(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151319
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】分離装置、分離方法
(51)【国際特許分類】
B03B 5/00 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
B03B5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021054338
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】507036050
【氏名又は名称】住友重機械エンバイロメント株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504182314
【氏名又は名称】トータルケア・システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】柄澤 俊康
(72)【発明者】
【氏名】安村 宜之
(72)【発明者】
【氏名】長 武志
(72)【発明者】
【氏名】山田 陽三
【テーマコード(参考)】
4D071
【Fターム(参考)】
4D071AA02
4D071AB03
4D071AB04
4D071AB23
4D071DA20
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、脱水装置の脱水作業が完了する前に固体残渣を分離槽から抜出すことで作業効率を向上させた分離装置を提供する。
【解決手段】上記課題を解決するために、分離槽と、分離槽に残った固体残渣を液体とともに排出する排出部と、排出された固体残渣および液体を受け入れる受入槽と、を備え、受入槽は、排出された固体残渣および液体を収容することを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離槽と、
前記分離槽に残った固体残渣を液体とともに排出する排出部と、
排出された固体残渣および液体を受け入れる受入槽と、を備え、
前記受入槽は、排出された固体残渣および液体を収容することを特徴とする、分離装置。
【請求項2】
前記分離槽は、多孔板によって固体残渣を分離することを特徴とする、請求項1に記載の分離装置。
【請求項3】
前記受入槽は、複数回排出された固体残渣および液体を収容することを特徴とする、請求項1又は2に記載の分離装置。
【請求項4】
前記受入槽又は前記受入槽の後段の処理において、固体残渣と液体とを分離する処理を行うことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の分離装置。
【請求項5】
分離槽に残った固体残渣と液体を排出する工程と、
排出された固体残渣および液体を受入槽に受け入れる工程と、を備え、
前記受入槽は、排出された固体残渣および液体を収容することを特徴とする、分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体残渣の構成素材の分離回収における分離装置及び分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、紙おむつの出荷量は増加しているが、現状では使用済み紙おむつのほとんどが焼却処分されており、自治体の焼却負担が増している。また、紙おむつの構成素材である、パルプ、プラスチック等は再生可能であるにもかかわらず、焼却することにより貴重な有効資源を浪費してしまうだけでなく、焼却時に発生するCO2等の温室効果ガスが大気に開放されることで重大な環境問題となっている。
【0003】
特許文献1には、使用済み紙おむつを破断して浸水し、紙おむつの主要構成素材である、不織布等のビニール素材とパルプ素材とポリマー素材ごとに分離回収することが記載されており、ビニール素材を回収、脱水することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載される使用済み紙おむつの再利用システムは、ビニール不織布素材等のプラスチックを脱水設備で脱水処理を行うにあたり、ビニール不織布素材等のプラスチックを順次分離槽から抜出す際、脱水設備の能力に応じた量だけを抜出すことになる。そのため、脱水機の脱水作業が完了するまで分離槽からのビニール不織布素材等のプラスチックである固体残渣を抜出作業を行うことができず、固体残渣の抜出作業が滞ることになり、システム全体の効率が低下することとなる。
【0006】
そこで、本発明の課題は、脱水装置の脱水作業が完了する前に固体残渣を分離槽から抜出すことで作業効率を向上させた分離装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題について、鋭意検討した結果、分離槽から排出された固体残渣および液体を受け入れる受入槽を分離装置に設けることで、脱水装置の脱水作業の完了を待たずに分離槽から体残渣および液体を抜出すことが可能となることを見出して、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の分離装置及び分離方法である。
【0008】
上記課題を解決するための本発明の分離装置は、分離槽と、分離槽に残った固体残渣を液体とともに排出する排出部と、排出された固体残渣および液体を受け入れる受入槽と、を備え、受入槽は、排出された固体残渣および液体を収容することを特徴とする。
この分離装置によれば、排出された固体残渣および液体を受け入れる受入槽が設けられていることから、脱水装置の脱水作業が完了する前に固体残渣を分離槽から抜出すことが可能となり、脱水作業が完了する前に分離槽の次の作業を開始できることで、脱水機の完了までの待機時間を減少させ、作業を効率化できる効果がある。
【0009】
本発明の分離装置の一実施態様としては、分離槽は、多孔板によって固体残渣を分離することを特徴とする。
この特徴によれば、液体に分散する小さな固体と、分離槽内に固体残渣として残る大きな固体とを、短時間で簡単に分離することができる。
【0010】
本発明の分離装置の一実施態様としては、受入槽は、複数回排出された固体残渣および液体を収容することを特徴とする。
この分離装置によれば、複数回排出された固体残渣および液体を収容できることから、より多くの固体残渣と液体を貯留しておくことが可能となり、脱水機の完了までの待機時間を減少させ、より作業を効率化できる効果がある。
【0011】
本発明の分離装置の一実施態様としては、受入槽又は受入槽の後段の処理において、固体残渣と液体とを分離する処理を行うことを特徴とする。
この特徴によれば、受入槽に受け入れられた固体残渣と液体とを分離でき、固体残渣を分離槽から抜出すこと及び固体残渣の脱水作業を効率よく行うことができ、分離装置の処理を効率よく行うことができる。
【0012】
上記課題を解決するための本発明の分離方法は、分離槽に残った固体残渣と液体を排出する工程と、排出された固体残渣および液体を受入槽に受け入れる工程と、を備え、前記受入槽は、排出された固体残渣および液体を収容することを特徴とする。
この分離方法によれば、排出された固体残渣および液体を受け入れる受入槽が設けられていることから、脱水装置の脱水作業が完了する前に固体残渣を分離槽から抜出すことが可能となり、脱水作業が完了する前に分離槽の次の作業を開始できることで、脱水機の完了までの待機時間を減少させ、作業を効率化できる効果がある。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、脱水装置の脱水作業が完了する前に固体残渣を分離槽から抜出すことで作業効率を向上させた分離装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の分離装置を含む衛生用品処理システムを示す概要図である。
【
図2】本発明の実施の態様1の分離装置の概略図である。
【
図3】本発明の実施の態様1分離装置における分離槽の引き抜き作業およびプラスチック排出作業の水位変化を表す図である。
【
図4】従来の分離装置における分離槽の引き抜き作業およびプラスチック排出作業の水位変化を表す図である。
【
図5】本発明の実施の態様2の分離装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る分離装置の実施態様を詳細に説明する。また、本発明に係る分離方法の説明については、本発明に係る分離装置の動作に係る説明に置き換えるものとする。
なお、実施態様に記載する分離装置及び分離方法については、本発明に係る分離装置及び分離方法を説明するために例示したに過ぎず、これに限定されるものではない。
【0016】
本発明の分離装置は、2種以上の固体を含む被処理物に分散液を混合し、2種以上の固体を大きさや比重などにより分離するための分離装置である。例えば、使用済み紙おむつ等の使用済みの衛生用品を破砕した破砕物(被処理物)から、ビニール不織布素材等のプラスチックと、吸水ポリマー(SAP)やパルプを分離するための装置である。
より具体的には、衛生用品を破砕した破砕物(被処理物)と分散液を分離槽内で混合し、次に、SAPやパルプが分散したパルプ・SAP分離液を分離槽外に排出することにより、分離槽内に固体残渣として残るビニール不織布素材等のプラスチックとSAPやパルプを分離する分離装置である。さらに、本発明の分離装置は、分離槽内に残った固体残渣に対して再度分散液を投入し、固体残渣を液体と共に排出する分離装置である。
【0017】
まずは、
図1を参照し、本発明の分離装置(第1の分離装置4)を備えた衛生用品処理システム1の全体について説明する。
【0018】
[衛生用品処理システム]
衛生用品処理システム1は、使用済みの衛生用品2を構成する素材を分離回収するシステムである。衛生用品処理システム1は、破砕機3(破砕工程)と、第1の分離装置4(第1の分離工程)と、第2の分離装置5(第2の分離工程)と、プラスチック脱水機6(プラスチック脱水工程)と、パルプ洗浄槽・脱水機7(パルプ洗浄・脱水工程)とSAP洗浄槽・脱水機8(SAP洗浄・脱水工程)とを備える。
【0019】
〈破砕機(破砕工程)〉
破砕機3は、使用済み衛生用品2を裁断・破砕する装置である。破砕機3としては、衛生用品2を裁断・破砕できるものであれば特に限定されず、一軸型破砕機や二軸型破砕機とよばれる破砕機を使用することが可能である。なお、使用済み衛生用品2が袋に詰められて回収される場合においては、袋を破く破袋装置と呼ばれる装置により、袋から使用済み衛生用品が取り出された後に破砕機3で破砕される場合もある。
【0020】
〈第1の分離装置(第1の分離工程)〉
第1の分離装置4は、破砕機3により破砕された衛生用品2のプラスチックと、パルプ及びSAPと、を分離する装置である。
第1の分離装置4としては、破砕された衛生用品2を攪拌、分離できれば装置や処理工程は限定されないが、例えば、パルパーと呼ばれる装置が例示でき、破砕された衛生用品2と分散液とを投入して攪拌が行われ、プラスチック、パルプ、SAP及び分散液とが混合され、被処理液(内容物)とされる。混合後、パルパーに設けられたスクリーンのような分離手段により、分離手段を通過しない不織布のようなプラスチック残渣(固体残渣)と、分離手段を通過したパルプ及びSAPを含む分離液(パルプ・SAP分離液)と、に分離される。なお、パルパーによる混合前又は混合中にSAPを脱水し、分離しやすくするため、塩化カルシウム等の脱水剤が添加される。
【0021】
〈第2の分離装置(第2の分離工程)〉
第2の分離装置5は、第1の分離装置4(本発明の分離装置)で分離したパルプ・SAP分離液からパルプとSAPを分離する装置である。
第2の分離装置5としては、パルプとSAPとを分離することができれば、装置の種類や処理工程は特に限定されないが、例えば、サイクロン分離機やドラムスクリーンなどのスクリーン分離が行われて、パルプとSAPとに分離される。
なお、第2の分離装置5の分離では、第1の分離装置4で分離したパルプ・SAP分離液の粘度が高いため、そのままの状態では分離しにくい状態である。したがって、分離しやすい濃度に濃度調整槽で、分離液の濃度が調整された後、分離処理が行われてもよい。
【0022】
〈プラスチック脱水機(プラスチック脱水工程)〉
プラスチック脱水機6は、第1の分離装置4からプラスチック残渣と共に排出された液体を分離し、プラスチック残渣を分離回収する。
プラスチック残渣を第1の分離装置4から排出する際に、分散液で洗い流されるように排出されることからプラスチック残渣は、固体残渣と液体が混合された状態で排出される。この状態からプラスチック残渣を脱水できるものであれば、脱水機の種類や処理工程は、特に限定されない。分離されたプラスチック残渣は、回収プラスチックとなる。なお、明細書内では、脱水装置と表現する場合もある。
【0023】
〈パルプ洗浄槽・脱水機(パルプ洗浄・脱水工程)〉
パルプ洗浄槽・脱水機7は、第2の分離装置5で分離されたパルプを洗浄、脱水してパルプを回収する。第2の分離装置5から分離されて排出されたパルプを洗浄、脱水できる装置であれば、装置の種類や処理工程は特に限定されない。洗浄脱水されたパルプは、回収パルプとなる。
【0024】
〈SAP洗浄槽・脱水機(SAP洗浄・脱水工程)〉
SAP洗浄槽・脱水機8は、第2の分離装置5で分離されたSAPを洗浄、脱水してSAPを回収する。第2の分離装置5から分離されて排出されたSAPを洗浄、脱水できる装置であれば、装置の種類や処理工程は特に限定されない。洗浄脱水されたSAPは、回収SAPとなる。
【0025】
[第1の実施態様]
〔分離装置〕
図2を参照し、本発明の第1の実施の態様の分離装置10(第1の分離装置4)について説明する。本発明の分離装置10は、被処理物と分散液の混合物からなる内容物17を分離する装置である。被処理物は、おむつ等の衛生用品に使用されているプラスチックとパルプとSAPとが該当し、内容物17のうち、パルプ及びSAPと液体とが引き抜かれて、プラスチックが固体残渣として分離装置10の内部に残る状態となる。
分離装置10は、分離槽11と分離手段19と攪拌機12と引抜部13とプラスチック排出部22と受入槽23と給水部14と制御部15とを備える。
【0026】
<分離槽>
分離槽11は、破砕機(破砕工程)で破砕された使用済み紙おむつを、プラスチックとパルプと吸水ポリマー(SAP)と後述する給水部14から供給される分散液16(液体)とを貯留する。
使用済み紙おむつは、破砕機によってパルプ、SAP、テープや不織布や防水シート等のプラスチックが破砕された固体(被処理物)として、分離槽11の衛生用品投入部から投入される。さらに、分離槽11には、給水部14から分散液16が供給され、後述する攪拌機12により分離槽11内で攪拌され、破砕されたパルプ、SAPやプラスチックが分散液16に分散し、被処理物と液体の混合物からなる内容物17となる。
【0027】
分離槽11は、内容物17を貯留することができるものであれば、大きさや材質は特に限定されない。分離槽11は、分離槽11内の内容物17からプラスチックを残し、固体であるパルプ及びSAPを含有する液体を分離液18として、後述する引抜部13が引き抜くことができるように、分離手段19が設けられる。
また、分離槽11には、水位センサー21が設けられており、内容物17の液位を測定する。この液位の測定結果は、制御部15が制御する給水部14の制御に使用される。
【0028】
<分離手段>
分離手段19は、内容物17のプラスチックが通過できずかつパルプ及びSAPが分散液16と共に通過するような構造のものが使用される。例えば、分離手段19としては、板体に複数の貫通孔が設けられた多孔板を用いることができる。分離手段19である多孔板が分離槽11の底部に設けられ、内容物17のうち、固体であるパルプ及びSAPを含有する分離液18が引抜部13によって引き抜かれ、プラスチック残渣と分離される。分離手段19として多孔板を用いることにより、分離槽11の内部の他の固体(パルプ及びSAP)と固体残渣(プラスチック)とを分離することができ、効率のよく分離作業を行うことができる効果がある。
なお、分離手段は、多孔板を用いてプラスチックとパルプ及びSAPの大きさにより分離する手段を例示したが、比重により分離する手段や、遠心力を利用して分離する手段を用いてもよい。
【0029】
<攪拌機>
攪拌機12は、分離槽11内に設けられており、被処理物と液体である内容物17を攪拌し、固定であるプラスチックとパルプとSAPとを分散液16中に分散させる。攪拌機12は、内容物17を攪拌できるものであれば特に限定されない。攪拌機12は、駆動部により攪拌翼を回転させ、内容物17の攪拌が分離槽11内で行われる。攪拌機12で内容物17が撹拌されることにより、分散液16中にプラスチックとパルプとSAPが分散された状態となる。
【0030】
<引抜部>
引抜部13は、攪拌機12による攪拌が一定時間行われた後、分離槽11から分離液18を引き抜くことで内容物17からパルプとSAPと分散液16とが分離槽11から外部に分離される。
引抜部13はポンプのような引抜装置が用いられ、制御部15により、内容物17を引き抜いたり、引き抜きを停止したりする制御が行われる。
【0031】
<プラスチック排出部>
プラスチック排出部22は、内容物17からパルプ及びSAPを含有する分離液18を引抜部13が引き抜いた後に、分離槽11の内部に残されたプラスチック残渣である固体残渣を液体と共に、分離槽11の外部へ排出する。分離槽11から排出された固体残渣と分散液16(液体)との混合液は、固体残渣液20に該当する。プラスチック排出部22は、分離槽11及び受入槽23と配管でつながっており、例えば、バルブや電磁弁により、分離槽11内から内容物17が流出しないように制御部15で制御される。プラスチック分離作業が開始されるとバルブが開き、固体残渣液20が受入槽23に送られ、プラスチック分離作業が終了するとバルブが閉じた状態となる。なお、人によってバルブが開閉操作されてもよい。
【0032】
<受入槽>
受入槽23は、分離槽11の内部に残された固体残渣が分散液16で洗い流されて分離槽11の外部へ排出された際に、固体残渣液20を貯留するための槽である。受入槽23は、固体残渣液20を貯留することができれば、特に材質や構造は限定されることはない。しかしながら、分離装置10で行われる1回の衛生用品の処理において、固体残渣を分散液16で洗い流すプラスチック排出作業が複数回行われる場合、プラスチック排出作業の全回数の固体残渣液20の全量が収容できる容量の大きさの槽であることが最も望ましい。この容量の大きさの槽であれば、全回数のプラスチック排出作業の固体残渣液20を受け入れることができることから、脱水装置の処理性能にあわせてプラスチック排出作業を行う必要がない。よって、脱水装置の作業が完了するまで分離槽11内で固体残渣液20を待機させることなく、分離槽11からプラスチック排出作業を完了でき、次(2回目以降)の衛生用品の分離処理を行うことができる。
【0033】
また、プラスチック排出作業が複数回行われる場合において、受入槽23の大きさは、複数回行われるプラスチック排出作業のうちの1回分以上の固体残渣液20が収容できる容量の槽でもよい。かかる場合であっても、脱水装置の作業が完了するまで固体残渣液20を分離槽11の内部で待機させることなく、分離槽11からプラスチック排出作業を完了でき、次(2回目以降)の衛生用品の分離処理を行うことができる。
【0034】
なお、プラスチック排出作業とは、固体残渣が残った状態で、分離槽11の内部に分散液16を一定液位まで貯留した後、プラスチック排出部22が分離槽11の最低液位まで固体残渣液20を受入槽23へ排出する作業をいう。この液位の制御および分散液16の給水排出作業は、制御部15が給水部14を制御することにより行われる。よって、分離槽11から排出された固体残渣液20は、分散液16中に固体残渣が分散した状態である。
【0035】
また、受入槽23の後段の処理において、固体残渣と液体とを分離する処理が行われる。固体残渣と液体と(固体残渣液20)を分離する処理としては、脱水装置(
図1のプラスチック脱水機6)が例示でき、脱水装置は、受入槽23の固体残渣から脱水する装置やその他の手段であれば特に限定されない。プラスチック排出作業を行うと、液体中に固体残渣が分散された状態となることから、受入槽23に受け入れられた固体残渣液20を、受入槽23の後段の分離処理(脱水装置)で行うようにすることで、脱水装置が完了するまで分離槽11に固体残渣液20を貯留する必要がなく、次の処理(次の衛生用品の処理)ができる。つまり、固体残渣を分離槽11から抜出すこと及び固体残渣の脱水作業を効率よく行うことができ、分離装置10の処理を効率よく行うことができる効果がある。
【0036】
<給水部>
給水部14は分離槽11内に分散液16を供給する。給水部14は、制御部15により分離槽11に分散液16を供給したり、分散液16の供給を停止したりする。これらの制御は、分離槽11に設けられた水位センサー21により、内容物17の液位を測定し、その結果に基づいて制御部15が分散液16の給水、止水を制御する。
また、給水部14は、分離液18を引き抜いた後の分離手段19の上に残された固体残渣を液体と共にプラスチック排出部22から分離槽11の外部へ排出する際の分散液16の供給をしたり、供給を停止したりする制御が制御部15によって行われる。
【0037】
<制御部>
制御部15は引抜部13とプラスチック排出部22と給水部14を制御し、引抜部13の引き抜き作業とプラスチック排出作業の一連を制御する。
制御部15には、あらかじめ引抜部13が分離液18を引き抜く引抜量が設定されており、引き抜き作業が開始された際に引抜部13を作動させ、引抜量を引き抜く制御を行う。
引抜量は、引抜部13のポンプの稼働時間としてもよく、分離液18を引き抜く量としてもよい。
制御部15は、引抜部13のポンプを動作させたり停止させたりして分離液18を引き抜く作業を繰り返す制御を行う。なお、制御部15は、引抜部13が分離液18を引き抜いた後、分離槽11の内部の液位が低い状態の場合、給水部14を制御して、定められた液位まで分散液16を分離槽11の内部に供給する。その後、制御部15は再度引抜部13を作動させ、引抜量を引き抜く制御をおこなうことで引き抜き作業が繰り返される。
【0038】
なお、引抜量は、分離装置10の構造や引抜部13のポンプの性能、衛生用品投入部から投入される被処理物の種類や量によっても異なるため、それらの条件に合わせて適宜設定される。
【0039】
また、制御部15は、引抜部13の引き抜き作業の終了後に行われる、プラスチック排出工程の制御を行う。つまり、固体残渣と液体を排出するプラスチック排出作業の制御も行う。プラスチック排出作業は、プラスチック排出部22が受入槽23に固体残渣液20を送る状態となってから一定時間後にプラスチック排出作業が完了したと判断したり、水位センサーの測定結果に基づいてプラスチック排出作業の開始及び完了を判断したりして制御される。
制御部15は、分離槽11に設けられた水位センサー21の測定結果に基づいて給水部14を制御し、分離槽11の内部の液位を制御する。
給水部14は、破砕された使用済み紙おむつが、衛生用品投入部より分離槽11に投入された後又は投入される前に分散液16の供給を行う。また、内容物17が引き抜かれて液位が減少した際に分散液16を供給して、分離槽11内部の液位を上昇させる。水位センサー21が最大液位である給水停止の位置を測定した場合、に給水部14は制御部15により、給水が停止される。
また、給水部14は、プラスチック排出作業により液位が減少した際に分散液16を供給して、分離槽11の内部の液位をあらかじめ定められた液位まで上昇させる。
【0040】
[分離装置の動作について]
次に
図3を参照し、本発明の分離装置10の動作、特にプラスチック排出作業と受入槽について説明する。なお、下記の動作の説明は、一例であり、分離液18の引き抜き作業を4回、引抜量をポンプの稼働時間、プラスチック排出作業を3回の場合で説明する。
【0041】
まず、1回目の衛生用品受入がされる。被処理物である破砕された衛生用品が分離槽11の衛生用品投入部から一定量投入される。その後、給水部14から分散液16が最大液位まで供給され、攪拌機12が被処理物と分散液16とを攪拌する。
分離槽11内で被処理物と分散液16の混合物からなる内容物17を、一定時間攪拌し、1回目目の引き抜き作業が開始される。引き抜き作業は、制御部15にあらかじめ設定された引抜量に従って引抜部13のポンプの稼働時間を制御する。
【0042】
稼働時間が経過して引抜部13が停止することで、1回目の引き抜き作業が完了する。
次に、制御部15は給水部14を制御し、分離槽11への分散液16の供給を制御する。分散液16が分離槽11内に供給され、内容物17の液位が、最大液位となった際に、分散液16の供給を停止する制御を制御部15が行う。
【0043】
次に制御部15は、2回目の引き抜き作業を開始する。その後、1回目の引き抜き作業が完了するまでと同じ制御が行われ、あらかじめ定められた回数である4回目まで引き抜き作業が繰り返される。
【0044】
4回目の引き抜き作業が完了した後、プラスチック排出工程が開始される。
まず、制御部15の制御により給水部14から分散液16が供給され、1回目のプラスチック排出作業に必要な分散液16が分離槽11の内部に貯留された状態となる。その後、1回目のプラスチック排出作業が開始され、分離槽11の内部に残った固体残渣は液体(分散液16)と共に受入槽23に排出される。
【0045】
そして、制御部15は、給水部14を制御し、2回目のプラスチック排出作業が開始される液位まで、分離槽11の内部に分散液16を供給する。
プラスチック排出部22から排出された固体残渣液20は、受入槽23に送られる。受入槽23の固体残渣液20は、受入槽23の後段の脱水装置に送られて、固体残渣の脱水処理が開始される。
【0046】
次に、2回目のプラスチック排出作業の液位に分離槽11の液位が到達すると、プラスチック排出部22が制御部15により制御され、2回目のプラスチック排出作業が開始される。
2回目のプラスチック排出作業で排出された固体残渣液20は、受入槽23に貯留される。この時、受入槽23の後段の処理である脱水装置は、1回目の固体残渣の脱水処理が完了していない状態である。
【0047】
図4に示すように、従来の受入槽23のない分離装置の場合、1回目のプラスチック排出処理の後、固体残渣の脱水処理が行われ、その脱水処理が完了するまで、2回目のプラスチック排出作業を行うことができない状態となる。つまり、脱水装置の処理完了までの脱水待機時間24が発生し、プラスチック排出工程に時間がかかる。
【0048】
一方、
図3に示すように、本発明の分離装置10では、分離槽11と脱水装置との間に受入槽23が設けられていることから、2回目のプラスチック排出作業で排出された固体残渣液20を受入槽23で受け入れて貯留することができる。よって、1回目のプラスチック排出作業の固体残渣の脱水処理が完了していない場合でも、3回目のプラスチック排出作業を開始することができる。したがって、脱水装置の脱水作業が完了する前に固体残渣を分離槽11から抜出すことができ、プラスチック排出工程の時間を従来よりも短縮できることから、作業効率を向上させた分離装置10とすることができる効果がある。
【0049】
そして、3回目のプラスチック排出作業が行われ、その排出作業で排出された固体残渣液20が受入槽23に受け入れられ、プラスチック排出工程が終了する。
固体残渣の排出作業が完了していることから、分離槽11は2回目の衛生用品の受け入れが可能となり、次のプラスチックとパルプとSAPと分散液16体とを攪拌することができる。
【0050】
そして、1回目のプラスチック排出作業の固体残渣液20の脱水作業が完了した後、受入槽23に貯留された固体残渣液20が脱水処理され、受入槽23に貯留された固体残渣液20がなくなるまで脱水処理が行われる。
以上のように、本発明の分離装置10は、従来の分離装置の分離作業と比較して、固体残渣の脱水作業が完了するまで待機する必要がないことから、分離槽11の内部の固体残渣の排出作業を連続して滞りなく行うことができ、効率のよい分離作業を行うことができる。
【0051】
本実施の態様では、プラスチック分離作業を複数回行っている場合を例示したが、プラスチック排出作業は、1回で処理を完了させてもよい。1回のプラスチック排出作業で排出された固体残渣液20の量が、1度の脱水装置の処理で処理できない量の場合、受入槽23が設けられていることで、残りの固体残渣液20を受入槽23に貯留しておくことができ、脱水装置の処理が完了するまで分離槽11に固体残渣液20を溜めておく状態とならないことから、分離槽11は、次の作業を行える。よって、脱水装置の処理が完了するまでの待機時間を生じさせることはなく、作業効率を向上させた分離装置10することができる。
【0052】
[第2の実施態様]
図5を参照し、第2の実施態様について説明する。本実施態様の分離装置101は、受入槽231を有する点が、第1の実施態様と異なる。なお、第1の実施態様の構成と同じものについては、同一の符号を付し、説明を省略する。
第2の実施態様では、受入槽231が、固体残渣と液体とを分離する処理を行う機能を有する点が第1の実施態様と異なる。
【0053】
受入槽231に受け入れられた固体残渣液20は、受入槽231において、固体残渣と液体とを分離する処理が行われることにより、液体の一部が分離された、固体残渣と残部液体とになる。それらをさらに分離する処理(脱水装置による脱水処理)が行われる。
受入槽231で行われる、固体残渣と液体とを分離する処理としては、分離できる手段であれば特に限定されないが、例えば、沈降分離が例示できる。
以上のように、受入槽231が固体残渣液20を受け入れることにより、分離槽11が、次の処理(次の衛生用品の処理)を行うことができる。さらに、受入槽231において、固体残渣液20から液体の一部を分離することにより、分離後の固体残渣と残部液体とを分離する処理(脱水装置)の処理時間を短くできる。つまり、固体残渣を分離槽11から抜出すこと及び固体残渣の脱水作業を効率よく行うことができ、分離装置101の処理を効率よく行うことができる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の分離装置は、紙おむつのような衛生用品に適用できる。また、衛生用品以外の固体物である固体残渣体を液体で分離槽から排出する分離装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1…衛生用品処理システム、2…衛生用品、3…破砕機、4…第1の分離装置、5…第2の分離装置、6…プラスチック脱水機、7…パルプ洗浄槽・脱水機、8…SAP洗浄槽・脱水機、9…欠番、10,101…分離装置、11…分離槽、12…攪拌機、13…引抜部、14…給水部、15…制御部、16…分散液、17…内容物、18…分離液、19…分離手段、20…固体残渣液、21…水位センサー、22…プラスチック排出部、23,231…受入槽、24…脱水待機時間。