IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝クライアントソリューション株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-電子機器 図1
  • 特開-電子機器 図2
  • 特開-電子機器 図3
  • 特開-電子機器 図4
  • 特開-電子機器 図5
  • 特開-電子機器 図6
  • 特開-電子機器 図7
  • 特開-電子機器 図8
  • 特開-電子機器 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151369
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/24 20060101AFI20220929BHJP
   H05K 9/00 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
H01Q1/24 Z
H05K9/00 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021054407
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】398058588
【氏名又は名称】Dynabook株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀 武宏
(72)【発明者】
【氏名】廣田 敏之
(72)【発明者】
【氏名】西山 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 一宏
(72)【発明者】
【氏名】湯淺 智和
(72)【発明者】
【氏名】小出 慎吾
【テーマコード(参考)】
5E321
5J047
【Fターム(参考)】
5E321AA02
5E321AA14
5E321CC16
5E321CC22
5E321GG05
5J047AB01
5J047FD01
(57)【要約】
【課題】 ノイズによる影響を抑制し、アンテナの性能を確保できる電子機器を提供する。
【解決手段】 電子機器は、少なくとも一部が導体で形成されたシールド領域と、シールド領域の少なくとも一部よりも外周側に位置し、誘電体で形成されシールドされていない非シールド領域とを有する筐体と、筐体内のシールド領域に配置され、電子部品が実装された回路基板と、筐体内の非シールド領域に配置されたアンテナと、誘電体で形成されたケースと、ケース内に設けられた振動体と、を有し、ケースの一部の面がシールド領域に位置し、かつケースの他の部分が非シールド領域に位置するように筐体内に配置された振動発生部材と、シールド領域内における筐体とケースの間に挟持され、ケースを弾性的に支持する導電性を有する弾性支持部材と、を備え、振動発生部材のシールド領域に位置した面に、弾性支持部材と接触するように導電層が形成されている。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が導体で形成されたシールド領域と、前記シールド領域の少なくとも一部よりも外周側に位置し、誘電体で形成されシールドされていない非シールド領域とを有する筐体と、
前記筐体内の前記シールド領域に配置され、電子部品が実装された回路基板と、
前記筐体内の前記非シールド領域に配置されたアンテナと、
誘電体で形成されたケースと、前記ケース内に設けられた振動体と、を有し、前記ケースの一部の面が前記シールド領域に位置し、かつ前記ケースの他の部分が前記非シールド領域に位置するように前記筐体内に配置された振動発生部材と、
前記シールド領域内における前記筐体と前記ケースの間に挟持され、前記ケースを弾性的に支持する導電性を有する弾性支持部材と、を備え、
前記振動発生部材の前記シールド領域に位置した面に、前記弾性支持部材と接触するように導電層が形成され、
前記導電層は、前記弾性支持部材により前記導体と電気的に接続されている、
電子機器。
【請求項2】
前記筐体は、底壁を有する下筐体と、前記底壁に間隔を置いて対向する上壁を有する上筐体と、を有し、
前記底壁は、少なくとも内面が前記導体で形成された第1シールド部分と、前記誘電体で形成された第1非シールド部分とを有し、
前記上壁は、少なくとも内面が前記導体で形成され前記第1シールド部分に対向する第2シールド部分と、前記誘電体で形成され前記第1非シールド部分に対向する第2非シールド部分とを有し、
前記ケースは、少なくとも一部が前記底壁の前記第1シールド部分に対向する底面と、少なくとも一部が前記上壁の前記第2シールド部分に対向する上面と、前記第1シールド部分および前記第2シールド部分と前記第1非シールド部分および前記第2非シールド部分との境界に沿って延在する側面と、を有し、
前記導電層は、前記底面に形成され第1隙間を置いて前記第1シールド部分に対向する底部導電層と、前記上面に形成され第2隙間を置いて前記第2シールド部分に対向する上部導電層と、前記側面に形成され前記底部導電層と前記上部導電層を電気的に接続する側部導電層とを有し、
前記弾性支持部材は、前記第1隙間に配置され前記境界に沿って延在する第1弾性支持部材と、前記第2隙間に配置され前記境界に沿って延在する第2弾性支持部材と、を含んでいる、
請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記弾性支持部材は、弾性変形可能で導電性を有する材料で構成され、所定の厚さに圧縮された際に所望の抵抗値を有する導電ガスケットであり、
前記第1隙間および前記第2隙間は、前記導電ガスケットが前記所定の厚さに圧縮された状態で配置される隙間に設定されている、
請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記アンテナは、前記上壁の前記第2非シールド部分と前記ケースの前記上面の間に配置され、かつ前記アンテナと前記上壁の間に振動吸収部材を配置している、
請求項2または3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記アンテナと前記ケースの前記上面の間には、第3隙間が形成され、前記第3隙間に振動吸収部材を配置している、
請求項4に記載の電子機器。
【請求項6】
前記ケースは、前記上面に前記底面側に向けて凹む凹部を有し、
前記アンテナは、前記凹部に配置されている、
請求項4または5に記載の電子機器。
【請求項7】
前記ケースは、導電性材料を含む前記振動体を収容し、前記振動体は前記アンテナから5mm以上の間隔をあけて収容されている
請求項1乃至6のいずれかに記載の電子機器。
【請求項8】
前記振動発生部材はスピーカであり、かつ
前記ケースは、前記振動体から発生する音波が伝播する中空の空間領域を形成し、
前記アンテナは、前記空間領域を形成する前記ケースの外表面に対向して配置されている、
請求項7に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
ノート型PCやモバイル型PC等の電子機器には、通信機能を備えるものがある。電子機器に搭載される通信用のアンテナとして、例えば無線LAN用のアンテナやLTE(Long Term Evolution)用のアンテナ、第5世代移動通信システム(5G)用のアンテナが知られている。アンテナを回路基板等とともに筐体に搭載する場合には、CPU等の電子部品が発生するノイズの影響を考慮し、アンテナの性能を確保する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3203585号公報
【特許文献2】特開2005-341547号公報
【特許文献3】特許第6513136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、アンテナの性能を確保するためには、アンテナをノイズからシールドするために筐体内に専用のシールド壁を設ける等の方法が知られている。しかし、電子機器には、小型化や薄型化等が要望されている。また、電子機器には、筐体にアンテナやスピーカ等を配置するために広い空間を確保することが要望されている。
【0005】
本発明は、ノイズによる影響を抑制し、アンテナの性能を確保できる電子機器を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によれば、電子機器は、少なくとも一部が導体で形成されたシールド領域と、前記シールド領域の少なくとも一部よりも外周側に位置し、誘電体で形成されシールドされていない非シールド領域とを有する筐体と、前記筐体内の前記シールド領域に配置され、電子部品が実装された回路基板と、前記筐体内の前記非シールド領域に配置されたアンテナと、誘電体で形成されたケースと、前記ケース内に設けられた振動体と、を有し、前記ケースの一部の面が前記シールド領域に位置し、かつ前記ケースの他の部分が前記非シールド領域に位置するように前記筐体内に配置された振動発生部材と、前記シールド領域内における前記筐体と前記ケースの間に挟持され、前記ケースを弾性的に支持する導電性を有する弾性支持部材と、を備えている。
【0007】
前記振動発生部材の前記シールド領域に位置した面に、前記弾性支持部材と接触するように導電層が形成され、前記導電層は、前記弾性支持部材により前記導体と電気的に接続されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態に係る電子機器の概略的な斜視図である。
図2図2は、一実施形態に係る電子機器が備える筐体の概略的な分解斜視図である。
図3図3は、図2に示す筐体の組み立てられた状態における概略的な平面図である。
図4図4は、筐体の内部を示す概略的な平面図である。
図5図5は、図3に示す電子機器のV-V線に沿う概略的な部分断面図である。
図6図6は、図3に示す電子機器のVI-VI線に沿う概略的な部分断面図である。
図7図7は、アンテナを示す概略的な平面図である。
図8図8は、第1シールド部分と第1非シールド部分との結合の一例を示す概略的な部分平面図である。
図9図9は、振動発生部材のケースに関する他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係る電子機器について、図面を参照しながら説明する。
なお、開示はあくまで一例にすぎず、以下の実施形態に記載した内容により発明が限定されるものではない。当業者が容易に想到し得る変形は、当然に開示の範囲に含まれる。説明をより明確にするため、図面において各部分のサイズ、形状等を実際の実施態様に対して変更して模式的に表す場合もある。複数の図面において、対応する要素には同じ符号を付して、詳細な説明を省略する場合もある。
【0010】
本実施形態においては、第1方向X、第2方向Yおよび第3方向Zを定義する。第1方向X、第2方向Yおよび第3方向Zは互いに直交するが、90°以外の角度で交差してもよい。以下、第1方向Xおよび第2方向Yで規定されるX-Y平面を見ることを平面視という。
【0011】
図1は、本実施形態に係る電子機器100の概略的な斜視図である。本実施形態においては、電子機器100の一例としてノート型PCを開示する。電子機器100は、筐体1と、筐体2と、筐体1と筐体2を連結するヒンジ3とを備えている。筐体1,2は、扁平な略直方体形状である。筐体1と筐体2は、長手方向に設けられたヒンジ3の軸を中心に回動可能(開閉可能)に連結されている。ヒンジ3の軸は、第1方向Xと平行な軸である。筐体2は、例えば筐体1に対して閉じた状態から180度回動させることができる。図1は、筐体1に対して筐体2をおよそ90度回動させた状態を示している。さらにヒンジ3に二軸式の構造を採用することで、筐体2が、筐体1に対して閉じた状態から360度回動させることもできる。
【0012】
筐体1には、入力用のキーボード4aやタッチパッド4bが設けられている。さらに筐体1の内部には、後述の回路基板5等が収容されている。筐体1は、下筐体10と、第3方向Zにおいて下筐体10と重なる上筐体20とを有している。筐体1に対して筐体2が閉じた際に、上筐体20は筐体2に対向する。電子機器100を机上等の設置面に置いた際に、下筐体10は設置面に対向する。下筐体10と上筐体20とは、ツメによる結合、ねじ止めおよび接着等により重ねた状態で固定される。
【0013】
筐体2には、ディスプレイ4cが設けられている。ディスプレイ4cは、筐体2に形成された開口2aに対応する位置に表示部41を有している。ディスプレイ4cは、例えば液晶ディスプレイや有機エレクトロルミネッセンスディスプレイである。表示部41は、画像やテキスト情報等を表示するものであってもよいし、さらに入力用にタッチパネル等の操作を行えるものであってもよい。
【0014】
図1に示すように筐体1に対して筐体2が開かれた状態において、ユーザーが表示部41を正面から視認する方向を基準として、第2方向Yにおいて筐体1の手前側を「前」、奥側を「後」、第1方向Xにおいて一方側を「左」、他方側を「右」と定義する。第3方向Zを「上」または「上方」、第3方向Zと反対方向を「下」または「下方」と定義する。
【0015】
図2は、本実施形態に係る電子機器100が備える筐体1の概略的な分解斜視図である。図3は、図2に示す筐体1の組み立てられた状態における概略的な平面図である。図4は、筐体1の内部を示す概略的な平面図である。図2および図3において、筐体1に対して筐体2は開かれた状態である。図3においては、筐体2の図示を省略している。図4においては、上筐体20を取り外した状態で筐体1の内部を見ている。
【0016】
図2に示すように、電子機器100は、電子部品等が実装された回路基板5と、送受信用のアンテナ6L,6Rと、振動発生部材8L,8Rと、第1弾性支持部材E1と、第2弾性支持部材E2と、バッテリBAとを筐体1の内部に備えている。以下、アンテナ6L,6Rをまとめて「アンテナ6」と呼ぶ場合があり、振動発生部材8L,8Rをまとめて「振動発生部材8」と呼ぶ場合があり、第1弾性支持部材E1,第2弾性支持部材E2をまとめて「弾性支持部材E」と呼ぶ場合がある。
【0017】
下筐体10は、底壁11と、底壁11の周囲に形成された周壁12とを有している。周壁12は、前壁12aと、後壁12bと、左側に位置する側壁12cと、右側に位置する側壁12dとを有している。底壁11および周壁12は、導体で形成された第1シールド部分13と、誘電体で形成された第1非シールド部分14L,14Rとを有している。以下、第1非シールド部分14L,14Rをまとめて「第1非シールド部分14」と呼ぶ場合がある。
【0018】
第1非シールド部分14Lは、前壁12aと側壁12cで形成される角部から第1方向Xおよび第2方向Yに沿って形成されている。第1非シールド部分14Rは、前壁12aと側壁12dで形成される角部から第1方向Xと反対方向および第2方向Yに沿って形成されている。
【0019】
すなわち、第1非シールド部分14L,14Rは、下筐体10の前壁12aおよび側壁12c,12dで形成される角部の周辺にそれぞれ形成されている。第1シールド部分13は、底壁11および周壁12のうち第1非シールド部分14が形成された部分以外の部分である。
【0020】
上筐体20は、底壁11に間隔を置いて対向する上壁21と、上壁21の周囲に形成された周壁22とを有している。周壁22は、前壁22aと、後壁22bと、左側に位置する側壁22cと、右側に位置する側壁22dとを有している。上壁21および周壁22は、導体で形成された第2シールド部分23と、誘電体で形成された第2非シールド部分24L,24Rとを有している。以下、第2非シールド部分24L,24Rをまとめて「第2非シールド部分24」と呼ぶ場合がある。
【0021】
第2非シールド部分24Lは、前壁22aと側壁22cで形成される角部から第1方向Xおよび第2方向Yに沿って形成されている。第2非シールド部分24Rは、前壁22aと側壁22dで形成される角部から第1方向Xと反対方向および第2方向Yに沿って形成されている。
【0022】
すなわち、第2非シールド部分24L,24Rは、上筐体20の前壁22aおよび側壁22c,22dで形成される角部の周辺にそれぞれ形成されている。第2シールド部分23は、上壁21および周壁22のうち第2非シールド部分24が形成された部分以外の部分である。第1非シールド部分14L、14Rおよび第2非シールド部分24L,24Rは例えば同じ形状に形成され、本実施形態においては平面視においてL字形状に形成されている。
【0023】
下筐体10における第1シールド部分13と第1非シールド部分14との境界を境界B1とし、上筐体20における第2シールド部分23と第2非シールド部分24との境界を境界B2とする。境界B1,B2において、第1シールド部分13と第1非シールド部分14、第2シールド部分23と第2非シールド部分24には、種々の形状を適用することができる。境界B1,B2は、各々の境界を疑似的に示したものであり、実際の結合時の形状とは異なる場合がある。
【0024】
境界B1において、第1シールド部分13と第1非シールド部分14は、重なってもよいし、重ならなくともよい。同様に、境界B2において、第2シールド部分23と第2非シールド部分24は、重なってもよいし、重ならなくともよい。図2に図示する例においては、境界B1および境界B2は、第2方向Yに延びる部分と、第1方向Xに延びる部分とで形成されている。境界B1および境界B2は、第1方向Xや第2方向Yと交差する部分を有してもよい。
【0025】
第1シールド部分13および第2シールド部分23を形成する導体は、例えばマグネシウム合金、アルミニウム等の金属材料であるが、金属材料に限定されない。第1非シールド部分14および第2非シールド部分24を形成する誘電体は、例えばフッ素樹脂や、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネイト、ポリカーボネイト-ABS等の樹脂材料であるが、樹脂材料に限定されない。
【0026】
他の観点からは、下筐体10は、第1シールド部分13を形成する部材と、第1非シールド部分14を形成する、当該部材とは異なる他の部材とで形成されている。また、上筐体20は、第2シールド部分23を形成する部材と、第2非シールド部分24を形成する、当該部材とは異なる他の部材とで形成されている。
【0027】
下筐体10および上筐体20の各々は、例えばインサート成形や2色成形により形成される。この場合、第1シールド部分13と第1非シールド部分14は一体的に形成され、第2シールド部分23と第2非シールド部分24は一体的に形成される。
【0028】
第3方向Zにおいて、底壁11の第1シールド部分13は上壁21の第2シールド部分23に対向し、底壁11の第1非シールド部分14は上壁21の第2非シールド部分24に対向している。平面視において、第1シールド部分13の面積は第2シールド部分23の面積とおおよそ等しく、第1非シールド部分14の面積は第2非シールド部分24の面積とおおよそ等しい。
【0029】
また、第1シールド部分13の面積は、第2シールド部分23の面積よりも大きくてもよいし、小さくてもよい。同様に、第1非シールド部分14の面積は、第2非シールド部分24の面積よりも大きくてもよいし、小さくてもよい。
【0030】
シールド領域SAは、第1シールド部分13と、第2シールド部分23と、第1シールド部分13と第2シールド部分23の間の空間と、を含んでいる。一方、非シールド領域NSAは、第1非シールド部分14Lと、第2非シールド部分24Lと、第1非シールド部分14Lと第2非シールド部分24Lの間の空間と、を含んでいる。さらに、非シールド領域NSAは、第1非シールド部分14Rと、第2非シールド部分24Rと、第1非シールド部分14Rと第2非シールド部分24Rの間の空間と、を含んでいる。
【0031】
シールド領域SAと非シールド領域NSAの境界は、例えば上述の境界B1と、境界B2と、境界B1と境界B2の間の空間と、を含んでいる。図2および図3に示すように、非シールド領域NSAは、筐体1の前側に位置する両側の角部の周辺にそれぞれ形成されているため、平面視において、非シールド領域NSAは、シールド領域SAに対し筐体1の外周側に形成されている。
【0032】
回路基板5とバッテリBAはシールド領域SAに設けられ、アンテナ6は非シールド領域NSAに設けられている。より具体的には、回路基板5とバッテリBAは第1シールド部分13と第2シールド部分23の間に配置されている。また、アンテナ6Lは第1非シールド部分14Lと第2非シールド部分24Lの間に配置され、アンテナ6Rは第1非シールド部分14Rと第2非シールド部分24Rの間に配置されている。第1非シールド部分14および第2非シールド部分24が誘電体で形成されているため、アンテナ6は非シールド領域NSAにおいて筐体1の外部と電波の送受信を行うことができる。
【0033】
振動発生部材8は、後述のケース80の一部がシールド領域SAに位置し、ケース80の他の部分が非シールド領域NSAに位置するように筐体1に配置されている。他の観点からは、振動発生部材8は、第3方向Zにおいて境界B1および境界B2と重なっている。第3方向Zにおいて、アンテナ6Lは振動発生部材8Lと重なり、アンテナ6Rは振動発生部材8Rと重なっている。
【0034】
弾性支持部材Eは、シールド領域SAに配置されている。より具体的には、第1弾性支持部材E1は振動発生部材8Lと底壁11の間、および振動発生部材8Rと底壁11の間にそれぞれ配置されている。第2弾性支持部材E2は振動発生部材8Lと上壁21の間、および振動発生部材8Rと上壁21の間にそれぞれ配置されている。
【0035】
第1弾性支持部材E1は境界B1に沿って延在し、第2弾性支持部材E2は境界B2に沿って延在している。第1弾性支持部材E1および第2弾性支持部材E2は、第2方向Yに延びる部分と、第1方向Xに延びる部分とを有している。
【0036】
図4に示すように回路基板5には、アンテナ通信モジュール51と、CPU52と、メモリ53と、電源回路54と、音声回路55とが実装されている。回路基板5は、例えばプリント回路基板である。アンテナ通信モジュール51、CPU52、メモリ53、電源回路54、音声回路55は、電子部品の一例である。
【0037】
アンテナ通信モジュール51は、アンテナ6で受信した電波を受けたり、送信する電波をアンテナ6に供給したりする。回路基板5およびアンテナ通信モジュール51は、コネクタ51aによって電気的に接続されかつ機械的に固定されている。コネクタ51aはレセプタクル側とプラグ側で一対となっており、例えば回路基板5がレセプタクル側を有しアンテナ通信モジュール51がプラグ側を有している。回路基板5に実装されたCPU52、メモリ53および電源回路54等は、アンテナ6の性能を低下させる要因であるノイズの発生源となりうる。また、ノイズの発生源は、上述の例に限られず、筐体1に収容される種々の電子部品等が該当する場合がある。
【0038】
アンテナ6は平面状のアンテナであり、一例としてLTE用の通信アンテナである。アンテナ6は、第5世代移動通信システム(5G)にも適用できる。一例として、アンテナ6Lは受信用アンテナであり、アンテナ6Rは送信用アンテナである。アンテナ6L,6Rの各々は、アンテナ通信モジュール51とケーブルCにより電気的に接続されている。
【0039】
ケーブルCの一端は、アンテナ6L,6Rと振動発生部材8L,8Rの間にそれぞれ配線されている。ケーブルCは、例えば同軸ケーブルである。また、アンテナ6Lにはアンテナグランド7Lが重なり、アンテナ6Rにはアンテナグランド7Rが重なっている。
【0040】
振動発生部材8の一例として、スピーカを開示する。振動発生部材8は、誘電体で形成されたケース80と、ケース80に収容された振動体VBとを有している。振動体VBは、ケース80に振動可能な状態で保持されている。振動発生部材8の動作時には、振動体VBとケース80はそれぞれ振動する。さらにケース80の外面の一部には、図2に示すように導電層90が形成されている。
【0041】
ケース80は平面視においてL字形状に形成されている。ケース80を形成する誘電体は、例えば樹脂材料等である。当該誘電体は、第1非シールド部分14や第2非シールド部分24を形成する誘電体と同じであってもよいし、異なってもよい。振動体VBは音の発生源であり、振動板、ヨーク、磁石およびコイル等を有している。例えばヨーク等は金属材料で形成されるため、振動体VBは導電性材料で形成された部材を含んでいる。
【0042】
振動体VBで発生する音波は、ケース80の内部において振動体VBが配置されていない部分に形成されている中空の空間領域SP(図5および図6参照)により伝播される。中空の空間領域SPにより音波が伝播されることで、音声が増幅する。図4に示すように振動体VBは、平面視において、アンテナ6L,6Rと重っていない。
【0043】
ケース80をL字形状に形成することで、アンテナ6L,6Rと重ならない位置に振動体VBを配置できるだけでなく、空間領域SPを大きく形成できる。また、平面視において、振動発生部材8のケース80は、アンテナ6よりも大きい。ケース80の上面82はアンテナ6全体を下方から覆っているため、ケース80によるアンテナ6の性能低下は起こりにくい。
【0044】
図2に示すようにケース80は、底壁11と対向する底面81と、底面81と反対側に位置し、上壁21と対向する上面82と、底面81と上面82とを接続する側面83とを有している。側面83は、アンテナ6と回路基板5の間に位置する側面83a,83b,83c,83dを有している。側面83a,83cは、第2方向Yに延び、第1方向Xに並んでいる。側面83b,83dは、第1方向Xに延び、第2方向Yに並んでいる。他の観点からは、側面83a,83b,83c,83dは境界B1および境界B2に沿って延在している。
【0045】
さらに、ケース80には、アンテナ6と回路基板5の間に位置するように導電層90が形成されている。導電層90は、底面81、上面82および側面83a,83b,83c,83dにそれぞれ形成されている。導電層90は、アルミニウムテープ等の導電性テープをケース80に貼り付けたり、金属材料をスパッタリングでケース80の側面83と底面81および上面82の側面83と接続する部分に成膜したり、レーザダイレクトストラクチャリング加工(LDS)等でケース80の側面83と底面81および上面82の側面83と接続する部分に導電層の形成を行ったりすることで形成される。
【0046】
バッテリBAは、例えば扁平な略直方体形状である。バッテリBAは、筐体1の内部において回路基板5よりも前側に配置されている。また、バッテリBAは、第1方向Xにおいて、アンテナ6L(振動発生部材8L)とアンテナ6R(振動発生部材8R)の間に配置されている。
【0047】
弾性支持部材Eは、弾性変形可能であって、導電性を有するように構成されている。弾性支持部材Eは、一例として導電ガスケットである。弾性支持部材Eは、例えば金属等の導電性材料が分散された発泡体(スポンジ)で形成されている。また、弾性支持部材Eは、発泡体の周りに導電性テープや布等を有するものであってもよいし、導電性を有する不織布等の布であってもよい。
【0048】
弾性支持部材Eは、断面形状が矩形状であってもよいし、円形状であってもよい。また、弾性支持部材Eは、例えばシート等から規定の形状に切断されたものであってもよいし、紐形状であってもよいし、シート形状であってもよい。弾性支持部材Eは、1つの部材から形成されてもよいし、複数の部材を組み合わせて形成されてもよい。弾性支持部材Eは、導電層90と重なるように境界B1および境界B2に沿って延在している。
【0049】
弾性支持部材Eは、所定の厚さまで圧縮された際に所望の抵抗値を有する部材である。一例としては、弾性支持部材Eが初期状態からおよそ30%圧縮された際には、0.08~0.09Ωの抵抗値を得ることができる。さらに他の例としては弾性支持部材Eが初期状態からおよそ50%圧縮された際には、0.04~0.05Ωの抵抗値を得ることができる。
【0050】
第1弾性支持部材E1は、形状やサイズ、材質等の各々が第2弾性支持部材E2と同一であってもよいし、異なってもよい。例えば、第1弾性支持部材E1の一端は前壁12aと接触し、他端は側壁12cと接触している。また、第2弾性支持部材E2の一端は前壁22aと接触し、他端は側壁22cと接触している。
【0051】
図5は、図3に示す電子機器100のV-V線に沿う概略的な部分断面図である。図6は、図3に示す電子機器100のVI-VI線に沿う概略的な部分断面図である。図5および図6は、第2方向Yから見た断面図である。図6は、図5よりも回路基板5に近い部分の断面図である。
【0052】
図5および図6においては、筐体1における左側の非シールド領域NSA、アンテナ6Lおよび振動発生部材8Lについて主に説明するが、右側の非シールド領域NSA、アンテナ6Rおよび振動発生部材8Rについても同様に適用できる。
【0053】
図5および図6に図示する例においては、第1シールド部分13と第1非シールド部分14Lは、境界B1において重なっている。このとき、第1シールド部分13は、第1非シールド部分14Lよりも上筐体20側に位置している。一方、第2シールド部分23と第2非シールド部分24Lは、境界B2において重なっている。このとき、第2シールド部分23は、第2非シールド部分24Lよりも下筐体10側に位置している。
【0054】
図5および図6に図示する例においては、境界B1においては第1シールド部分13と第1非シールド部分14Lが重なる部分があり、境界B2においては、第2シールド部分23と第2非シールド部分24Lが重なる部分がある。
【0055】
底壁11において第1シールド部分13と第1非シールド部分14Lが重なる部分は、底壁11の他の部分よりも厚く形成され、上壁21において第2シールド部分23と第2非シールド部分24Lが重なる部分は、上壁21の他の部分よりも厚く形成されている。
【0056】
第1シールド部分13の少なくとも一部は、第1非シールド部分14Lよりも導電層90側に向けて露出し、第2シールド部分23の少なくとも一部は、第2非シールド部分24Lよりも導電層90側に向けて露出している。本実施形態においては、内面13aおよび内面23aが導電層90に向けて露出している。
【0057】
他の観点からは、境界B1および境界B2において、第1非シールド部分14Lは第1シールド部分13よりも外周側に位置し、第2非シールド部分24Lは第2シールド部分23よりも外周側に位置している。すなわち、非シールド領域NSAには、シールド領域SAの外周側に形成されている部分が含まれる。
【0058】
図5および図6に示すように、下筐体10、振動発生部材8L、アンテナ6Lおよび上筐体20は、第3方向Zにこの順で並んでいる。振動発生部材8Lは、ケース80の一部がシールド領域SAに位置し、ケース80の他の部分が非シールド領域NSAに位置するように筐体1に配置されている。
【0059】
他の観点からは、ケース80の底面81は、第1シールド部分13と第1非シールド部分14Lに対向している。ケース80の上面82は、第2シールド部分23と第2非シールド部分24Lに対向している。
【0060】
側面83a,83b,83c,83dは、上述の通り境界B1,B2に沿って延在している。図5においては側面83aを示し、図6においては側面83cを示している。導電層90は、底面81のうちシールド領域SAに位置する部分を含むように形成され、第1シールド部分13に対向する底部導電層91と、上面82のうちシールド領域SAに位置する部分を含むように形成され、第2シールド部分23に対向する上部導電層92とを有している。
【0061】
さらに、導電層90は、シールド領域SAに位置する側面83a,83b,83c,83dに形成された側部導電層93を有している。側部導電層93は、底部導電層91と上部導電層92を電気的に接続している。図5においては側面83aに形成された側部導電層93aを示し、図6においては側面83cに形成された側部導電層93cを示している。
【0062】
底部導電層91は、底面81のうち第1シールド部分13と対向する部分に形成されている。上部導電層92は、上面82のうち第2シールド部分23と対向する部分に形成されている。底部導電層91は第1非シールド部分14Lと対向する部分にまで形成されてもよいし、上部導電層92は第2非シールド部分24Lと対向する部分にまで形成されてもよいが、上部導電層92はアンテナ6Lのうちエレメント部63(図7参照)と対向する部分にまで形成されてはならない。上部導電層92を当該部分にまで形成しないことで、上部導電層92によるアンテナ6Lの性能の低下を抑制できる。
【0063】
底部導電層91と第1シールド部分13の内面13aの間には第1隙間G1が形成され、上部導電層92と第2シールド部分23の内面23aの間には第2隙間G2が形成されている。他の観点からは、ケース80は、底部導電層91が第1シールド部分13の内面13aと第1隙間G1を置き、上部導電層92が第2シールド部分23の内面23aと第2隙間G2を置くように筐体1に配置されている。
【0064】
さらに、第1隙間G1には第1弾性支持部材E1が配置され、第2隙間G2には第2弾性支持部材E2が配置されている。例えば、第1弾性支持部材E1および第2弾性支持部材E2は、導電性を有する両面テープ等により筐体1等に接着されている。
【0065】
第1隙間G1および第2隙間G2は、第1弾性支持部材E1および第2弾性支持部材E2が配置された際に上述の所定の厚さに圧縮されるように設定されている。その際、第1弾性支持部材E1および第2弾性支持部材E2は、上述の所望の抵抗値を得ることができる。
【0066】
第3方向Zにおいて、第1隙間G1の大きさは、第1弾性支持部材E1の厚さよりも小さく、第2隙間G2の大きさは、第2弾性支持部材E2の厚さよりも小さい。また、第1隙間G1の大きさは、第2隙間G2よりも大きくてもよいし、小さくてもよいし、または等しくてもよい。
【0067】
シールド領域SAにおいて、第1弾性支持部材E1は圧縮された状態で底部導電層91と第1シールド部分13とに挟持され、第2弾性支持部材E2は圧縮された状態で上部導電層92と第2シールド部分23とに挟持されている。この場合、第1弾性支持部材E1は底部導電層91と第1シールド部分13の内面13aと接触し、第2弾性支持部材E2は上部導電層92と第2シールド部分23の内面23aと接触している。
【0068】
例えば、第1弾性支持部材E1は第1隙間G1に配置された状態で底部導電層91の全体ないし大部分を覆うように接触し、第2弾性支持部材E2は第2隙間G2に配置された状態で上部導電層92の全体ないし大部分を覆うように接触する。
【0069】
弾性支持部材Eは導電性を有し、内面13a,23aの各々は導体であるため、上述の状態であれば、第1弾性支持部材E1は底部導電層91を第1シールド部分13の内面13aに電気的に接続し、第2弾性支持部材E2は上部導電層92を第2シールド部分23の内面23aに電気的に接続する。また、側部導電層93は、底部導電層91と上部導電層92とを電気的に接続している。そのため、第1シールド部分13、第2シールド部分23、底部導電層91、上部導電層92および側部導電層93が電気的に接続される。
【0070】
第1シールド部分13、第2シールド部分23、底部導電層91、上部導電層92および側部導電層93によりシールド構造が形成されるため、シールド領域SAのノイズから非シールド領域NSAに配置されたアンテナ6Lをシールドすることができる。
【0071】
弾性支持部材Eは圧縮された状態で挟持されているため、弾性支持部材Eは底部導電層91、上部導電層92および内面13a,23aに対して接触しやすい。さらに、弾性支持部材Eは弾性変形可能であるため、弾性支持部材Eは筐体1に対してケース80を弾性的に支持する。
【0072】
アンテナ6Lは、非シールド領域NSAのうち、上壁21の第2非シールド部分24Lとケース80の上面82の間に配置されている。図5および図6に示すようにアンテナ6Lは、第1方向Xにおいて導電層90や弾性支持部材Eよりも側壁12c,22c側に配置されている。
【0073】
図6に示すようにアンテナ6Lの下面の一部には、アンテナグランド7Lが積層されている。すなわち、アンテナ6Lとケース80の上面82の間には、アンテナグランド7Lが配置されている。アンテナ6Lは、両面テープ等の接着材により第2非シールド部分24Lに接着されている。アンテナグランド7Lは、導電性両面テープ等の接着材によりアンテナ6Lの、後述するアンテナパターン62のグランド部64に接着されている。
【0074】
また、アンテナ6Lは、振動体VBから離れた位置に配置されている。図5および図6に示す例においては、アンテナ6Lは、ケース80のうち空間領域SPを形成するケース80の外表面に対向して配置されている。他の観点からは、アンテナ6Lは、アンテナ6Lとケース80の積層方向(第3方向Z)において振動体VBと重ならないが、空間領域SPとは重なっている。
【0075】
振動体VBは、アンテナ6Lから5mm以上の間隔をあけるようにケース80に収容されることが好ましい。また上部導電層92も、アンテナ6Lから5mm以上の間隔をあけるようにケース80の上面82に配置されることが好ましい。非シールド領域NSA内に配置される、アンテナグランド7Lを除く他の全ての導電体についても同様である。アンテナ6Lは、直線距離で振動体VB、上部導電層92ないしその他の導電体から5mm以上離れた状態で非シールド領域NSAに配置されている。アンテナ6Lを導電体から離して配置することで、導電体によるアンテナ6Lの性能の低下を抑制できる。
【0076】
さらに、アンテナ6Lと上面82の間には第3隙間G3が形成されている。図5に示すように第3隙間G3の一部には、振動吸収部材AB1が配置されている。第3隙間G3に振動吸収部材AB1を配置することで、ケース80の上面82にアンテナ6Lを重ねて配置した状態でも、後述の他の振動吸収部材AB2および下筐体10、上筐体20と合わせてケース80を弾性的に保持できる。図9に示すように、アンテナ6Lと第2非シールド部分24Lの間に、さらに振動吸収部材を配置してもよい。
【0077】
図6に示すように、シールド領域SAにおいて、バッテリBAと第2シールド部分23の間には、内壁25が配置されている。内壁25は、第3方向Zに延びる第1部分251と、第1方向Xに延びる第2部分252とを有している。内壁25は、例えば、アンテナグランド7Lと両面テープ等の接着材により接着されている。内壁25は、例えば、樹脂材料等の誘電体で形成されている。内壁25は、第1部分251がバッテリBAと接触していない。内壁25は、製造時にバッテリBAを保持したり、筐体1に外力が加わった際に筐体1の変形を抑制したりする。
【0078】
さらに、図5および図6に示すように、ケース80と底壁11の間、ケース80と上壁21の間、ケース80と側壁12cの間、内壁25の第1部分251と側部導電層93cの間には、他の振動吸収部材AB2が配置されている。弾性支持部材Eだけでなく振動吸収部材AB1,AB2を配置することで、シールド領域SAと非シールド領域NSAにおけるケース80の位置が決められている。
【0079】
振動吸収部材AB1,AB2は、例えば樹脂材料で形成された発泡体(スポンジ)である。振動吸収部材AB1,AB2は、変形可能な状態で筐体1に配置されている。振動吸収部材AB1,AB2は、例えば両面テープ等の接着材により筐体1やケース80等に接着されている。振動吸収部材AB1,AB2の各々は、配置される隙間等に応じて形状、サイズおよび材質等を適宜選択することができる。振動吸収部材AB1,AB2が配置される位置や数量は図示した例に限られず、本実施形態よりも多くてもよいし、少なくてもよい。
【0080】
振動発生部材8Lのケース80は、弾性支持部材Eや振動吸収部材AB1,AB2により振動可能な状態で筐体1に配置されている。弾性支持部材Eや振動吸収部材AB1,ABは防振機能を有するため、振動発生部材8の動作時における振動体VBやケース80の振動は下筐体10や上筐体20に伝達されにくい。
【0081】
図6に示すようにアンテナ6Lと上面82の間には、ケーブルCが設けられている。ケーブルCは、例えば、上面82の一部に形成された溝84に配線されている。溝84を形成することで、アンテナ6Lと上面82の間にケーブルCを配線する場合であっても、第3方向Zにおいて、上面82と第2非シールド部分24Lの間を小さくできる。
【0082】
ここで、アンテナ6Lについて説明する。図7は、アンテナ6Lを示す概略的な平面図である。アンテナ6Lは、矩形状のアンテナ基板61と、アンテナ基板61に形成されたアンテナパターン62とを有している。アンテナ基板61は、例えばフレキシブルプリント基板等である。
【0083】
アンテナパターン62は、エレメント部63と、グランド部64と、給電点となる接続部65と、グランド部64に形成された接続部66と、接続部65とエレメント部63の間に配置するACカップリングコンデンサ67のための接続部69を有している。アンテナパターン62のうちエレメント部63は、アンテナ基板61が有する、上筐体20の下面に対向する面に、銅やアルミニウム等の導電性を有する金属により形成されている。
【0084】
エレメント部63とグランド部64の各々は、ケーブルCにより図4に示したアンテナ通信モジュール51と電気的に接続されている。電気的な接続は、例えば半田付けなどの手段によってなされる。エレメント部63に形成された接続部65は、例えばケーブルCの内部導体と接続される。一方、グランド部64に形成された接続部66は、例えばケーブルCの外部導体と接続される。図7に示すように接続部66において、グランド部64とケーブルCの外部導体はある程度の長さを有する範囲で接続される場合がある。エレメント部63と接続部65とは基板のパターンによって直接接続しても良いし、間にACカップリングコンデンサ67を設けて電流の直流成分を遮断することにより電力効率の向上を図っても良い。また、接続部65よりエレメント部63に供給された電荷は電路68およびグランド部64を経由して接続部66に還る。
【0085】
図6に示すようにアンテナグランド7Lの一部は、上部導電層92と第2シールド部分23の間に位置している。第2弾性支持部材E2は、上部導電層92と、アンテナグランド7Lが有する、導体が上部導電層92に向けて露出しているグランド7Gとそれぞれ接触している。上部導電層92は、第2弾性支持部材E2が接触するグランド7Gを介して、第2シールド部分23と電気的に接続されている。図6においては、第2弾性支持部材E2はアンテナグランド7Lに接着されている。
【0086】
次に下筐体10における第1シールド部分13と第1非シールド部分14Lとの境界B1における結合の一例を説明する。図8は、第1シールド部分13と第1非シールド部分14Lとの結合の一例を示す概略的な部分平面図である。図8においては、当該部分の一部を拡大して示す。ここでは下筐体10について例示するが、上筐体20の第2シールド部分23と第2非シールド部分24の結合部にも適用できる。下筐体10と上筐体20の結合部は同様の形状であってもよいし、異なる形状であってもよい。
【0087】
第1シールド部分13には結合部13Aが形成され、第1非シールド部分14Lには結合部14Aが形成されている。結合部14Aは、面141と、面141よりも第1シールド部分13側に位置する面142とを有している。面142は、第3方向Zにおいて面141よりも下方に位置している。さらに、面141は第1シールド部分13に向けて突出する突起部143を有し、面142は第1シールド部分13に向けて突出する突起部144を有している。さらに、突起部144は、第3方向Z(上方)に向けて突出するピン145を有している。
【0088】
結合部13Aは、結合部14Aと結合した際に、面141と対向する面131と、面142に対向する面132とを有している。面131は、面132よりも第1非シールド部分14L側に位置している。また、面132は、第3方向Zにおいて面131よりも下方に位置している。さらに、面131は突起部143に対応する位置に凹部133を有し、面132は突起部144に対応する位置に凹部134を有している。さらに、結合部13Aは、結合部14Aと結合した際に、ピン145に対応する位置に開口135を有している。
【0089】
上述のような結合部13Aを有する第1シールド部分13を形成する導体に対し、インサート成形や2色成形等により誘電体で第1非シールド部分14Lを形成することで、第1シールド部分13と第1非シールド部分14Lとを一体的に形成することができる。
【0090】
結合部13Aと結合部14Aとの結合時には、突起部143が凹部133に嵌合し、突起部144が凹部134に嵌合する。さらに、ピン145は、開口135に挿入される。境界B1において、第1シールド部分13の少なくとも一部は、第1非シールド部分14Lよりも底部導電層91側に露出している。
【0091】
凹部133,134は、第1非シールド部分14Lから離れるにつれ境界B1に沿う方向の長さが長くなるため、突起部143は凹部133から外れにくく、突起部144は凹部134から外れにくい。さらに、ピン145が開口135に挿入されるため、結合部13Aは結合部14Aから第1方向Xに沿って外れにくい。
【0092】
図9は、振動発生部材8のケース80に関する他の例を示す図である。図9は、図5と同様に図3に示す電子機器100のV-V線に沿う概略的な部分断面図である。図9においては、振動発生部材8Lについて説明するが、振動発生部材8Rについても同様に適用できる。
【0093】
ケース80は、上面82に底面81側に向けて凹む凹部85を有している。凹部85は、上面82のうち側壁12c,22c側に第2方向Yに沿って形成されている。凹部85は、上面82と平行な面851を有している。平面視において、面851は、アンテナ6Lよりも大きく形成されている。また、第3方向Zにおいて、凹部85は、例えばアンテナ6Lの厚さよりも大きい。凹部85の形状は、図9に示す例に限られない。
【0094】
図9に示すようにアンテナ6Lは、凹部85に配置されている。図5と同様に、アンテナ6Lの下方には、振動体VBが位置していない。第3隙間G3には、振動吸収部材AB1が配置されている。アンテナ6Lと上壁21の第2非シールド部分24Lの間には、振動吸収部材AB3がさらに配置されている。振動吸収部材AB3を配置することで、アンテナ6Lと第2非シールド部分24Lの間に一定の間隔を設けることができる。振動吸収部材AB3は、上述の振動吸収部材AB1,AB2と同じものであってもよいし、異なってもよい。
【0095】
また、図5に示した例においても同様に、アンテナ6Lと第2非シールド部分24Lの間に振動吸収部材AB3を配置してもよい。アンテナ6Lをケース80の凹部85に配置することで、上面82と第2非シールド部分24Lの間の長さを小さくし、筐体1の薄型化を図ることができる。
【0096】
以上説明した本実施形態によれば、ノイズによる影響を抑制し、アンテナの性能を確保できる電子機器100を提供することができる。つまり、筐体1には、振動発生部材8のケース80に形成された導電層90を弾性支持部材Eにより第1シールド部分13および第2シールド部分23と電気的に接続することでシールド壁を形成することができる。形成されたシールド壁によりシールド領域SAで発生するノイズから非シールド領域NSAに配置されたアンテナ6をシールドすることで、アンテナ6の性能の低下を抑制し、アンテナ6に良好な通信環境を提供する。
【0097】
非シールド領域NSAにおいて、アンテナ6を誘電体で形成されたケース80の上方に配置することで筐体1の厚みを増すことなく、アンテナ6に必要な空間を確保し筐体1の薄型化を図ることができる。
【0098】
さらに、弾性支持部材Eは、導電性を有し、導電層90を第1シールド部分13および第2シールド部分23と電気的に接続するだけでなく、ケース80を防振する機能を有している。そのため、スピーカのように動作時に振動する振動体VBが収容されたケース80に導電層90を形成する場合であっても、ケース80と筐体1の間に弾性支持部材Eを配置することで、ケース80の振動が筐体1に伝達されにくい。また、弾性支持部材Eを配置する振動発生部材8と筐体1との隙間G1,G2を小さくでき、筐体1の薄型化を図ることができる。
【0099】
本実施形態であれば、ノイズの発生源となりうる回路基板5とアンテナ6L,6Rの間に新たに専用のシールド壁を設ける必要がないため、専用のシールド壁や必要なクリアランス等の空間を省スペース化するとともに、筐体1にアンテナやスピーカ等の振動発生部材8を収容する広い空間を確保できる。
【0100】
また、筐体1を小型化することで電子機器100全体を軽量化し、ユーザーの利便性を向上させることができる。専用のシールド壁を設ける必要がないため、筐体1の構造を簡略化することで筐体1の製造コストを抑えることができる。さらに、本実施形態における弾性支持部材Eであれば、製造時において筐体1への組み込みを容易に行うことができる。
【0101】
本実施形態における筐体1の他の例として、下筐体10および上筐体20の各々を誘電体で形成し、第1シールド部分13および第2シールド部分23に相当する部分の内面に塗装やめっき等により導電層を形成してもよい。
【0102】
また、第1シールド部分13や第2シールド部分23は、その内部や外面に導体で形成された層と、その他の部分に誘電体で形成された層とを有するように形成されてもよい。このような場合であっても、第1シールド部分13や第2シールド部分23において、当該導体の少なくとも一部は、導電層90に向けて露出している。そのため、当該導体が弾性支持部材Eにより導電層90と電気的に接続されることでシールド壁を形成し、シールド領域SAで発生するノイズから非シールド領域NSAに配置されたアンテナ6をシールドできる。
【0103】
本実施形態においては、非シールド領域NSAは筐体1の前側に位置する両側の角部の周辺にそれぞれ形成されていたが、非シールド領域NSAは筐体1の前側全体に形成されてもよい。
【0104】
図5においては、アンテナ6Lが第2非シールド部分24Lに接着される例を説明したが、アンテナ6L,6Rと上壁21の間にさらにスペーサを設け、当該スペーサを介してアンテナ6L,6Rを上壁21に接着してもよい。当該スペーサを設けることで、アンテナ6と上壁21の間に一定の間隔を設けることができる。
【0105】
なお、本実施形態においては、電子機器100の一例としてノート型PCを開示したが、モバイル型PCやその他の情報処理端末等にも適用できる。アンテナ6L,6RとしてLTE用の通信アンテナを開示したが、無線LAN用の通信アンテナ、その他の無線通信アンテナにも適用できる。
【0106】
振動発生部材8の一例としてスピーカを開示したが、振動発生部材8は筐体1に収容されるファン等であってもよい。弾性支持部材Eの一例として導電ガスケットを開示したが、弾性支持部材Eは金属材料で形成されたコイルばね等であってもよい。
【符号の説明】
【0107】
100…電子機器、1,2…筐体、10…下筐体、11…底壁、13…第1シールド部分、14…第1非シールド部分、20…上筐体、21…上壁、23…第2シールド部分、24…第2非シールド部分、5…回路基板、6L,6R…アンテナ、8L,8R…振動発生部材、80…ケース、81…底面、82…上面、83…側面、85…凹部、90…導電層、91…底部導電層、92上部導電層、93…側部導電層、AB1~AB3…振動吸収部材、E1…第1弾性支持部材、E2…第2弾性支持部材、G1…第1隙間、G2…第2隙間,G3…第3隙間、SA…シールド領域、NSA…非シールド領域、SP…空間領域、VB…振動体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9