(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151274
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】着用エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
A41D 13/018 20060101AFI20220929BHJP
A41D 13/05 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
A41D13/018
A41D13/05 125
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021054264
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 利仁
(72)【発明者】
【氏名】三浦 渉
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 瞳
(72)【発明者】
【氏名】河村 祐亮
【テーマコード(参考)】
3B011
【Fターム(参考)】
3B011AA05
3B011AB01
3B011AC04
(57)【要約】
【課題】好適に着用できる着用エアバッグ装置を提供すること。
【解決手段】保護対象者1に装着されて、保護対象者の転倒時に、保護対象部位としての腰部2の左右の大腿骨転子部3(L,R)を覆い可能に、膨張したエアバッグ20の保護膨張部33を配設させる着用エアバッグ装置10である。エアバッグは、保護膨張部の下縁33b側を上縁33a側に接近させるように折り畳まれて、アウタカバー14に覆われて、保護対象者の腰部の周囲に配置される。エアバッグの折り畳まれた折畳部位67が、折り崩れ防止用のラッピング材71に包まれて、アウタカバー内に収納される。ラッピング材は、エアバッグの折畳部位における保護対象部位の上方に位置するコーナ部70(L,R)の少なくとも保護対象者から離れた外面70b側、を包むように、配設されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護対象者に装着されて、保護対象者の転倒時に、保護対象部位としての腰部の左右の大腿骨転子部を覆い可能に、膨張したエアバッグの保護膨張部を配設させる構成の着用エアバッグ装置であって、
前記エアバッグが、前記保護膨張部の下縁側を上縁側に接近させるように折り畳まれて、アウタカバーに覆われて、前記保護対象者の腰部の周囲に配置されるとともに、
前記エアバッグの折り畳まれた折畳部位が、折り崩れ防止用のラッピング材に包まれて、前記アウタカバー内に収納される構成として、
前記ラッピング材が、前記エアバッグの前記折畳部位における前記保護対象部位の上方に位置するコーナ部の少なくとも保護対象者から離れた外面側、を包むように、配設されていることを特徴とする着用エアバッグ装置。
【請求項2】
保護対象者に装着されて、保護対象者の転倒時に作動されて、膨張用ガスを吐出するガス供給器と、該ガス供給器から供給される膨張用ガスにより膨張して、保護対象者の保護対象部位を覆い可能なエアバッグと、を備えて構成される着用エアバッグ装置であって、
前記ガス発生器が、
膨張用ガスを貯留した略円柱状のガスボンベと、
該ガスボンベの先端部側に配置されて、作動時、膨張用ガスを吐出可能に前記ガスボンベを開口させるガス吐出口部と、
を備え、
前記エアバッグが、
保護対象者から離れた外側壁部と、保護対象者側の内側壁部と、を具備して構成される周壁を備えるとともに、
前記エアバッグの周壁における保護対象者から離れた外側壁部の外面側に、配設されるとともに、前記ガス吐出口部からの膨張用ガスを前記エアバッグ内に流入可能に前記ガス吐出口部と連結される流入口部と、
を備え、
前記流入口部近傍の前記外側壁部に対し、前記ガスボンベを保持可能な可撓性を有した保持布が、結合され、
前記保持布が、
前記ガスボンベの元部側から挿入可能な挿入口部を有し、かつ、前記ガスボンベにおける外周面と前記ガス吐出口部から離れる元部側の端面とを包むように前記ガスボンベを収納可能な収納保持部、を備えて構成されるとともに、
前記収納保持部に収納した前記ガスボンベの軸心と直交方向の移動と、前記ガスボンベの軸心に沿う前記ガス吐出口部から離れる方向への移動と、を規制して、前記流入口部近傍の前記外側壁部に結合されていることを特徴とする着用エアバッグ装置。
【請求項3】
前記保持布が、
前記保持布における前記ガスボンベの軸心の直交方向に離れた両縁を、前記エアバッグの周壁における前記外側壁部と前記内側壁部との相互の縫合部位の領域に、縫合することにより、前記外側壁部に対して、結合されていることを特徴とする請求項2に記載の着用エアバッグ装置。
【請求項4】
保護対象者に装着されて、保護対象者の転倒時に、保護対象部位としての腰部の左右の大腿骨転子部を覆い可能に、膨張したエアバッグの保護膨張部を配設させる構成の着用エアバッグ装置であって、
前記エアバッグが、
左右両側に、それぞれ、下部側に前記保護膨張部を配設させた本体膨張部を配設させるとともに、左右方向の中央に、左右の前記本体膨張部の上部側相互と連通する連通部を配設させて構成され、さらに、アウタカバーに覆われて、前記保護対象者の腰部の周囲に配置される構成として、
前記アウタカバーが、左右に、膨張完了時の前記エアバッグの前記本体膨張部を覆い可能な本体カバー部を備え、
前記本体カバー部における保護対象者から離れた外面側であって、外周縁から離れた中央側に、前記保護膨張部を保護可能な補強部が、配設されていることを特徴とする着用エアバッグ装置。
【請求項5】
前記補強部の露出する外表面側が、意匠を施された意匠面部としていることを特徴とする請求項4に記載の着用エアバッグ装置。
【請求項6】
前記補強部が、前記本体カバー部に対し、着脱可能に取り付けられて配設されていることを特徴とする請求項5に記載の着用エアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護対象者に装着されて、保護対象者の転倒時に、保護対象部位を覆い可能に、エアバッグを膨張させる構成の着用エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、着用エアバッグ装置としては、ベルトのように保護対象者(例えば、高齢者)に着用させ、着用後、保護対象者が転倒すると、ガス発生器を作動させて、ガス発生器からの膨張用ガスをエアバッグに流入させ、膨張したエアバッグにより、保護対象者の保護対象部位としての腰部を保護するものがあった(例えば、特許文献1参照)。また、ベストのように保護対象者に着用させて、保護対象者の転倒時、ベストの内側に配設させたエアバッグを膨張させるものもあった(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2019/207474号公報
【特許文献2】特開2015-062545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の着用エアバッグ装置では、いずれも、着用時に、膨張前の折り畳まれたエアバッグがずれたり、あるいは、ガス発生器がぐらついて、着用時や作動時に違和感が発生する虞れが生じ、好適に着用できることが望まれていた。また、装着時のエアバッグの損傷を防止する点に関しても、単に、補強材を設けるだけでは、着用時に違和感が発生する虞れが生じることから、好適に着用できることが望まれていた。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、好適に着用できる着用エアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る第1番目の着用エアバッグ装置は、保護対象者に装着されて、保護対象者の転倒時に、保護対象部位としての腰部の左右の大腿骨転子部を覆い可能に、膨張したエアバッグの保護膨張部を配設させる構成の着用エアバッグ装置であって、
前記エアバッグが、前記保護膨張部の下縁側を上縁側に接近させるように折り畳まれて、アウタカバーに覆われて、前記保護対象者の腰部の周囲に配置されるとともに、
前記エアバッグの折り畳まれた折畳部位が、折り崩れ防止用のラッピング材に包まれて、前記アウタカバー内に収納される構成として、
前記ラッピング材が、前記エアバッグの前記折畳部位における前記保護対象部位の上方に位置するコーナ部の少なくとも保護対象者から離れた外面側、を包むように、配設されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る第1番目の着用エアバッグ装置では、折り畳まれたエアバッグの折畳部位が、アウタカバー内で、ラッピング材により包まれて、折り崩れしないことから、着用時に違和感が生じ難い。特に、ラッピング材は、エアバッグにおける保護対象部位の上方に位置するコーナ部の少なくとも保護対象者から離れた外面側に、配設されており、このコーナ部は、保護対象者の腰部の出っ張り部位であって、歩行時等に、周囲の壁等と当り易く、エアバッグにダメージを与えやすい部位であるものの、折り崩れ防止用のラッピング材が、エアバッグのコーナ部の補強材を構成できて、エアバッグの損傷を防止できる。
【0008】
したがって、本発明に係る第1番目の着用エアバッグ装置では、エアバッグの折り崩れを防止できて、好適に着用でき、さらに、ラッピング材をエアバッグの補強材として利用できて、エアバッグの損傷を防止することもできる。
【0009】
本発明に係る第2番目の着用エアバッグ装置は、保護対象者に装着されて、保護対象者の転倒時に作動されて、膨張用ガスを吐出するガス供給器と、該ガス供給器から供給される膨張用ガスにより膨張して、保護対象者の保護対象部位を覆い可能なエアバッグと、を備えて構成される着用エアバッグ装置であって、
前記ガス発生器が、
膨張用ガスを貯留した略円柱状のガスボンベと、
該ガスボンベの先端部側に配置されて、作動時、膨張用ガスを吐出可能に前記ガスボンベを開口させるガス吐出口部と、
を備え、
前記エアバッグが、
保護対象者から離れた外側壁部と、保護対象者側の内側壁部と、を具備して構成される周壁を備えるとともに、
前記エアバッグの周壁における保護対象者から離れた外側壁部の外面側に、配設されるとともに、前記ガス吐出口部からの膨張用ガスを前記エアバッグ内に流入可能に前記ガス吐出口部と連結される流入口部と、
を備え、
前記流入口部近傍の前記外側壁部に対し、前記ガスボンベを保持可能な可撓性を有した保持布が、結合され、
前記保持布が、
前記ガスボンベの元部側から挿入可能な挿入口部を有し、かつ、前記ガスボンベにおける外周面と前記ガス吐出口部から離れる元部側の端面とを包むように前記ガスボンベを収納可能な収納保持部、を備えて構成されるとともに、
前記収納保持部に収納した前記ガスボンベの軸心と直交方向の移動と、前記ガスボンベの軸心に沿う前記ガス吐出口部から離れる方向への移動と、を規制して、前記流入口部近傍の前記外側壁部に結合されていることを特徴とする。
【0010】
本発明の第2番目の着用エアバッグ装置では、略円柱状のガスボンベが、エアバッグの周壁における保護対象者から離れた外側壁部の外面側に、配設されるとともに、外側壁部に結合された保持布の収納保持部に保持される。そして、外側壁部に結合された保持布の収納保持部は、挿入口部から収納されたガスボンベを、その外周面とガス吐出口部から離れる元部側の端面とを包むように、保持し、さらに、ガスボンベの軸心と直交方向の移動(例えば、軸心と直交方向の外側壁部に沿った方向や外側壁部から離れる方向の移動)と、ガスボンベの軸心に沿ってガス吐出口部から離れる方向の移動と、を規制して、保持することから、膨張用ガスの吐出時のガスボンベのぶれる方向の略全てに関し、規制して保持できる。なお、ガスボンベの軸心に沿ったガス吐出口部側へ接近する方向の移動は、エアバッグの流入口部に連結されるガス吐出口部自体に規制されるとともに、ガスボンベ自体が、膨張用ガスの吐出時には、ガス吐出口部側へ接近する方向へ移動し難い。そのため、作動前の着用時や作動時にぶれ易いガスボンベが、ぶれを抑制されて、配設可能となる。
【0011】
したがって、本発明に係る第2番目の着用エアバッグ装置では、ぶれ易いガスボンベをぶれを防止して配設できて、好適に着用できる。
【0012】
また、前記保持布は、前記保持布における前記ガスボンベの軸心の直交方向に離れた両縁を、前記エアバッグの周壁における前記外側壁部と前記内側壁部との相互の縫合部位の領域に、縫合することにより、前記外側壁部に対して、結合されていることが望ましい。
【0013】
このような構成では、外側壁部の外面側に配設されるガスボンベを保持する保持布は、内側壁部と外側壁部との相互の縫合部位の領域に縫合されて、内側壁部と外側壁部との相互の縫合部位からずれたエアバッグの膨張部位の領域となる外側壁部の単体部位に対して、縫合される訳ではないことから、保持布の縫合部位からのガス漏れを、防止できる。
【0014】
本発明に係る第3番目の着用エアバッグ装置は、保護対象者に装着されて、保護対象者の転倒時に、保護対象部位としての腰部の左右の大腿骨転子部を覆い可能に、膨張したエアバッグの保護膨張部を配設させる構成の着用エアバッグ装置であって、
前記エアバッグが、
左右両側に、それぞれ、下部側に前記保護膨張部を配設させた本体膨張部を配設させるとともに、左右方向の中央に、左右の前記本体膨張部の上部側相互と連通する連通部を配設させて構成され、さらに、アウタカバーに覆われて、前記保護対象者の腰部の周囲に配置される構成として、
前記アウタカバーが、左右に、膨張完了時の前記エアバッグの前記本体膨張部を覆い可能な本体カバー部を備え、
前記本体カバー部における保護対象者から離れた外面側であって、外周縁から離れた中央側に、前記保護膨張部を保護可能な補強部が、配設されていることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る第3番目の着用エアバッグ装置では、エアバッグを覆うアウタカバーが、補強部を配設させている。補強部は、エアバッグの保護膨張部を保護可能に、エアバッグの保護膨張部を下部側に配置させた本体膨張部を覆う本体カバー部の外面側において、外周縁から離れた中央側に、保護膨張部を保護可能に配設されている。すなわち、補強部は、本体カバー部の全面でなく、外周縁から離れた中央付近に、部分的に配設されていることから、厚みがあっても、保護対象者の動作を阻害し難く、着用時の違和感を抑制できる。また、補強部が、本体カバー部の外周縁から離れた中央付近に配置されていても、アウタカバーの本体カバー部の全体が、エアバッグの保護膨張部を含めた本体膨張部を覆っていることから、保護膨張部の損傷は、本体カバー部と補強部とにより、抑制可能となる。
【0016】
したがって、本発明に係る第3番目の着用エアバッグ装置では、保護膨張部を保護する補強部が配設されていても、違和感を極力抑えて、好適に着用でき、さらに、アウタカバーの本体カバー部と補強部とにより、エアバッグの保護膨張部の損傷を抑制することもできる。
【0017】
この場合、前記補強部の露出する外表面側が、意匠を施された意匠面部としていれば、着用時の着用エアバッグ装置の意匠性を向上させることができる。
【0018】
さらにこの場合、前記補強部が、前記本体カバー部に対し、着脱可能に取り付けられて配設される構成としていれば、意匠の異なった補強部と取り替えることが可能となって、着用する保護対象者の好みに応じて、補強部の意匠を変更することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係る第1実施形態の着用エアバッグ装置の使用状態を示す概略正面図である。
【
図2】第1実施形態の着用エアバッグ装置を平らに展開した状態の背面図である。
【
図3】第1実施形態の着用エアバッグ装置の概略縦断面図であり、
図2のIII-III部位に対応する。
【
図4】第1実施形態の着用エアバッグ装置の概略縦断面図であり、
図2のIV-IV部位に対応する。
【
図5】第1実施形態の着用エアバッグ装置の概略縦断面図であり、
図2のV-V部位に対応する。
【
図6】第1実施形態に使用するエアバッグの折り畳み工程を説明する図である。
【
図7】第1実施形態の着用エアバッグ装置を保護対象者に装着した状態を示す概略平面図である。
【
図8】第1実施形態の着用エアバッグ装置の作動時の概略側面図である。
【
図9】第1実施形態の変形例のラッピング材を示す概略断面図である。
【
図10】第1実施形態のエアバッグとガス発生器との配設部位付近の部分背面図である。
【
図11】第1実施形態に使用する保持布の概略分解斜視図である。
【
図12】第1実施形態に使用する保持布の概略部分横断面図であり、ガスボンベの端面付近を示す。
【
図13】保持布の変形例を示す概略分解斜視図である。
【
図14】
図13に示す保持布の概略横断面図であり、ガスボンベの端面付近を示す。
【
図15】第2実施形態の着用エアバッグ装置を平らに展開した状態の背面図である。
【
図16】第2実施形態の概略縦断面図であり、
図15の XVI- XVI部位に対応する。
【
図17】第2実施形態の着用エアバッグ装置の概略側面図である。
【
図18】第2実施形態の着用エアバッグ装置の補強部の取り替え時を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明すると、第1実施形態の着用エアバッグ装置10は、保護対象者(例えば、高齢者)1に装着して使用するものであり、
図1~8に示すように、エアバッグ20、ガス発生器45、保護対象者1の転倒を検知するセンサ76を配設させてガス発生器45を作動させる作動制御装置75と、エアバッグ20、ガス発生器45、及び、作動制御装置75を保持するベルト型の保持体11と、を備えて構成されている。エアバッグ20は、保護対象者1の転倒時に、保護対象部位として腰部2の側面2a側における左右の大腿骨転子部3(L,R)を覆い可能に、構成されている。
【0021】
保持体11は、
図1,2に示すように、保護対象者1の腰部2に巻付可能なベルトタイプとして構成され、左右両端の帯状端部17(L,R)に、締結具12としての鉤状の面状ファスナ12aとループ状の面状ファスナ12bとをそれぞれ配設させるとともに、作動制御装置75とセンサ76とを配設させて構成されている。保持体11は、左右の帯状端部17L,17Rの間の中央部18に、折り畳まれたエアバッグ20を収納しており、エアバッグ20を覆うアウタカバー14の役目を果たしている。
【0022】
保持体11としてのアウタカバー14は、その周壁14aがポリエステル等の可撓性を有した織布から形成されて、保護対象者1から離れた側の外側部16と、保護対象者1側の内側部15と、を備えて構成されている(
図3~5参照)。外側部16と内側部15とは、相互に同じ外形形状とし、外周縁相互を縫合して、アウタカバー14が形成されている。そして、外側部16と内側部15とは、アウタカバー14の下縁14bの縫合部位における左右両側の部位14c,14dが、折り畳まれたエアバッグ20の膨張時に破断して、エアバッグ20を突出させる開口予定部14c,14dとしている(
図2,3,8参照)。
【0023】
エアバッグ20は、
図1,2,6に示すように、左右両側に、略長方形板状の本体膨張部31(L,R)を配設させるとともに、左右方向の中央に、本体膨張部31L,31Rの上縁側相互を連通する連通部26を配設させている。本体膨張部31L,31Rは、それぞれ、下部側に、保護対象部位としての大腿骨転子部3(L,R)を覆う保護膨張部33(L,R)を配設させるとともに、上縁側に、連通部26と連通する縁側膨張部32(L,R)を配設させて構成されている。
【0024】
エアバッグ20は、周壁20aがポリエステル等の可撓性を有した織布から形成されている。周壁20aは、保護対象者1から離れた外側壁部21と、保護対象者1側の内側壁部22と、から構成されている。外側壁部21と内側壁部22とは、相互に略同じ外形形状としており、外周縁21a,22a相互を縫合して、エアバッグ20を形成している。
【0025】
なお、大腿骨転子部3(L,R)付近は、保護対象者1が転倒して骨折等して損傷すると、治療等が長引くこととなるため、保護が必要な部位であり、エアバッグ20は、その部位を保護するように、保護膨張部33(L,R)を配設させている。
【0026】
エアバッグ20は、上縁側の複数の取付タブ20bをアウタカバー14の上縁14e側に縫合して、保持体11としてのアウタカバー14に保持されている。また、エアバッグ20は、平らに展開した状態から、保護膨張部33(L,R)の下縁33b側を上縁33a側、詳しくは、本体膨張部31の上縁31a側に、接近させるように折り畳んで(
図6のAの二点鎖線参照)、アウタカバー14内に収納されている。
【0027】
なお、第1実施形態の場合、下縁33b側を保護対象者1に接近させるように巻く内ロール折りして、折畳部位67を形成しているが、折畳部位67は、保護対象者1から離れるように巻く外ロール折りとしてもよいし、蛇腹折りでもよく、さらに、内ロール折り、外ロール折り、及び、蛇腹折りを、適宜、混合させて折り畳んで、形成してもよい。
【0028】
そして、第1実施形態では、折り畳んだ折畳部位67は、折り崩れが防止されるように、エアバッグ20の膨張時に破断可能な不織布等からなるラッピング材71に包まれて、アウタカバー14内に収納されている。なお、ラッピング材71は、折り崩れを防止するようにエアバッグ20を包むが、エアバッグ20の膨張時には、ラッピング材71の一部を破断させたり分離させたり、あるいは、剥離させて、エアバッグ20の膨張を阻害しないように、エアバッグ20の包み状態を解消できるように、配設されるものである。
【0029】
さらに、第1実施形態の場合、ラッピング材71で包む部位は、
図6~8に示すように、着用エアバッグ装置10の保護対象者1への着用時に、保護対象部位としての大腿骨転子部3(L,R)の上方に位置する半円環状に屈曲して装着されるコーナ部70(L,R)の外周面70aを包むように、配設されている。
【0030】
また、エアバッグ20の連通部26における外側壁部21の部位には、ガス発生器45からの膨張用ガスGを流入させる流入口部27が配設されている。流入口部27は、外側壁部21に開口された膨張用ガスGを連通部26内に流入させる流入口28を開口させるとともに、その周縁をガス発生器45の後述するガス吐出口部47と連結される取付座29としている。取付座29には、後述するボルト60を貫通させるための4つの取付孔29aが配設されている。
【0031】
ガス発生器45は、
図2,4~10に示すように、炭酸ガス等からなる膨張用ガスGを圧縮して貯留してなる略円柱状のガスボンベ46と、ガスボンベ46の先端部46a側に組み付けられてガスボンベ46内の膨張用ガスGをエアバッグ20の流入口部27側に吐出する吐出口47aを有したガス吐出口部47と、を備えて構成されている。
【0032】
ガスボンベ46は、金属製のボンベに膨張用ガスGを封入して構成されており、先細り状の先端部46aには、封止板部46bが配設されて、ガス吐出口部47側に配設されたスクイブ(信管)48の作動により、封止板部46bが破断されて、膨張用ガスGが、先端部46aから噴出し、さらに、ガス吐出口部47の吐出口47aから吐出されて、後述する流路56,58と流入口28とを経て、エアバッグ20の連通部26内に流入する。なお、ガスボンベ46は、第1実施形態の場合、着用エアバッグ装置10の保護対象者1の装着時、保護対象者1の背面2bにおいて、先端部46a側を左向きにし、元部46c側を右向きして、その軸心Cを左右方向(水平方向)に沿わせるように、配置されることとなる。
【0033】
ガス吐出口部47付近には、エアバッグ20の流入口部27付近に取り付けるための取付具50が配設されている。取付具50は、ポリプロピレン等の合成樹脂製として、エアバッグ20の外側壁部21の外面21b側に配設されて、ガスボンベ46の先端部46aやガス吐出口部47を保持するハウジング51と、エアバッグ20の外側壁部21の内面21c側に配設される内側プレート57と、を備えて構成されている。
【0034】
ハウジング51は、ガスボンベ46の先端部46aとガス吐出口部47とを挟持するように、配設されて、外側外プレート52と、外側内プレート55と、を備えている。外側外プレート52は、ガスボンベ46の先端部46aとガス吐出口部47との外周面の外側部位を覆う半割り円筒状の湾曲部53と、湾曲部53から上下両側に平板状に突出する略長方形板状の鍔部54と、を備えて構成されている。外側内プレート55は、エアバッグ20の取付座29と外側外プレート52との間に配置される略長方形板状の形状として、湾曲部53の内周面の挟持面53aと協働して、ガスボンベ46の先端部46aとガス吐出口部47とを挟持する挟持面55bを備えている。外側外プレート52の鍔部54と外側内プレート55とには、各ボルト60を貫通させる取付孔54a,55aが4個ずつ形成されている。外側外プレート52と外側内プレート55とには、流入口28と連通する開口52a,55cが形成されており、これらの開口52a,55cは、流入口28を経て、膨張用ガスGをエアバッグ20内に流入させる流路56を形成している。
【0035】
内側プレート57は、エアバッグ20の流入口28の周縁(取付座29)における外側壁部21の内面21c側に配設され、各ボルト60を挿通させる取付孔57aを配設させるとともに、流入口28と連通する開口57bを備えている。開口57bは、左右方向に沿う凹溝状としており、流入口28を経て流入した膨張用ガスGを、連通部26から左右両側の本体膨張部31(L,R)側へ案内可能に、膨張用ガスGの流路58を形成している。なお、内側プレート57の各取付孔55aには、ボルト60と噛合するナット61が埋設されている。
【0036】
そして、エアバッグ20の取付座29の取付孔29aと取付具50の取付孔54a,55a,57aとの相互を一致させつつ、挟持面53a,55bの間にガス発生器45のガスボンベ46の先端部46a付近とガス吐出口部47とを配置させた状態として、ハウジング51の外側外プレート52と外側内プレート55とを、エアバッグ20の取付座29における外側壁部21の外面21b側に配置し、内側プレート57を、エアバッグ20の取付座29における外側壁部21の内面21c側に配置し、そして、各取付孔29a,54a,55a,57aにボルト60を挿入させて、各ボルト60をナット61に締結させれば、ガス発生器45のガスボンベ46の先端部46a付近とガス吐出口部47とが、取付具50の外側外プレート52と外側内プレート55とに挟持されて、取付具50に保持されるとともに、取付具50自体が、エアバッグ20の外側壁部21の取付座29を表裏で挟持して、エアバッグ20の外側壁部21に取り付けられることとなる。
【0037】
但し、ガスボンベ46における先端部46aから離れた元部46c側は、取付具50に直接的に保持されておらず、また、取付具50自体が、可撓性を有したエアバッグ20の外側壁部21に取り付けられていることから、元部46c側がぶれ易く、そのぶれを防止するために、第1実施形態では、流入口部27近傍の外側壁部21に結合される可撓性を有した保持布34により、ガスボンベ46が保持されている。
【0038】
保持布34は、
図5,10~12に示すように、ポリエステル等のエアバッグ20を構成する織布と同様な布材から構成される三枚の内側片部36、外側片部37、及び、端末片部38、から構成されている。内側片部36、外側片部37、及び、端末片部38は、縫合部位40(41,42,43)により、相互に縫合され、さらに、外側壁部21に結合されている。
【0039】
また、保持布34は、ガスボンベ46の元部46c側から挿入可能な挿入口部35aを有し、かつ、ガスボンベ46における先端部46aから元部46c側に向かう円筒状のエリアの外周面46eと、ガス吐出口部47から離れる元部46c側の端面46dと、を包むように、ガスボンベ46を収納可能な収納保持部35、を備えて構成されている。
【0040】
内側片部36と外側片部37とは、相互に同じ形状の略長方形板状として、エアバッグ20の外側壁部21に略沿い、かつ、ガスボンベ46を間にして対向するように配設されている。そして、内側片部36と外側片部37とは、ガスボンベ46の外周面46eの略半周分の距離を隔てて、ガスボンベ46の左右方向に沿う軸心Cに沿って、相互に縫合される縫合部位40、すなわち、ガスボンベ46の外周面46eに隣接して、ガスボンベ46を間にした上下両側の隣接部位41(U,D)により、相互に縫合されている。隣接部位41(U,D)は、ガスボンベ46の上下のぶれを規制するように、ガスボンベ46に接近して配設されている。内側片部36と外側片部37との左縁36c,37cにおける隣接部位41U,41D間の部位は、ガスボンベ46の元部46c側を挿入させる挿入口部35aとしている。すなわち、保持布34の上下の隣接部位41(U,D)の間の部位が、ガスボンベ46を収納保持する収納保持部35の筒部35bを構成している。
【0041】
また、端末片部38は、略長方形状として、上下方向に沿う折目(折返し部)38aを設けて折り、内側片部36と外側片部37の右縁36d,37d側を覆い、上下方向に沿う縫合部位40としての端末部位42,42により、両側縁38b側が、それぞれ、内側片部36と外側片部37とに縫合されている。そして、端末片部38の折目38a付近が、ガスボンベ46の端面46d側に当接する収納保持部35の底部35cを構成している。
【0042】
そして、保持布34は、上下の端縁34a,35aが、エアバッグ20の外側壁部21に結合されることにより、収納保持部35が、筒部35bの内周面35baにより、ガスボンベ46の軸心Cと直交方向の移動、すなわち、ガスボンベ46の外側壁部21に沿ったガスボンベ46の軸心Cと直交方向の上下方向(UD,DD)の移動、及び、ガスボンベ46の外側壁部21から離れるガスボンベ46の軸心Cと直交方向の外方向(OD)の移動、が規制可能となり、さらに、底部35cの底面35caにより、ガスボンベ46の軸心Cに沿うガス吐出口部47から離れる右方向(RD)への移動が、規制可能となる。
【0043】
なお、保持布34における上下の端縁34a,34b、すなわち、内側片部36と外側片部37との上縁36a,37aと下縁36b,37bは、外側壁部21に単体で縫合されるのではなく、エアバッグ20の外側壁部21と内側壁部22との外周縁21a,22a相互の縫合部位23において、連通部26の上縁23aと下縁23bとの領域に、縫合部位40の端縁部位43(U,D)として、縫合されている。
【0044】
その結果、外側壁部21に結合された保持布34は、収納保持部35に収納したガスボンベ46を、軸心Cと直交方向の上下方向(UD,DD)のぶれ、軸心Cと直交方向の外側壁部21から離れる方向(OD)のぶれ、及び、軸心Cに沿うガス吐出口部47側から離れる方向(RD)のぶれ、を抑制して保持できる。なお、ガスボンベ46の軸心Cに沿うガス吐出口部47側への移動に関しては、ガス吐出口部47が取付具50に取り付けられることから、抑制され、さらに、膨張用ガスGの吐出時には、ガスボンベ46の軸心Cに沿うガス吐出口部47から離れる方向への移動となることから、ガスボンベ46の軸心Cに沿うガス吐出口部47側への移動のぶれ対策は、殆ど、不要となる。
【0045】
着用エアバッグ装置10の組み立ては、既述したように、エアバッグ20の外側壁部21の取付座29に対し、取付孔29aと取付具50の取付孔54a,55a,57aとの相互を一致させつつ、挟持面53a,55bの間にガス発生器45のガスボンベ46の先端部46a付近とガス吐出口部47とを配置させた状態として、ハウジング51の外側外プレート52と外側内プレート55とを、エアバッグ20の流入口28の周縁の取付座29における外側壁部21の外面21b側に配置し、内側プレート57を、エアバッグ20の取付座29における外側壁部21の内面21c側に配置し、そして、各取付孔29a,54a,55a,57aにボルト60を挿入させて、各ボルト60をナット61に締結させれば、ガス発生器45のガスボンベ46の先端部46a付近とガス吐出口部47とが、取付具50の外側外プレート52と外側内プレート55とに挟持されて、取付具50に保持されるとともに、取付具50自体が、エアバッグ20の外側壁部21の取付座29を表裏で挟持して、エアバッグ20の外側壁部21に取り付けられることとなる。
【0046】
その後、保持布34の収納保持部35の挿入口部35aから、ガス発生器45のガスボンベ46の元部46c側を挿入させて、ガスボンベ46を保持布34の収納保持部35内に収納しておく。
【0047】
ついで、エアバッグ20の外側壁部21と内側壁部22との外周縁21a,22a相互を縫合して、エアバッグ20を形成する際、縫合部位23の連通部26の上縁23aと下縁23bとの部位と、共縫いするように、保持布34の端縁34a,34bを縫合する端縁部位43(U,D)を形成し、エアバッグ20を形成しつつ、保持布34をエアバッグ20の外側壁部21に取り付ける。
【0048】
その後、エアバッグ20を折り畳む。第1実施形態の場合には、
図6のA,Bに示すように、保護膨張部33(L,R)の下縁33bを上縁33aに接近させるようにロール折りし、折り畳んだ折畳部位67に、ラッピング材71を巻き付けて、端部71a,71b相互を縫合し、エアバッグ20の折畳完了体65を形成する。
【0049】
なお、
図3では、折畳部位67とラッピング材71との間に隙間を設けて図示しているが、実際には、隙間は生じていない。また、ラッピング材71は、内周面側に粘着剤を塗布して、縫合すること無く、貼着させて、折畳部位67を包むように、構成してもよい。
【0050】
その後、ガス発生器45のガス吐出口部47のスクイブ48を作動させるための作動制御装置75から延びる図示しない信号線をスクイブ48に結線しつつ、折畳完了体65を、アウタカバー14の内側部15と外側部16との間に配設し、また、作動制御装置75とセンサ76もアウタカバー14の内側部15と外側部16との間の所定位置に取り付けておき、そして、アウタカバー14の内側部15と外側部16との外周縁相互を縫合して、アウタカバー14としての保持体11を形成すれば、アウタカバー14に折畳完了体65が覆われたエアバッグ組付体69が形成されて、着用エアバッグ装置10の組み立てが完了する。なお、アウタカバー14の内側部15と外側部16との外周縁相互の縫合時には、エアバッグ20の上縁側の取付タブ20bをアウタカバー14の上縁14e側に共縫いして縫合しておく。また、アウタカバー14の所定位置には、予め、面状ファスナ12a,12bからなる締結具12を、取り付けておく。
【0051】
上記のように組み立てた着用エアバッグ装置10は、保護対象者1の腰部2に巻き付けて、面状ファスナ12a,12b相互を締結すれば、保護対象者1に装着することができる。なお、装着時には、
図1,7に示すように、ラッピング材71により包まれた部位は、エアバッグ20の折畳部位67における保護対象部位としての大腿骨転子部3(L,R)の上方に位置する半円環状に屈曲したコーナ部70(L,R)となる。
【0052】
そして、保護対象者1が転倒すれば、センサ76の信号を入力した作動制御装置75が、ガス発生器45におけるガス吐出口部47のスクイブ48を爆発させて、ガスボンベ46の封止板部46bを破断させることから、ガスボンベ46内の膨張用ガスGが、ガス吐出口部47の吐出口47aから、取付具50の流路56,58やエアバッグ20の流入口28を経て、エアバッグ20の連通部26内に流入し、そして、エアバッグ20の左右の本体膨張部31(L,R)内に流入して、本体膨張部31(L,R)を膨張させて、ラッピング材71の端部71a,71bの結合部位を破断させつつ、ラッピング材71の包み状態が解消されて、折畳部位67の折りが解消され、さらに、アウタカバー14の下縁14bの開口予定部14c,14dが、膨張する本体膨張部31(L,R)に押されて開口し、その開口部位から、保護膨張部33(L,R)が突出し、突出した保護膨張部33(L,R)が、保護対象者1の大腿骨転子部3(L,R)を覆って、転倒先から、大腿骨転子部3(L,R)を保護することができる。
【0053】
そして、第1実施形態の着用エアバッグ装置10では、折り畳まれたエアバッグ20の折畳部位67が、アウタカバー14内で、ラッピング材71により包まれて、折り崩れしないことから、着用時に違和感が生じ難い。特に、ラッピング材71は、エアバッグ20における保護対象部位としての大腿骨転子部3(L,R)の上方に位置するコーナ部70(L,R)の少なくとも外面70b側に(実施形態では、保護対象者1から離れた外面70b側だけで無く、折畳部位67の保護対象者1側の内面70c側を含めた外周面70aの全周を覆うように)、配設されており、このコーナ部70は、保護対象者1の腰部の出っ張り部位であって、歩行時等に、周囲の壁等と当り易く、エアバッグ20にダメージを与えやすい部位であるものの、折り崩れ防止用のラッピング材71が、エアバッグ20のコーナ部70(L,R)の補強材を構成できて、エアバッグ20の損傷を防止できる。
【0054】
したがって、第1実施形態の着用エアバッグ装置10では、エアバッグ20の折り崩れを防止できて、好適に着用でき、さらに、ラッピング材71をエアバッグ20の補強材として利用できて、エアバッグ20の損傷を防止することもできる。
【0055】
なお、第1実施形態では、ラッピング材71を、折畳部位67におけるコーナ部70の外周面70aの全周を包むように、配設したが、
図9に示すラッピング材71Aのように、粘着剤を設けた構成として、折畳部位67の折り崩れの防止を図りつつ、コーナ部70の保護対象者1から離れた外面70b側を覆うように、配設してもよい。このような構成でも、転倒先から折畳部位67のコーナ部70を保護できる。
【0056】
また、実施形態では、折畳部位67のコーナ部70(L,R)付近だけを包むように、ラッピング材71を使用したが、折り畳んだ本体膨張部31(L,R)の折畳部位67の全長にわたって、包むように、ラッピング材71を使用してもよい。
【0057】
また、第1実施形態の着用エアバッグ装置10では、略円柱状のガスボンベ46が、エアバッグ20の周壁20aにおける保護対象者1から離れた外側壁部21の外面21b側に、配設されるとともに、外側壁部21に結合された保持布34の収納保持部35に保持されている。そして、外側壁部21に結合された保持布34の収納保持部35は、挿入口部35aから収納されたガスボンベ46を、その外周面46eとガス吐出口部47から離れる元部46c側の端面46dとを包むように、保持し、さらに、ガスボンベ46の軸心Cと直交方向の移動(すなわち、外側壁部に沿った両方向(上方向UD、下方向DD)、外側壁部21から離れる方向ODの移動)と、ガスボンベ46の軸心Cに沿ってガス吐出口部47から離れる方向RDの移動と、を規制して、保持することから、膨張用ガスGの吐出時のガスボンベ46のぶれる方向の略全てに関し、規制して保持できる。なお、既述したように、ガスボンベ46の軸心Cに沿ったガス吐出口部47側へ接近する方向の移動は、エアバッグ20の流入口部27に連結されるガス吐出口部47自体に規制されるとともに、ガスボンベ46自体が、膨張用ガスGの吐出時には、ガス吐出口部47側へ接近する方向へ移動し難い。そのため、作動前の着用時や作動時にぶれ易いガスボンベ46が、ぶれを抑制されて、配設可能となる。
【0058】
したがって、この着用エアバッグ装置10では、ぶれ易いガスボンベ46をぶれを防止して配設できて、好適に着用できる。
【0059】
また、第1実施形態では、保持布34が、保持布34におけるガスボンベ46の軸心Cの直交方向に離れた上下の両縁34a,34bを、エアバッグ20の周壁20aにおける外側壁部21と内側壁部22との相互の縫合部位23の領域に、縫合することにより、外側壁部21に対して、結合されている。
【0060】
そのため、第1実施形態では、外側壁部21の外面21b側に配設されるガスボンベ46を保持する保持布34が、内側壁部22と外側壁部21との相互の縫合部位23の領域に縫合されて、内側壁部22と外側壁部21との相互の縫合部位23からずれたエアバッグ20の膨張部位の領域となる外側壁部21の単体部位に対して、縫合される訳ではないことから、保持布34の縫合部位43(U,D)からのガス漏れを、防止できる。
【0061】
なお、第1実施形態の保持布34では、三枚の可撓性を有した布材(内側片部36、外側片部37、及び、端末片部38)から、収納保持部35を形成したが、
図13,14に示す保持布34Aの収納保持部35Aのように、端末片部38を省いた二枚の内側片部36と外側片部37とから形成してもよい。
【0062】
この保持布34Aは、収納保持部35Aの底部35cを、内側片部36と外側片部37との右縁36d,37d相互を縫合して、形成しており、その縫合部位(端末部位)42Aからなる底部35cの底面35dが、ガスボンベ46の端面46dの移動を規制することとなる。なお、保持布34Aの収納保持部35Aの筒部35bの内周面35baは、第1実施形態と同様に、内側片部36と外側片部37との相互の縫合部位(隣接部位)41U,41D間の部位となって、ガスボンベ46の外周面46eに接触して、ガスボンベ46が軸心Cの直交方向に移動することを規制することとなる。
【0063】
つぎに、
図15~18に示す第2実施形態の着用エアバッグ装置10Aについて説明する。
【0064】
第2実施形態の着用エアバッグ装置10Aは、第1実施形態の着用エアバッグ装置10と、アウタカバー80が異なり、そして、エアバッグ20Aが折り畳まれない状態で、アウタカバー80内に収納されている。保持布34、ガス発生器45、取付具50、作動制御装置75、及び、センサ76は、第1実施形態と同様としている。
【0065】
エアバッグ20Aは、折り畳まれない状態で、アウタカバー80内に収納される構成であり、第1実施形態のエアバッグ20と同様に、左右に本体膨張部31(L,R)を配設させ、左右方向の中央に、ガス発生器45と連結される流入口部27を配設させた連通部26を配設させて、構成されている。左右の本体膨張部31(L,R)は、連通部26に連なる上縁側の縁側膨張部32(L,R)と、下部側の保護対象者1の保護対象部位である腰部2の大腿骨転子部3(L,R)を覆う保護膨張部33(L,R)と、を備えて、アウタカバー80を利用して、保護対象者1の腰部2の周囲に配置される構成としている。
【0066】
そして、アウタカバー80は、保護対象者1の腰部2に巻付可能なベルトタイプの保持体11Aとしており、左右両端の帯状端部83(L,R)に、締結具12としての鉤状の面状ファスナ12aとループ状の面状ファスナ12bをそれぞれ配設させるとともに、作動制御装置75とセンサ76とを配設させて構成されている。そして、左右の帯状端部83L,83Rの間の中央部84に、エアバッグ20Aを収納している。
【0067】
アウタカバー80は、第1実施形態と同様に、周壁80aが、ポリエステル等の可撓性を有した織布から形成されて、保護対象者1から離れた側の外側部82と、保護対象者1側の内側部81と、を備えて構成されている。外側部82と内側部81とは、相互に同じ外形形状とし、外周縁81a,82a相互を縫合して、アウタカバー80が形成されている。そして、アウタカバー80のエアバッグ20Aを収納する中央部84は、左右方向の中央のエアバッグ20Aの連通部26を覆う帯状の連結カバー部85と、エアバッグ20Aの本体膨張部31(L,R)を覆う略長方形板状の本体カバー部86(L,R)と、を備えて構成されている。本体カバー部86(L,R)は、膨張完了時の本体膨張部31(L,R)を覆い可能な形状として、構成されている。なお、エアバッグ20Aは、第1実施形態と同様に、上縁側の取付タブ20bを、外側部82と内側部81との外周縁82a,81a相互の縫合時に、共縫いして、アウタカバー80に保持されている。
【0068】
そして、第2実施形態のアウタカバー80は、本体カバー部86(L,R)における保護対象者1から離れた外側部82の外面82b側であって、外周縁86a(82a)から離れた中央86b側に、保護膨張部33(L,R)を保護可能な補強部87が、配設されている。なお、中央86b付近は、着用エアバッグ装置10Aの保護対象者1への装着時、保護対象部位としての大腿骨転子部3(L,R)の側方へ突出する突出部3aを中心として、大腿骨転子部3(L,R)の側面側を覆えるエリアとしている。
【0069】
第2実施形態の場合、補強部87は、着用エアバッグ装置10Aの着用時、エアバッグ20Aの本体膨張部31(L,R)、詳しくは、保護膨張部33(L,R)の転倒先等との干渉時の損傷を抑制できるように、本体カバー部86の中央86b付近を補強するために配設されるものであり、第2実施形態の場合、耐摩耗性を有し、かつ、クッション性と可撓性とを有したウレタンやゴム等の板状の補強パッチ88(L,R)、から形成されている。補強パッチ88(L,R)は、複数の取着材95により、本体カバー部86(L,R)に着脱可能に、取り付けられている。取着材95は、鉤状の面状ファスナ95aとループ状の面状ファスナ92bとから構成されて、一方が、補強パッチ88の裏面88b側に、取着され、他方が、本体カバー部86の外面21b側に、取着されている。
【0070】
第2実施形態の場合、補強パッチ88は、ホームベース形状の板状として、その5つの角部付近の裏面88b側に、取着材95が配設されている。さらに、補強パッチ88の外表面88a側は、意匠を施された意匠面部89としている。第2実施形態の場合、意匠面部89には、スペード模様が描かれている。なお、後述する取替用の補強パッチ88Aは、その意匠面部89Aに、ハート模様が描かれている(
図18参照)。
【0071】
この第2実施形態の着用エアバッグ装置10Aでは、保護対象者1の腰部2に巻き付けて、面状ファスナ12a,12b相互を締結すれば、保護対象者1に装着することができる。そして、保護対象者1が転倒すれば、センサ76の信号を入力した作動制御装置75が、ガス発生器45を作動させて、膨張用ガスGが吐出されることから、膨張用ガスGが、流入口28を経て、エアバッグ20Aの連通部26内に流入し、そして、エアバッグ20Aの左右の本体膨張部31(L,R)内に流入して、本体膨張部31(L,R)を膨張させて、下部側の保護膨張部33(L,R)も膨張し、膨張した保護膨張部33(L,R)が、保護対象者1の大腿骨転子部3(L,R)を覆って、転倒先から、大腿骨転子部3(L,R)を保護することができる。
【0072】
そして、転倒時は勿論のこと、歩行等において、周囲の壁等に、エアバッグ20Aの保護膨張部33(L,R)の部位が、干渉しても、保護膨張部33(L,R)は、アウタカバー80の本体カバー部86(L,R)を介在させて、補強パッチ88(L,R)に覆われていることから、損傷が抑制される。
【0073】
以上のように、第2実施形態の着用エアバッグ装置10Aでは、エアバッグ20Aを覆うアウタカバー80が、補強部87としての補強パッチ88(L,R)を配設させており、補強パッチ88(L,R)は、エアバッグ20Aの保護膨張部33(L,R)を保護可能に、エアバッグ20Aの保護膨張部33(L,R)を下部側に配置させた本体膨張部31(L,R)を覆う本体カバー部86(L,R)の外面82b側において、外周縁86aから離れた中央86b側に、保護膨張部33(L,R)を保護可能に配設されている。すなわち、補強部87としての補強パッチ88(L,R)は、本体カバー部86の全面でなく、外周縁86aから離れた中央86b付近に、部分的に配設されていることから、厚みがあっても、保護対象者1の動作を阻害し難く、着用時の違和感を抑制できる。また、補強部87としての補強パッチ88(L,R)が、本体カバー部86(L,R)の外周縁86aから離れた中央86b付近に配置されていても、アウタカバー80の本体カバー部86(L,R)の全体が、エアバッグ20Aの保護膨張部33(L,R)を含めた本体膨張部31(L,R)を覆っていることから、保護膨張部33(L,R)の損傷は、本体カバー部86(L,R)と補強パッチ88(L,R)とにより、抑制可能となる。
【0074】
したがって、第2実施形態の着用エアバッグ装置10Aでは、保護膨張部33(L,R)を保護する補強部87が配設されていても、違和感を極力抑えて、好適に着用でき、さらに、アウタカバー80の本体カバー部86(L,R)と補強部87とにより、エアバッグ20Aの保護膨張部の損傷を抑制することもできる。
【0075】
そして、第2実施形態の場合、補強部87としての補強パッチ88の露出する外表面88a側が、意匠を施された意匠面部89としており、着用時の着用エアバッグ装置10Aの意匠性を向上させることできる。
【0076】
さらに、第2実施形態の場合、補強部87を形成する部材としての補強パッチ88が、取着材95を利用して、アウタカバー80の本体カバー部86に対し、簡便に、着脱可能に、取り付けられる構成としている。そのため、
図18のC,Eに示すように、意匠面部89のデザインを変えた意匠面部89Aを有した補強パッチ88Aに、取り替えて取り付けることができて、着用エアバッグ装置10Aを利用する保護対象者1の好みに応じた補強部87を、本体カバー部86に配設することができる。
【0077】
なお、補強部87を構成する取替可能な補強パッチ88は、面ファスナーを利用する取着材95の他、粘着テープやスナップボタン等の取着材を利用することができる。さらに、本体カバー部86にポケット状の凹部を設けて、その凹部内に、着脱可能に、補強パッチ88を収納して、本体カバー部86に対して、補強パッチ88を取り付ける構成としてもよい、
また、取替可能な補強部87としては、ウレタンやゴム等の他、可撓性を有した布材等を利用してもよく、さらに、補強部87は、取替可能としなくとも、本体カバー部86に縫製、接着等して、本体カバー部86に取り付けて配設するように構成してもよい。
【0078】
さらにまた、補強部87としては、着用エアバッグ装置10Aの保護対象者1への装着時に、保護対象部位としての大腿骨転子部3(L,R)の側方へ突出する突出部3aを中心として、大腿骨転子部3(L,R)の側面側を覆えるエリアであって、そして、着用時の違和感を抑制できるように、本体カバー部86の全面でなく、外周縁86aから離れた中央86b付近とした配設エリアに配設されていればい。そのため、本体カバー部86の可撓性を阻害しないように、本体カバー部86の外面82b側に耐摩耗性を向上させるようなウレタン等を塗布等して形成した塗膜等からなる補強部87を、本体カバー部86に配設してもよい。
【符号の説明】
【0079】
1…保護対象者、2…腰部、3(L,R)…大腿骨転子部、10,10A…着用エアバッグ装置、14…アウタカバー、20,20A…エアバッグ、20a…周壁、21…外側壁部、21a…外周縁、21b…外面、22a…外周縁、23…(外周縁)縫合部位、27…流入口部、31(L,R)…本体膨張部、33(L,R)…保護膨張部、33a…上縁、33b…下縁、34,34A…保持布、
34a…(上縁)縁縁、34b…(下縁)端縁、35,35A…収納保持部、35a…挿入口部、45…ガス発生器、46…ガスボンベ、46a…先端部、46c…元部、46d…端面、46e…外周面、47…ガス吐出口部、65…折畳完了体、67…折畳部位、70(L,R)…コーナ部、70a…外周面、70b…外面、71,71A…ラッピング材、80…アウタカバー、82b…外面、86(L,R)…本体カバー部、86a…外周縁、86b…中央、87…補強部、88a…外表面、89,89A…意匠面部、C…(ガスボンベの)軸心、G…膨張用ガス。