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特開2022-151449メンテナンスフリー型石材タイル用ガラス質無機系コーティング剤及びメンテナンスフリー型石材タイルの製造方法
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  • 特開-メンテナンスフリー型石材タイル用ガラス質無機系コーティング剤及びメンテナンスフリー型石材タイルの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151449
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】メンテナンスフリー型石材タイル用ガラス質無機系コーティング剤及びメンテナンスフリー型石材タイルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 41/50 20060101AFI20220929BHJP
   C09D 183/04 20060101ALI20220929BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20220929BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20220929BHJP
【FI】
C04B41/50
C09D183/04
C09D7/63
C09D7/61
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021081976
(22)【出願日】2021-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】505204974
【氏名又は名称】株式会社九州ハイテック
(72)【発明者】
【氏名】本田 宗継
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038DL031
4J038HA446
4J038JA17
4J038JA69
4J038JC23
4J038JC32
4J038KA04
4J038KA06
4J038KA08
4J038KA20
4J038MA08
4J038MA10
4J038MA12
4J038MA15
4J038NA01
4J038NA11
4J038PA18
4J038PB05
4J038PC04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】低湿度(65%以下)及び快湿度(65~75%)並びに高湿度(湿度75%以上)の広い湿度条件においても硬化状態が安定するメンテナンスフリー型石材タイル用ガラス質無機系コーティング剤及びそのタイルの製造方法を提供する。
【解決手段】少なくともアルコキシシランの1種もしくは2種以上が4官能基及び3官能基のアルコキシシランの混合物から成るポリオルガノシロキサンと、エポキシ官能基を有するシランカップリング剤を含有し、平均粒径5~60nmの超微粒コロイダルシリカとを含む主成分100重量比に対して、前記ポリオルガノシロキサンが30~60wt%、前記シランカップリング剤5~20wt%、前記超微粒コロイダルシリカが20~40wt%、それに反応硬化性を高める触媒として、リン酸系触媒を重量比で5wt%を超え10wt%以内で添加したメンテナンスフリー型石材タイル用ガラス質無機系コーティング剤を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともアルコキシシランの1種もしくは2種以上が4官能基及び3官能基のアルコキシシランの混合物から成るポリオルガノシロキサンと、エポキシ官能基を有するシランカップリング剤を含有し、平均粒径5~60nmの超微粒コロイダルシリカとを含む主成分100重量比に対して、前記ポリオルガノシロキサンが30~60wt%、前記シランカップリング剤5~20wt%、前記超微粒コロイダルシリカが20~40wt%、それに反応硬化性を高めるために触媒として、チタン系触媒及び又はアルミニウム系触媒を使用せず、リン酸系触媒を重量比で5wt%を超え10wt%以内で添加し、前記超微粒コロイダルシリカ20~40wt%のうち、溶媒のコロイダルシリカを前記超微粒コロイダルシリカ全量に対して5wt%~15wt%添加したメンテナンスフリー型石材タイル用ガラス質無機系コーティング剤。
【請求項2】
少なくともアルコキシシランの1種もしくは2種以上が4官能基及び3官能基のアルコキシシランの混合物から成るポリオルガノシロキサンと、エポキシ官能基を有するシランカップリング剤を含有し、平均粒径5~60nmの超微粒コロイダルシリカとを含む主成分100重量比に対して、前記ポリオルガノシロキサンが30~60wt%、前記シランカップリング剤5~20wt%、前記超微粒コロイダルシリカが20~40wt%、それに反応硬化性を高めるために触媒として、チタン系触媒及び又はアルミニウム系触媒を使用せず、リン酸系触媒を重量比で5wt%を超え10wt%以内で添加し、前記超微粒コロイダルシリカ20~40wt%のうち、水溶媒のコロイダルシリカを前記超微粒コロイダルシリカ全量に対して5wt%~15wt%添加したメンテナンスフリー型石材タイル用ガラス質無機系コーティング剤を粘度3cSt~6cSt(mm2/s)に調整して、予めダイヤモンド研磨で石材表面を荒らした石材床面にコーティングする工程と、コーティング処理後1時間~1日で鉛筆硬度試験と耐摩耗試験の相関データーに基づき測定した場合の鉛筆硬度が鉛筆硬度12H相当以上に常温硬化させる工程と、その後、ダイヤモンド砥石にてコーティング層の表面を研磨することで得られた表面粗さRmax0.8s以下であって鏡面光沢度が80以上となるようにしたメンテナンスフリー型石材タイルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大理石や御影石などの各種石材の表面に高硬度・高鏡面光沢度に優れたガラス質無機系コーティング層形成する湿気硬化型のコーティングであり、低湿度条件(65%以下)及び快湿条件(65~75%)並びに高湿条件(湿度75%以上)の広い範囲の湿度条件において硬化状態が安定するメンテナンスフリー型石材タイル用ガラス質無機系コーティング剤及びメンテナンスフリー型石材タイルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、大理石や人造石、テラゾーなどの各種石材床のメンテナンスは、ワックス工法か、ダイヤモンド砥石による研磨が一般的であった。ワックス工法だと、品質面や光沢維持性などに課題が多いことや定期的に剥離作業を行わなければならないこと、また、その処理を怠ると黒ずみや汚れによって著しく美観を損ねてしまうことなどが課題であり、高品質な状態を長期に渡って維持させることが困難であった。更には、ワックスの剥離剤自体が強アルカリ性であるため、石材の光沢を落としたり、石材自体を脆弱化させたりすることがあるため、この方法によるメンテナンスはあまり推奨出来る工法ではなかった。一方、ダイヤモンド砥石による研磨だと、鏡面仕上げにするのに5工程~7工程位の研磨作業が必要となり、維持管理に手間が掛かり過ぎることや、折角、研磨しても大理石自体が軟らかい石材であるため、数ケ月もすると光沢が落ちてしまう。したがって、定期的に研磨を行っていかないと高品質な状態を長期に維持させることが困難であった。また、研磨の際に使用する水が石材自体を脆弱化させるため、石材のためにはあまり望ましい工法ではなかった。これらの問題を改善すべく、近年、石材用のコーティング剤がいろいろと提案されているが、これらコーティング剤を採用したとしても下記のような課題が残る。
【0003】
(1)高低湿度条件での硬化安定性;
コーティング剤を塗布した後、直ぐに後研磨出来るようにするためには硬化性を促進させる必要がある。そして、低湿度条件(65%以下)及び快湿度(65~75%)並びに高湿条件(湿度75%以上)における広い範囲の湿度条件においても硬化状態を安定させる湿気硬化型のコーティング剤であることが望まれる。
【0004】
(2)短時間で硬化させてもクラックの発生がない;
乾燥硬化性の良い塗膜を形成するために、リン酸系触媒を使用しており、リン酸系触媒は塗膜を短時間で硬化させなければならない。しかしながら、短時間で硬化させるにはクラックの発生を抑制する必要があるため、水溶媒のコロイダルシリカを配合することで極端な硬化を抑制し、同時にポリオルガノシロキサンと、エポキシ官能基を有するシランカップリング剤の硬化促進にも寄与させることで短時間での硬化でもクラックが発生しない状態に保つことが望まれる。
【0005】
(3)密着性が不安定;
大理石や人造石、テラゾーなどは主成分が炭酸カルシウムであるため、基本的にハードコーティング剤との密着性が悪く、施工後、密着不良による縦傷の発生や剥がれなどが発生することがある。また、縮合反応による収縮により、コーティング膜のクラック、剥がれなどが発生し易くなり、品質を著しく損ねてしまう。
【0006】
上記のような課題があるため、現在、国内外を問わず、各種商用施設やホテル、公共施設、遊戯施設などの各種石材のメンテナンスは、研磨によるメンテナンス工法か、ワックス工法によるメンテナンスが一般的であり、メンテナンスフリー型石材タイルは提供されていない。
【従来技術】
【0007】
前回本出願人は、特許文献1(特開2016-210670号)において、メンテナンスフリー型石材タイル及びそのコーティング剤並びにそのタイルの製造方法を提供した。この特許文献1では、「少なくともアルコキシシランの1種もしくは2種以上が4官能基及び3官能基のアルコキシシランの混合物から成るポリオルガノシロキサンと、エポキシ官能基を有するシランカップリング剤を含有し、平均粒径5~20nmの超微粒コロイダルシリカとを含む主成分100重量比に対して、ポリオルガノシロキサンが30~50wt%、シランカップリング剤5~20wt%、超微粒コロイダルシリカが20~40wt%、それに反応硬化性を高める触媒としてリン酸等を重量比で0.1~5.0wt%か、チタン系触媒及び/又はアルミニウム系触媒が重量比で0.1~20.0wt%かを添加するメンテナンスフリー型石材タイル用ガラス質無機系コーティング剤」であって、表面に鉛筆硬度が12H相当以上の超硬質系塗膜で、耐水性、防汚性、滑り性、密着性が良好で、クラック発生のないコーティング層を有する、光沢が80以上でメンテナンスフリー型石材タイル用ガラス質無機系コーティング剤及びそのタイルの製造方法を提供する」旨を開示した。
【0008】
しかしながら、上記特許文献1においては、チタン系触媒及び又はアルミニウム系触媒をも使用できる旨記載され、触媒としてリン酸などは重量比で0.1~5.0wt%添加するものであって、リン酸系触媒は本発明の如く重量比で5wt%を超え10wt%以内の範囲で添加するものではなく、前記超微粒コロイダルシリカ20~40wt%のうち、水溶媒のコロイダルシリカを前記全量に対して5wt%~15wt%添加した旨は記載されていない。 そのため、快湿度(65~75%)において安定した硬化状態を得られるものであっても、低湿度条件(65%以下)及び高湿条件(湿度75%以上)における広い範囲の湿度条件において安定した硬化状態得られなかった。
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は前述の問題を解決すべく、上記低湿度(65%以下)及び快湿度(65~75%)並びに高湿度(湿度75%以上)の広い湿度条件においても安定して硬化が促進するメンテナンスフリー型石材タイル用ガラス質無機系コーティング剤及びそのタイルの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決する手段】
【0010】
請求項1の発明は、少なくともアルコキシシランの1種もしくは2種以上が4官能基及び3官能基のアルコキシシランの混合物から成るポリオルガノシロキサンと、エポキシ官能基を有するシランカップリング剤を含有し、平均粒径5~60nmの超微粒コロイダルシリカとを含む主成分100重量比に対して、前記ポリオルガノシロキサンが30~60wt%、前記シランカップリング剤5~20wt%、前記超微粒コロイダルシリカが20~40wt%、それに反応硬化性を高めるために触媒として、チタン系触媒及び又はアルミニウム系触媒を使用せず、リン酸系触媒を重量比で5wt%を超え10wt%以内で添加し、前記超微粒コロイダルシリカ20~40wt%のうち、水溶媒のコロイダルシリカを前記微粒コロイダルシリカ全量に対して5wt%~15wt%添加したメンテナンスフリー型石材タイル用ガラス質無機系コーティング剤を提供するものである。
【0011】
この発明においては、メンテナンスフリー型石材タイル用ガラス質無機系コーティング剤を塗布した後、直ぐに後研磨出来るようにするためには硬化性を促進させる必要がある。従って、触媒としてチタン系触媒やアルミ系触媒は不適切である。ただリン酸系触媒は施工時の温湿度条件に敏感に影響されるため、ゾルゲル工法は困難とされていたが、酸系触媒量や水量をパラメーターにして調整した。 即ち、酸系触媒量を高低湿条件下で5wt%を超え10wt%以内で添加した。また、超微粒コロイダルシリカ20~40wt%のうち、水溶媒のコロイダルシリカを前記超微粒コロイダルシリカ全量に対して5wt%~15wt%添加して加水分解を促進させ、水量とリン触媒量のバランスをとることで高低湿条件下での硬化性が安定化した。各条件においてリン酸系触媒が重量比で5wt%を超え10wt%以内、超微粒コロイダルシリカ20~40wt%のうち、水溶媒のコロイダルシリカを前記超微粒コロイダルシリカ全量に対して5wt%~15wt%添加したことにより硬化の安定性が得られ、硬化後の研磨についてもより安定した。これにより、湿気硬化型のコーティングにおいて、低湿度条件(65%以下)及び快湿度(60~75%)並びに高湿条件(湿度75%以上)における広い範囲の湿度条件において硬化状態が安定となるメンテナンスフリー型石材タイル用ガラス質無機系コーティング剤を得ることができる。即ち、硬化性が安定化とは具体的には、低湿度及び快湿度並びに高湿度条件下においてコーティングがどの条件においても同程度の硬度を有し、密着性についても剥がれなく後研磨できる状態のことである。
【0012】
請求項2の発明は、少なくともアルコキシシランの1種もしくは2種以上が4官能基及び3官能基のアルコキシシランの混合物から成るポリオルガノシロキサンと、エポキシ官能基を有するシランカップリング剤を含有し、平均粒径5~60nmの超微粒コロイダルシリカとを含む主成分100重量比に対して、前記ポリオルガノシロキサンが30~60wt%、前記シランカップリング剤5~20wt%、前記超微粒コロイダルシリカが20~40wt%、それに反応硬化性を高めるために触媒として、チタン系触媒及び又はアルミニウム系触媒を使用せず、リン酸系触媒を重量比で5wt%を超え10wt%以内で添加し、前記超微粒コロイダルシリカ20~40wt%のうち、水溶媒のコロイダルシリカを前記超微粒コロイダルシリカ全量に対して5wt%~15wt%添加したメンテナンスフリー型石材タイル用ガラス質無機系コーティング剤を粘度3cSt~6cSt(mm2/s)に調整して、予めダイヤモンド研磨で石材表面を荒らした石材床面にコーティングする工程と、コーティング処理後1時間~1日で鉛筆硬度試験と耐摩耗試験の相関データーに基づき測定した場合の鉛筆硬度が鉛筆硬度12H相当以上に常温硬化させる工程と、その後、ダイヤモンド砥石にてコーティング層の表面を研磨することで得られた表面粗さRmax0.8s以下であって鏡面光沢度が80以上となるようにしたメンテナンスフリー型石材タイルの製造方法を提供するものである。
【0013】
この発明においては、メンテナンスフリー型石材タイル用ガラス質無機系コーティング剤を塗布した後、直ぐに後研磨出来るようにするためには硬化性を促進させる必要がある。従って、チタン系触媒やアルミ系触媒は不適切である。ただリン酸系触媒は施工時の温湿度条件に敏感に影響されるため、ゾルゲル工法は困難とされていたが、リン酸系触媒量や水量をパラメーターにして調整した。 即ち、リン酸系触媒量を高低湿条件下で5wt%を超え10wt%以内振った。また、前記超微粒コロイダルシリカ20~40wt%のうち、水溶媒のコロイダルシリカを前記超微粒コロイダルシリカ全量に対して5wt%~15wt%添加した。コロイダルシリカを一部水溶媒のものにすることで加水分解を促進させ、水量とリン酸系触媒量のバランスをとることができ高低湿条件下での硬化性が安定化した。試験結果から各条件においてリン酸系触媒が5wt%を超え10wt%以内、水溶媒のコロイダルシリカを5wt%~15wt%で硬化の安定性が得られ、硬化後の研磨についてもより安定した。これにより、湿気硬化型のコーティングにおいて、低湿度条件(65%以下)及び快湿度(60~75%)並びに高湿条件(湿度75%以上)における広い範囲の湿度条件において硬化状態が安定となるメンテナンスフリー型石材タイル用ガラス質無機系コーティング剤のコーティング方法を提供できる。
【0014】
【特許文献1】特開2016-210670号
【本発明の実施例】
【0015】
本発明において石材としては大理石、御影石、人造石、テラゾー、セラミックタイルなどの床材に使用できる。本発明の4官能及び3官能のアルコキシシランとしては、主にテトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ジシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、及びメチルシリケート、エチルシリケートなどを使用する。
【0016】
シランカップリング剤としてはエポキシ官能基シランカップリング剤として、β-(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、‐グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、‐グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、‐グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどを使用する。
【0017】
高硬度を保有させるために使用するコロイダルシリカは有機溶剤分散型のタイル、例えばメタノール系、エタノール系、イロプロパノール系、メチルエチルケトン系、メチルエチル系、メチルイソブチル系などを使用する。また、水分散型コロイダルシリカも使用する。いずれも粒子径が5nm~60nmのものを使用する。また、前記超微粒コロイダルシリカ20~40wt%のうち、該コロイダルシリカ100wt%に対し水溶媒のコロイダルシリカを5wt%~15wt%添加する。触媒としては、チタン系触媒及び又はアルミニウム系触媒を使用せず、リン酸系触媒を重量比で5wt%を超え10wt%以内で添加する。リン酸系触媒はアルコール(イソプロピルアルコール)で希釈されたもので固形分の割合が20~30%のものを使用する。
【0018】
表1に一般的に良く使用される大理石の物性を示す。これらに示すように大理石の吸水率が0.17%以下と極めて低いことが分かる。
【表1】
【0019】
本コーティング剤に要求される特性としては、第1に、湿気硬化型のコーティングとして、低湿度条件(65%以下)及び快湿度(65~75%)並びに高湿条件(湿度75%以上)における広い範囲の湿度条件において硬化状態が安定となり、塗布後、約1時間~1日位で12H相当以上の硬度が得られること。 つまり、12H相当以上であれば研磨による剥がれは起きないことが確認されており、12H相当以上にすることで高硬度、且つ高密着な塗膜となる(密着性が劣ると高硬度皮膜であったとしても低い鉛筆硬度値を示す)。また、12H相当以上であれば大理石研磨の光沢維持性に比べ、10倍~20倍位の極めて優れた光沢維持が可能となる。尚、鉛筆硬度の評価は、11H以上は図1に示す鉛筆硬度試験と耐摩耗試験の相関データーに基づき測定した相当値として示している。
【0020】
第2に、コーティング剤の表面を研磨出来ることである。ガラス質コーティング剤を塗膜硬化後、表面粗さRmax0.8s以下であって鏡面光沢度80以上となるようにダイヤモンド研磨を行うことにより、通常石材研磨と同等な高品質な仕上がりが得られる。その結果、“滑り性”や“汚れの付着”なども予防でき、その状態を長期に渡って維持することができる。
【ダイヤモンド砥石による研磨試験】
【0021】
下記表2は、前記コーティング面を、ダイヤモンド砥石の粗さをパラメーターにして研磨した時の光沢値と表面粗さ、仕上がりの結果を示す。この結果より、#5000以上の砥石で研磨することにより、表面粗さRmax0.8s以下であって80以上の鏡面光沢値の鏡面光沢度が得られ、一般的なセラミックタイルや御影石などと同様な鏡面光沢度に優れた仕上りが得られることになる。
【表2】
【0022】
上記の結果より、#5000以上の砥石で研磨することにより、表面粗さRmax0.8s以下であって鏡面光沢度80以上が得られ、一般的に鏡面と言われる鏡面仕上げが得られることになる。尚、砥石の番手を(例えば#8000,#10000等と)上げれば光沢値と表面粗さは更に向上するが、反面、研磨能力が低下して鏡面仕上げにするのに時間を有すことになる。よって、#5000砥石を使用した方が、処理時間をかけずに良好な鏡面状態が得られることになる。
【実験例】
【0023】
先ず、下記表3に示す通り、快湿度条件(65~75%)において、ポリオルガノシロキサンが40wt%、前記シランカップリング剤15wt%、リン酸触媒量を6wt%に固定し、全体に含まれるコロイダルシリカを20~40wt%に振り、該コロイダルシリカ全量100wt%に対して水溶媒のコロイダルシリカを0~40wt%振った際の硬度等を確認した。その後、#5000砥石による研磨を行い、コート層の剥がれの有無を確認した。コート層の厚みは20μmとした。テストは比較的密着性の良いガラス板に処理し、基材との密着性の影響を受けないような状態で評価するようにした。
【0024】
【表3】
[試験方法]
*コーティング時の快湿度条件としては、天気の良い秋場に、湿度計において、65~75%範囲内において行った。
*ガラス板の表面をGCパウダー#1000で荒らしてコーティング剤を塗布。厚みは20μmとした。
*JIS K5600引っ掻き硬度試験(鉛筆法で、以下``鉛筆硬度試験
その鉛筆で硬度測定試験を実施。11H以上については図1に示す鉛筆硬度試験と耐摩耗試験の相関データーにより11H相当、12H相当、13H相当と推定した。
*ダイヤモンド砥石による研磨は#5000砥石を使用し、水を出しながらハンドポリッシャーで1分間ほど研磨した。
*テストは各々5回ずつ行い、剥がれや傷の侵入を確認した。
*サンプルは10cm×10cmのガラス板を使用した。
【0025】
上記の試験結果より、快湿条件(65%~75%)においては膜厚20μm位であれば12H相当以上の硬度で、剥がれや傷の発生を起きることなく後処理(ダイヤモンド砥石による研磨)が出来ることが分かった。
【耐摩耗試験の結果】
【0026】
下記表4は、上記表3の試料12のコーティング剤の鉛筆硬度における皮膜の耐摩耗性や光沢維持性を示した結果である。この結果より、12H位のコート層の硬度であれば、試料1や2の大理石比べて10倍~20倍以上の耐摩耗性が得られ、優れた光沢得られることが分かる。
【表4】
《試験方法》
*硬度測定はJIS K5600鉛筆硬度試験とし、ガラス板に膜厚は20μmとした。
*JIS K5600鉛筆硬度試験の規格は6Hまでであるが、実際には10H相当までの鉛筆が存在するため、その鉛筆で硬度測定を実施。11H相当以上については図1に示す鉛筆硬度試験を耐摩耗試験の相関データーにより11H相当,12H相当を推定した。
*耐摩耗試験はJIS H8503-1989にて測定した。
*研磨剤はGC#100を使用した。
*初動の光沢値は大理石、コーティング層とも80に揃えて試験を行った。
*耐摩耗試験の1時間は実際の現揚において1年位に相当する。
【0027】
上記の結果より、コーティング層の硬度が12H相当以上位になると、著しく耐摩耗性や光沢維持性が向上し、メンテナンスフリーの被膜が形成出来ることになる。その結果、通常の大理石の光沢維持性に比べて10倍~20倍以上の耐摩耗性や光沢維持性が得られることが確認できる。また、快湿度条件(65~75%)において、含まれるコロイダルシリカのうち、該コロイダルシリカ全量100wt%の内水溶媒のコロイダルシリカが15wt%を超えて多すぎる場合、極端に塗膜の硬化性が低下して研磨の際に剥がれや研磨傷が発生することが確認できた。しかしながら、上記表3で示した結果においてコロイダルシリカ20~40wt%のうち、該コロイダルシリカ全量100wt%に対して水溶媒のコロイダルシリカが5wt%未満の場合において時間経過とともにクラックが発生する。よって、快湿度条件(65~75%)において、コロイダルシリカのうち、該コロイダルシリカ全量100wt%に対して水溶媒のコロイダルシリカを5~15wt%含んでいることで急な硬化を防ぎ、後研磨しても剥がれ生じがたいことが理解できる。
【0028】
以上の結果より、コーティング層の硬度を12H相当以上にすることで、後処理(ダイヤモンド砥石による研磨)による剥がれが起きることなく、鏡面仕上げにでき、通常の大理石研磨に比べて10倍~20倍以上の光沢維持性を有する皮膜となり、メンテナンスフリー型の石材として提供出来ることが理解される。
【比較実験組成】
【0029】
まず、ポリオルガノシロキサンやシランカップリング剤を含むシラン総量を40%に固定して触媒はリン酸触媒を6~10wt%、コロイダルシリカを35wt%として、該コロイダルシリカ全体100wt%に対して水溶媒のコロイダルシリカを0~20wt%振って試料No.1~15を作成した。
【0030】
【表5】
【0031】
上記表5に基づく各試料を、下記快湿度条件(65~75%~表6)、高湿度条件(75%以上~表7)、低湿度条件(65%以下~表8)において、各試料を大理石(ビアンコカララ)上に塗布し、クラックや剥がれ有無の仕上がり、密着状態、硬度などを確認した結果を下記に示す。
【比較実験1】
【0032】
【表6】
以下の方法により塗膜評価を行なった。
*コーティング時の快湿度条件としては、天気の良い秋場に、湿度計において、65~75%範囲内において行った。
*仕上がり確認;目視にてクラックや剥がれの有無を確認した。
*密着試験方法;JIS K5400記載の碁盤目法に準じ、試験片の塗面に対して1cm2中に1mm2の碁盤目を100個切り、これにセロハンテープを圧着してから剥離し、100個のうちの残存数から判定した。
*鉛筆硬度試験;JIS K-5600に準ずる。試験片を水平な台の上に塗膜面を上向きにして固定し、約45度の角度で鉛筆を持ち、芯が折れない程度に出来るだけ強く塗膜を面に押し付けながら、試験者の前方に均一な速度で約1cm位押し付けて塗膜を引っ掻く。塗膜面の破れない最も硬い鉛筆の硬度記号を示した。但し、JIS鉛筆硬度試験の規格は6Hまであるが、実際の鉛筆は10Hまで存在するため、その鉛筆硬度で試験を実施した。また、11H以上については図1の鉛筆硬度試験と耐摩耗試験の相関データーより、11H,12H,13Hを推定した。
【0033】
上記結果より快湿条件(65~75%)においては、試料5,6,10,11,15以外は良好な結果が得られた。6,11については、水溶媒コロイダルシリカが含まれず、リン酸系の触媒量が多いことで硬化が極端に促進されコーティングの収縮が強く微細なクラックが発生していると考えられる。一方で5,10,15については6,11と同様にリン酸系の触媒量が多いものの、水溶媒のコロイダルシリカも多くなっているので、塗膜の硬化が遅れ、硬度も低く、密着試験でも剥がれが生じたものと考えられる。これらの結果から快湿条件でのリン酸系の触媒量が過多になるとクラックの原因になるが水溶媒のコロイダルシリカを5~15wt%含むことで硬化性のバランスが取れ、リン酸系の触媒量が多くなってもクラックや密着試験による剥がれは見られないことが分かった。
【比較実験2】
【0034】
【表7】
以下の方法により塗膜評価を行なった。
*コーティング時の高湿度条件としては、梅雨場に、湿度計において、75%以上の条件下において行った。
*仕上がり確認;目視にてクラックや剥がれの有無を確認した。
*密着試験方法;JIS K5400記載の碁盤目法に準じ、試験片の塗面に対して1cm2中に1mm2の碁盤目を100個切り、これにセロハンテープを圧着してから剥離し、100個のうちの残存数から判定した。
*鉛筆硬度試験;JIS K-5600に準ずる。試験片を水平な台の上に塗膜面を上向きにして固定し、約45度の角度で鉛筆を持ち、芯が折れない程度に出来るだけ強く塗膜を面に押し付けながら、試験者の前方に均一な速度で約1cm位押し付けて塗膜を引っ掻く。塗膜面の破れない最も硬い鉛筆の硬度記号を示した。但し、JIS鉛筆硬度試験の規格は6Hまであるが、実際の鉛筆は10Hまで存在するため、その鉛筆硬度で試験を実施した。また、11H以上については図1の鉛筆硬度試験と耐摩耗試験の相関データーより、11H,12H,13Hを推定した。
【0035】
表7から考えられるに、高湿度(湿度75%以上)条件において水溶媒コロイダルシリカが少ないほど硬化は進み、リン酸触媒の量が多いほど硬化が進んでいることがわかる。
しかしながら、試料15のようにリン酸触媒が多くなったとしても水溶媒コロイダルシリカの量が多い場合には密着試験において剥がれが発生している。これは表6の快湿度条件時の結果と同様、リン酸触媒が多くても水溶媒コロイダルシリカの量が多いため硬化が遅れており、高湿条件においてはさらに硬化が遅れているものと考えられる。また、1、6、11は高湿条件において、クラックの発生もなく良好な硬化条件でることがわかる。これらのことから高湿条件においては、水溶媒コロイダルシリカは0~15wt%、リン酸触媒量は重量比で5wt%を超え10wt%以内が適している。
【比較実験3】
【0036】
【表8】
以下の方法により塗膜評価を行なった。
*コーティング時の快湿度条件としては、天気の良い秋場に、湿度計において、65%以下において行った。
*仕上がり確認;目視にてクラックや剥がれの有無を確認した。
*密着試験方法;JIS K5400記載の碁盤目法に準じ、試験片の塗面に対して1cm2中に1mm2の碁盤目を100個切り、これにセロハンテープを圧着してから剥離し、100個のうちの残存数から判定した。
*鉛筆硬度試験;JIS K-5600に準ずる。試験片を水平な台の上に塗膜面を上向きにして固定し、約45度の角度で鉛筆を持ち、芯が折れない程度に出来るだけ強く塗膜を面に押し付けながら、試験者の前方に均一な速度で約1cm位押し付けて塗膜を引っ掻く。塗膜面の破れない最も硬い鉛筆の硬度記号を示した。但し、JIS鉛筆硬度試験の規格は6Hまであるが、実際の鉛筆は10Hまで存在するため、その鉛筆硬度で試験を実施した。また、11H以上については図1の鉛筆硬度試験と耐摩耗試験の相関データーより、11H,12H,13Hを推定した。
【0037】
低湿度(湿度65%以下)条件において、試料1,5,6,10,11,15以外は良好な結果が得られた。快湿度条件の表6結果と同様1,6,11についてはリン酸系の触媒量が多いことで硬化促進される傾向にある。低湿度条件では、水を含まない試料1、6、11においてコーティングの硬化がさらに早くなるため、収縮がより多く微細なクラックが発生していると考えられる。そのため、剥がれも多く発生している。一方で5,10,15についてはリン酸系の触媒量が多いものの、水溶媒のコロイダルシリカも多くなっているので、低湿度条件であっても塗膜の硬化が遅れ、硬度も低く、密着試験でも剥がれが生じたと考えられる。これらの結果から低湿度条件で水溶媒コロイダルシリカが0wt%になると硬化による収縮が強く、クラックの原因になり、剥がれも多く生じてしまう。低湿度条件においてもコロイダルシリカ全100wt%に対し水溶媒のコロイダルシリカを5~15wt%含むことで硬化性のバランスが取れ、リン酸系の触媒量が多くなってもクラックや密着試験による剥がれは見られないことが分かった。
【0038】
高湿条件においては表7より、リン酸系触媒を重量比で5wt%を超え10wt、水溶媒コロイダルシリカが0~15wt%で安定した硬化性を得たが、快湿度(湿度65~75%)条件、低湿度(湿度65%以下)条件において、表6、表8より水溶媒コロイダルシリカが0wt%の時にクラックが発生し、密着試験においても剥がれが生じている。これらのことから各温湿度条件下で安定して硬化が促進されるためには、リン酸系触媒を重量比で5wt%を超え10wt%、水溶媒コロイダルシリカが5~15wt%が適量であることがわかる。
【発明の効果】
【0039】
本発明においては、上記低湿度(65%以下)及び快湿度(65~75%)並びに高湿度(湿度75%以上)の広い湿度条件においても安定して硬化が促進するメンテナンスフリー型石材タイル用ガラス質無機系コーティング剤及びそのタイルの製造方法を提供すること提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1図1は鉛筆硬度試験と耐摩耗試験の相関データ
図1