底面において内層基板の導体層が露出した。その後、ビアホールを備える樹脂シートが積層された内層基板を、170℃で30分間(熱硬化条件)加熱することにより、樹脂組成物層を熱硬化させて、絶縁層を形成し、積層体を得た。その後、常圧の空気中にて、加熱処理温度130℃(T)、加熱処理時間30分の条件で加熱処理(アニール処理)を行い、室温(25℃)に戻し、支持体を除去し、実施例1と同様の条件にて絶縁層表面のデスミア処理を行い、乾燥し、評価基板を作製した。
【0187】
<実施例3>
樹脂シートAの代わりに作製例Bで作製した樹脂シートBを用い、さらに加熱処理(アニール処理)における加熱処理温度(T)を130℃から115℃に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、評価基板を作製した。
【0188】
<実施例4>
樹脂シートAの代わりに作製例Cで作製した樹脂シートCを用い、さらに加熱処理(アニール処理)における加熱処理温度(T)を130℃から115℃に変更し、加熱処理時間を30分間から60分間に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、評価基板を作製した。
【0189】
<実施例5>
樹脂シートAの代わりに作製例Dで作製した樹脂シートDを用い、さらに加熱処理(アニール処理)における加熱処理温度(T)を130℃から140℃に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、評価基板を作製した。
【0190】
<実施例6>
樹脂シートAの代わりに作製例Eで作製した樹脂シートEを用い、さらに加熱処理(アニール処理)における加熱処理温度(T)を130℃から120℃に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、評価基板を作製した。
【0191】
<実施例7>
樹脂シートAの代わりに作製例Fで作製した樹脂シートFを用い、さらに加熱処理(アニール処理)における加熱処理温度(T)を130℃から145℃に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、評価基板を作製した。
【0192】
<比較例1>
絶縁層への穴あけ工程後、加熱処理(アニール処理)を行わずにデスミア処理を行った以外は、実施例1と同様の方法で、評価基板を作製した。
【0193】
<比較例2>
加熱処理(アニール処理)における加熱処理温度(T)を130℃から80℃に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、評価基板を作製した。
【0194】
<比較例3>
加熱処理(アニール処理)における加熱処理温度(T)を130℃から150℃に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、評価基板を作製した。
【0195】
<比較例4>
樹脂シートAの代わりに作製例Gで作製した樹脂シートGを用い、さらに加熱処理(アニール処理)における加熱処理温度(T)を130℃から150℃に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、評価基板を作製した。
【0196】
<比較例5>
樹脂シートAの代わりに作製例Hで作製した樹脂シートHを用い、さらに加熱処理(アニール処理)における加熱処理温度(T)を130℃から170℃に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、評価基板を作製した。
【0197】
<試験例1:絶縁層のガラス転移温度(T)の測定>
各作製例で作製した樹脂シートA~Hを、対応する実施例及び比較例の予備加熱条件及び熱硬化条件で熱硬化させ、サンプルを得た。サンプルを、熱機械分析装置(DMA)としてセイコーインスツルメンツ社製の型式DMS-6100を用い、「引っ張りモード」にて測定した。測定は、2℃/分の昇温にて、25℃~240℃の範囲で行った。測定で得られた貯蔵弾性率(E’)と損失弾性率(E”)との比で求められる損失正接(tanδ)の最大値の小数点第一位を四捨五入した値を絶縁層のガラス転移温度(T)とした。
【0198】
<試験例2:クラックの評価>
各実施例及び比較例で作製した評価基板におけるビアホール周辺の表層を、走査型電子顕微鏡(日立ハイテク社製、S-4800)を使用してクラック(ビアクラック)の評価を行った。100個のビアホール周辺の表層において、割れが発生しているかを確認し、割れ(クラック)の発生していない割合を数え、下記の評価基準で評価した。
【0199】
評価基準
「○」:割れの発生数(クラックの個数)が20個未満の場合
「×」:割れの発生数(クラックの個数)が20個以上の場合
【0200】
各実施例及び比較例で用いた樹脂シート及び評価基板の作製方法、各試験例の測定結果及び評価結果を下記表2にまとめる。
【0201】
【表2】
【0202】
穴あけのタイミング
「I」:(A-32)工程後(A-4)工程前
「II」:(A-31)工程後(A-32)工程前
【0203】
表2に示す通り、絶縁層の形成に活性エステル系硬化剤を使用し、絶縁層形成後に、絶縁層をそのガラス転移温度T(℃)付近(±20℃以内)の温度T(℃)で加熱処理することにより、デスミア処理(粗化処理)後のクラックの発生を抑制することができることがわかる。