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特開2022-151377プリント基板、プリント基板の製造方法、固体撮像装置及び電子機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151377
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】プリント基板、プリント基板の製造方法、固体撮像装置及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20220929BHJP
   H05K 3/42 20060101ALI20220929BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20220929BHJP
   H05K 3/46 20060101ALN20220929BHJP
【FI】
H05K1/02 C
H05K3/42 610A
H05K3/42 620
H01L27/146 D
H05K3/46 Z
H05K3/46 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021054416
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】原田 真行
【テーマコード(参考)】
4M118
5E316
5E317
5E338
【Fターム(参考)】
4M118AB01
4M118BA14
4M118CA02
4M118GC08
4M118GC14
4M118GD04
4M118GD07
4M118HA02
4M118HA27
4M118HA30
5E316AA02
5E316AA13
5E316AA27
5E316AA42
5E316AA53
5E316CC04
5E316CC09
5E316CC32
5E316DD02
5E316DD12
5E316DD22
5E316DD32
5E316FF02
5E316FF07
5E316GG15
5E316GG16
5E316GG19
5E316GG22
5E316GG28
5E316HH40
5E317AA25
5E317AA28
5E317BB02
5E317BB12
5E317CC25
5E317CC31
5E317CD01
5E317CD25
5E317CD27
5E317CD32
5E317CD34
5E317GG20
5E338AA02
5E338AA03
5E338AA16
5E338BB13
5E338BB23
5E338BB25
5E338BB75
5E338EE60
(57)【要約】
【課題】マイグレーションによりスルホールビア間が電気的にショートに至ることのないプリント基板、プリント基板の製造方法、固体撮像装置及び電子機器を提供する。
【解決手段】固体撮像装置等に用いられるプリント基板において、隣接して穿設されたスルホールビア間にトレンチビアを穿設し、さらにそのトレンチビア及びスルホールビアを樹脂で埋めることにより、マイグレーションに起因するスルホールビア間のショートの発生を防止できるように構成した。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接して穿設されたスルホールビアと、
前記スルホールビア間に穿設されたトレンチビアと、
を有するプリント基板。
【請求項2】
前記トレンチビアは、前記プリント基板の基材であるガラスクロスを横断するように配設された請求項1に記載のプリント基板。
【請求項3】
前記トレンチビアは、前記プリント基板の内層の配線パターン同士を貫通接続する前記スルホールビア間に配設された請求項1に記載のプリント基板。
【請求項4】
前記トレンチビアは、前記プリント基板の外層の配線パターン同士又は外層の前記配線パターンと内層の前記配線パターン同士を貫通接続する前記スルホールビア間に配設された請求項1に記載のプリント基板。
【請求項5】
前記トレンチビアの平面視の形状は、隣接する前記スルホールビア間を結ぶ直線に対して直交する方向に前記スルホールビアの径よりも前記トレンチビアの幅員の方が長くなるように形成された請求項1に記載のプリント基板。
【請求項6】
隣接する前記スルホールビア間において、いずれか一方の前記スルホールビアを取り囲む前記トレンチビアを形成された請求項1に記載のプリント基板。
【請求項7】
隣接する前記スルホールビア間において、全てのスルホールビアを取り囲むトレンチビアを形成された請求項1に記載のプリント基板。
【請求項8】
隣接する3個以上の前記スルホールビアの略中間の位置に略多芒星状又は略放射状の前記トレンチビアの中心を配置し、前記スルホールビアの周面で形成される空間が前記トレンチビアの端部の先端において、その伸長方向に対して直交する線を結んで構成される多角形の中に納まるように形成された請求項1に記載のプリント基板。
【請求項9】
前記絶縁用のトレンチビアは、樹脂埋めされた請求項1に記載のプリント基板。
【請求項10】
銅張積層板に隣接するスルホールビア用の貫通孔を穿設する工程と、
前記貫通孔を洗浄する工程と、
前記貫通孔の内周面を銅メッキする工程と、
前記スルホールビア間にトレンチビア用の貫通孔を穿設する工程と、
前記トレンチビア用貫通孔を洗浄する工程と、
前記トレンチビア用の貫通孔を樹脂埋めする工程と、
前記樹脂埋めされた個所を研磨する工程と、
前記樹脂埋め個所の蓋メッキ及び前記銅張積層板に配線パターンを形成する工程と、
を有するプリント基板の製造方法。
【請求項11】
隣接して穿設されたスルホールビアと、
前記スルホールビア間に穿設され樹脂で埋められたトレンチビアと、
を有するプリント基板を備えた固体撮像装置。
【請求項12】
隣接して穿設されたスルホールビアと、前記スルホールビア間に穿設され樹脂で埋められたトレンチビアと、を有するプリント基板を備えた固体撮像装置を有する電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プリント基板、プリント基板の製造方法、当該プリント基板を有する固体撮像装置及び当該固体撮像装置を有する電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント基板の製造工程において、配線パターンの微細化及び多層化に伴い、配線材料である銅(Cu)がプリント基板のガラス繊維基材の絶縁層中に拡散し、配線間でショートを引き起こすことが問題となっている。プリント基板とは、例えばガラス繊維基材の絶縁層と、銅箔からなる金属パターンが形成された配線層とを交互に積層することによって立体的に電気回路を構成するものである。
【0003】
かかるプリント基板においては、内層間や外層と内層又は外層同士を電気的に接続する個所に貫通孔を穿設し、貫通孔の内周面に銅メッキを施したスルホールビアを設けることにより当該個所が接続される。このスルホールビアは、隣接して設けられ、しかも両者に異電圧が印加されて、電界が生じた状態で使用されることが多い。このような使用状態において、プリント基板の銅が絶縁層中に拡散するマイグレーションという現象を生じることがある。その要因としては、電界、電流、温度、湿度などがあげられる。また、このような現象は、ガラス繊維基材のプリント基板の孔あけ加工工程や孔あけ加工後の樹脂残渣を除去する洗浄工程(デスミア工程)において、スルホールビアの内周面に露出するガラス繊維の方向に沿ってクラック(空隙)生成された場合に、そのガラス繊維の方向に沿って生じやすい。
【0004】
プリント基板の使用環境により、隣接するスルホールビア間に介在する絶縁層の表面が吸湿した場合には、スルホールビア間には、通常直流電圧が印加されているために、その層が電解質として作用する。隣接するスルホールビア間に電界が存在する場合は、電界の陽極側となるスルホールビアの界面において、電子を放出する酸化反応であるアノード反応が起こる。その結果、陽極側となるスルホールビアから銅イオンが溶出する。
【0005】
溶出した銅イオンは、クーロン力により陰極側となるスルホールビアに向かってガラス繊維の方向に沿って移動し、析出される。そして、陰極側となるスルホールビアから陽極側となるスルホールビアに向かって基板表面においては、デンドライト(dendrite:樹枝状晶)が生成される。また、プリント基板の内層においては、基板のガラス繊維の方向に沿ってCAF(Conductive Anodic Filament)が生成される。このような現象は、マイグレーションと呼ばれている。その結果、スルホールビア間でガラス繊維基材のガラス繊維の方向に沿って電気回路が形成されてショートに至るという問題がある。なお、マイグレーションの詳細については後述する。
【0006】
かかる問題点に対して、特許文献1には、配線材料の拡散バリア層を設けることにより、配線材料が絶縁膜中を拡散して配線間でショートが発生することを防止し、信頼度を向上させる多層プリント基板に関する技術が開示されている。
【0007】
当該技術では、多層プリント基板は、基板本体上に銅膜配線パターンと絶縁層パターンが交互に積層されている。そして、銅膜配線パターンと絶縁層パターンとの間には、絶縁層パターン中への銅の拡散を抑制する銅拡散バリア層が形成されている。
このように、銅拡散バリア層を形成することにより、絶縁膜パターン中へ銅が拡散することに起因する配線間のショート(短絡)の発生を防止することができる。このため、信頼性の高い多層プリント基板を得ることができるというものである。
【0008】
また、前記絶縁膜パターンは低誘電率(比誘電率3.5以下)を有し、且つ光照射部分又はプラズマ照射部分のエッチング特性が変化する感光性有機絶縁膜により形成されている。また、低誘電率であるために配線間容量Cの値が小さい。このため、導電膜の抵抗をRとしたときの時定数CRの値によって定まる信号遅延を小さくすることができるので、多層プリント基板の信号伝送速度を高速にすることができるというものである。
【0009】
特許文献2には、表面に金属電極が形成され、絶縁膜によりSiO2よりなる非金属領域が形成され、電極及び非金属領域を含む最表面に絶縁膜が形成された後、電極を囲むように金属の非金属領域での拡散を防止する構造として空隙が形成された基板が、表面を、電極が対向するように2枚貼り合わされるようにする技術が開示されている。そして、当該技術は、半導体装置及び半導体装置の製造方法、固体撮像素子であるCMOSイメージセンサ、固体撮像素子を利用した撮像装置、並びに電子機器に適用することができるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001-119149号公報
【特許文献2】特開2016-181531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に開示された多層プリント基板に関する技術は、スルホールビア間のショートを防止する技術ではなく,配線間のショートを防止する技術であるため、本技術が解決しようとする課題が異なるものである。
【0012】
特許文献2に開示された半導体装置及び半導体装置の製造方法、固体撮像素子、固体撮像素子を利用した撮像装置、並びに電子機器に関する技術は、単に空隙を設けるだけであり、空隙についてさらに対策を施すものではない。
【0013】
したがって、空隙を形成する面が露出状態のままであるため、湿度により当該露出面が吸湿し、絶縁性能の低下や加工に伴う応力による膨張等の変形を生ずるおそれがあるという問題がある。
【0014】
本開示は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、プリント基板において隣接して穿設されたスルホールビアとスルホールビアとの間にトレンチビアを設け、さらにそのトレンチビアを樹脂で埋めるよう構成するものである。このように構成することにより、スルホールビア間にガラス繊維の裁断面が露出することがなくなり、マイグレーションに起因して電気的にショートに至ることのないプリント基板、プリント基板の製造方法、固体撮像装置及び電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本開示は、上述の問題点を解消するためになされたものであり、その第1の態様は、隣接して穿設されたスルホールビアと、前記スルホールビア間に穿設され樹脂で埋められたトレンチビアと、を有するプリント基板である。
【0016】
また、第1の態様において、前記トレンチビアは、前記プリント基板の基材であるガラスクロスを横断するように配設されてもよい。
【0017】
また、第1の態様において、前記トレンチビアは、前記プリント基板の内層の配線パターン同士を貫通接続する前記スルホールビア間に配設されてもよい。
【0018】
また、第1の態様において、前記トレンチビアは、前記プリント基板の外層の配線パターン同士又は外層の前記配線パターンと内層の前記配線パターン同士を貫通接続する前記スルホールビア間に配設されてもよい。
【0019】
また、第1の態様において、前記トレンチビアの平面視の形状は、隣接する前記スルホールビア間を結ぶ直線に対して直交する方向に前記スルホールビアの径よりも前記トレンチビアの幅員の方が長くなるように形成されてもよい。
【0020】
また、第1の態様において、隣接する前記スルホールビア間において、いずれか一方の前記スルホールビアを取り囲む前記トレンチビアを形成してもよい。
【0021】
また、第1の態様において、隣接する前記スルホールビア間において、全ての前記スルホールビアを取り囲む前記トレンチビアを形成してもよい。
【0022】
また、第1の態様において、隣接する3個以上の前記スルホールビアの略中間の位置に略多芒星状又は略放射状の前記トレンチビアの中心を配置し、前記スルホールビアの周面で形成される空間が前記トレンチビアの端部の先端において、その伸長方向に対して直交する線を結んで構成される多角形の中に納まるように形成してもよい。
【0023】
また、第1の態様において、前記絶縁用の前記トレンチビアは、樹脂埋めしてもよい。
【0024】
また、その第2の態様は、銅張積層板に隣接するスルホールビア用の貫通孔を穿設する工程と、前記貫通孔を洗浄する工程と、前記貫通孔の内周面を銅メッキする工程と、前記スルホールビア間にトレンチビア用の貫通孔を穿設する工程と、前記トレンチビア用貫通孔を洗浄する工程と、前記トレンチビア用の貫通孔を樹脂埋めする工程と、前記樹脂埋めされた個所を研磨する工程と、前記樹脂埋め個所の蓋メッキ及び前記銅張積層板に配線パターンを形成する工程と、を有するプリント基板の製造方法である。
【0025】
また、その第3の態様は、隣接して穿設されたスルホールビアと、前記スルホールビア間に穿設され樹脂で埋められたトレンチビアと、を有するプリント基板を備えた固体撮像装置である。
【0026】
また、その第4の態様は、隣接して穿設されたスルホールビアと、前記スルホールビア間に穿設され樹脂で埋められたトレンチビアと、を有するプリント基板を備えた固体撮像装置を有する電子機器である。
【0027】
上記の態様を取ることにより、マイグレーションに起因してスルホールビア間が電気的にショートに至ることを防止することができる。
【0028】
本開示によれば、プリント基板に穿設されたスルホールビアとスルホールビアとの間にトレンチビアを設け、さらにそのトレンチビアを樹脂で埋めるよう構成することにより、スルホールビア間にガラス繊維の裁断面が露出することがなくなり、マイグレーションにより電気的にショートに至ることのないプリント基板、プリント基板の製造方法、固体撮像装置及び電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本開示に係るプリント基板を有する固体撮像装置の断面図である。
図2】固体撮像装置のカラーフィルタの平面図である。
図3】プリント基板に穿設されたスルホールビアとスルホールビアとの間で生じるマイグレーションを説明する内層部分の断面図である。
図4】本開示に係るプリント基板の第1実施形態の部分拡大断面図である。
図5】本開示に係るプリント基板の第1実施形態の工程を示す図である。
図6】本開示に係るプリント基板の主要工程の部分拡大断面図(その1)である。
図7】本開示に係るプリント基板の主要工程の部分拡大断面図(その2)である。
図8】本開示に係るプリント基板の主要工程の部分拡大断面図(その3)である。
図9】本開示に係るプリント基板の主要工程の部分拡大断面図(その4)である。
図10】本開示に係るプリント基板の第2実施形態の部分拡大断面図である。
図11】本開示に係るプリント基板の第2実施形態の工程を示す図である。
図12】本開示に係るプリント基板のスルホールビアの第1実施形態を示す図である。
図13】本開示に係るプリント基板のスルホールビアの第2実施形態を示す図である。
図14】本開示に係るプリント基板のスルホールビアの第3実施形態を示す図である。
図15】本開示に係るプリント基板のスルホールビアの第4実施形態を示す図である。
図16】本開示に係るプリント基板のスルホールビアの第5実施形態を示す図である。
図17】本開示に係るプリント基板を有する電子機器の例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に、図面を参照して、本開示を実施するための形態(以下、「実施形態」と称する。)を下記の順序で説明する。以下の図面において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は、模式的なものであり、各部の寸法の比率等は現実のものとは必ずしも一致しない。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれることは勿論である。
1.マイグレーションの発生原因
2.本開示に係るプリント基板の第1実施形態
3.本開示に係るプリント基板の第2実施形態
4.トレンチビアの第1実施形態
5.トレンチビアの第2実施形態
6.トレンチビアの第3実施形態
7.トレンチビアの第4実施形態
8.トレンチビアの第5実施形態
9.本開示に係るプリント基板を有する電子機器の構成例
【0031】
<1.マイグレーションの発生原因>
以下に、マイグレーションについて、さらに詳しく説明する。マイグレーションには、イオンマイグレーションとエレクトロマイグレーションがある。
イオンマイグレーションとは、基板の電極間に電圧を印加すると配線パターン(銅)の陽極側となる部分が電子をもらうことで表面から金属原子が基板表面や基材内部に含まれる水分やイオン化促進物質に溶出し、電界によるクーロン力で陰極側に移動し、電子交換により金属を析出する現象をさす。電界強度が大きい場合に生じやすい。
【0032】
一方、エレクトロマイグレーションとは、金属配線に電流を流すことにより金属配線中を移動する電子と金属原子の間で衝突が起こり、金属原子が徐々に陽極側に輸送されることにより陰極側に金属の欠損が生じてオープン(断線)となり、陽極側では金属が析出してショートに至る現象である。高温で電流密度が高い場合に生じやすい。
なお、プリント基板で発生するマイグレーションは、主としてイオンマイグレーションである。以下、プリント基板におけるイオンマイグレーションを例に説明する。
【0033】
プリント基板10は、図4に示すように、銅箔10cで形成された導電層である配線パターン12a~12dと、ガラス繊維10aとエポキシ樹脂33の基材で形成された絶縁層13a~13cを交互にサンドイッチ状に積層した構造を有している。そして、プリント基板10の両面の表面部分を外層35といい、内部の層を内層34という。外層35及び内層34には絶縁層13a~13cに張り合わされた銅箔10cにエッチングが施されることにより、配線パターン12a~12dが形成される。プリント基板10は、まず最初に内層34が形成され、さらにその両面に外層35が積層されて形成される。
【0034】
すなわち、内層34のみの場合は両面基板と呼ばれる。両面基板の両面に外層35を積層したものは4層基板と呼ばれる。さらに、その両面に外層35を積層したものは6層基板と呼ばれる。以下同様である。これからもわかるように、n層基板と呼ぶときの「n」とは、配線パターンの数のことを意味する。本開示に係るプリント基板10は、特定の層数に限定されるものではない。すなわち、本開示に係るプリント基板10は、両面基板や4層基板等の多層基板などにも適用することができるものである。
【0035】
ここで、マイグレーションの発生原因について、説明を簡単にするために、図3の内層34の断面図及び図6の主要工程の部分拡大断面図を例に説明する。
内層34を形成する銅張積層板31は、図6Aに示すように、絶縁層13bの両面に銅箔10c、10cを張り合わせて形成されている。絶縁層13bは、ガラス繊維10aを織ったガラス布10bにエポキシ樹脂33を含浸させて形成されている。
【0036】
銅張積層板31は、図6Bに示すように、ドリル90により貫通孔30が穿設される。銅張積層板31を構成する絶縁層13bにはガラス繊維10aが積層されているために、貫通孔30は絶縁層13bを形成するガラス繊維10aを裁断する。したがって、貫通孔30の内周面にはガラス繊維10aの裁断面が露出する。
【0037】
しかもガラス繊維10aは所定の硬度を有しているために裁断は容易でない。したがって、裁断面はバリを形成しやすく、ガラス繊維10aの裁断面において繊維方向に沿ってクラック32を生じる。さらに、図6Cに示すように、洗浄工程において、切削されたエポキシ樹脂33やガラス繊維10aの残渣を除去するために貫通孔30の内周面に負荷がかかり、同様にしてガラス繊維10aの方向に沿って微小なクラック32を生じる。
【0038】
プリント基板10のスルホールビア14、14間に直流電圧が印加されている場合には、隣接するスルホールビア14、14間に電界が存在する。ここで、陽極となるスルホールビアを14a、陰極となるスルホールビアを14bとする(以下、単なるスルホールビアを指し示す場合には符号を14と、極性を有する場合を指し示す場合には符号を14a、14bと表記する。)。そこで、隣接するスルホールビア14a、14b間に介在する絶縁層13a~13cの表面が、使用環境により吸湿した場合には、その層が電解質として作用する。このために、電界の陽極側のスルホールビア14aの界面において、酸化反応である電子を放出するアノード反応が起こる。その結果、陽極側のスルホールビア14aから銅イオンが溶出する。
【0039】
溶出した銅イオンは、クーロン力により陰極側となるスルホールビア14bに向かってガラス繊維10aの方向に沿って移動し、析出される。その結果、図3に示すように、陰極側となるスルホールビア14bから陽極側となるスルホールビア14aに向かってCAF17が形成される。そして、CAF17が伸長することによりスルホールビア14a、14b間に電気回路が形成されてショートに至る。
以上のようにしてマイグレーションの発生に起因する不適合を生じる。
【0040】
<2.本開示に係るプリント基板の第1実施形態>
[本開示に係るプリント基板を有する固体撮像装置の構成例]
図1は、プリント基板10を有する半導体装置100の、例えば固体撮像装置101の断面図である。以下、半導体装置100の例としてCMOSセンサなどの固体撮像装置101について説明する。固体撮像装置101は、図1に示すように、プリント基板10上にセンサ基板6が接着されている。プリント基板10は、その下面に外部回路と接続するためのハンダボールによる複数の外部接続端子9を配設している。
【0041】
センサ基板6は、例えば、単結晶シリコンで形成されている。センサ基板6の上面(表面)には、図1に示すように、画素領域23と周辺領域24とが設けられている。センサ基板6の上方には、センサ基板6の受光部21に対向してカバーガラス3が配設されている。また、受光部21とカバーガラス3とは、図1に示すように、受光部21の周辺領域24の周縁を囲繞するようにシール樹脂4が塗布され、センサ基板6とカバーガラス3はシール樹脂4を介して接着されている。このように両者が接着されることにより、センサ基板6とカバーガラス3の対向面との間には、空洞であるキャビティ部8が形成されている。
【0042】
センサ基板6の画素領域23には、複数の画素22が平面視マトリクス状に配列して形成されている。これらの画素22は、その集合体が全体として被写体像を形成する。
画素22は、光学系(図示せず。)によって結像された被写体像の一部分を構成する光信号をそれぞれ電気信号に変換する光電変換素子である。光電変換素子は、例えば、フォトダイオードであり、外付けの撮像レンズを含む光学系を介して被写体像として入射する光を受光面で受光し、光電変換することで信号電荷を生成する。
【0043】
複数の画素22のそれぞれの上面には、それぞれの画素22を覆うようにカラーフィルタ25が形成されている。カラーフィルタ25は、例えば図2の平面図に示すように、色の3原色であるR(赤)、G(緑)、B(青)のカラーフィルタ25が、ベイヤー(Bayaer)配列をもってオンチップカラーフィルタ(OCCF:On Chip Color Filter)としてアレイ状に形成されている。なお、カラーフィルタ25の配列パターンはベイヤーパターンに限定されるものではない。
また、カラーフィルタ25に重なるように、赤外カットフィルタ(IR Cut Filter)27を設けてもよい。
【0044】
カラーフィルタ25の上面には、直接に、又は赤外カットフィルタ27を介して、それぞれの画素22が集光するためのマイクロレンズアレイ26がそれぞれ設けられている。そして、マイクロレンズアレイ26は、カバーガラス3、カラーフィルタ25及び赤外カットフィルタ27を透過してきた光を、それぞれの画素22が受光して光電変換するよう構成している。
【0045】
周辺領域24は、画素領域23を囲繞するように周りを取り囲んだ領域である。周辺領域24の上面には、画像信号を外部へ取り出すための各信号に対応した複数のパッド29が形成されている。また、プリント基板10の上面のセンサ基板6を囲繞する領域には、外部と接続するための各信号に対応した複数のパッド11が配設されている。
【0046】
そして、センサ基板6の上面の周辺領域24の周縁に設けられたパッド29と、プリント基板10のパッド11とは、金線などのボンディングワイヤ7により、それぞれ接続されている。プリント基板10には、図4に示すように、内層34に配線パターン12b、12cが、外層35に配線パターン12a、12dが形成されている。そして、各配線パターン12a~12dは、スルホールビア14を介して各パッド11やプリント基板10の下面に配設された先述のハンダボールなどで形成された外部接続端子9と接続されている。なお、詳細は後述する。
【0047】
[本開示に係るプリント基板の製造方法例]
図4は、本開示に係るプリント基板10の第1実施形態の部分拡大断面図である。ここで、プリント基板10は、いわゆる4層基板を例に説明する。
【0048】
図4において、プリント基板10は、内層34と、その両面(本図の上下面)に積層された外層35、35とから構成されている。内層34と外層35、35とは、配線パターン12a、12b、12c及び12dと絶縁層13a、13b及び13cが交互に積み重ねられたサンドイッチ構造を形成している。
【0049】
配線パターン12a~12dは、銅箔10cで形成された導電層である。そして、先述のとおり、各配線パターン12a~12dのそれぞれの間には、それぞれ絶縁層13a、13b及び13cが配設されており、いわば、銅箔10cで形成された導電層とガラス繊維10a基材で形成された絶縁層13a~13cとを交互にサンドイッチ状に積層した構造を形成している。そして配線パターン12a~12dは、銅箔10cをエッチングする等により形成され、電気回路を構成する。
【0050】
また、内層34の銅箔10c、10c間にスルホールビア14a、14bが設けられ、樹脂16が充填されている。これにより、配線パターン12b、12c間が電気的に接続されている。
また、スルホールビア14a、14b間に、ガラス繊維10aを横断する方向、すなわち裁断するようにトレンチビア18を穿設し、その内部を樹脂16で充填している。したがって、スルホールビア14a、14bの外周面にガラス繊維10aの方向に沿って微小なクラック32が存在したとしても、当該トレンチビア18を配設することによりCAF17の伸長を阻止することができる。これにより、マイグレーションに起因するスルホールビア14a、14b間のショートの発生を防止することができる。
【0051】
プリント基板10は、具体的には、概略、図5の工程図に示すようにして製造される。また、主要工程におけるプリント基板10の概略断面を図4及び図6図9に示す。
【0052】
プリント基板10の製造には、図6Aに示すように、例えば、ガラス布10b(ガラスクロス)にエポキシ樹脂33を含侵させた絶縁層13bの両面に銅箔10cを張り合わせて形成された銅張積層板31を準備する。すなわち、銅張積層板31は基材となる絶縁性の高いガラス繊維10aで織られたガラス布10bに、例えばエポキシ樹脂33を含浸させて絶縁層13bを形成し、その両面に銅箔10c、10cを重ね合わせてプレス機で加熱及び加圧することで形成される(ステップS11)。このようにして形成された銅張積層板31は、プリント基板10の内層34を構成する。
【0053】
次に、図6Bに示すように、内層34の銅箔10c、10c間を接続するために、ドリル90により銅箔10c、10c間の所定の個所にスルホールビア14a、14b用の貫通孔30を穿設する(ステップS12)。
【0054】
そして、図7Cに示すように、貫通孔30の内部に残留しているガラス繊維10aやエポキシ樹脂33などの切削屑を洗浄により除去する(ステップS13)。
【0055】
次に、洗浄が終わった貫通孔30の内周面に、図7Dに示すように、銅メッキを行う。これにより、スルホールビア14a、14bが形成される(ステップS14)。
このように、内層34の銅箔10c、10c間にスルホールビア14a、14bを設けることにより銅箔10c、10cが電気的に接続される。
【0056】
次に、図8Eに示すように、スルホールビア14a、14b間に、ドリル90により所定の径の貫通孔30であるトレンチビア18を穿設する(ステップS15)。
【0057】
次に、図7Cに示すと同様に、穿設されたトレンチビア18の内部に残留しているガラス繊維10aやエポキシ樹脂33などの切削屑を洗浄により除去する(ステップS16)。
【0058】
次に、図8Fに示すように、銅メッキがされたスルホールビア14a、14bの内部及びトレンチビア18の内部に樹脂16を充填する(ステップS17)。
【0059】
樹脂16の充填が完了すると、樹脂16を充填したスルホールビア14a、14b及びトレンチビア18の樹脂16の充填口を研磨して平坦化する(ステップS18)。
【0060】
平坦化されたスルホールビア14a、14bの充填口の上面は、図9Gに示すように、銅により蓋メッキされる。併せて配線パターン12b、12cが形成される。ここで、配線パターン12b、12cは、次のようにして形成される。すなわち、銅張積層板31の両面に張り合わされた銅箔10c、10cに露光・現像及びエッチングを行うことで内層34の配線パターン12b、12cが形成される(ステップS19)。
以上のようにして4層基板の内層34の部分である第2層42と第3層43が形成される。ここで、第2層42と第3層43上に、ステップS22で説明しているソルダレジスト19を塗布すると両面基板になる。4層基板にするには、ステップ19に引き続き、ステップ20以下の工程を行う。
【0061】
次に、内層34の上下の両面に絶縁層13a、13cを張り合わせ、さらに各面に配線パターン12a、12dとなる銅箔10c、10cを重ね合わせてプレス機で加熱及び加圧する。これにより外層35である第1層41と第4層44を積層する(ステップS20)。
【0062】
次に、第1層41及び第4層44の配線パターン12a、12dを形成する。具体的には、内層34となる第2層42と第3層43のそれぞれの外面に絶縁層13a、13cを介して張り合わされた第1層41と第4層44となる銅箔10c、10cに露光・現像及びエッチングを行うことで外層35の配線パターン12a、12dが形成される。
【0063】
また、第1層41と第2層42及び/又は第3層43と第4層44を接続する場合には、第1層41の銅箔10cと絶縁層13a及び/又は第4層44の銅箔10cと絶縁層13cの所定の個所をドリル90により穿孔する。そして、切削屑を除去した後、穿設された穴の内周面を銅メッキすることで、接続ビア15が形成される。その結果、所定の配線パターン12aと12d同士が電気的に接続される。以上のようにして、図9Hに示すように、第1層41と第4層44が形成される(ステップS21)。
【0064】
上記の工程が終わると第1層41と第4層44の上面にソルダレジスト19を塗布し、配線パターン12a、12dを絶縁する。ソルダレジスト19は、絶縁膜を形成する保護インキであり、ハンダなどの導電体が不必要な部分へ付着してショートするのを防止する。また、塵埃や熱、湿気などから配線パターン12a、12dを保護し、絶縁性を維持するものである(ステップS22)。
【0065】
以上のような工程を経ることにより、本開示に係るプリント基板10を製造することができる。なお、上記説明では4層基板を例に説明したが、同様の工程を繰り返すことにより6層や8層のプリント基板10を製造することができる。このようにして形成されたプリント基板10の板厚は、例えば、0.6mmである。しかし、この寸法に限定されるものではない。
【0066】
本開示によれば、プリント基板10は、上記のように、電位差を有するスルホールビア14a、14b間にトレンチビア18を穿設し、その内部を樹脂16で充填して形成したものである。スルホールビア14a、14b間にトレンチビア18を配設することにより、例えば、スルホールビア14a、14b間にガラス繊維10aの裁断面にクラック32が発生したとしても、トレンチビア18及びその内部に充填された樹脂16を介在させることによりCAF17の伸長を阻止することができる。これにより、マイグレーションによるスルホールビア14a、14b間のショートの発生を防止することができる。
【0067】
また、スルホールビア14a、14b及びトレンチビア18の内部に充填する樹脂16は、プリント基板10の絶縁層13a~13cを形成する材料よりも誘電率の小さな絶縁性を有する樹脂16を充填することにより絶縁性を確保することができる。また、配線パターン12a~12d相互間に生成される静電容量を小さくすることができるため、信号の遅延を防止することができ、高速処理を実現することができる。
【0068】
さらに、スルホールビア14a、14b及びトレンチビア18の内部に充填する樹脂16の材料を同じものとすることにより、樹脂16を同時に充填することができる。これにより樹脂16の充填は1回の工程で済み、段取りや充填作業の作業性の改善につながり、コストを下げることができる。
【0069】
また、隣接するスルホールビア14a、14bに印加される電位差が大きく、しかも絶縁距離が十分確保できない場合には、スルホールビア14a、14b間の電界強度が大きくなり絶縁性能を維持できない場合がある。さらに、電位差が大きいとマイグレーションを生じやすい。このような場合には、隣接するスルホールビア14a、14b間にトレンチビア18を設けるとともに、その内部には誘電率の大きな絶縁性を有する樹脂16を充填してもよい。誘電率の大きな絶縁性を有する樹脂16は、耐絶縁性能が優れているため、絶縁距離が小さい場合においても絶縁性を確保することができる。
また、これに関連して、誘電率の大きな絶縁性を有する樹脂16をトレンチビア18に充填すると樹脂16は誘電分極を起こし、誘電分極によって発生した電荷が新たな電界を作るため、絶縁層13a~13cの電界強度が弱められる。これによりマイグレーションの発生を抑制する効果も生ずる。
【0070】
このように、スルホールビア14a、14b及びトレンチビア18の内部に充填される樹脂6は、いずれも誘電率の小さな絶縁性を有する樹脂16であってもよい。また、スルホールビア14a、14bの内部には、誘電率の小さな絶縁性を有する樹脂16を充填し、トレンチビア18の内部には、誘電率の大きな絶縁性を有する樹脂16を充填してもよい。
【0071】
<3.本開示に係るプリント基板の第2実施形態>
本開示に係るプリント基板10の第2実施形態は、図10に示すように、隣接しているスルホールビア14a、14bが第1層41から第4層44に貫通して設けられ、トレンチビア18を、ガラス繊維10aを横断する方向すなわち裁断するように貫通し、その内部を樹脂16で充填するものである。したがって、スルホールビア14a、14bの外周面にガラス繊維10aの方向に沿って微小なクラック32が存在したとしても、当該トレンチビア18を穿設することによりCAF17の伸長を阻止することができる。これにより、マイグレーションに起因するスルホールビア14a、14b間のショートの発生を防止することができる。
【0072】
以下、プリント基板10は、4層基板を例に説明する。本図において、配線パターン12a、12b、12c及び12dは、銅箔10cで形成された導電層である。そして、各配線パターン12a~12dのそれぞれの間には、絶縁層13a、13b及び13cがそれぞれ配設されている。すなわち、本図に示すプリント基板10は、銅箔10cで形成された導電層である配線パターン12a~12dと、ガラス繊維10aエポキシ樹脂33を含浸させた基材で形成された絶縁層13a~13cとを交互にサンドイッチ状に積層した構造をしている。そして配線パターン12a~12dは、銅箔10cをエッチングする等により形成され、電気回路を構成する。
【0073】
スルホールビア14a、14bは、内層34に設けられたスルホールビア14と重ならない位置に、第1層41から第4層44まで貫通している。そして、スルホールビア14a、14b間には、トレンチビア18が同じく貫通している。第2層42及び第3層43において、スルホールビア14a、14bを配線パターン12b、12cに接続しない場合には、これらの配線パターン12b、12cと所定の距離だけ離隔する。また、これらと接続する場合には、所定の配線パターン12b、12cにランドを設けて、そこを貫通接続する。
【0074】
スルホールビア14a、14b及びトレンチビア18は、その内部に樹脂16を充填し、スルホールビア14a、14bの開口部には銅メッキにより蓋部が設けられている。
プリント基板10の表面と裏面の配線パターン12a、12dの上面はソルダレジスト19が塗布されて配線パターン12a、12dを絶縁し保護する。
【0075】
このように、第1層41から第4層44まで貫通するスルホールビア14a、14bにおいても、両者の間にトレンチビア18が貫通し、その内部を樹脂16で充填している。このため、絶縁層13a~13cに生じたクラック32に沿ってCAF17が伸長してきてもスルホールビア14a、14b間のショートの発生を防止することができる。
【0076】
次に、第1層41から第4層44まで貫通するスルホールビア14a、14b及びトレンチビア18を穿設する工程について図11により説明する。第1層41から第4層44までを貫通するスルホールビア14a、14b及びトレンチビア18を穿設する工程は、第1層41及び第4層44を積層した後である(図5のステップS20参照)。
【0077】
すなわち、図11のステップS31からS40までは、図5のステップS11から20までと同様である。したがって、図11のステップS31からS40までの説明は省略する。また、ステップS12からステップS20で説明した図6図9に示す工程に相当する工程は、これらの図を参照することとする。
図11において、内層34に第1層41及び第4層44を積層した後(ステップS40)、第1層41から第4層44まで貫通するスルホールビア14a、14b用の貫通孔30を穿設する(ステップS41)。
【0078】
次に、貫通孔30の内部に残留しているガラス繊維10aやエポキシ樹脂33などの切削屑を洗浄により除去する(ステップS42)。
【0079】
洗浄が終わった貫通孔30の内周面に銅メッキを行う(ステップS43)。これにより、スルホールビア14a、14bが形成され、両配線パターン12a、12d間が電気的に接続される。
【0080】
次に、スルホールビア14a、14b間に、図10に示すように、ドリル90により所定の径の貫通孔であるトレンチビア18を穿設する(ステップS44)。
【0081】
次に、穿設されたトレンチビア18の内部に残留しているガラス繊維10aやエポキシ樹脂33などの切削屑を洗浄により除去する(ステップS45)。
【0082】
次に、銅メッキがされたスルホールビア14a、14bの内部及びトレンチビア18の内部に、図10に示すように、樹脂16を充填する(ステップS46)。
【0083】
樹脂16の充填が完了すると、樹脂16を充填したスルホールビア14a、14b及びトレンチビア18の樹脂16の充填口を研磨して平坦化する(ステップS47)。
【0084】
平坦化されたスルホールビア14a、14bの充填口の上面は、銅により蓋メッキされる。併せて配線パターン12b、12cが形成される(ステップS48)。
以上のようにして4層基板の外層35である第1層41と第4層44が形成され、スルホールビア14a、14bにより所定の配線パターン12a~12d間が電気的に接続される。
【0085】
上記の工程が終わると第1層41と第4層44の上面にソルダレジスト19を塗布し、配線パターン12a、12dを絶縁する(ステップS49)。
以上のような工程を経ることにより、本開示に係るプリント基板10を製造することができる。なお、上記説明では4層基板を例に説明したが、同様の工程を繰り返すことにより6層や8層のプリント基板10を製造することができる。
【0086】
また、図10では、スルホールビア14a、14bの両方とも第1層41から第4層44まで貫通する場合を例に説明したが、いずれか一方が第2層42から第4層44まで貫通し、他方は第1層41から第4層44まで貫通する場合でもよい。すなわち、スルホールビア14a、14bの両方とも同一の層同士である必要はない。
上記以外は、本開示に係るプリント基板10の第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0087】
<4.トレンチビアの第1実施形態>
次に、本開示に係るプリント基板10のトレンチビア18の第1実施形態について説明する。なお、以下に説明するトレンチビア18の第1実施形態から第5実施形態は前記プリント基板10の第1実施形態及び第2実施形態のいずれにも適用し得るものである。
【0088】
トレンチビア18の第1実施形態は、図12Aに示すように、隣接するスルホールビア14aと14bの間に略円形状のトレンチビア18を穿設し、それぞれの内部に樹脂16を充填したものである。
トレンチビア18の径は、スルホールビア14a、14bのそれぞれの径と同一にしてもよいが、マイグレーションに起因するCAF17の伸長によるショートの発生を阻止するためには、これらの径よりも大きく形成するのが望ましい。例えば、スルホールビア14a、14bの径を0.31mmとすれば、トレンチビア18の径は少なくとも0.4mmあることが好ましい。さらに穿設するドリル90の位置公差±0.1mmを考慮すると、スルホールビア14a、14bの離間間隔(本図の破線で記載した円の直径)は、0.6mm以上あることが望ましい。しかし、上記寸法に限定されるものではない。以下同じ。
【0089】
また、図12Bに示すように、隣接するスルホールビア14a、14b間に長方形状のトレンチビア18を穿設し、それぞれの内部に樹脂16を充填してもよい。このように形成することにより隣接するスルホールビア14aと14bとの間隔が短い場合でもマイグレーションに起因するCAF17の伸長によるショートの発生を防止することができる。
【0090】
なお、本図では、トレンチビア18の形状を長方形状としたが、楕円状でもよいし、長円形状に形成してもよい。要は、隣接するスルホールビア14aと14bを結ぶ直線に対して、これに直交する方向にトレンチビア18の幅員が長くなるように形成すると、CAF17が伸長したとしても、ショートの発生を阻止することができる。このために、マイグレーションによる不適合の発生を防止する効果を向上することができる。
【0091】
<5.トレンチビアの第2実施形態>
トレンチビア18の第2実施形態は、図13に示すように、隣接するスルホールビア14a、14b間において、いずれかの、例えば、スルホールビア14aを取り囲んで略円形状のトレンチビア18を穿設し、それぞれの内部に樹脂16を充填したものである。
トレンチビア18の径は、スルホールビア14aの径よりも大きく形成する。なお、スルホールビア14aの外周面に絶縁層13a~13cがあってもトレンチビア18の内周面から樹脂16により分離されているのであれば差支えない。
【0092】
また、本図では、トレンチビア18の形状を略円形状としたが、長円状や楕円状でもよいし、長方形に形成してもよい。また、三角形、五角形や六角形でもよい。要は、いずれかの、例えば、スルホールビア14aをトレンチビア18が取り囲んでその内部に樹脂16が充填されておればよい。このように構成することにより、いかなる方向からCAF17が伸長してきても、マイグレーションに起因するCAF17の伸長によるショートの発生を防止することができる。
【0093】
また、本図の例では、高電位のスルホールビア14aを取り囲んで円形状のトレンチビア18を穿設し、それぞれの内部に樹脂16を充填する説明をしたが、低電位のスルホールビア14bを取り囲んで円形状のトレンチビア18を穿設し、それぞれの内部に樹脂16を充填してもよい。
【0094】
<6.トレンチビアの第3実施形態>
トレンチビア18の第3実施形態は、図14に示すように、隣接するスルホールビア14aと14bにおいて、両方のスルホールビア14a、14bを取り囲んで略長方形状のトレンチビア18を穿設し、それぞれの内部に樹脂16を充填したものである。
トレンチビア18の内径は、スルホールビア14a、14bの外径よりも大きく形成する。なお、スルホールビア14aの外周面に絶縁層13a~13cがあってもトレンチビア18の内周面から樹脂16により分離されているのであれば差支えない。
【0095】
また、本図では、トレンチビア18の形状を略長方形状としたが、円形状や楕円状でもよいし、略長円状に形成してもよい。要は、両方のスルホールビア14a、14bをトレンチビア18が取り囲んでその内部に樹脂16が充填されておればよい。このように構成することにより、スルホールビア14a、14b間はもとより、いかなる方向からCAF17が伸長してきても、マイグレーションに起因するCAF17の伸長によるショートの発生を防止することができる。
【0096】
<7.トレンチビアの第4実施形態>
トレンチビア18の第4実施形態は、図15に示すように、スルホールビア14、14、14の3個が隣接している場合である。この場合において、3個のスルホールビア14、14、14の略中間の位置に略三芒星状又は略Y字状のトレンチビア18を穿設し、それぞれの内部に樹脂16を充填したものである。
【0097】
なお、本図では、トレンチビア18の略三芒星状の端部18aの形状を略半円状としたが、略三角形状でもよいし、略方形状に形成してもよい。また、略三芒星状又は略Y字状の端部18aはできるだけ伸長させて形成することが望ましい。要は、隣接するスルホールビア14、14、14の外周を囲む線が略三芒星状又は略Y字状の端部18aの先端において、その伸長方向に対して直交する線を結んで構成される三角形(本図の破線)の中に納まるように形成することが望ましい。このように形成することにより、マイグレーションに起因するCAF17の伸長によるショートの発生を防止することができる。
【0098】
<8.トレンチビアの第5実施形態>
トレンチビア18の第5実施形態は、図16に示すように、スルホールビア14、14、14、14の4個が隣接している場合である。この場合において、4個の各スルホールビア14の略中間の位置に略四芒星状又は略十文字状のトレンチビア18を穿設し、それぞれの内部に樹脂16を充填したものである。
【0099】
なお、本図では、トレンチビア18の略四芒星状又は略十文字状の端部18aの形状を略半円状としたが、略三角形状でもよいし、略方形状に形成してもよい。また、略四芒星状又は略十文字状の端部18aはできるだけ伸長させて形成することが望ましい。要は、隣接する各スルホールビア14の外周を囲む線が略四芒星状又は略十文字状の端部18aの先端において、その伸長方向に対して直交する線を結んで構成される四角形(本図の破線)の中に納まるよう形成することが望ましい。このように構成することにより、マイグレーションに起因するCAF17の伸長によるショートの発生を防止することができる。
【0100】
同様にして、スルホールビア14が5個以上隣接している場合は、これらの略中間の位置から外方に伸びる細めの略五芒星状や略六芒星状などの略多芒星状又は略放射状のトレンチビア18を形成することにより、マイグレーションに起因するCAF17の伸長によるショートの発生を防止することができる。
これらの端部18aの形状は、同様に略半円状や略三角形状でもよいし、略方形状に形成してもよい。また、スルホールビア14の配置によっては、各端部18aの長さを同一に揃える必要はなく、それぞれの長さを変えてもよい。
【0101】
また、スルホールビア14が5個以上隣接している場合は、本実施形態のほかに、前記の第1実施形態から第4実施形態を適宜組み合わせてもよい。例えば、隣接する4個のスルホールビア14が存在する場合には、トレンチビアの第3実施形態のように、これらの4個のスルホールビア14の全てを取り囲む略長方形状のトレンチビア18を形成し、樹脂16を充填してもよい。
このように、複数のスルホールビア14が隣接して配置されている場合には、第5実施形態のほかに、前記の第1実施形態から第4実施形態を適宜組み合わせることにより、マイグレーションに起因するCAF17の伸長によるショートなどの不適合の発生を防止することができる。
【0102】
<9.本開示に係るプリント基板を有する電子機構の構成例>
上述した実施形態に係るプリント基板10は、半導体装置100に幅広く使用することができる。ここでは、その適用の一例として、プリント基板10を有する固体撮像装置101の電子機器への適用例について、図17を用いて説明する。なお、この適用例は、プリント基板10の第1実施形態又は第2実施形態及び/又はトレンチビア18に係る第1実施形態から第5実施形態を用いたプリント基板10を有する固体撮像装置101に共通である。
【0103】
固体撮像装置101は、デジタルスチルカメラやビデオカメラ等の撮像装置や、撮像機能を有する携帯端末装置や、画像読取部に固体撮像装置101を用いる複写機など、画像取込部(光電変換部)に固体撮像装置101を用いる電子機器全般に対して適用可能である。固体撮像装置101は、ワンチップとして形成された形態のものであってもよいし、撮像部と信号処理部又は光学系とをまとめてパッケージングされた撮像機能を有するモジュール状の形態のものであってもよい。
【0104】
図17に示すように、電子機器としての撮像装置200は、光学部202と、固体撮像装置101と、カメラ信号処理回路であるDSP(Digital Signal Processor)回路203と、フレームメモリ204と、表示部205と、記録部206と、操作部207と、電源部208とを備える。DSP回路203、フレームメモリ204、表示部205、記録部206、操作部207および電源部208が、バスライン209を介して相互に接続されている。
【0105】
光学部202は、複数の撮像レンズを含み、被写体からの入射光(像光)を取り込んで固体撮像装置101の画素領域23上に結像する。固体撮像装置101は、光学部202によって画素領域23上に結像された入射光の光量を画素22単位で電気信号に変換して画素信号として出力する。
【0106】
表示部205は、例えば、液晶パネルや有機EL(Electro Luminescence)パネル等のパネル型表示装置からなり、固体撮像装置101で撮像された動画又は静止画を表示する。記録部206は、固体撮像装置101で撮像された動画又は静止画を、ハードディスクや半導体メモリ等の記録媒体に記録する。
【0107】
操作部207は、ユーザによる操作の下に、撮像装置200が持つ様々な機能について操作指令を発する。電源部208は、DSP回路203、フレームメモリ204、表示部205、記録部206および操作部207の動作電源となる各種の電源を、これらの供給対象に対して適宜供給する。
【0108】
以上のように本開示に係るプリント基板10を用いた固体撮像装置101を有する撮像装置200は、長期間にわたり使用してもマイグレーションに起因する故障や不具合を生じることがないため、安心して使用することができる。
【0109】
最後に、上述した各実施の形態の説明は本開示の一例であり、本開示は上述の実施の形態に限定されることはない。このため、上述した各実施の形態以外であっても、本開示に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。例えば、上記説明におけるプリント基板は、インターポーザ基板の例であるが、マザーボード基板や、産業用機器等の制御基板等に適用できることはいうまでもない。また、本明細書に記載された効果はあくまでも例示であって限定されるものではなく、さらに他の効果があってもよい。
【0110】
なお、本技術は以下のような構成も取ることができる。
(1)
隣接して穿設されたスルホールビアと、
前記スルホールビア間に穿設されたトレンチビアと、
を有するプリント基板。
(2)
前記トレンチビアは、前記プリント基板の基材であるガラスクロスを横断するように配設された前記(1)に記載のプリント基板。
(3)
前記トレンチビアは、前記プリント基板の内層の配線パターン同士を貫通接続する前記スルホールビア間に配設された前記(1)に記載のプリント基板。
(4)
前記トレンチビアは、前記プリント基板の外層の配線パターン同士又は外層の前記配線パターンと内層の前記配線パターン同士を貫通接続する前記スルホールビア間に配設された前記(1)に記載のプリント基板。
(5)
前記トレンチビアの平面視の形状は、隣接する前記スルホールビア間を結ぶ直線に対して直交する方向に前記スルホールビアの径よりも前記トレンチビアの幅員の方が長くなるように形成された前記(1)に記載のプリント基板。
(6)
隣接する前記スルホールビア間において、いずれか一方の前記スルホールビアを取り囲む前記トレンチビアを形成された前記(1)に記載のプリント基板。
(7)
隣接する前記スルホールビア間において、全てのスルホールビアを取り囲むトレンチビアを形成された前記(1)に記載のプリント基板。
(8)
隣接する3個以上の前記スルホールビアの略中間の位置に略多芒星状又は略放射状の前記トレンチビアの中心を配置し、前記スルホールビアの周面で形成される空間が前記トレンチビアの端部の先端において、その伸長方向に対して直交する線を結んで構成される多角形の中に納まるように形成された前記(1)に記載のプリント基板。
(9)
前記絶縁用の前記トレンチビアは、樹脂埋めされた前記(1)から(8)のいずれか1つに記載のプリント基板。
(10)
銅張積層板に隣接するスルホールビア用の貫通孔を穿設する工程と、
前記貫通孔を洗浄する工程と、
前記貫通孔の内周面を銅メッキする工程と、
前記スルホールビア間にトレンチビア用の貫通孔を穿設する工程と、
前記トレンチビア用貫通孔を洗浄する工程と、
前記トレンチビア用の貫通孔を樹脂埋めする工程と、
前記樹脂埋めされた個所を研磨する工程と、
前記樹脂埋め個所の蓋メッキ及び前記銅張積層板に配線パターンを形成する工程と、
を有するプリント基板の製造方法。
(11)
隣接して穿設されたスルホールビアと、
前記スルホールビア間に穿設され樹脂で埋められたトレンチビアと、
を有するプリント基板を備えた固体撮像装置。
(12)
隣接して穿設されたスルホールビアと、前記スルホールビア間に穿設され樹脂で埋められたトレンチビアと、を有するプリント基板を備えた固体撮像装置を有する電子機器。
【符号の説明】
【0111】
3 カバーガラス
4 シール樹脂
6 センサ基板
7 ボンディングワイヤ
8 キャビティ部
9 外部接続端子
10 プリント基板
10a ガラス繊維
10b ガラス布
10c 銅箔
11 パッド
12a~d 配線パターン
13a~c 絶縁層
14、14a、14b スルホールビア
15 接続ビア
16 樹脂
17 CAF
18 トレンチビア
18a 端部
19 ソルダレジスト
21 受光部
22 画素
23 画素領域
24 周辺領域
25 カラーフィルタ
26 マイクロレンズアレイ
27 赤外カットフィルタ
29 パッド
30 貫通孔
31 銅張積層板
32 クラック
33 エポキシ樹脂
34 内層
35 外層
41 第1層
42 第2層
43 第3層
44 第4層
90 ドリル
100 半導体装置
101 固体撮像装置
200 撮像装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15
図16
図17