(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151416
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】マルチコプター用フレーム
(51)【国際特許分類】
B64D 27/26 20060101AFI20220929BHJP
B64C 27/08 20060101ALI20220929BHJP
B64C 25/06 20060101ALI20220929BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
B64D27/26
B64C27/08
B64C25/06
B64C39/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021081287
(22)【出願日】2021-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】521202880
【氏名又は名称】酒井 仁
(72)【発明者】
【氏名】酒井 仁
(57)【要約】
【課題】 荷重だけでなく飛行時や離着陸時に発生する応力にも対応し、部品搭載部の設計の自由度も高いマルチコプター用フレームを、少ない部品点数で提供する。
【解決手段】
一端にマウント部を備え、他端に連結部が接続された4本のアーム部を、マウント部が外側に突出するように配置し、各アーム部の中途部において、連結部により相互に連結してフレームを構成する。各アーム部の外側突出部の長さは、アーム部の長さの1/2より長く設定される。アーム部の長さ、外側突出部、および連結がなされるアーム部の中途部は、以下のような関係により決定することができる。アーム部の長さと、当該アーム部の連結部により連結された被連結アーム部の外側突出部の2辺は直角を挟む2辺となり、両アーム部に設置された回転翼の隣接軸距を斜辺とする直角三角形となる。また、アーム部の中途部は、連結に係る2本のアーム部の中心軸が直角に交差する点となる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に回転翼を回転させる動力部を設置するためのマウント部を備え、他端に連結部が接続された4本のアーム部を、前記マウント部が外側に突出するように配置し、各アーム部の中途部において、前記連結部により相互に連結して構成され、かつ、各アーム部の外側突出部の長さが、アーム部の長さの1/2より長いことを特徴とするマルチコプター用フレーム。
【請求項2】
前記アーム部の連結部に、脚部が連結されることを特徴とする請求項1に記載のマルチコプター用フレーム。
【請求項3】
前記アーム部が中空の棒状に形成され、前記連結部において配線引き出し孔が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のマルチコプター用フレーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数の回転翼を用いる飛行体、いわゆるマルチコプター用のフレームに関する。
【背景技術】
【0002】
マルチコプターに用いられるフレームには、搭載される部品による荷重だけでなく、移動、ホバリング等の飛行時や離着陸時に発生する応力も加えられる。したがって、マルチコプター用のフレームは、これらの荷重や応力が加えられてもフレームが損傷せず、かつ慣性系センサ等の構成部品が悪影響を受けないように対応する必要がある。
【0003】
一般的に、マルチコプター用フレームは、回転翼および回転翼を回転させる動力部を支持するアーム部と本体部により構成される。この場合、アーム部はすべて本体部に接続されているため、本体部の剛性の確保はフレームとしての剛性を得るうえで不可欠となる。特許文献1において開示されているマルチコプター用フレームでは、動力源を収容するフレーム本体部にフランジ部を設けることで、搭載される部品による荷重だけでなく、飛行時や離着陸時に発生する応力にも対応できる剛性を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6522074号公報(段落番号0008~0009、
図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1が示すように、従来技術においてマルチコプター用フレームは、一般的にアーム部と本体部からなり、本体部は搭載される部品による荷重だけではなく、飛行時や離着陸時に発生する応力にも耐えられるものとしなければならない。この本体部は実質的に部品搭載部でもあるため、搭載部品に変更があった場合など、本体部の形状を変更する必要が生じた際でも、荷重だけでなく飛行時や離着陸時に発生する応力にも対応可能な剛性が必要となるため設計の自由度は制限される。また、アーム部と本体部からなるメインフレームとは別に、部品搭載部を設置した場合、部品点数が多くなるという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、荷重だけでなく飛行時や離着陸時に発生する応力にも対応し、部品搭載部の設計の自由度も高いマルチコプター用フレームを、少ない部品点数で提供することにある。
【課題を解決する手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、一端に回転翼を回転させる動力部を設置するためのマウント部を備え、他端に連結部が接続された4本のアーム部を、前記マウント部が外側に突出するように配置し、各アーム部の中途部において、前記連結部により相互に連結して構成され、かつ、各アーム部の外側突出部の長さが、アーム部の長さの1/2より長いことを特徴とするマルチコプター用フレームが提供される。
【0008】
この発明によれば、少ない部品点数で、荷重だけでなく飛行時に発生する応力にも対応可能なマルチコプター用フレームを構成することが可能となる。また本発明に係るフレームにおいては、部品搭載部を設置する場合であっても、その部品搭載部は、飛行時に発生する応力に対処する必要はないので設計の自由度も高い。
【0009】
好ましくは、アーム部の連結部に脚部が連結される。この構成によれば、部品搭載部を設置する場合であっても、その部品搭載部は、離着陸時に発生する応力に対処する必要はないので設計の自由度は高い。また部品点数も少なくできる。
【0010】
また好ましくは、アーム部は中空の棒状に形成し、連結部に配線引き出し孔が設けられる。この場合、回転翼を回転させる動力部の配線をアーム部内で実施することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果として、荷重だけでなく飛行時や離着陸時に発生する応力にも対応し、部品搭載部の設計の自由度も高いマルチコプター用フレームを、少ない部品点数で得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】フレームを構成するアーム部の斜視図である。
【
図5】アーム部の長さと相互連結の関係を示すフレームの概略図である。
【
図6】アーム部の中途部に脚部が連結された一例を示した斜視図である。
【
図7】アーム部の中途部に脚部が連結されたフレームの一例を示した斜視図である。
【
図8】フレームの一実施形態となるマルチコプターを示した斜視図である。
【
図9】フレームの一実施形態となるマルチコプターを示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は本発明に係るフレームを示す斜視図であり、
図2はフレームを構成するアーム部の斜視図である。
図1に示すように、本発明に係るマルチコプター用フレームは、一端に回転翼を回転させる動力部を設置するためのマウント部20を備え、他端に連結部30が接続された4本のアーム部10を、前記マウント部20が外側に突出するように配置し、各アーム部10の中途部において、前記連結部30により相互に連結して構成される。各アーム部の外側突出部の長さは、アーム部の長さの1/2より長く設定される。なお、この実施形態でのマウント部20は、マルチコプターにおいて一般的なブラシレスモーターの使用を想定した形状としているが、マウント部20に設置される動力部は、回転翼を駆動することができるものであれば、特に制限されるものではない。電気モーター、小型エンジン、あるいはエンジン等の駆動源から各回転翼へ動力を伝達する機構であってもよい。
【0014】
図3および
図4は連結部30を示す斜視図である。
図3に示すように、連結部30においては、アーム締結部36とアーム締結用ネジ31aおよび31bにより、アーム部10を連結する。連結部30に接続されるアーム部10を中空の棒状とすることにより、その内部で動力部への配線を実施することも可能である。この場合、アーム部10内の配線は、配線引き出し孔35より引き出される。
図4に示すように、連結部30には、脚部を連結、固定するために、脚部連結用ヒンジ部32、脚部固定用雌ネジ部33を設けている。また、部品の搭載に用いる筐体部を固定するための筐体部固定用雌ネジ部34を設けている。
【0015】
アーム部の長さ、外側突出部、および連結がなされるアーム部の中途部は、以下のような関係により決定することができる。すなわち、アーム部の長さと、当該アーム部の連結部により連結された被連結アーム部の外側突出部の2辺は直角を挟む2辺となり、両アーム部に設置された回転翼の隣接軸距を斜辺とする直角三角形の関係となる。したがって、連結がなされるアーム部の中途部は、連結に係る両アーム部が直交する位置となる。
図5により例示すれば、アーム部10aの長さ(51aから61aまでを指す)と、アーム部10aの連結部により連結された被連結アーム部10bの外側突出部(61aから51bまでを指す)は、直角を挟む2辺となり、両アーム部に設置された回転翼の隣接軸距(51aから51bまでを指す)を斜辺とする直角三角形の関係となる。この例において、連結がなされるアーム部10bの中途部は、アーム部10aと10bの2本の中心軸が直角に交差する点61aとなる。
【0016】
本発明に係るマルチコプター用フレームにおけるアーム部の外側突出部は、実質的に、一般的なマルチコプター用フレームでの〈アーム部〉に相当するため、アーム部の外側突出部の長さが、アーム部の長さの1/2より短く設定された場合、搭載可能な回転翼の直径も制限される。したがって、アーム部の外側突出部の長さは、アーム部の長さの1/2より長く設定される。より具体的には、アーム部の外側突出部の長さは、回転翼の隣接軸距の1/2の長さを基準として、回転翼の後流がフレーム中央に形成された方形部により乱されない範囲で短く設定することが望ましい。この場合、4本のアーム部の連結によりフレーム中央に構成された方形部は、隣接する4個の回転翼の回転領域を回避できる中央部の平面において、効率的に面積を得ることができる。したがって、方形部内の空間において搭載部品等の配置の自由度が高くなる。なお、アーム部は、設計上の観点から直線形状を基調とするが、折れ曲がった形状としてもよい。
【0017】
図6および
図7は、本発明に係るフレームのアーム部10の中途部に脚部40が連結される実施例を示す斜視図である。脚部40は、アーム部10の中途部に設けられた脚部連結用ヒンジ部32に脚部連結用ピン42aを用いて連結され、脚部固定具41と脚部固定用ネジ42bにより固定される。
【0018】
図8は、本発明に係るフレームをマルチコプターに適用した実施例を示す斜視図である。マウント部20に動力部82が搭載され回転翼81を駆動する。フレーム中央に形成された方形部には筐体部70が設置され、駆動源であるバッテリーや電装品(図示せず)が格納されている。電装品とは例えば、モーター駆動回路、無線通信装置、フライトコントローラー、慣性計測ユニット、GPS受信機などが含まれる。動力部からの配線はアーム部10内部を経由して、連結部30に設けられた配線引き出し孔35から筐体部70へ導入され、筐体部70は筐体部固定用雌ネジ部34でネジ止めされる。
【0019】
本発明に係るフレームにおいては、4本のアーム部の長さは、回転翼の隣接軸距よりも必ず短くなり、また、各アーム部が中途部で相互に連結される構成であるため、少ない部品点数でありながら軽量かつ剛性の高いフレームとすることができる。例えば、両端に回転翼を回転させる動力部を設置するためのマウント部を備えた2本のアーム部を、そのアーム部の中央部で2本の管材部により連結されたH字型のフレームを比較の対象として例示することができる。4個の回転翼の隣接軸距が同一のフレーム構成とした場合、H字型のフレームでは、2本のアーム部および連結に用いる2本の管材部の長さは、隣接軸距とほぼ等しい長さとなる。したがって、本発明に係るフレームは、同一素材、同一管径のアーム部または管材部を用いた場合のH字型のフレームに比して軽量かつ剛性を高くすることが可能である。
【0020】
上記H字型のフレームでは、2本のアーム部および連結に用いる2本の管材部の長さが隣接軸距とほぼ等しい長さとなるため、移動、旋回等により各回転翼の回転数が非対称となった場合、2本の管材部間で曲げねじりが生じやすい。この曲げねじりが生じた場合、アーム部の一端が下方に引き下げられたならば、他端は上方に持ち上げられるといったシーソー状の変形となり、2本の管材部の弾性に由来する振動も発生しやすい。本発明に係るフレームにおいては、4本のアーム部の連結によりフレーム中央に構成された方形部の各辺の長さは、隣接軸距の1/2より短くなるため、H字型のフレームに比してねじり剛性が高い。また、各アーム部につきマウント部が1個設置される構成であるため、シーソー状の変形、振動も生じない。
【0021】
搭載部品等の配置のために、フレーム中央に形成された方形部に筐体を設置する場合、その筐体はフレームの剛性に資する必要はなく、搭載部品等による荷重にのみ耐えられればよいので、筐体の設計の自由度は高くなる。また筐体は、ゴム等の粘弾性素材によるダンパーを介してフレームに設置することもできるので、フレームに回転翼に由来する振動が生じた場合であっても、筐体への振動の絶縁が容易となる。また、脚部はアーム部の中途部に連結されるため、筐体は離着陸時に生じる応力に対応する剛性まで必要としない。
【0022】
フレーム中央に形成された方形部に筐体を設置する場合、当該筐体の側面部は、4本のアーム部により囲まれている。したがって、飛行中の接触など軽微な事故が生じた場合でも、バッテリーや電装品などの搭載部品を保護しやすい。また、軽微な事故により、アーム部が損傷した場合であっても、損傷したアーム部のみ交換すればよいので補修も容易である。
【0023】
本発明に係るマルチコプター用フレームは、4本のアーム部および脚部の連結により構成されているため、分解、組立が容易となる。したがって、可搬性およびメンテナンス性において利便性が高い。
【0024】
なお、
図9に示すように、マウント部20を上下対称の構成とすることにより、一本のアーム端の上下に2個の動力部を設置して、実質的に同軸二重反転ローターとする構成も可能である。
【0025】
本実施例では、4個の回転翼の軸の配置が正方形となる構成について説明したが、アーム10の外側突出部を曲げる、あるいはマウント部20をアーム10の中心軸の外側に配置することにより、4個の回転翼の軸の配置を長方形または台形とする構成も可能である。
【0026】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して記述したが、具体的な構成は、この実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等は本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0027】
10、10a、10b、10c、10d アーム
20 マウント部
30 アームの連結部
31a、31b アームの連結用ネジ
32 脚部連結用ヒンジ部
33 脚部固定用雌ネジ部
34 筐体部固定用雌ネジ部
35 配線引き出し孔
36 アーム締結部材
40 脚部
41 脚部固定具
42a 脚部連結用ピン
42b 脚部固定用ネジ
43 着地部
51a、51b、51c、51d 回転翼の軸
61a、61b、61c、61d アームの連結部において各アーム中心軸が直角に交差する点
70 筐体
81 回転翼
82 動力部