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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022015133
(43)【公開日】2022-01-21
(54)【発明の名称】コンクリートの充填監視方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/02 20060101AFI20220114BHJP
   G02B 23/24 20060101ALI20220114BHJP
   E04C 3/36 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
E04G21/02 103Z
G02B23/24 A
E04C3/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020117795
(22)【出願日】2020-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】淺岡 茂
(72)【発明者】
【氏名】光廣 文彦
(72)【発明者】
【氏名】平田 康夫
【テーマコード(参考)】
2E163
2E172
2H040
【Fターム(参考)】
2E163FA02
2E163FF17
2E172AA05
2E172DB03
2E172DE02
2E172HA03
2H040AA01
2H040DA11
2H040GA00
(57)【要約】
【課題】傾斜した鋼管柱内のコンクリートの充填状況を容易に監視できるコンクリートの充填監視方法を提供する。
【解決手段】1層又は複数層に亘る傾斜を有する鋼管柱1内にコンクリートを圧入して充填する際に、鋼管柱1内を上昇するコンクリートの天端を、鋼管柱1の側面の蒸気抜き孔11から挿入され、鋼管柱1内を下方に延びる内視鏡6の挿入部62の先端の撮影部63により撮影する。ここで、蒸気抜き孔11には可撓性を有するガイド管5が通され、ガイド管5は鋼管柱1内のダイアフラム3、4を貫通するように配置される。内視鏡6の挿入部62は、このガイド管5の内部に通される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1層又は複数層に亘る傾斜を有する鋼管柱内にコンクリートを圧入して充填する際のコンクリートの充填監視方法であって、
前記鋼管柱内を上昇するコンクリートの天端を、前記鋼管柱の側面の孔から挿入され、前記鋼管柱内を下方に延びる内視鏡の挿入部の先端の撮影部により撮影することを特徴とするコンクリートの充填監視方法。
【請求項2】
可撓性を有するガイド管が、前記孔に通されて前記鋼管柱内を下方に延び、
前記挿入部が、前記ガイド管の内部に通されて前記鋼管柱内に挿入されることを特徴とする請求項1記載のコンクリートの充填監視方法。
【請求項3】
前記ガイド管がコイル状であることを特徴とする請求項2記載のコンクリートの充填監視方法。
【請求項4】
前記鋼管柱の側面の孔が、各層に設けられた蒸気抜き孔であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のコンクリートの充填監視方法。
【請求項5】
異なる層に設置される複数の前記内視鏡が用いられ、
コンクリートの天端の上昇に応じて、下段の前記内視鏡を上段の前記内視鏡の設置層より上の層に盛り替える作業を繰り返すことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のコンクリートの充填監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートの充填監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CFT(Concrete-Filled Steel Tube;コンクリート充填鋼管)造は、コンクリートを充填した円形または角形の鋼管柱に、鉄骨造の梁などを組み合わせた構造をいう。CFT造では、鋼管柱にコンクリートを充填することにより、鋼構造とコンクリート造の両素材が有する特性以上の相乗効果を発揮する。
【0003】
鋼管柱内にコンクリートを充填する方法として圧入工法がある。圧入工法は、コンクリートポンプ車(又は定置式のコンクリートポンプ)から延びる配管を鋼管柱に設けた圧入口に接続し、この配管を介して鋼管柱内にコンクリートを圧入することで、コンクリートを上方へと打ち上げてゆくものである。
【0004】
コンクリートの充填時には、その充填状況を監視し、鋼管柱内にコンクリートが十分に充填されているかを確認することが重要である。例えば特許文献1、2には、鋼管柱の上方から挿入部により鋼管柱内にカメラを吊り下げ、このカメラでコンクリートの天端を撮影し、コンクリートの充填状況を監視することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-196019号公報
【特許文献2】特開2016-30890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
鋼管柱を斜め柱とする場合、特許文献1のように単に鋼管柱の上方から鋼管柱内にカメラを吊り下げると、吊り下げたカメラが鋼管柱の傾斜した内面に接触し、当該内面に沿って下降する。そのため、鋼管柱の管内で内面から内側に突出するダイアフラム等の障害物にカメラが接触してそれ以上の下降ができず、その下方のコンクリートの充填状況を監視できないケースが生じる。
【0007】
特許文献2では、このような課題を解決するため、鋼管柱の側面の蒸気抜き孔から挿入したガイド部材を用いてケーブルを引き寄せ、ケーブル先端のカメラを鋼管柱の内面から離隔させることが記載されている。しかしながら、ケーブルを引き寄せるために特殊なガイド部材を必要とし、またその操作も難しかった。
【0008】
本発明は前述した問題点に鑑みてなされたものであり、傾斜した鋼管柱内のコンクリートの充填状況を容易に監視できるコンクリートの充填監視方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するための本発明は、1層又は複数層に亘る傾斜を有する鋼管柱内にコンクリートを圧入して充填する際のコンクリートの充填監視方法であって、前記鋼管柱内を上昇するコンクリートの天端を、前記鋼管柱の側面の孔から挿入され、前記鋼管柱内を下方に延びる内視鏡の挿入部の先端の撮影部により撮影することを特徴とするコンクリートの充填監視方法である。
【0010】
本発明では、挿入部の先端に撮影部を設けた工業用の内視鏡を用い、その挿入部を鋼管柱の側面の孔から鋼管柱内に挿入することにより、ダイアフラム等の障害物を避けて挿入部を下方に延ばすことが容易になり、傾斜した鋼管柱内のコンクリートの充填状況を容易に監視できる。また内視鏡の挿入部は細径なので、鋼管柱の蒸気抜き孔など小径の孔から鋼管柱内に容易に挿入できる。
【0011】
可撓性を有するガイド管が、前記孔に通されて前記鋼管柱内を下方に延び、前記挿入部が、前記ガイド管の内部に通されて前記鋼管柱内に挿入されることが望ましい。
上記のガイド管を用いることにより、内視鏡の挿入部の挿入や方向制御が容易になり、これらの作業に要する時間を短縮できる。
【0012】
前記ガイド管は、例えばコイル状である。
これにより、可撓性を有するガイド管を好適に実現できる。
【0013】
前記鋼管柱の側面の孔が、各層に設けられた蒸気抜き孔であることも望ましい。
鋼管柱の蒸気抜き孔を内視鏡の挿入に用いることで、内視鏡挿入用の孔を鋼管柱に別途設ける必要がなくなる。また蒸気抜き孔は建物の各層に対応する位置で鋼管柱に存在するので、内視鏡の設置層が限定されることもない。
【0014】
異なる層に設置される複数の前記内視鏡が用いられ、コンクリートの天端の上昇に応じて、下段の前記内視鏡を上段の前記内視鏡の設置層より上の層に盛り替える作業を繰り返すことが望ましい。
内視鏡の挿入部の長さには限界があるが、上記のように内視鏡を盛り替えて監視を継続することにより、多層に亘ってコンクリートを充填する場合にその充填状況を監視しつづけることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、傾斜した鋼管柱内のコンクリートの充填状況を容易に監視できるコンクリートの充填監視方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】鋼管柱1を示す図。
図2】内視鏡6の設置状況を示す図。
図3】ガイド管5を示す図。
図4】コンクリート7の充填監視方法について説明する図。
図5】コンクリート7の充填監視方法について説明する図。
図6】内視鏡6の設置状況を示す図。
図7】ガイド管5の挿入について示す図。
図8】ガイド管5の挿入について示す図。
図9】ガイド管5a、5bを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0018】
(1.鋼管柱1)
本発明の実施形態に係る充填監視方法は、CFT造の施工時に鋼管柱の内部にコンクリートを充填する際に、コンクリートの充填状況を監視するものである。図1はこの鋼管柱1を示す斜視図であり、鋼管柱1の側面の一部の図示を省略して内部を可視化したものである。
【0019】
本実施形態では、鋼管柱1に角型鋼管が用いられる。ただし、円形鋼管を用いることも可能である。
【0020】
鋼管柱1の側面には、鉄骨造の梁2が接続される。梁2にはH形鋼が用いられる。梁2は上下に間隔を空けて複数配置される。上下の梁2の間の部分(図1の符号a参照)を以下、層と呼び、各梁2により建物の各層の床(不図示)が支持される。
【0021】
本実施形態では鋼管柱1が建物の斜め柱であり、鋼管柱1は建物の複数層に亘る傾斜を有する。ただし、鋼管柱1(斜め柱)が1層分の高さのみ設けられる場合もある。
【0022】
鋼管柱1と梁2の接続部(以下、パネルゾーンといい、図中符号20で示す)では、鋼管柱1の内部において、梁2の上下のフランジに対応する高さにダイアフラム3、4が設けられる。なお、図では各パネルゾーン20でダイアフラム3、4が上下に2枚設けられているが、当該パネルゾーン20に取り付く複数の梁2の梁せいが互いに異なる場合や、ブレースが取り付く場合には、3枚以上のダイアフラムが設けられる場合もある。
【0023】
ダイアフラム3、4は板状の補強部材であり、鋼管柱1内に充填するコンクリートを流通させるための開口31、41(打設孔)を平面の中央部に有する。
【0024】
建物の各層では、鋼管柱1の側面に、火災時に鋼管柱1内のコンクリートから発生する蒸気を抜くための蒸気抜き孔11が設けられる。蒸気抜き孔11は小径の孔であり、その径は例えば10mm以上20mm以下であるが、これに限らず適宜変更が可能である。なお図では説明のため蒸気抜き孔11を実際よりも大きく表示している。蒸気抜き孔11は、概ね各層の上部と下部で鋼管柱1の側面に設けられ、鋼管柱1内にコンクリートを充填するときには栓(不図示)で塞がれ、充填したコンクリートの硬化後に撤去される。
【0025】
本実施形態では圧入工法によるコンクリートの充填を行うものとし、建物の最下層を含む複数の層で、鋼管柱1の側面にコンクリートの圧入口12が形成される。
【0026】
(2.内視鏡6)
本実施形態では、鋼管柱1内のコンクリートの充填監視を工業用の内視鏡6を用いて行う。
【0027】
図2は内視鏡6の設置状況を示す図である。内視鏡6は、撮影部63を設けた挿入部62の先端部を可動の湾曲部とした先端可動型の工業用内視鏡であり、挿入部62および撮影部63のほか、操作部61、モニタ64等を有する。
【0028】
操作部61には挿入部62の基端部が接続される。操作部61は、挿入部62の先端部の可動部分である湾曲部の操作を行うものであり、操作用のレバーやボタン等を備える。
【0029】
挿入部62は蒸気抜き孔11から鋼管柱1内に挿入され、鋼管柱1内を下方に延びる。挿入部62の長さは操作性等を考慮して定め、本実施形態では例えば7.5m~10m程度とする。
【0030】
撮影部63は、コンクリートの天端を撮影するためのものである。撮影部63は、前記した特許文献1、2で用いられるような従来の充填監視用カメラよりも小型のカメラを有し、観察系と照明系のレンズが設けられる。撮影部63で撮影された映像はモニタ64等に送信される。
【0031】
モニタ64は、撮影部63で撮影されたコンクリートの天端の映像を撮影部63から受信し、表示するものである。
【0032】
同じ映像は、例えばコンクリートの圧入層等に設置されたコンピュータ10(図1参照)にも無線等で送信され、その映像をコンピュータ10のディスプレイに表示することで、コンクリートの圧入を行う作業者がコンクリートの充填状況を監視できる。当該映像は、作業者が持つタブレット端末等の携帯端末に送信し、携帯端末の表示部で表示されるようにしてもよい。
【0033】
(3.ガイド管5)
本実施形態では、内視鏡6の挿入部62が、ガイド管5の内部に通されて鋼管柱1内に挿入される。
【0034】
ガイド管5は、外径が10~15mm程度、内径が8~10mm程度の可撓性を有する管である。ガイド管5は例えば金属製の筒状の形状である。またガイド管5の断面形状は円形であり、ガイド管5を曲げてもその断面形状が楕円形に潰れることなく円形に保持されるものとする。
【0035】
ガイド管5は略L字状に曲げられ、建物の層の下部の蒸気抜き孔11から鋼管柱1内に挿入されて鋼管柱1内を下方に延びる。ガイド管5の下端部は、当該蒸気抜き孔11の直下にあるパネルゾーン20のダイアフラム3、4の開口31、41を貫通する。
【0036】
図3はガイド管5を示す図であり、ガイド管5を直線状に伸ばした状態を示したものである。図3の上部はガイド管5の基端側に対応し、下部はガイド管5の先端側に対応する。
【0037】
本実施形態のガイド管5は、フレキシブルなコイルで構成されたコイル状のものであり、ガイド管5の基端側からの大部分がピッチの小さい密着部53となっている。一方、ガイド管5の先端部には、粗巻き部51と中間ピッチ部52が先端側から基端側へと順に設けられる。粗巻き部51はピッチの大きな部分であり、中間ピッチ部52は、ピッチが密着部53より大きく粗巻き部51よりも小さい部分である。
【0038】
これにより、コイルのピッチがガイド管5の基端側から先端側に向かって段階的に大きくなる。これはガイド管5の鋼管柱1内への挿入時の操作性の向上を目的としたものであるが、その詳細については後述する。なお、コイルのピッチがガイド管5の基端側から先端側に向けて漸増するようにしても良い。
【0039】
また、鋼管柱1の外に出ているガイド管5の基端側の一部を蒸気抜き孔11の内径よりも太径としたり、ガイド管5の基端側にガイド管5の径方向に突出するストッパー(不図示)を設けたりすることで、ガイド管5を誤って鋼管柱1の内部に落とさないようにできる。
【0040】
本実施形態では、ガイド管5の挿入に建物の層の上部でなく下部の蒸気抜き孔11を用いることにより、ガイド管5の挿入作業が高所作業とならないという利点がある。また蒸気抜き孔11から直下のパネルゾーン20のダイアフラム3、4までの距離が近いので、ガイド管5をダイアフラム3、4の開口31、41に通すことが容易になる。なお、詳細は後述するが、鋼管柱1の側面に蒸気抜き孔11とは異なる小径の孔(不図示)を設け、この孔をガイド管5や挿入部62を通すための専用の孔として用いてもよい。
【0041】
内視鏡6の挿入部62は、このガイド管5の内部に通して鋼管柱1内に挿入される。そのため、挿入部62が上記したパネルゾーン20のダイアフラム3、4に引っ掛かることはない。
【0042】
ガイド管5は若干の円弧を有しており、ガイド管5から出た内視鏡6の挿入部62は、ガイド管5の円弧に沿って若干曲がりながら下方に向かい、上記したパネルゾーン20のさらにその下のパネルゾーン20のダイアフラム3、4の開口31、41に通され、挿入部62の先端の撮影部63が当該ダイアフラム3、4の下方に達する。
【0043】
挿入部62の先端の可動部分である湾曲部を操作部61で操作したり、鋼管柱1の外側から挿入部62を動かしたり、ガイド管5の根元の角度を調節したりすることで、挿入部62の先端を上記の開口31、41に容易に通すことができ、撮影部63を充填監視に適した位置に配置できる。
【0044】
(4.コンクリートの充填監視方法)
本実施形態では、図1に示すように、建物の異なる層に設置される2つの内視鏡6(6-1、6-2)を用いてコンクリートの充填監視を行う。本実施形態では2つの内視鏡6(6-1、6-2)が建物の1層おきに設置されており、各内視鏡6(6-1、6-2)の挿入部62が、各内視鏡6(6-1、6-2)の設置層で鋼管柱1の蒸気抜き孔11に挿通したガイド管5(5-1、5-2)に通され、鋼管柱1内に挿入される。
【0045】
図1に示した状態から、例えば最下層の圧入口12より図4(a)に示すように鋼管柱1内へのコンクリート7の圧入を開始する。コンクリート7の天端は鋼管柱1内を上昇し、当該天端が下段の内視鏡6-1の撮影部63により撮影される。
【0046】
内視鏡6-1の挿入部62(撮影部63)は、コンクリート7の天端の上昇に応じて引き上げられる。撮影部63により撮影された映像はモニタ64やコンピュータ10等に送信、表示され、充填状況の監視に用いられてコンクリート7の天端の上昇速度等が確認される。
【0047】
鋼管柱1にコンクリート7を圧入する際は、鋼管柱1の各パネルゾーン20(20-1~20-8)へのコンクリート7の充填に特に注意を払う必要があり、本実施形態では図4(b)に示すようにパネルゾーン20-1にコンクリート7が充填されたことを内視鏡6-1により確認する。そして、図4(c)に示すように、当該パネルゾーン20-1の上方のパネルゾーン20-2の下段のダイアフラム4の位置までコンクリート7が充填されたことを内視鏡6-1により確認し、その後、下段の内視鏡6-1とガイド管5-1を蒸気抜き孔11から引抜いて、図5(a)に示すように上段の内視鏡6-2の設置層より2つ上の層に盛り替える。このとき、内視鏡6-1とガイド管5-1を引き抜いた蒸気抜き孔11は封止する。
【0048】
こうして内視鏡6-1の盛り替えを行うとともに、コンクリート7の圧入と内視鏡6-2によるコンクリート7の天端の監視を継続する。内視鏡6-2の挿入部62(撮影部63)はコンクリート7の天端の上昇に応じて引き上げ、パネルゾーン20-2の上段のダイアフラム3の位置までコンクリート7の充填が行われたことを内視鏡6-2により確認した後、さらにその上のパネルゾーン20-3でコンクリート7の充填が行われたことを確認する。
【0049】
そして、図5(b)に示すように、パネルゾーン20-3の上方のパネルゾーン20-4の下段のダイアフラム4の位置までコンクリート7が充填されたことを内視鏡6-2により確認し、その後、下段の内視鏡6-2を、前記と同様、図5(c)に示すように上段の内視鏡6-1の設置層より2つ上の層に盛り替える。
【0050】
以下、コンクリート7の圧入と内視鏡6によるコンクリート7の天端の撮影を並行して行い、パネルゾーン20の上段のダイアフラム3の位置にコンクリート7が充填された後、その2層上のパネルゾーン20の下段のダイアフラム4の位置にコンクリート7が充填されるごとに、下段の内視鏡6を上段の内視鏡6の設置層より2つ上の層に盛り替える作業を繰り返す。
【0051】
本実施形態では、こうして鋼管柱1内へのコンクリート7の充填とその充填監視が行われる。各パネルゾーン20のダイアフラム3、4に層数を記入しておけば、撮影された映像により充填が完了した層数を把握することもできる。
【0052】
以上説明したように、本実施形態では、挿入部62の先端に撮影部63を設けた工業用の内視鏡6を用い、その挿入部62を蒸気抜き孔11から鋼管柱1内に挿入することにより、ダイアフラム3、4等の障害物を避けて挿入部62を下方に延ばすことが容易になり、傾斜した鋼管柱1内のコンクリート7の充填状況を容易に確認できる。また内視鏡6の挿入部62は細径なので、小径の蒸気抜き孔11から鋼管柱1内に容易に挿入できる。
【0053】
また本実施形態では、内視鏡6の挿入部62をガイド管5に通して鋼管柱1内に挿入するので、挿入部62の挿入や方向制御が容易になり、ガイド管5を用いない場合と比較してこれらの作業に要する時間を短縮できる。
【0054】
コンクリート7は時間が経過すると硬化が進み圧入性能に影響を及ぼすので、圧入工法では試し練り等により確認されたコンクリート7の性状保持時間内で充填作業を完了しなければならない。上記のようにガイド管5を使用することによって内視鏡6の設置・操作時間を短縮し、コンクリート7の充填時間の遅延を防止し、圧入性能を良好に維持することができる。
【0055】
ガイド管5は、本実施形態のようにコイル状とすることで、可撓性を有するガイド管5を好適に実現できる。ただしガイド管5は可撓性を有していればよく、コイル状のものに限らない。例えば蛇腹状のものであってもよい。
【0056】
また本実施形態では鋼管柱1の蒸気抜き孔11を内視鏡6の挿入に用いることで、内視鏡挿入用の孔を鋼管柱1に別途設ける必要が無くなる。また蒸気抜き孔11は建物の各層に対応する位置で鋼管柱1に存在するので、内視鏡6の設置層が限定されることもない。
【0057】
また、内視鏡6の挿入部62の長さには限界があるが、本実施形態のようにコンクリート7の天端の上昇に応じて内視鏡6を盛り替え、監視を継続することにより、多層に亘ってコンクリート7を充填する場合にその充填状況を監視しつづけることができる。
【0058】
しかしながら、本発明は上記の実施形態に限らない。例えば本実施形態では2つの内視鏡6を1層おきに設け、パネルゾーン20の上段のダイアフラム3の位置にコンクリート7が充填された後、その2層上のパネルゾーン20の下段のダイアフラム4の位置にコンクリート7が充填されるごとに内視鏡6を盛り替えたが、2つの内視鏡6を上下に連続する2つの層のそれぞれに設け、パネルゾーン20の上段のダイアフラム3の位置にコンクリート7が充填された後、その1層上のパネルゾーン20の下段のダイアフラム4の位置にコンクリート7が充填されるごとに内視鏡6を盛り替えてもよい。
【0059】
また本実施形態では挿入部62の鋼管柱1内への挿入にガイド管5を用いたが、ガイド管5を省略して挿入部62を直接蒸気抜き孔11から鋼管柱1内に挿入してもよい。またガイド管5を用いる場合でも、ガイド管5を必ずしもダイアフラム3、4の開口31、41に通さなければならないわけではない。この場合、例えばガイド管5を金属製の筒状や金属の外側に樹脂層を被覆した形状で、人力で自由に曲げることができ、力を加えるのを止めても曲げた形状をある程度保持できるものとすることで、蒸気抜き孔11からガイド管5を通って挿入部62が表出する位置を調整するようにしても良い。
【0060】
さらに、本実施形態では異なる層に設置される2つの内視鏡6を充填監視に用いたが、異なる層に設置される3つ以上の内視鏡6を用いてもよい。この場合、コンクリート7の天端の上昇に応じて、最下段の内視鏡6を、最上段の内視鏡6の設置層より上の層に盛り替える作業を繰り返して監視を継続する。
【0061】
また本実施形態では、図2に示したようにガイド管5の下端部が蒸気抜き孔11の直下のパネルゾーン20のダイアフラム3、4の開口31、41に通されるが、図6に示すように、ガイド管5の下端部が、さらにその下方のパネルゾーン20のダイアフラム3、4の開口31、41に通されるようにしてもよい。
【0062】
この場合、コンクリート7の天端の上昇に応じて挿入部62だけでなくガイド管5も引き上げることになる。この際、例えば、ガイド管5を挿入部62と同時に上げるため、ガイド管5の先端に挿入部62や撮影部63が機械的に嵌め込まれる様な機構を設けることも考えられる。またガイド管5は鉄骨建方時に事前に挿入しておくことも可能である。
【0063】
また、鋼管柱1は鉛直方向に対して傾斜しているため、ガイド管5を鋼管柱1内に挿入すると、ガイド管5の先端部がダイアフラム3の中心の開口31からずれ、図7(a)、(b)に例示するようにダイアフラム3に突き当たってしまうことがある。特に、ガイド管5を挿入した蒸気抜き孔11から離れた位置にあるダイアフラム3に関しては、ガイド管5の先端部が開口31からずれる可能性が高くなる。
【0064】
前記したように、ガイド管5は先端側に向かってピッチの大きくなるコイル状であり、ガイド管5の先端部はより大きな可撓性を有する。そのため、図7(a)、(b)に示すように、ガイド管5の先端部がダイアフラム3に突き当たった後にそのままガイド管5を落として行くと、コイルの重さがかかることでガイド管5の先端部が曲がり、ガイド管5が弛む。
【0065】
必要に応じてガイド管5を軸周りに回転させるなどしてこの弛みの方向をダイアフラム3の開口31側に向け、ガイド管5を更に落として行くことで、図8(a)に示すようにガイド管5の弛み部分を開口31に落とし込み、ガイド管5が開口31を通過するように導くことができる。あるいは、弛みの方向をダイアフラム3の開口31の反対側に向け、ガイド管5を更に落として行くことで、図8(b)に示すようにガイド管5の先端部を開口31に落とし込み、ガイド管5が開口31を通過するように導くこともできる。図7、8はガイド管5の先端部がダイアフラム3に突き当たる場合を示したものであるが、ダイアフラム4についても同様である。
【0066】
また図8(a)、(b)の例では、別の内視鏡200をガイド管5等を利用して鋼管柱1内に挿入し、内視鏡200により上記の弛み部分を観察できる状態になっている。この場合、内視鏡200で弛みの方向を確認しながらガイド管5を軸周りに回転させるなどの操作をすることが可能である。
【0067】
その他、本発明では図9(a)のガイド管5aに示すようにコイル先端を曲げて前方に突出する突起54を設けることも可能であり、ガイド管5aを軸周りに回転させたときに突起54が支点になって弛み部分の向きを変えやすくなる。
【0068】
また図9(b)のガイド管5bに示すように、筒体の端面を斜めにカットした形状の口金55を、ガイド管5bの先端部に溶接、はんだ等で固定してもよい。このガイド管5bは、先端部が、口金55の斜め方向の端面の開口551の向きに曲がりやすい。
【0069】
さらに、鋼管柱1の外にあるガイド管5、5a、5bの基端部において、ガイド管5のコイル先端に対応する周方向位置、ガイド管5aの突起54に対応する周方向位置、ガイド管5bの口金55の開口551の向きに対応する周方向位置に目印を設けることで、ダイアフラム3、4に突き当たったガイド管5、5a、5bの先端部の曲がる向きをおおよそ把握し、これに基づくガイド管5、5a、5bの操作を行うことも可能である。目印の態様は特に限定されない。例えばコイル表面にラインなどのマーキングを付すことができる。
【0070】
ガイド管の先端部の構造としては、上記の突起54や口金55の他、先端が湾曲したパイプを設けた構成、鋼管柱1の内面からダイアフラム3、4の開口31、41までの平面距離より長く、開口31、41の直径よりも短い直線状のパイプを設けた構成、一方向のみ曲がるリンク機構を設けた構成、移動可能な錘をガイド管の先端部近傍に設けた構成なども考えられ、これらの構成によりガイド管の操作性を高め、ダイアフラム3、4の開口31、41を通過しやすくできる。
【0071】
また本実施形態では蒸気抜き孔11にガイド管5等を通しているが、未使用の圧入口12(孔)をガイド管5等の挿入に用いてもよい。圧入口12は径が十分に大きく、建物の層の床上1.0m~1.5m程度の位置にあるため、容易にガイド管5等を通すことができる。ただし圧入口12は建物の各層に設けられるわけではなく、内視鏡6の設置層に制限が生じる。
【0072】
また前記したように、ガイド管5等を挿入するための専用の孔を鋼管柱1の側面に設けてもよい。この場合、孔の位置や大きさを作業がしやすいように自由に定めることができる。例えばガイド管5等の挿入や操作の作業性を考慮し、床上1m程度の高さに孔を形成し、その径を30~50mmとする。径を30~50mmとすることで、ガイド管5や内視鏡6の挿入部62を動かすときの自由度を確保できる。なおこの場合も、使用しない孔は蒸気抜き孔11と同様に栓をする。
【0073】
また以上の実施形態で説明した内視鏡6によるコンクリート7の充填監視の方法は、鋼管柱1が傾斜を有する場合だけでなく、傾斜を有しない場合にも適用できる。
【0074】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0075】
1:鋼管柱
2:梁
3、4:ダイアフラム
5、5-1、5-2、5a、5b:ガイド管
6、6-1、6-2、200:内視鏡
7:コンクリート
10:コンピュータ
11:蒸気抜き孔
12:圧入口
20:パネルゾーン
31、41、551:開口
61:操作部
62:挿入部
63:撮影部
64:モニタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9