(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151466
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】地盤改良体
(51)【国際特許分類】
E02D 3/12 20060101AFI20220929BHJP
E02D 5/28 20060101ALI20220929BHJP
E02D 27/34 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
E02D3/12 101
E02D5/28
E02D27/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021083496
(22)【出願日】2021-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】503170536
【氏名又は名称】橋本 光則
(72)【発明者】
【氏名】橋本 光則
【テーマコード(参考)】
2D040
2D041
2D046
【Fターム(参考)】
2D040AA01
2D040AB01
2D040BD01
2D040BD03
2D040CA01
2D040CA02
2D040CB03
2D041AA02
2D041CB06
2D041DB02
2D046DA11
2D046DA17
(57)【要約】
【課題】住宅用地盤の液状化対策と支持力の高い地盤改良体を提供する。
【解決手段】2種類の薬液を地盤中に噴射させることが出来る2重の噴射管1を用い、指定した地盤中に噴射管1を持ち上げながら施工することで、任意のサイズの地盤改良体6を敷設する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤中の軟弱層を含む支持層から表層までに噴射管を挿入して、前記噴射管先端部のノズルから地盤改良材を噴出させながら表層方向へ噴射管を持ち上げながら形成されることを特徴とする地盤改良体。
【請求項2】
前記地盤改良体が軟弱層とその上下部分を含む部分であることを特徴とする地盤改良体。
【請求項3】
前記地盤改良材が2軸の噴射管から噴出される2液であることを特徴とする請求項1及び2記載の地盤改良体。
【請求項4】
前記噴射管の先端部に、噴射ノズルから噴出される地盤改良材の噴射角度を抑制させる制御板7が取り付けられ、噴射管をそのまま持ち上げながら地盤改良材を噴出させることで隣地への地盤改良材の流入や影響を抑止しながら地盤改良体を形成することを特徴とする請求項1~3記載の地盤改良体。
【請求項5】
前記形成される地盤改良体が板状根状で、噴射の圧力や噴射量、それに噴射時間によりサイズ変更が可能なもので、その板状根状の一部が隣接する地盤改良体と重なり合うように形成されていることを特徴とする請求項1~4記載の地盤改良体。
【請求項6】
前記地盤改良体が鋼管杭との組合せであることを特徴とする請求項1~5記載の地盤改良体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅の地盤改良における支持力の向上と液状化の防止効果の高い地盤改良体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現有地盤中の土質のサンプリング調査や支持力調査を経て、建設される住宅の不等沈下を防止させる目的で、地盤改良や支持杭を打設するような工事が単体で行われて来た。
【0003】
また、液状化防止対策としては、土質のサンプリングにより、地下水位の高い砂質地盤層や軟弱地盤層に対し、地盤改良による液状化対策が行われて来た。
【0004】
液状化防止を目的として、深層混合処理工法(高圧噴射攪拌工法)を用い、容易かつ安価に地盤改良体を形成する方法が開示されている(特許文献1)。
【0005】
特許文献1が開示する地盤改良体は、既設建物を取り囲む地盤中に形成する外周壁部と、各外周壁部と連続して各外周壁部から既設建物の地下部分に突出するバットレス部とを有しているため、地上に既設建物が存在する改良対象地盤において、十分な一軸圧縮強度及び液状化強度を発揮することができる様になっていて、既設の建物が有った場合にも対応が可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【0007】
しかしながらこの工法では、既設の建物にも対応できるのであるが、対象となる軟弱地盤中に岩等が存在した場合は影となる部分が出来てしまうため、その部分よりも先に地盤改良体が敷設することが困難となってしまう。
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の地盤改良体では、例えば既設の建物が無い現場で、事前の調査の段階で地盤中の大きな岩の存在を確認できていた場合であっても、それを囲い込む様な形状で地盤改良体を作る必要が有り、隣地方向への高圧噴射は隣地への影響が発生するため、そのような施工は避けなければならない。
【0009】
またこの工法はセメントスラリー単体で使用するため噴射したスラリーの多くは地表に噴出し、それを除去する必要があり、廃棄物としての処理も必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
検討の結果開発したものが、地盤中の軟弱層を含む支持層11から表層までに噴射管1を挿入して、前記噴射管1の先端部のノズルから地盤改良材を噴出させながら表層方向へ噴射管1を持ち上げながら地盤改良体6を形成する。
【0011】
この地盤改良体6の施工位置としては、軟弱層とその上下部分を含む部分に施工することもできる。
【0012】
この地盤改良体6に使用される地盤改良材は、2重の噴射管1から噴出される、主剤と硬化剤の2液である。
【0013】
噴射管1の先端部の噴射ノズルから噴出される地盤改良材は、噴射角度を抑制させる制御板7が取り付けられ、噴射管1をそのまま持ち上げながら地盤改良材を噴出させることで隣地への地盤改良材の流入や影響を抑止しながら地盤改良体6を形成するようにしている。
【0014】
形成される地盤改良体6の形状は、板状根状改良体8と成るのであるが、必要に応じ、噴射の圧力や噴射量、それに噴射時間によりサイズ変更しながら、その板状根状の一部が隣接する地盤改良体6と重なり合うように土中で形成されている。
【0015】
この地盤改良体6は、支持杭としての役割も有するため、鋼管杭9との組合せであることもできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、軟弱地盤層12を含んだ地盤中において、地盤改良体6の形状や支持力により、優れた液状化対策と不等沈下対策という二つの効果を発現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施の地盤改良体6の敷設方法の概要を示した説明図である。
【
図2】本実施の地盤改良体6の施工位置の一例を示す断面図である。
【
図4】噴射管1の先端部に制御板7を取り付けた態様を示す斜視図である。
【
図6】地盤改良体6の施工位置から噴射管1を上昇させながら薬液を射出する態様を示す斜視図である。
【
図7】本実施のサイズの違う地盤改良体6の連結方法を示す平面図である。
【
図8】本実施のサイズの違う地盤改良体6の上部に鋼管杭9を敷設した態様を示す断面斜視図である。
【
図9】建物と軟弱地盤層12並びに本実施の地盤改良体6を施工した断面斜視図である。
【
図10】
図9の建物と地盤改良体6の施工位置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について図を参照しながら説明する。本発明の地盤改良体6は、
図1のように事前の地盤のサンプリング調査等に基づいて判明した支持層11、軟弱地盤層12、良質地盤層13に、より効果的な地盤改良体6を形成させるため、地表面10側から、予め決められた建物に支持が必要な位置で、掘削装置14に取り付けられた噴射管1を土中に挿入して施工されるようになっている。
【0020】
この掘削装置14は、掘削ビット2やノズル部3が先端について噴射管1を回転させながら予め決められた深度まで下降させ、主剤や硬化剤を噴射させながら、予め設定された上昇速度により回転させないで、その状態で上昇させて地盤改良体6を形成するようになっている。
【0021】
次に
図2のように、本発明の地盤改良体6が軟弱地盤層12を貫いたように施工されていることに付いて説明する。この軟弱地盤層12というものは、含まれる水分量が非常に多いものであったりするために、圧力に対し非常に弱く、この層のものを含む地盤であると、建物の荷重が一定で無いために不等沈下が発生しやすくなり、傾いたり、地震が発生した時に液状化が発生して建物が傾いたりすることとなる。
【0022】
その対策として、軟弱地盤層12を含む部分に必要数の地盤改良体6を形成させることで建物の地盤部分を良質地盤層13になるように補強していくようにしている。
【0023】
次に噴射管1の先端の構成について
図3を用いて説明します。この地盤改良体6を所定の位置で形成するために、噴射管1は2液の薬液を噴射出来るように主剤用ノズル4及び硬化剤用ノズル5の二重管となっていて、中央部分の管が少し短く成っている。
【0024】
これは、主剤と硬化剤を効率良く混合させるためのもので、単純にセメントスラリーだけを噴射した場合には、軟弱地盤層12の水分と混合されるため水分過多のセメントスラリーとなり、地盤改良体6としての強度の発現性が不足してしまうため、現地の水分の影響を受ける前にある程度硬化することが望ましく、2液の改良剤を使用するようになっている。
【0025】
本発明の工法に使用可能な地盤改良体6の薬剤、つまり地盤改良体6を形成する素材としては、セメントと水ガラスの組み合わせのもの、エポキシ樹脂系、アクリル樹脂系のものが使用可能である。
【0026】
次に
図4及び
図5について説明をする。この図は噴射管1の先端に制御板7が取り付けられている態様を示している。この制御板7は噴射される2液の薬剤が、隣地等の方向に噴射されないようにするためのガイドである。
【0027】
この制御板7により隣地の建物に対する影響を低減させることが可能となるのであるが、ノズルの先端部より下に10cm以上、30度以上のノズル部分をカバーすることでその保形性が発現されるようになる。
【0028】
次に本発明の地盤中での地盤改良体6の成形方法について
図6を用いて説明する。(1)は噴射管1の先端のノズルが、地盤改良体6を施工する下端の位置にある態様を示すものである。
【0029】
(2)は薬液を噴射しながら噴射管1を上昇させた態様を示すもので、噴射ノズルから噴射された薬液は、掘削ビット2の刃の部分からも圧力の低い横の部分へ流れ出して行くため、制御板7のある部分を除き、略水平断面が花弁状で板根形状に薬液が放出されて行くようになっていて、噴射の圧力や噴射量、それに噴射時間により地盤改良体6の大きさ、つまり直径をコントロールすることができる。
【0030】
(3)は地盤中に形成された本地盤改良体6の断面斜視図である。板根状に形成されるのは、軟弱地盤層12及び良質地盤層13に於いても、地盤中にはある程度の強度差が有り、その弱い部分へ薬液が押しやられて行くためにその様な形状となりながら硬化して行くためで、石などは巻き込むような状態で硬化する。
【0031】
図7は、本発明の地盤改良体6を液状化対策として施工した態様を示す平面図である。液状化の発生が予測される建物下部に、必要に応じた水平断面のサイズの地盤改良体6を連結させるように施工することにより、一般的なセメントミルク単体による柱状改良体よりも表面積と素材の一軸圧縮強度が高いため、建物下部の地盤中の液状化を押さえる効果も極めて高くなる。
【0032】
図8は、軟弱地盤層12での液状化対策と鋼管杭9との組合せを示す斜視図である。この組み合わせによれば、支持層11から軟弱地盤層12の上部で、地表面10からの深さを一定になるように、本発明のネックダウン状の地盤改良体6を施工し、良質地盤層13の改良に於いては通常のサイズを採用することで使用する薬液を低減させ、定尺の鋼管杭9を用いて支持力を得ようとする態様を示したもので、支持層11までの深さが変動した場合でも、定尺の鋼管杭9が利用可能と成るため、効率良く施工することが可能となる。
【0033】
図9は建物とその下の地盤を例示したもので、サンプリング調査等で判明した地盤の状況と建物の重量から導き出した地盤改良体6の大きさや材質を選定し、施工した態様を示すものである。
【0034】
支持層11と軟弱地盤層12が斜めになっていて、支持層11から地表面10までの深さが3m~5m、軟弱地盤層12の厚さが2m~3m、A1の地盤改良体6の高さは5m、C1の地盤改良体6の高さは4m、B3の地盤改良体6の高さは3mで、使用した薬剤としては、主剤としてセメントスラリーW/C=120%と促進剤としてアルカリ土類金属塩3部、硬化剤として、炭酸塩とアルミン酸の水溶液を6部添加したもので実施した。
【0035】
地盤改良をしなければ、軟弱地盤の層の偏りや、建物も図の左側部分が2階建てになっている為、そちら側の荷重が重くなり、左側に傾く傾向が見て取れるが、液状化が発生した場合は沈下だけにとどまらず、建物そのものが破壊される危険性も発生するのである。
【0036】
本発明の地盤改良体6による液状化対策としては、本発明の地盤改良体6を建物の外周部を取り囲むように施工するのであるが、同時に建物の重量配分により、地盤改良体6の支持力の強弱を、その改良体の水平断面積、つまり薬液の噴射量で調整するように組み合わせることが出来る。
【0037】
次に実施例に基づいて説明を行う。
図10は、
図9で示した住宅15の建設位置を平面図で表し、合計7つの地盤改良体6の施工位置を示したものである。
【0038】
この施工位置で、施工前と施工後の平板載荷試験装置を用いた載荷試験を実施した。この試験方法に付いては割愛します。
【0039】
この試験の結果を表したのが表1で、其々の地点での支持力の向上が見られ、本発明の地盤改良体6は優れた効果を奏することが出来た。
【表1】
【符号の説明】
【0040】
1 噴射管
2 掘削ビット
3 ノズル部
4 主剤用ノズル
5 硬化剤用ノズル
6 地盤改良体
7 制御板
8 板状根状改良体
9 鋼管杭
10 地表面
11 支持層
12 軟弱地盤層
13 良質地盤層
14 掘削装置
15 住宅