(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151455
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】動物用非接触式生体監視装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/00 20060101AFI20220929BHJP
A61B 5/113 20060101ALI20220929BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20220929BHJP
A61B 5/145 20060101ALI20220929BHJP
A01K 29/00 20060101ALI20220929BHJP
G01S 13/87 20060101ALI20220929BHJP
G01S 13/522 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
A61B5/00 102A
A61B5/113
A61B5/11 110
A61B5/145
A01K29/00 A
A01K29/00 D
G01S13/87
G01S13/522
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021082755
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】507294395
【氏名又は名称】株式会社ホクシンエレクトロニクス
(71)【出願人】
【識別番号】509192684
【氏名又は名称】株式会社山王電機製作所
(72)【発明者】
【氏名】田中 義克
(72)【発明者】
【氏名】田村 雅史
【テーマコード(参考)】
4C038
4C117
5J070
【Fターム(参考)】
4C038KK01
4C038KL05
4C038KM00
4C038KX02
4C038KY10
4C038VA04
4C038VB31
4C038VB32
4C038VB33
4C038VB40
4C038VC20
4C117XA01
4C117XB04
4C117XE41
4C117XE51
5J070AB24
5J070AC20
5J070AD02
5J070AE10
5J070AF01
5J070AK14
5J070BD01
(57)【要約】
【課題】ブタなど畜産動物や犬、ねずみ、サルなど、愛玩動物や実験動物の呼吸、心拍や酸素濃度を測定するとき、非接触でリアルタイムに測定が可能な動物用非接触式生体監視装置を提供する。
【解決手段】送受信アンテナやホーンからなるセンサユニットを飼育ケージ飼育小屋に設け、飼養される動物の呼吸、心拍、酸素濃度を非接触で検知する。60GHz付近の波長を含む複数種の波長の電波が生体の測定部で反射し、若しくは透過して、その信号が受信アンテナへ届くまでの距離や受信波の減衰から生体情報を算出する。胸部や腹部は呼吸や鼓動の影響で微細に動いて受信アンテナと測定部との距離が微細に変動する事や60GHz付近の電波が酸素分子に吸収され減衰する事をデータ波形としてとらえ、波形を電子回路上でアルゴリズムを用いて分離・計算する。その結果、得られた呼吸、心拍、酸素濃度、酸素飽和度の情報をリアルタイムで出力し、表示する生体監視が可能となる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物の生体情報を非接触で検出することにおいて、複数種類の電波を同時または交互に発信受信して、非接触で前記生体の呼吸と心臓の鼓動と酸素濃度を読み取ることを特徴とした、動物用非接触式生体監視装置。
【請求項2】
動物の生体情報を非接触で検出することにおいて、60GHz帯を含む複数の電波を同時または交互に発信受信を繰り返して、非接触で前記生体の呼吸と心臓の鼓動と酸素濃度を読み取ることを特徴とした、動物用非接触式生体監視装置。
【請求項3】
動物の生体情報を非接触で検出することにおいて、60GHz帯と24GHz帯の電波を同時または交互に発信受信を繰り返して、非接触で前記生体の呼吸と心臓の鼓動と酸素濃度を読み取ること、その情報をモニタに表示する事を特徴とした、動物用非接触式生体監視装置。
【請求項4】
実験動物の生体情報を非接触で検出することにおいて、60GHz帯と24GHz帯の電波を同時または交互に発信受信を繰り返して、非接触で前記生体の呼吸と心臓の鼓動と酸素濃度を読み取ること、その情報をモニタに表示する事を特徴とした、動物用非接触式生体監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルス状の複数種類の電波を放射し、その反射波成分から、生体の呼吸と心拍と酸素濃度を、監視・測定することに関するものである。
【背景技術】
【0002】
動物の心拍、呼吸の測定は、健康管理や医療行為に必要な情報であり、医療機器や獣医師・医療管理者の触診、心電図、聴診器で行っていた。
【0003】
従来、小動物の心拍、呼吸を検知するときは、敏感な圧電センサを使用したマットに生体を接触させて測定する機器があり、これにより生体の心拍、呼吸を測定し異常を検知していた。
【0004】
さらに、動物の酸素濃度、酸素飽和度を測定するセンサとしては、麻酔で動きを止めて電極に乗せるなど接触させて測定する方式があるが生体への負担が大きい。
【0005】
この酸素測定方法は、体毛がある動物や大型の動物に対しては無効であり、その場合は、動脈血管に注射針を刺す方法で血液を採取して酸素濃度を測定しており、採血行為によるストレス、麻酔薬の影響、皮膚や血管が痛むリスクを背負わなければならなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、動物の状態を把握する為には、獣医師または管理者は生体に接触させ、若しくは侵襲的に使用する機器での呼吸、心拍、酸素濃度の測定が欠かせないものであり、測定現場では高度な技術を有す人手不足の問題がある。
【0007】
また、動物の状態を把握する為には、獣医師または管理者は生体に接触させ、若しくは侵襲的に使用する機器での呼吸、心拍、酸素濃度の測定が欠かせないものであり、測定現場では動物への接触による感染リスクや使用する機器を介した動物生体同士の感染リスクの問題がある。
【0008】
合わせて、接触測定によるストレス増大と、ストレスによる測定値変動の影響も懸念されていた。
【0009】
本発明は、生体に安全な微弱電波を使用する方法であり、動物への接触が不要な方法であるために、小動物のケージ下、飼育容器、飼育部屋内に設置することで常時、または任意のタイミングで生体の呼吸、心拍、酸素濃度測定が可能となり、遠隔監視をも可能として獣医師・医療管理者の負担を低減するものである。
【0010】
本発明は、生体に安全な微弱電波を使用する方法であり、動物への接触が不要な方法であるために、獣医師・医療管理者と動物の間や、動物同士の間での感染症リスクを下げるためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
生体に非接触で呼吸、心拍、酸素濃度を測定し、かつ高精度に変位を確認できれば、獣医師・医療管理者の、生体に測定のための負担が少ない。
【0012】
動物を監視することにおいて、生体に安全な微弱出力の複数電波を使用して受信と発信について各1個以上のアンテナを備え、このアンテナは指向性を制御するためのホーンを具備し、前記生体の正面、背面、左右側面方向に近接配置されパルス状の電波を発信し、前記生体が呼吸した時と心臓の鼓動を含む僅かな変位を読み取ること、および60GHzを含む複数の周波数の減衰具合を比較することで酸素濃度の測定が可能である。それをもとに読み取られた生体の情報をモニタに表示する事を特徴とする。
【0013】
この場合の生体の変位の測定は、呼吸・鼓動により生ずる胸部の動きを、アルゴリズムを用いて、生体の体動の波形の中に含まれる小さな呼吸の波形や、心拍のより小さな波形を分ける処理をする。
【0014】
この場合の生体に向けて送信された60GHzを含む複数の電波は、体表面と体内の組織層で反射される。そのうちの体内で反射した60GHz付近の電波は生体内の酸素分子によって吸収され減衰した反射波と、酸素の影響を受けない周波数の電波の反射とを比較することで酸素濃度を推定するアルゴリズムを用いて生体内の酸素濃度や酸素飽和度を算出する。
【0015】
このような構造の非接触式生体監視装置は、送受信アンテナ指向面を測定する生体の正面や背面や側面などに対向するように、ケージの上下部や側面部、飼育部屋の天井付近や側面付近に設置する。
本発明は、以上の構成からなる動物用非接触式生体監視装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の動物用非接触式生体監視装置では生体の正面、背面、側面、および上下面など全方位に向けて送受信アンテナを設置する事を可能としたので、反射波の変位で生体の異常な動きや不在も検知できる、それら情報を接続した機器にリアルタイムに伝送し表示させることができる。また、表示部を見ただけで呼吸、心拍、酸素濃度、体動までも容易に確認できる。また、獣医師・医療管理者が動物に直接触れない事で互いに感染リスクを減らし、測定する手間や負担を省くことができる。さらに、生体の動きが確認できない場合は警告音で知らせることにより突発的に起こりうる生体の逸走を検知することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】本発明の1個の送信受信アンテナを備えたセンサユニットの横から見た断面図(a)と、測定面側から見た図(b)である。
【
図3】本発明のセンサユニットのホーン使用と角度を表した図である。
【
図4】本発明の複数個の受信センサを備えた変位測定ユニットの横から見た断面図(c)と、下側から見た図(d)である。
【
図6】本発明の変位測定ユニット・表示ユニットを一体化した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の動物用非接触式生体監視装置の構成の利用例である。この非接触式生体監視装置の送受信アンテナを内包するセンサユニット3は、動物1が飼養されているケージ2の側位置に、発信受信アンテナ指向面5を上向きにして、動物1との電波伝搬経路14が成り立つ位置に設置する。動物1は、牛、ブタ、犬、猫、ねずみ、サル、など畜産動物、愛玩動物や実験動物であり、ケージ2など飼養環境は、その動物の大きさや習性による。動物1は、例えばケージ2若しくは飼育部屋内にて飼養されており、センサユニット3は、動物1の情報収集の目的でケージ2の下側に取り付けられている。センサユニット3には測定された情報を表示可能なコントローラ・モニタ4に接続電線7で接続されている。
センサユニット3の形状として強固な固定が出来て、動物1が大きく動かない場合で、動物1の心拍、呼吸測定に対しては、
図2の送受信ICユニット6が一つだけの簡易的なもので対応できる。
【0019】
図2は、センサユニット3の構造例を示している。コントローラ・モニタ4と接続電線7で接続された一つの送受信ICユニット6を内包した、ネジで取付固定するための複数穴があるケースで構成される。
【0020】
センサユニット3及びコントローラ・モニタ4のケース材質は、ABS・アクリル樹脂・ポリカーボネート樹脂・スチロール樹脂、アルミ、スチール板金、ガラス等が挙げられる。
【0021】
図3は、動物1に対して、ほぼ平行に設置された場合に、センサユニット3の発信受信アンテナ指向面5に、指向角度を制御するホーン15を取付けることで生体に向け、0度から30度の間でポイントを絞って使用することを可能とした事を示している。
【0022】
図4は、内部に送受信ICユニット6が複数ある場合のセンサユニット3の構造例を示している。これは60GHzを含む複数種類の周波数を用いるため、複数の送受信ICユニット6を動物1に対して電波伝搬経路14が成り立つ位置に配置する構造を内包した、ネジで取付固定するための複数穴があるケースで構成され、酸素濃度、酸素飽和度を測定する場合に有効であることを示している。
【0023】
図5について、非接触式生体監視装置の構成を示している。送受信ICユニット6を含むセンサユニット3と、制御回路8を内包し、情報を表示する表示画面9を有すコントローラ・モニタ4は、接続電線7で電気的に接続されていることを示している。
【0024】
図6について、センサユニット3とコントローラ・モニタ4の一体型ユニット10の構造を示している。取付用の固定具11を具備したアーム16で保持されている例である。
【0025】
次に、
図7に基づいて、呼吸・心拍の信号について説明する。
図7の実線で示された呼吸信号12・心拍信号13は、センサユニット3を測定対象である動物1に対して、電波伝搬経路14が可能なように取り付けた時に得られるものである。この波形には呼吸と心拍の情報が混在しており、それぞれの波形を分離・数値化してモニタ4に表示する事ができる。
【0026】
次に、使用例について説明する。
図8に示すように、動物1が飼養されているケージ2について、電波伝搬経路14を保つような位置にセンサユニット3が取り付けられない場合にセンサユニット3を飼育部屋の天井など、動物1の上部に取り付ける事を示している。
【0027】
この時のセンサユニット3、若しくはセンサユニットとコントローラ・モニタ4の一体型ユニット10と動物1の距離は、測定準備で予め設定した距離に対して大きく変動しない事が必要である。
【符号の説明】
【0028】
1 動物
2 ケージ
3 センサユニット
4 コントローラ・モニタ
5 発信受信アンテナ指向面
6 送受信ICユニット
7 接続電線
8 制御回路
9 心拍、呼吸、酸素濃度の表示画面
10 センサと表示モニタの一体型ユニット
11 固定具
12 呼吸波形
13 心拍波形
14 電波伝搬経路
15 ホーン
16 アーム