IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 佐藤 孝二の特許一覧

特開2022-151464活性エネルギー線硬化性印刷インキ組成物及びそれを印刷してなる印刷物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151464
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化性印刷インキ組成物及びそれを印刷してなる印刷物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/101 20140101AFI20220929BHJP
【FI】
C09D11/101
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021082765
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】321000842
【氏名又は名称】佐藤 孝二
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 孝二
【テーマコード(参考)】
4J039
【Fターム(参考)】
4J039AB08
4J039AD21
4J039AE06
4J039BC07
4J039BC19
4J039BC20
4J039BE12
4J039BE27
4J039EA06
(57)【要約】
【課題】活性エネルギー硬化性印刷インキ組成物でもバルキー構造を持った重合ロジンを含むアルキッド樹脂を使用する事により印刷時の汚れ、水幅、汚れ回復、湿し水適性等、印刷効果を改善する活性エネルギー硬化性印刷インキ組成物を提供する。
【解決手段】本発明は(C0~C4アルキル)安息香酸、多価アルコール、重合ロジンを反応せしめて得られるアルキッド樹脂を重合禁止剤を添加しアクリルエステルモノマーを溶解させてなる活性エネルギー線硬化性インキ組成物又は印刷物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(C0~C4のアルキル)安息香酸、多価アルコール、重合ロジン及びまたはマレイン化(フマル化)ロジンを反応せしめて得られるアルキッド樹脂を重合禁止剤、アクリルエステルモノマーで溶解してなる活性エネルギー線硬化性インキ組成物。
【請求項2】
さらにロジン及び又は多塩基酸を含む請求項1記載の活性エネルギー線硬化性インキ組成物。
【請求項3】
さらにアルキッド樹脂を溶媒及び又は植物油又はその脂肪酸エステルで加熱溶解させ、さらに重合禁止剤、アクリルエステルモノマーで溶解してなる請求項1~2の活性エネルギー線硬化性インキ組成物。
【請求項4】
0.1~15重量%のラジカル重合性開始剤を含む請求項1~3いずれか記載の活性エネルギー線硬化性印刷インキ組成物。
【請求項5】
請求項1~4いずれか記載の活性エネルギー線硬化性インキ組成物を印刷硬化させ得られる印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紫外線、電子線の活性エネルギー線照射により硬化しうる印刷インキ組成物、それを印刷し硬化により得られる印刷物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から活性エネルギー線硬化性印刷インキにはDAP(ジアリルフタレート)樹脂が使用されて来た。従来紫外線、電子線の活性エネルギー硬化性印刷インキ組成物は近年印刷時の作業安定性が良くなって来たが、例えば紅インキなどにおいてロングランで印刷するとオフセット印刷において湿し水にわずかながら浮き汚れが発生し、版付けの水棒が赤みを帯びる水棒絡みを呈する。印刷時湿し水を多くした場合と少なくした場合の水幅が狭い。つまり湿し水の水幅のコントロールがし難く又湿し水を絶って印刷物を汚した後正常状態に水ダイヤルを戻した後の汚れ枚数が多く、汚れ回復スピードが遅かった。同様に湿し水の水幅のコントロールがし難かった。
【0003】
しかし油性紅インキは上記浮き汚れ、水棒絡み等が起こり難い。つまり浮き汚れがほとんどなく、水棒絡みも少ない、水幅も広く、汚れ回復枚数も速い。つまり湿し水のコントロールが容易であった。油性インキはロジン変性フェノール樹脂が使用されている。ロジン変性フェノール樹脂は非特許技術文献に記載されているように顔料分散性、構造粘弾性が良く、天然のロジン樹脂使用等、このような理由で油性インキには長年ロジン変性フェノール樹脂が使用されて来た。そしてこのロジン変性フェノール樹脂が顔料分散性、粘弾性、湿し水適性等下記の優位点から使用されて来た。
【化学物質】
【0004】
ロジン変性フェノール樹脂
【0005】
DAP樹脂
【0006】
重合ロジン
【0007】
マレイン化ロジン
【0008】
本発明者はロジン変性フェノール樹脂は上記化学物質のように多核環のバルキー構造を持っている。したがってこのバルキー構造が粘弾性に優位に働くと考え、樹脂探索の結果上記多核環構造のバルキー構造を持っている重合ロジン、マレイン化(フマル化)ロジンを見い出し検討を重ねた。
【先行技術文献】
【非特許技術文献1】
【0009】
【非特許技術文献1】
J.Jpn.Soc.Colour Mater.(色材)色材協会誌Q&A項目別インデックス 3.樹脂 Q5&A5 http://www.shikizai.org/shikizai_qa/03.htm
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は紫外線、電子線の活性エネルギー線照射により硬化しうる印刷インキ組成物、印刷物に関するものである。
【0011】
このロジン変性フェノール樹脂は非特許技術文献に示されているように良好な顔料分散性、構造粘弾性を持っている為使用されていると記載されている。これはDAP樹脂と比較しロジン変性フェノール樹脂のバルキ―構造に着目し、バルキー構造を持っている重合ロジン、マレイン化(フマル化)ロジンを見出し、これらを反応系に使用するアルキッド樹脂に着目した。
【課題を解決する為の手段】
【0012】
すなわち本発明は(C0~C4のアルキル)安息香酸、多価アルコール、重合ロジン及びまたはマレイン化(フマル化)ロジンを反応せしめて得られるアルキッド樹脂を重合禁止剤、アクリルエステルモノマーで溶解してなる活性エネルギー線硬化性インキ組成物に関するものである。
【0013】
さらにロジン及び又は多塩基酸を含む上記記載の活性エネルギー線硬化性インキ組成物に関するものである。
【0014】
さらにアルキッド樹脂を溶媒及び又は植物油又はその脂肪酸エステルで加熱溶解させ、さらに重合禁止剤、アクリルエステルモノマーで溶解してなる上記記載の活性エネルギー線硬化性インキ組成物に関するものである。
【0015】
さらに0.1~15重量%のラジカル重合性開始剤を含む上記記載の活性エネルギー線硬化性印刷インキ組成物に関するものである。
【0016】
さらに上記記載の活性エネルギー線硬化性インキ組成物を印刷硬化させ得られる印刷物に関するものである。
【発明の効果】
【0017】
すなわち本発明は、非特許技術文献に記載されているロジン変性フェノール樹脂のようにバルキー構造を持ち顔料分散性、粘弾性、湿し水適性の良い重合ロジン又はマレイン化ロジン樹脂を使用したアルキッド樹脂に重合禁止剤を添加後アクリルエステルモノマーで溶解してなる活性エネルギー線硬化性インキ組成物に関するものである。実施例のリスロン印刷機でも水幅、汚れ回復、湿し水適性等印刷効果はDAP樹脂使用の比較例インキに比し優位になっており、硬化性も本機スピードに十分使用できるものである。
【発明を実施するための形態】
以下詳細に本発明について説明する。
【0018】
(C0~C4のアルキル)安息香酸、多価アルコール、重合ロジン及びまたはマレイン化(フマル化)ロジンを反応せしめて得られるアルキッド樹脂について説明する。
(C0~C4のアルキル)安息香酸、多価アルコール、キシレンを攪拌機、還流冷却器付きフラスコに仕込み、窒素ガスを吹き込みながら加熱攪拌しその後200℃~250℃で酸価が5以下になるまで反応させ180℃で重合ロジン及びまたはマレイン化(フマル化)ロジンを仕込み昇温250℃で反応させ酸価25以下望ましくは10以下に反応させ、減圧脱キシレンをしながら180℃で脱キシレンをし、くみ出す。もしくは120℃~80℃に冷却し望ましくは110℃で重合禁止剤を添加溶解後アクリルエステルモノマーで溶解させくみ出す。
【0019】
さらにアルキッド樹脂中にロジン、(無水)フタル酸、(無水)マレイン酸等の多塩基酸を含ませ反応させる事もできる。
【0020】
さらに本発明のアルキッド樹脂とロジン変性フェノール樹脂の併用による硬化ワニス、硬化性印刷インキ組成物の併用でもよい。
【0021】
本発明の(C0~C4のアルキル)安息香酸とは安息香酸、メチル安息香酸、エチル安息香酸、n、t-ブチル安息香酸が例示される。多くの場合安息香酸が例示される。又C1~C9の脂肪酸を併用してもよい。
【0022】
多価アルコールとして2価~6価のアルコール、エチレングルコール、プロピレングルコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールが例示される。多くの場合、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが望ましい。
【0023】
重合ロジン及びまたはマレイン化(フマル化)ロジンとしてロジンダイマーが50%以上を含む重合ロジンが望ましい。マレイン化、フマル化ロジンはロジンとマレイン酸のディールスアルダー反応で常法による得られえる。
【0024】
上記アルキッド樹脂が硬く軟化点が110℃以上の場合は溶媒をC1~C12のアルキルベンゼン、ナフテン系溶媒、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、亜麻仁油、大豆油又はその脂肪酸エステル大豆油脂肪酸(メチル、エチル)ブチルエステルで110℃まで軟化させ、重合禁止剤添加後アクリルエステルモノマーで溶解させるのが望ましい。
【0025】
重合禁止剤としては、(アルキル)フェノール、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、P-メトキシフェノール、t-ブチルカテコール、t-ブチルハイドロキノン、2,5-ジ-tert-ブチル-p-ベンゾキノン、ジチオベンゾイルジスルフィド、ピクリン酸、クペロン、アルミニウムN-ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、トリ-p-ニトロフェニルメチル、N-(3-オキシアニリノ-1,3-ジメチルブチリデン)アニリンオキシド、o-イソプロピルフェノール、等が使用される。
【0026】
硬化性アクリルエステルモノマーとしてエチレン性不飽和二重結合を持つ(メタ)アクリルエステルとしては、ビスフェノールAテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、水添加ビスフェノールAテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、水添加ビスフェノールFテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、3官能モノマーとしてグリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等が例示される。4官能以上のモノマーとしてペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラカプロラクトネートテトラ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、等が例示される。
【0027】
次に、ラジカル重合開始剤としては、光開裂型と水素引き抜き型に大別して例示することができる。前者の例として、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパンー1-オン(イルガキュア907:チバスペシャルティケミカルズ社製)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン、(イルガキュア369:チバスペシャルティケミカルズ社製)、ベンジルメチルケタール(イルガキュア651:チバスペシャルティケミカルズ社製)、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(イルガキュア184:チバスペシャルティケミカルズ社製)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(ダロキュア1173:メルク社製)、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン(ダロキュア1116:メルク社製)、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、4-(2-アクリロイル-オキシエトキシ)フェニル-2-ヒドロキシ-2-プロピルケトン、ジエトキシアセトフェノン(ZLI3331:チバスペシャルティケミカルズ社製)、エサキュアーKIP100(ラムベルティ社製)、ルシリンTPO(BASF社製)、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド(BAPO1:チバスペシャルティケミカルズ社製)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(BAPO2:チバスペシャルティケミカルズ社製)、BTTB(日本油脂(株)製)、CGI1700(チバスペシャルティケミカルズ社製等が例示される。
【0028】
-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4ジエチルチオキサントン、2,4ジ
-ジメチルアミノアセトフェノン等のジアルキルアミノアリールケトン系開始剤、チオキサントン、キサントン系開始剤等が例示される。これらの単独または適宣組み合わせにより用いる事も出来る。これらの開始剤は組成物中に0.1~30重量%の範囲で用いる事が出来るが、好ましくは1~15重量%の範囲で用いる事が出来る。
【0029】
次に着色剤としては、無機顔料および有機顔料を示すことができる。有機顔料としては、β-ナフトール系、β-オキシナフトエ酸系、β-オキシナフトエ酸系アニリド系、アセト酢酸アニリド系、ピラゾロン系などの溶性アゾ顔料、β-ナフトール系、β-オキシナフトエ酸系アニリド系、アセト酢酸アニリド系モノアゾ、アセト酢酸アニリド系ジスアゾ、ピラゾロン系などの不溶性アゾ顔料、銅フタロシアニンブルー、ハロゲン化(塩素または臭素化)銅フタロシアニンブルー、スルホン化銅フタロシアニンブルー、金属フリーフタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、キナクリドン系、ジオキサジン系、スレン系(ピラントロン、アントアントロン、インダントロン、アントラピリミジン、フラバントロン、チオインジゴ系、アントラキノン系、ペリノン系、ペリレン系など)、イソインドリノン系、金属錯体系、キノフタロン系などの多環式顔料および複素環式顔料などの公知公用の各種顔料が使用される。無機顔料としては酸化チタンが挙げられる。
【0030】
本発明の硬化性印刷インキ組成物の処方概要は
*着色剤 10~25重量
*硬化性ワニス 20~60重量%
*ラジカル重合禁止剤 0.01~1重量%
*ラジカル重合性開始剤 0~ 15重量%
*その他添加剤 0~10重量%
* アクリルエステルモノマー 10~40重量%
【0031】
さらに、本発明の硬化性印刷インキ組成物を印刷インキ用として使用する場合は、該組成物を印刷インキに供し易い粘度(100~300Pa・s/25℃)を持った硬化性ワニスにすることが望ましい。
【0032】
硬化性ワニスは通常これらのくみ出したアルキッド樹脂又はそのままアルキッド樹脂を110℃で重合禁止剤、アクリルエステルモノマーに溶解させ上記粘度調整後くみ出す。
【0033】
本発明の硬化性ワニス組成物を製造するにあたって、50~220℃、通常120℃~200℃の軟化点を持つ重合ロジン及びまたはマレイン化ロジンを含むアルキッド樹脂の場合は溶媒又は植物油またはその脂肪酸エステルで180~200℃の温度範囲で0.5~3時間、溶解後120℃~110℃に冷却30分後さらに重合禁止剤、エチレン性不飽和二重結合を持つ(メタ)アクリルエステルモノマーを80~110℃で溶解させ粘度50~300Pa・S/秒ワニスの形で使用する。樹脂の軟化点は110℃付近が好ましい。本発明における硬化性ワニス組成物を製造するに当たってはその場合、必要に応じて空気と窒素1対1で吹き込み、重合禁止剤の添加を行う。
【0034】
添加剤としては、例えば、耐摩擦剤、ブロッキング防止剤、スベリ剤、スリキズ防止剤としては、カルナバワックス、ラノリン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの天然ワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス、およびシリコーン化合物などの合成ワックスを使用することができる。
【0035】
印刷インキ組成物は、常温から100℃の間で、着色剤、ワニスおよび/またはそのゲルワニス、本発明エチレン性不飽和二重結合を持つ(メタ)アクリルモノマー、ラジカル重合禁止剤、ラジカル重合性開始剤および/または増感剤、金属ドライヤー、その他添加剤などの印刷インキ用成分を、ニーダー、三本ロール、アトライター、サンドミル、ゲートミキサーなどの練肉、混合、調整機を用いて製造される。
【0036】
本発明の硬化性組成物からなる硬化性印刷インキは、通常湿し水を使用するオフセット印刷に適用されるが、湿し水を使用しない水無し印刷にも好適に用いられる。また、本発明の硬化性インキは、オーバープリントニス(通称OPニス)にも適用される。本発明の硬化性組成物、硬化性インキは、フォーム用印刷物、各種書籍用印刷物、カルトン紙等の各種包装用印刷物、各種プラスチック印刷物、シール/ラベル用印刷物、美術印刷物、金属印刷物(美術印刷物、飲料缶印刷物、缶詰等の食品印刷物)などの印刷物に適用される。硬化性インキについては、紫外線硬化性インキ、電子線硬化性インキとして、オーバーコートワニスについては、紫外線硬化性オーバーコートワニス、電子線オーバーコートワニスとして使用される。
【0037】
尚、基材としては北越製紙(株)製マリコート、ポリエチコート紙、アルミコート紙等のコートボール紙、三菱製紙(株)製特菱アート紙、上質紙等の薄紙コート紙、合成紙、プラスチックフィルム、金属板等が使用される。
【実施例0038】
次に具体例により本発明を説明する。例中「部」とは重量部を示す。以下具体例により示す。
(樹脂実施例R1)
重合ロジン、マレイン化ロジン変性樹脂の合成例とワニス化
安息香酸35.2部、TMP(トリメチローリプロン)21.2部、キシレンを攪拌機、水分離器付き還流冷却器温度計付4つ口フラスコに仕込み、窒素ガスを吹き込みながら加熱攪拌しその後200℃~250℃で酸価値が10以下になるまで反応させ次に180℃で重合ロジン43.6部を仕込み昇温250℃で反応させ酸価9.5で減圧脱キシレンをしながら180℃で脱キシレンをし、樹脂R1としてくみ出す。もしくは冷却し110℃でt-BHQ0.3部、Q1301を0.3部、DPHA214部を仕込み溶解後溶解させくみ150~200Pa・s/25℃に調製し、汲み出した(実施例ワニスV1)。出す。
【0039】
以下、同様に表1実施例樹脂R2~R6、ワニスV2~V6を作製した。
【表1】
【0040】
比較例ワニス(CV1)の製造例(活性エネルギー線硬化型ワニス)
攪拌機付き、水分離冷却管付き、温度計付き四つ口フラスコに、ダップトートDT170(東都化成(株)製ジアルルフタレート樹脂)30部、t-BHQ0.1部、Q1301、0.1部、DTMPTA(ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート)69.8部、を仕込み、空気気流下で100℃で30分~1時間で溶解した。コーンプレート型粘度計で粘度測定したところ、152Pa・s/25℃であった。 以下同様に、表1に示した処方で、比較例ワニスCV2を作成した。
【0041】
実施例硬化性インキ(Ink1)の製造例
紅顔料としてカーミン6B(東洋インキ製造(株)製紅顔料)18部、ワニスV1を49部、t-BHQ(ターシャリブチルハイドロキノン)0.1部、Q1301を0.1部、DTMPTAを13.9部、DPHAを13.9部4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(EAB)を2.5部、イルガキュア907を2.5部、を仕込み、三本ロ-ルミルで常法により製造した。インキはタック値7~8/25℃に調製した。(実施例Ink1)以下表2、に示した処方でInk2~5、InkE6を製造した。表2に記載する。尚、InkE6は電子線硬化性インキの例である。
【0042】
【表2】
【0043】
比較例紫外線硬化性インキ(インキC1)
カーミン6Bを18部、ワニスCV1を49部、t-BHQ0.1部、Q1301を0.1部、DTMPTAを27.8部、EABを2.5部、I907を2.5部仕込み、三本ロ-ルミルで常法により作成した。尚、インキはタック値7~8/25℃に調製した。
【0044】
以下同様に、表2に示した処方で、比較例紫外線硬化性インキを製造した。
【0045】
比較例電子線硬化性インキ(CE3)カーミン6Bを18部、ワニスVCV1を54部、t―BHQ0.1部、Q1301を0.1部、DTMPTA27.8重量部を仕込み、三本ロ-ルミルで常法により作成した。尚、インキはタック値7~8/25℃に調製した。
【0046】
硬化性インキの性状評価
*水幅:リスロン226(コモリコーポレーション(株)製オフセット印刷機)を用いて三菱製紙(株)製三菱特両アート紙(斤量90Kg/連)に毎時10000枚の印刷速度で印刷を行い、水元ローラーを調整する水ダイヤルを可変する事により、地汚れが発生する水幅下限値、インキが過剰乳化する事により生じるウオーターマーク発生点を水幅上限値とし、幅が広いのを良好とする。水元ローラーの水ダイヤルは0~10まであり、0は水を全く出さないダイヤル、10は過剰に出したダイヤルで、通常は4をノーマルダイヤルとする。最初にノーマルダイヤルの4で印刷し、印刷濃度安定後、徐々に水ダイヤルを下げ地汚れダイヤルを確認後、直ちにノーマルダイヤル4に戻ししその後徐々に水ダイヤルを上げていく。
【0047】
*汚れ回復:上記、水幅試験で地汚れ発生から直ちに水ダイヤルを4にし、地汚れが消えた枚数で少ない枚数を良好とする。
【0048】
*硬化性試験:上記リスロン226で印刷後、紫外線照射については、USHIO(株)製照射装置UVC-2535(120W/cm超高圧メタハラランプ3灯、コンベヤースピード100m/min)を使用し、表3のインキ組成物の上記印刷物を硬化させたところ実施例、比較例のインキ組成物の印刷物は同様に硬化していた。また電子線照射については、表の比較例CE3、実施例Ink6のインキ組成物の上記印刷物を印刷後取り出し、米国ESI(株)製低エネルギー電子線照射装置(加圧電圧175KV、酸素濃度500ppmの窒素置換した雰囲気)を用い3Mradで照射したところ、比較例、実施例のインキ組成物の印刷物は同様に硬化していた。
【0049】
以上の結果を表3にまとめて示した。
【表3】
【0050】
尚、本発明の硬化性インキ組成物は高級印刷物を得る為、硬化性オーバープリントニス(OPニス)をプリントし使用することもできる。
【0051】
さらに本発明の硬化性インキ組成物は脱墨性も良好で再生紙等用にも使用される。
【手続補正書】
【提出日】2021-05-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(C0~C4のアルキル)安息香酸、多価アルコール、重合ロジンを反応せしめて得られるアルキッド樹脂を重合禁止剤、アクリルエステルモノマーで溶解してなる活性エネルギー線硬化性インキ組成物。
【請求項2】
さらにロジン及び又は多塩基酸を含む請求項1記載の活性エネルギー線硬化性インキ組成物。
【請求項3】
さらにアルキッド樹脂を溶媒及び又は植物油又はその脂肪酸エステルで加熱溶解させ、さらに重合禁止剤、アクリルエステルモノマーで溶解してなる請求項1~2の活性エネルギー線硬化性インキ組成物。
【請求項4】
0.1~15重量%のラジカル重合性開始剤を含む請求項1~3いずれか記載の活性エネルギー線硬化性印刷インキ組成物。
【請求項5】
請求項1~4いずれか記載の活性エネルギー線硬化性インキ組成物を印刷硬化させ得られる印刷物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紫外線、電子線の活性エネルギー線照射により硬化しうる印刷インキ組成物、それを印刷し硬化により得られる印刷物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から活性エネルギー線硬化性印刷インキにはDAP(ジアリルフタレート)樹脂が使用されて来た。従来紫外線、電子線の活性エネルギー硬化性印刷インキ組成物は近年印刷時の作業安定性が良くなって来たが、例えば紅インキなどにおいてロングランで印刷するとオフセット印刷において湿し水にわずかながら浮き汚れが発生し、版付けの水棒が赤みを帯びる水棒絡みを呈する。印刷時湿し水を多くした場合と少なくした場合の水幅が狭い。つまり湿し水の水幅のコントロールがし難く又湿し水を絶って印刷物を汚した後正常状態に水ダイヤルを戻した後の汚れ枚数が多く、汚れ回復スピードが遅かった。同様に湿し水の水幅のコントロールがし難かった。
【0003】
しかし油性紅インキは上記浮き汚れ、水棒絡み等が起こり難い。つまり浮き汚れがほとんどなく、水棒絡みも少ない、水幅も広く、汚れ回復枚数も速い。つまり湿し水のコントロールが容易であった。油性インキはロジン変性フェノール樹脂が使用されている。ロジン変性フェノール樹脂は非特許技術文献に記載されているように顔料分散性、構造粘弾性が良く、天然のロジン樹脂使用等、このような理由で油性インキには長年ロジン変性フェノール樹脂が使用されて来た。そしてこのロジン変性フェノール樹脂が顔料分散性、粘弾性、湿し水適性等下記の優位点から使用されて来た。
【化学物質】
【0004】
ロジン変性フェノール樹脂
【0005】
DAP樹脂
【0006】
重合ロジン
【0007】
本発明者はロジン変性フェノール樹脂は上記化学物質のように多核環のバルキー構造を持っている。したがってこのバルキー構造が粘弾性に優位に働くと考え、樹脂探索の結果上記多核環構造のバルキー構造を持っている重合ロジンを見い出し検討を重ねた。
【先行技術文献】
【非特許技術文献1】
【0008】
【非特許技術文献1】
J.Jpn.Soc.Colour Mater.(色材)色材協会誌 Q&A項目別インデックス 3.樹脂 Q5&A5 http://www.shikizai.org/shikizai_qa/03.htm
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【009】
本発明は紫外線、電子線の活性エネルギー線照射により硬化しうる印刷インキ組成物、印刷物に関するものである。
【0010】
このロジン変性フェノール樹脂は非特許技術文献に示されているように良好な顔料分散性、構造粘弾性を持っている為使用されていると記載されている。これはDAP樹脂と比較しロジン変性フェノール樹脂のバルキ―構造に着目し、バルキー構造を持っている重合ロジンを見出し、これらを反応系に使用するアルキッド樹脂に着目した。
【課題を解決する為の手段】
【0011】
すなわち本発明は(C0~C4のアルキル)安息香酸、多価アルコール、重合ロジンを反応せしめて得られるアルキッド樹脂を重合禁止剤、アクリルエステルモノマーで溶解してなる活性エネルギー線硬化性インキ組成物に関するものである。
【0012】
さらにロジン及び又は多塩基酸を含む上記記載の活性エネルギー線硬化性インキ組成物に関するものである。
【0013】
さらにアルキッド樹脂を溶媒及び又は植物油又はその脂肪酸エステルで加熱溶解させ、さらに重合禁止剤、アクリルエステルモノマーで溶解してなる上記記載の活性エネルギー線硬化性インキ組成物に関するものである。
【0014】
さらに0.1~15重量%のラジカル重合性開始剤を含む上記記載の活性エネルギー線硬化性印刷インキ組成物に関するものである。
【0015】
さらに上記記載の活性エネルギー線硬化性インキ組成物を印刷硬化させ得られる印刷物に関するものである。
【発明の効果】
【0016】
すなわち本発明は、非特許技術文献に記載されているロジン変性フェノール樹脂のようにバルキー構造を持ち顔料分散性、粘弾性、湿し水適性の良い重合ロジンを使用したアルキッド樹脂に重合禁止剤を添加後アクリルエステルモノマーで溶解してなる活性エネルギー線硬化性インキ組成物に関するものである。実施例のリスロン印刷機でも水幅、汚れ回復、湿し水適性等印刷効果はDAP樹脂使用の比較例インキに比し優位になっており、硬化性も本機スピードに十分使用できるものである。
【発明を実施するための形態】
以下詳細に本発明について説明する。
【0017】
(C0~C4のアルキル)安息香酸、多価アルコール、重合ロジンを反応せしめて得られるアルキッド樹脂について説明する。(C0~C4のアルキル)安息香酸、多価アルコール、キシレンを攪拌機、還流冷却器付きフラスコに仕込み、窒素ガスを吹き込みながら加熱攪拌しその後200℃~250℃で酸価が5以下になるまで反応させ180℃で重合ロジンを仕込み昇温250℃で反応させ酸価25以下望ましくは10以下に反応させ、減圧脱キシレンをしながら180℃で脱キシレンをし、くみ出す。もしくは120℃~80℃に冷却し望ましくは110℃で重合禁止剤を添加溶解後アクリルエステルモノマーで溶解させくみ出す。
【0018】
さらにアルキッド樹脂中にロジン、(無水)フタル酸、(無水)等の多塩基酸を含ませ反応させる事もできる。
【0019】
さらに本発明のアルキッド樹脂とロジン変性フェノール樹脂の併用による硬化ワニス、硬化性印刷インキ組成物の併用でもよい。
【0020】
本発明の(C0~C4のアルキル)安息香酸とは安息香酸、メチル安息香酸、エチル安息香酸、n、t-ブチル安息香酸が例示される。多くの場合安息香酸が例示される。又C1~C9の脂肪酸を併用してもよい。
【0021】
多価アルコールとして2価~6価のアルコール、エチレングルコール、プロピレングルコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールが例示される。多くの場合、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが望ましい。
【0022】
重合ロジンとしてロジンダイマーが50%以上を含む重合ロジンが望ましい。
【0023】
上記アルキッド樹脂が硬く軟化点が110℃以上の場合は溶媒をC1~C12のアルキルベンゼン、ナフテン系溶媒、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、亜麻仁油、大豆油又はその脂肪酸エステル大豆油脂肪酸(メチル、エチル)ブチルエステルで110℃まで軟化させ、重合禁止剤添加後アクリルエステルモノマーで溶解させるのが望ましい。
【0024】
重合禁止剤としては、(アルキル)フェノール、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、P-メトキシフェノール、t-ブチルカテコール、t-ブチルハイドロキノン、2,5-ジ-tert-ブチル-p-ベンゾキノン、ジチオベンゾイルジスルフィド、ピクリン酸、クペロン、アルミニウムN-ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、トリ-p-ニトロフェニルメチル、N-(3-オキシアニリノ-1,3-ジメチルブチリデン)アニリンオキシド、o-イソプロピルフェノール、等が使用される。
【0025】
硬化性アクリルエステルモノマーとしてエチレン性不飽和二重結合を持つ(メタ)アクリルエステルとしては、ビスフェノールAテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、水添加ビスフェノールAテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、水添加ビスフェノールFテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、3官能モノマーとしてグリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等が例示される。4官能以上のモノマーとしてペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラカプロラクトネートテトラ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、等が例示される。
【0026】
次に、ラジカル重合開始剤としては、光開裂型と水素引き抜き型に大別して例示することができる。前者の例として、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパンー1-オン(イルガキュア907:チバスペシャルティケミカルズ社製)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン、(イルガキュア369:チバスペシャルティケミカルズ社製)、ベンジルメチルケタール(イルガキュア651:チバスペシャルティケミカルズ社製)、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(イルガキュア184:チバスペシャルティケミカルズ社製)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(ダロキュア1173:メルク社製)、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン(ダロキュア1116:メルク社製)、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、4-(2-アクリロイル-オキシエトキシ)フェニル-2-ヒドロキシ-2-プロピルケトン、ジエトキシアセトフェノン(ZLI3331:チバスペシャルティケミカルズ社製)、エサキュアーKIP100(ラムベルティ社製)、ルシリンTPO(BASF社製)、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド(BAPO1:チバスペシャルティケミカルズ社製)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(BAPO2:チバスペシャルティケミカルズ社製)、BTTB(日本油脂(株)製)、CGI1700(チバスペシャルティケミカルズ社製等が例示される。
【0027】
後者の例として、ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルサルファイド、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4ジエチルチオキサントン、2,4ジクロロチオキサントン、アセトフェノン等のアリールケトン系開始剤、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、p-ジメチルアミノアセトフェノン等のジアルキルアミノアリールケトン系開始剤、チオキサントン、キサントン系開始剤等が例示される。これらの単独または適宣組み合わせにより用いる事も出来る。これらの開始剤は組成物中に0.1~30重量%の範囲で用いる事が出来るが、好ましくは1~15重量%の範囲で用いる事が出来る。
【0028】
次に着色剤としては、無機顔料および有機顔料を示すことができる。有機顔料としては、β-ナフトール系、β-オキシナフトエ酸系、β-オキシナフトエ酸系アニリド系、アセト酢酸アニリド系、ピラゾロン系などの溶性アゾ顔料、β-ナフトール系、β-オキシナフトエ酸系アニリド系、アセト酢酸アニリド系モノアゾ、アセト酢酸アニリド系ジスアゾ、ピラゾロン系などの不溶性アゾ顔料、銅フタロシアニンブルー、ハロゲン化(塩素または臭素化)銅フタロシアニンブルー、スルホン化銅フタロシアニンブルー、金属フリーフタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、キナクリドン系、ジオキサジン系、スレン系(ピラントロン、アントアントロン、インダントロン、アントラピリミジン、フラバントロン、チオインジゴ系、アントラキノン系、ペリノン系、ペリレン系など)、イソインドリノン系、金属錯体系、キノフタロン系などの多環式顔料および複素環式顔料などの公知公用の各種顔料が使用される。無機顔料としては酸化チタンが挙げられる。
【0029】
本発明の硬化性印刷インキ組成物の処方概要は
*着色剤 10~25重量
*硬化性ワニス 20~60重量%
*ラジカル重合禁止剤 0.01~1重量%
*ラジカル重合性開始剤 0~ 15重量%
*その他添加剤 0~10重量%
*アクリルエステルモノマー 10~40重量%
【0030】
さらに、本発明の硬化性印刷インキ組成物を印刷インキ用として使用する場合は、該組成物を印刷インキに供し易い粘度(100~300Pa・s/25℃)を持った硬化性ワニスにすることが望ましい。
【0031】
硬化性ワニスは通常これらのくみ出したアルキッド樹脂又はそのままアルキッド樹脂を110℃で重合禁止剤、アクリルエステルモノマーに溶解させ上記粘度調整後くみ出す。
【0032】
本発明の硬化性ワニス組成物を製造するにあたって、50~220℃、通常120℃~200℃の軟化点を持つ重合ロジン含むアルキッド樹脂の場合は溶媒又は植物油またはその脂肪酸エステルで180~200℃の温度範囲で0.5~3時間、溶解後120℃~110℃に冷却30分後さらに重合禁止剤、エチレン性不飽和二重結合を持つ(メタ)アクリルエステルモノマーを80~110℃で溶解させ粘度50~300Pa・S/秒ワニスの形で使用する。樹脂の軟化点は110℃付近が好ましい。本発明における硬化性ワニス組成物を製造するに当たってはその場合、必要に応じて空気と窒素1対1で吹き込み、重合禁止剤の添加を行う。
【0033】
添加剤としては、例えば、耐摩擦剤、ブロッキング防止剤、スベリ剤、スリキズ防止剤としては、カルナバワックス、ラノリン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの天然ワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス、およびシリコーン化合物などの合成ワックスを使用することができる。
【0034】
印刷インキ組成物は、常温から100℃の間で、着色剤、ワニスおよび/またはそのゲルワニス、本発明エチレン性不飽和二重結合を持つ(メタ)アクリルモノマー、ラジカル重合禁止剤、ラジカル重合性開始剤および/または増感剤、金属ドライヤー、その他添加剤などの印刷インキ用成分を、ニーダー、三本ロール、アトライター、サンドミル、ゲートミキサーなどの練肉、混合、調整機を用いて製造される。
【0035】
本発明の硬化性組成物からなる硬化性印刷インキは、通常湿し水を使用するオフセット印刷に適用されるが、湿し水を使用しない水無し印刷にも好適に用いられる。また、本発明の硬化性インキは、オーバープリントニス(通称OPニス)にも適用される。本発明の硬化性組成物、硬化性インキは、フォーム用印刷物、各種書籍用印刷物、カルトン紙等の各種包装用印刷物、各種プラスチック印刷物、シール/ラベル用印刷物、美術印刷物、金属印刷物(美術印刷物、飲料缶印刷物、缶詰等の食品印刷物)などの印刷物に適用される。硬化性インキについては、紫外線硬化性インキ、電子線硬化性インキとして、オーバーコートワニスについては、紫外線硬化性オーバーコートワニス、電子線オーバーコートワニスとして使用される。
【0036】
尚、基材としては北越製紙(株)製マリコート、ポリエチコート紙、アルミコート紙等のコートボール紙、三菱製紙(株)製特菱アート紙、上質紙等の薄紙コート紙、合成紙、プラスチックフィルム、金属板等が使用される。
【実施例0037】
次に具体例により本発明を説明する。例中「部」とは重量部を示す。以下具体例により示す。
(樹脂実施例R1)
重合ロジン変性アルキッド樹脂の合成例とワニス化
安息香酸35.2部、TMP(トリメチローリプロン)21.2部、キシレンを攪拌機、水分離器付き還流冷却器温度計付4つ口フラスコに仕込み、窒素ガスを吹き込みながら加熱攪拌しその後200℃~250℃で酸価値が10以下になるまで反応させ次に180℃で重合ロジン43.6部を仕込み昇温250℃で反応させ酸価9.5で減圧脱キシレンをしながら180℃で脱キシレンをし、樹脂R1としてくみ出す。もしくは冷却し110℃でt-BHQ0.3部、Q1301を0.3部、DPHA214部を仕込み溶解後溶解させくみ150~200Pa・s/25℃に調製し、汲み出した(実施例ワニスV1)。出す。
【0038】
以下、同様に表1実施例樹脂R2~R5、ワニスV2~V5を作製した。
【表1】
【0039】
比較例ワニス(CV1)の製造例(活性エネルギー線硬化型ワニス)
攪拌機付き、水分離冷却管付き、温度計付き四つ口フラスコに、ダップトートDT170(東都化成(株)製ジアルルフタレート樹脂)30部、t-BHQ0.1部、Q1301、0.1部、DTMPTA(ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート)69.8部、を仕込み、空気気流下で100℃で30分~1時間で溶解した。コーンプレート型粘度計で粘度測定したところ、152Pa・s/25℃であった。 以下同様に、表1に示した処方で、比較例ワニスCV2を作成した。
【0040】
実施例硬化性インキ(Ink1)の製造例
紅顔料としてカーミン6B(東洋インキ製造(株)製紅顔料)18部、ワニスV1を49部、t-BHQ(ターシャリブチルハイドロキノン)0.1部、Q1301を0.1部、DTMPTAを13.9部、DPHAを13.9部4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(EAB)を2.5部、イルガキュア907を2.5部、を仕込み、三本ロ-ルミルで常法により製造した。インキはタック値7~8/25℃に調製した。(実施例Ink1)以下表2、に示した処方でInk2~5、InkE6を製造した。表2に記載する。尚、InkE6は電子線硬化性インキの例である。
【0041】
【表2】
【0042】
比較例紫外線硬化性インキ(インキC1)
カーミン6Bを18部、ワニスCV1を49部、t-BHQ0.1部、Q1301を0.1部、DTMPTAを27.8部、EABを2.5部、I907を2.5部仕込み、三本ロ-ルミルで常法により作成した。尚、インキはタック値7~8/25℃に調製した。
【0043】
以下同様に、表2に示した処方で、比較例紫外線硬化性インキを製造した。
【0044】
比較例電子線硬化性インキ(CE3)カーミン6Bを18部、ワニスVCV1を54部、t―BHQ0.1部、Q1301を0.1部、DTMPTA27.8重量部を仕込み、三本ロ-ルミルで常法により作成した。尚、インキはタック値7~8/25℃に調製した。
【0045】
硬化性インキの性状評価
*水幅:リスロン226(コモリコーポレーション(株)製オフセット印刷機)を用いて三菱製紙(株)製三菱特両アート紙(斤量90Kg/連)に毎時10000枚の印刷速度で印刷を行い、水元ローラーを調整する水ダイヤルを可変する事により、地汚れが発生する水幅下限値、インキが過剰乳化する事により生じるウオーターマーク発生点を水幅上限値とし、幅が広いのを良好とする。水元ローラーの水ダイヤルは0~10まであり、0は水を全く出さないダイヤル、10は過剰に出したダイヤルで、通常は4をノーマルダイヤルとする。最初にノーマルダイヤルの4で印刷し、印刷濃度安定後、徐々に水ダイヤルを下げ地汚れダイヤルを確認後、直ちにノーマルダイヤル4に戻ししその後徐々に水ダイヤルを上げていく。
【0046】
*汚れ回復:上記、水幅試験で地汚れ発生から直ちに水ダイヤルを4にし、地汚れが消えた枚数で少ない枚数を良好とする。
【0047】
*硬化性試験:上記リスロン226で印刷後、紫外線照射については、USHIO(株)製照射装置UVC-2535(120W/cm超高圧メタハラランプ3灯、コンベヤースピード100m/min)を使用し、表3のインキ組成物の上記印刷物を硬化させたところ実施例、比較例のインキ組成物の印刷物は同様に硬化していた。また電子線照射については、表の比較例CE3、実施例Ink6のインキ組成物の上記印刷物を印刷後取り出し、米国ESI(株)製低エネルギー電子線照射装置(加圧電圧175KV、酸素濃度500ppmの窒素置換した雰囲気)を用い3Mradで照射したところ、比較例、実施例のインキ組成物の印刷物は同様に硬化していた。
【0048】
以上の結果を表3にまとめて示した。
【表3】
【0049】
尚、本発明の硬化性インキ組成物は高級印刷物を得る為、硬化性オーバープリントニス(OPニス)をプリントし使用することもできる。
【0050】
さらに本発明の硬化性インキ組成物は脱墨性も良好で再生紙等用にも使用される。