(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151219
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
F02D 29/00 20060101AFI20220929BHJP
F02D 29/02 20060101ALI20220929BHJP
F02D 29/06 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
F02D29/00 B
F02D29/02 321B
F02D29/02 321A
F02D29/06 F
F02D29/06 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021054187
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】今村 翔太
【テーマコード(参考)】
3G093
【Fターム(参考)】
3G093AA10
3G093BA19
3G093BA21
3G093BA22
3G093CA01
(57)【要約】
【課題】アイドリングストップ時にバッテリ上がりを防止しつつ電装品を必要時に作動状態とすると共にエンジン再始動の容易性と安全性を両立できる建設機械を提供する。
【解決手段】建設機械はアイドルストップ機能により停止状態のエンジンを再始動させる第2スイッチを備える。アイドルストップ機能によりエンジンが停止された場合、エンジン停止からシートベルトが継続して装着状態の場合にはエンジンが停止状態かつ電装品が作動可能状態の第1停止状態に、第1停止状態においてシートベルトが解除状態に変更された場合又はアイドルストップ機能によりエンジンが停止状態でシートベルトが解除状態の場合にはエンジンが停止状態かつ電装品が停止状態の第2停止状態となる。コントローラは、第1停止状態のとき第1スイッチ又は第2スイッチの操作によりエンジン再始動を実行し、第2停止状態のとき第1スイッチの操作のみによりエンジン再始動を実行する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンによって駆動されて発電するオルタネータと、
前記オルタネータが発電した電力を蓄えるバッテリと、
前記バッテリと電気的に接続された電装品と、
信号を出力しない第1位置、前記電装品の作動を指示するオン信号を出力可能な第2位置、前記エンジンの始動を指示するスタート信号を出力可能な第3位置を有する第1スイッチと、
オペレータが着座する運転席と、
前記運転席にオペレータを拘束可能な装着状態とオペレータの離席が可能な解除状態とに変更可能なシートベルトと、
オペレータにより操作される操作装置と、
前記エンジンによって駆動される作業機と、
前記作業機及び前記エンジンの動作を制御するとともに、前記エンジンの駆動中に所定の条件が成立したときに前記エンジンを停止させるアイドリングストップ機能を有するコントローラと備えた建設機械において、
前記アイドリングストップ機能により停止状態である前記エンジンの再始動を指示する再始動信号を前記コントローラへ出力可能な第2スイッチを更に備え、
前記アイドリングストップ機能によって前記エンジンが停止された場合、当該エンジンが停止されてから前記シートベルトが継続して装着状態である場合には、前記エンジンが停止状態かつ前記電装品が作動可能な状態の第1状態となり、
前記第1状態において前記シートベルトが解除状態に変更された場合又は前記アイドリングストップ機能によって前記エンジンが停止された状態において前記シートベルトが解除状態である場合には、前記エンジンが停止状態かつ前記電装品が停止状態の第2状態となり、かつ
前記コントローラは、
前記第1状態のときは、前記第1スイッチからのスタート信号又は前記第2スイッチからの再始動信号のいずれかの信号の入力により前記エンジンの再始動を実行し、
前記第2状態のときは、前記第1スイッチからのスタート信号の入力のみによって前記エンジンの再始動を実行するように前記エンジンを制御する
ことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械において、
前記第2状態において前記シートベルトが解除状態から装着状態へと変更された場合には、前記エンジンが停止状態かつ前記電装品が作動可能な状態の第3状態となり、
前記コントローラは、前記第3状態のときは、前記第1スイッチからのスタート信号の入力のみによって前記エンジンの再始動を実行するように前記エンジンを制御する
ことを特徴とする建設機械。
【請求項3】
請求項1に記載の建設機械において、
前記コントローラは、前記第2状態のときの前記エンジンの再始動を、前記第1スイッチが前記第1位置へ操作された後に前記第3位置へ操作された場合に限って実行する
ことを特徴とする建設機械。
【請求項4】
請求項1に記載の建設機械において、
前記第2スイッチは、前記操作装置の一部分に配設されている
ことを特徴とする建設機械。
【請求項5】
請求項1に記載の建設機械において、
前記シートベルトの装着状態及び解除状態に応じて開閉状態が切り換わる第3スイッチを備え、
前記第1スイッチから前記電装品へのオン信号は、前記第3スイッチの開閉状態が切り換わることで遮断される
ことを特徴とする建設機械。
【請求項6】
請求項5に記載の建設機械において、
前記コントローラの前記アイドリングストップ機能の実行により出力される制御信号が入力される第1コイル部及び前記第1コイル部への制御信号の入力により閉状態に切り換わる第1スイッチ部を有する第1リレーと、
前記第1リレーの前記第1スイッチ部に前記第3スイッチを介して電気的に接続された第2コイル部及び前記第1スイッチと前記電装品とを繋ぐ回路上に設けられ前記第2コイル部への制御信号の入力により開状態に切り換わる第2スイッチ部を有する第2リレーとを備え、
前記第3スイッチは、前記シートベルトが解除状態のときに閉状態となるように構成されている
ことを特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械に係り、更に詳しくは、所定の条件が成立したときにエンジンを停止させるアイドリングストップ機能を搭載した建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルやクレーン、ホイールローダ等の建設機械では、近年、アイドリングストップ機能が搭載されている。アイドリングストップ機能とは、建設機械の作業が行われない状態が長時間継続したときに、エンジンを自動的に停止させるものである。アイドリングストップ機能によりエンジンを停止させた場合、エンジンにより駆動されている発電機の発電も停止してしまい、搭載されている電装品はバッテリからの電力の供給により作動することになる。このような状態のときに、オペレータが建設機械から長時間離れてしまうと、電装品の電力消費によるバッテリ上がりが懸念される。このような懸念に対して、例えば、特許文献1に記載の技術や特許文献2に記載の技術が知られている。
【0003】
特許文献1に記載の技術は、運転中の建設機械がアイドリングストップ状態になったときに各種電気機器やコントローラへ流れる放電電流によってバッテリが消耗しないように、タイマがアイドリングストップ状態の継続時間をカウントし、カウント時間が所定の時間を経過したときにタイマ接点をONにすることで、警報器を鳴動させたりモニタ画面に警告を表示したりするものである。この警報器の警報音やモニタ画面の警告表示によって、オペレータに対してアイドリングストップ状態であることを認知させようとしている。
【0004】
特許文献2に記載の技術は、エンジンの再起動を簡単に行うと共に作動の開始を周囲に確実に報知するために、アイドリングストップ機能によりエンジンを自動的に停止させた後、再起動待機時間の経過前である場合においてホーンスイッチが操作され且つゲートロックレバーがロック位置にあるときにエンジンを再起動する一方、再起動待機時間が経過した場合には車体の電源を停止させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-091707号公報
【特許文献2】特開2018-204252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術では、警報器の警報音やモニタ画面の警告表示によって、オペレータに対してアイドリングストップ状態であることを認知させようとしている。しかし、アイドリングストップ状態の警報や警告表示が行われる前に、オペレータが建設機械から離れてしまうことが考えられる。この場合、オペレータは当該警報や警告表示を認知できず、バッテリから各種電気機器やコントローラへの電源回路が遮断されない懸念がある。このように、特許文献1に記載の技術では、アイドリングストップ状態のときにオペレータに対して警報や警告表示が行われるだけなので、バッテリ上がりの懸念が残る。
【0007】
特許文献2に記載の技術においては、エンジンの再起動の条件を満たさずにアイドリングストップ状態が所定時間継続した場合、油圧ショベルの電源を停止させることで、電力の無駄な消費を抑制しようとしている。しかし、オペレータが運転室内で長時間待機したい場合でも、油圧ショベルの電源が自動的に停止されてしまうので、使用しているラジオやエアコンなどの電気機器(電装品)までも停止してしまう。ラジオやエアコンなどを継続して使用したい場合には、電源を再びオンにする必要がある。すなわち、エンジンを再起動する必要があり、ラジオやエアコンなどを継続使用するには手間が掛かる。
【0008】
また、特許文献2に記載の技術では、エンジンを再起動する条件として、ホーンスイッチのオン操作と共にゲートロックレバーのロック位置への操作を要する。ホーンスイッチは、操作レバー装置のレバー先端に設けられており、油圧ショベルの乗降時に誤って触れやすい位置にある。そのため、オペレータがゲートロックレバーをロック位置にした状態で油圧ショベルから降りようとした際に、ホーンスイッチを誤って押してしまうことで、意図しないエンジンの再起動が懸念される。
【0009】
本発明は、上記の事柄に基づいてなされたもので、その目的は、アイドリングストップ時において、バッテリ上がりの防止を図りつつ電装品を必要時に作動可能な状態とすると共に、エンジン再始動の容易性と安全性を両立することができる建設機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、エンジンと、前記エンジンによって駆動されて発電するオルタネータと、前記オルタネータが発電した電力を蓄えるバッテリと、前記バッテリと電気的に接続された電装品と、信号を出力しない第1位置、前記電装品の作動を指示するオン信号を出力可能な第2位置、前記エンジンの始動を指示するスタート信号を出力可能な第3位置を有する第1スイッチと、オペレータが着座する運転席と、前記運転席にオペレータを拘束可能な装着状態とオペレータの離席が可能な解除状態とに変更可能なシートベルトと、オペレータにより操作される操作装置と、前記エンジンによって駆動される作業機と、前記作業機及び前記エンジンの動作を制御するとともに、前記エンジンの駆動中に所定の条件が成立したときに前記エンジンを停止させるアイドリングストップ機能を有するコントローラと備えた建設機械において、前記アイドリングストップ機能により停止状態である前記エンジンの再始動を指示する再始動信号を前記コントローラへ出力可能な第2スイッチを更に備え、前記アイドリングストップ機能によって前記エンジンが停止された場合、当該エンジンが停止されてから前記シートベルトが継続して装着状態である場合には、前記エンジンが停止状態かつ前記電装品が作動可能な状態の第1状態となり、前記第1状態において前記シートベルトが解除状態に変更された場合又は前記アイドリングストップ機能によって前記エンジンが停止された状態において前記シートベルトが解除状態である場合には、前記エンジンが停止状態かつ前記電装品が停止状態の第2状態となり、かつ、前記コントローラは、前記第1状態のときは、前記第1スイッチからのスタート信号又は前記第2スイッチからの再始動信号のいずれかの信号の入力により前記エンジンの再始動を実行し、前記第2状態のときは、前記第1スイッチからのスタート信号の入力のみによって前記エンジンの再始動を実行するように前記エンジンを制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、アイドリングストップ機能によりエンジンが停止されてからシートベルトの装着状態が継続されている場合にはオペレータが短時間の待機中と想定されるので、電装品を作動可能な状態にすることでオペレータによる電装品の使用を可能としている。この場合、第2スイッチの操作によりエンジン再始動を可能とすることで、エンジンの再始動が容易となる。一方、アイドリングストップ機能によりエンジンが停止された状態においてにシートベルトが解除状態の場合にはオペレータが長時間離座する懸念があり、電装品を停止状態にすることでバッテリ上がりを防止する。この場合、第2スイッチの操作によるエンジン再始動を許容しないことで、オペレータの第2スイッチの誤操作による意図しないエンジン再始動を防止する。このように、アイドリングストップ時において、バッテリ上がりの防止を図りつつ電装品を必要時に作動可能な状態とすると共に、エンジン再始動の容易性と安全性を両立することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の建設機械の一実施の形態を適用した油圧ショベルを示す斜視図である。
【
図2】本発明の建設機械の一実施の形態における運転室内の運転席及びその周辺の構成を示す斜視図である。
【
図3】本発明の建設機械の一実施の形態における油圧システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図4】本発明の建設機械の一実施の形態における電気システムの構成を示す回路図である。
【
図5】本発明の建設機械の一実施の形態の電気システムにおけるシートベルト装着状態でアイドリングストップを実行したときの接続状態を示す回路図である。
【
図6】本発明の建設機械の一実施の形態の電気システムにおけるアイドリングストップ実行中にシートベルトが解除状態へ変更されたときの接続状態を示す回路図である。
【
図7】本発明の建設機械の一実施の形態におけるエンジン始動、アイドリングストップ、及びアイドルリングストップ時のエンジン再始動の動作を示すフローチャートである。
【
図8】本発明の建設機械の一実施の形態におけるアイドリングストップ実行中のシートベルト装着の有無による機体コントローラ及び電装品の作動状態の変化及び各状態でのエンジン再始動の条件を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の建設機械の実施の形態について図面を用いて説明する。本実施の形態においては、建設機械の一例として油圧ショベルを例に挙げて説明する。
【0014】
まず、本発明の建設機械の一実施の形態としての油圧ショベルの構成について
図1及び
図2を用いて説明する。
図1は本発明の建設機械の一実施の形態を適用した油圧ショベルを示す斜視図である。
図2は本発明の建設機械の一実施の形態における運転室内の運転席及びその周辺の構成を示す斜視図である。ここでは、運転席に着座したオペレータから見た方向を用いて説明する。
【0015】
図1において、建設機械としての油圧ショベル1は、自走可能な下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、上部旋回体3の前部に俯仰動可能に設けられたフロント作業機4とを備えている。
【0016】
下部走行体2は、左右にクローラ式の走行装置11を備えている。左右の走行装置11は、例えば、油圧アクチュエータとしての走行油圧モータ12により駆動する。
【0017】
上部旋回体3は、例えば、油圧アクチュエータとしての旋回油圧モータ(図示せず)によって、下部走行体2に対して旋回駆動される。上部旋回体3は、支持構造体である旋回フレーム21と、旋回フレーム21上の前部左側に設置された運転室22と、旋回フレーム21の後端部に取り付けられたカウンタウェイト23と、旋回フレーム21上における運転室22とカウンタウェイト23との間に設けられた機械室24とを含んで構成されている。カウンタウェイト23は、フロント作業機4との重量バランスをとるためのものである。機械室24には、後述のエンジン41やメインポンプ42、オルタネータ51、スタータモータ56(後述の
図3及び
図4参照)などの各種機器が収容されている。
【0018】
運転室22内には、
図2に示すように、オペレータが着座する運転席26が配置されている。運転席26には、シートベルト27が設置されている。運転席26の周囲には、操作装置28やゲートロックレバー29、キースイッチ61等のオペレータが油圧ショベル1を操作するための各種機器が配置されている。また、運転室22内には、ラジオやエアコンディショナなどの電装品55(後述の
図4参照)が配置されている。
【0019】
シートベルト27は、運転席26にオペレータを拘束するためのウェビング27aと、ウェビング27aの一端部に設けられた連結金具としてのタング27bと、タング27bと係脱可能なバックル27cとを有している。すなわち、シートベルト27は、運転席26にオペレータを拘束可能な装着状態とオペレータの離席が可能な解除状態とに変更可能に構成されている。
【0020】
シートベルト27のバックル27cの内部には、シートベルトスイッチ66が設置されている。シートベルトスイッチ66は、シートベルト27の装着状態及び解除状態に応じて開閉状態が切り換わるものであり、後述の電気システム50の電気回路の接続及び遮断を切換可能である。また、シートベルトスイッチ66は、シートベルト27が装着状態であるか否かを検出する検出器としても機能する。シートベルトスイッチ66の具体的な機能は後述する(後述の
図4参照)。
【0021】
操作装置28は、例えば、オペレータにより操作される操作レバー28aを有しており、前後左右に操作可能である。操作装置28は、オペレータによる操作方向や操作量の入力に応じて、下部走行体2の走行動作、上部旋回体3の旋回動作、フロント作業機4の動作など油圧ショベル1の動作を指示するものである。操作装置28は、例えば、パイロット操作式のものであり、後述のパイロットバルブ47(後述の
図3参照)を有している。
【0022】
ゲートロックレバー29は、運転室22の乗降時にオペレータによって操作されるものであり、操作装置28による油圧ショベル1の操作を可能又は不能に切り換える機能を有している。ゲートロックレバー29は、運転席26の乗降口を開放する上昇位置(オペレータの乗降を許容する位置)または運転席26の乗降口を制限する下降位置(オペレータの乗降を妨げる位置)に選択的に操作可能である。
【0023】
ゲートロックレバー29には、シャットオフスイッチ67が設置されている。シャットオフスイッチ67は、ゲートロックレバー29の動きに連動して切り換えられるスイッチであり、操作装置28による油圧ショベル1の操作を不能とするロック位置と、操作装置28による油圧ショベル1の操作を可能とするロック解除位置とに切り換えることが可能である。シャットオフスイッチ67は、ゲートロックレバー29の上昇位置への操作によってロック位置に切り換えられる一方、ゲートロックレバー29の下降位置への操作によってロック解除位置に切り換えられる。シャットオフスイッチ67は、ロック位置にあるときに、操作装置28による油圧ショベル1の操作を不能とする指示信号を出力する。
【0024】
キースイッチ61は、操作装置28の近傍に配置されており、エンジン41の始動及び停止の指示や電装品55を含む各種の電気機器の作動の指示を行うものである。キースイッチ61の構成の詳細は後述する(後述の
図4参照)。
【0025】
操作装置28の操作レバー28aの先端部には、再始動スイッチ68が設けられている。すなわち、再始動スイッチ68は、キースイッチ61よりも操作装置28に近い位置に配置されている。再始動スイッチ68は、詳細は後述するが、後述の機体コントローラ53(後述の
図4参照)のアイドリングストップ機能によりエンジン41が停止しているときにエンジン41の再始動を指示するものである。再始動スイッチ68は、例えば、プッシュボタン型であり、押下することでエンジン41の再始動を指示する再始動信号を出力する。
【0026】
フロント作業機4は、掘削作業等を行うための多関節型の作業装置であり、例えば、ブーム31、アーム32、アタッチメントとしてのバケット33を備えている。ブーム31は、その基端部が上部旋回体3の旋回フレーム21の前端部に回動可能に連結されている。ブーム31の先端部には、アーム32の基端部が回動可能に連結されている。アーム32の先端部には、バケット33の基端部が回動可能に連結されている。ブーム31、アーム32、バケット33はそれぞれ、ブームシリンダ35、アームシリンダ36、バケットシリンダ37によって駆動される。ブームシリンダ35、アームシリンダ36、バケットシリンダ37は、圧油の給排によって伸縮可能な油圧アクチュエータである。
【0027】
次に、本発明の建設機械の一実施の形態における油圧システムの構成について
図3を用いて説明する。
図3は本発明の建設機械の一実施の形態における油圧システムの概略構成を示すブロック図である。
【0028】
図3において、油圧ショベル1は、下部走行体2、上部旋回体3、フロント作業機4(共に
図1参照)を駆動させる油圧システム40を備えている。油圧システム40は、エンジン41によって駆動されるメインポンプ42及びパイロットポンプ43と、メインポンプ42から吐出された圧油により駆動する各種の油圧アクチュエータ44(
図3中、1つのみ図示)と、メインポンプ42から各種の油圧アクチュエータ44に供給される圧油の流れ(方向及び流量)をそれぞれ制御する各種の方向制御弁45(
図3中、1つのみ図示)とを備えている。
【0029】
各種の油圧アクチュエータ44は、左右の走行油圧モータ12、ブームシリンダ35、アームシリンダ36、バケットシリンダ37、旋回油圧モータ(図示せず)等である。各種の方向制御弁45は、左右の走行油圧モータ12、ブームシリンダ35、アームシリンダ36、バケットシリンダ37、旋回油圧モータ(図示せず)等にそれぞれ対応している。方向制御弁45は、例えば、パイロット操作式のものであり、供給されるパイロット圧によって駆動される。
【0030】
パイロットポンプ43は、各種の方向制御弁45に供給されるパイロット圧(パイロット2次圧)の油圧源である。パイロットポンプ43は、例えば、ギアポンプにより構成されている。
【0031】
操作装置28は、操作レバー28aの操作に応じて開口面積が変化するパイロットバルブ47を有している。パイロットバルブ47は、パイロットポンプ43からのパイロット1次圧(吐出圧)を操作レバー28aの操作(操作方向や操作量)に応じて減圧してパイロット2次圧を生成し、生成したパイロット2次圧を方向制御弁45へ出力するものである。
【0032】
パイロットポンプ43と操作装置28のパイロットバルブ47とを繋ぐパイロットライン上には、当該パイロットラインの連通又は遮断を切り換えるシャットオフバルブ48が設置されている。シャットオフバルブ48は、パイロットポンプ43からパイロットバルブ47へのパイロット1次圧の供給を遮断することで操作装置28による油圧ショベル1の操作を不能とするものである。シャットオフバルブ48は、シャットオフスイッチ67の操作により切り換わるものである。具体的には、シャットオフバルブ48は、シャットオフスイッチ67がロック位置にある場合、閉弁してパイロットバルブ47へのパイロット1次圧の供給を遮断する一方、シャットオフスイッチ67がロック解除位置にある場合、開弁してパイロットバルブ47へのパイロット1次圧の供給を許容するように構成されている。
【0033】
なお、シャットオフスイッチ67は、上述したように、ゲートロックレバー29の操作に連動してロック位置又はロック解除位置に切り換えられる。したがって、実際上は、ゲートロックレバー29が上昇位置に操作されることで、シャットオフスイッチ67がロック位置に切り換わり、操作装置28による油圧アクチュエータ44(油圧ショベル1)の操作が不能となる。一方、ゲートロックレバー29が下降位置に操作されることで、シャットオフスイッチ67がロック解除位置に切り換わり、操作装置28による油圧アクチュエータ44の操作が可能となる。
【0034】
次に、本発明の建設機械の一実施の形態における電気システムの構成について
図4を用いて説明する。
図4は本発明の建設機械の一実施の形態における電気システムの構成を示す回路図である。
図4中、実線は電力供給ラインを、破線は信号ラインを示している。なお、
図4は、エンジンが動作中であってシートベルトが装着状態の場合の電気回路の接続状態を示している。
【0035】
図4において、油圧ショベル1は、各種の電気機器の作動及び停止を制御すると共にエンジン41の始動及び停止を制御するための電気システム50を備えている。電気システム50は、例えば、エンジン41によって駆動されて発電するオルタネータ51と、オルタネータ51が発電した電力を蓄えるバッテリ52と、油圧ショベル1(下部走行体2、上部旋回体3、フロント作業機4)の動作を制御する機体コントローラ53と、エンジン41の駆動を制御するエンジンコントローラ(以下、ECUという)54と、ラジオやエアコンなどの電装品55と、エンジン41に機械的に接続されてエンジン41を始動させるスタータモータ56とを備えている。
【0036】
バッテリ52は、機体コントローラ53の電源端子および電装品55の電源端子(図示せず)に電気的に接続されている。すなわち、機体コントローラ53及び電装品55には、バッテリ52からの電力が供給可能となっている。また、バッテリ52は、スタータカットリレー62を介してスタータモータ56に電気的に接続されている。すなわち、スタータモータ56には、スタータカットリレー62の開閉に応じてバッテリ52からの電力が供給可能となっている。また、バッテリ52は、キースイッチ61に電気的に接続されている。すなわち、キースイッチ61には、バッテリ52の電力が供給されるようになっている。
【0037】
キースイッチ61は、例えば、B端子、K端子、S端子の3つの接続端子を有しており、OFF(オフ)、KEYON(キーオン)、START(スタート)の3つの切換位置のいずれかに切換可能に構成されている。キースイッチ61は、各切換位置に応じて3つの接続端子(B端子、K端子、S端子)間の接続パターンを切り換えるものである。各切換位置の変更は、オペレータがエンジンキーを操作することによって行われる。キースイッチ61は、オフ位置又はキーオン位置にてエンジンキーから手を放してもエンジンキーはその位置を保持する一方、スタート位置でエンジンキーから手を放すとエンジンキーは自動的にキーオン位置に復帰するように構成されている。
【0038】
キースイッチ61は、オフ位置では全ての端子間が非導通状態となり、キーオン位置ではB端子とK端子間が導通状態となり、スタート位置ではB端子とK端子とS端子間が導通状態となるように構成されている。すなわち、オフ位置では、キースイッチ61から信号(電圧)を出力することはない。キーオン位置では、K端子からキーオン信号の出力が可能となっている。スタート位置では、K端子からキーオン信号の出力が可能であると共に、S端子からスタート信号の出力が可能となっている。
【0039】
キースイッチ61のB端子はバッテリ52に電気的に接続されており、B端子にはバッテリ52の電圧が入力されるようになっている。K端子は、キー信号カットリレー63を介して機体コントローラ53のキーオン入力端子及び電装品55に電気的に接続されている。すなわち、機体コントローラ53及び電装品55には、キー信号カットリレー63の開閉に応じて、キースイッチ61からのキーオン信号が入力されるようになっている。キー信号カットリレー63の構成や接続の詳細は後述する。S端子は、機体コントローラ53のSTART端子に電気的に接続されている。すなわち、機体コントローラ53には、キースイッチ61からのスタート信号が入力されるようになっている。
【0040】
機体コントローラ53は、ECU54を介してエンジン41の動作を制御することが可能となっている。例えば、機体コントローラ53は、エンジン41の駆動中に油圧ショベル1の待機状態(作業が行われない状態)が所定時間継続したときに、エンジン41を停止させるアイドリングストップ機能を有している。そのため、機体コントローラ53は、上述した電源端子、キーオン入力端子、START端子の他に、アイドリングストップ機能を実行するためのアイドルストップ端子及びアイドルストップ端子に接続された内部スイッチ53aを有している。内部スイッチ53aの他方側はGNDに接続されている。内部スイッチ53aは、アイドリングストップ機能を実行する場合に閉状態に切り換えられる。アイドルストップ端子は、ECU54に電気的に接続されており、内部スイッチ53aが閉状態のときにエンジンを停止させる制御信号をECU54へ出力する。また、アイドルストップ端子は、アイドルストップリレー64を介してキースイッチ61のK端子に電気的に接続されていると共に、キー信号カットリレー63及びシートベルトスイッチ66を介してキースイッチ61のK端子に電気的に接続されている。
【0041】
機体コントローラ53は、さらに、エンジン始動出力端子、スタータ制御端子、シャットオフスイッチ入力端子、及び、再始動スイッチ入力端子を有している。エンジン始動出力端子は、ECU54に電気的に接続されており、エンジン41を始動させる制御信号をECU54へ出力するようになっている。スタータ制御端子は、スタータカットリレー62に電気的に接続されている。シャットオフスイッチ入力端子は、シャットオフスイッチ67に電気的に接続されており、シャットオフスイッチ67からの信号が入力されるようになっている。再始動スイッチ入力端子は、再始動スイッチ68に電気的に接続されており、再始動スイッチ68からの再始動信号が入力されるようになっている。
【0042】
スタータカットリレー62は、コイル部62a及びスイッチ部62bを有しており、例えば、常開型のリレーである。スイッチ部62bは、第1固定接点62d及び第2固定接点62eの2つの固定接点と、コイル部62aの励磁の有無に応じて2つの固定接点62d、62eのいずれか一方に接続される可動接点62fとを有している。コイル部62aは、一方側が機体コントローラ53のスタータ制御端子に電気的に接続され、他方側がGNDに接続されている。スイッチ部62bの第1固定接点62d側は開放されており、第2固定接点62eはスタータモータ56に電気的に接続されている。可動接点62fは、バッテリ52に電気的に接続されている。スタータカットリレー62は、機体コントローラ53のスタータ制御端子からの制御信号の入力によりコイル部62aが励磁されることで、スイッチ部62bが非導通状態から導通状態に切り換わる。これにより、バッテリ52からスタータモータ56に電力が供給される。
【0043】
キー信号カットリレー63は、コイル部63a及びスイッチ部63bを有しており、例えば、常閉型のリレーである。スイッチ部63bは、第1固定接点63d及び第2固定接点63eの2つの固定接点と、コイル部63aの励磁の有無に応じて2つの固定接点63d、63eのいずれか一方に接続される可動接点63fとを有している。コイル部63aは、一方側がキースイッチ61のK端子に電気的に接続され、他方側がシートベルトスイッチ66を介して機体コントローラ53のアイドルストップ端子に電気的に接続されていると共にシートベルトスイッチ66を介してアイドルストップリレー64の後述のスイッチ部64bに電気的に接続されている。スイッチ部63bの第1固定接点63dは機体コントローラ53のキーオン入力端子及び電装品55の入力端子(図示せず)に電気的に接続されており、第2固定接点63e側は開放されている。可動接点63fは、キースイッチ61のK端子に電気的に接続されている。キー信号カットリレー63は、コイル部63aが励磁されることで、スイッチ部63bが導通状態から非導通状態に切り換わる。これにより、キースイッチ61のK端子から機体コントローラ53及び電装品55へのキーオン信号の入力が遮断される。
【0044】
アイドルストップリレー64は、コイル部64a及びスイッチ部64bを有しており、例えば、常開型のリレーである。スイッチ部64bは、第1固定接点64d及び第2固定接点64eの2つの固定接点と、コイル部64aの励磁の有無に応じて2つの固定接点64d、64eのいずれか一方に接続される可動接点64fとを有している。コイル部64aは、一方側がキースイッチ61のK端子に電気的に接続され、他方側が機体コントローラ53のアイドルストップ端子に電気的に接続されている。スイッチ部64bの第1固定接点64d側は開放されており、第2固定接点64eはGNDに接続されている。可動接点64fは、シートベルトスイッチ66を介してアイドルストップリレー64及びキー信号カットリレー63の両コイル部63a、64aの他方側(機体コントローラ53との接続側)に電気的に接続されている。アイドルストップリレー64は、コイル部64aが励磁されることで、スイッチ部64bが非導通状態から導通状態に切り換わる。
【0045】
シートベルトスイッチ66は、例えば、シートベルト27のタング27b(連結金具)がバックル27cに係合してシートベルト27が装着状態にあるときに開状態(非導通状態)となる一方、タング27bとバックル27cの係合が解除されてシートベルト27が解除状態にあるときに閉状態(導通状態)となるように構成されている。
図4に示すシートベルトスイッチ66は開状態なので、シートベルト27は装着状態である。
【0046】
シートベルトスイッチ66は、例えば、第1固定接点66a、第2固定接点66b、第3固定接点66c、第4固定接点66dの4つの固定接点と、4つの固定接点66a、66b、66c、66dに接離する常開形の可動接点66eとを有している。シートベルトスイッチ66は、第1固定接点66aと第2固定接点66bとが可動接点66eを介して接続されると共に、第3固定接点66cと第4固定接点66dとが可動接点66eを介して接続されるように構成されている。第1固定接点66aは、アイドルストップリレー64のコイル部64aの他方側(機体コントローラ53との接続側)に電気的に接続されている。第2固定接点66bは、アイドルストップリレー64のスイッチ部64bの可動接点64fに電気的に接続されている。第3固定接点66cは、第1固定接点66a及び機体コントローラ53のアイドルストップ端子に電気的に接続されている。第4固定接点66dは、キー信号カットリレー63のコイル部63aの他方側(機体コントローラ53との接続側)に電気的に接続されている。
【0047】
上記のように回路が接続されることで、次の特徴を有している。アイドルストップリレー64は、キースイッチ61のK端子と機体コントローラ53のアイドルストップ端子とを繋ぐ回路の制御信号のコイル部64aへの入力により動作可能となっている。また、アイドルストップリレー64は、スイッチ部64bが動作状態(導通状態)のときに、キースイッチ61のK端子とスイッチ部64bとをシートベルトスイッチ66を介して繋ぐ回路の制御信号がコイル部64aに入力されるようになっている。すなわち、アイドルストップリレー64は、自己保持型のリレーとしてなっている。また、キー信号カットリレー63は、キースイッチ61のK端子と機体コントローラ53のアイドルストップ端子とをシートベルトスイッチ66を介して繋ぐ回路の制御信号のコイル部63aへの入力により動作可能となっている。また、キー信号カットリレー63は、アイドルストップリレー64のスイッチ部64bが動作状態(導通状態)のときに、キースイッチ61のK端子とスイッチ部64bとをシートベルトスイッチ66を介して繋ぐ回路の制御信号がコイル部63aに入力されるようになっている。すなわち、キー信号カットリレー63は、アイドルストップリレー64の動作に連動して動作可能となっている。また、シートベルトスイッチは、キー信号カットリレー63のアイドルストップリレー64との連動を遮断することが可能であり、アイドリングストップ機能の実行中における機体コントローラ53及び電装品55の停止状態及び作動可能な状態の切換を可能としている。
【0048】
次に、本発明の建設機械の一実施の形態における機体コントローラ及びECUの機能について
図4~
図6を用いて説明する。
図5は本発明の建設機械の一実施の形態の電気システムにおけるシートベルト装着状態でアイドリングストップを実行したときの接続状態を示す回路図である。
図6は本発明の建設機械の一実施の形態の電気システムにおけるアイドリングストップ実行中にシートベルトが解除状態へ変更されたときの接続状態を示す回路図である。
【0049】
機体コントローラ53は、ハード構成として、例えば、RAMやROM等からなる記憶装置(図示せず)と、経過時間の計測が可能なタイマを含むCPU等からなる処理装置(図示せず)とを備えている。記憶装置には、制御に必要なプラグラムや各種情報が予め記憶されている。処理装置は、記憶装置からプログラムや各種情報を適宜読み込み、当該プログラムに従って処理を実行することで以下の機能を含む各種の機能を実現する。
【0050】
図4に示す機体コントローラ53は、キースイッチ61のK端子からキーオン入力端子へキーオン信号が入力されている場合に動作状態になり、キーオン信号の入力が無い場合に停止状態となるように構成されている。すなわち、機体コントローラ53は、電源端子がバッテリ52に接続されているが、キーオン信号の入力が無い場合には電力を消費しない。
【0051】
機体コントローラ53は、キースイッチ61がスタート位置に操作されてキースイッチ61のS端子からSTART入力端子へスタート信号が入力された場合、エンジン41を始動させる制御を実行する。具体的には、スタータ制御端子からスタータカットリレー62のコイル部62aへ制御信号(励磁電流)を出力すると共に、エンジン始動出力端子からECU54へエンジン始動の制御信号を出力する。
【0052】
また、機体コントローラ53は、エンジン41の動作中に所定の条件が成立したときには、エンジン41を停止させるアイドリングストップ機能を実行する。所定の条件の一例としては、ゲートロックレバー29が操作されてシャットオフスイッチ67のロック位置が所定時間以上継続している場合が挙げられる。具体的には、機体コントローラ53は、シャットオフスイッチ67からシャットオフスイッチ入力端子へロック位置信号が入力された場合、ロック位置信号の入力の継続時間をカウントし、カウントした時間が所定時間を超えたと判定した場合には、
図5に示すように、内部スイッチ53aを閉状態にしてアイドルストップ端子を含む回路を地絡させる。これにより、ECU54に対してエンジンを停止させる制御信号が出力される。同時に、アイドルストップリレー64のコイル部64aにも制御信号が出力される。これにより、アイドルストップリレー64のスイッチ部64bが開状態から閉状態(導通状態)へと切り換わる。
【0053】
また、機体コントローラ53は、アイドリングストップ機能の実行中において、所定の操作を条件にエンジン41の再始動の制御を行う。ただし、機体コントローラ53は、エンジン41の再始動の条件をシートベルト27の装着状態や解除状態(以下に示す第1停止状態~第3停止状態)に応じて変更する。
【0054】
そこで、まず、アイドリングストップ機能の実行時及び実行中のシートベルト27の装着状態及び解除状態に応じた電気システム50の状態を説明する。
【0055】
アイドリングストップ機能の実行を開始するとき、エンジン41が駆動中なので、一般的にシートベルト27は装着状態である。この場合、
図5に示すように、シートベルトスイッチ66は開状態(非導通状態)であり、機体コントローラ53のアイドルストップ端子とキー信号カットリレー63のコイル部63aとを繋ぐ回路が遮断されている。したがって、キー信号カットリレー63のコイル部63aが励磁されないので、キー信号カットリレー63のスイッチ部63bの閉状態(導通状態)が維持される。このため、機体コントローラ53及び電装品55にはキースイッチ61のK端子からキー信号カットリレー63を介したキーオン信号の入力が維持されるので、機体コントローラ53及び電装品55は動作状態を維持する。このときの状態を第1停止状態とする。つまり、シートベルト27の装着状態が継続中でアイドリングストップ機能の実行によりエンジン41が停止状態かつ電装品55及び機体コントローラ53が作動状態となっている状態が第1停止状態である。
【0056】
第1停止状態においてシートベルト27が装着状態から解除状態に変更されることで、シートベルトスイッチ66が開状態から閉状態(導通状態)へと切り換わる場合を考える。例えば、オペレータが運転室22から降りる場合である。この場合、シートベルトスイッチ66の閉状態への切換により、キー信号カットリレー63のコイル部63aにも制御信号が出力される。これにより、キー信号カットリレー63のコイル部63aが励磁されるので、
図6に示すように、スイッチ部63bが閉状態から開状態(非導通状態)へと切り換わる。キー信号カットリレー63の開状態への切換によりキースイッチ61のK端子から機体コントローラ53及び電装品55へのキーオン信号の入力が遮断され、機体コントローラ53及び電装品55は停止して電力を消費しない状態となる。このときの状態を第2停止状態とする。つまり、アイドリングストップ機能の実行中においてシートベルト27の装着状態から解除状態への一度目の変更によりエンジン41が停止状態かつ電装品55及び機体コントローラ53が停止状態となっている状態が第2停止状態である。
【0057】
第2停止状態では、機体コントローラ53が停止状態になるので、
図6に示すように、内部スイッチ53aは閉状態が解除されて開状態(非導通状態)に切り換わる。しかし、内部スイッチ53aが開状態でも、アイドルストップリレー64のスイッチ部64bの閉状態(GNDとの接続状態)は維持される。なぜなら、キースイッチ61のK端子からアイドルストップリレー64及びキー信号カットリレー63の両コイル部63a、64a及び閉状態のシートベルトスイッチ66を介してアイドルストップリレー64のスイッチ部64bまでの回路が接続状態となっている。したがって、キースイッチ61のK端子からアイドルストップリレー64及びキー信号カットリレー63の両コイル部63a、64aに制御信号が入力されるので、アイドルストップリレー64のスイッチ部64bの閉状態が維持されると共に、キー信号カットリレー63のスイッチ部63bの開状態が維持される。このように、機体コントローラ53のアイドルストップ端子側の回路が遮断されても、アイドルストップリレー64及びキー信号カットリレー63のスイッチ部63b、64bの開閉状態が維持される。
【0058】
さらに、第2停止状態においてシートベルト27が再び装着状態となることで、シートベルトスイッチ66が開状態に切り換わる場合を考える。例えば、降車したオペレータが再び搭乗して作業を再開する場合が考えられる。この場合、シートベルトスイッチ66の開状態への切換によって、
図4に示すように、アイドルストップリレー64及びキー信号カットリレー63の両コイル部63a、64aへの制御信号の出力が消失する。このため、アイドルストップリレー64ではスイッチ部64bが閉状態から開状態へと切り換わり、キー信号カットリレー63ではスイッチ部63bが開状態から閉状態へと切り換わる。これにより、キースイッチ61のK端子からのキーオン信号が機体コントローラ53及び電装品55に対して再び入力され、機体コントローラ53及び電装品55は作動状態になる。このときの状態を第3停止状態とする。つまり、アイドリングストップ機能の実行中においてシートベルト27の解除状態から装着状態への変更によりエンジン41が停止状態かつ電装品55及び機体コントローラ53が作動状態となっている状態が第3停止状態である。
【0059】
なお、アイドリングストップ機能の実行条件が油圧ショベル1の待機状態が所定時間継続した場合なので、当該所定時間の経過前にシートベルト27が解除状態に変更されてからアイドリングストップ機能が実行されることも想定される。この場合、シートベルトスイッチ66が閉状態となっているので、機体コントローラ53が内部スイッチ53aを接続してアイドルストップ端子を含む回路を地絡させると、アイドルストップリレー64及びキー信号カットリレー63の両コイル部63a、64aに制御信号が入力される。これにより、アイドルストップリレー64のスイッチ部64bが開状態から閉状態へと切り換わると共に、キー信号カットリレー63のスイッチ部63bが閉状態から開状態へと切り換わる。キー信号カットリレー63のスイッチ部63bの開状態への切換により、キースイッチ61のK端子から機体コントローラ53及び電装品55へのキーオン信号の入力が遮断され、機体コントローラ53及び電装品55は停止して電力を消費しない状態となる。
【0060】
シートベルト27を解除状態へ変更した後にアイドリングストップ機能を実行したときの最終的な回路の接続状態は、アイドリングストップ機能の実行中においてシートベルト27を装着状態から解除状態へ変更したときの最終的な回路の接続状態と同様なものとなる。すなわち、
図6に示すように、機体コントローラ53の停止により内部スイッチ53aが開状態へと切り換わるが、アイドルストップリレー64のスイッチ部64bが閉状態に維持されることで、キー信号カットリレー63のスイッチ部63bの開状態も維持されている。このため、機体コントローラ53及び電装品55の停止状態が維持される。本停止状態も第2停止状態に含むことにする。
【0061】
第1に、アイドリングストップ機能の実行中にシートベルト27の装着状態が一度も解除されずに継続している場合、すなわち、第1停止状態の場合、機体コントローラ53は、再始動スイッチ68の操作によりエンジン41の再始動を実行するように構成されている。具体的には、再始動スイッチ68からの再始動信号が再始動SW入力端子に入力されると、機体コントローラ53は、
図5に示す閉状態の内部スイッチ53aを開放すると共に、スタータ制御端子からスタータカットリレー62のコイル部62aへ制御信号を出力すると共に、エンジン始動出力端子からECU54へ制御信号を出力する。
【0062】
第2に、アイドリングストップ機能の実行中に、シートベルト27が解除状態である場合、すなわち第2停止状態の場合、機体コントローラ53は、キースイッチ61の操作に限ってエンジン41の再始動を可能とし、再始動スイッチ68の操作によるエンジン41の再始動を許容しないように構成されている。
【0063】
具体的には、第2停止状態(シートベルト27の一度目の解除状態への変更時の状態)の場合には、キースイッチ61をキーオン位置からオフ位置に一旦戻してからスタート位置に操作することで、エンジン41の再始動が可能となっている。第2停止状態では、
図4に示すように、アイドルストップリレー64のスイッチ部64bの閉状態が維持されていると共に、キー信号カットリレー63のスイッチ部63bの開状態が維持されている。このため、キースイッチ61をオフ位置に戻すことで、アイドルストップリレー64及びキー信号カットリレー63の両コイル部63a、64aへの制御信号の出力を消失させる。これにより、アイドルストップリレー64のスイッチ部64bが開状態に戻ると共に、キー信号カットリレー63のスイッチ部63bが閉状態に戻る。この状態において、キースイッチ61をスタート位置に操作することで、キースイッチ61のK端子から機体コントローラ53のキーオン入力端子へキーオン信号が入力されると共に、キースイッチ61のS端子から機体コントローラ53のSTART入力端子へスタート信号が入力される。これにより、機体コントローラ53は、動作状態となり、スタータ制御端子からスタータカットリレー62のコイル部62aへ制御信号を出力すると共に、エンジン始動出力端子からECU54へ制御信号を出力する。
【0064】
第3に、アイドリングストップ機能の実行中にシートベルト27が解除状態から装着状態に変更された場合、すなわち第3停止状態の場合、機体コントローラ53は、キースイッチ61の操作に限ってエンジン41の再始動を可能とし、再始動スイッチ68の操作によるエンジン41の再始動を許容しないように構成されている。
【0065】
第3停止状態の場合には、キースイッチ61をキーオン位置からオフ位置に戻すことなくスタート位置に操作することで、エンジン41の再始動が可能となっている。第3停止状態では、
図4に示すように、キー信号カットリレー63のスイッチ部63bが閉状態であり、機体コントローラ53が作動状態にある。したがって、キーオン位置からスタート位置に操作することで、機体コントローラ53にはキースイッチ61のS端子からスタート信号が入力される。これにより、機体コントローラ53は、スタータ制御端子からスタータカットリレー62のコイル部62aへ制御信号を出力すると共に、エンジン始動出力端子からECU54へ制御信号を出力する。
【0066】
このように、油圧ショベル1が第2停止状態又は第3停止状態にある場合には、機体コントローラ53は、キースイッチ61のS端子からのスタート信号の入力に限ってエンジン41の再始動の制御を実行し、再始動スイッチ68からの再始動信号の入力に対してエンジン41の再始動の制御を実行しないように構成されている。
【0067】
ECU54は、機体コントローラ53からの制御信号に基づき、エンジン41の駆動を制御する。具体的には、ECU54は、機体コントローラ53のエンジン始動出力端子からの制御信号に基づきエンジン41を始動させる制御を行う。また、機体コントローラ53のアイドルストップ端子からの制御信号に基づきエンジン41を停止させる制御を行う。
【0068】
次に、本発明の建設機械の一実施の形態におけるエンジン始動、アイドリングストップ、アイドリングストップ時のエンジン再始動の動作について
図4~
図8を用いて説明する。
図7は本発明の建設機械の一実施の形態におけるエンジン始動、アイドリングストップ、及びアイドルリングストップ時のエンジン再始動の動作を示すフローチャートである。
図8は本発明の建設機械の一実施の形態におけるアイドリングストップ実行中のシートベルト装着の有無による機体コントローラ及び電装品の作動状態の変化及び各状態でのエンジン再始動の条件を示す説明図である。
【0069】
図4に示す電気システム50では、まず、キースイッチ61がスタート位置に操作されると(
図7に示すステップS10におけるYESの場合)、機体コントローラ53及び電装品55にキースイッチ61のK端子からキーオン信号が入力されることで、機体コントローラ53及び電装品55が動作状態(電源がON状態)となる(
図7に示すステップS20)。
【0070】
さらに、機体コントローラ53にキースイッチ61のS端子からスタート信号が入力されるので、機体コントローラ53はエンジン41を始動させる制御を実行する(
図7に示すステップS30)。具体的には、機体コントローラ53は、スタータ制御端子からスタータカットリレー62のコイル部62aへ制御信号を出力すると共に、エンジン始動出力端子からECU54へ制御信号を出力する。スタータ制御端子の出力により、スタータカットリレー62のスイッチ部62bが開状態から閉状態(導通状態)に切り換わる。これにより、バッテリ52からスタータモータ56に電力が供給され、スタータモータ56が駆動する。また、エンジン始動出力端子の出力により、ECU54がエンジン41を始動させる。
【0071】
エンジン41の動作中に、走行装置11や上部旋回体3、フロント作業機4に対する操作が所定時間行われない場合には、機体コントローラ53がアイドリングストップ機能を実行する。例えば、機体コントローラ53は、シャットオフスイッチ67のロック位置が所定時間継続しているか否かを判定する(
図7に示すステップS40)。ステップS40においてNOと判定した場合には、YESと判定するまでステップS40を繰り返す。
【0072】
ステップS40においてYESと判定した場合、機体コントローラ53はアイドリングストップ機能を実行し、エンジン41を停止させる制御を行う(
図7に示すステップS50)。具体的には、機体コントローラ53は、
図5に示すように、内部スイッチ53aを閉状態へ切り換えてアイドルストップ端子を含む回路を地絡させ、アイドルストップ端子からECU54へ制御信号を出力する。これにより、ECU54はエンジン41を停止させる。
【0073】
なお、アイドルストップリレー64のコイル部64aにも制御信号が入力されるので、
図5に示すように、スイッチ部64bが開状態から閉状態に切り換わる。アイドリングストップ機能の実行開始のとき、シートベルト27は一般的に装着状態であるので、シートベルトスイッチ66は開状態であり、キー信号カットリレー63のスイッチ部63bの閉状態が維持される。このため、機体コントローラ53及び電装品55の動作状態は維持される。すなわち、アイドリングストップ機能の実行中にシートベルト27の装着状態が継続することによりエンジンが停止状態かつ機体コントローラ53及び電装品55が作動可能な状態の第1停止状態である。
【0074】
アイドリングストップ機能を実行中、機体コントローラ53は、シートベルト27が装着状態(シートベルトスイッチ66が開状態)か否かを判定する(
図7に示すステップS60)。機体コントローラ53は、アイドリングストップ機能の実行により停止状態のエンジン41の再始動の条件をシートベルト27の装着状態または解除状態に応じて変更する。
【0075】
具体的には、アイドリングストップ機能を実行中にシートベルト27の装着状態が継続されている場合(
図7に示すステップS60においてYESの場合)、すなわち第1停止状態の場合、機体コントローラ53は、再始動スイッチ68の操作のみでエンジン41の再始動を許容する。詳細には、機体コントローラ53は、再始動スイッチ68からの再始動信号(オン信号)の入力の有無を判定し(
図7に示すステップS70)、再始動スイッチ68が操作された場合(
図7に示すステップS70でYESの場合)には
図7に示すステップS30と同様なエンジン41の始動制御を行う。
【0076】
一方、
図7に示すステップS70において再始動スイッチ68が操作されていない場合(
図7に示すステップS70でNOの場合)でも、キースイッチ61がスタート位置に操作されると(
図7に示すステップS80においてYESの場合)、
図7に示すステップS30と同様なエンジン41の始動制御を行う。シートベルト27の装着状態の継続によりシートベルトスイッチ66が開状態であるので、
図5に示すように、キー信号カットリレー63のコイル部63aに制御信号が入力されないので、キー信号カットリレー63のスイッチ部63bの閉状態が維持されている。このため、機体コントローラ53及び電装品55の作動状態が維持されており、キースイッチ61がON位置からスタート位置に操作されると、キースイッチ61のS端子からのスタート信号が機体コントローラ53に入力されるので、機体コントローラ53はエンジン41の始動制御を行うことができる。
【0077】
なお、再始動スイッチ68及びキースイッチ61が操作されない場合(
図7に示すステップS70及びS80においてNOの場合)には、シートベルト27が解除状態に変更されるか、又は、再始動スイッチ68及びキースイッチ61のいずれか一方が操作されるまで、第1停止状態が継続する(
図7に示すステップS60~S80が繰り返される)。
【0078】
一方、アイドリングストップ機能の実行中にシートベルト27の装着状態が一度でも解除状態に変更された場合(
図7に示すステップS60においてNOの場合)には、機体コントローラ53は、キースイッチ61の操作に限ってエンジン41の再始動を許容し、再始動スイッチ68の操作によるエンジン41の再始動を不能としている。
【0079】
アイドリングストップ機能の実行中におけるシートベルト27の一度目の解除状態への変更によって、シートベルトスイッチ66が開状態から閉状態に切り換わると、
図6に示すように、キー信号カットリレー63のスイッチ部63bが閉状態から開状態へと切り換わる。これにより、機体コントローラ53及び電装品55に対するキースイッチ61のK端子からのキーオン信号の入力が遮断され、機体コントローラ53及び電装品55は停止して電力を消費しない状態となる(
図7に示すステップS110)。すなわち、アイドリングストップ機能の実行中にシートベルト27の装着状態の解除状態への一度目の変更によるエンジン41が停止状態かつ機体コントローラ53及び電装品55が停止状態の第2停止状態へと遷移する。
【0080】
シートベルト27の解除状態(第2停止状態)が継続中の場合(
図7に示すステップS120においてNOの場合)、機体コントローラ53は、キースイッチ61がON位置から一旦オフ位置に戻され(
図7に示すステップS130においてYESの場合)、その後にスタート位置に操作された場合(
図7に示すリターンからステップS10においてYESの場合)に限って、エンジン41の再始動の制御を行うことができる(
図7に示すステップS30)。たとえ、キースイッチ61がON位置からスタート位置に操作されても、第2停止状態では機体コントローラ53及び電装品55が停止状態なので、機体コントローラ53はエンジン41の再始動の制御を行うことはできない。キースイッチ61をオフ位置に戻すことで、アイドルストップリレー64及びキー信号カットリレー63の両コイル部63a、64aへの制御信号の入力が消失するので、キー信号カットリレー63のスイッチ部63bが閉状態に切り換わる。このため、キースイッチ61をスタート位置に操作することでキースイッチ61のK端子からのキーオン信号が機体コントローラ53及び電装品55に入力されて作動する(
図7に示すステップS20)。
【0081】
また、第2停止状態のときにシートベルト27が再び装着状態に変更された場合(
図7に示すステップS120においてYESの場合)、シートベルトスイッチ66が閉状態から開状態へ切り換わるので、
図4に示すように、キー信号カットリレー63のスイッチ部63bが開状態から閉状態へと切り換わる。これにより、機体コントローラ53及び電装品55が再び動作状態になる(
図7に示すステップS150)。すなわち、シートベルト27の解除状態から装着状態への変更によるエンジン41が停止状態かつ機体コントローラ53及び電装品55が作動状態の第3停止状態へと遷移する。
【0082】
第3停止状態の場合、第2停止状態の場合と異なり、機体コントローラ53は、キースイッチ61がON位置からスタート位置に操作された場合(
図7に示すステップS160においてYESの場合)でも、エンジン41の再始動の制御を行うことができる(
図7に示すステップS30)。第3停止状態の場合、機体コントローラ53及び電装品55の作動状態となっており、機体コントローラ53にキースイッチ61のS端子からスタート信号が入力されることで、エンジン41の再始動の制御を行うことができる。
【0083】
また、第3停止状態の場合、第2停止状態の場合と同様に、機体コントローラ53は、キースイッチ61をON位置から一旦オフ位置に戻し(
図7に示すステップS170においてYESの場合)、その後にスタート位置に操作した場合(
図7に示すリターンからステップS10においてYESの場合)でも、エンジン41の始動制御を行うことができる(
図7に示すステップS30)。なお、キースイッチ61がオフ位置に操作されると、キー信号カットリレー63のスイッチ部63bが初期の閉状態に戻るので、機体コントローラ53及び電装品55が再び停止状態となる(
図7に示すステップS180)。
【0084】
このように、本実施の形態においては、エンジン41の動作中にシャットオフスイッチ67がロック位置にある状態が所定時間継続した場合、機体コントローラ53のアイドリングストップ機能によってエンジン41を停止させる。これにより、油圧ショベル1が待機状態のときに、二酸化炭素やNOxの排出の低減および燃料消費の低減が可能となる。
【0085】
また、本実施の形態においては、アイドリングストップ機能の実行の開始時及び実行中にシートベルト27が装着状態である場合には、
図8に示すように、エンジン41が停止状態かつ機体コントローラ53及び電装品55(ラジオやエアコン)が作動可能な状態の第1停止状態となる。シートベルト27の装着状態の継続による第1停止状態は、バッテリ52の過度な放電の前にエンジン41を再始動させるようなオペレータの短時間の待機状態を想定したものである。そこで、第1停止状態では、電装品55を作動可能な状態にすることで、オペレータによる電装品55の使用継続が可能となり、電装品55を使用するための操作が不要となる。また、第1停止状態では、再始動スイッチ68の操作によるエンジン41の再始動を可能とすることで、油圧ショベル1の作業を迅速に再開できるようになっている。なお、第1停止状態では、キースイッチ61のスタート位置への操作によるエンジン41の再始動も可能である。
【0086】
また、本実施の形態においては、第1停止状態においてシートベルト27が装着状態から解除状態に一度変更された場合には、エンジン41が停止状態かつ機体コントローラ53及び電装品55が停止状態の第2停止状態となる。また、アイドリングストップ機能の実行の開始時にシートベルト27が解除状態である場合でも、エンジン41が停止状態かつ機体コントローラ53及び電装品55が停止状態の第2停止状態となる。シートベルト27の解除状態への一度目の変更による第2停止状態は、オペレータが運転室22から離れるような長時間の待機状態を想定したものである。したがって、第2停止状態では、機体コントローラ53及び電装品55を停止状態にすることでバッテリ52の消費が極めて小さくなるので、バッテリ上がりの防止を図ることができる。
【0087】
また、本実施の形態においては、第2停止状態では、再始動スイッチ68の操作によるエンジン41の再始動を許容せず、キースイッチ61の操作に限ってエンジン41の再始動を可能としている。エンジン41の始動(再始動)では、機体操作が可能になるので、安全性を確保する必要がある。そのため、意図しないエンジン41の始動を防止することが求められる。再始動スイッチ68は、油圧ショベル1の乗降時に誤って触れやすい位置にある。しかし、再始動スイッチ68の操作によるエンジン41の再始動を許容しないことで、シートベルト27の装着を解除して油圧ショベル1を降りたオペレータが再び搭乗するときに、再始動スイッチ68の誤操作による意図しないエンジン41の再始動を防止することができる。この場合、通常のエンジン始動と同様な操作、つまり、キースイッチ61の操作によってエンジン41を再始動することで、エンジン41の始動時の安全性を確保している。
【0088】
また、本実施の形態においては、第2停止状態においてシートベルト27が解除状態から装着状態に再び変更された場合には、エンジン41が停止状態かつ機体コントローラ53及び電装品55が作動状態の第3停止状態となる。シートベルト27の再装着による第3停止状態は、オペレータが運転室22に戻ってきて作業を再開することを想定したものである。したがって、第3停止状態では、機体コントローラ53及び電装品55を動作状態にすることで、油圧ショベルの作業を迅速に再開できるようにしている。
【0089】
また、第3停止状態でも、第2停止状態の場合と同様に、再始動スイッチ68の操作によるエンジン41の再始動を許容せず、キースイッチ61の操作に限ってエンジン41の再始動を可能としている。第3停止状態は、シートベルト27の装着状態が一度解除されていることを前提としているので、油圧ショベル1に搭乗するオペレータが前回のオペレータとは異なる場合がある。この場合、オペレータはアイドリングストップの実行を認知していない可能性がある。このような場合であっても、再始動スイッチ68の誤操作による意図しないエンジンの始動を防止することができる。
【0090】
アイドリングストップの実行中の機体コントローラ53及び電装品55の状態の切換やアイドリングストップからの復帰(エンジン41の再始動)については、オペレータが作業する意思をもって運転室22内に搭乗しているか否かの判断に基づき決定されることが妥当である。シートベルト27は、作業時に装着することが常識となっているので、オペレータの作業の意思の有無を判断する基準として適している。また、シートベルト27は、通常、建設機械に搭載されており、新たに追加する必要がない。さらに、シートベルト27及びシートベルトスイッチ66は、機械的に動作するものであり、電力供給の必要なセンサ類と異なり、機体コントローラ53及び電装品が停止状態である第2停止状態でも動作可能である。したがって、シートベルト27は、作業の意思の有無を判断して制御状態を遷移させるトリガーとして有効である。そこで、本実施の形態では、上述したように、シートベルト27の装着状態または解除状態に応じて、機体コントローラ53及び電装品55の作動状態の変更やエンジン再始動の条件の変更がなされている。
【0091】
また、図示していないが、油圧ショベル1には、例えば一般的な建設機械などに設けられるバッテリ52の電圧レベルを検出するセンサやこれに基づいたバッテリ上がりの警告を行う警告装置(例えば警告表示を行うランプやディスプレイ)が搭載されていてもよい。また、機体コントローラ53は、例えば、第1停止状態や第2停止状態にある場合においても、所定のレベルまでバッテリの電圧レベルが低下した際には警告装置を動作させるように構成されていてもよい。これによって、あまり想定されないものの、例えば第1停止状態が長時間(例えば1日以上)続いた場合のバッテリ上がりを防止することができる。
【0092】
上述したように、本発明の一実施の形態に係る建設機械としての油圧ショベル1は、エンジン41と、エンジン41によって駆動されて発電するオルタネータ51と、オルタネータ51が発電した電力を蓄えるバッテリ52と、バッテリ52と電気的に接続された電装品55と、信号を出力しないオフ位置(第1位置)、電装品55の作動を指示するオン信号を出力可能なキーオン位置(第2位置)、エンジン41の始動を指示するスタート信号を出力可能なスタート位置(第3位置)を有するキースイッチ61(第1スイッチ)と、オペレータが着座する運転席26と、運転席26にオペレータを拘束可能な装着状態とオペレータの離席が可能な解除状態とに変更可能なシートベルト27と、オペレータにより操作される操作装置28と、エンジン41によって駆動されるフロント作業機4(作業機)と、フロント作業機4(作業機)及びエンジン41の動作を制御するとともに、エンジン41の駆動中に所定条件が成立したときにエンジン41を停止させるアイドリングストップ機能を有する機体コントローラ53(コントローラ)と備えている。さらに、油圧ショベル1は、アイドリングストップ機能により停止状態であるエンジン41の再始動を指示する再始動信号を機体コントローラ53(コントローラ)へ出力可能な再始動スイッチ68(第2スイッチ)を更に備える。アイドリングストップ機能によってエンジン41が停止された場合、当該エンジン41が停止されてからシートベルト27が継続して装着状態である場合には、エンジン41が停止状態かつ電装品55が作動可能な状態の第1停止状態となり、第1停止状態においてシートベルト27が解除状態へ変更された場合又はアイドリングストップ機能によってエンジン41が停止された状態においてシートベルト27が解除状態である場合には、エンジン41が停止状態かつ電装品55が停止状態の第2停止状態となる。機体コントローラ53(コントローラ)は、第1停止状態のときは、キースイッチ61(第1スイッチ)からのスタート信号又は再始動スイッチ68(第2スイッチ)からの再始動信号のいずれかの信号の入力によりエンジン41の再始動を実行し、第2停止状態のときは、キースイッチ61(第1スイッチ)からのスタート信号の入力のみによってエンジン41の再始動を実行するようにエンジン41を制御する。
【0093】
この構成よれば、アイドリングストップ機能によりエンジン41が停止されてからシートベルト27の装着状態が継続中の場合にはオペレータが短時間の待機中と想定されるので、電装品55を作動可能な状態にすることでオペレータによる電装品55の継続使用が可能となる。この場合、再始動スイッチ68(第2スイッチ)の操作によりエンジン再始動を可能とすることで、エンジン41の再始動が容易となる。一方、アイドリングストップ機能によりエンジン41が停止された状態においてシートベルト27が解除状態の場合にはオペレータが長期間離座する懸念があり、電装品55を停止状態にすることでバッテリ上がりを防止する。この場合、再始動スイッチ68(第2スイッチ)の操作によるエンジン再始動を許容しないことで、オペレータの再始動スイッチ68(第2スイッチ)の誤操作によるエンジン再始動を防止する。このように、アイドリングストップ時において、バッテリ上がりの防止を図りつつ電装品55を必要時に作動可能な状態とすると共に、エンジン再始動の容易性と安全性を両立することができる。
【0094】
また、本実施の形態に係る油圧ショベル1においては、第2停止状態においてシートベルト27が解除状態から装着状態へと変更された場合、エンジン41が停止状態かつ電装品55が作動状態の第3停止状態となる。機体コントローラ53(コントローラ)は、第3停止状態のときは、キースイッチ61(第1スイッチ)からのスタート信号の入力のみによってエンジン41の再始動を実行するようにエンジン41を制御する。
【0095】
この構成によれば、再始動スイッチ68(第2スイッチ)の操作によるエンジン再始動を許容しないことで、オペレータの再始動スイッチ68(第2スイッチ)の誤操作によるエンジン再始動を防止することができる。また、オペレータが油圧ショベル1から降りて交替したときに、新たな搭乗者のオペレータの意図しないエンジン41の再始動を防止することができる。
【0096】
また、本実施の形態に係る油圧ショベル1においては、機体コントローラ53(コントローラ)が、第2停止状態のときのエンジン41の再始動を、キースイッチ61(第1スイッチ)がオフ位置(第1位置)へ操作された後にスタート位置(第3位置)へ操作された場合に限って実行する。
【0097】
この構成によれば、オペレータのキースイッチ61(第1スイッチ)の誤操作によるエンジン41の再始動を防止することができる。
【0098】
また、本実施の形態に係る油圧ショベル1においては、再始動スイッチ68(第2スイッチ)が操作装置28の一部分に配設されている。この構成によれば、オペレータによる再始動スイッチ68(第2スイッチ)の操作が容易となる。
【0099】
また、本実施の形態に係る油圧ショベル1は、シートベルト27の装着状態及び解除状態に応じて開閉状態が切り換わるシートベルトスイッチ66(第3スイッチ)を備えており、キースイッチ61(第1スイッチ)から電装品55へのオン信号がシートベルトスイッチ66(第3スイッチ)の開閉状態の切換により遮断されるように構成されている。
【0100】
この構成によれば、シートベルト27の状態に連動して開閉するシートベルトスイッチ66(第3スイッチ)により電装品55を停止状態にするので、簡素な構成で電装品55の動作状態の切換が可能である。
【0101】
また、本実施の形態に係る油圧ショベル1は、機体コントローラ53(コントローラ)のアイドリングストップ機能の実行により出力される制御信号が入力されるコイル部64a(第1コイル部)及びコイル部64a(第1コイル部)への制御信号の入力により閉状態に切り換わるスイッチ部64b(第1スイッチ部)を有するアイドルストップリレー64(第1リレー)と、アイドルストップリレー64(第1リレー)のスイッチ部64b(第1スイッチ部)にシートベルトスイッチ66(第3スイッチ)を介して電気的に接続されたコイル部63a(第2コイル部)及びキースイッチ61(第1スイッチ)と電装品55とを繋ぐ回路上に設けられコイル部63a(第2コイル部)への制御信号の入力により開状態に切り換わるスイッチ部63b(第2スイッチ部)を有するキー信号カットリレー63(第2リレー)とを備えている。シートベルトスイッチ66(第3スイッチ)は、シートベルト27が解除状態のときに閉状態となるように構成されている。
【0102】
この構成によれば、アイドリングストップ機能の実行中にシートベルト27が解除状態になると、シートベルトスイッチ66が閉状態になることで、キー信号カットリレー63(第2リレー)のコイル部63a(第2コイル部)とアイドルストップリレー64(第1リレー)の閉状態のスイッチ部64b(第1スイッチ部)が電気的に接続された状態になるので、キー信号カットリレー63(第2リレー)のコイル部63a(第2コイル部)に制御信号が入力され、キー信号カットリレー63(第2リレー)のスイッチ部63b(第2スイッチ部)が開状態となる。これにより、キースイッチ61(第1スイッチ)から電装品55へのオン信号が遮断されるので、電装品55を停止させることができる。このように、シートベルト27の状態に応じて開閉状態が切り換わるシートベルトスイッチ66が回路を接続または遮断することで電装品55の動作状態を切り換えることができる。
【0103】
なお、上述した実施の形態においては、本発明を油圧ショベルに適用した例を示した。しかし、本発明は、アイドリングストップ機能を搭載したクレーンやホイールローダ等の各種の建設機械に広く適用することができる。
【0104】
なお、本発明は本実施の形態に限られるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記した実施形態は本発明をわかり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。ある実施形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
【0105】
例えば、上述した一実施の形態においては、機体コントローラ53によるアイドリングストップ機能の実行の条件として、シャットオフスイッチ67のロック位置が所定時間継続した場合を例に示した。しかし、アイドリングストップ機能の実行条件は、油圧ショベル1の下部走行体2や上部旋回体3、フロント作業機4に対する操作が一定時間行われない(油圧ショベル1の待機状態)と想定される条件であれば、任意である。例えば、操作装置28の操作レバー28aが操作されずに中立位置に一定時間継続して位置している場合にアイドリングストップ機能を実行するように機体コントローラ53を構成することも可能である。
【0106】
また、上述した一実施の形態においては、操作装置28をパイロット操作式で構成した例を示した。この場合、操作装置の操作(操作量や操作方向)を操作装置28が生成するパイロット圧によって検出することで、操作装置の操作の有無を検出可能である。なお、操作装置を電気式で構成することも可能である。この場合、操作装置の操作(操作量や操作方向)を操作装置から出力される電気信号を検出することで、操作装置の操作の有無を検出可能である。
【0107】
また、上述した実施の形態においては、アイドリングストップ中の電装品55の動作状態がキースイッチ61、アイドルストップリレー64やキー信号カットリレー63によって切り替わる場合について説明した。しかし、電装品55の動作は、機体コントローラ53(コントローラ)によって制御されるように構成されていてもよい。この場合、例えば、機体コントローラ53は、シートベルトスイッチ66によってシートベルト27の装着状態に関する情報を取得した上で、アイドルストップリレー64及びキー信号カットリレー63の制御を行うように構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0108】
1…油圧ショベル(建設機械)、 4…フロント作業機(作業機)、 26…運転席、 27…シートベルト、 28…操作装置、 41…エンジン、 51…オルタネータ、 52…バッテリ、 53…機体コントローラ(コントローラ)、 55…電装品、 61…キースイッチ(第1スイッチ)、 63…キー信号カットリレー(第2リレー)、 63a…コイル部(第2コイル部)、 63b…スイッチ部(第2スイッチ部)、 64…アイドルストップリレー(第1リレー)、 64a…コイル部(第1コイル部)、 64b…スイッチ部(第1スイッチ部)、 66…シートベルトスイッチ(第3スイッチ)、 68…再始動スイッチ(第2スイッチ)