(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151276
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】乗員保護装置
(51)【国際特許分類】
B60R 21/207 20060101AFI20220929BHJP
B60R 21/274 20110101ALI20220929BHJP
B60R 21/261 20110101ALI20220929BHJP
【FI】
B60R21/207
B60R21/274
B60R21/261
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021054267
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】尾関 誠
(72)【発明者】
【氏名】安田 陽
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054AA07
3D054AA21
3D054DD03
3D054EE04
(57)【要約】
【課題】車両の衝突時に、円滑に、膨張させたエアバッグによって、乗員の頭部を受け止めて保護できる乗員保護装置を提供すること。
【解決手段】車両のシートの背もたれ部の上端付近におけるヘッドレストに装着されて、シートに着座した乗員の頭部を保護可能に膨張するエアバッグを配設させて構成される乗員保護装置である。ヘッドレストの前面側に配置されるエアバッグ62と、エアバッグを膨張させる膨張用ガスGを貯留したガスボンベ30と、車両の衝突を検知するセンサ39を有し、センサの衝突検知により、ガスボンベを開口させるとともに、開口されたガスボンベからの膨張用ガスを流出可能な流出口60を有した開口機構37と、開口機構の流出口とエアバッグの膨張用ガスの流入口64と、に連通されるガス供給管66と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のシートの背もたれ部の上端付近におけるヘッドレストに装着されて、シートに着座した乗員の頭部を保護可能に膨張するエアバッグを配設させて構成される乗員保護装置であって、
前記ヘッドレストの前面側に配置される前記エアバッグと、
前記エアバッグを膨張させる膨張用ガスを貯留したガスボンベと、
車両の衝突を検知するセンサを有し、該センサの衝突検知により、前記ガスボンベを開口させるとともに、開口された前記ガスボンベからの膨張用ガスを流出可能な流出口を有した開口機構と、
前記開口機構の前記流出口と前記エアバッグの膨張用ガスの流入口と、に連通されるガス供給管と、
を備えて構成されていることを特徴とする乗員保護装置。
【請求項2】
前記ヘッドレストが、
乗員頭部の後面側を受止可能として、前面側に前記エアバッグを配置させたヘッドレスト本体と、
該ヘッドレスト本体の下面から下方へ突出して、前記背もたれ部の上面に挿入されて保持される脚部と、
を備えて構成され、
前記ガスボンベと前記開口機構とが、前記ヘッドレスト本体の下面と前記背もたれ部の上面との間に配設されるケースに、収納され、
前記ケースが、前記ヘッドレストの脚部を挿通させる挿通孔を備え、該挿通孔に前記脚部を挿通させて、前記ヘッドレスト本体と前記背もたれ部との間に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の乗員保護装置。
【請求項3】
前記センサが、機械式の衝突検知センサとしていることを特徴とする請求項1若しくは請求項2に記載の乗員保護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のシートの背もたれ部の上端付近のヘッドレストに装着されて、シートに着座した乗員の頭部を保護可能に膨張するエアバッグを配設させて構成される乗員保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の乗員保護装置では、車両の後面衝突時(後突時)におけるむち打ち症を抑制するために、車両のシートの背もたれ部の上端付近におけるヘッドレストに装着されて、シートに着座した乗員の頭部を保護可能に膨張するエアバッグを配設させて構成されていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の乗員保護装置では、背もたれ部の上端付近におけるヘッドレストに装着されて、乗員のけい部を保護するように、エアバッグが、空気を流入させて膨張する構成としているものの、空気の供給源が明らかでなく、また、どのタイミングで、エアバッグに空気を供給するかも明らかでないことから、車両の衝突時に、円滑に、乗員の頭部を保護可能に、エアバッグを膨張させるように構成することに、課題があった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、車両の衝突時に、円滑に、膨張させたエアバッグによって、乗員の頭部を受け止めて保護できる乗員保護装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る乗員保護装置では、車両のシートの背もたれ部の上端付近におけるヘッドレストに装着されて、シートに着座した乗員の頭部を保護可能に膨張するエアバッグを配設させて構成される乗員保護装置であって、
前記ヘッドレストの前面側に配置される前記エアバッグと、
前記エアバッグを膨張させる膨張用ガスを貯留したガスボンベと、
車両の衝突を検知するセンサを有し、該センサの衝突検知により、前記ガスボンベを開口させるとともに、開口された前記ガスボンベからの膨張用ガスを流出可能な流出口を有した開口機構と、
前記開口機構の前記流出口と前記エアバッグの膨張用ガスの流入口と、に連通されるガス供給管と、
を備えて構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る乗員保護装置では、車両のシートの背もたれ部の上端付近におけるヘッドレストに装着した後、車両が後面衝突すれば(車両が追突されれば)、センサがその衝突を検知して、開口機構を作動させ、開口機構がガスボンベを開口させることから、ガスボンベの膨張用ガスが、開口機構の流出口から、ガス供給管と流入口とを経て、エアバッグ内に流入される。すなわち、エアバッグが、車両の衝突時のタイミングに応じて、的確に膨張用ガスを流入させて、ヘッドレストの前面側で膨張する。そのため、乗員の頭部は、後面衝突直後に、前方移動した後、反動によって後方移動しても、膨張したエアバッグにより、円滑に、受け止められて、保護される。
【0008】
したがって、本発明に係る乗員保護装置では、車両の衝突時に、円滑に、膨張させたエアバッグによって、乗員の頭部を受け止めて保護することができる。
【0009】
そして、本発明に係る乗員保護装置では、前記ヘッドレストが、
乗員頭部の後面側を受止可能として、前面側に前記エアバッグを配置させたヘッドレスト本体と、
該ヘッドレスト本体の下面から下方へ突出して、前記背もたれ部の上面に挿入されて保持される脚部と、
を備えて構成され、
前記ガスボンベと前記開口機構とが、前記ヘッドレスト本体の下面と前記背もたれ部の上面との間に配設されるケースに、収納され、
前記ケースが、前記ヘッドレストの脚部を挿通させる挿通孔を備え、該挿通孔に前記脚部を挿通させて、前記ヘッドレスト本体と前記背もたれ部との間に配設されていることが望ましい。
【0010】
このような構成では、乗員保護装置の主要な構成部品であるガスボンベと開口機構とが、ケースに収納されており、ケースをヘッドレスト本体と背もたれ部との間に取り付けるとともに、ガス供給管を介して開口機構の流出口と連通される流入口を有したエアバッグを、ヘッドレスト本体の前面側に配置させれば、簡便に、乗員保護装置をシートのヘッドレストに取り付けることができる。そのため、本発明の乗員保護装置では、既存の車両のシートに対し、簡便に、後付けするように、取り付けることができる。
【0011】
さらに、本発明に係る乗員保護装置では、前記センサが、機械式の衝突検知センサとしていることが望ましい。
【0012】
このような構成では、電池等の電源を別途必要とするような電気式の衝突検知センサを使用せずに済み、乗員保護装置を簡便な構成とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る一実施形態の乗員保護装置の概略側面図である。
【
図2】実施形態の乗員保護装置の概略斜視図である。
【
図3】実施形態の乗員保護装置の乗員保護装置の作動時を示す概略側面図である。
【
図4】実施形態の乗員保護装置の構成部品を示す概略平面図である。
【
図5】実施形態の乗員保護装置における開口機構の作動時を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、
図1~3に示すように、実施形態の乗員保護装置20は、車両のシート10の背もたれ部12の上端13付近におけるヘッドレスト16に装着される。
【0015】
シート10は、乗員Mが座る座部11と、座部11の後端から上方に延びる背もたれ部12と、を備え、背もたれ部12の上端13側には、ヘッドレスト16が配設されている。ヘッドレスト16は、乗員Mの頭部Hを前面17a側で受け止めるヘッドレスト本体17と、ヘッドレスト本体17の下面17bから下方へ延びて、背もたれ部12の上面14に開口した組付孔15に挿入されて保持される二つの脚部18(L,R)と、を備えて構成されている。脚部18L,18Rは、ヘッドレスト本体17の下面17bの左右両側付近に、左右方向に並設されて、2つ配設されている。
【0016】
実施形態の乗員保護装置20は、
図1~4に示すように、エアバッグ62と、エアバッグ62を膨張させるための膨張用ガスGを貯留したガスボンベ30と、車両の後面衝突時(後突時)にガスボンベ30を開口させる開口機構37と、開口機構37とエアバッグ62とを連通させて膨張用ガスGをエアバッグ62に供給するガス供給管66と、ガスボンベ30と開口機構37とを収納するケース22と、を備えて構成されている。
【0017】
ケース22は、合成樹脂等から形成されて、略長方形板状の上下で対向する底壁23及び天井壁24と、底壁23と天井壁24との外周縁相互を連結する略四角筒状の周壁25と、を備えた略直方体形状としている。天井壁24は、周壁25に対して、取り外し可能に取り付けられている。ケース22は、背もたれ部12の上面14上におけるヘッドレスト本体17の下面17bとの間に、脚部18(L,R)を挿通させて、配設されている。底壁23と天井壁24とには、脚部18L,18Rを挿通させる挿通孔26が開口されている。ケース22は、ガスボンベ30と開口機構37とを収納した状態で、脚部18L,18Rを挿通させて、ヘッドレスト本体17の下面17bと背もたれ部12の上面14との間に、配設される。
【0018】
なお、周壁25には、開口機構37の後述する流出口60を突出させる開口25aが形成されている。
【0019】
エアバッグ62は、ポリエステル等の織布から形成された略四角形(略正方形)の略板状とした袋状の本体63と、本体63の四隅の内の1つに配設されて、本体63内に膨張用ガスGを流入させるための流入口64と、を備えて構成されている。エアバッグ62は、ヘッドレスト本体17の前面17aに平らに展開した状態で、配置されて、ヘッドレスト本体17を包むカバー71に覆われて、配置されている。
【0020】
このカバー71は、長手方向を前後方向に沿わせた一枚の布材から形成されて、長手方向の両端部72,73に、エアバッグ62の膨張時に外れ可能に相互に連結される面ファスナ76を配設させ、ヘッドレスト本体17の後面17c側を包んだ端部73側に、ヘッドレスト16の脚部18L,18Rを挿通させる挿通孔74を配設させている。面ファスナ76は、一対の相互に対応するループ側部とフック側部とからなる係合部76a,76bを、それぞれ、端部72,73に取り付けて構成され、係合部76a,76b相互を係合させれば、端部72,73相互を、エアバッグ62の膨張時に外れ可能として、結合することができる。また、エアバッグ62の本体63の上縁63a側は、縫合により、カバー71に結合されている。
【0021】
エアバッグ62のヘッドレスト16への配設時には、まず、平らに展開したエアバッグ62を結合させたカバー71の端部72,73相互を離した状態として、エアバッグ62の本体63を、背もたれ部12から取り外したヘッドレスト16におけるヘッドレスト本体17の前面17a側に当てつつ、カバー71によってヘッドレスト本体17を包み、端部72,73相互を、面ファスナ76を利用して、ヘッドレスト本体17の下面17b側で結合させる。なお、ヘッドレスト本体17を包む際、端部73側の挿通孔74,74には、脚部18L,18Rを挿通させておく。そして、脚部18L,18Rを、背もたれ部12の組付孔15に挿入させれば、エアバッグ62をヘッドレスト本体17に装着した状態で、ヘッドレスト16を背もたれ部12の上端13側に組み付けることができて、エアバッグ62をヘッドレスト16に配設することができる。
【0022】
ガス供給管66は、可撓性を有したゴム等からなり、開口機構37の流出口60とエアバッグ62の流入口64とを連通させるように、クランプ68,69を利用して、元部66aを流出口60に連結させ、先端部66bを流入口64に連結させて、配設されている。
【0023】
ガスボンベ30は、
図4,5に示すように、金属製として、円柱状の本体31内に二酸化炭素等からなる膨張用ガスGが封入されており、略円柱状の本体31と、本体31の先端側の小径の吐出口部32と、を備えて構成されている。吐出口部32は、開口機構37の後述する流出口部58の取付口部59に結合される部位であり、その外周側には、取付口部59の雌ねじ部59aに対応する雄ねじ部32aが形成されている。また、吐出口部32の先端は、ガスボンベ30内に封入した膨張用ガスGが流出しないように、封止板32bにより、塞がれている。但し、封止板32bは、開口機構37の後述する開口部材49の開口ピン部53が挿入されれば、開口32cを形成して、膨張用ガスGを吐出可能に構成されている。
【0024】
ガスボンベ30は、ケース22に連結されるブラケット34により、取付口部59に結合された状態で、ケース22に保持される。そして、ガスボンベ30は、ブラケット34を取り外し、雄ねじ部32aを雌ねじ部59aから外せば、取付口部59から取り外すことができ、使用済みのガスボンベ30を新たなガスボンベ30と交換することができる。
【0025】
開口機構37は、車両の衝突を検知する衝突検知センサ39を有し、センサ39の衝突検知により、ガスボンベ30を開口させるとともに、開口されたガスボンベ30からの膨張用ガスGをエアバッグ62側に供給可能な流出口60を有して構成されている。
【0026】
流出口60は、ガスボンベ30の吐出口部32と締結される取付口部59を有した流出口部58に、配設されている。流出口部58は、ケース22に収納されるとともに固定されており、ケース22の周壁25に配設された開口25aから突出する筒状の流出口60を備え、流出口60には、ガス供給管66の元部66aが、クランプ68を利用して、締結されている。
【0027】
衝突検知センサ39は、衝突検知を錘40の移動による検知とした機械式のものであり、車両の後面衝突時(車両が追突された時)、シート10やケース22の前方移動が発生した際、錘40が慣性力によりその位置に留まり、相対的に、ケース22に対して後方移動し、その移動を、駆動機構部42により、ガスボンベ30を開口させる動作に変換している。実施形態では、ガスボンベ30を開口させる開口部材49を動作させる駆動源を、コイルばね55の付勢力としている。
【0028】
駆動機構部42は、コイルばね55、作動片44、及び、開口部材49、を備え、さらに、作動片44の移動をガイドするガイド46,47、開口部材49を軸支する軸56、を備えて構成されている。錘40、コイルばね55、作動片44、開口部材49のばね座50と係止部51付近は、ハウジング38内に収納保持され、ハウジング38は、錘40、コイルばね55、作動片44、開口部材49のばね座50と係止部51付近を収納保持した状態で、流出口部58とともに、ケース22に収納されるとともに、固定されている。
【0029】
作動片44は、車両の後面衝突に伴なう錘40の初期位置P0から移動位置P1への移動時(実際には、前進移動するケース22に対する相対的な後方への移動時)、錘40を受け止めて移動するものであり、移動する錘40を前面44aaで受け止める受け座44aと、受け座44aの右縁から前方に延びる係止片部44bと、受け座44aの左縁から前方に延びる支持片部44cと、を備えて、上方から見て、逆U字形状としている。係止片部44bと支持片部44cとは、ハウジング38に固定されたガイド46,47により、前後移動が案内されている。係止片部44bの先端44baは、開口部材49の係止部51の係止爪部51aを係止している。
【0030】
開口部材49は、ハウジング38に支持される軸56を配設させた回転軸部52を中心として、係止部51側と開口ピン部53側とが揺動可能に配設されている。回転軸部52と係止部51との間には、凹状に凹んだばね座50が配設されており、ばね座50には、ばね55の先端55aが当接し、そのばね55の付勢力により、開口部材49は、平面視の状態で、時計回り方向に付勢されている。係止部51は、先端51aを後方側に向けており、その先端51aは、作動片44の係止片部44bの先端44baに係止されている。
【0031】
開口ピン部53は、流出口部58内に挿入され、先端53aを先細り状として、左方に突出させている。
【0032】
この開口機構37では、衝突検知センサ39の錘40が、車両の後面衝突時、ケース22に対して後方移動し、初期位置P0から、作動片44の受け座44aに当接する移動位置P1まで、移動する。すると、作動片44は、錘40の押圧力を受け、ガイド46,47に案内されて、後方側に移動して、係止片部44bの先端44baを、開口部材49の係止部51の係止爪部51aの後方側にずらして、係止爪部51aの係止状態を解除する。そのため、ばね55の付勢力を受けて、開口部材49が、軸56を回転中心として、時計回り方向に回転し、開口ピン部53の先端53aを、ガスボンベ30の封止板32bに挿入させて、封止板32bに開口32cを形成する。その結果、ガスボンベ30に封入されていた膨張用ガスGが、開口32cを経て、吐出口部32から開口機構37の流出口部58に吐出され、ついで、流出口部58の流出口60からガス供給管66を経て、エアバッグ62内に流入して、エアバッグ62が、カバー71の端部72,73相互を結合させていた面ファスナ76の係合を解除させて、ヘッドレスト本体17の前面17a側で膨張することとなる。
【0033】
実施形態の乗員保護装置20では、組立時、まず、ガスボンベ30の吐出口部32の雄ねじ部32aを、ケース22に固定されている開口機構37の流出口部58における取付口部59の雌ねじ部59aに締結させて、ブラケット34により、ガスボンベ30をケース22の底壁23に取付固定する。ついで、錘40を初期位置P0に配置させた状態としておき、ケース22の開けていた天井壁24を周壁25に取り付け、ケース22の天井壁24と底壁23との挿通孔26に、背もたれ部12から取り外したおいたヘッドレスト本体17、から突出している脚部18L,18Rを挿入させ、さらに、ケース22を背もたれ部12の上面14に配置しつつ、脚部18L,18Rを、背もたれ部12の組付孔15に挿入させて、ヘッドレスト16を背もたれ部12の上端13に組み付ければ、ガスボンベ30と開口機構37とを収納したケース22が、ヘッドレスト本体17の下面17bと背もたれ部12の上面14との間に、配設されつつ、シート10に取付固定されることとなる。なお、エアバッグ62側では、挿通孔74に脚部18L,18Rを挿通させつつ、カバー71をヘッドレスト本体17に巻き付けて、面ファスナ76を係合させて、端部72,73相互を結合させておけば、カバー71に結合されていたエアバッグ62の本体63を、予め、ヘッドレスト本体17の前面17aに配置させておくができる。
【0034】
そのため、ケース22が、シート10に取付固定されれば、既に、エアバッグ62の本体63がヘッドレスト本体17の前面17a側に配設されており、ケース22の周壁25から突出した開口機構37の流出口60とエアバッグ62の流入口64とに、クランプ68,69を利用して、ガス供給管66を連結すれば、乗員保護装置20をシート10のヘッドレスト16に装着することができる。
【0035】
実施形態の乗員保護装置20では、車両のシート10の背もたれ部12の上端13付近におけるヘッドレスト16に装着した後、車両が後面衝突すれば(車両が追突されれば)、衝突検知センサ39がその衝突を検知して、開口機構37を作動させ、開口機構37がガスボンベ30を開口させることから、ガスボンベ30の膨張用ガスGが、開口機構37の流出口60から、ガス供給管66と流入口64とを経て、エアバッグ62の本体63内に流入される。
【0036】
詳しく述べれば、既述したように、車両が、所定以上の衝撃力により、後面衝突されると、衝突検知センサ39の錘40が、ケース22に対して後方移動し、初期位置P0から、作動片44の受け座44aに当接する移動位置P1まで、移動する。すると、錘40に押された作動片44は、ガイド46,47に案内されて、後方側に移動して、係止片部44bの先端44baを、開口部材49の係止部51の係止爪部51aの後方側にずらして、係止爪部51aの係止状態を解除する(
図5のA,B参照)。その結果、開口部材49が、ばね55の付勢力を受けて、軸56を回転中心として、時計回り方向に回転し、開口ピン部53の先端53aを、ガスボンベ30の封止板32bに挿入させて、封止板32bに開口32cを形成する。そのため、ガスボンベ30に封入されていた膨張用ガスGが、開口32cを経て、吐出口部32から開口機構37の流出口部58に吐出され、ついで、流出口部58の流出口60からガス供給管66を経て、エアバッグ62の本体63内に流入して、エアバッグ62が、カバー71の端部72,73相互を結合させていた面ファスナ76の係合を解除させて、ヘッドレスト本体17の前面17a側で膨張することとなる(
図3参照)。
【0037】
以上のように、実施形態の乗員保護装置20では、エアバッグ62が、車両の衝突時のタイミングに応じて、的確に膨張用ガスGを流入させて、ヘッドレスト16の前面17a側で膨張する。そのため、乗員Mの頭部Hは、後面衝突直後に、前方移動した後、反動によって後方移動しても、膨張したエアバッグ62により、円滑に、受け止められて、保護される(
図3参照)。
【0038】
したがって、実施形態の乗員保護装置20では、車両の衝突時に、円滑に、膨張させたエアバッグ62によって、乗員Mの頭部Hを受け止めて保護することができる。
【0039】
また、実施形態の乗員保護装置20では、ヘッドレスト16が、乗員Mの頭部Hの後面側を受止可能として、前面17a側にエアバッグ62を配置させたヘッドレスト本体17と、ヘッドレスト本体17の下面17bから下方へ突出して、背もたれ部12の上面14に挿入されて保持される脚部18L,18Rと、を備えて構成されている。そして、ガスボンベ30と開口機構37とが、ヘッドレスト本体17の下面17bと背もたれ部12の上面14との間に配設されるケース22に、収納され、ケース22が、ヘッドレスト16の脚部18L,18Rを挿通させる挿通孔26,26を備え、挿通孔26,26に脚部18L,18Rを挿通させて、ヘッドレスト本体17と背もたれ部12との間に配設されている。
【0040】
そのため、実施形態では、乗員保護装置20の主要な構成部品であるガスボンベ30と開口機構37とが、ケース22に収納されており、ケース22をヘッドレスト本体17と背もたれ部12との間に取り付けるとともに、ガス供給管66を介して開口機構37の流出口60と連通される流入口64を有したエアバッグ62を、ヘッドレスト本体17の前面17a側に配置させれば、簡便に、乗員保護装置20をシート10のヘッドレスト16に取り付けることができる。その結果、実施形態の乗員保護装置20では、既存の車両のシート10に対し、簡便に、後付けするように、取り付けることができる。
【0041】
また、実施形態では、衝突を検知するセンサ39が、錘40を利用した機械式の衝突検知センサ39としている。
【0042】
そのため、実施形態では、電池等の電源を別途必要とするような電気式の衝突検知センサを使用せずに済み、乗員保護装置20を簡便な構成とすることができる。
【0043】
なお、実施形態では、錘40を利用した衝突検知センサ39を利用したが、電池等を利用する加速度センサ等を利用した衝突検知センサを、本発明に利用してもよい。
【0044】
また、ガスボンベ30を開口させる機構も、信管を利用して、封止板32bを開口させる構成としてもよい。この場合、電気的に信管を作動させたり、あるいは、機械的に、ばねを利用した撃鉄等を差し込んで、内部の火薬を着火させるように作動される信管、を利用してもよい。
【符号の説明】
【0045】
10…シート、12…背もたれ部、13…上端、14…上面、16…ヘッドレスト、17…ヘッドレスト本体、17a…前面、17b…下面、18(L,R)…脚部、
20…乗員保護装置、22…ケース、26…(脚部用)挿通孔、30…ガスボンベ、32b…封止板、32c…開口、37…開口機構、39…衝突検知センサ、40…錘、49…開口部材、53…開口ピン部、55…(駆動源・付勢手段)ばね、58…流出口部、60…流出口、62…エアバッグ、64…流入口、66…ガス供給管、
G…膨張用ガス、M…乗員、H…頭部。