IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 横河電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-濃縮装置及び濃縮方法 図1
  • 特開-濃縮装置及び濃縮方法 図2
  • 特開-濃縮装置及び濃縮方法 図3
  • 特開-濃縮装置及び濃縮方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151221
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】濃縮装置及び濃縮方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 61/14 20060101AFI20220929BHJP
   B01D 61/58 20060101ALI20220929BHJP
   B01D 29/01 20060101ALI20220929BHJP
   C12N 7/02 20060101ALN20220929BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALN20220929BHJP
【FI】
B01D61/14 500
B01D61/58
B01D29/04 510D
B01D29/04 510F
B01D29/04 510B
B01D29/04 530A
C12N7/02
C12Q1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021054189
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100188307
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】井上 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】田口 朋之
(72)【発明者】
【氏名】片山 浩之
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
4D006
4D116
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ10
4B063QQ15
4B063QQ16
4B063QQ18
4B063QS10
4B063QS12
4B063QS39
4B065AA95X
4B065BD14
4B065CA46
4D006GA07
4D006KA01
4D006KA16
4D006KA33
4D006KA52
4D006KA55
4D006KA57
4D006KA72
4D006KB12
4D006KB14
4D006KD09
4D006KD11
4D006KD17
4D006MA03
4D006MA11
4D006MA22
4D006MC11
4D006MC18
4D006MC54
4D006PA02
4D006PB02
4D006PB03
4D006PB04
4D006PB05
4D006PB06
4D006PB07
4D006PB08
4D006PB24
4D116AA27
4D116BB01
4D116BC06
4D116DD03
4D116EE12
4D116FF15B
4D116GG12
4D116GG13
4D116HH30B
4D116KK04
4D116KK06
4D116QA04B
4D116QA04E
4D116QA05B
4D116QA05E
4D116QA21A
4D116QA21B
4D116QA21D
4D116QA21E
4D116QC20A
4D116RR01
4D116RR03
4D116RR19
4D116VV07
4D116VV08
4D116VV09
4D116VV10
(57)【要約】
【課題】陰電荷膜法において、夾雑物を除去しつつ微生物の回収効率を維持しやすい、濃縮装置及び濃縮方法を提供する。
【解決手段】濃縮装置100は、第1の孔径の孔を有し、負電荷に帯電した陰電荷膜102と、陰電荷膜102の上流側に配置され、試料水を供給する試料水供給部106と、試料水供給部106から陰電荷膜102の間の流路上に配置され、第2の孔径の孔を有する予備膜103と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の孔径の孔を有し、負電荷に帯電した陰電荷膜と、
前記陰電荷膜の上流側に配置され、試料水を供給する試料水供給部と、
前記試料水供給部から前記陰電荷膜の間の流路上に配置され、第2の孔径の孔を有する予備膜と、
を備える、濃縮装置。
【請求項2】
前記第2の孔径は、微生物が通過可能な孔径である、請求項1に記載の濃縮装置。
【請求項3】
前記試料水に対して混合する混合溶液を貯留する混合溶液貯留タンクと、
前記陰電荷膜の上流側かつ前記予備膜の下流側において前記流路に合流し、前記混合溶液貯留タンクから前記混合溶液を供給するための、混合溶液供給配管と、
をさらに備える、請求項1又は2に記載の濃縮装置。
【請求項4】
酸性溶液を貯留する酸性溶液貯留タンクと、
前記流路と前記混合溶液供給配管との合流点の下流側かつ前記陰電荷膜の上流側において前記流路に合流し、前記酸性溶液貯留タンクから前記酸性溶液を供給するための、酸性溶液供給配管と、
アルカリ性溶液を貯留するアルカリ性溶液貯留タンクと、
前記流路と前記混合溶液供給配管との合流点の下流側かつ前記陰電荷膜の上流側において前記流路に合流し、前記アルカリ性溶液貯留タンクから前記アルカリ性溶液を供給するための、アルカリ性溶液供給配管と、
をさらに備える、請求項3に記載の濃縮装置。
【請求項5】
前記第2の孔径は、前記第1の孔径よりも小さい、請求項1から3のいずれか一項に記載の濃縮装置。
【請求項6】
前記予備膜のろ過抵抗が所定の閾値以上となった場合、前記ろ過抵抗が所定の閾値以上となったことを報知する報知部、をさらに備える、請求項1から5のいずれか一項に記載の濃縮装置。
【請求項7】
第1の孔径の孔を有し、負電荷に帯電した陰電荷膜と、
前記陰電荷膜の上流側に配置され、試料水を供給する試料水供給部と、
前記試料水供給部から前記陰電荷膜の間の流路上に配置され、第2の孔径の孔を有する予備膜と、
前記試料水に対して混合する混合溶液を貯留する混合溶液貯留タンクと、
前記陰電荷膜の上流側かつ前記予備膜の下流側において前記流路に合流し、前記混合溶液貯留タンクから前記混合溶液を供給するための、混合溶液供給配管と、
酸性溶液を貯留する酸性溶液貯留タンクと、
前記流路と前記混合溶液供給配管との合流点の下流側かつ前記陰電荷膜の上流側において前記流路に合流し、前記酸性溶液貯留タンクから前記酸性溶液を供給するための、酸性溶液供給配管と、
アルカリ性溶液を貯留するアルカリ性溶液貯留タンクと、
前記流路と前記混合溶液供給配管との合流点の下流側かつ前記陰電荷膜の上流側において前記流路に合流し、前記アルカリ性溶液貯留タンクから前記アルカリ性溶液を供給するための、アルカリ性溶液供給配管と、
を備える濃縮装置が実行する濃縮方法であって、
前記試料水供給部から前記試料水を前記陰電荷膜に供給するとともに、前記混合溶液貯留タンクから前記混合溶液を供給することによって、前記試料水に前記混合溶液を混合させる第1ステップと、
前記酸性溶液貯留タンクから前記酸性溶液を前記陰電荷膜に供給する第2ステップと、
前記アルカリ性溶液貯留タンクから前記アルカリ性溶液を前記陰電荷膜に供給する第3ステップと、
を含む濃縮方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、濃縮装置及び濃縮方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水中のウイルスを検出する際の処理方法として、陰電荷膜法が知られている。例えば、特許文献1には、河川水、湖沼水、海水、雨水等の環境水、井戸水、水道水、ボトルドウォーター等の飲料水、下水、排水、プール水、農業用水、工業用水、冷媒水等の産業用水などのサンプル液から精製ウイルス液を調製し、調製された精製ウイルス液を陰電荷膜法などで濃縮し、核酸を抽出して、ウイルスを検出する方法が記載されている。
【0003】
また、従来、ろ過対象の試料水に夾雑物が含まれる場合、目的とするろ過を行うためのフィルタよりも上流側に、当該フィルタよりも孔径が大きいプレフィルタを配置することによってプレろ過を行い、当該ろ過膜における目詰まりを防止する方法が知られている。例えば、特許文献2には、孔径の大きいプレフィルタを用いて夾雑物を予め除去した後、下流側のフィルタでろ過を行うことにより、下流側のフィルタにおける目詰まりを防止する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-195756号公報
【特許文献2】特開2013-039047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、陰電荷膜法においてプレろ過を行う場合、陰電荷膜法によるウイルスの回収効率が低減する可能性がある。例えば、陰電荷膜よりも上流側に配置されたプレフィルタにおいて、回収対象のウイルスが捕捉されることによって陰電荷膜で捕捉されるウイルスが減少し、結果としてウイルスの回収効率が低減する可能性がある。
【0006】
本開示は、陰電荷膜法において、夾雑物を除去しつつ微生物の回収効率を維持しやすい、濃縮装置及び濃縮方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
幾つかの実施形態に係る濃縮装置は、第1の孔径の孔を有し、負電荷に帯電した陰電荷膜と、前記陰電荷膜の上流側に配置され、試料水を供給する試料水供給部と、前記試料水供給部から前記陰電荷膜の間の流路上に配置され、第2の孔径の孔を有する予備膜と、を備える。このような濃縮装置において、予備膜は、試料水に含まれる夾雑物を除去するプレろ過フィルタとして機能する。そのため、濃縮装置によれば、予備膜でのプレろ過により夾雑物を除去しつつ、陰電荷膜での微生物の回収効率を維持することができる。
【0008】
一実施形態において、前記第2の孔径は、微生物が通過可能な孔径である。これにより、予備膜において微生物が捕捉されず、陰電荷膜での微生物の回収効率を維持することができる。
【0009】
一実施形態において、濃縮装置は、前記試料水に対して混合する混合溶液を貯留する混合溶液貯留タンクと、前記陰電荷膜の上流側かつ前記予備膜の下流側において前記流路に合流し、前記混合溶液貯留タンクから前記混合溶液を供給するための、混合溶液供給配管と、をさらに備える。これにより、微生物が混合溶液に含まれるイオンに吸着されることによって、正電荷を帯びた複合体となり、それによって予備膜の持ちうる陰電荷によって捕捉されるということが発生しないため、濃縮装置による微生物の回収効率の低下を防ぐことができる。
【0010】
一実施形態において、濃縮装置は、酸性溶液を貯留する酸性溶液貯留タンクと、前記流路と前記混合溶液供給配管との合流点の下流側かつ前記陰電荷膜の上流側において前記流路に合流し、前記酸性溶液貯留タンクから前記酸性溶液を供給するための、酸性溶液供給配管と、アルカリ性溶液を貯留するアルカリ性溶液貯留タンクと、前記流路と前記混合溶液供給配管との合流点の下流側かつ前記陰電荷膜の上流側において前記流路に合流し、前記アルカリ性溶液貯留タンクから前記アルカリ性溶液を供給するための、アルカリ性溶液供給配管と、をさらに備える。これにより、濃縮装置は、酸洗浄及びアルカリ誘出の処理を行って、微生物の濃縮液を回収できる。
【0011】
一実施形態において、前記第2の孔径は、前記第1の孔径よりも小さい。これにより、予備膜において、より小さな夾雑物を除去することができるため、陰電荷膜の目詰まりをさらに抑制できる。
【0012】
一実施形態において、濃縮装置は、前記予備膜のろ過抵抗が所定の閾値以上となった場合、前記ろ過抵抗が所定の閾値以上となったことを報知する報知部、をさらに備える。これにより、予備膜における目詰まりを防止し、濃縮装置における処理性能の低下などのトラブルを防ぐことができる。
【0013】
幾つかの実施形態に係る濃縮方法は、第1の孔径の孔を有し、負電荷に帯電した陰電荷膜と、前記陰電荷膜の上流側に配置され、試料水を供給する試料水供給部と、前記試料水供給部から前記陰電荷膜の間の流路上に配置され、第2の孔径の孔を有する予備膜と、前記試料水に対して混合する混合溶液を貯留する混合溶液貯留タンクと、前記陰電荷膜の上流側かつ前記予備膜の下流側において前記流路に合流し、前記混合溶液貯留タンクから前記混合溶液を供給するための、混合溶液供給配管と、酸性溶液を貯留する酸性溶液貯留タンクと、前記流路と前記混合溶液供給配管との合流点の下流側かつ前記陰電荷膜の上流側において前記流路に合流し、前記酸性溶液貯留タンクから前記酸性溶液を供給するための、酸性溶液供給配管と、アルカリ性溶液を貯留するアルカリ性溶液貯留タンクと、前記流路と前記混合溶液供給配管との合流点の下流側かつ前記陰電荷膜の上流側において前記流路に合流し、前記アルカリ性溶液貯留タンクから前記アルカリ性溶液を供給するための、アルカリ性溶液供給配管と、を備える濃縮装置が実行する濃縮方法であって、前記試料水供給部から前記試料水を前記陰電荷膜に供給するとともに、前記混合溶液貯留タンクから前記混合溶液を供給することによって、前記試料水に前記混合溶液を混合させる第1ステップと、前記酸性溶液貯留タンクから前記酸性溶液を前記陰電荷膜に供給する第2ステップと、前記アルカリ性溶液貯留タンクから前記アルカリ性溶液を前記陰電荷膜に供給する第3ステップと、を含む。このような濃縮方法において、予備膜は、試料水に含まれる夾雑物を除去するプレろ過フィルタとして機能する。そのため、このような濃縮方法によれば、予備膜でのプレろ過により夾雑物を除去しつつ、陰電荷膜での微生物の回収効率を維持することができる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、陰電荷膜法において、夾雑物を除去しつつ微生物の回収効率を維持しやすい、濃縮装置及び濃縮方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本開示の一実施形態に係る濃縮装置の概略構成図である。
図2図1の濃縮装置により実行される陰電荷膜法の処理の第1ステップを説明するための概略図である。
図3図2の濃縮装置により実行される陰電荷膜法の処理の第2ステップを説明するための概略図である。
図4図1の濃縮装置により実行される陰電荷膜法の処理の第3ステップを説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0017】
例えば、目的とするろ過を行うためのフィルタよりも上流側に、当該フィルタよりも孔径が大きいプレフィルタを配置することによってプレろ過を行う場合がある。この場合、例えば、複数のフィルタカートリッジを用いたり、膜フィルタを重ねたり、プレろ過層を重ねたりすることによって、複数のフィルタが流路上に配置される。
【0018】
例えば、特許文献2に記載された発明では、ろ過器の上流側にプレろ過器が設けられている。プレろ過器が備えるフィルタは、ろ過器が備えるフィルタより孔の粗いプレフィルタで植物片を捕捉・除去可能に構成されている。これにより、特許文献2に記載された発明では、ろ過器のフィルタの目詰まり頻度を低減するとともに、システム全体としての経済性を向上させることが期されている。
【0019】
しかしながら、陰電荷膜法においてプレろ過を行う場合、陰電荷膜法によるウイルスの回収効率が低減する可能性がある。陰電荷膜法は、試料水からウイルスを濃縮することによってウイルス濃度を増加させた濃縮液を回収することを目的として行われる工程である。細菌やウイルスなどを含む微生物は、中性からアルカリ性の水域では、負電荷に帯電するという性質を有する。陰電荷膜法による処理を実行する試料水は、中性からアルカリ性であるため、これらの微生物は、試料水中で負電荷に帯電している。陰電荷膜法では、微生物のこのような性質を利用して、濃縮液を回収している。
【0020】
特許文献1に記載された例では、粒子(A)は表面電荷として正電荷を帯びている。そのため、表面電荷として負電荷を帯びる、ウイルス、フミン酸、及び粒子(B)は、粒子(A)に吸着される。このとき、ウイルスは、表面電荷として正電荷を帯びうるため、フミン酸及び粒子(B)と比較して、相対的に吸着されにくい。その結果、ウイルスは粒子(A)に吸着されず、フミン酸及び粒子(B)が粒子(A)に吸着される。そして、粒子(A)は、フミン酸又は粒子(B)を吸着した状態、すなわち粒径が大きくなった状態で、サンプル液から分離される。これによって、粒子(A)に吸着されたフミン酸及び粒子(B)も、粒子(A)と一緒にサンプル液から分離される。このようにして、フミン酸が除去された精製ウイルス液を得ることができる。
【0021】
また、陰電荷膜法では、微生物が試料水中で負電荷に帯電するという性質を利用して、微生物の濃縮液を精製している。そのため、陰電荷膜法においてプレろ過を行う場合、プレろ過を行うプレフィルタが電荷を有していると、微生物がプレフィルタによって捕捉されることにより、下流側の陰電荷膜まで流れず、その結果、陰電荷膜において、試料水中の微生物を十分に捕捉できなくなる。すなわち、陰電荷膜法による微生物の回収効率が低下するおそれがある。
【0022】
そのため、陰電荷膜法でプレろ過を行う場合には、プレフィルタが、試料水中の微生物を捕捉しにくいものを使用することが求められる。例えば、プレろ過に用いられるプレフィルタには、ガラスフィルタが用いられることがある。ガラスフィルタは、劣化が少なく、ろ過層の厚みを確保でき、また、効率よくプレろ過を行うことができる、等の利点があるためである。しかし、ガラスフィルタは陰電荷に帯電している。また、プレフィルタとしてナイロンメッシュが用いられることがあるが、ナイロンメッシュは正電荷に帯電しうる。そのため、ガラスフィルタやナイロンメッシュは、帯電した微生物を捕捉する可能性があり、陰電荷膜法におけるプレフィルタとしては適さない。
【0023】
また、陰電荷膜法による微生物の濃縮過程では、pHが異なる溶液が手順に従って陰電荷膜に供給されることにより、粒子の脱着が制御される。そのため、陰電荷膜に対して孔径の異なるフィルタをプレフィルタとして層状に重ねた場合には、重ねられたプレフィルタに捕捉された粒子が、陰電荷膜に供給された溶液によって誘出される可能性があり、これによって目的としない不必要な粒子が誘出される可能性がある。
【0024】
このように、陰電荷膜法においても、試料水に夾雑物が含まれる場合には、プレろ過を行うことが望ましいが、プレフィルタとして帯電したフィルタをプレフィルタとして用いることは適切ではない。また、陰電荷膜法では、陰電荷膜に適宜の溶液を供給することによって、粒子の着脱を制御する必要があるから、陰電荷膜法による処理を行う濃縮装置の自動化を行うことは困難である。
【0025】
以下、上述した問題を解決可能な、濃縮装置及び濃縮方法について説明する。
【0026】
図1は、本開示の一実施形態に係る濃縮装置100の概略構成図である。図1に示すように、本実施形態に係る濃縮装置100は、制御部101と、陰電荷膜102と、予備膜103と、吸引ビン104と、混合溶液貯留タンク105と、試料水供給部106と、酸性溶液貯留タンク107と、アルカリ性溶液貯留タンク108と、報知部150と、を備える。図1において、各構成要素を結合する実線は、流体を流す配管を示す。また、図1において、各構成要素を結合する破線は、制御部101との間で送受信される信号の送信経路を示す。
【0027】
制御部101は、濃縮装置100が備える各構成要素をはじめとして、濃縮装置100の全体を制御及び管理するプロセッサである。制御部101は、後述する、第1ポンプ111と、第2ポンプ112と、第3ポンプ113と、第4ポンプ114と、に対し、制御信号を送信することにより、これらの構成要素の制御を行う。また、制御部101は、後述する、第1流量計121及び第2流量計122から、測定された流量に関する情報を取得する。制御部101により実行される処理は、マイクロコンピュータ、Raspberry Pi又はArduino等により設計されてよいが、これらに限られるものではない。制御部101は、制御手順を規定したプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサで構成される。プロセッサにより実行されるプログラムは、例えば濃縮装置100の内部又は外部の記憶媒体等に格納される。
【0028】
陰電荷膜102は、負電荷に帯電した膜である。陰電荷膜102として、例えばMillipore社製の混合セルロース膜(以下、単に「HA膜」とも言う)を用いることができる。陰電荷膜102には、水分子などの流体を構成する分子を透過可能な孔が設けられている。陰電荷膜102の孔の孔径(第1の孔径)は、陰電荷膜102で捕捉するウイルス等に応じて、適宜定められてよい。第1の孔径は、例えば0.1-30μmの範囲で、適宜定められる。なお、陰電荷膜102は、ウイルス等の表面電荷に応じて当該ウイルス等を捕捉可能な材質で構成されていてもよい。
【0029】
陰電荷膜102の上流側には、流体を供給するための上流側配管131が設けられている。上流側配管131には、試料水供給配管132が接続されている。
【0030】
陰電荷膜102の上流側には、試料水供給部106が配置されている。試料水供給部106は、水処理プラントから採水された試料水を供給する。試料水供給部106は、水処理プラントからホース又はチューブなどで採水された試料水を供給する機構として構成されていてもよく、水処理プラントで採水された試料水を貯水するタンクとして構成されていてもよい。試料水供給部106には、試料水供給配管132が連結され、流路を構成する試料水供給配管132及び上流側配管131を介して、試料水が陰電荷膜102に供給される。
【0031】
試料水供給部106から陰電荷膜102の間の流路上には、予備膜103が配置されている。本実施形態では、具体的には、予備膜103は、試料水供給配管132に配置されている
【0032】
予備膜103は、濃縮装置100において、プレろ過を行うためのプレフィルタとして機能する。具体的には、予備膜103は、微生物が通過可能な孔径(第2の孔径)の孔を有する。例えば、予備膜103は、0.1-30μmの範囲で適宜定められた孔径の孔を有する。一実施形態において、予備膜103は、帯電していない膜であってよい。これにより、予備膜103は、第2の孔径より大きい夾雑物を捕捉しつつ、微生物を含む試料水を下流側に透過させることができる。特に、一実施形態において、予備膜103は、帯電していない場合、帯電している微生物を吸着しない。そのため、帯電していない予備膜103は、帯電している微生物を捕捉することなく下流側に流すことができる。また、一実施形態において、予備膜103として、陰電荷膜を用いることができる。予備膜103として陰電荷膜を用いた場合、淡水等、陽イオンを含まない試料水をろ過する際に、ウイルス等の微生物は陽イオンとの複合体を形成しないため、予備膜103に捕捉されることなく、下流へ通過する。
【0033】
予備膜103の膜素材として、例えば、非帯電不織布、酢酸セルロース又は低帯電ナイロンを用いることができる。ただし、予備膜103の膜素材は、ここに示したものに限られず、帯電している微生物を吸着しない他の素材とすることも可能である。
【0034】
試料水供給配管132において、予備膜103の上流側に、第1ポンプ111が配置されている。第1ポンプ111は、制御部101による制御により、試料水供給部106から供給される試料水を、予備膜103に送液する。
【0035】
混合溶液貯留タンク105には、試料水供給部106から供給される試料水に対して混合される溶液(以下、単に「混合溶液」とも言う)が貯留されている。混合溶液は、例えば塩化マグネシウム溶液であってよいが、これに限られるものではない。所定の溶液には、試料水の性質に応じて適宜の溶液が用いられてよい。本実施形態では、混合溶液は、塩化マグネシウム溶液であるとして、以下説明する。
【0036】
混合溶液貯留タンク105には、塩化マグネシウム溶液を供給する混合溶液供給配管133が連結されている。混合溶液供給配管133は、陰電荷膜102の上流側かつ予備膜103の下流側において流路(本実施形態における試料水供給配管132)に合流する。これにより、混合溶液貯留タンク105から混合溶液供給配管133を介して、試料水供給配管132に、塩化マグネシウム溶液が供給される。従って、本実施形態において、混合溶液である塩化マグネシウム溶液は、予備膜103によりプレろ過がされた試料水に対して、添加される。仮に、予備膜103の上流側で混合溶液が添加された場合、試料水中に含まれる、負電荷に帯電した微生物と、混合溶液に含まれるマグネシウムイオンとが吸着することにより、吸着後の複合体が正に帯電する。その結果、吸着後の複合体が予備膜103において予備膜の持ちうる電荷によって捕捉される可能性がある。これにより、陰電荷膜102に供給される試料水に含まれる微生物が減少する可能性がある。しかしながら、本実施形態のように、プレろ過を行った試料水に対して混合溶液を加えることにより、上述のように、マグネシウムイオンに吸着されることによって正に帯電した微粒子が予備膜103において捕捉されることがないため、濃縮装置100による微生物の回収効率の低下を防ぐことができる。
【0037】
試料水供給配管132において、混合溶液貯留タンク105との合流点Pよりも上流側かつ予備膜103よりも下流側に、第2ポンプ112及び第1流量計121が配置されている。第2ポンプ112は、制御部101による制御により、予備膜103でプレろ過された試料水を、下流側に送液するポンプである。第1流量計121は、第2ポンプ112により下流側に送液される試料水の流量を測定する。第1流量計121は、測定した流量に関する情報を制御部101に送信する。制御部101は、取得した流量に関する情報に基づいて第2ポンプ112による送液を制御する。
【0038】
混合溶液供給配管133には、第4ポンプ114及び第2流量計122が配置されている。第4ポンプ114は、制御部101による制御により、混合溶液を下流側に送液するポンプである。第4ポンプ114は、例えば、軟質チューブをローラーでしごいて送液するペリスタポンプ(登録商標)であってよい。第2流量計122は、第4ポンプ114により下流側に送液される混合溶液の流量を測定する。第2流量計122は、測定した流量に関する情報を制御部101に送信する。制御部101は、取得した流量に関する情報に基づいて第4ポンプ114による送液を制御する。
【0039】
このように、制御部101は、第1流量計121及び第2流量計122から取得した流量に関する情報に基づいて、それぞれ第2ポンプ112及び第4ポンプ114による送液を制御する。これにより、制御部101は、試料水に対する混合溶液の混合割合を調整することができる。混合溶液が混合された試料水は、上流側配管131を介して陰電荷膜102に供給される。
【0040】
酸性溶液貯留タンク107は、酸性の水溶液(酸性溶液)を貯留するタンクである。本明細書では、酸性の水溶液は、一例として硫酸溶液であるとして説明するが、これに限られない。酸性溶液貯留タンク107には、酸性溶液貯留タンク107から酸性溶液を供給する酸性溶液供給配管134が連結されている。酸性溶液供給配管134は、合流点Pの下流側かつ陰電荷膜102の上流側において、流路(本実施形態における上流側配管131)に合流する。
【0041】
アルカリ性溶液貯留タンク108は、アルカリ性の水溶液(アルカリ性溶液)を貯留するタンクである。本明細書では、アルカリ性の水溶液は、一例として水酸化ナトリウム水溶液であるとして説明するが、これに限られない。アルカリ性溶液貯留タンク108には、アルカリ性溶液貯留タンク108からアルカリ性溶液を供給するアルカリ性溶液供給配管135が連結されている。アルカリ性溶液供給配管135は、合流点Pの下流側かつ陰電荷膜102の上流側において、流路(本実施形態における上流側配管131)に合流する。
【0042】
陰電荷膜102の下流側には、陰電荷膜102を通った流体を排出するための下流側配管141が設けられている。下流側配管141には、2本の異なる配管142及び143が分岐して連結されている。
【0043】
下流側第1配管142には、第3ポンプ113が配置されている。下流側第1配管142は、排出口110から流体を排出する。第3ポンプ113は、制御部101による制御により、陰電荷膜102から、下流側第1配管142側に流体を引き込む、吸引ポンプである。第3ポンプ113は、例えば減圧状態を作り出すことによって流体を引き込むアスピレータにより構成されていてよい。
【0044】
下流側第2配管143には、下流側に吸引ビン104が配置されている。吸引ビン104は、減圧状態を作り出すことにより、陰電荷膜102に供給された流体を引き込んで、内部に設けられた濃縮液回収容器104aに、流体を回収する。
【0045】
報知部150は、情報を報知する。報知部150は、音、振動又は画像等により情報を報知可能であってよい。報知部150は、例えばスピーカを含んで構成され、音により情報を報知してよい。報知部150は、例えば振動子を含んで構成され、振動により情報を報知してもよい。報知部150は、ディスプレイを含んで構成されていてもよい。この場合、ディスプレイが報知部150として機能し、画像を表示することにより情報を報知してもよい。なお、報知部150は、必ずしも濃縮装置100に備えられなくてもよい。例えば、濃縮装置100は、外部の電子機器と情報通信可能に接続されており、濃縮装置100から当該外部の電子機器に情報を送信し、当該外部の電子機器が備える報知部から情報が報知されてもよい。
【0046】
本実施形態において、報知部150は、制御部101の制御により、予備膜103のろ過抵抗が所定の閾値以上となった場合、ろ過抵抗が所定の閾値以上となったことを報知する。具体的には、制御部101は、予備膜103のろ過抵抗が所定の閾値以上となったか否かを判定する。例えば、濃縮装置100は、試料水供給配管132において、予備膜103の上流側と下流側に、圧力指示計を備える。制御部101は、圧力指示計が示す値に基づいて、予備膜103の膜間差圧を検知することにより、予備膜103のろ過抵抗を算出する。制御部101は、算出したろ過抵抗が所定の閾値以上であると判定した場合に、報知部150からその旨を報知する。所定の閾値は、例えば、予備膜103に目詰まりが生じ始めていることを検出可能な適宜の値として定められてよい。制御部101が、ろ過抵抗が所定の閾値以上であると判定した場合、予備膜103における夾雑物の捕捉が進行し、一定以上の速度でろ過ができなくなっている可能性がある。そのため、報知部150からの報知を確認した濃縮装置100の管理者等は、予備膜103の点検や清掃などを行ったり、予備膜103を交換したりすることで、予備膜103におけるろ過性能を維持することができる。このように、報知部150により、濃縮装置100における処理性能の低下などのトラブルを防ぐことができる。
【0047】
なお、制御部101は、算出したろ過抵抗が所定の閾値以上であると判定した場合に、インターロックなどにより濃縮装置100の稼働を停止させてもよい。
【0048】
次に、図1に示した濃縮装置100による陰電荷膜法の処理手順について、図2から図4を参照して説明する。図2から図4は、濃縮装置100により実行される陰電荷膜法の処理の各ステップを説明するための概略図である。図2から図4における太実線は流体の流れを表し、太破線は信号の流れを表す。濃縮装置100では、第1ステップから第3ステップで陰電荷膜法によるウイルス粒子の濃縮液の回収を行う。
【0049】
図2は、図1の濃縮装置100により実行される陰電荷膜法の処理の第1ステップを説明するための概略図である。第1ステップは、試料水のろ過を行うステップである。
【0050】
第1ステップでは、制御部101により、第1ポンプ111、第2ポンプ112、第3ポンプ113及び第4ポンプ114が駆動される。特に、制御部101は、第1流量計121及び第2流量計122から取得した流量に関する情報に基づいて、それぞれ第2ポンプ112及び第4ポンプ114による送液を制御する。
【0051】
第1ステップでは、図2に太実線で示されるように、試料水供給部106から試料水が供給される。試料水供給部106から供給された試料水は、予備膜103でプレろ過される。これにより、図2に模式的に示すように、試料水に含まれる夾雑物が、予備膜103によって捕捉される。
【0052】
プレろ過がされた試料水は、さらに下流側に供給される。試料水の流量は、第2ポンプ112の送液制御により制御される。また、制御部101が、第1流量計121及び第2流量計122から取得した流量に関する情報に基づいて、それぞれ第2ポンプ112及び第4ポンプ114による送液を制御することにより、試料水に対する混合溶液の混合割合を調整しながら、試料水に対して混合溶液が混合される。
【0053】
試料水に混合溶液が混合されると、試料水に含まれる、負電荷に帯電した微生物が、混合溶液に含まれる陽イオン(ここではマグネシウムイオン)に吸着される。微生物が、陽イオンに吸着された状態で、陰電荷膜102により捕捉される。
【0054】
試料水は、陰電荷膜102で微生物が捕捉された後、透過した流体が第3ポンプ113により下流側に引き込まれ、下流側配管141及び下流側第1配管142を介して、排出口110から排出される。
【0055】
図3は、図1の濃縮装置100により実行される陰電荷膜法の処理の第2ステップを説明するための概略図である。第2ステップは、陰電荷膜102の酸洗浄を行うステップである。
【0056】
第2ステップでは、制御部101により第3ポンプ113が駆動される。第2ステップでは、図3に太実線で示されるように、酸性溶液貯留タンク107から酸性溶液が供給される。酸性溶液は、酸性溶液貯留タンク107から酸性溶液供給配管134及び上流側配管131を介して陰電荷膜102に供給され、陰電荷膜102の酸洗浄が行われる。これにより、第1ステップで陰電荷膜102に捕捉された陽イオンが、陰電荷膜102から誘出する。誘出した陽イオンを含む酸性溶液は、第3ポンプ113により下流側に引き込まれ、下流側配管141及び下流側第1配管142を介して、排出口110から排出される。このようにして、陽イオンが陰電荷膜102から除去される。
【0057】
酸性溶液は、例えばpH3.0で、0.5mMの硫酸溶液であってよい。供給される硫酸溶液の量は、陰電荷膜102の膜面全体に硫酸溶液が均等に接触する程度の容量であることが好ましい。例えば、供給される硫酸溶液の量は、試料水の10分の1の容量又は10mL以上であってよい。
【0058】
濃縮装置100は、陰電荷膜102の下流側に弁を備え、硫酸溶液と膜との接触及び浸漬の時間又は状態を制御可能に構成されていてもよい。陰電荷膜102に硫酸溶液を均等に浸漬させるために、陰電荷膜102が平膜構造の場合は、膜面上に一律数ミリ程度の硫酸溶液が張られるように、硫酸溶液の送液を制御することが好ましい。陰電荷膜102がハウジング形状の場合は、陰電荷膜102の上流側に硫酸溶液が張られるように、硫酸溶液の送液を制御することが好ましい。陰電荷膜102は、数秒以上硫酸溶液に浸漬されることが好ましい。これにより、陰電荷膜102に残存する陽イオンの量を減らし、より適切な酸洗浄を行うことができる。
【0059】
図4は、図1の濃縮装置100により実行される陰電荷膜法の処理の第3ステップを説明するための概略図である。第3ステップは、アルカリ誘出により、ウイルスの濃縮液を回収するステップである。
【0060】
第3ステップでは、図4に太実線で示されるように、アルカリ性溶液貯留タンク108からアルカリ性溶液が供給される。アルカリ性溶液は、アルカリ性溶液貯留タンク108からアルカリ性溶液供給配管135及び上流側配管131を介して陰電荷膜102に供給され、アルカリ誘出が行われる。これにより、第1ステップで陰電荷膜102に捕捉された微生物が、陰電荷膜102から誘出する。
【0061】
そして、吸引ビン104が減圧状態を作り出すことにより、誘出した微生物を含むアルカリ性溶液が、吸引ビン104に引き込まれ、下流側配管141及び下流側第2配管143を介して濃縮液回収容器104aに流れ込む。このようにして、微生物の濃縮液が濃縮液回収容器104aに回収される。
【0062】
アルカリ性溶液は、例えばpH10.5-10.8で、1.0mMの水酸化ナトリウム水溶液を用いることができる。供給される水酸化ナトリウム水溶液は、例えば10ml以上であってよい。ただし、供給される水酸化ナトリウム水溶液は、少量であるほど、ウイルスの濃縮効果が高まるため、好ましい。
【0063】
濃縮装置100は、陰電荷膜102の下流側に弁を備え、水酸化ナトリウム水溶液と陰電荷膜102との接触及び浸漬の時間又は状態を制御可能に構成されていてもよい。陰電荷膜102に水酸化ナトリウム水溶液を均等に浸漬させるために、陰電荷膜102が平膜構造の場合は、膜面上に一律数ミリ程度の水酸化ナトリウム水溶液が張られるように、水酸化ナトリウム水溶液の送液を制御することが好ましい。陰電荷膜102がハウジング形状の場合は、陰電荷膜102の上流側に水酸化ナトリウム水溶液が張られるように、水酸化ナトリウム水溶液の送液を制御することが好ましい。陰電荷膜102は、数秒以上水酸化ナトリウム水溶液に浸漬されることが好ましい。これにより、より多くのウイルスを陰電荷膜102から誘出させ、ウイルスの濃縮液として回収することができる。
【0064】
このように、本実施形態に係る濃縮装置100は、負電荷に帯電した陰電荷膜102と、陰電荷膜102の上流側に配置された予備膜103と、を備える。予備膜103が、試料水に含まれる夾雑物を除去するプレろ過フィルタとして機能することにより、陰電荷膜102でのろ過の目詰まりを防ぐことができ、微生物の回収効率を維持し、濃縮方法の品質を向上することができる。
【0065】
上記実施形態に係る濃縮装置100では、目的とするろ過を行う陰電荷膜102の第1の孔径よりも、プレろ過フィルタとして機能する予備膜103の第2の孔径が小さく設定されていてもよい。これにより、プレろ過フィルタとして機能する予備膜103において、より小さな夾雑物を除去することができるため、陰電荷膜102の目詰まりをさらに抑制できるとともに、陰電荷膜102では電荷を利用した微生物の捕捉を行うことができる。
【0066】
上記実施形態において、予備膜103は、1回の濃縮処理を完了する毎に交換する、使い捨ての仕様としてもよい。この場合、予備膜103における処理能力の極端な低下等の問題は発生しにくくなるため、濃縮装置100は、報知部150を備えなくてもよい。
【0067】
上記実施形態において、予備膜103の直径が大きいほど、また、予備膜103のろ過面積が大きいほど、陰電荷膜102におけるろ過効率を高く維持することができる。
【0068】
上記実施形態に係る濃縮装置100の陰電荷膜102で捕捉対象となる微生物は、細菌やウイルスなどを含む。ウイルスは、任意の公知のウイルスであってよい。ウイルスは、例えば、2本鎖DNAウイルス、1本鎖DNAウイルス、2本鎖RNAウイルス、1本鎖RNAウイルス、1本鎖RNA逆転写ウイルス、又は2本鎖DNA逆転写ウイルスを含む。
【0069】
また、上記実施形態に係る濃縮装置100は、液中で帯電して浮遊する微粒子やコロイド分散系に対しても、同様に適用可能である。
【0070】
上述した濃縮装置100は、多様な分野及び用途に用いることができる。例えば、上述した濃縮装置100は、浄水場、下水処理場、水再生施設又は海水淡水化施設等の水処理インフラや、ビル浄化設備、病院又は学校などの施設ごとの水処理施設のような狭域における、水質管理や処理性能を把握するために用いることができる。また、上述した濃縮装置100は、例えば、河川、海洋、親水域、プール又は水浴場等の水域における環境の動態調査のために用いることができる。また、上述した濃縮装置100は、例えば、水域や環境インフラを網羅する都市の微生物感染リスクを把握するための、微粒子、コロイド分散系又は微生物等の水質検査に用いることができる。また、上述した濃縮装置100は、飲料用又は加工食品の製造に使用される液体の質的リスク、安全把握又は品質管理を目的として、リスクを定量化したり、安全と判定できる閾値との比較検証を行ったりするために用いることができる。また、上述した濃縮装置100は、工業用水、灌漑・農業用水などの水質検査に用いることができる。また、上述した濃縮装置100は、例えば、ミスト散布、加湿装置又は打ち水等の温湿度管理に用いられる液体の質的リスク、安全把握又は品質管理を行うために用いることができる。また、上述した濃縮装置100は、医薬品製造又は人工透析療法等の医療に関連する水の品質管理検査に用いることができる。
【0071】
本開示は、上述した実施形態で特定された構成に限定されず、特許請求の範囲に記載した開示の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。例えば、各構成部、各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再構成可能であり、複数の構成部またはステップなどを1つに組み合わせたり、あるいは分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0072】
100 濃縮装置
101 制御部
102 陰電荷膜
103 予備膜
104 吸引ビン
104a 濃縮液回収容器
105 混合溶液貯留タンク
106 試料水供給部
107 酸性溶液貯留タンク
108 アルカリ性溶液貯留タンク
110 排出口
111 第1ポンプ
112 第2ポンプ
113 第3ポンプ
114 第4ポンプ
121 第1流量計
122 第2流量計
131 上流側配管
132 試料水供給配管
133 混合溶液供給配管
134 酸性溶液供給配管
135 アルカリ性溶液供給配管
141 下流側配管
142 下流側第1配管
143 下流側第2配管
150 報知部
P 合流点

図1
図2
図3
図4