(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151371
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】ポンプ支持ブラケット及びポンプ支持構造
(51)【国際特許分類】
B60T 17/02 20060101AFI20220929BHJP
F16F 15/08 20060101ALI20220929BHJP
B60T 17/00 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
B60T17/02
F16F15/08 K
B60T17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021054409
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107238
【弁理士】
【氏名又は名称】米山 尚志
(74)【代理人】
【識別番号】100181434
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 正明
(72)【発明者】
【氏名】木村 悠帆
(72)【発明者】
【氏名】村本 雄一
【テーマコード(参考)】
3D049
3J048
【Fターム(参考)】
3D049BB26
3D049HH09
3D049KK01
3D049MM01
3D049NN03
3J048AA01
3J048AB01
3J048AD05
3J048BA19
3J048DA01
3J048EA08
3J048EA36
(57)【要約】
【課題】2つのポンプを安定して支持しつつ、周辺機器の冷却性能の低下を抑制する。
【解決手段】ポンプ支持ブラケット21は、フレーム部材3Bに固定されるフレーム固定部24,25,26と、各々が所定方向と交叉して起立し、所定方向に離間して相対向する第1及び第2のポンプ支持板部27,28と、第1のポンプ支持板部27の下端縁部と第2のポンプ支持板部28の下端縁部とを連結する下連結板部29と、第1のポンプ支持板部27の上端縁部と第2のポンプ支持板部28の上端縁部とを連結する上連結板部23とを備える。第1及び第2のポンプ支持板部27,28と下連結板部29と上連結板部23とは、閉断面35を形成する。第1及び第2のポンプ支持板部27,28には、第1及び第2のポンプ11,12がそれぞれ取付けられる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に延びて車体フレームを構成するフレーム部材によって第1及び第2のポンプを支持するためのポンプ支持ブラケットであって、
前記フレーム部材に固定されるフレーム固定部と、
各々が前記所定方向と交叉して起立し、前記所定方向に離間して相対向する第1及び第2のポンプ支持板部と、
前記第1のポンプ支持板部の下端縁部と前記第2のポンプ支持板部の下端縁部とを連結する下連結板部と、
前記第1のポンプ支持板部の上端縁部と前記第2のポンプ支持板部の上端縁部とを連結する上連結板部と、を備え、
前記第1及び第2のポンプ支持板部と前記下連結板部と前記上連結板部とは、閉断面を形成し、
前記第1及び第2のポンプ支持板部には、前記第1及び第2のポンプがそれぞれ取付けられる
ことを特徴とするポンプ支持ブラケット。
【請求項2】
請求項1に記載のポンプ支持ブラケットであって、
前記第1及び第2のポンプは、小径のモータ部と大径のベーン部とが同軸状に設けられたベーンポンプであり、
前記第1のポンプ支持板部には、前記第1のポンプの前記モータ部が挿通可能な第1のポンプ取付孔が形成され、
前記第2のポンプ支持板部には、前記第2のポンプの前記モータ部が挿通可能な第2のポンプ取付孔が形成され、
前記第1のポンプは、前記第1のポンプの前記モータ部が前記第2のポンプ支持板部の反対側から前記第1のポンプ取付孔に挿入されて前記第1のポンプ支持板部に取付けられ、
前記第2のポンプは、前記第2のポンプの前記モータ部が前記第1のポンプ支持板部の反対側から前記第2のポンプ取付孔に挿入されて前記第2のポンプ支持板部に取付けられ、
前記第1及び第2のポンプが前記第1及び第2のポンプ支持板部にそれぞれ取付けられたポンプ取付状態では、前記第1及び第2のポンプのポンプ軸が前記所定方向に沿って配置され、且つ前記第1のポンプの前記モータ部と前記第2のポンプの前記モータ部とが前記所定方向と略直交する方向から視て重なる
ことを特徴とするポンプ支持ブラケット。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のポンプ支持ブラケットであって、
前記上連結板部の一端部は、第1方向から前記第1のポンプ支持板部に重なり、前記第1のポンプ支持板部に前記第1方向から締結固定され、
前記上連結板部の他端部は、前記第1方向から前記第2のポンプ支持板部に重なり、前記第2のポンプ支持板部に前記第1方向から締結固定され、
前記フレーム固定部は、前記第1方向と略直交する第2方向から前記フレーム部材に重なり、前記フレーム部材に前記第2方向から締結固定される第1のフレーム固定板部と、前記第1方向及び前記第2方向と略直交する第3方向から前記フレーム部材に重なり、前記フレーム部材に前記第3方向から締結固定される第2のフレーム固定板部とを有し、
前記上連結板部の一端部と前記第1のポンプ支持板部との間、前記上連結板部の他端部と前記第2のポンプ支持板部との間、前記第1のフレーム固定板部と前記フレーム部材との間、及び前記第2のフレーム固定板部と前記フレーム部材との間には、それぞれ弾性材が介在する
ことを特徴とするポンプ支持ブラケット。
【請求項4】
所定方向に延びて車体フレームを構成するフレーム部材と、
第1及び第2のポンプと、
前記フレーム部材によって前記第1及び第2のポンプを支持するためのポンプ支持ブラケットと、を備え、
前記ポンプ支持ブラケットは、前記フレーム部材に固定されるフレーム固定部と、
各々が前記フレーム部材の側方で起立して前記所定方向と交叉し、前記所定方向に離間して相対向する第1及び第2のポンプ支持板部と、前記第1のポンプ支持板部の下端縁部と前記第2のポンプ支持板部の下端縁部とを連結する下連結板部と、前記第1のポンプ支持板部の上端縁部と前記第2のポンプ支持板部の上端縁部とを連結する上連結板部と、を有し、
前記第1及び第2のポンプ支持板部と前記下連結板部と前記上連結板部とは、閉断面を形成し、
前記第1及び第2のポンプ支持板部には、前記第1及び第2のポンプがそれぞれ取付けられる
ことを特徴とするポンプ支持構造。
【請求項5】
請求項4に記載のポンプ支持構造であって、
前記第1及び第2のポンプは、小径のモータ部と大径のベーン部とが同軸状に設けられたベーンポンプであり、
前記第1のポンプ支持板部には、前記第1のポンプの前記モータ部が挿通可能な第1のポンプ取付孔が形成され、
前記第2のポンプ支持板部には、前記第2のポンプの前記モータ部が挿通可能な第2のポンプ取付孔が形成され、
前記第1のポンプは、前記第1のポンプの前記モータ部が前記第2のポンプ支持板部の反対側から前記第1のポンプ取付孔に挿入されて前記第1のポンプ支持板部に取付けられ、
前記第2のポンプは、前記第2のポンプの前記モータ部が前記第1のポンプ支持板部の反対側から前記第2のポンプ取付孔に挿入されて前記第2のポンプ支持板部に取付けられ、
前記第1及び第2のポンプが前記第1及び第2のポンプ支持板部にそれぞれ取付けられたポンプ取付状態では、前記第1及び第2のポンプのポンプ軸が前記所定方向に沿って配置され、且つ前記第1のポンプの前記モータ部と前記第2のポンプの前記モータ部とが前記所定方向と略直交する方向から視て重なる
ことを特徴とするポンプ支持構造。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載のポンプ支持構造であって、
前記上連結板部の一端部は、第1方向から前記第1のポンプ支持板部に重なり、前記第1のポンプ支持板部に前記第1方向から締結固定され、
前記上連結板部の他端部は、前記第1方向から前記第2のポンプ支持板部に重なり、前記第2のポンプ支持板部に前記第1方向から締結固定され、
前記フレーム固定部は、前記第1方向と略直交する第2方向から前記フレーム部材に重なり、前記フレーム部材に前記第2方向から締結固定される第1のフレーム固定板部と、前記第1方向及び前記第2方向と略直交する第3方向から前記フレーム部材に重なり、前記フレーム部材に前記第3方向から締結固定される第2のフレーム固定板部とを有し、
前記上連結板部の一端部と前記第1のポンプ支持板部との間、前記上連結板部の他端部と前記第2のポンプ支持板部との間、前記第1のフレーム固定板部と前記フレーム部材との間、及び前記第2のフレーム固定板部と前記フレーム部材との間には、それぞれ弾性材が介在する
ことを特徴とするポンプ支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車体フレームに2つのポンプを支持するブラケット及びポンプ支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車体両側のサイドフレーム間に跨設され、トラクションモータルームの上方を略閉塞するブラケットプレートが開示されている。ブラケットプレート上には、バキュームポンプ等が装着される。ブラケットプレートのバキュームポンプ配設部位には、バキュームポンプのポンプモータ部よりも大径の取付孔が形成されると共に、その上周縁部に複数個のボス部が立設され、ポンプモータ部を取付孔に挿入してトラクションモータルーム内に突出させ、フランジ部をボス部上にボルト締結することによって、バキュームポンプがブラケットプレート上に立置き配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
商用車などの大型車両では、必要なポンプ容量を確保するために2つのポンプを設ける場合がある。ポンプは重量物であるため、2つのポンプを支持するブラケットとして、車体フレームの2つのフレーム部材間に掛渡される特許文献1のような板状のブラケットは有効である。
【0005】
しかし、2つのフレーム部材間に板状のブラケットを掛渡す構造では、ブラケットの下方にファンを設置して周辺機器を冷却する場合、ファンからの空気の流れがブラケットによって阻害され、周辺機器の冷却効果が低下する可能性がある。
【0006】
そこで本開示は、2つのポンプを安定して支持するとともに、周辺機器の冷却性能の低下を抑制することが可能なポンプ支持ブラケットの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく、本開示の第1の態様に係るポンプ支持ブラケットは、所定方向に延びて車体フレームを構成するフレーム部材によって第1及び第2のポンプを支持するためのブラケットである。また、第1の態様に係るポンプ支持構造は、所定方向に延びて車体フレームを構成するフレーム部材と、第1及び第2のポンプと、フレーム部材によって第1及び第2のポンプを支持するためのポンプ支持ブラケットとを備える構造である。
【0008】
ポンプ支持ブラケットは、フレーム部材に固定されるフレーム固定部と、各々が所定方向と交叉して起立し、所定方向に離間して相対向する第1及び第2のポンプ支持板部と、第1のポンプ支持板部の下端縁部と第2のポンプ支持板部の下端縁部とを連結する下連結板部と、第1のポンプ支持板部の上端縁部と第2のポンプ支持板部の上端縁部とを連結する上連結板部と、を備える。第1及び第2のポンプ支持板部と下連結板部と上連結板部とは、閉断面を形成する。第1及び第2のポンプ支持板部には、第1及び第2のポンプがそれぞれ取付けられる。
【0009】
上記構成では、第1及び第2のポンプが第1及び第2のポンプ支持板部に取付けられ、第1及び第2のポンプ支持板部が下連結板部及び上連結板部とともに閉断面を形成するので、第1及び第2のポンプの支持に必要な剛性を確保することができる。
【0010】
第1及び第2のポンプが取付けられる第1及び第2のポンプ支持板部が何れも起立しているので、周辺機器を冷却するためのファンをポンプ支持ブラケットの下方に設置した場合であっても、ファンからの空気の流れがポンプ支持ブラケットによって阻害され難く、ファンによる周辺機器の冷却性能の低下を抑制することができる。
【0011】
上連結板部の板幅を作業者が把持し易い板幅に設定することにより、ポンプ支持ブラケットに第1及び第2のポンプを取付けた後、ポンプ支持ブラケットをフレーム部材に締結等によって固定する際に、作業者は、上連結板部を一方の手で把持した状態で、他方の手を用いてポンプ支持ブラケットをフレーム部材に固定することができる。
【0012】
本開示の第2の態様は、第1の態様に係るポンプ支持ブラケット及びポンプ支持構造であって、第1及び第2のポンプは、小径のモータ部と大径のベーン部とが同軸状に設けられたベーンポンプである。第1のポンプ支持板部には、第1のポンプのモータ部が挿通可能な第1のポンプ取付孔が形成される。第2のポンプ支持板部には、第2のポンプのモータ部が挿通可能な第2のポンプ取付孔が形成される。第1のポンプは、第1のポンプのモータ部が第2のポンプ支持板部の反対側から第1のポンプ取付孔に挿入されて第1のポンプ支持板部に取付けられる。第2のポンプは、第2のポンプのモータ部が第1のポンプ支持板部の反対側から第2のポンプ取付孔に挿入されて第2のポンプ支持板部に取付けられる。第1及び第2のポンプが第1及び第2のポンプ支持板部にそれぞれ取付けられたポンプ取付状態では、第1及び第2のポンプのポンプ軸が所定方向に沿って配置され、且つ第1のポンプのモータ部と第2のポンプのモータ部とが所定方向と略直交する方向から視て重なる。
【0013】
上記構成では、ポンプ取付状態では、第1及び第2のポンプのポンプ軸は、フレーム部材が延びる所定方向に沿って配置され、2つのポンプ軸はフレーム材の長手方向と略平行となる。また、ポンプ取付状態では、第1のポンプのモータ部と第2のポンプのモータ部とが所定方向と略直交する方向から視て重なる。従って、2つのポンプを限られたスペースに効率良く配置することができる。
【0014】
本開示の第3の態様は、第1又は第2の態様に係るポンプ支持ブラケット及びポンプ支持構造であって、上連結板部の一端部は、第1方向から第1のポンプ支持板部に重なり、第1のポンプ支持板部に第1方向から締結固定される。上連結板部の他端部は、第1方向から第2のポンプ支持板部に重なり、第2のポンプ支持板部に第1方向から締結固定される。フレーム固定部は、第1方向と略直交する第2方向からフレーム部材に重なり、フレーム部材に第2方向から締結固定される第1のフレーム固定板部と、第1方向及び第2方向と略直交する第3方向からフレーム部材に重なり、フレーム部材に第3方向から締結固定される第2のフレーム固定板部とを有する。上連結板部の一端部と第1のポンプ支持板部との間、上連結板部の他端部と第2のポンプ支持板部との間、第1のフレーム固定板部とフレーム部材との間、及び第2のフレーム固定板部とフレーム部材との間には、それぞれ弾性材が介在する。
【0015】
上記構成では、稼働中のポンプの振動のうち、第1の方向の振動は、上連結板部の一端部と第1のポンプ支持板部との間の弾性材、及び上連結板部の他端部と第2のポンプ支持板部との間の弾性材によって主に吸収され、第2方向の振動は、第1のフレーム固定板部とフレーム部材との間の弾性材によって主に吸収され、第3の方向の振動は、第2のフレーム固定板部とフレーム部材との間の弾性材によって主に吸収される。このように、互いに略直交する3方向のそれぞれに対応して弾性材を配置しているので、ポンプの稼働による騒音を効率良く低減することができる。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、2つのポンプを安定して支持するとともに、周辺機器の冷却性能の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1実施形態のポンプ支持構造を備えた車体フレームを車両の前斜め上方から視た斜視図である。
【
図2】
図1のポンプ支持ブラケットの斜視図である。
【
図3】
図1のポンプ支持構造を車両の前斜め上方から視た斜視図である。
【
図4】
図4のポンプ支持構造を車両の前斜め下方から視た斜視図である。
【
図5】ゴムブッシュを介した締結を模式的に示す断面図である。
【
図6】第2の実施形態のポンプ支持構造を車両の前斜め上方から視た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明において、前後方向は車両の前後方向を意味し、左右方向は車両前方を向いた状態での左右方向を意味する。図中の矢印FRは車両の前方を、UPは上方を、INは車幅方向内側をそれぞれ示す。また、ポンプ支持ブラケットに関する各方向は、ポンプ支持ブラケットを車体フレームに固定した姿勢での方向を意味する。
【0019】
図1に示すように、本実施形態に係る車体フレーム1は、車幅方向(所定方向、第1方向)の両側で車両前後方向(第1方向と略直交する第2方向)に延びる左右1対のサイドメンバ2と、車幅方向に沿って延びて左右のサイドメンバ2を連結する複数のクロスメンバ3とによって概略構成される。クロスメンバ3は、左右のサイドメンバ2の前端部を連結する第1クロスメンバ3Aと、第1クロスメンバ3Aの車両後方で左右のサイドメンバ2の中間部を連結する第2クロスメンバ(フレーム部材)3Bとを含む。
【0020】
第2クロスメンバ3Bは、車両後方へ開口するU形状断面であり、上下方向(第1方向及び第2方向と略直交する第3方向)に起立して車幅方向に延びるクロスメンバ縦板部4と、クロスメンバ縦板部4の上端縁部から車両後方へ曲折するクロスメンバ上板部5と、クロスメンバ縦板部4の下端縁部から車両後方へ曲折してクロスメンバ上板部5と対向するクロスメンバ下板部(図示省略)とを一体的に有する。
【0021】
第1クロスメンバ3Aと第2クロスメンバ3Bとの間には、第1及び第2のポンプ11,12が配置される。第1及び第2のポンプ11,12は、ポンプ支持ブラケット21によって第2クロスメンバ3Bに支持される。ポンプ支持ブラケット21の下方には、周辺機器(例えば吸気系の機器など)を冷却するためのファン6が設置される。本実施形態の第1及び第2のポンプ11,12は、ブレーキを作動させるための電動バキュームポンプであり、小径のモータ部13,14と大径のベーン部15,16とが同軸状に設けられたベーンポンプである。なお、ポンプ支持ブラケット21によって支持するポンプ11,12は、ブレーキ用の電動バキュームポンプ以外であってもよい。
【0022】
図1~
図4に示すように、ポンプ支持ブラケット21は、ブラケット本体22と持ち手部(上連結板部)23とから構成される。本実施形態のブラケット本体22は、第1及び第2の上固定板部(第2のフレーム固定板部、フレーム固定部)24,25と、下固定板部(第1のフレーム固定板部、フレーム固定部)26と、第1及び第2のポンプ支持板部27,28と、下連結板部29とを一体的に有し、所定形状の1枚の金属板を曲折することにより形成される。なお、ブラケット本体22を、複数の部材に分割し溶接等により結合して形成してもよい。
【0023】
第1のポンプ支持板部27と第2のポンプ支持板部28とは、各々がクロスメンバ縦板部4の前方で車幅方向と略直交して起立し、車幅方向に離間して相対向する。図示の例では、第1のポンプ支持板部27を左側に配置し、第2のポンプ支持板部28を右側に配置している。
【0024】
下連結板部29は、第1のポンプ支持板部27の下端縁部と第2のポンプ支持板部28の下端縁部との間に略水平に配置される。第1のポンプ支持板部27は、下連結板部29の左側の端縁部から曲折して上方へ延び、第2のポンプ支持板部28は、下連結板部29の右側の端縁部から曲折して上方へ延び、第1のポンプ支持板部27の下端縁部と第2のポンプ支持板部28の下端縁部とは、下連結板部29によって連結される。
【0025】
第1のポンプ支持板部27の上部には、車両後方に向かってクロスメンバ上板部5の上方まで延びる第1延長領域30が一体形成され、第1の上固定板部24は、第1延長領域30の下端縁部から車幅方向(図示の例では左側)に曲折してクロスメンバ上板部5に上方から重なる。第2のポンプ支持板部28の上部には、車両後方に向かってクロスメンバ上板部5の上方まで延び、第1延長領域30から車幅方向に離間して対向する第2延長領域31が一体形成され、第2の上固定板部25は、第2延長領域31の下端縁部から車幅方向(図示の例では左側)に曲折してクロスメンバ上板部5に上方から重なる。第1及び第2の上固定板部24,25には、ボルト挿通孔32(
図2に第1の上固定板部24のボルト挿通孔32のみを図示)が形成され、各ボルト挿通孔32にはゴムブッシュ41が取付けられる。第1及び第2の上固定板部24,25は、ゴムブッシュ41を挿通するボルト51,52(
図1参照)によってクロスメンバ上板部5に上下方向から締結固定され、ゴムブッシュ41を介してクロスメンバ上板部5に弾性支持される。
【0026】
下固定板部26は、下連結板部29の前端縁部から下方へ曲折して延び、クロスメンバ縦板部4に車両前方から重なる。下固定板部26には、上固定板部24,25と同様にボルト挿通孔(図示省略)が形成され、ボルト挿通孔にはゴムブッシュ41が取付けられる。下固定板部26は、ゴムブッシュ41を挿通するボルト(図示省略)によってクロスメンバ縦板部4に車両前後方向から締結固定され、ゴムブッシュ41を介してクロスメンバ上板部5に弾性支持される。
【0027】
このように、ポンプ支持ブラケット21は、第1及び第2の上固定板部24,25がクロスメンバ上板部5に上下方向から締結され、下固定板部26がクロスメンバ縦板部4に車両前後方向から締結されることによって、第2クロスメンバ3Bに固定される。
【0028】
図5に示すように、ゴムブッシュ41は、外周面に環状の係合溝42が形成された筒状の弾性材であり、締結される2つの板部(第1及び第2の板部)43,44の間に介在する。第1の板部43のボルト挿通孔(ブッシュ装着孔)45にゴムブッシュ41を挿入し、ボルト挿通孔45の周縁部を係合溝42に係合することによって、ゴムブッシュ41が第1の板部43に取付けられる。第1の板部43に取付けられたゴムブッシュ41の一端面49に第2の板部44を重ね、ゴムブッシュ41の内径部50及び第2の板部44のボルト挿通孔46にボルト47を挿通し、ナット48を螺合して締付けることによって、2つの板部43,44の間にゴムブッシュ41が介在した状態で、2つの板部43,44が締結される。第1及び第2の上固定板部24,25とクロスメンバ上板部5との締結では、ゴムブッシュ41が取付けられる第1及び第2の上固定板部24,25が第1の板部43であり、クロスメンバ上板部5が第2の板部44である。下固定板部26とクロスメンバ縦板部4との締結では、ゴムブッシュ41が取付けられる下固定板部26が第1の板部43であり、クロスメンバ縦板部4が第2の板部44である。
【0029】
図1~
図4に示すように、持ち手部23は、車幅方向に延びて上下方向と略直交する長板状の部材である。持ち手部23の車幅方向の両端部には、下方へ曲折して延びる第1及び第2の接続部33,34が一体形成され、持ち手部23の板幅(前後方向の幅)は、作業者が片手で把持可能な板幅(長さ)に設定されている。持ち手部23は、第1及び第2の接続部33,34を第1及び第2のポンプ支持板部27,28の上端部に車幅方向からそれぞれ重ね、溶接等によって両者を接合することによってブラケット本体22に固定され、第1のポンプ支持板部27の上端縁部と第2のポンプ支持板部28の上端縁部とを連結する。持ち手部23と第1及び第2のポンプ支持板部27,28と下連結板部29とは、矩形状の閉断面35を形成する。
【0030】
第1のポンプ支持板部27には、第1のポンプ11のモータ部13が挿通可能な円形状の第1のポンプ取付孔36が形成され、第2のポンプ支持板部28には、第2のポンプ12のモータ部14が挿通可能な円形状の第2のポンプ取付孔37が形成される。第1のポンプ取付孔36と第2のポンプ取付孔37とは、上下方向の高さが略等しく、且つ前後方向の位置が相違する。図示の例では、第2のポンプ取付孔37を第1のポンプ取付孔36よりも前方に配置している。第1のポンプ11は、モータ部13が左側(第2のポンプ支持板部28の反対側)から第1のポンプ取付孔36に挿入されて、第1のポンプ支持板部27に取付けられる。第2のポンプ12は、モータ部14が右側(第1のポンプ支持板部27の反対側)から第2のポンプ取付孔37に挿入されて、第2のポンプ支持板部28に取付けられる。第1及び第2のポンプ11,12が第1及び第2のポンプ支持板部27,28にそれぞれ取付けられたポンプ取付状態では、第1及び第2のポンプ11,12のポンプ軸38,39が車幅方向に沿って配置され、且つ第1のポンプ11のモータ部13と第2のポンプ12のモータ部14とが車両前後方向から視て重なる。
【0031】
本実施形態によれば、第1及び第2のポンプ11,12が第1及び第2のポンプ支持板部27,28に取付けられ、第1及び第2のポンプ支持板部27,28が下連結板部29及び持ち手部23とともに閉断面35を形成するので、第1及び第2のポンプ11,12の支持に必要な剛性を確保することができる。
【0032】
第1及び第2のポンプ11,12が取付けられる第1及び第2のポンプ支持板部27,28が何れも起立しているので、ポンプ支持ブラケット21の下方に設置したファン6からの空気の流れがポンプ支持ブラケット21によって阻害され難く、ファン6による周辺機器の冷却性能の低下を抑制することができる。
【0033】
持ち手部23の板幅を作業者が把持し易い板幅に設定しているので、ポンプ支持ブラケット21に第1及び第2のポンプ11,12を取付けた後、ポンプ支持ブラケット21を第2クロスメンバ3Bに締結等によって固定する際に、作業者は、持ち手部23を一方の手で把持した状態で、他方の手を用いてポンプ支持ブラケット21を第2クロスメンバ3Bに固定することができる。
【0034】
また、ポンプ取付状態では、第1及び第2のポンプ11,12のポンプ軸38,39は、第2クロスメンバ3Bが延びる車幅方向に沿って配置され、2つのポンプ軸38,39は第2クロスメンバ3Bの長手方向と略平行となる。また、ポンプ取付状態では、第1のポンプ11のモータ部13と第2のポンプ12のモータ部14とが車両前後方向から視て重なる。従って、2つのポンプ11,12を限られたスペースに効率良く配置することができる。
【0035】
次に、本発明の第2実施形態について、
図6を参照して説明する。本実施形態と第1実施形態とは、持ち手部23をブラケット本体22に結合する形態が相違し、他の構成は共通するため、第1実施形態と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0036】
持ち手部23の第1の接続部(一端部)33は、車幅方向(図示の例で左側)から第1のポンプ支持板部27に重なり、第2の接続部(他端部)34は、車幅方向(図示の例では右側)から第2のポンプ支持板部28に重なる。第1及び第2の接続部33,34には、上固定板部24,25及び下固定板部26と同様にボルト挿通孔(図示省略)が形成され、ボルト挿通孔にはゴムブッシュ41(第2の接続部34のブッシュは図示省略)が取付けられる。第1及び第2の接続部33,34は、ゴムブッシュ41を挿通するボルト(図示省略)によって第1及び第2のポンプ支持板部27,28に車幅方向から締結固定され、ゴムブッシュ41を介して第1及び第2のポンプ支持板部27,28に弾性支持される。
図5に示す例との対応において、ゴムブッシュ41が取付けられる第1及び第2の接続部33,34が第1の板部43であり、第1及び第2のポンプ支持板部27,28が第2の板部44である。
【0037】
第1実施形態で説明したように、第1及び第2の上固定板部24,25は、ゴムブッシュ41を挿通するボルトによってクロスメンバ上板部5に上下方向から締結固定され、ゴムブッシュ41を介してクロスメンバ上板部5に弾性支持される。また、下固定板部26は、ゴムブッシュ41を挿通するボルトによってクロスメンバ縦板部4に車両前後方向から締結固定され、ゴムブッシュ41を介してクロスメンバ上板部5に弾性支持される。
【0038】
本実施形態によれば、稼働中のポンプ11,12の振動のうち、車幅方向の振動は、持ち手部23の第1及び第2の接続部33,34と第1及び第2のポンプ支持板部27,28との間のゴムブッシュ41によって主に吸収され、車両前後方向の振動は、下固定板部26とクロスメンバ縦板部4との間のゴムブッシュ41によって主に吸収され、上下方向の振動は、第1及び第2の上固定板部24,25とクロスメンバ上板部5との間のゴムブッシュ41によって主に吸収される。このように、互いに略直交する3方向(車幅方向、車両前後方向、及び上下方向)のそれぞれに対応してゴムブッシュ41を配置しているので、ポンプ11,12の稼働による騒音を効率良く低減することができる。
【0039】
以上、本発明について、上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではなく、当然に本発明を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例および運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【0040】
例えば、上記実施形態では、第2クロスメンバ3Bによってポンプ11,12を支持しているが、第2クロスメンバ3B以外のフレーム部材によってポンプ11,12を支持してもよい。また、フレーム部材の前方にポンプ11,12を配置しているが、フレーム部材の後方や左右にポンプ11,12を配置してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、車体フレームによって2つのポンプを支持する車両に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1:車体フレーム
2:サイドメンバ
3:クロスメンバ
3A:第1クロスメンバ
3B:第2クロスメンバ(フレーム部材)
4:クロスメンバ縦板部
5:クロスメンバ上板部
6:ファン
11:第1のポンプ
12:第2のポンプ
13,14:モータ部
15,16:ベーン部
21:ポンプ支持ブラケット
22:ブラケット本体
23:持ち手部(上連結板部)
24:第1の上固定板部(第2のフレーム固定板部、フレーム固定部)
25:第2の上固定板部(第2のフレーム固定板部、フレーム固定部)
26:下固定板部(第1のフレーム固定板部、フレーム固定部)
27:第1のポンプ支持板部
28:第2のポンプ支持板部
29:下連結板部
30:第1延長領域
31:第2延長領域
32,45,46:ボルト挿通孔
33:第1の接続部
34:第2の接続部
35:閉断面
36:第1のポンプ取付孔
37:第2のポンプ取付孔
38,39:ポンプ軸
41:ゴムブッシュ
42:係合溝
43:第1の板部
44:第2の板部
47,51,52:ボルト
48:ナット
49:ゴムブッシュの一端面
50:ゴムブッシュの内径部