(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151344
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】車速制御装置、車速制御方法、および車速制御プログラム
(51)【国際特許分類】
B60W 30/14 20060101AFI20220929BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20220929BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20220929BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20220929BHJP
【FI】
B60W30/14
G08G1/09 F
G08G1/16 C
B60W60/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021054373
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】391008559
【氏名又は名称】株式会社トランストロン
(74)【代理人】
【識別番号】100170070
【弁理士】
【氏名又は名称】坂田 ゆかり
(72)【発明者】
【氏名】上之原 通
(72)【発明者】
【氏名】唐戸 雄平
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA01
3D241CE02
3D241DB02Z
3D241DC22Z
3D241DC40Z
5H181AA01
5H181BB13
5H181CC12
5H181CC14
5H181FF13
5H181FF27
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL07
5H181LL08
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】車両の追突事故を防止しつつ、車速を制限する。
【解決手段】車両が走行している道路の規制速度を取得する路車間通信部と、車両の後方を走行する後続車との車間距離を計測する車間距離計測部と、車両の制限速度を決定する制限速度決定部と、車間距離の推奨距離を記憶する記憶部と、を備える。制限速度決定部は、規制速度に基づいて道路での目標制限速度を決定し、車間距離が推奨距離以上離れている場合には、目標制限速度に到達するまで制限速度を徐々に小さくする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が走行している道路の規制速度を取得する路車間通信部と、
前記車両の後方を走行する後続車との車間距離を計測する車間距離計測部と、
前記車両の制限速度を決定する制限速度決定部と、
前記車間距離の推奨距離を記憶する記憶部と、
を備え、
前記制限速度決定部は、前記規制速度に基づいて前記道路での目標制限速度を決定し、前記車間距離が前記推奨距離以上離れている場合には、前記目標制限速度に到達するまで前記制限速度を徐々に小さくする
ことを特徴とする車速制御装置。
【請求項2】
前記制限速度決定部は、前記車間距離が前記推奨距離よりも小さい場合には、前記制限速度を変化させない
ことを特徴とする請求項1に記載の車速制御装置。
【請求項3】
前記車両の車速を計測する車速センサをさらに備え、
前記制限速度決定部は、前記車速に応じて前記推奨距離を決定する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の車速制御装置。
【請求項4】
前記記憶部は、法定速度を記憶しており、
前記制限速度決定部は、前記規制速度が取得できない場合には、前記法定速度に基づいて前記目標制限速度を決定する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の車速制御装置。
【請求項5】
前記車両の種別を設定する車両種別設定部を備え、
前記制限速度決定部は、前記車両の種別に基づいて前記目標制限速度を決定する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の車速制御装置。
【請求項6】
前記制限速度決定部は、前記車両が緊急車両である場合には、前記制限速度を設定しない
ことを特徴とする請求項5に記載の車速制御装置。
【請求項7】
車両が走行している道路の規制速度を取得するステップと、
前記車両の後方を走行する後続車との車間距離を計測するステップと、
前記規制速度に基づいて、前記道路での目標制限速度及び前記車両の制限速度を決定するステップと、
前記車間距離が推奨距離以上離れている場合に、前記目標制限速度に到達するまで前記制限速度を徐々に小さくするステップと、
を含むことを特徴とする車速制御方法。
【請求項8】
コンピュータを、
車両が走行している道路の規制速度を取得する路車間通信部、
前記車両の車速を制御する車速制御部、
車間距離の推奨距離を記憶する記憶部、
前記規制速度に基づいて、前記車両の制限速度を決定する制限速度決定部、
として機能させ、
前記制限速度決定部は、前記規制速度に基づいて前記道路での目標制限速度を決定し、前記車両の後方を走行する後続車との車間距離が前記推奨距離以上離れている場合には、前記目標制限速度に到達するまで前記制限速度を徐々に小さくする
ことを特徴とする車速制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車速制御装置、車速制御方法、および車速制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ETC車載機によって受信された路側機からのETC情報に基づいて、走行中の道路の最高速度を設定値としてコントローラに設定する速度制御装置が開示されている。この速度制御装置は、現在の走行速度と設定値とを比較し、走行速度が設定値を超えるとき、速度制限装置に走行速度を設定値まで落とすよう指令する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の装置では、後ろを走行する後続車が小さい車間距離で走行していた場合には、車両の走行速度を設定値まで落とした結果、後続車が当該車両に追突するおそれがある。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、車両の追突事故を防止しつつ、車速を制限することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る車速制御装置は、例えば、車両が走行している道路の規制速度を取得する路車間通信部と、前記車両の後方を走行する後続車との車間距離を計測する車間距離計測部と、前記車両の制限速度を決定する制限速度決定部と、前記車間距離の推奨距離を記憶する記憶部と、備え、前記制限速度決定部は、前記規制速度に基づいて前記道路での目標制限速度を決定し、前記車間距離が前記推奨距離以上離れている場合には、前記目標制限速度に到達するまで前記制限速度を徐々に小さくすることを特徴とする。
【0007】
本発明の他態様に係る車速制御方法は、例えば、車両が走行している道路の規制速度を取得するステップと、前記車両の後方を走行する後続車との車間距離を計測するステップと、前記規制速度に基づいて、前記道路での目標制限速度及び前記車両の制限速度を決定するステップと、前記車間距離が推奨距離以上離れている場合に、前記目標制限速度に到達するまで前記制限速度を徐々に小さくするステップと、を含むことを特徴とする。
【0008】
本発明の他態様に係る車速制御プログラムは、例えば、コンピュータを、車両が走行している道路の規制速度を取得する路車間通信部、前記車両の車速を制御する車速制御部、車間距離の推奨距離を記憶する記憶部、前記規制速度に基づいて、前記車両の制限速度を決定する制限速度決定部、として機能させ、前記制限速度決定部は、前記規制速度に基づいて前記道路での目標制限速度を決定し、前記車両の後方を走行する後続車との車間距離が前記推奨距離以上離れている場合には、前記目標制限速度に到達するまで前記制限速度を徐々に小さくすることを特徴とする。
なお、コンピュータプログラムは、インターネット等のネットワークを介したダウンロードによって提供したり、CD-ROMなどのコンピュータ読取可能な各種の記録媒体に記録して提供したりすることができる。
【0009】
本発明の上記いずれかの態様では、制限速度を徐々に小さくすることで、車速の減速度合がなだらかになり、急な減速による追突事故を防止することができる。また、後続車との車間距離が推奨距離以上離れている場合に制限速度を小さくすることで、追従事故を防止できる。また、制限速度を目標制限速度まで到達させることで、規制速度に則したより安全な走行が実現できる。
【0010】
前記制限速度決定部は、前記車間距離が前記推奨距離よりも小さい場合には、前記制限速度を変化させないものとしてもよい。車間距離が近いにも拘らず制限速度を変化させると、車両の車速が遅くなった結果、後続車の減速が間に合わず、車両に追突するおそれがある。そこで、後続車との車間距離が推奨距離よりも小さい場合には、制限速度を変化させず、減速を行わせないことで、追突事故を防止することができる。
【0011】
前記車両の車速を計測する車速センサをさらに備え、前記制限速度決定部は、前記車速に応じて前記推奨距離を決定するものとしてもよい。これにより、後続車が車両と同等の車速に減速するまでの後続車の移動距離が、車速に応じて異なる点を考慮し、後続車が追従できる車間距離を確保した上で減速を行うことで、追突事故を防止できる。
【0012】
前記記憶部は、法定速度を記憶しており、前記制限速度決定部は、前記規制速度が取得できない場合には、前記法定速度に基づいて前記目標制限速度を決定してもよい。これにより、規制速度が取得できない場合であっても安全性の担保および交通ルールの遵守を確実にすることができる。
【0013】
前記車両の種別を設定する車両種別設定部を備え、前記制限速度決定部は、前記車両の種別に基づいて前記目標制限速度を決定してもよい。これにより、車種に応じて目標制限速度を決定することができる。
【0014】
前記制限速度決定部は、前記車両が緊急車両である場合には、前記制限速度を設定しなくてもよい。これにより、緊急時等には必要な速度で走行することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、車両の追突事故を防止しつつ、車速を安全に制限することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1の実施の形態に係る車速制御装置1の電気的な機能ブロックの概略を示す図である。
【
図2】車速制御装置1が備える記憶部22に記憶されている係数テーブルの例であり、(a)は係数テーブルT1の例であり、(b)は係数テーブルT2の例である。
【
図3】車速制御装置1のハードウェア構成の一例を概略的に示すブロック図である。
【
図4】車速制御装置1が車速を制御する処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】車速制御装置1の制限解除ボタンが押下された場合の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る車速制御装置の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。車速制御装置は、車両の状況に応じて当該車両の車速を制御する装置である。
【0018】
図1は、本発明の実施の形態に係る車速制御装置1の電気的な機能ブロックの概略を示す図である。
【0019】
車速制御装置1は、車両C1に搭載される装置である。車速制御装置1は、主として、車間距離計測部12、通信制御部13、および制御部20を備える。車速制御装置1は、車両C1に搭載される車速センサ10および路車間通信部11と接続されている。なお、車速制御装置1自体が車速センサ10又は路車間通信部11を有する構成であってもよい。また、通信制御部13および制御部20の機能の一部は、車両C1に備えられていてもよい。
【0020】
車速センサ10は、車両C1の現在の車速を計測するセンサである。車速センサ10で検知した情報は、制限速度決定部23に入力される。
【0021】
路車間通信部11は、道路に配設される道路システムIと通信を行う機能部である。路車間通信部11は、例えば車両C1が走行している道路の規制速度を、道路システムIから受信する。道路システムIは、例えば、高速道路の入口および出口の各ETCゲートに設けられた路側機を含む。路車間通信部11は、例えば、路側機から、ETCゲートが高速道路の入口および出口のいずれであるかを示すデータを受信する。規制速度は、道路ごとに規定される指定速度であってもよいし、法定速度であってもよい。路車間通信部11は、車両C1にあらかじめ備えられているETC(Electronic Toll Collection System、電子料金収受システム)車載機の機能により実現されていてもよい。
【0022】
車間距離計測部12は、車両C1の後方を走行する後続車C2との車間距離を計測するセンサである。車間距離計測部12は、例えばレーダーセンサにより構成される。レーダーセンサは、例えばミリ波レーザーを車両C1の進行方向後方に向かって放射し、その反射波に基づいて測距を行う。
【0023】
通信制御部13は、路車間通信部11および車間距離計測部12により取得される情報を統括し、制御部20に受け渡す機能部である。通信制御部13は、TCU(Telematic Control Unit、テレマティクス制御ユニット)により実現されていてもよい。TCUとETC車載機は、例えばRS232C規格の通信ケーブルで互いに接続されているが、接続の態様はこれに限られない。
【0024】
制御部20は、CPU(Central Processing Unit)56(
図3参照)等の演算装置や記憶装置54(
図3参照)により、ソフトウェア資源として、少なくとも、車両種別設定部21、記憶部22、制限速度決定部23、車速制御部24、報知部25、及び制限解除部30を有する。制御部20は、ECU(Electronic Control Unit)により実現されていてもよい。なお、ECUとTCUは、例えばCAN(Controller Area Network)により互いに接続されているが、接続の態様はこれに限られない。
【0025】
車両種別設定部21は、車速制御装置1が搭載される車両C1の車両の種別を設定する機能部である。車両の種別は、ユーザによる入力を受け付けて設定可能であってもよいし、車両C1からの情報を受信して種別を判別し、設定を行ってもよい。また、車両種別設定部21は、車両C1が緊急車両であるか否かを設定してもよい。
【0026】
記憶部22は、後述する制限速度決定部23が制限速度を決定するのに参照する情報を記憶する機能部である。
【0027】
図2は、記憶部22に記憶されている係数テーブルの例であり、(a)は係数テーブルT1の例であり、(b)は係数テーブルT2の例である。
図2(a)の係数テーブルT1には、法定速度が車両の種別ごとに記憶されている。また、係数テーブルT1には、法定速度の最高値および最低値がそれぞれ格納されている。なお、同図においては、従来の車両に搭載されるスピードリミッターによる限界速度が併記されている。記憶部22は、この限界速度を合わせて記憶していてもよい。なお、法定速度は、限界速度以下である。
【0028】
なお、記憶部22は、車両の種別ごとに、かつ道路の種別ごとに法定速度を記憶していてもよい。例えば、記憶部22は、例えば一般道路の法定速度と、高速道路の法定速度とを記憶していてもよい。さらに、記憶部22は、国又は地域ごとに法定速度を記憶していてもよい。
【0029】
図2(b)の係数テーブルT2には、車速と推奨距離とが記憶されている。推奨距離は、後方を走行する後続車C2との車間距離の推奨値である。同図の例では、推奨距離は、車速(km/h)を1/2にした数値にメートルの単位を付したものである。係数テーブルT2では、車間距離を段階的に区分し、この1区分ごとに1個の推奨距離が対応づけられている。
【0030】
また、係数テーブルT2には、車両の種別に応じて、各推奨距離の適用の有無が格納されている。適用される車速に対しては、丸印が記載されている。車速が50km/h以下の場合には、車両種別に関わらず法定速度が設定されることがないため、普通自動車および大型トラックの欄は空欄であり、適用されない旨を示すグレーアウトで表示されている。また、大型トラックについては、車両C1に搭載されるスピードリミッターの限界速度が90km/hである。したがって、90km/hを超える車速については、大型トラックには適用されないため、対応する欄は空欄であり、適用されない旨を示すグレーアウトで表示されている。
【0031】
図1の説明に戻る。制限速度決定部23は、車両C1の制限速度を決定する機能部である。制限速度は、運転者の操作、又は車両C1の各構成の機能的上限に関わらず設定される車速の上限値である。なお、制限速度は、上限値に加えて車速の下限値を含んでいてもよい。
【0032】
また、制限速度決定部23は、記憶部22に格納される係数テーブルT1(
図2(a)参照)を参照し、車両の種別に基づいて、制限速度の上限値を決定する。例えば、大型トラックの法定速度の最高値は、普通自動車の法定速度の最高値より小さいため、大型トラックの制限速度の最高値は、普通自動車の制限速度の最高値より小さくする。これにより、種別の異なる車両に対しても、安全性の担保および交通ルールを遵守することができる。なお、制限速度決定部23は、車両C1の種別を参照し、当該車両C1が緊急車両である場合には、制限速度を設定しない旨の決定をしてもよい。
【0033】
制限速度決定部23は、通信制御部13により取得される情報に基づいて、目標制限速度を決定する。目標制限速度は、当該道路で最終的に到達すべき速度であり、例えば規制速度と同等である。制限速度決定部23は、例えば路車間通信部11による取得される規制速度を、目標制限速度に決定する。
【0034】
制限速度決定部23は、路車間通信部11から規制速度が取得できない場合には、記憶部22に記憶されている法定速度に基づいて目標制限速度に決定してもよい。この時、制限速度決定部23は、係数テーブルT1を参照し、車両C1の種別に基づいて目標制限速度に決定してもよい。
【0035】
また、制限速度決定部23は、ETCゲートを通過した際に、入口と出口のいずれを通過したかを取得し、この情報に応じて目標制限速度を決定してもよい。具体的には、制限速度決定部23は、入口のETCゲートを通過した際には高速道路の法定速度を目標制限速度に決定し、出口のETCゲートを通過した際には一般道路の法定速度を目標制限速度に決定してもよい。
【0036】
制限速度決定部23は、車速センサ10で検知した車速を取得する。そして、制限速度決定部23は、車速が目標制限速度より大きい場合には、制限速度を徐々に小さくする。例えば、制限速度決定部23は、制限速度が目標制限速度に到達するまで、制限速度を連続的に変化させる。また、例えば、制限速度決定部23は、制限速度が目標制限速度に到達するまで、一定の加速度で順次減速するように制限速度を変化させてもよい。
【0037】
なお、制限速度決定部23は、制限速度を段階的に変化させてもよい。また、制限速度決定部23は、減速時の加速度を一定にしなくてもよい。
【0038】
そして、制限速度決定部23は、制限速度が目標制限速度に到達すると、制限速度の変化を停止する。このように、目標制限速度に到るまで制限速度を徐々に小さくすることで、急な減速による追突事故を防止できる。
【0039】
制限速度決定部23は、通信制御部13を介して後続車C2との車間距離を取得し、当該取得した車間距離に応じて異なる処理を行う。具体的には、後続車C2との車間距離が推奨距離以上離れている場合には、制限速度を変化させる。また、制限速度決定部23は、車間距離が推奨距離よりも小さい場合には、制限速度を変化させない。車間距離が近いにも拘らず制限速度を変化させると、車両C1の車速が遅くなった結果、後続車C2の減速が間に合わず、車両C1に追突するおそれがある。そこで、後続車C2との車間距離が推奨距離以上離れている場合にのみ制限速度を変化させることで、追突事故を防止する。
【0040】
制限速度決定部23は、記憶部22に格納される係数テーブルT2(
図2(b)参照)を参照し、車速に応じて推奨距離を決定する。後続車C2の運転者が車両C1に合わせて減速するまでの後続車C2の移動距離は車速に応じて異なるため、後続車C2が追従できる車間距離を確保した上で減速を行うことで、追突事故を防止できる。なお、後続車C2は車両C1に追従して走行しているため、後続車C2の車速は車両C1の車速と略同等と推定できる。そこで、制限速度決定部23は、車両C1の車速に基づいて推奨距離を算出している。
【0041】
制限速度決定部23は、車間距離計測部12により計測される車間距離を随時取得し、車間距離が推奨距離未満となった場合には、制限速度の変更を停止する。そして、制限速度決定部23は、継続的に車間距離を受信し、車間距離が推奨距離以上となると、制限速度の変更を再開する。この構成によれば、安全を担保しつつ速度制限を実効たらしめることができる。
【0042】
制限速度決定部23は、決定した制限速度や目標制限速度の情報を逐次車速制御部24に出力する。
【0043】
車速制御部24は、制限速度に応じて実際の車速を制御する機能部である。車速制御部24は、制限速度決定部23から決定された制限速度を取得し、最大走行速度が制限速度となるように車速を制御する。
【0044】
報知部25は、少なくとも運転者に、制限速度の変更に関する情報を報知する機能部である。報知部25は、例えば制限速度決定部23が制限速度を決定し、制限速度が小さくなる旨を、減速と同時に又は事前に報知する。報知部25は、例えば、車両C1に設けられたスピーカから音声又は音楽により報知するが、車両C1の内部に配設される適宜の表示部に表示してもよい。報知部25は、制限速度が変化している間、報知を継続してもよい。また、報知部25は、車速が規制速度を超過し、かつ車間距離が推奨距離未満である場合に、制限速度を低減しない旨を報知する。この場合には、報知部25は、制限速度を低減しない理由、すなわち後続車C2との車間距離が狭い旨を合わせて表示する。
【0045】
制限解除部30は、制限速度による制限を一時的に解除する機能部である。制限解除部30は、例えば運転者が、車両C1の車内、例えばフロントパネル等に配設される制限解除ボタン(図示を省略)を押下すると、速度制限を一定時間解除する。
【0046】
図3は、車速制御装置1のハードウェア構成の一例を概略的に示すブロック図である。車速制御装置1は、制御装置50と、通信装置52と、記憶装置54と、を備える。制御装置50は、CPU56及びメモリ58を主に備えて構成される。
【0047】
制御装置50では、記憶装置54又はメモリ58等に格納された所定のプログラムをCPU56が実行することにより、各種の機能部として機能する。
【0048】
通信装置52は、外部の装置と通信するための通信インターフェース等で構成される。通信装置52は、端末装置等との間で各種の情報を送受信する。
【0049】
記憶装置54は、ハードディスク等で構成される。この記憶装置54は、制御装置50における処理の実行に必要な各種プログラムや各種の情報、及び処理結果の情報を記憶する。
【0050】
なお、車速制御装置1は、専用又は汎用のサーバ・コンピュータ等の情報処理装置を用いて実現することができる。また、車速制御装置1は、単一の情報処理装置により構成されるものであってもよく、通信ネットワーク上に分散した複数の情報処理装置により構成されるものであってもよい。また、
図3は、車速制御装置1が有する主要なハードウェア構成の一部を示しているに過ぎず、車速制御装置1は、サーバ装置が一般的に備える他の構成を備えることができる。
【0051】
図4は、車速制御装置1が車速を制御する処理の流れを示すフローチャートである。
図4に示す処理は、車両C1の運転中には連続して繰り返し行われる。
まず、制限速度決定部23は、車両C1が走行する道路の規制速度を取得する(ステップSP11)。また、制限速度決定部23は、車速センサ10から車速を取得する(ステップSP12)。なお、ステップSP11とステップSP12との順はこれに限られず、同時に行ってもよいし、ステップSP12の後でステップSP11を行ってもよい。
【0052】
次に、制限速度決定部23は、車速が規制速度より大きいか否か判定する(ステップSP13)。車速が規制速度以下である場合(ステップSP13でNO)には、制限速度決定部23は、処理をステップSP11に戻す。
【0053】
車速が規制速度より大きい場合(ステップSP13でYES)には、制限速度決定部23は、車間距離計測部12から車両C1と後続車C2との車間距離を取得し(ステップSP14)、後続車との距離が推奨距離以上であるかを判定する(ステップSP15)。車間距離が推奨距離未満である場合(ステップSP15でNO)は、制限速度決定部23は、車間距離が推奨距離未満であり減速ができないことを少なくとも報知部25を介して運転者に報知する(ステップSP16)。これにより、後続車C2との車間距離を取り、制限速度の低下ができる状況にするように運転者に促すことができる。なお、ステップSP16は必須ではない。その後、制限速度決定部23は、処理をステップSP11に戻す。
【0054】
車間距離が推奨距離以上である場合(ステップSP15でYES)には、制限速度決定部23は、制限速度を徐々に小さくする(ステップSP17)。例えば、時速100kmで車両C1が走行しているときに、悪天候や事故により制限速度が時速80kmに変更された場合には、制限速度決定部23は、減速の加速度が0.1Gとなるように制限速度を遅くする。なお、減速の加速度が0.1Gだとすると、1秒間に時速3.6km分ずつ速度が遅くなる。
【0055】
制限速度決定部23は、制限速度が目標制限速度に到達したか否かを判定する(ステップSP18)。制限速度が目標制限速度に到達した場合には(ステップSP18でYES)、制限速度決定部23は、処理をステップSP11に戻す。制限速度が目標制限速度に到達していない場合(ステップSP18でNO)には、制限速度決定部23は、処理をステップSP14に戻す。これにより、ステップSP14~ステップSP18が繰り返され、後続車C2との車間距離が推奨距離以上空いている場合に制限速度を徐々に低下させる。すなわち、この車速制御方法は、目標制限速度に到達するまでの間、車間距離を確認しながら、制限速度を徐々に小さくする。
【0056】
図5は、車速制御装置1の制限解除ボタンが押下された場合の処理の流れを示すフローチャートである。
まず、制限速度決定部23は、図示を省略の制御解除ボタンが押下されたか否か判定する(ステップSP21)。制御解除ボタンが押下されていない場合(ステップSP21でNO)は、ステップSP21を繰り返す。
【0057】
制御解除ボタンが押下された場合(ステップSP21でYES)には、制限速度決定部23は、制限速度による速度制限を解除する(ステップSP22)。これにより、緊急時等には、必要な速度で走行することができる。
【0058】
次に、制限速度決定部23は、速度制限を解除してから所定時間(例えば、30秒)が経過したか否か判定する(ステップSP23)。速度制限を解除してから所定時間が経過していない場合(ステップSP23でNO)は、ステップSP23を繰り返す。速度制限を解除してから所定時間が経過した場合(ステップSP23でYES)は、制限速度決定部23は、制限速度による速度設定を設定する(ステップSP24)。
【0059】
本実施の形態によれば、車両の追突事故を防止しつつ、車速を安全に制限することができる。車間距離が近いにも拘らず制限速度を遅くすると、車速が遅くなった結果、後続車の減速が間に合わず、追突事故が発生するおそれがある。そこで、後続車との車間距離が推奨距離以上離れている場合にのみ制限速度を変化させることで、車両の追突事故を防止することができる。また、制限速度を急激に小さくすると、急な減速による追突事故が発生するおそれがある。それに対し、本実施の形態では、制限速度を徐々に小さくすることにより、車速の減速度合がなだらかになり、急な減速による追突事故を防止し、車速を安全に制限することができる。
【0060】
また、本実施の形態によれば、走行している道路の規制速度を超過する走行ができなくなるため、交通違反および事故を防止することができる。
【0061】
なお、本実施の形態では、制限速度決定部23は、車速が規制速度を超過している場合には、制限速度を徐々に小さくしたが、制限速度の変化のさせ方はこれに限られない。例えば、車速が規制速度以下の場合には、制限速度を急激に変化させてもよい。この状況は、例えば車両C1が一般道路から高速道路に入った場合等があてはまる。車速が規制速度以下の場合には、制限速度を変化させても現在の走行速度は変わらない。すなわち、制限速度を急激に変化させても、急激に減速することはなく、追突事故のおそれがないためである。この構成によれば、制限速度をただちに規制速度にすることができる。
【0062】
また、本実施の形態では、制限速度決定部23が制限速度の情報を車速制御部24に出力し、車速制御部24が車速を制御したが、車速の制御方法はこれに限られない。例えば、制限速度決定部23が車両C1に配設されるスピードリミッターに目標制限速度を出力し、スピードリミッターにより車速が制御されてもよい。例えば、時速100kmで車両C1が走行しているときに、悪天候や事故により制限速度が時速80kmに変更された場合には、制限速度決定部23は目標制限速度が時速80kmであることをスピードリミッターに出力し、スピードリミッターは減速の加速度が0.1G程度となるように、時速80kmになるまで車速を制御する。
【0063】
以上、この発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0064】
1 :車速制御装置
10 :車速センサ
11 :路車間通信部
12 :車間距離計測部
13 :通信制御部
20 :制御部
21 :車両種別設定部
22 :記憶部
23 :制限速度決定部
24 :車速制御部
25 :報知部
30 :制限解除部
50 :制御装置
52 :通信装置
54 :記憶装置
56 :CPU
58 :メモリ