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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151251
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】チョコレート生地用増粘剤
(51)【国際特許分類】
   A23G 1/36 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
A23G1/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021054235
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】390010674
【氏名又は名称】理研ビタミン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】泉 雄斗
【テーマコード(参考)】
4B014
【Fターム(参考)】
4B014GB01
4B014GL06
4B014GP01
(57)【要約】
【課題】チョコレート生地に添加することによりその粘度を増加させることができるチョコレート生地用増粘剤を提供する。
【解決手段】ジグリセリン脂肪酸エステル又はトリグリセリン脂肪酸エステルを有効成分とする、チョコレート生地用増粘剤。本発明で用いられるジグリセリン脂肪酸エステルは、ジグリセリンと脂肪酸とのエステル化生成物であり、エステル化反応等自体公知の方法で製造される。また、本発明で用いられるトリグリセリン脂肪酸エステルは、トリグリセリンと脂肪酸とのエステル化生成物であり、エステル化反応等自体公知の方法で製造される。本発明のチョコレート生地用増粘剤をチョコレート生地に添加することにより、その粘度が増加する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジグリセリン脂肪酸エステル又はトリグリセリン脂肪酸エステルを有効成分とする、チョコレート生地用増粘剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チョコレート生地用増粘剤に関する。
【背景技術】
【0002】
チョコレートを製造する上で、チョコレート生地の粘度は作業性や成形性等に大きな影響を与えるため重要であり、チョコレート生地の粘度が高すぎると、流動性が悪くなり、作業性が悪くなるだけでなく、成形上のトラブルの原因となりやすい。逆にチョコレート生地の粘度が低すぎると、所望の形状に成形しにくくなる、製品の形状がばらつきやすくなる等の問題が発生する。
【0003】
チョコレート生地の粘度を調整する方法としては、粘土状のチョコレート生地を、コンチング中にチョコレート生地の状態が粘土状からペースト状になるように50℃以上で0.2時間以上コンチングすることを特徴とするチョコレートの製造方法(特許文献1)、脂肪酸基の50%以上がラウリン酸であり、HLB値が4以下であるショ糖脂肪酸エステルと、乳成分とを含有するチョコレート生地を混合した後、成形して得られたものであることを特徴とするチョコレート(特許文献2)、室温で流動性を有するソルビタン脂肪酸エステルであって、エステルを構成する脂肪酸が主として炭素数16以上の不飽和脂肪酸であり、その水酸基価が50~80であるソルビタン脂肪酸エステルよりなるチョコレート生地の粘度低下剤(特許文献3)等が知られている。
【0004】
しかし、これらの方法はいずれもチョコレート生地の粘度を低下させるためのものであり、チョコレート生地の粘度が低すぎることによる問題には対応できない。このため、チョコレート生地の粘度を上昇させることができる増粘剤があれば、チョコレートを所望の形状に成形しやすくする、又は製品の形状のばらつきを抑制するといった用途に有用であると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-062362号公報
【特許文献2】特開2007-097418号公報
【特許文献3】特開平11-289985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、チョコレート生地に添加することによりその粘度を増加させることができるチョコレート生地用増粘剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題に対して鋭意検討を行った結果、特定のポリグリセリン脂肪酸エステルを用いることにより、上記課題が解決されることを見出し、この知見に基づいて本発明を成すに至った。
【0008】
即ち、本発明は、ジグリセリン脂肪酸エステル又はトリグリセリン脂肪酸エステルを有効成分とする、チョコレート生地用増粘剤、からなっている。
【発明の効果】
【0009】
本発明のチョコレート生地用増粘剤をチョコレート生地に添加することにより、その粘度が増加する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明で用いられるジグリセリン脂肪酸エステルは、ジグリセリンと脂肪酸とのエステル化生成物であり、エステル化反応等自体公知の方法で製造される。
【0011】
ジグリセリン脂肪酸エステルを構成するジグリセリンとしては、通常グリセリンに少量の酸又はアルカリを触媒として添加し、窒素又は二酸化炭素等の任意の不活性ガス雰囲気下で、例えば180℃以上の温度で加熱し、重縮合反応させて得られるグリセリンの平均重合度が1.5~2.4、好ましくは平均重合度が2.0のジグリセリン混合物が挙げられる。また、ジグリセリンはグリシドール又はエピクロロヒドリン等を原料として得られるものであっても良い。反応終了後、必要であれば中和、脱塩、脱色等の処理を行っても良い。
【0012】
本発明においては、上記ジグリセリン混合物を、例えば蒸留又はカラムクロマトグラフィー等自体公知の方法を用いて精製し、グリセリン2分子からなるジグリセリンを50質量%以上、好ましくは85質量%以上に高濃度化した高純度ジグリセリンが、好ましく用いられる。
【0013】
ジグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸としては、食用可能な動植物油脂を起源とする脂肪酸であれば特に制限はなく、例えば炭素数6~24の直鎖状の飽和又は不飽和脂肪酸(例えばカプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸等)が挙げられ、好ましくは炭素数12~18の直鎖状の飽和又は不飽和脂肪酸(例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等)である。
【0014】
本発明で用いられるジグリセリン脂肪酸エステルの好ましい製造方法の概略は次のとおりである。例えば、撹拌機、加熱用のジャケット、邪魔板等を備えた通常の反応容器に、ジグリセリンと脂肪酸とをモル比で約1:0.8~1:1.6、好ましくは約1:1で仕込み、触媒として水酸化ナトリウムを加えて撹拌混合し、窒素ガス雰囲気下で、エステル化反応により生成する水を系外に除去しながら、所定温度で加熱する。反応温度は通常、180~260℃の範囲、好ましくは200~250℃の範囲である。また、反応圧力条件は減圧下又は常圧下で、反応時間は0.5~15時間、好ましくは1~3時間である。反応の終点は、通常反応混合物の酸価を測定し、酸価12以下を目安に決められる。
得られた反応液は、未反応の脂肪酸、未反応のジグリセリン、ジグリセリンモノ脂肪酸エステル、ジグリセリンジ脂肪酸エステル、ジグリセリントリ脂肪酸エステル、ジグリセリンテトラ脂肪酸エステル等を含む混合物である。反応終了後、得られた反応液を120℃以上180℃未満、好ましくは130~150℃に冷却し、次いで酸を加えて触媒を中和し、好ましくは15分間~1時間放置し、未反応のジグリセリンを含むポリオールが下層に分離した場合はそれを除去し、ジグリセリン脂肪酸エステルが得られる。
【0015】
該ジグリセリン脂肪酸エステルは、モノエステル体の含有量が通常30質量%以上50質量%未満のものであるが、所望により、該ジグリセリン脂肪酸エステルを、例えば流下
薄膜式分子蒸留装置又は遠心式分子蒸留装置等を用いて分子蒸留するか、又はカラムクロマトグラフィー若しくは液液抽出等自体公知の方法を用いて精製することにより、全体に対してモノエステル体を50質量%以上、好ましくは60質量%以上含むジグリセリン脂肪酸エステルを得ることができる。
【0016】
ジグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、ポエムDM-100(商品名;ジグリセリンミリスチン酸エステル;モノエステル体約80%;理研ビタミン社製)、ポエムDO-100V(商品名;ジグリセリンオレイン酸エステル;モノエステル体約80%;理研ビタミン社製)、ポエムDP-95RF(商品名;ジグリセリンパルミチン酸エステル;モノエステル体約80%;理研ビタミン社製)、ポエムDS-100A(商品名;ジグリセリンステアリン酸エステル;モノエステル約80%;理研ビタミン社製)等が商業的に製造及び販売されており、本発明ではこれを用いることができる。
【0017】
本発明で用いられるトリグリセリン脂肪酸エステルは、トリグリセリンと脂肪酸とのエステル化生成物であり、エステル化反応等自体公知の方法で製造される。
【0018】
トリグリセリン脂肪酸エステルを構成するトリグリセリンとしては、通常グリセリンに少量の酸又はアルカリを触媒として添加し、窒素又は二酸化炭素等の任意の不活性ガス雰囲気下で、例えば180~260℃の温度で加熱し、重縮合反応させて得られるグリセリンの平均重合度が2.5~3.4、好ましくは平均重合度が3.0のトリグリセリン混合物が挙げられる。また、トリグリセリンはグリシドール又はエピクロロヒドリン等を原料として得られるものであっても良い。反応終了後、所望により中和、脱塩、又は脱色等の処理を行って良い。
【0019】
本発明においては、上記トリグリセリン混合物を、例えば蒸留又はカラムクロマトグラフィー等自体公知の方法を用いて精製し、グリセリン3分子からなるトリグリセリンを50質量%以上、好ましくは85質量%以上に高濃度化した高純度トリグリセリンが、好ましく用いられる。
【0020】
トリグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸としては、食用可能な動植物油脂を起源とする脂肪酸であれば特に制限はなく、例えば炭素数6~24の直鎖状の飽和又は不飽和脂肪酸(例えばカプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸等)が挙げられ、好ましくは炭素数12~18の直鎖状の飽和又は不飽和脂肪酸(例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等)であり、より好ましくはパルミチン酸である。
【0021】
本発明で用いられるトリグリセリン脂肪酸エステルの好ましい製造方法の概略は次のとおりである。例えば、撹拌機、加熱用のジャケット、邪魔板等を備えた通常の反応容器に、トリグリセリンと脂肪酸とをモル比で約1:0.8~1:1.6、好ましくは約1:1で仕込み、触媒として水酸化ナトリウムを加えて撹拌混合し、窒素ガス雰囲気下で、エステル化反応により生成する水を系外に除去しながら、所定温度で加熱する。反応温度は通常、180~260℃の範囲、好ましくは200~250℃の範囲である。また、反応圧力条件は減圧下又は常圧下で、反応時間は0.5~15時間、好ましくは1~3時間である。反応の終点は、通常反応混合物の酸価を測定し、酸価12以下を目安に決められる。
得られた反応液は、未反応の脂肪酸、未反応のトリグリセリン、トリグリセリンモノ脂肪酸エステル、トリグリセリンジ脂肪酸エステル、トリグリセリントリ脂肪酸エステル、トリグリセリンテトラ脂肪酸エステル、トリグリセリンペンタ脂肪酸エステル等を含む混合物である。反応終了後、得られた反応液を120℃以上180℃未満に冷却し、次いで酸を加えて触媒を中和し、好ましくは15分間~1時間放置し、未反応のトリグリセリンを含むポリオールが下層に分離した場合はそれを除去し、トリグリセリン脂肪酸エステルが得られる。
【0022】
さらに、該トリグリセリン脂肪酸エステルを、例えば流下薄膜式分子蒸留装置又は遠心式分子蒸留装置等を用いて分子蒸留するか、又はカラムクロマトグラフィー若しくは液液抽出等自体公知の方法を用いて精製することにより、全体に対してモノエステル体を50
質量%以上、好ましくは60質量%以上含むトリグリセリン脂肪酸エステルを得ることができる。
【0023】
トリグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、ポエムTRP-97RF(商品名;トリグリセリンパルミチン酸エステル;モノエステル体約80%;理研ビタミン社製)が商業的に製造及び販売されており、本発明ではこれを用いることができる。
【0024】
ここで、本発明で用いられるジグリセリン脂肪酸エステル及びトリグリセリン脂肪酸エステルについてモノエステル体の含有量は、下記分析条件にてHPLCを用いて分析することにより求められる。具体的には、ジグリセリン脂肪酸エステル又はトリグリセリン脂肪酸エステルを下記HPLC分析条件で分析後、データ処理装置によりクロマトグラム上に記録された被検試料の各成分に対応するピークについて、積分計を用いてピーク面積を測定し、測定されたピーク面積に基づいて、面積百分率としてモノエステル体の含有量を求めることができる。
【0025】
[HPLC分析条件]
装置 高速液体クロマトグラフ(型式:LC-10AS;島津製作所社製)
検出器 RI検出器(型式:RID-6A;島津製作所社製)
カラム GPCカラム(型式:SHODEX KF-802;昭和電工社製)2本連結
温度 40℃
移動相 THF
流量 1.0mL/min
検液注入量 15μL
【0026】
本発明のチョコレート生地用増粘剤の使用方法は、チョコレートを製造する際に、その原材料に対してジグリセリン脂肪酸エステル又はトリグリセリン脂肪酸エステルを直接添加して用いてもよいし、自体公知の方法により他の任意の成分を配合して製剤化したものを添加して用いてもよい。
【0027】
本発明のチョコレート生地用増粘剤の添加対象であるチョコレートとは、「チョコレート類の表示に関する公正競争規約」(全国チョコレート業公正取引協議会)乃至法規上の規定により限定されるものではなく、油脂(ココアバター等)、糖類、乳製品を主原料とし、必要によりカカオ分(カカオマス、ココアパウダー等)、香料、乳化剤(レシチン等)等を加え、チョコレート製造の工程〔混合工程、微粒化(リファイニング)工程、精練(コンチング)工程、調温(テンパリング)工程、成型工程、冷却工程等の全部乃至一部〕を経て製造されたもののことであり、例えば、ダークチョコレート(ビターチョコレート、ブラックチョコレート、スイートチョコレート、プレーンチョコレートとも称される)、ミルクチョコレート、ホワイトチョコレート、カラーチョコレート等が挙げられる。
【0028】
本発明においてチョコレート生地とは、チョコレートの製造工程中の成型工程までの原料の混合物のことである。チョコレート生地の調製は常法にしたがって行うことができ、例えば、所定量の各原料を混合して微粉砕後、コンチング処理を行い、成型固化させるために必要に応じて適宜テンパリングを行うことができる。
【0029】
尚、本発明のチョコレート生地用増粘剤のチョコレート生地への添加のタイミングに特に制限はないが、本発明で用いられるジグリセリン脂肪酸エステル及びトリグリセリン脂肪酸エステルは十分な加温条件下で油中に均一に分散することができるため、工業的生産では、混合工程において油脂に予備溶解させることが好ましい。
【0030】
本発明のチョコレート生地用増粘剤は、チョコレート生地に添加し、均一に撹拌及び分散することにより、チョコレート生地に粘度を増加させることができる。その添加量は、実施する成形方法や、製造されるチョコレートに求められる品質等により最適な粘度が異なるため一様ではないが、例えば、チョコレート生地100質量%中のジグリセリン脂肪酸エステル又はトリグリセリン脂肪酸エステルの含有量が0.25~1.0質量%の任意の範囲内で添加することができる。粘度の調整は、チョコレート生地中のジグリセリン脂肪酸エステル又はトリグリセリン脂肪酸エステルの添加量を増減する等の方法によって行うことができる。
【0031】
本発明のチョコレート生地用増粘剤が添加されたチョコレート生地は、クーリングベルト上への押出し成形、ディッピング、又はシェル成形等の成型方法により成型し、冷却固化することにより、最終製品であるチョコレートを製造することができる。
【0032】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例0033】
[チョコレート生地の粘度増加試験]
(1)チョコレート生地の原材料
1)ココアバター(商品名:デオドライズドココアバター;大東カカオ社製)
2)クーベルチュールチョコレート(商品名:クーベルチュールスイートカカオ58;不二製油社製)
3)乳化剤
3-1)ジグリセリンラウリン酸エステル(商品名:ポエムDL-100;理研ビタミン社製;モノエステル体含有量約75質量%)
3-2)ジグリセリンミリスチン酸エステル(商品名:ポエムDM-100;理研ビタミン社製;モノエステル体含有量約80質量%)
3-3)ジグリセリンパルミチン酸エステル(商品名:ポエムDP-95RF;理研ビタミン社製;モノエステル体含有量約80質量%)
3-4)ジグリセリンステアリン酸エステル(商品名:ポエムDS-100A;理研ビタミン社製;モノエステル体含有量約80質量%)
3-5)ジグリセリンオレイン酸エステル(商品名:ポエムDO-100V;理研ビタミン社製;モノエステル体含有量約80質量%)
3-6)トリグリセリンパルミチン酸エステル(商品名:ポエムTRP-97RF;理研ビタミン社製;モノエステル体含有量約80質量%)
3-7)モノグリセリンステアリン酸エステル(商品名:エマルジーV-100;理研ビタミン社製;モノエステル体含有量95質量%以上)
3-8)モノグリセリンオレイン酸エステル(商品名:エマルジーOL-100H;理研ビタミン社製;モノエステル体含有量95質量%以上)
3-9)テトラグリセリンステアリン酸エステル(商品名:SYグリスターPS3S;阪本薬品工業社製)
3-10)テトラグリセリンオレイン酸エステル(商品名:SYグリスターPO3S;阪本薬品工業社製)
3-11)プロピレングリコールステアリン酸エステル(商品名:リケマールPS-100;理研ビタミン社製)
3-12)プロピレングリコールオレイン酸エステル(商品名:リケマールPO-100V;理研ビタミン社製)
【0034】
(2)チョコレート生地の調製方法
カカオ脂2.7g、乳化剤0.3gを100mL容ビーカーに入れ、80℃恒温槽にて1時間静置後、スパーテルを用いて攪拌し溶解させた。上記ビーカーに60℃恒温槽にて1時間静置し完全に溶解させたクーベルチュールチョコレート57.0gを入れ、均一となるようスパーテルを用いて攪拌した。攪拌後は60℃恒温槽に入れ、1時間静置してから再度攪拌しながらビーカー内容物をバイアル瓶へ50g移し、粘度測定用のチョコレート生地1~12をそれぞれ得た。また、対照として、乳化剤0.3gに替えて同量のカカオ脂(計3.0g)を用いて同様に操作し、チョコレート生地13を得た。
【0035】
(3)チョコレート生地の粘度測定
(2)で得たチョコレート生地の入ったバイアル瓶を30℃恒温水槽にて1時間静置して内容物を30℃とし、バイアル瓶の内容物の粘度をB型粘度計(東機産業社製;4号ローター装着;回転数30rpm)を用いて測定した。測定後のサンプルは再度60℃恒温槽にて30分間保持し、30℃での測定と同様に、40℃、50℃の恒温水槽を用いて40℃、50℃の粘度をそれぞれ測定した。結果を表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
表1の結果から明らかなように、ジグリセリン脂肪酸エステル又はトリグリセリン脂肪酸エステルを添加して得たチョコレート生地1~6は、他の乳化剤を添加して得たチョコレート生地7~12及び乳化剤を添加せずに得たチョコレート生地13に比べ、いずれの温度においても、高い粘度測定値が得られた。従って、ジグリセリン脂肪酸エステル及びトリグリセリン脂肪酸エステルは、チョコレート生地の粘度を増加し得るチョコレート生地用増粘剤として使用可能であることが確認された。