(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151393
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】弾性波デバイスおよびその弾性波デバイスを備えるモジュール
(51)【国際特許分類】
H03H 9/25 20060101AFI20220930BHJP
【FI】
H03H9/25 Z
H03H9/25 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021054437
(22)【出願日】2021-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】518453730
【氏名又は名称】三安ジャパンテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100171077
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 健
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼岡 良知
(72)【発明者】
【氏名】熊 四輩
【テーマコード(参考)】
5J097
【Fターム(参考)】
5J097AA14
5J097BB02
5J097BB15
5J097BB17
5J097EE02
5J097EE08
5J097FF04
5J097GG03
5J097GG04
5J097HA03
5J097JJ09
5J097KK04
5J097KK09
5J097KK10
(57)【要約】
【課題】十分にスプリアスが抑制された弾性波デバイスおよびその弾性波デバイスを備えるモジュールを提供する。
【解決手段】弾性波デバイスは、圧電基板と、前記圧電基板上に形成された複数の電極指を有する第1バスバーと、前記第1バスバーと対向配置され、前記圧電基板上に形成された複数の電極指を有する第2バスバーと、を備える弾性波デバイスであって、前記圧電基板の前記第1バスバーと前記第2バスバーの有する電極指の先端部分とが対向する領域において、凹部が形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板と、
前記圧電基板上に形成された複数の電極指を有する第1バスバーと、
前記第1バスバーと対向配置され、前記圧電基板上に形成された複数の電極指を有する第2バスバーと、
を備える弾性波デバイスであって、
前記圧電基板の前記第1バスバーと前記第2バスバーの有する電極指の先端部分とが対向する領域において、凹部が形成されている弾性波デバイス。
【請求項2】
前記圧電基板の前記第2バスバーと前記第1バスバーの有する電極指の先端部分とが対向する領域において、凹部が形成されている、請求項1に記載の弾性波デバイス。
【請求項3】
前記凹部は、前記圧電基板の前記第1バスバーよりも、前記第2バスバーの有する電極指の先端部分に近接している請求項1に記載の弾性波デバイス。
【請求項4】
前記凹部は、弾性表面波の伝搬方向と並行する方向に対して、4分の1波長から4分の3波長の幅で形成されている請求項1に記載の弾性波デバイス。
【請求項5】
前記凹部は、圧電基板の厚みの35%から100%の深さである請求項1に記載の弾性波デバイス。
【請求項6】
前記圧電基板は、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウムまたは水晶からなる請求項1に記載の弾性波デバイス。
【請求項7】
前記圧電基板は、サファイア、アルミナ、スピネル、水晶、ガラスまたはシリコンからなる支持基板が接合されている請求項1に記載の弾性波デバイス。
【請求項8】
前記凹部は、前記圧電基板を貫通するように形成され、前記支持基板が前記凹部の底部を構成している請求項4に記載の弾性波デバイス。
【請求項9】
前記圧電基板の前記第1バスバー又は前記第2バスバーの最端電極指に隣接する領域において、第2凹部が形成されている請求項1に記載の弾性波デバイス。
【請求項10】
前記第2凹部は、前記第1バスバー及び前記第2バスバーの両端部に形成されている請求項9に記載の弾性波デバイス。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の弾性波デバイスを備えるモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、弾性波デバイスおよびその弾性波デバイスを備えるモジュールに関し、例えば弾性表面波共振器を有する弾性波デバイス、フィルタおよびマルチプレクサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、電子部品を開示する。当該電子部品によれば、スプリアスを抑制し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、圧電基板を薄くすることによりバルク波に起因したスプリアスを抑制する技術の一例が開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の電子部品においては、他の要因によるスプリアスが抑制できない。このため、十分にスプリアスが抑制された弾性波デバイスを提供することができない。
【0006】
本開示は、上述の課題を解決するためになされた。本開示の目的は、十分にスプリアスが抑制された弾性波デバイスおよびその弾性波デバイスを備えるモジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示にかかる弾性波デバイスは、
圧電基板と、
前記圧電基板上に形成された複数の電極指を有する第1バスバーと、
前記第1バスバーと対向配置され、前記圧電基板上に形成された複数の電極指を有する第2バスバーと、
を備える弾性波デバイスであって、
前記圧電基板の前記第1バスバーと前記第2バスバーの有する電極指の先端部分とが対向する領域において、凹部が形成されている弾性波デバイスとした。
【0008】
前記圧電基板の前記第2バスバーと前記第1バスバーの有する電極指の先端部分とが対向する領域において、凹部が形成されていることが、本開示の一形態とされる。
【0009】
前記凹部は、前記圧電基板の前記第1バスバーよりも、前記第2バスバーの有する電極指の先端部分に近接していることが、本開示の一形態とされる。
【0010】
前記凹部は、弾性表面波の伝搬方向と並行する方向に対して、4分の1波長から4分の3波長の幅で形成されていることが、本開示の一形態とされる。
【0011】
前記凹部は、圧電基板の厚みの35%から100%の深さであることが、本発明の一形態とされる。
【0012】
前記圧電基板は、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウムまたは水晶からなることが、本発明の一形態とされる。
【0013】
前記圧電基板は、サファイア、アルミナ、スピネル、水晶、ガラスまたはシリコンからなる支持基板が接合されていることが、本開示の一形態とされる。
【0014】
前記凹部は、前記圧電基板を貫通するように形成され、前記支持基板が前記凹部の底部を構成していることが、本開示の一形態とされる。
【0015】
前記圧電基板の前記第1バスバー又は前記第2バスバーの最端電極指に隣接する領域において、第2凹部が形成されていることが、本開示の一形態とされる。
【0016】
前記第2凹部は、前記第1バスバー及び前記第2バスバーの両端部に形成されていることが、本開示の一形態とされる。
【0017】
前記弾性波デバイスを備えるモジュールが、本発明の一形態とされる。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、十分にスプリアスが抑制された弾性波デバイスおよびその弾性波デバイスを備えるモジュールを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施の形態1における弾性波デバイスの縦断面図である。
【
図2】実施の形態1における弾性波デバイスの弾性波素子の例を示す図である。
【
図3】実施の形態1における弾性波デバイスのシミュレーション条件の説明を模式的に示す図である。
【
図4】実施の形態1における弾性波デバイスのシミュレーション条件の説明を模式的に示す図である。
【
図5】実施の形態1における弾性波デバイスと比較例との共振特性を示す図である。
【
図6】実施の形態1における弾性波デバイスと比較例との共振特性を示す図である。
【
図7】実施の形態1における弾性波デバイスと比較例との共振特性を示す図である。
【
図8】実施の形態1における弾性波デバイスと比較例との共振特性を示す図である。
【
図9】実施の形態1における弾性波デバイスと比較例との共振特性を示す図である。
【
図10】実施の形態2における弾性波デバイスが有する弾性波素子の例を示す図である。
【
図11】実施の形態3の弾性波デバイスが適用されるモジュールの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
実施の形態について添付の図面に従って説明する。なお、各図中、同一または相当する部分には同一の符号が付される。当該部分の重複説明は適宜に簡略化ないし省略される。
【0021】
実施の形態1.
図1は実施の形態1における弾性波デバイスの縦断面図である。
【0022】
図1は、弾性波デバイス1として、デュプレクサである弾性波デバイスの例を示す。
【0023】
図1に示されるように、弾性波デバイス1は、配線基板3と複数の外部接続端子31と複数の電極パッド9と複数のバンプ15とデバイスチップ5と封止部17を備える。
【0024】
例えば、配線基板3は、樹脂からなる多層基板である。例えば、配線基板3は、複数の誘電体層からなる低温同時焼成セラミックス(Low Temperature Co-fired Ceramics:LTCC)多層基板である。
【0025】
複数の外部接続端子31は、配線基板3の下面に形成される。
【0026】
複数の電極パッド9は、配線基板3の主面に形成される。例えば、電極パッド9は、銅または銅を含む合金で形成される。例えば、電極パッド9の厚みは、10μmから20μmである。
【0027】
複数のバンプ15は、複数の電極パッド9のそれぞれの上面に形成される。例えば、バンプ15は、金バンプである。例えば、バンプ15の高さは、10μmから50μmである。
【0028】
例えば、デバイスチップ5は、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウムまたは水晶などの圧電単結晶で形成された基板である。例えば、デバイスチップ5は、圧電セラミックスで形成された基板である。例えば、デバイスチップ5は、圧電基板と支持基板とが接合された基板である。例えば、支持基板は、サファイア、シリコン、アルミナ、スピネル、水晶またはガラスで形成された基板である。
【0029】
デバイスチップ5は、バンプ15を介して、配線基板3にフリップチップボンディングにより実装される。デバイスチップ5は、複数のバンプ15を介して複数の電極パッド9と電気的に接続される。
【0030】
デバイスチップ5は、機能素子が形成される基板である。例えば、デバイスチップ5の主面において、送信用フィルタと受信用フィルタとが形成される。
【0031】
送信用フィルタは、所望の周波数帯域の電気信号が通過し得るように形成される。例えば、送信用フィルタは、複数の直列共振器と複数の並列共振器からなるラダー型フィルタである。
【0032】
受信用フィルタは、所望の周波数帯域の電気信号が通過し得るように形成される。例えば、受信用フィルタは、ラダー型フィルタである。
【0033】
封止部17は、デバイスチップ5を覆うように形成される。例えば、封止部17は、合成樹脂等の絶縁体により形成される。例えば、封止部17は、金属で形成される。
【0034】
封止部17が合成樹脂で形成される場合、当該合成樹脂は、エポキシ樹脂、ポリイミドなどである。好ましくは、封止部17は、エポキシ樹脂を用い、低温硬化プロセスを用いてエポキシ樹脂で形成される。
【0035】
次に、
図2を用いて、デバイスチップ5上に形成された弾性波素子52の例を説明する。
図2は実施の形態1における弾性波デバイスの弾性波素子の例を示す図である。
【0036】
図2に示されるように、IDT(Interdigital Transducer)52aと一対の反射器52bとは、デバイスチップ5の主面に形成される。IDT(Interdigital Transducer)52aと一対の反射器52bは、弾性表面波(主にSH波)を励振し得るように設けられる。
【0037】
例えば、IDT52aと一対の反射器52bとは、アルミニウムと銅の合金で形成される。例えば、IDT52aと一対の反射器52bとは、チタン、パラジウム、銀などの適宜の金属もしくはこれらの合金で形成される。例えば、IDT52aと一対の反射器52bとは、複数の金属層が積層した積層金属膜により形成される。例えば、IDT52aと一対の反射器52bとの厚みは、150nmから450nmである。
【0038】
IDT52aは、一対の櫛形電極52cを備える。一対の櫛形電極52cは、互いに対向する。櫛形電極52cは、複数の電極指52dとバスバー52eとを備える。複数の電極指52dは、長手方向を合わせて配置される。バスバー52eは、複数の電極指52dを接続する。
【0039】
一対の反射器52bの一方は、IDT52aの一側に隣接する。一対の反射器52bの他方は、IDT52aの他側に隣接する。
【0040】
第1バスバー52e1と第2バスバー52e2の有する電極指の先端部分とが対向する領域において、デバイスチップ5上に、凹部Hole1が形成されている。また、第2バスバー52e2と第1バスバー52e1の有する電極指の先端部分とが対向する領域において、デバイスチップ5上に、凹部Hole2が形成されている。
【0041】
凹部Hole1、凹部Hole2は、複数形成することができる。また、凹部Hole1は、第1バスバー52e1よりも、第2バスバー52e2の有する電極指の先端部分に近接して形成することができる。また、凹部Hole2は、第2バスバー52e2よりも、第1バスバー52e1の有する電極指の先端部分に近接して形成することができる。この場合、より効果的にスプリアスを抑制することができる。
【0042】
凹部Hole1、凹部Hole2は、例えば、ドライエッチング法やウエットエッチング法などを用いて、例えば、ウエハプロセスにおいて形成することができる。
【0043】
次に、本実施の形態における弾性波素子52についての検討結果を説明する。発明者らは、以下の条件で、本実施の形態における弾性波素子52の共振特性についてシミュレーションを行った。
図3および
図4は、かかるシミュレーション条件の説明を模式的に示す図である。
【0044】
図3に示すように、支持基板として、サファイア基板Sapphireを用い、厚さは無限大とした。
図3に示すように、圧電基板LTとして、42°回転YカットX伝搬単結晶タンタル酸リチウム基板を用い、厚さは0.7波長λとした。
波長λは、4.2μmとした。
図3に示すように、IDTの厚みは420nmとした。
デューティー比Dutyは、50%とした。
IDTの対数は、無限大とした。
図3に示すように、IDT先端部分と凹部HoleとのギャップGapは、製造条件を考慮して、500nmとした。
図3に示すように、IDT先端部分側の凹部Hole端部からバスバーまでの距離は、2波長2λとした。
図3に示すように、凹部の深さHoleHeightは、0.25波長λ、0.5波長λ、0.7波長λとした場合について、それぞれシミュレーションを行った。
【0045】
図4に示すように、開口長Apertureは、10波長λとした。
図4に示すように、凹部Holeの弾性表面波の伝搬方向に直交する方向の長さは、2μmとした。
図4に示すように、凹部Holeの弾性表面波の伝搬方向と平行する方向の長さHoleWは、ピッチPitchの50%、75%、100%、125%、150%とした場合について、それぞれシミュレーションを行った。なお、ピッチPitchは、波長λの2分の1に相当する。
【0046】
次に、上述のシミュレーションの結果を説明する。
図5(a)は、本実施の形態における弾性波素子52のうち、凹部Holeを有しない比較例refにかかる共振特性を示す図である。
図5(b)は、本実施の形態における弾性波素子52のうち、HoleWを50%、深さHoleHeightを0.25波長λとする凹部Holeが全てのIDT先端部分とバスバー間に配置された構成にかかる共振特性を示す図である。
図5(c)は、本実施の形態における弾性波素子52のうち、HoleWを50%、深さHoleHeightを0.5波長λとする凹部Holeが全てのIDT先端部分とバスバー間に配置された構成にかかる共振特性を示す図である。
図5(d)は、本実施の形態における弾性波素子52のうち、HoleWを50%、深さHoleHeightを0.7波長λとする凹部Holeが全てのIDT先端部分とバスバー間に配置された構成にかかる共振特性を示す図である。
【0047】
図5に示すように、比較例に比べて、本実施の形態における弾性波素子52の共振特性は、スプリアスが抑制されていることがわかる。なお、HoleWが50%の場合、深さHoleHeightの絶対値が大きくなるほど、スプリアスがより抑制されていることがわかる。
【0048】
図6(a)は、本実施の形態における弾性波素子52のうち、凹部Holeを有しない比較例refにかかる共振特性を示す図である。
図6(b)は、本実施の形態における弾性波素子52のうち、HoleWを75%、深さHoleHeightを0.25波長λとする凹部Holeが全てのIDT先端部分とバスバー間に配置された構成にかかる共振特性を示す図である。
図6(c)は、本実施の形態における弾性波素子52のうち、HoleWを75%、深さHoleHeightを0.5波長λとする凹部Holeが全てのIDT先端部分とバスバー間に配置された構成にかかる共振特性を示す図である。
図6(d)は、本実施の形態における弾性波素子52のうち、HoleWを75%、深さHoleHeightを0.7波長λとする凹部Holeが全てのIDT先端部分とバスバー間に配置された構成にかかる共振特性を示す図である。
【0049】
図6に示すように、比較例に比べて、本実施の形態における弾性波素子52の共振特性は、スプリアスが抑制されていることがわかる。なお、HoleWが75%の場合、深さHoleHeightの絶対値と、スプリアスが抑制される程度の相関は、明確ではないと考えられる。
【0050】
図7(a)は、本実施の形態における弾性波素子52のうち、凹部Holeを有しない比較例refにかかる共振特性を示す図である。
図7(b)は、本実施の形態における弾性波素子52のうち、HoleWを100%、深さHoleHeightを0.25波長λとする凹部Holeが全てのIDT先端部分とバスバー間に配置された構成にかかる共振特性を示す図である。
図7(c)は、本実施の形態における弾性波素子52のうち、HoleWを100%、深さHoleHeightを0.5波長λとする凹部Holeが全てのIDT先端部分とバスバー間に配置された構成にかかる共振特性を示す図である。
図7(d)は、本実施の形態における弾性波素子52のうち、HoleWを100%、深さHoleHeightを0.7波長λとする凹部Holeが全てのIDT先端部分とバスバー間に配置された構成にかかる共振特性を示す図である。
【0051】
図7に示すように、比較例に比べて、本実施の形態における弾性波素子52の共振特性は、スプリアスが抑制されていることがわかる。なお、HoleWが100%の場合、深さHoleHeightの絶対値が小さい方が、スプリアスが抑制されていることがわかる。
【0052】
図8(a)は、本実施の形態における弾性波素子52のうち、凹部Holeを有しない比較例refにかかる共振特性を示す図である。
図8(b)は、本実施の形態における弾性波素子52のうち、HoleWを125%、深さHoleHeightを0.25波長λとする凹部Holeが全てのIDT先端部分とバスバー間に配置された構成にかかる共振特性を示す図である。
図8(c)は、本実施の形態における弾性波素子52のうち、HoleWを125%、深さHoleHeightを0.5波長λとする凹部Holeが全てのIDT先端部分とバスバー間に配置された構成にかかる共振特性を示す図である。
図8(d)は、本実施の形態における弾性波素子52のうち、HoleWを125%、深さHoleHeightを0.7波長λとする凹部Holeが全てのIDT先端部分とバスバー間に配置された構成にかかる共振特性を示す図である。
【0053】
図8に示すように、比較例に比べて、本実施の形態における弾性波素子52の共振特性は、スプリアスが抑制されていることがわかる。なお、HoleWが125%の場合、深さHoleHeightの絶対値が小さい方が、スプリアスが抑制されていることがわかる。
【0054】
図9(a)は、本実施の形態における弾性波素子52のうち、凹部Holeを有しない比較例refにかかる共振特性を示す図である。
図9(b)は、本実施の形態における弾性波素子52のうち、HoleWを150%、深さHoleHeightを0.25波長λとする凹部Holeが全てのIDT先端部分とバスバー間に配置された構成にかかる共振特性を示す図である。
図9(c)は、本実施の形態における弾性波素子52のうち、HoleWを150%、深さHoleHeightを0.5波長λとする凹部Holeが全てのIDT先端部分とバスバー間に配置された構成にかかる共振特性を示す図である。
図9(d)は、本実施の形態における弾性波素子52のうち、HoleWを150%、深さHoleHeightを0.7波長λとする凹部Holeが全てのIDT先端部分とバスバー間に配置された構成にかかる共振特性を示す図である。
【0055】
図9に示すように、比較例に比べて、本実施の形態における弾性波素子52の共振特性は、スプリアスが抑制されていることがわかる。なお、HoleWが150%の場合、深さHoleHeightの絶対値と、スプリアスが抑制される程度の相関は、明確ではないと考えられる。
【0056】
以上で説明された実施の形態1によれば、第1バスバー52e1と第2バスバー52e2の有する電極指52dの先端部分とが対向する領域において、凹部Hole1が形成されている。このため、よりスプリアスが抑制された弾性波デバイスを提供することができる。
【0057】
また、第2バスバー52e2と第1バスバー52e1の有する電極指52dの先端部分とが対向する領域において、凹部Hole2が形成されている。このため、よりスプリアスが抑制された弾性波デバイスを提供することができる。
【0058】
また、凹部Hole1は、第1バスバー52e1よりも、第2バスバー52e2の有する電極指52dの先端部分に近接している。このため、よりスプリアスが抑制された弾性波デバイスを提供することができる。
【0059】
また、凹部Holeは、弾性表面波の伝搬方向と並行する方向に対して、4分の1波長λから4分の3波長λの幅で形成されている。このため、よりスプリアスが抑制された弾性波デバイスを提供することができる。
【0060】
また、凹部Holeは、圧電基板LTの厚みの35%から100%の深さHoleHeightである。このため、よりスプリアスが抑制された弾性波デバイスを提供することができる。
【0061】
また、デバイスチップ5の基板は、圧電性基板と、サファイア、シリコン、アルミナ、スピネル、水晶またはガラスからなる基板が接合されている基板である。このため、より温度特性の優れた弾性波デバイスを提供することができる。
【0062】
実施の形態2.
図10は、実施の形態2における弾性波デバイスが有する弾性波素子の例を示す図である。なお、実施の形態1の部分と同一又は相当部分には同一符号が付される。当該部分の説明は省略される。
【0063】
図10に示すように、IDT52aの両側に、凹部Hole3が形成されている。反射器は形成されていない。弾性波がデバイスチップ5の端面で反射現象を利用して、反射器の代わりとするものである。これにより、反射器のスペースを省略できる。このため、弾性波デバイスの小型化が図れる。また、凹部Hole1、凹部Hole2の形成と同時に凹部Hole3も形成することができるため、弾性波デバイスの製造における工程やリードタイムは増加しない。
【0064】
その他の構成は、実施の形態1.と同様であるため、説明を省略する。
【0065】
実施の形態3.
図11は実施の形態3の弾性波デバイスが適用されるモジュールの縦断面図である。なお、実施の形態1の部分と同一又は相当部分には同一符号が付される。当該部分の説明は省略される。
【0066】
図11において、モジュール100は、配線基板130と複数の外部接続端子131と集積回路部品ICと弾性波デバイス1とインダクタ11と封止部117とを備える。
【0067】
配線基板130は、実施の形態1の配線基板3と同等である。
【0068】
複数の外部接続端子31は、配線基板130の下面に形成される。複数の外部接続端子131は、予め設定された移動通信端末のマザーボードに実装される。
【0069】
図示されないが、集積回路部品ICは、配線基板130の内部に実装される。集積回路部品ICは、スイッチング回路とローノイズアンプとを含む。
【0070】
弾性波デバイス1は、配線基板130の主面に実装される。
【0071】
インダクタ11は、配線基板130の主面に実装される。インダクタ11は、インピーダンスマッチングのために実装される。例えば、インダクタ111は、Integrated Passive Device(IPD)である。
【0072】
封止部117は、弾性波デバイス1を含む複数の電子部品を封止する。
【0073】
以上で説明された実施の形態2によれば、モジュール100は、弾性波デバイス1を備える。このため、より小型で、よりアイソレーション特性に優れたモジュールを提供することができる。
【0074】
少なくとも一つの実施形態のいくつかの側面が説明されたが、様々な改変、修正および改善が当業者にとって容易に想起されることを理解されたい。かかる改変、修正および改善は、本開示の一部となることが意図され、かつ、本開示の範囲内にあることが意図される。
【0075】
理解するべきことだが、ここで述べられた方法および装置の実施形態は、上記説明に記載され又は添付図面に例示された構成要素の構造および配列の詳細への適用に限られない。方法および装置は、他の実施形態で実装し、様々な態様で実施又は実行することができる。
【0076】
特定の実装例は、例示のみを目的としてここに与えられ、限定されることを意図しない。
【0077】
本開示で使用される表現および用語は、説明目的であって、限定としてみなすべきではない。ここでの「含む」、「備える」、「有する」、「包含する」およびこれらの変形の使用は、以降に列挙される項目およびその均等物並びに付加項目の包括を意味する。
【0078】
「又は(若しくは)」の言及は、「又は(若しくは)」を使用して記載される任意の用語が、当該記載の用語の一つの、一つを超える、およびすべてのものを示すように解釈され得る。
【0079】
前後左右、頂底上下、横縦、表裏への言及は、いずれも、記載の便宜を意図する。当該言及は、本開示の構成要素がいずれか一つの位置的又は空間的配向に限られるものではない。したがって、上記説明および図面は、例示にすぎない。
【符号の説明】
【0080】
1 弾性波デバイス、 3 配線基板、 5 デバイスチップ、 9 電極パッド、 15 バンプ、 17 封止部、 31 外部接続端子、 52 弾性波素子、 52a IDT、 52b 反射器、 52c 櫛形電極、 52d 電極指、 54 配線パターン、 100 モジュール、 105 デバイスチップ、 111 インダクタ、 117 封止部、 130 配線基板、 131 外部接続端子、 IC 集積回路部品