(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151250
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】タンパク質含有粉末の水分散性改良剤
(51)【国際特許分類】
A23L 29/10 20160101AFI20220929BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20220929BHJP
A23L 33/17 20160101ALN20220929BHJP
【FI】
A23L29/10
A23L5/00 M
A23L33/17
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021054234
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】390010674
【氏名又は名称】理研ビタミン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】芦田 泰三
【テーマコード(参考)】
4B018
4B035
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018MD10
4B018MD15
4B018MD20
4B018MD58
4B018MD71
4B018ME14
4B018MF02
4B018MF04
4B018MF05
4B018MF07
4B018MF14
4B035LC04
4B035LE01
4B035LG08
4B035LG12
4B035LG15
4B035LK12
4B035LP01
4B035LP43
(57)【要約】
【課題】タンパク質含有粉末に添加することにより、該粉末の水分散性を向上させることのできるタンパク質含有粉末の水分散性改良剤を提供する。
【解決手段】(a)グリセリン飽和脂肪酸エステル及び/又は常温で固体状の油脂と(b)グリセリン不飽和脂肪酸エステル及び/又はジグリセリン不飽和脂肪酸エステルとを含有する粒子を含む、タンパク質含有粉末の水分散性改良剤。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)グリセリン飽和脂肪酸エステル及び/又は常温で固体状の油脂と(b)グリセリン不飽和脂肪酸エステル及び/又はジグリセリン不飽和脂肪酸エステルとを含有する粒子を含む、タンパク質含有粉末の水分散性改良剤。
【請求項2】
請求項1に記載のタンパク質含有粉末の水分散性改良剤を粉末状態で含有する、タンパク質含有粉末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質含有粉末の水分散性改良剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康志向の高まりから、筋肉合成の促進や美容上の効果を謳った粉末プロテイン、粉末コラーゲン等のタンパク質を主成分とする粉末状の食品素材(タンパク質含有粉末)の需要が増加している。このようなタンパク質含有粉末は、水、牛乳等の飲料に分散させて摂取されることが多いが、一方でタンパク質は一般的に水への分散性が悪く、タンパク質含有粉末を水に加えた場合、水に濡れた部分が被膜を形成して内部への水の浸透を阻害し、「ままこ」(又は「ダマ」)と呼ばれる塊を形成して均一に分散しないという問題があった。
【0003】
タンパク質含有粉末の水分散性を改良する方法としては、例えば、タンパク質含有粉末と糖類とを含む高タンパク質含有粉末組成物に、ジグリセリン脂肪酸エステルを含む水溶液を加えて造粒する方法(特許文献1)、粉末状プロテインにポリ-γ-グルタミン酸又はその塩を添加する方法(特許文献2)等が提案されている。
【0004】
しかし、上記各方法でも「ままこ」の形成を十分に抑制できない場合があることから、タンパク質含有粉末の水分散性を改良し得る新たな方法が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-116494号公報
【特許文献2】特開2007-104920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、タンパク質含有粉末に添加することにより、該粉末の水分散性を向上させることのできるタンパク質含有粉末の水分散性改良剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題に対して鋭意検討を行った結果、特定の複数種類の乳化剤を含有する粒子を調製し、それをタンパク質含有粉末にそのまま添加して混合したところ、それだけでその水分散性が向上することを見出し、この知見に基づいて本発明を成すに至った。
【0008】
即ち、本発明は、次の(1)及び(2)からなっている。
(1)(a)グリセリン飽和脂肪酸エステル及び/又は常温で固体状の油脂と(b)グリセリン不飽和脂肪酸エステル及び/又はジグリセリン不飽和脂肪酸エステルとを含有する粒子を含む、タンパク質含有粉末の水分散性改良剤。
(2)前記(1)のタンパク質含有粉末の水分散性改良剤を粉末状態で含有する、タンパク質含有粉末。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るタンパク質含有粉末の水分散性改良剤は、タンパク質含有粉末に粉末状態で含有せしめることにより、該粉末の水分散性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の実施例である水分散性改良剤5を添加した大豆タンパク質含有粉末1は、「ままこ」の平均質量が軽く、より多くの大豆タンパク質含有粉末が「ままこ」を形成することなく水に分散していたことを示す写真である。
【
図2】
図2は、比較例の水分散性改良剤16を添加した大豆タンパク質含有粉末4は、「ままこ」の平均質量が重く、水への分散が不十分であったことを示す写真である。
【
図3】
図3は、水分散性改良剤を添加していない対照の大豆タンパク質含有粉末は、「ままこ」の平均質量が重く、水への分散が不十分であったことを示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係るタンパク質含有粉末の水分散性改良剤(以下「本発明の水分散性改良剤」ともいう)は、粉末状の製剤であって、該粉末を構成する粒子として、少なくとも以下に示す(a)成分と(b)成分とを含有する粒子を含むものである。尚、「(a)成分と(b)成分とを含有する粒子を含む」とは、単体で(a)成分と(b)成分とを共に含有する粒子を含むことを意味し、(a)成分を含有するが(b)成分を含有しない粒子と(b)成分を含有するが(a)成分を含有しない粒子とを含むことを意味するものではない。
【0012】
本発明の水分散性改良剤を構成する粒子に含有される(a)成分は、グリセリン飽和脂肪酸エステル及び/又は常温で固体状の油脂である。即ち、(a)成分としては、グリセリン飽和脂肪酸エステル又は常温で固体状の油脂のいずれか一方のみを単独で用いてもよく、あるいはこれら双方を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0013】
本発明において(a)成分として用いられるグリセリン飽和脂肪酸エステルは、グリセリンと飽和脂肪酸とのエステルであって、エステル化反応、エステル交換反応等自体公知の方法で製造できる。該エステルはモノエステル体(モノグリセリド)、ジエステル体(ジグリセリド)のいずれであってもよく、あるいはそれらの混合物であってもよい。また、トリエステル体(トリグリセリド)を含んでいてもよい。
【0014】
グリセリン飽和脂肪酸エステルを構成する飽和脂肪酸は、食用可能な動植物油脂を起源とする飽和脂肪酸であれば特に制限はない。このような飽和脂肪酸としては、例えば、炭素数8~24の直鎖の飽和脂肪酸(例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等)が挙げられる。これらの中でも、炭素数16~22の飽和脂肪酸(例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸等)が好ましく、ステアリン酸、パルミチン酸、ベヘン酸が特に好ましい。これら飽和脂肪酸は、一種類のみを単独で用いてもよく、二種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0015】
グリセリン飽和脂肪酸エステルとしては、例えば、エマルジーMS(商品名;構成脂肪酸:パルミチン酸及びステアリン酸;理研ビタミン社製)、エマルジーP-100(商品名;構成脂肪酸:パルミチン酸及びステアリン酸;理研ビタミン社製)、ポエムB-100(商品名;構成脂肪酸:ステアリン酸及びベヘン酸;理研ビタミン社製)等が商業的に製造・販売されており、本発明ではこれらを用いることができる。
【0016】
本発明において(a)成分として用いられる常温で固体状の油脂は、食用可能な動植物由来の油脂であって、常温(10~35℃)で固体又は半固体であるものであれば特に制限はない。このような油脂としては、例えば、乳脂肪、やし油、パーム油、牛脂、豚脂(ラード)及びカカオ脂等の固体脂、これら固体脂又は常温で液状の液体油(サフラワー油、大豆油、綿実油、コメ油、ナタネ油、オリーブ油等)に水素添加(硬化)処理を施して得られる硬化油、あるいはこれらにさらに分別、エステル交換等の処理を施した加工油脂が挙げられる。これらの中でも、硬化油、とりわけヨウ素価を2以下、望ましくは0.5以下とした極度硬化油が好ましく、パーム極度硬化油、ナタネ極度硬化油が特に好ましい。これら油脂は、一種類のみを単独で用いてもよく、二種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0017】
本発明の水分散性改良剤を構成する粒子中の(a)成分の含有量に特に制限はないが、該粒子100質量%中、通常30~95質量%、好ましくは40~90質量%、より好ましくは50~85質量%である。
【0018】
本発明の水分散性改良剤を構成する粒子に含有される(b)成分は、グリセリン不飽和脂肪酸エステル及び/又はジグリセリン不飽和脂肪酸エステルである。即ち、(b)成分としては、グリセリン不飽和脂肪酸エステル又はジグリセリン不飽和脂肪酸エステルのいずれか一方のみを単独で用いてもよく、あるいはこれら双方を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0019】
本発明において(b)成分として用いられるグリセリン不飽和脂肪酸エステルは、グリセリンと不飽和脂肪酸とのエステルであって、エステル化反応、エステル交換反応等自体公知の方法で製造できる。該エステルはモノエステル体(モノグリセリド)、ジエステル体(ジグリセリド)のいずれであってもよく、あるいはそれらの混合物であってもよい。また、トリエステル体(トリグリセリド)を含んでいてもよい。
【0020】
グリセリン不飽和脂肪酸エステルを構成する不飽和脂肪酸は、食用可能な動植物油脂を起源とする不飽和脂肪酸であれば特に制限はなく、例えば、炭素数18~22の直鎖状の不飽和脂肪酸(例えば、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸等)が挙げられる。これらの中でも、炭素数18の直鎖状の不飽和脂肪酸(例えば、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等)が好ましく、オレイン酸、リノール酸が特に好ましい。これら不飽和脂肪酸は、1種類のみを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0021】
グリセリン不飽和脂肪酸エステルとしては、例えば、ポエムOL-100H(商品名;構成脂肪酸:オレイン酸;理研ビタミン社製)、エマルジーMU(商品名;構成脂肪酸:リノール酸;理研ビタミン社製)等が商業的に製造・販売されており、本発明ではこれらを用いることができる。
【0022】
本発明において(b)成分として用いられるジグリセリン不飽和脂肪酸エステルは、平均重合度2のポリグリセリンであるジグリセリンと不飽和脂肪酸とのエステルであり、エステル化反応等、自体公知の方法で製造することができる。該エステルは、モノエステル体、ジエステル体、トリエステル体のいずれであってもよく、あるいはそれらの混合物であってもよい。そのようなジグリセリン不飽和脂肪酸エステルは、例えば、自体公知の方法で製造されたジグリセリン不飽和脂肪酸エステルを、さらに流下薄膜式分子蒸留装置又は遠心式分子蒸留装置等を用いて分子蒸留するか、又はカラムクロマトグラフィーもしくは液液抽出等自体公知の方法を用いて精製し、モノエステル体の含有量の割合を高めることにより製造することができる。
【0023】
ジグリセリン不飽和脂肪酸エステルを構成する不飽和脂肪酸は、食用可能な動植物油脂を起源とする不飽和脂肪酸であれば特に制限はなく、例えば、炭素数18~22の直鎖状の不飽和脂肪酸(例えば、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸等)が挙げられる。これらの中でも、炭素数18の直鎖状の不飽和脂肪酸(例えば、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等)が好ましく、オレイン酸が特に好ましい。これら不飽和脂肪酸は、1種類のみを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0024】
ジグリセリン不飽和脂肪酸エステルとしては、例えば、ポエムDO-100V(商品名;構成脂肪酸:オレイン酸;理研ビタミン社製)等が商業的に販売されており、本発明ではこれらを用いることができる。
【0025】
本発明の水分散性改良剤を構成する粒子中の(b)成分の含有量に特に制限はないが、該粒子100質量%中、通常5~70質量%、好ましくは10~60質量%、より好ましくは15~50質量%である。
【0026】
さらに、本発明の水分散性改良剤を構成する粒子は、本発明の目的・効果を阻害しない範囲で、上記(a)及び(b)成分以外の任意の成分を含んでいてもよい。そのような成分としては、例えば、酸化防止剤、調味料、香辛料、増粘剤、安定剤、pH調整剤(例えば、クエン酸、酢酸、乳酸、コハク酸、リンゴ酸、リン酸及びこれらの塩)等が挙げられる。
【0027】
本発明の水分散性改良剤を構成する粒子の製造方法は、該粒子が単体で上記(a)成分及び(b)成分を含有するような方法であれば特に制限はないが、その好ましい製造方法の概略は以下のとおりである。
【0028】
まず、(a)成分及び(b)成分並びに他の任意の成分を溶融混合し、溶融物を得る。なお、本発明において溶融混合とは、各種成分を加熱して液状又はスラリー状とし、混合することをいう。加熱温度は、70~100℃が好ましい。
【0029】
次に、得られた溶融物を自体公知の方法で冷却固化及び粒子化し、単体で(a)成分と(b)成分を含有する粒子とする。該溶融物を冷却固化及び粉末化する方法としては、例えば、噴霧冷却法により溶融物の冷却固化及び粒子化を同時に行う方法、溶融物を一旦冷却固化して固体状にした後、該固体を圧縮破砕機、剪断粗砕機、衝撃破砕機等を使用して物理的に粉砕することにより粒子化する方法等が挙げられる。冷却温度は、各成分が固体状になる温度であれば特に制限はないが、通常-196~30℃である。粒子化の目安としては、例えば、平均粒子径(メジアン径)が500μm以下であることが好ましい。
【0030】
本発明の水分散性改良剤は、タンパク質含有粉末に添加することにより、該粉末の水分散性を向上させることができる。
【0031】
本発明の水分散性改良剤の添加対象となるタンパク質含有粉末は、タンパク質を主成分とする粉末状の食品素材であれば特に制限はなく、例えば、公知の方法により乳、卵、食肉、植物等から水分及び他の成分を除去してタンパク質成分を濃縮及び乾燥して粉末化したもの(脱脂粉乳等)、公知の方法により乳、卵、食肉、植物等に含まれるタンパク質成分を分離し、分解処理をした後、水分を除去して濃縮及び乾燥して粉末化したもの等が挙げられる。
【0032】
タンパク質含有粉末に含まれるタンパク質の種類は、動植物由来で食用可能なものであれば特に制限はなく、例えば、乳タンパク質(例えば、ホエータンパク質、カゼイン等)、卵タンパク質、ゼラチン、各種食肉由来のタンパク質等の動物性タンパク質;豆タンパク質(例えば、大豆タンパク質、えんどう豆タンパク質等)とうもろこしタンパク質、小麦タンパク質、米タンパク質、菜種タンパク質等の植物性タンパク質;卵タンパク質分解物、魚タンパク質分解物、肉タンパク質分解物、コラーゲンペプチド、食肉ペプチド等の動物性タンパク質分解物;砂糖大根分解物等の植物性タンパク質分解物等が挙げられる。これらの中でも、乳タンパク質、豆タンパク質が好ましい。
【0033】
タンパク質含有粉末は、タンパク質以外に、本発明の効果を阻害しない範囲で他の任意の成分を含有していてもよい。そのような成分としては、例えば、ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸類、香料、酸化防止剤、ココアパウダーその他の食品素材等が挙げられる。
【0034】
本発明の水分散性改良剤をタンパク質含有粉末に添加する方法は、タンパク質含有粉末に本発明の水分散性改良剤を粉末状態で含有せしめる方法であれば特に制限はなく、例えば本発明の水分散性改良剤をとタンパク質含有粉末を均一に混合することにより、これらを粉末状態のまま接触させる方法等が挙げられる。
【0035】
本発明の水分散性改良剤のタンパク質含有粉末への添加量は、該剤の配合等によっても異なるが、例えば、タンパク質含有粉末100質量部に対し0.01~5質量部であることが好ましく、0.05~2質量部であることがより好ましい。
【0036】
本発明の水分散性改良剤を添加したタンパク質含有粉末は水分散性に優れるため、例えば、低温(5~10℃)の水、牛乳、清涼飲料水等に対しても容易に分散させることができる。
【0037】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例0038】
[水分散性改良剤の調製]
(1)原材料
<(a)成分>
1)グリセリン飽和脂肪酸エステルA(商品名:エマルジーP-100;構成脂肪酸:パルミチン酸及びステアリン酸;理研ビタミン社製)
2)グリセリン飽和脂肪酸エステルB(商品名:エマルジーMS;構成脂肪酸:パルミチン酸及びステアリン酸;理研ビタミン社製)
3)グリセリン飽和脂肪酸エステルC(商品名:ポエムB-100;構成脂肪酸:ステアリン酸及びベヘン酸;理研ビタミン社製)
4)常温で固体状の油脂A(パーム極度硬化油;横関油脂工業社製)
5)常温で固体状の油脂B(菜種極度硬化油;横関油脂工業社製)
<(b)成分>
1)グリセリン不飽和脂肪酸エステルA(商品名:ポエムOL-100H;構成脂肪酸:オレイン酸;理研ビタミン社製)
2)グリセリン不飽和脂肪酸エステルB(商品名:エマルジーMU;構成脂肪酸:リノール酸;理研ビタミン社製)
3)ジグリセリン不飽和脂肪酸エステル(商品名:ポエムDO-100V;構成脂肪酸:オレイン酸;理研ビタミン社製)
【0039】
(2)水分散性改良剤の配合
上記原材料を用いて調製した水分散性改良剤1~16の配合組成を表1~3に示す。このうち、表1及び2の水分散性改良剤1~13は本発明に係る実施例であり、表3の水分散性改良剤14~16はそれらに対する比較例である。尚、表3から明らかなように、成分(b)のみからなる比較例の水分散性改良剤は調製していない。これは、グリセリン不飽和脂肪酸エステル及びグリセリン不飽和脂肪酸エステルは、通常は常温で液状又はペースト状であるため、単独では粉末状の水分散性改良剤を調製できないためである。
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
(3)水分散性改良剤の調製方法
表1~3に示した配合割合に従って原材料を量りとり、100mL容のガラス製ビーカーに入れて、恒温槽で80℃に加温しながらガラス棒で撹拌した。得られた溶融物を4℃の冷却槽で冷却固化した後、ミキサー(商品名:TM8100;TESCOM社製)にて粉砕し、得られた粉砕物を 30mesh(目開き500μm)のステンレス製篩に通し、平均粒子径が300μmの粉末状の水分散性改良剤粉末1~16を各50g得た。
【0044】
[ホエータンパク質含有粉末による評価]
(1)水分散性改良剤粉末の添加
ホエータンパク質含有粉末(商品名:PROGEL 800;Friesland Campina社製)100gに対し、前記水分散性改良剤粉末1~14及び16のいずれかを添加量が1.5質量%又は2質量%となるように添加して粉々混合し、ホエータンパク質含有粉末1~15を得た。
【0045】
(2)牛乳への分散試験
200mL容のガラス製ビーカーに5℃の牛乳140mLを入れ、ここにホエータンパク質含有粉末1~16を各7g加えた。スパチュラで30秒間撹拌して混合した後、これを14mesh(目開き1.18mm)のステンレス製篩を通しながらボウルに流し入れたところ、篩を通過しなかった粗大な「ままこ」が一定量篩上に残った。その後、さらに水100mLを該篩にかけ、篩及び「ままこ」に付着した牛乳を洗い流した。「ままこ」が付着した篩を5分間静置して余分な水分を切った後、該篩の質量を測定し、その質量から篩自体の質量を差し引いて、篩上に残った粗大な「ままこ」の質量を算出した。また、対照として前記(1)の処理を行っていないホエータンパク質含有粉末(未処理品)についても同様の試験を行った。
【0046】
(3)水分散改良効果の評価
各ホエータンパク質含有粉末について前記分散試験を5回ずつ実施し、「ままこ」の質量の平均値を求めた。この平均値に基づき、下記の基準に従って水分散性改良効果の評価を記号化した。結果を表4に示す。
〔記号化基準〕
◎:極めて良好 平均値5.0未満
○:良好 平均値5.0以上、6.0未満
△:やや悪い 平均値6.0以上、7.0未満
×:悪い 平均値7.0以上
【0047】
【0048】
表4の結果から明らかなように、本発明の実施例である水分散性改良剤粉末1~13を添加したホエータンパク質含有粉末は、いずれも「ままこ」の平均質量が軽く、より多くのホエータンパク質含有粉末が「ままこ」を形成することなく牛乳に分散していた。一方、比較例の水分散性改良剤14及び16を添加したホエータンパク質含有粉末14及び15並びに対照のホエータンパク質含有粉末は、「ままこ」の平均質量が重く、牛乳への分散が不十分であった。
【0049】
[大豆タンパク質含有粉末による評価]
(1)水分散性改良剤の添加
大豆タンパク質含有粉末(商品名:フジプロ-F;粉末状分離大豆タンパク質;不二製油社製)100gに対し、前記水分散性改良剤5と7、15及び16のいずれかを添加量が1.5質量%となるように添加して粉々混合し、大豆タンパク質含有粉末1~4を得た。
【0050】
(2)水への分散試験
200mL容のガラス製ビーカーに常温(20℃)の水140mLを入れ、ここに大豆タンパク質含有粉末1~4を各7g加えた。スパチュラで30秒間攪拌して混合した後、これを14mesh(目開き1.18mm)のステンレス製篩を通しながらボウルに流し入れたところ、篩を通過しなかった粗大な「ままこ」が一定量篩上に残った。「ままこ」が付着した篩を5分間静置して余分な水分を切った後、該篩の質量を測定し、その質量から篩自体の質量を差し引いて、篩上に残った粗大な「ままこ」の質量を算出した。また、対照として前記(1)の処理を行っていない大豆タンパク質含有粉末(未処理品)についても同様の試験を行った。
【0051】
(3)水分散改良効果の評価
各大豆タンパク質含有粉末について前記分散試験を5回ずつ実施し、「ままこ」の質量の平均値を求めた。この平均値に基づき、下記の基準に従って水分散性改良効果の評価を記号化した。結果を表5に示す。
〔記号化基準〕
◎:極めて良好 平均値5.0未満
○:良好 平均値5.0以上、6.0未満
△:やや悪い 平均値6.0以上、7.0未満
×:悪い 平均値7.0以上
【0052】
【0053】
表5の結果から明らかなように、本発明の実施例である水分散性改良剤粉末5及び7を添加した大豆タンパク質含有粉末1及び2は、いずれも「ままこ」の平均質量が軽く、より多くの大豆タンパク質含有粉末が「ままこ」を形成することなく水に分散していた。一方、比較例の水分散性改良剤15及び16を添加した大豆タンパク質含有粉末3及び4並びに対照の大豆タンパク質含有粉末は、「ままこ」の平均質量が重く、水への分散が不十分であった。