(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151462
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】支持面変形シート
(51)【国際特許分類】
A47C 27/00 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
A47C27/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021082763
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】591224788
【氏名又は名称】大分県
(72)【発明者】
【氏名】兵頭 敬一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 幸志郎
(72)【発明者】
【氏名】北嶋 俊朗
(72)【発明者】
【氏名】疋田 武士
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 寿喜
【テーマコード(参考)】
3B096
【Fターム(参考)】
3B096AA01
3B096AB05
3B096AB08
3B096AD01
(57)【要約】
【課題】 長時間の使用であっても、ずれや圧迫によるダメージを緩和できるよう支持対象物の形状に合わせて支持面が変形し、それを容易に保持することができ、さらに外力を加えることで支持面の一部を変形することができるシートを提供する。
【解決手段】 クッションの上に複数の棒状セルを隣接して並べてセルの上面を支持面とし、棒状セル集合体の側面を水平方向から加圧する圧力を調節する加圧調節機構で支持面変形シートを構成する。支持面に支持対象物の一部を押し当てて、加圧調節することで、棒状セル同士の摩擦力で、支持対象物の形状に合わせて棒状セルが上下方向の任意の位置に移動し支持面の変形が保持される。変形した支持面の一部にさらに外力を加えると一部が変形する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の棒状セルが、左右及び前後方向に隣同士が接するように整列して配置されたセル集合部と、
前記セル集合部の一方の面に接して配置された弾力性のあるクッションを備え、
前記セル集合部の他方の面で構成された支持面の少なくとも一部に、支持対象物を押し当て、
前記支持面に加わる力と、前記クッションの弾力が釣り合う位置まで前記支持対象物と接した前記棒状セルが押し込まれ、前記支持面が変形することを特徴とする支持面変形シート。
【請求項2】
前記セル集合部に左右及び前後方向の少なくとも一方向から圧力を加えて、前記棒状セル同士の摩擦力により上下方向における任意の位置で、前記棒状セルの位置が保持されることで、前記変形した支持面の形状が保持されることを特徴とする請求項1に記載の支持面変形シート。
【請求項3】
前記圧力を調節する加圧調節機構を備えることを特徴とする請求項2に記載の支持面変形シート。
【請求項4】
前記加圧調節機構は、前記棒状セルのうち、前記セル集合部の外縁を構成する複数の棒状セルを貫通したワイヤーと、前記ワイヤーの張力を調節可能なワイヤー調節部を有し、
前記ワイヤー調節部で前記ワイヤーの張力を調節して前記圧力を調節することを特徴とする請求項3に記載の支持面変形シート。
【請求項5】
前記加圧調節機構は、前記棒状セルのうち前記セル集合部の外縁の一辺と略同一の長さで、前記一辺と対向して配置された加圧板と、前記加圧板の両端が取り付けられ、前記加圧板とともに前記セル集合部の外縁の全周を囲む外枠部と、前記加圧板を前記一辺に当接または離間する方向に進退動させることが可能な圧力調節レバーを有し、
前記圧力調節レバーで前記加圧板を進退動させ、前記加圧板で前記一辺を押圧する力を調節し、前記加圧板及び前記外枠部が前記セル集合部の外縁に付与する前記圧力を調節することを特徴とする請求項3に記載の支持面変形シート。
【請求項6】
前記変形した支持面を構成する前記棒状セルはさらに外力を加えることで、上下方向における位置が調節できることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、請求項4または請求項5に記載の支持面変形シート。
【請求項7】
前記支持面を構成する前記棒状セルの端部側が平坦な面、角部が面取りされた面、または曲面の少なくともいずれか一つであることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5または請求項6に記載の支持面変形シート。
【請求項8】
前記支持面を構成する前記棒状セルの端部側が硬質体、弾性体、または弾性体と硬質体と組み合わせて形成されたことを特徴とする、請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6または請求項7に記載の支持面変形シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車椅子、自動車、飛行機、船、電車等の乗物、若しくはオフィスや家庭、工場で支持対象物を支持する際に使用される支持面変形シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
支持対象物の形状の違いに合わせるようにシートの形状を調節する技術が各種提案されている。
特許文献1には、体圧分布に応じ、軟質弾性体の付与度や筒状セルの長さを変化させて、最適なクッション性を得るシート用クッション体が提案されている。
【0003】
また、特許文献1に記載の技術では、クッション体の内部に複数の筒状セルを有する繊維マットと、各筒状セル内に浸透するように繊維マットに付与して硬化させた軟質弾性体により構成されている。軟質弾性体の付与量を体圧分布に応じて変化させることでクッション性の変化範囲が広くなるよう提案されている。
【0004】
また、非特許文献1のプロテクターツールケースでは、収納物の形状に合わせてブロック状のウレタンを取り外して、収納物を保護するケースが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3819527号公報
【非特許文献1】モノタロウRED BOOK vol.16 2020秋 物流保管梱包用品テープ編 P344
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の技術は、体形や体格の違い、着座位置や姿勢の変化への調節には限界があり、支持が不十分になる課題があり、改善の余地があった。
【0007】
また、非特許文献1においては、収納物の形状や支持面が変わるたびにブロック状のウレタンを取り付けたり取り外したりする手間がかかり、ブロック状のウレタンのサイズが収納物の形状に合わず隙間が空いて支持が不十分になる課題があり、改善の余地があった。
【0008】
そのような課題があったことから、本発明は長時間の使用であっても、ずれや圧迫によるダメージを緩和できるよう支持対象物の形状に合わせて支持面が変形し、それを容易に保持することができ、さらに外力を加えることで支持面の一部を変形することができるシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の支持面変形シートは、複数個の棒状セルが、左右及び前後方向に隣同士が接するように整列して配置されたセル集合部と、前記セル集合部の一方の面に接して配置された弾力性のあるクッションを備え、前記セル集合部の他方の面で構成された支持面の少なくとも一部に、支持対象物を押し当て、前記支持面に加わる力と、前記クッションの弾力が釣り合う位置まで前記支持対象物と接した前記棒状セルが押し込まれ、前記支持面が変形することを特徴とする。
【0010】
本発明の支持面変形シートは、前記セル集合部に左右及び前後方向の少なくとも一方向から圧力を加えて、前記棒状セル同士の摩擦力により上下方向における任意の位置で、前記棒状セルの位置が保持されることで、前記変形した支持面の形状が保持されることを特徴とする。
【0011】
本発明の支持面変形シートは、前記圧力を調節する加圧調節機構を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明の支持面変形シートは、前記加圧調節機構が、前記棒状セルのうち、前記セル集合部の外縁を構成する複数の棒状セルを貫通したワイヤーと、前記ワイヤーの張力を調節可能なワイヤー調節部を有し、前記ワイヤー調節部で前記ワイヤーの張力を調節して前記圧力を調節することを特徴とする。
【0013】
本発明の支持面変形シートは、前記加圧調節機構が、前記棒状セルのうち前記セル集合部の外縁の一辺と略同一の長さで、前記一辺と対向して配置された加圧板と、前記加圧板の両端が取り付けられ、前記加圧板とともに前記セル集合部の外縁の全周を囲む外枠部と、前記加圧板を前記一辺に当接または離間する方向に進退動させることが可能な圧力調節レバーを有し、前記圧力調節レバーで前記加圧板を進退動させ、前記加圧板で前記一辺を押圧する力を調節し、前記加圧板及び前記外枠部が前記セル集合部の外縁に付与する前記圧力を調節することを特徴とする。
【0014】
本発明の支持面変形シートは、前記変形した支持面を構成する前記棒状セルにさらに外力を加えることで、上下方向における位置が調節できることを特徴とする。
【0015】
本発明の支持面変形シートは、前記支持面が、平坦な面、角部が面取りされた面、または曲面の少なくともいずれか一つであることを特徴とする。
【0016】
本発明の支持面変形シートは、前記支持面を構成する前記棒状セルの端部側が硬質体、弾性体、または弾性体と硬質体と組み合わせて形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
長時間の使用であっても、ずれや圧迫によるダメージを緩和できるよう支持対象物の形状に合わせて支持面が変形し、それを容易に保持することができ、さらに外力を加えることで支持面の一部を変形することができるシートを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係る支持面変形シートの実施例を示した図である
【
図3】支持面の一部に外力を加えた状態を示した図である
【
図4】支持面の一部に外力を加えた状態の過程を示した図である
【
図5】支持面変形シートの第一実施形態の平面図である
【
図6】第一実施形態の加圧調節機構の詳細構造を示す側面図である
【
図7】支持面の変形と一部に外力を加えた状態を示す側面図である
【
図8】支持面変形シートの第二実施形態の平面図である
【
図10】第二実施形態の支持面の変形状態を示す側面図である
【
図11】棒状セルの端部側の形状を示す側面図である
【
図12】棒状セルの端部側の状態を示す側面図である
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1ないし
図4は本発明に係る支持面変形シートの実施例を示す。
図1において支持面変形シートは、複数個の棒状セル1が、左右及び前後方向に隣同士が接するように整列して配置されたセル集合部2とセル集合部2の下面3に接して配置された弾力性のあるクッション5を備えている。
【0020】
図1においてセル集合部2の上面4で構成された支持面14の少なくとも一部に支持対象物18を押し当て、支持面14に加わる力と、クッション5の弾力が釣り合う位置まで支持対象物18と接した棒状セル1が押し込まれ、支持面14が変形する。
【0021】
図2において支持面の変形の過程を示した状態を示す。aは支持面が変形する前、bは支持対象物の形状に合わせて支持面が変形する途中、cは支持面が変形した後の状態を表している。
【0022】
図3においてセル集合部2に左右及び前後方向の少なくとも一方向から圧力を加えて、棒状セル1同士の摩擦力により上下方向における任意の位置で、棒状セル1の位置が保持されることで、変形した支持面14の形状が保持される。
【0023】
図3において変形した支持面14を構成する棒状セル1はさらに外力を加えることで、上下方向における位置が調節できる。
【0024】
図4において支持面の一部の棒状セルに外力を加えた状態の過程を示した状態を示す。aは棒状セルの位置を調節する前、bは棒状セルの位置を調節する途中、cは棒状セルの位置を調節した後の状態を示している。
【0025】
図5及び
図6は本発明の第一実施形態を示す。
図5においてセル集合部2に左右及び前後方向の少なくとも一方向から加える圧力を調節する加圧調節機構7を備えている。
【0026】
図5において加圧調節機構7は、棒状セル1のうち、セル集合部2の外縁を構成する複数の棒状セル1を貫通したワイヤー6と、ワイヤー6の張力を調節可能なワイヤー調節部8を有し、ワイヤー調節部8でワイヤー6の張力を調節してセル集合部2に加える圧力を調節することができる。
【0027】
図6において加圧調節機構7は、内側に支持板11を備えたワイヤー調節支持部10と、その支持板11の上面に接するように圧縮コイルバネ9を備え、その圧縮コイルバネ9の上面側に被さるようにワイヤー調節部8が組み合わされ、ワイヤー調節部8はワイヤー調節支持部10の内側で上下にスライドする。
【0028】
図6においてワイヤー6は、ワイヤー調節支持部10の側面に開けられた穴13から支持板11の中心部に開けられた穴12を通ってワイヤー調節部8に取り付けられている。
ワイヤー調節部8を上下にスライドすることで、ワイヤー6の張力を調節してセル集合部2の圧力を調節する。
【0029】
図7において支持面14の少なくとも一部に支持対象物18を押し当て、ワイヤー調節部8を押し込むとワイヤー6の張力が下がり、クッション2の弾力が釣り合う位置まで支持対象物18と接した棒状セル1が押し込まれ、支持面14が変形する。
【0030】
図7においてワイヤー調節部8を押し込む力を緩めると、ワイヤー6の張力が上がり、セル集合部2に圧力が加わり、棒状セル1同士の摩擦力により棒状セル1の位置が保持されることで、変形した支持面14の形状が保持される。
【0031】
図7において変形した支持面14を構成する棒状セル1にさらに外力を加えることで上下方向における位置が調節できる。
【0032】
図8及び
図9は本発明の第二実施形態を示す。
図8においてセル集合部2に左右及び前後方向の少なくとも一方向から加える圧力を調節する加圧調節機構7を備えている。
【0033】
図8において加圧調節機構7が、棒状セル1のうちセル集合部2の外縁の一辺と略同一の長さで、前記一辺と対向して配置された加圧板15と、加圧板15の両端が取り付けられ、加圧板15とともにセル集合部2の外縁の全周を囲む外枠部16と、加圧板15を一辺に後方向(当接)または前方向(離間)に進退動させることが可能な圧力調節レバー17を有し、圧力調節レバー17で加圧板15を進退動させ、加圧板15で一辺を押圧する力を調節し、加圧板15及び外枠部16がセル集合部2の外縁に付与する圧力を調節することができる。
【0034】
図9において複数個の棒状セル1が、左右及び前後方向に隣同士が接するように整列して配置されたセル集合部2とセル集合部2の下面3に接して配置された弾力性のあるクッション5を備えている。
【0035】
図10においてセル集合部2の上面4で構成された支持面14の少なくとも一部に支持対象物18を押し当て、支持面14に加わる力と、クッション5の弾力が釣り合う位置まで支持対象物18と接した棒状セル1が押し込まれ、支持面14が変形する。
【0036】
図10においてセル集合部2に左右及び前後方向の少なくとも一方向から圧力を加えて、棒状セル1同士の摩擦力により上下方向における任意の位置で、棒状セル1の位置が保持されることで、変形した支持面14の形状が保持される。
【0037】
図10において支持面14に支持対象物18の一部を押し当てた後に、加圧調節レバー17を引き上げることで加圧板15が前方に移動し、クッション5の弾力が釣り合う位置まで支持対象物と接した棒状セル1が押し込まれ、支持面14が変形する。
【0038】
図10において圧力調節レバー17を引き上げる力を緩めると、圧縮コイルバネ9が伸びる力で加圧板15が後方に移動し、セル集合部2の一辺に圧力がかかり支持面14の形状が保持される。
【0039】
図10において変形した支持面14を構成する棒状セル1にさらに外力を加えることで上下方向における位置が調節できる。
【0040】
図11において棒状セル1の端部側19が平坦な面(a)、角部が面取りされた面(b)、または曲面(c・d)の少なくともいずれか一つである。
【0041】
図12において棒状セル1の端部側19が硬質体、弾性体、または弾性体と硬質体と組み合わせて形成されている。
【符号の説明】
【0042】
1 棒状セル
2 セル集合部
3 セル集合部の下面
4 セル集合部の上面
5 クッション
6 ワイヤー
7 加圧調節機構
8 ワイヤー調節部
9 圧縮コイルバネ
10 ワイヤー調節支持部
11 圧縮コイルバネ支持板
12 支持板貫通穴
13 側面貫通穴
14 支持面
15 加圧板
16 外枠部
17 加圧調節レバー
18 支持対象物
19 端部側