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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151230
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】表皮付部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 51/28 20060101AFI20220929BHJP
   B29C 51/10 20060101ALI20220929BHJP
   B29C 51/12 20060101ALI20220929BHJP
   B29C 51/16 20060101ALI20220929BHJP
   B29C 65/70 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
B29C51/28
B29C51/10
B29C51/12
B29C51/16
B29C65/70
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021054204
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼井 裕紀
(72)【発明者】
【氏名】菅井 隆章
(72)【発明者】
【氏名】河野 翔伍
【テーマコード(参考)】
4F208
4F211
【Fターム(参考)】
4F208AC03
4F208AD18
4F208MA03
4F208MB01
4F208MC10
4F208MK15
4F211AG03
4F211TA08
4F211TC03
4F211TD11
4F211TJ21
4F211TN87
4F211TQ01
(57)【要約】
【課題】コストを低減し得る表皮付部品の製造方法を提供すること。
【解決手段】
表皮付部品の製造方法に用いる区画部材を、基体の表面および側面に沿う箱型形状を有する立体部と、立体部の周縁部に連続した折り返し形状をなす余長部と、を有する形状にし、賦形工程において、区画部材の立体部が表皮材を基体の表面および側面に向けて押圧し、区画部材の余長部が表皮材を基体の裏面に向けて押圧するようにする。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、前記基体の表面、側面および裏面を連続的に覆う表皮材と、を有する表皮付部品の製造方法であって、
内部の圧力変化が可能なチャンバーを、変形可能な区画部材によって第1副チャンバー部と第2副チャンバー部とに区画し、前記基体と前記基体の前記表面に重ねられた前記表皮材とを有する中間体を、前記表皮材を前記第2副チャンバー部側に向けつつ前記第1副チャンバー部内に配置する、準備工程と、
前記準備工程後に、前記第1副チャンバー部内を減圧しつつ前記第2副チャンバー部内を加圧することで、前記区画部材を変形させて前記中間体を押圧し、前記区画部材と前記基体との間にある前記表皮材を、前記基体の前記表面、前記側面および前記裏面に沿うように賦形する、賦形工程と、を有し、
前記区画部材は、前記基体の前記表面および前記側面に沿う箱型形状を有する立体部と、前記立体部の周縁部に連続した折り返し形状をなす余長部と、を有し、
前記賦形工程において、
前記区画部材の前記立体部は、前記表皮材を前記基体の前記表面および前記側面に向けて押圧し、
前記区画部材の前記余長部は、前記表皮材を前記基体の前記裏面に向けて押圧する、表皮付部品の製造方法。
【請求項2】
前記区画部材は、弾性変形可能である、請求項1に記載の表皮付部品の製造方法。
【請求項3】
前記準備工程において、前記余長部は、前記立体部の前記径方向外側に向けて膨出する、請求項1または請求項2に記載の表皮付部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基体と表皮材とを有する表皮付部品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基体と表皮材とを有する表皮付部品は、基体に由来する堅牢性と表皮材に由来する優れた触感および/または意匠性とを有する部品であり、例えば車両に搭載される内装品においては、センターコンソールボックスのリッドやニーパッド等の、ユーザーに直接触れられる部材に用いられている。
当該表皮付部品を製造する方法としては、基体上に表皮材を載置して、両者を接着したり、鋲打ち機を用いて両者を鋲打ちしたりする方法が一般に用いられている。
【0003】
ところで、表皮付部品として、基体の表面だけでなく、当該表面に連続する側面、および、当該側面に連続する裏面が、表皮材によって連続的に覆われたものも知られている。この種の表皮付部品を製造する際には、基体の形状に沿った形状となるように、表皮材を賦形する必要がある。表皮付部品を製造するにあたって、表皮材を賦形する方法として真空圧空成形法を採用することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1には、相互に型閉めされる上チャンバーおよび下チャンバーを用いて、真空圧空成形法により、基体に表皮材を貼り付ける方法が紹介されている。
特許文献1に紹介されている方法は、要するに、チャンバーボックスのうち上下のチャンバーにて表皮材を把持し、この表皮材にてチャンバーボックス内を上下2つの空間に区画し、表皮材を加熱軟化させた状態で、下方のチャンバー空間を減圧し、上方のチャンバー空間を加圧することで、表皮材を基体に押圧し、当該表皮材によって基体を被覆する方法である。
【0005】
特許文献1に紹介されている真空圧空成形法は、表皮材の賦形を容易に行うことができる点において、基体の表面、側面および裏面が表皮材によって連続的に覆われた表皮付部品を製造する方法として有利だと考えられる。
【0006】
しかし乍ら、当該特許文献1に紹介されている真空圧空成形法では、一度の真空圧空成形に要するコストが高い問題がある。このため、表皮付部品の新規な製造方法の開発が望まれている。
【0007】
本発明の発明者らは、コスト低減を図るべく、鋭意研究を重ねて、特許文献2の表皮付部品の製造方法を発明した。
当該表皮付部品の製造方法においては、要するに、変形可能な区画部材によってチャンバーを第1副チャンバー部と第2副チャンバー部とに区画し、当該区画部材を介して、表皮材を、基体に沿うように賦形する。こうすることで、賦形される表皮材の大きさを、当該表皮材によって覆われる基体の表面積、すなわち、基体の表面、側面および裏面程度の大きさとすることができる。このため、表皮材によってチャンバーを区画する場合に比べて、廃棄される表皮材の量を飛躍的に低減でき、表皮材に要するコストを大きく低減できる。
【0008】
また、特許文献2の表皮付部品の製造方法においては、区画部材は表皮付部品の構成要素ではない。このため、特許文献2の表皮付部品の製造方法によると、変形した区画部材であっても再利用することが可能であり、区画部材に要するコストも大きく高騰し難い利点もある。
これにより、特許文献2の表皮付部品の製造方法によると、表皮付部品の製造に要するコストを、全体として、低減できる利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第5692101号
【特許文献2】特開2020-82616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここで、既述したように、特許文献2の表皮付部品の製造方法によると、特許文献1に紹介されているような従来型の表皮付部品の製造方法に比べて、表皮付部品の製造に要するコスト低減できる。
しかし乍ら、様々な部品同様に、表皮付部品についてもコスト低減への要求は依然として高く、表皮付部品の更なるコスト低減を図り得る製造方法が望まれている。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、コストを低減し得る表皮付部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の発明者は、表皮付部品の製造を更に低減すべく検討を重ね、特許文献2の表皮付部品の製造方法で使用している区画部材の耐久劣化を抑制することを志向した。区画部材は、賦形時に変形するために、耐久劣化が生じ易い。このため、区画部材の耐久劣化を抑制できれば表皮付部品の製造コストを低減することが可能である。
本発明の発明者はこの点を鑑み、区画部材の耐久劣化を抑制する方法を模索して、本発明を完成した。
【0013】
すなわち、上記課題を解決する本発明の表皮付部品の製造方法は、
基体と、前記基体の表面、側面および裏面を連続的に覆う表皮材と、を有する表皮付部品の製造方法であって、
内部の圧力変化が可能なチャンバーを、変形可能な区画部材によって第1副チャンバー部と第2副チャンバー部とに区画し、前記基体と前記基体の前記表面に重ねられた前記表皮材とを有する中間体を、前記表皮材を前記第2副チャンバー部側に向けつつ前記第1副チャンバー部内に配置する、準備工程と、
前記準備工程後に、前記第1副チャンバー部内を減圧しつつ前記第2副チャンバー部内を加圧することで、前記区画部材を変形させて前記中間体を押圧し、前記区画部材と前記基体との間にある前記表皮材を、前記基体の前記表面、前記側面および前記裏面に沿うように賦形する、賦形工程と、を有し、
前記区画部材は、前記基体の前記表面および前記側面に沿う箱型形状を有する立体部と、前記立体部の周縁部に連続した折り返し形状をなす余長部と、を有し、
前記賦形工程において、
前記区画部材の前記立体部は、前記表皮材を前記基体の前記表面および前記側面に向けて押圧し、
前記区画部材の前記余長部は、前記表皮材を前記基体の前記裏面に向けて押圧する、表皮付部品の製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の表皮付部品の製造方法によると、区画部材の耐久劣化を抑制することで、表皮付部品の製造コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例1の表皮付部品の製造方法を模式的に表す説明図である。
図2】実施例1の表皮付部品の製造方法を模式的に表す説明図である。
図3】実施例1の表皮付部品の製造方法を模式的に表す説明図である。
図4】実施例1の表皮付部品の製造方法を模式的に表す説明図である。
図5】実施例1の表皮付部品の製造方法を模式的に表す説明図である。
図6】実施例1の表皮付部品の製造方法を模式的に表す説明図である。
図7】変形例の区画部材を模式的に表す説明図である。
図8】変形例の区画部材を模式的に表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明を実施するための形態を説明する。なお、特に断らない限り、本明細書に記載された数値範囲「a~b」は、下限aおよび上限bをその範囲に含む。そして、これらの上限値および下限値、ならびに実施例中に列記した数値も含めてそれらを任意に組み合わせることで数値範囲を構成し得る。更に、これらの数値範囲内から任意に選択した数値を、新たな上限や下限の数値とすることができる。
【0017】
本発明の表皮付部品の製造方法では、特許文献2の表皮付部品の製造方法と同様に、変形可能な区画部材によってチャンバーを第1副チャンバー部と第2副チャンバー部とに区画し、当該区画部材を介して、表皮材を基体に沿うように賦形する。こうすることで、賦形される表皮材の大きさを、当該表皮材によって覆われる基体の表面積、すなわち、基体の表面、側面および裏面程度の大きさとすることができる。このため、本発明の表皮付部品の製造方法によると、特許文献1に紹介されている技術のように表皮材によってチャンバーを区画する場合に比べて、廃棄される表皮材の量を飛躍的に低減でき、表皮材に要するコストを大きく低減できる。
【0018】
また、本発明の表皮付部品の製造方法においても、特許文献2の表皮付部品の製造方法と同様に、区画部材は表皮付部品の構成要素ではない。このため、本発明の表皮付部品の製造方法においても、変形した区画部材を再利用することが可能である。
また、特に本発明の表皮付部品の製造方法においては、区画部材を立体部と余長部をと有する形状にしたことにより、区画部材の耐久劣化を抑制することが可能になり、これにより、表皮付部材の製造コストを更に大きく低減することが可能になる。
【0019】
本発明の発明者らは、特許文献2の方法に基づいて表皮付部品を製造する過程で、区画部材が変形する様子を子細に観察した。その過程で、発明者らは、区画部材のうち表皮材を基体の裏面に向けて押し付ける部分において、区画部材の変形量が大きいことに気づいた。当該部分は、表皮材を賦形する際に、基体の裏面側に入り込む。このため、当該部分の変形量は、区画部材における他の部分の変形量に比べて大きく、表皮材の賦形を繰り返し行うにつれて、塑性変形し耐久劣化すると考えられる。
【0020】
本発明の発明者らは、上記した区画部材のうち変形量の大きな部分につき、賦形時における変形を見越して、ゆとりをもった形状に設計することを想起した。
【0021】
すなわち、本発明の表皮付部品の製造方法において、区画部材は、基体の表面および側面に沿う箱型形状を有する立体部と、当該立体部の周縁部に連続した折り返し形状をなす余長部と、を有する。このうち立体部は、表皮材を賦形する賦形工程において、表皮材を基体の表面および側面に向けて押し付ける部分である。また、余長部は、賦形工程において、表皮材を基体の裏面に向けて押し付ける部分である。余長部は折り返し形状であるために、当該余長部を広げるとその長さは長くなる。
【0022】
特許文献2の表皮付部品の製造方法における区画部材において、余長部に対応する部分は変形量の大きな部分であるが、本発明の表皮付部品の製造方法における区画部材においては、余長部は折り返されていた長さ分だけ、長く広げることができる。したがって、本発明の表皮付部品の製造方法における区画部材では、賦形工程における実質的な伸び変形量が低減し、賦形工程において当該余長部に作用する力も低減する。これにより、本発明の表皮付部品の製造方法における区画部材は、塑性変形し難く耐久劣化し難いために、繰り返しの使用に耐え得る。よって、本発明の表皮付部品の製造方法によると、表皮付部品の製造コストを低減できる。
【0023】
以下、必要に応じて、本発明の表皮付部品の製造方法、実施例の表皮付部品の製造方法等を、単に、本発明の製造方法、実施例の製造方法等と略する場合がある。以下、本発明の表皮付部品の製造方法を工程毎に説明する。
【0024】
本発明の表皮付部品の製造方法は、準備工程および賦形工程を有する。
このうち準備工程は、表皮材の賦形に用いるチャンバーに区画部材と中間体とを配置する工程である。中間体は、基体と、当該基体の表面に重ねられた表皮材と、を有する。
【0025】
チャンバーは内部の圧力変化が可能なものであれば良く、例えば、真空成形機や真空圧空成形機のチャンバーを用いれば良い。
区画部材は、変形可能なものであれば良く、布帛等の変形はするものの弾性変形はしない材料からなるものを用いても良いが、後述するように、シリコーンゴム等の弾性変形可能な材料からなるものを用いるのが好ましい。
【0026】
準備工程では、区画部材によって、チャンバーを第1副チャンバー部と第2副チャンバー部とに区画する。そして、上記した中間体を、表皮材を第2副チャンバー部側に向けつつ第1副チャンバー部内に配置する。このとき中間体の表皮材は、第1副チャンバー部と第2副チャンバー部とを区画する区画部材に対面する。
【0027】
本発明の製造方法では、上記の準備工程後に賦形工程を行う。
賦形工程においては、第1副チャンバー部内を減圧しつつ第2副チャンバー部内を加圧する。これにより、区画部材を第1副チャンバー部に向けて変形させ、中間体を押圧する。これにより、区画部材と基体との間にある表皮材は、基体の表面、側面および裏面に沿うように賦形される。
【0028】
より具体的には、区画部材は、既述したとおり立体部と余長部とを有し、このうち立体部は基体の表面および側面に沿う箱型形状を有する。このため、表皮材は当該立体部によって基体の表面および側面に沿った形状に賦形される。また、余長部は、当該立体部の周縁部に連続している。したがって、表皮材は余長部によって基体の裏面に沿った形状に賦形される。
【0029】
立体部は、基体の表面および側面に沿う箱状をなす。換言すると、立体部は、その内面が、基体の表面に沿う形状の第1賦形面と、当該第1賦形面に連続し基体の側面に沿う形状の第2賦形面と、を有する凹面状をなせば良い。
【0030】
立体部が基体の表面および側面に沿う箱状をなすために、賦形工程における区画部材の変形量は、当該立体部においては小さい。このため、上記した区画部材の耐久劣化は、立体部において大きく抑制される。
【0031】
立体部は、上記した内面を有する箱状をなせば良く、その厚さは一定でなくても良いが、耐久性を考慮すると厚さ略一定のシート状であるのが好ましい。賦形時において特定箇所に応力が集中するのを避けるためである。
【0032】
立体部は、例えば、基体の表面の全体および基体の側面の全体を連続的に覆っても良いし、基体の表面の全体および基体の側面の一部を連続的に覆っても良い。後述する余長部の位置を考慮すると、立体部は、基体の側面を高さ方向における1/2以上で覆うのが好ましい。基体における側面の高さは、基体の側端部、すなわち基体の側面において表面から最も離れた端部と、基体の表面と、の最短距離に相当する。
【0033】
ところで、既述した立体部の第2賦形面の長さL1は、基体の側面の高さL3と同じ長さであるのが特に好ましいが、本発明の製造方法においては立体部や余長部の多少の伸び変形は許容される。また、余長部の長さL2が十分に長ければ、第2賦形面に加えて余長部の一部によっても基体の側面を覆うこともできる。このため、第2賦形面の長さL1は、基体の側面の高さL3よりも多少短くても良い。
なお、立体部における第2賦形面の長さL1とは、当該第2賦形面における第1賦形面とは逆側の端部から第1賦形面の端部までの最短距離を意味する。
【0034】
具体的には、第2賦形面の長さL1は、基体の側面の高さL3の1/2以上であるのが好ましく、2/3以上であるのがより好ましく、3/4以上であるのが更に好ましい。既述したように、第2賦形面の長さL1は基体の側面の高さL3と同じであるのが特に好ましい。
【0035】
余長部は立体部の周縁部に連続する。立体部の周縁部は、立体部のうち基体の側面を覆う部分であり、当該周縁部に連続する余長部は、基体の側面に連続する裏面を覆う部分といえる。
【0036】
余長部の形状は、折り返し形状であれば良く、例えば、断面U字状をなすのが良い。余長部は、折り返し端部を如何なる方向に向けても良い。例えば、余長部は、立体部の径方向外側に向けて膨出しても良い。この場合、余長部は、その折り返し端部を立体部の径方向外側に向ける。また、余長部は、立体部の径方向内側に向けて陥没しても良い。この場合、余長部は、その折り返し端部を立体部の径方向内側に向ける。更には、余長部はその折り返し端部を立体部の高さ方向、すなわち、立体部における第2賦形面の長さ方向のどちらかに向けても良い。
また、余長部は、折り返し端部を2以上有しても良く、例えば蛇腹状をなしても良い。
【0037】
余長部は、折り返し形状をなし、区画部材のうち表皮材を基体の裏面に向けて押圧する機能を担う。このような余長部は、表皮材を基体の裏面に向けて押圧し得る程度の長さを有すれば良い。
【0038】
余長部の長さL2は、表皮材のうち基体の裏面を覆う部分の長さに応じて決定すれば良く、特に限定しないが、好ましい長さとして例えば30mm以上、40mm以上、50mm以上の各範囲を例示できる。なお、賦形工程において、中間体を支持する治具がチャンバー部内に大きく突出する場合等、治具と区画部材との位置関係によっては、治具の突出長さに応じて余長部の長さL2を更に長くしても良い。
なお、余長部の長さL2とは、折り返された状態での長さではなく、広げられた状態での長さを意味する。
【0039】
本発明の製造方法では、例えば、予め基体および/または表皮材に接着剤を塗布し、第1副チャンバー部内で、表皮材を賦形するのと同時に基体に表皮材を貼り付けても良い。或いは、賦形後の基体および表皮材を第1副チャンバー部から取り出して、賦形された表皮材を基体に接着、溶着、鋲打ち等の方法で固着しても良い。更には、賦形後の表皮材を、更に、一旦基体から取り外して、表皮材を基体に改めて固着しても良い。
つまり、本発明の製造方法は表皮材を基体に固着する固着工程を有しても良く、賦形工程と固着工程とを同時に行っても良いし、賦形工程後に固着工程を行っても良い。
【0040】
基体は、既述したように、表面、側面および裏面を有する。裏面は表面に背向する面であり、側面は表面と裏面とを連絡する面である。基体の材料や形状は特に限定されないが、表皮材を基体に沿わせて賦形する都合上、基体は表皮材および区画部材よりも変形し難い。また、上記した事情により、基体は表皮材よりも厚いのが好ましい。
基体の材料としては、金属、プラスチック、セラミックスに代表される各種の材料が使用可能である。
【0041】
表皮材は、区画部材に押圧されて賦形される。このような表皮材としては、例えば、皮革、天然繊維の織布や不織布等の天然素材製のものを用いることもできるし、ポリマーシートや合成ゴムシート等の非天然素材製のものを用いることもできる。その他、表皮材の材料として、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、熱可塑性ポリウレタン等の熱可塑性ポリマーを用いても良いし、熱可塑性を有さないかまたは熱可塑性の低いポリマーを用いても良い。型成形やプレス成形等の既知の方法でこれらのポリマーをシート状や板状等に成形したものを表皮材としても良いし、押出成形等の方法によりこれらのポリマーを繊維状に成形したものを更に織布状や不織布状にして表皮材としても良い。
【0042】
表皮材の大きさは、基体の表面、側面、および裏面を連続的に覆い得る大きさであれば良い。例えば、表皮材は、基体の表面全面と、側面全面と、裏面の一部と、を覆い得る大きさとすることができる。なお、表皮材は、基体の表面の全面を覆っても良いし、当該表面の一部のみを覆っても良い。当該表面に連続する側面についても同様に、表皮材は当該側面全面を覆っても良いし側面の一部のみを覆っても良い。更に当該側面に連続する裏面についても同様に、表皮材は当該裏面全面を覆っても良いし、裏面の一部のみを覆っても良い。
【0043】
上記した表皮材および基体は、基体の表面に表皮材が重ねられた中間体として、賦形工程に提供される。中間体における表皮材は、基体に固着されていても良いし、単に基体に重ねられただけでも良いが、基体の望み通りの部分が表皮材で覆われた表皮付部品を得るためには、中間体における表皮材が基体に対して位置決めされ、かつ、表皮材が基体に仮固定されるのが好ましい。この場合、表皮材の一部が基体に対して固着されれば良い。
【0044】
例えば、賦形工程と固着工程とを同時に行う場合には、基体の表面全面と表皮材のうち当該表面に対面する部分(以下、表対面部と称する)全体とを予め接着しておくのが良い。この場合、更に、基体の側面および裏面と、表皮材のうち基体に対面する面の残部と、の少なくとも一方に接着剤を塗布し、当該接着剤の硬化前に賦形工程を行うのが良い。
【0045】
賦形工程後に固着工程を行う場合には、基体の表面と表皮材の表対面部とを予め接着しておいても良い。この場合、基体の表面と表皮材の表対面部とを互いに全面で接着しても良いし、部分的に接着しても良い。更には、両面テープ等の脱着可能な方法で両者を仮に固着しても良い。
【0046】
賦形工程において、中間体は、真空圧空成形機の第1副チャンバー部内に載置される。
【0047】
当該第1副チャンバー部は、真空圧空成形機における減圧および加圧可能な空間、すなわちチャンバーの一部である。具体的には、チャンバーは、既述した区画部材によって第1副チャンバー部と第2副チャンバー部とに区画され、このうち中間体が載置される第1副チャンバー部内は減圧可能であり、第2副チャンバー部内は加圧可能である。
中間体は、表皮材を第2副チャンバー部側(換言すると、区画部材側)に向け、基体をその逆側に向ける。
【0048】
第1副チャンバー部内を減圧し、第2副チャンバー部内を加圧すると、当該第1チャンバー部と第2チャンバー部とを区画する区画部材が変形する。これにより、第1副チャンバー部の体積が減少し、かつ、第2副チャンバー部の体積が増大する。このとき区画部材は第1副チャンバー部内に載置された中間体に押し付けられ、当該中間体の外形に沿って変形する。したがって、このとき表皮材は、区画部材とともに基体に向けて押圧されるといえる。基材に向けて押圧された表皮材は、基体の側面および裏面に向けて巻き込まれ、当該側面および裏面に沿うように賦形される。
【0049】
第1副チャンバー部内を減圧する減圧装置、および、第2副チャンバー部内を加圧する加圧装置としては、減圧ポンプや加圧ポンプ等の既知の減圧装置や加圧装置を用いれば良い。なお、第1副チャンバー部内および第2副チャンバー部内は、何れも、減圧および加圧可能であっても良い。
【0050】
特に、第2副チャンバー部は、減圧および加圧可能であるのが好ましい。例えば、第1副チャンバー部内および第2副チャンバー部内を大気圧とすると、第1副チャンバー部および第2副チャンバー部の内圧が釣り合うため、第1副チャンバー部と第2副チャンバー部とを区画する区画部材は変形量の小さな定常状態となる。この状態からそのまま、第1副チャンバー部内を減圧し第2副チャンバー部内を加圧すると、第1副チャンバー部と第2副チャンバー部との内圧差が急激に増大するため、区画部材は急激に変形する。そして、当該急激な変形に起因して、区画部材が再利用し難い程度にまで塑性変形してしまう可能性がある。
【0051】
第1副チャンバー部内および第2副チャンバー部内を大気圧として区画部材を定常状態とし、この状態から、先ず、第1副チャンバー部内および第2副チャンバー部内を減圧状態とすると、第1副チャンバー部の内圧と第2副チャンバー部の内圧とが同程度となり、区画部材の定常状態は維持される。このときの第1副チャンバー部の内圧と第2副チャンバー部の内圧との差は、20%以下であるのが好ましく、15%以下であるのがより好ましく、10%以下であるのが特に好ましい。勿論、第1副チャンバー部の内圧と第2副チャンバー部の内圧とは同じであるのが最も好ましい。
【0052】
次いで、第1副チャンバー部内の減圧状態を維持しつつ第2副チャンバー部内を徐々に加圧状態に移行させれば、第1副チャンバー部と第2副チャンバー部との内圧差が緩やかに増大し、区画部材は緩やかに変形する。したがって、当該方法によると、区画部材の急激な変形を抑制しつつ、第1副チャンバー部内の減圧と第2副チャンバー部内の加圧とを行うことができる。
この場合には、区画部材の塑性変形を抑制し、区画部材の再利用できる回数を増大させることで、区画部材に要するコストを低減でき、ひいては表皮付部品の製造コストを低減できる利点がある。
【0053】
なお、賦形工程においては、区画部材の状態を問わず、第1副チャンバー部内を減圧しつつ第2副チャンバー部内を加圧する内圧操作の直前に、第1副チャンバー部の内圧と第2副チャンバー部の内圧とを同程度とする内圧操作を行うのが好ましい。以下、必要に応じて、第1副チャンバー部内を減圧しつつ第2副チャンバー部内を加圧する内圧操作を真空圧空操作と称し、第1副チャンバー部の内圧と第2副チャンバー部の内圧とを同程度とする内圧操作を調整操作と称する。真空圧空操作の直前に調製操作を行うことで、区画部材の状態を問わず、区画部材の急激な変形を抑制できる。
【0054】
区画部材によって中間体を充分に押圧し、かつ、区画部材に充分な耐久性を付与することを考慮すると、区画部材としては、弾性変形可能なものを用いるのが好ましく、天然ゴム、ウレタン、ポリエチレン、シリコーンゴム等を材料とした板またはシートを用いるのがより好ましい。区画部材の弾性的特性に着目すると、区画部材の伸び率(JIS K6251:2017による切断時伸び)は500~1500%の範囲内であるのが好ましく、600~1200%の範囲内であるのがより好ましく、800~1000%の範囲内であるのが特に好ましい。また、区画部材の弾性率は、0.5~1.2の範囲内であるのが好ましく、0.6~1.0の範囲内であるのがより好ましく、0.7~0.9の範囲内であるのが特に好ましい。なお、当該弾性率は、応力/歪みにより算出することができる。
【0055】
参考までに、表皮材の伸び率は5~250%の範囲内であるのが好ましく、10~200%の範囲内であるのがより好ましい。
【0056】
既述したように、区画部材は、第1副チャンバー部と第2副チャンバー部とを区画する。チャンバーは、内部が減圧および加圧可能であれば良く、どのように構成しても良いが、一般的な真空圧空成形機のチャンバーと同様に、2つのボックス部の間に区画形成するのが合理的である。当該2つのボックス部の一方を第1ボックス部と称し、他方を第2ボックス部と称する。
【0057】
第1ボックス部と第2ボックス部とは、組み合わされてチャンバーを区画するため、区画部材は、第1ボックス部と第2ボックス部との間に挟んで使用するのが良い。なお、第1ボックス部の内面と区画部材とで第1副チャンバー部を区画形成し、第2ボックス部の内面と区画部材とで第2副チャンバー部を区画形成するものとする。
【0058】
区画部材は第1ボックス部と第2ボックス部との一方に固定しても良い。第1ボックス部および第2ボックス部への区画部材の固定方法は特に問わず、接着やネジ止め等の既知の方法を利用すれば良い。
区画部材は、第1ボックス部と第2ボックス部との何れに固定しても良いが、賦形工程において第1副チャンバー部に中間体を載置する都合上、区画部材は、第2ボックス部における内面の周縁部に固定するのが好ましい。
なお、区画部材のうち第1ボックス部および/または第2ボックス部に固定する部分は、区画部材における周縁部である。当該周縁部は、例えば、余長部の端部であっても良い。または、例えば区画部材が余長部よりも更に外縁側に固定のための部分(以下、必要に応じて固定部という)を有する場合には、当該固定部を第1ボックス部および/または第2ボックス部に固定する周縁部としても良い。
【0059】
本発明の製造方法においては、区画部材とは別体の枠部を介して、区画部材を第1ボックス部と第2ボックス部との間に挟んでも良い。当該枠部は、区画部材とは異なり変形し難い部材であるのが好ましい。枠部は接着やネジ止め等の既知の方法で第1ボックス部または第2ボックス部に固定しても良い。枠部は第2ボックス部に固定するのが好ましい。
【0060】
ところで、賦形工程を繰り返し、区画部材が耐久劣化した場合、当該区画部材を取り替える必要がある。区画部材の取り替え作業を容易に行うためには、2枚の枠部で区画部材を挟み込むか、第1ボックス部または第2ボックス部における内面の周縁部と枠部との間で区画部材を挟み込むのが良い。この場合、区画部材と枠部との間や、第1ボックス部または第2ボックス部における内面の周縁部と区画部材との間に、シール材を介在させるのがより好ましい。シール材としては、ゴム製のOリング等の既知のシール材を利用すれば良い。シール材として、グリース等の流体状のシール材を用いても良い。
【0061】
以下、具体例を挙げて本発明の表皮付部品の製造方法を説明する。
【0062】
(実施例1)
図1図6は実施例1の表皮付部品の製造方法を模式的に表す説明図である。
以下、上、下とは図1に示す上、下を意味する。なお、後述するように、上下方向は第1ボックス部と第2ボックス部との開閉方向と言い換え得る。
【0063】
先ず、実施例1の表皮付部品の製造方法に用いる真空圧空成形機1について説明する。
図1に示すように、真空圧空成形機1は、第1ボックス部20を有する第1成形部2と、第2ボックス部30を有する第2成形部3と、区画部材4と、昇降装置10と、を有する。
【0064】
図1に示すように、第1成形部2は、第1ボックス部20と、第1ボックス部20内に配置された載置治具11とを有する。
【0065】
昇降装置10は、第2ボックス部30を上下方向に位置変化させ、第1ボックス部20と第2ボックス部30とで構成されるチャンバーボックス15を開閉する機能、および、載置治具11を第1ボックス部20に対して上下方向に位置変化させ、第1ボックス部20と載置治具11との位置関係を上下方向すなわちチャンバーボックス15の開閉方向に変化させる機能、を有する。
【0066】
実施例1の表皮付部品の製造方法で用いる真空圧空成形機1における昇降装置10は、第2ボックス部30に取り付けられ第2ボックス部30を上下方向に位置変化させるボックス側昇降要素12と、載置治具11に取り付けられ載置治具11を上下方向に位置変化させる載置治具側昇降要素13と、ボックス側昇降要素12および載置治具側昇降要素13に接続されたモータMと、で構成されている。
【0067】
第2ボックス部30は下方に開口する箱状をなす。第2ボックス部30には、貫通孔状の第2通気孔31が設けられている。当該第2通気孔31の2つの開口のうち一方は、第2ボックス部30の内部に開口する。当該2つの開口の他方は、第2ボックス部30の外部に配置された減圧加圧装置(図略)に接続される。
ボックス側昇降要素12は第2ボックス部30の外部に配置される。
【0068】
第1ボックス部20は上方に開口する箱状をなす。第1ボックス部20にもまた、貫通孔状の第1通気孔21が設けられている。当該第1通気孔21の2つの開口のうち一方は、第1ボックス部20の内部に開口する。当該2つの開口の他方は、第1ボックス部20の外部に配置された減圧装置(図略)に接続される。
【0069】
第1ボックス部20の内部には載置治具11、および、載置治具側昇降要素13の一部である内部要素13aが配置されている。載置治具11は、当該内部要素13aに固定される。内部要素13aは図略の外部要素とともに載置治具側昇降要素13を構成する。図略の外部要素は第1ボックス部20の外部に配置され、内部要素13aと外部要素とは接続される。
載置治具11には、中間体5が配置される。
【0070】
中間体5について説明する。
図6に示すように、中間体5は、基体50と、基体50に重ねられた表皮材55とを有する。
基体50は、ABS製であり、その端部が下方に向けて略L字状に湾曲する略板状をなす。基体50は、表面50fを上方に向け、裏面50bを下方に向ける。
基体50の表面50fには、表皮材55の表対面部56が接着される。基体50の表面50fと表対面部56とは、互いに全面で接着される。基体50の側面50s、および、裏面50bの外周部分50boにもまた、接着剤が塗布される。基体50の側面50sおよび裏面50bの外周部分50boに塗布された接着剤は、未硬化である。
【0071】
ここで、表皮材55はポリ塩化ビニルおよびクッション材となるウレタンを材料とし、基体50の表面50fの全面、側面50sの全面、および、裏面50bの外周部分50boを覆い得る大きさである。
【0072】
実施例1の表皮付部品の製造方法における区画部材4は、シリコーンゴム製のシートである。図6に示すように、区画部材4は、立体部40、余長部41および固定部42を有する。
【0073】
立体部40は箱型形状を有し、立体部40の内面40iは、基体50の表面50fに沿う形状の第1賦形面40ifと、当該第1賦形面40ifに連続し基体50の側面50sに沿う形状の第2賦形面40isと、を有する凹面状をなす。したがって、立体部40は、基体50の表面50fおよび側面50sに沿う箱型形状を有するといい得る。
【0074】
余長部41は、立体部40の周縁部40oに連続し、立体部40の径方向外側に向けて膨出する折り返し形状をなす。余長部41は、その折り返し端部43を、立体部40の径方向外側に向けている。余長部41は断面略U字の袋状をなすともいい得る。
【0075】
区画部材4は、余長部41よりも更に外縁側に、固定部42を有する。固定部42と余長部41との境界部分には略U字に折り返された補強部44が形成されている。当該補強部44は、余長部41と固定部42との境界において区画部材4の剛性を高めるために設けられており、当該区画部材4の形状維持に寄与する。
【0076】
実施例1の製造方法において、立体部40の第2賦形面40isの長さL1は、基体の側面の高さL3と略同じ長さである。また、余長部の長さL2(図6に示すL2、L2およびL2の和)は、50mm程度である。
【0077】
以下、実施例1の表皮付部品の製造方法を工程毎に説明する。
【0078】
〔準備工程〕
先ず、図1に示すように、ボックス側昇降要素12により第2ボックス部30を上方に位置変化させて、第1ボックス部20と第2ボックス部30とで構成されるチャンバーボックス15を開状態にする。当該開状態において、第2ボックス部30の内面30iの周縁部30pに、区画部材4の固定部42を固定する。
【0079】
上記のようにチャンバーボックス15を開状態とし、第1ボックス部20の内部、具体的には載置治具11上に、基体50と表皮材55とが一体化された中間体5を載置する。このとき中間体5は、基体50を下方すなわち載置治具11側に向け、表皮材55を上方すなわち第2ボックス部30側に向ける。
【0080】
次いで、ボックス側昇降要素12により第2ボックス部30を下方に位置変化させて、チャンバーボックス15を図2に示す閉状態とする。区画部材4の固定部42は第2ボックス部30に固定されているため、区画部材4は第2ボックス部30とともに下方に位置変化し、第1ボックス部20と第2ボックス部30との間に挟まれる。したがって、図2に示すように、チャンバーボックス15のチャンバー16は、第1ボックス部20と区画部材4とで区画される第1副チャンバー部17と、第2ボックス部30と区画部材4とで区画される第2副チャンバー部18と、に二分される。
【0081】
このとき、表皮材55の上方には区画部材4の立体部40が配置され、表皮材55の側方には区画部材4の余長部41が配置される。
またこのとき、第1副チャンバー部17の内部と第2副チャンバー部18の内部とはともに大気圧であり、区画部材4は自然状態からの変形量の小さな定常状態となる。
【0082】
〔賦形工程〕
賦形工程においては、先ず、図略の減圧装置によって第1副チャンバー部17の内部を減圧するとともに、図略の減圧加圧装置によって第2副チャンバー部18の内部を減圧する。このときの第1副チャンバー部17の内圧および第2副チャンバー部18の内圧は各々0MPa程度とし、第1副チャンバー部17と第2副チャンバー部18との内圧差は10%程度とする。第1副チャンバー部17の内部および第2副チャンバー部18の内部を同時に減圧することで、第1副チャンバー部17と第2副チャンバー部18とに内圧差の生じることが抑制され、区画部材4は図2に示す定常状態のままである。
【0083】
次いで、載置治具側昇降要素13により載置治具11を上方すなわち第2ボックス部30側に位置変化させる。すると、図3に示すように、載置治具11に載置された中間体5は、載置治具11とともに上方に位置変化し、区画部材4のなかに入り込む。具体的には、このとき、基体50の略全体と表皮材55の大部分が区画部材4の立体部40に入り込む。表皮材55の周縁部は、区画部材4の余長部41によって外側から覆われる。
【0084】
次いで、図4に示すように、第1副チャンバー部17の内部を減圧状態に保ったままで、第2副チャンバー部18の内部を加圧する。すると、第1副チャンバー部17と第2副チャンバー部18との内圧差が大きくなり、当該内圧差に起因して、区画部材4が変形する。
【0085】
具体的には区画部材4のうち立体部40は基体50の表面50fおよび側面50sに向けて変形し、これにより、表皮材55のうち立体部40と基体50とで挟まれた部分は基体50の表面50fおよび側面50sに向けて押圧される。このため、表皮材55は当該立体部40によって、基体50の表面50fおよび側面50sに沿った形状に賦形される。
また、区画部材4のうち余長部41は、基体50の裏面50bおよび載置治具11の表面に向けて変形し、これにより、表皮材55の周縁部は、基体50の裏面50bに向けて押圧され、基体50の裏面50bに向けて巻き込まれる。したがって、表皮材55は余長部41によって基体50の裏面50b、より具体的には裏面50bの外周部分50boに沿った形状に賦形される。
【0086】
なお、区画部材4は、折り返し形状をなす余長部41を有し、当該余長部41は、折り返されていた長さ分だけ、長く広げることができる。したがって、このとき余長部41は拡げられるだけであり、実質的な伸び変形量は殆どない。また、立体部40は基体の表面50fおよび側面50sとほぼ同形状であるため、立体部40の伸び変形量も殆どない。
【0087】
既述したように、基体50の側面50s、および、裏面50bにおける外周部分50boには未硬化の接着剤が塗布されているために、当該工程においては、表皮材55が基体50に沿った形状に賦形されると同時に、基体50と表皮材55とが接着される。
【0088】
次いで、第1副チャンバー部17の減圧および第2副チャンバー部18の加圧を停止し、第1副チャンバー部17および第2副チャンバー部18を大気圧とする。そして、図5に示すように第2ボックス部30を上方に位置変化させ、チャンバーボックス15を開状態として、表皮材55が賦形された後の中間体5、すなわち、実施例1の表皮付部品6を取り出す。実施例1の表皮付部品6を任意の時間静置し、接着剤を硬化させることで、基体と表皮材55の接着状態がより強固になる。
【0089】
実施例1の表皮付部品の製造方法によると、区画部材4に余長部41を設けたことで、賦形工程における区画部材4の伸び変形を抑制できる。これにより、区画部材4の耐久劣化を効果的に抑制でき、表皮付部品6の製造コストを低減できる。
【0090】
(変形例)
本発明の製造方法における区画部材の他の態様を変形例として説明する。
図7および図8は、変形例の区画部材を模式的に表す説明図である。
【0091】
図7に示す区画部材4の余長部41は、3つの折り返し端部43を有し、このうち2つを立体部40の径方向内側に向け、他の1つを立体部40の径方向外側に向けた蛇腹状をなす。
また、図8に示す区画部材4の余長部41は、2つの折り返し端部43を有し、このうち一方を上方に向け他方を下方に向けた蛇腹状をなす。
これらの場合にも、区画部材4の余長部41は、折り返されていた長さ分だけ長く広げることができる。このため賦形工程においては、区画部材4の伸び変形量は少なく、かつ、区画部材4の立体部40によって、表皮材55が基体50の表面50fおよび側面50sに沿った形状に賦形されるとともに、区画部材4の余長部41によって、表皮材55が基体50の裏面50bに沿った形状に賦形される。よって、これらの変形例の場合にも、区画部材4の耐久劣化は抑制され、表皮付部品の製造コストは低減される。
【0092】
以上、実施例を基に本発明の表皮付部品の製造方法を説明したが、本発明は、上記し且つ図面に示した実施形態および実施例にのみ限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。また、実施形態を含む本明細書に示した各構成要素は、それぞれ任意に抽出し組み合わせて実施できる。
【符号の説明】
【0093】
4:区画部材 5:中間体
6:表皮付部品 16:チャンバー
17:第1副チャンバー部 18:第2副チャンバー部
20:第1ボックス部 30:第2ボックス部
40:立体部 41:余長部
50:基体 50f:基体の表面
50b:基体の裏面 50s:基体の側面
55:表皮材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8