(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151379
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】電動パーキングブレーキの非常操作ケーブルのキャップ
(51)【国際特許分類】
F16D 65/28 20060101AFI20220929BHJP
F16D 65/00 20060101ALI20220929BHJP
B60T 13/74 20060101ALI20220929BHJP
F16C 1/14 20060101ALI20220929BHJP
F16D 121/14 20120101ALN20220929BHJP
F16D 127/04 20120101ALN20220929BHJP
【FI】
F16D65/28
F16D65/00 E
B60T13/74 G
F16C1/14 Z
F16D121:14
F16D127:04
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021054419
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107238
【弁理士】
【氏名又は名称】米山 尚志
(74)【代理人】
【識別番号】100181434
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 正明
(72)【発明者】
【氏名】木村 悠帆
【テーマコード(参考)】
3D048
3J032
3J058
【Fターム(参考)】
3D048BB11
3D048CC49
3D048HH18
3D048HH58
3J032AB40
3J032BC06
3J058AA29
3J058AA78
3J058BA70
3J058CC08
3J058CC67
3J058DE12
3J058FA07
(57)【要約】
【課題】工具の格納場所が不要であり、且つ非常時に工具を探す必要がない電動パーキングブレーキの非常操作ケーブルのキャップの提供。
【解決手段】キャップ本体12は、第1方向の一側が開口する円柱状の収容空間16を、周壁部14と底壁部15とが区画する有底筒形状である。周壁部14の一側の内周面には被操作部の雄ネジと螺合可能な雌ネジ18が形成される。可動体13は、底壁部15の端面19に第1方向の他側から対向し、収納位置と使用位置との間を傾動するようにキャップ本体12に回転自在に支持される。可動体13には、使用位置で第1方向と交叉する第2方向に凹み、雌ネジ18と雄ネジとの螺合を解除してキャップ本体12を被操作部から取外した状態で、被操作部の係止突部と係合可能な係合穴22が設けられる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブ状のケーブル外装部材の内部をケーブル本体が挿通する非常操作ケーブルの一端では、前記ケーブル本体の一端が電動パーキングブレーキのアクチュエータに接続され、前記非常操作ケーブルの他端には、被操作部が設けられ、前記被操作部は、前記ケーブル外装部材の他端に設けられ、外周面に雄ネジが形成された円筒状の外装端部と、前記ケーブル本体の他端に設けられ、前記外装端部から突出する係止突部とを有し、前記外装端部に対して前記係止突部を回転させることにより、前記ケーブル本体が回転して前記電動パーキングブレーキが作動し又は作動が解除される前記非常操作ケーブルの前記被操作部に装着されるキャップであって、
第1方向の一側が開口する円柱状の収容空間を、筒状の周壁部と前記周壁部の前記第1方向の他側を閉止する底壁部とが区画する有底筒形状であり、前記周壁部の少なくとも前記一側の内周面に前記被操作部の前記雄ネジと螺合可能な雌ネジが形成され、前記一側から前記収容空間へ前記被操作部の前記係止突部を挿入して前記雌ネジを前記雄ネジに螺合することにより、前記係止突部を覆った状態で前記被操作部に装着されるキャップ本体と、
前記底壁部の端面に前記第1方向の前記他側から対向し、収納位置と使用位置との間を傾動するように前記キャップ本体に回転自在に支持される可動体と、を備え、
前記可動体には、前記使用位置で前記第1方向と交叉する第2方向に凹み、前記雌ネジと前記雄ネジとの螺合を解除して前記キャップ本体を前記被操作部から取外した状態で、前記被操作部の前記係止突部と係合可能な係合穴が設けられ、
前記収納位置の前記可動体の前記係合穴の開口端は、前記底壁部の前記端面によって前記第1方向の前記他側から覆われる
ことを特徴とする電動パーキングブレーキの非常操作ケーブルのキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動パーキングブレーキの非常操作ケーブルのキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電動パーキングブレーキ装置が記載されている。電動パーキングブレーキ装置のアクチュエータには、非常操作ケーブルの一端が接続され、非常操作ケーブルの他端には、手動操作ユニットが取り付けられる。手動操作ユニットにより非常操作ケーブルが回転されることでアクチュエータが操作され、コントロールケーブルが引かれてパーキングブレーキが作動される。或いは、コントロールケーブルの引きが戻されてパーキングブレーキが解除される。したがって、アクチュエータが何らかの故障により作動しなくても手動でパーキングブレーキを作動或いは解除させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の手動操作ユニットは、非常時に非常操作ケーブルの他端の被操作部に取付けて使用される工具である。このため、通常時に工具を格納する場所を車両に設ける必要がある。また、車両のレイアウト上の理由等から工具の格納場所が非常操作ケーブルの被操作部から離れている場合、作業者は工具を探す必要があり煩雑である。
【0005】
そこで本開示は、工具の格納場所が不要であり、且つ非常時に工具を探す必要がない電動パーキングブレーキの非常操作ケーブルのキャップの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく、本開示の一態様は、チューブ状のケーブル外装部材の内部をケーブル本体が挿通する非常操作ケーブルの被操作部に装着されるキャップであって、キャップ本体と可動体とを備える。非常操作ケーブルの一端では、ケーブル本体の一端が電動パーキングブレーキのアクチュエータに接続され、被操作部は、非常操作ケーブルの他端に設けられる。被操作部は、円筒状の外装端部と係止突部とを有する。外装端部は、ケーブル外装部材の他端に設けられ、外装端部の外周面には、雄ネジが形成される。係止突部は、ケーブル本体の他端に設けられ、外装端部から突出する。外装端部に対して係止突部を回転させることにより、ケーブル本体が回転して電動パーキングブレーキが作動し又は作動が解除される。
【0007】
キャップ本体は、第1方向の一側が開口する円柱状の収容空間を、筒状の周壁部と周壁部の第1方向の他側を閉止する底壁部とが区画する有底筒形状である。周壁部の少なくとも一側の内周面には、被操作部の雄ネジと螺合可能な雌ネジが形成される。キャップ本体は、一側から収容空間へ被操作部の係止突部を挿入して雌ネジを雄ネジに螺合することにより、係止突部を覆った状態で被操作部に装着される。
【0008】
可動体は、底壁部の端面に第1方向の他側から対向し、収納位置と使用位置との間を傾動するようにキャップ本体に回転自在に支持される。可動体には、使用位置で第1方向と交叉する第2方向に凹み、雌ネジと雄ネジとの螺合を解除してキャップ本体を被操作部から取外した状態で、被操作部の係止突部と係合可能な係合穴が設けられる。収納位置の可動体の係合穴の開口端は、底壁部の端面によって第1方向の他側から覆われる。
【0009】
上記構成では、電動パーキングブレーキのアクチュエータが正常に作動する通常時には、キャップ本体の収容空間へ非常操作ケーブルの被操作部の係止突部を挿入し、キャップ本体の雌ネジを被操作部の雄ネジに螺合して、キャップを被操作部に装着する。これにより、被操作部の係止突部がキャップ本体によって覆われるので、係止突部を保護することができる。
【0010】
電動パーキングブレーキのアクチュエータが正常に作動しない非常時には、非常操作ケーブルの被操作部の雄ネジとキャップ本体の雌ネジとの螺合を解除してキャップを被操作部から取外し、可動体を収納位置から使用位置へ傾動させた後、キャップの可動体の係合穴を被操作部の係止突部に係合する。キャップの係合穴を被操作部の係止突部に係合した係合状態では、非常操作ケーブルのケーブル本体の軸方向(係止突部の突出方向、第2方向)とキャップ本体の長手方向(第1方向)とが交叉するので、作業者は、一方の手で非常操作ケーブルの外装端部を把持し、他方の手でキャップ本体を掴んで回転させる。これにより、ケーブル本体が回転して電動パーキングブレーキが作動し又は作動が解除される。
【0011】
このように、通常時に非常操作ケーブルの被操作部に装着されて係止突部を保護するキャップを、非常時にケーブル本体を回転させるための工具として用いるので、部品点数を削減することができる。また、通常時の工具の格納場所が不要であり、且つ作業者は非常時に工具を探す必要がない。
【0012】
また、係合穴をキャップ本体ではなくキャップ本体に回転自在に支持される可動体に設けているので、可動体を収納位置に設定した状態でのキャップ全体の形状を、複雑ではない単純な形状に構成することができる。このため、形状が複雑なキャップを用いる場合に比べて、通常時の非常操作ケーブルの収納場所を車両側に確保し易い。
【発明の効果】
【0013】
本開示の電動パーキングブレーキの非常操作ケーブルのキャップによれば、工具の格納場所が不要であり、且つ非常時に工具を探す必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係るアクチュエータの側面図である。
【
図2】非常操作ケーブルの被操作部の斜視図である。
【
図3】本実施形態のキャップを非常操作ケーブルの被操作部に装着した状態を示す斜視図である。
【
図4】(a)は可動体を収納位置に設定した
図3のキャップの外観斜視図、(b)は
図4(a)のIVb-IVb矢視断面図である。
【
図5】(a)は可動体を使用位置に設定した
図3のキャップの外観斜視図、(b)は
図5(a)のVb-Vb矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0016】
電動パーキングブレーキ(図示省略)のアクチュエータ1には、
図1に示すように、コントロールケーブル2の一端と非常操作ケーブル3の一端とが接続される。コントロールケーブル2の他端には、電動パーキングブレーキが接続され、アクチュエータ1によりコントロールケーブル2が引張られると電動パーキングブレーキが作動し、アクチュエータ1によりコントロールケーブル2の引張りが戻されると、電動パーキングブレーキの作動が解除される。
【0017】
非常操作ケーブル3は、チューブ状のケーブル外装部材4と、ケーブル外装部材4の内部を挿通するケーブル本体5とから概略構成される。非常操作ケーブル3の一端では、ケーブル本体5の一端がアクチュエータ1に接続され、非常操作ケーブル3の他端には、被操作部6が設けられる。被操作部6は、円筒状の外装端部7と、矩形軸状の係止突部8とを有する。外装端部7は、ケーブル外装部材4の他端に設けられ、外装端部7の先端の外周面には、雄ネジ9が形成される。係止突部8は、ケーブル本体5の他端に一体的に設けられ、外装端部7から突出する。係止突部8は外装端部7に回転自在に支持され、外装端部7に対して係止突部8を回転させるとケーブル本体5が回転する。ケーブル本体5が回転することによってアクチュエータ1が操作され、コントロールケーブル2が引張られて電動パーキングブレーキが作動し、又は、コントロールケーブル2の引張りが戻されて電動パーキングブレーキの作動が解除される。従って、アクチュエータ1が故障等により作動しなくなった場合、作業者は、非常操作ケーブルの被操作部6を操作する(外装端部7に対して係止突部8を手動で回転させる)ことによって、電動パーキングブレーキを作動させ、又は作動を解除することができる。
【0018】
図3~
図5に示すように、被操作部6には、キャップ11が着脱可能に装着される。キャップ11は、キャップ本体12と可動体13とを有する。
【0019】
キャップ本体12は、周壁部14と底壁部15とを一体的に有する有底筒形状であり、長手方向(第1方向)の一側が開口する円柱状の収容空間16を区画する。周壁部14は円筒状であり、底壁部15は周壁部14の長手方向の他側を閉止する。周壁部14の少なくとも一側(開口17側)の内周面には、被操作部6の雄ネジ9と螺合可能な雌ネジ18が形成される。キャップ11(キャップ本体12)は、一側の開口17から収容空間16へ被操作部6の係止突部8を挿入して雌ネジ18を雄ネジ9に螺合することにより、係止突部8を覆った状態で被操作部6に装着される。
【0020】
キャップ本体12の長手方向の他側の端部には、長手方向と略直交する径方向(第1方向と交叉する第2方向)に離間して相対向し、各々が長手方向に沿って延びる1対の対向壁部20が設けられている。対向壁部20は、底壁部15の端面19から一体的に延びる。
【0021】
可動体13は、2つの対向壁部20の間に配置され、底壁部15の端面19にキャップ本体12の長手方向の他側から対向する。可動体13は、収納位置(
図4参照)と使用位置(
図5参照)との間を傾動可能に、回転軸21を中心として回転自在に対向壁部20に支持される。キャップ本体12(対向壁部20)と可動体13との相対回転は、可動体13が自重によって傾動せず、作業者が所定の力で可動体13を回すことによって傾動するように、摩擦等によって規制されている。なお、可動体13を収納位置と使用位置とに仮保持する機構を設けてもよい。また、図示の可動体13は円柱状であるが、可動体13の形状はこれに限定されず、他の形状(例えば角柱状など)であってもよい。
【0022】
可動体13には、可動体13を使用位置に設定した状態で、キャップ本体12の径方向に凹む矩形状の係合穴22が設けられる。可動体13を収納位置に設定した状態で、係合穴22の開口端23は、底壁部15の端面19によってキャップ本体12の長手方向の他側から覆われる。雌ネジ18と雄ネジ9との螺合を解除してキャップ11を被操作部6から取外し、可動体13を使用位置に設定した状態で、係合穴22は、被操作部6の係止突部8と係合可能である。係止突部8の断面形状及び係合穴22の穴形状は矩形状に限定されず、他の形状(例えば六角形状など)であってもよい。
【0023】
本実施形態によれば、電動パーキングブレーキのアクチュエータ1が正常に作動する通常時には、可動体13を収納位置に設定し、キャップ本体12の収容空間16へ非常操作ケーブル3の被操作部6の係止突部8を挿入し、キャップ本体12の雌ネジ18を被操作部6の雄ネジ9に螺合して、キャップ11を被操作部6に装着する。これにより、被操作部6の係止突部8がキャップ本体12によって覆われるので、係止突部8を保護することができる。
【0024】
電動パーキングブレーキのアクチュエータ1が正常に作動しない非常時には、非常操作ケーブル3の被操作部6の雄ネジ9とキャップ本体12の雌ネジ18との螺合を解除してキャップ11を被操作部6から取外し、可動体13を収納位置から使用位置へ傾動させた後、キャップ11の可動体13の係合穴22を被操作部6の係止突部8に係合する。キャップ11の係合穴22を被操作部6の係止突部8に係合した係合状態では、非常操作ケーブル3のケーブル本体5の軸方向(係止突部8の突出方向、第2方向)とキャップ本体12の長手方向(第1方向)とが略直交するので、作業者は、一方の手で非常操作ケーブル3の外装端部7を把持し、他方の手でキャップ本体12を掴んで回転させる。これにより、ケーブル本体5が回転して電動パーキングブレーキが作動し又は作動が解除される。
【0025】
このように、通常時に非常操作ケーブル3の被操作部6に装着されて係止突部8を保護するキャップ11を、非常時にケーブル本体5を回転させるための工具として用いるので、部品点数を削減することができる。また、通常時の工具の格納場所が不要であり、且つ作業者は非常時に工具を探す必要がない。
【0026】
また、係合穴22をキャップ本体12ではなくキャップ本体12に回転自在に支持される可動体13に設けているので、可動体13を収納位置に設定した状態でのキャップ11全体の形状を、複雑ではない単純な形状に構成することができる。このため、形状が複雑なキャップを用いる場合に比べて、通常時の非常操作ケーブルの収納場所を車両側に確保し易い。
【0027】
以上、本発明について、上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではなく、当然に本発明を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例および運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、車両の電動パーキングブレーキに接続された非常操作ケーブルに広く適用することができる。
【符号の説明】
【0029】
1:アクチュエータ
2:コントロールケーブル
3:非常操作ケーブル
4:ケーブル外装部材
5:ケーブル本体
6:被操作部
7:外装端部
8:係止突部
9:雄ネジ
11:キャップ
12:キャップ本体
13:可動体
14:周壁部
15:底壁部
16:収容空間
17:開口
18:雌ネジ
19:底壁部の端面
20:対向壁部
21:回転軸
22:係合穴
23:可動体の開口端