(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151467
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】ターボ分子式真空ポンプ用ローターキャップ
(51)【国際特許分類】
F04D 19/04 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
F04D19/04 D
F04D19/04 E
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084673
(22)【出願日】2021-05-19
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-04-04
(31)【優先権主張番号】110110746
(32)【優先日】2021-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】519404230
【氏名又は名称】日揚科技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】方志強
(72)【発明者】
【氏名】孫世源
(72)【発明者】
【氏名】陳建勳
【テーマコード(参考)】
3H131
【Fターム(参考)】
3H131AA02
3H131BA03
3H131BA07
3H131CA04
3H131CA34
(57)【要約】
【課題】ローターキャップが高速に回転している際に、回転振動現象が発生して、ローターの回転の重心がずれて封止効果が喪失することを解決することが可能なターボ分子式真空ポンプ用ローターキャップを提供する。
【解決手段】その側壁および頂面が滑らかな曲面であるカバー部材と、延長ロッドと、硬さ及び重量調節部材と、を備え、延長ロッドの第1端は、カバー部材の底面の中心に連接されており、延長ロッドの第2端は、カバー部材から離れる方向へ伸び、硬さ及び重量調節部材は、延長ロッドの第2端と回転軸との間に連接されるためのものである連結部材と、を備え、ターボ分子式真空ポンプの上方に回転軸が設けられており、回転軸にローターが嵌められており、ローターの中心には、下へ凹んで形成されたロックルームが設けられており、ロックルームの中心に回転軸が固定されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボ分子式真空ポンプの上方に回転軸が設けられており、前記回転軸にローターが嵌められており、前記ローターの中心には、下へ凹んで形成されたロックルームが設けられており、前記ロックルームの中心に前記回転軸が固定されているターボ分子式真空ポンプ用ローターキャップであって、
側壁および頂面が滑らかな曲面であるカバー部材と、
延長ロッドと、硬さ及び重量調節部材と、を備える連結部材と、を備え、
前記延長ロッドの第1端は、前記カバー部材の底面の中心に連接されており、
前記延長ロッドの第2端は、前記カバー部材から離れる方向へ伸び、
前記硬さ及び重量調節部材は、前記延長ロッドの前記第2端と前記回転軸との間に連接されるためのものであり、
前記硬さ及び重量調節部材の第1端は、前記回転軸と連接するためのものであり、
前記硬さ及び重量調節部材の前記第1端の硬さは、前記回転軸の硬さと同じであり、
前記硬さ及び重量調節部材の第2端は、前記延長ロッドの前記第2端と連接するためのものであり、
前記硬さ及び重量調節部材の前記第2端の硬さは、実際に、前記延長ロッドの硬さと同じか又は異なり、
前記ターボ分子式真空ポンプ用ローターキャップが前記ローターの前記ロックルームを覆うと、前記ターボ分子式真空ポンプ用ローターキャップが、前記連結部材の前記硬さ及び重量調節部材の前記第1端だけで、前記回転軸と連接し、これにより、前記連結部材と前記回転軸との硬さの差を減少し、かつウェイト効果を提供して前記カバー部材の回転振動現象を低減することを特徴する、
ターボ分子式真空ポンプ用ローターキャップ。
【請求項2】
前記延長ロッドの前記第1端は、前記カバー部材の底面の中心と一体に連接し、又は螺着されていることを特徴する、請求項1に記載のターボ分子式真空ポンプ用ローターキャップ。
【請求項3】
前記回転軸の頂端は、内側へ凹んで形成された第1のねじ穴を有し、前記延長ロッドの前記第2端は、内側へ凹んで形成された第2のねじ穴を有し、前記硬さ及び重量調節部材の前記第1端は第1のボルトであり、前記硬さ及び重量調節部材の前記第2端は第2のボルトであり、前記硬さ及び重量調節部材の前記第1のボルトは、前記回転軸の前記第1のねじ穴に螺着するためのものであり、前記硬さ及び重量調節部材の前記第2のボルトは、前記延長ロッドの前記第2のねじ穴に螺着するためのものであることを特徴する、請求項2に記載のターボ分子式真空ポンプ用ローターキャップ。
【請求項4】
前記硬さ及び重量調節部材の前記第1のボルトの直径は、前記第2のボルトの直径より大きく、且つ前記第1のボルトの直径は、前記回転軸の前記第1のねじ穴の直径に対応し、前記第2のボルトの直径は、前記延長ロッドの前記第2のねじ穴の直径に対応することを特徴する、請求項3に記載のターボ分子式真空ポンプ用ローターキャップ。
【請求項5】
前記硬さ及び重量調節部材の前記第1のボルトと前記延長ロッドの長さ比は、1:7~7:1の範囲であることを特徴する、請求項3に記載のターボ分子式真空ポンプ用ローターキャップ。
【請求項6】
前記回転軸の頂端は、内側へ凹んで形成された第1のねじ穴を有し、前記硬さ及び重量調節部材は、前記延長ロッドの前記第2端を覆って一緒に第1のボルトを形成することにより、前記回転軸の前記第1のねじ穴に螺着することを特徴する、請求項2に記載のターボ分子式真空ポンプ用ローターキャップ。
【請求項7】
前記ターボ分子式真空ポンプ用ローターキャップは、治具で駆動されて回転し、前記治具の一端は、内側へ凹んで形成された挟み空間を有し、前記挟み空間内に挟み部材が設けられており、前記治具の前記挟み空間に前記カバー部材を置くと、前記挟み部材は、前記カバー部材をしっかりと保持し、前記治具を回転することにより、前記ターボ分子式真空ポンプ用ローターキャップが駆動されて回転することを特徴する、請求項1に記載のターボ分子式真空ポンプ用ローターキャップ。
【請求項8】
前記カバー部材の側面または頂面は、完全な曲面であるか、又は平面区や凹み区を有し、前記治具の前記挟み空間に前記カバー部材を置くと、前記挟み部材は、前記カバー部材の前記側面または頂面を保持し、前記治具を回転することにより、前記ターボ分子式真空ポンプ用ローターキャップが駆動されて回転し、前記挟み部材は、プレート、ロッド、又はリングであることを特徴する、請求項7に記載のターボ分子式真空ポンプ用ローターキャップ。
【請求項9】
前記ターボ分子式真空ポンプが運転しているときの前記カバー部材の頂面および底面の回転振動の変化は、目標値より小さく、前記目標値は15μmであることを特徴する、請求項1に記載のターボ分子式真空ポンプ用ローターキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャップに関し、特に、ターボ分子式真空ポンプ用ローターキャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のターボ分子式真空ポンプは、連結するローターを駆動して、エアを抜く工程を行う。ローターの中心には、ターボ分子式真空ポンプの方向に向かって内側へ凹んだロック空間が形成されて、例えばボルトなどの固定部材により、ローター及びターボ分子式真空ポンプを組み合わせる。しかし、ターボ分子式真空ポンプがウェハや電子基板などのエッチング工程に使用される場合には、加工の過程中に発生する粉塵や粒子がロック空間に堆積しやすい。そして加工の過程中に、ローターによる気流は、ロック空間内にある粉塵や粒子を連れて加工区域に入るため、加工区域におけるウェハや電子基板が汚染されやすい。
このため、ロックルームに粉塵や粒子が堆積することを防止するために、米国特許第3908977号は、ローターの上方に、ロックルームを封止するローターキャップが設けられている製品を開示した。ローターキャップには、外から内へ貫通してロックルームの底側にねじ込まれたボルトが設けられている。しかし、ボルト締結区域には、粉塵や粒子を堆積する空間が少量に有するため、キャップによる粉塵や粒子の堆積を防止する効果は良くない。そしてボルトの締結により、ローターキャップを過度に締め付けやすいため、ローターが高速に回転しているとき、ローターキャップは、変形し、又は破裂する虞がある。
【0003】
従来のボルト締結の技術によれば、ローターキャップが高速に回転しているときに、回転振動現象が発生しやすいため、ローターの回転重心がずれて封止効果が喪失する問題がある。ローターキャップの下方から伸びるボルトにより、ロックルームの底側と連接すると、ローターキャップは、回転振動および/又は摩耗という現象を発生することがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の主な目的は、ローターキャップが高速に回転しているときに、回転振動現象が発生して、ローターの回転重心がずれて封止効果が喪失することを解決することが可能なターボ分子式真空ポンプ用ローターキャップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るターボ分子式真空ポンプ用ローターキャップによると、ターボ分子式真空ポンプの上方に回転軸が設けられており、回転軸にローターが嵌められており、ローターの中心には、下へ凹んで形成されたロックルームが設けられており、ロックルームの中心に回転軸が固定されているターボ分子式真空ポンプ用ローターキャップであって、その側壁および頂面が滑らかな曲面であるカバー部材と、延長ロッドと、硬さ及び重量調節部材と、を備える連結部材と、を備え、延長ロッドの第1端は、カバー部材の底面の中心に連接されており、延長ロッドの第2端は、カバー部材から離れる方向へ伸び、硬さ及び重量調節部材は、延長ロッドの第2端と回転軸との間に連接されるためのものであり、硬さ及び重量調節部材の第1端は、回転軸と連接するためのものであり、硬さ及び重量調節部材の第1端の硬さは、実際に、回転軸の硬さと同じ、硬さ及び重量調節部材の第2端は、延長ロッドの第2端と連接するためのものであり、硬さ及び重量調節部材の第2端の硬さは、実際に、延長ロッドの硬さと同じか又は異なり、ターボ分子式真空ポンプ用ローターキャップがローターのロックルームを覆うと、ターボ分子式真空ポンプ用ローターキャップは、連結部材の硬さ及び重量調節部材の第1端だけで、回転軸と連接し、これにより、連結部材と回転軸との硬さの差を減少し、そしてウェイト効果を提供してカバー部材の回転振動現象を低減することを特徴する。
【0006】
本発明に係るターボ分子式真空ポンプ用ローターキャップによると、延長ロッドの第1端は、カバー部材の底面の中心と一体に連接し、又は螺着されていることを特徴する。
【0007】
本発明に係るターボ分子式真空ポンプ用ローターキャップによると、回転軸の頂端は、内側へ凹んで形成された第1のねじ穴を有し、延長ロッドの第2端は、内側へ凹んで形成された第2のねじ穴を有し、硬さ及び重量調節部材の第1端は第1のボルトであり、硬さ及び重量調節部材の第2端は第2のボルトであり、硬さ及び重量調節部材の第1のボルトは、回転軸の第1のねじ穴に螺着するためのものであり、硬さ及び重量調節部材の第2のボルトは、延長ロッドの第2のねじ穴に螺着するためのものであることを特徴する。
【0008】
本発明に係るターボ分子式真空ポンプ用ローターキャップによると、硬さ及び重量調節部材の第1のボルトの直径は、第2のボルトの直径より大きく、且つ第1のボルトの直径は、回転軸の第1のねじ穴の直径に対応し、第2のボルトの直径は、延長ロッドの第2のねじ穴の直径に対応することを特徴する。
【0009】
本発明に係るターボ分子式真空ポンプ用ローターキャップによると、硬さ及び重量調節部材の第1のボルトと延長ロッドの長さ比は、1:7~7:1の範囲であることを特徴する。
【0010】
本発明に係るターボ分子式真空ポンプ用ローターキャップによると、回転軸の頂端は、内側へ凹んで形成された第1のねじ穴を有し、硬さ及び重量調節部材は、延長ロッドの第2端を覆って一緒に第1のボルトを形成することにより、回転軸の第1のねじ穴に螺着することを特徴する。
【0011】
本発明に係るターボ分子式真空ポンプ用ローターキャップによると、ターボ分子式真空ポンプ用ローターキャップは、治具に駆動されて回転し、治具の一端は、内側へ凹んで形成された挟み空間を有し、挟み空間内に挟み部材が設けられており、治具の挟み空間にカバー部材を置くと、挟み部材は、カバー部材をしっかりと保持し、治具を回転することにより、ターボ分子式真空ポンプ用ローターキャップが駆動されて回転することを特徴する。
【0012】
本発明に係るターボ分子式真空ポンプ用ローターキャップによると、カバー部材の側面または頂面は、完全に曲面であり、又は平面区や凹み区を有し、治具の挟み空間にカバー部材を置くと、挟み部材は、カバー部材の側面または頂面をしっかりと保持し、治具を回転することにより、ターボ分子式真空ポンプ用ローターキャップが駆動されて回転し、挟み部材は、プレート、ロッド、又はリングであることを特徴する。
【0013】
本発明に係るターボ分子式真空ポンプ用ローターキャップによると、ターボ分子式真空ポンプが運転しているときのカバー部材の頂面および底面の回転振動の変化は、目標値より小さく、目標値は15μmであることを特徴する。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るターボ分子式真空ポンプ用ローターキャップによれば、ターボ分子式真空ポンプのロックルームを持続的に封止するができると共に、硬さ及び重量調節部材の連結部材を有することによるウェイト効果により、ターボ分子式真空ポンプ用ローターキャップのカバー部材の回転振動現象を低減することができ、そして硬さの差を減少することにより、連結部材の回転軸との連接による摩耗を減少することもできるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係るターボ分子式真空ポンプ用ローターキャップの外観を示す図である。
【
図2】本発明に係るターボ分子式真空ポンプ用ローターキャップの分解断面図である。
【
図3】本発明に係るターボ分子式真空ポンプ用ローターキャップがターボ分子式真空ポンプに取り付けられた状態を示す断面図である。
【
図4】本発明に係るターボ分子式真空ポンプ用ローターキャップの側面が完全に曲面を呈することを示す平面図である。
【
図5】本発明に係るターボ分子式真空ポンプ用ローターキャップの側面に平面区が設けられていることを示す平面図である。
【
図6】本発明に係るターボ分子式真空ポンプ用ローターキャップの側面に凹み区が設けられていることを示す平面図である。
【
図7】本発明に係るターボ分子式真空ポンプ用ローターキャップのリングであるフィクスチャを下方から見た斜視図である。
【
図8】本発明に係るターボ分子式真空ポンプ用ローターキャップのロッドであるフィクスチャを下方から見た斜視図である。
【
図9】本発明に係るターボ分子式真空ポンプ用ローターキャップのプレートであるフィクスチャを下方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本発明の実施形態の図面における各部材の比例は、説明を容易に理解するために示され、実際の比率ではない。また、図に示すアセンブリの寸法の比率は、各部品とその構造を説明するためのものであり、もちろん、本発明はこれに限定されない。
【0017】
図1及び
図2を参照する。
図1は、本発明に係るターボ分子式真空ポンプ用ローターキャップの外観図である。
図2は、本発明に係るターボ分子式真空ポンプ用ローターキャップの分解断面図である。本発明に係るターボ分子式真空ポンプ100に使用されるローターキャップ10は、
図3に示すように、ターボ分子式真空ポンプ100の上方に回転軸102が設けられている。ローター110の中心には、下へ凹んで形成されるロックルーム112が設けられている。ローター110は回転軸102を嵌める。回転軸102は、ローター110のロックルーム112の中心に固定されていることにより、ローター110が回転軸102を嵌める。
回転軸102は、例えば螺合または別の部材により、ローター110のロックルーム112の中心に固定されている。回転軸102の外面に、例えばねじが設けられている場合、上記の別の部材は例えばナットである。ナットがねじと螺合することにより、ローター110のロックルーム112に回転軸102を締め付けることができる。或いは、例えばボルト(図示せず)を上から下へ、ローター110のロックルーム112を挿通して、回転軸102の頂面に内側へ凹んで形成されたねじ穴(図示せず)にねじ込む。換言すると、本発明は、回転軸102がローター110を駆動して回転することができる限り、何れかの方式で回転軸102をローター110のロックルーム112に固定してもよい。
【0018】
本発明に係るローターキャップ10は、カバー部材20と、連結部材30と、を備える。カバー部材20は、ローター110のロックルーム112を覆うことにより、ターボ分子式真空ポンプ100Aによって抽出されたガスのプロセスチャンバー内のプロセス粒子が、ロックルーム112に堆積または蓄積されることを回避することができる。
本発明に係るローターキャップ10のカバー部材20の頂面の形状は、例えばテーパー状、半球状、又は平面状であるが、これらに限定されない。カバー部材20の側壁および頂面は、滑らかな曲面であることが好ましい。これにより、気流を有効にガイドして安定させることができる。一方、カバー部材20の側壁および頂面は、完全に曲面状を呈しなくてもよく、すなわち、例えば平面区または凹み区を有してもよい。カバー部材20の底面の形状は、例えばテーパー状、半球状または平面状である。一方、カバー部材20の頂面および底面は、実際に、互いに対応し、同じ形状を有することに限定されない。例を挙げて説明すると、カバー部材20の頂面および底面は、例えば互いに対応せず、異なる形状を有してもよい。換言すると、ローターキャップ10は、気流をガイドすることができ、且つその底面の中心が連結部材30を介してターボ分子式真空ポンプ100の回転軸102と連接すればよい。
【0019】
本発明に係るローターキャップ10の連結部材30の両端は、ローターキャップ10のカバー部材20の底面の中心、及びターボ分子式真空ポンプ100の回転軸102の頂面の中心とそれぞれ連接することにより、カバー部材20は、ターボ分子式真空ポンプ100のロックルーム112を着脱可能に覆う。一方、本発明に係るローターキャップ10の底面は、例えばシーリングワッシャー(図示せず)を有する。カバー部材20がローター110のロックルーム112を覆う際に、シーリングワッシャーはカバー部材20とローター110のロックルーム112との間に位置することにより、気密効果を向上することができる。
【0020】
本発明の特徴の一つは、連結部材30が、延長ロッド32と、硬さ及び重量調節部材34と、を備えることにある。硬さ及び重量調節部材34の少なくとも一部の硬さは、実際に、回転軸102と同じである。延長ロッド32の第1端32aは、カバー部材20の底面の中心に、一体に連接されており、又は着脱可能に連接されている。上記の一体に連接する方式は、例えば一体成形であるが、これに限定されない。延長ロッド32の第1端32aがカバー部材20の底面の中心と一体に成形された場合には、延長ロッド32とカバー部材20との材質は同じである。延長ロッド32の第1端32aが、カバー部材20の底面の中心に着脱可能に連接されている場合、延長ロッド32とカバー部材20の材質は、同じでもいいし、異なってもよい。上記の着脱可能に連接する方式は、例えば螺着でもいいが、これに限定されない。
連結部材30の両端は、延長ロッド32と硬さ及び重量調節部材34とを介して、カバー部材20と回転軸102とにそれぞれ連接されている。一実施の態様では、延長ロッド32の第2端32bに硬さ及び重量調節部材34が設けられている。硬さ及び重量調節部材34は、例えば延長ロッド32の第2端32bを覆って、一体に第1のボルト35を形成する。連結部材30は、第1のボルト35で回転軸102と連接する。或いは、別の実施の態様では、硬さ及び重量調節部材34の第2端34bは、例えば第2のボルト37を介して延長ロッド32の第2端32bと連接する。硬さ及び重量調節部材34の第1端34aは、第1のボルト35を有する。連結部材30は、第1のボルト35で回転軸102と連接する。或いは、更に別の実施の態様では、硬さ及び重量調節部材34の第2端34bは、例えば第2のボルト37を介して、延長ロッド32の第2端32bの第2のねじ穴33にねじ込む。
硬さ及び重量調節部材34の第1端34aは、第1のボルト35を有する。連結部材30は、第1のボルト35で回転軸102と連接する。第1のボルト35は、例えば挟み区38を有してもよい。挟み区38は、例えば平面である。ユーザーは、例えばクランプによって挟み区38を挟むことにより、延長ロッド32の第2端32bの第2のねじ穴33に、硬さ及び重量調節部材34の第2のボルト37をねじ込む。
【0021】
ターボ分子式真空ポンプ100が高速に回転している際に、ローターキャップ10の重心が高すぎて、揺動などの回転振動現象が発生することを回避するために、カバー部材20及び連結部材30は、アルミ又はアルミ合金などの軽量素材を採用することが好ましい。ターボ分子式真空ポンプ100の回転軸102は、ステンレス、又はニッケルメッキされ耐腐食性および高硬度を有する材料を採用することが一般的であるが、アルミ又はアルミ合金の硬さはステンレスより低いため、アルミ又はアルミ合金の材質を有する延長ロッド32は、ステンレス又はニッケルメッキされた材質を採用する回転軸102に直接にねじ込むと、破れたり、欠けたりすることなどが発生しやすい。このため、本発明の別の特徴は、連結部材30に延長ロッド32と硬さ及び重量調節部材34とが設けられていることにある。
延長ロッド32は、アルミ又はアルミ合金などの軽量であるが、硬さがより低い材料を採用することが好ましい。硬さ及び重量調節部材34は、ニッケルメッキされた金属(例えばニッケルメッキされたアルミ又はニッケルメッキされたアルミ合金)、又はステンレスなどの高硬度材料を採用することが好ましい。これにより、本発明に係るカバー部材20が回転振動現象の発生を回避することができ、そして連結部材30が破れたり、欠けたりすることなどが発生することも回避できる。硬さ及び重量調節部材34と延長ロッド32の長さ比は、1:7~7:1の範囲に収めるが、本発明はこれに限定されず、1:7であることが好ましい。本発明に係る連結部材30の硬さ及び重量調節部材34は、延長ロッド32の第2端32bと回転軸102との間に連接されていることにより、連結部材30の延長ロッド32と回転軸102の硬さの差を減少することができ、ウェイト効果を提供することができるため、カバー部材20が高速に回転する際に発生する振動を低減することができる。
【0022】
硬さ及び重量調節部材34が延長ロッド32に螺着されている場合を例にして説明する。本発明に係る硬さ及び重量調節部材34の第1端34aは、ターボ分子式真空ポンプ100の回転軸102に着脱可能に連接されている。硬さ及び重量調節部材34の第2端34bは、延長ロッド32の第2端32bに着脱可能に設けられている。例えば、ターボ分子式真空ポンプ100の回転軸102の頂端には、内側へ凹んで形成される第1のねじ穴104が設けられており、ローターキャップ10の延長ロッド32の第2端32bには、内側へ凹んで形成される第2のねじ穴33が設けられている。硬さ及び重量調節部材34の第1端34aは第1のボルト35であり、硬さ及び重量調節部材34の第2端34bは第2のボルト37である。硬さ及び重量調節部材34の第1のボルト35は、回転軸102の第1のねじ穴104に螺着し、硬さ及び重量調節部材34の第2のボルト37は延長ロッド32の第2のねじ穴33に螺着する。硬さ及び重量調節部材34の第1のボルト35と延長ロッド32の長さ比は、およそ1:7~7:1の範囲に収めるが、およそ1:7であることが好ましい。
【0023】
本発明に係る連結部材30は、例えば柱状を呈するロッドである。延長ロッド32の直径は、例えば、実際に、硬さ及び重量調節部材34の直径と同じであることにより、連結部材30の重さの増加を有効に回避することができる。硬さ及び重量調節部材34の第1のボルト35の直径は、例えば、実際に、第2のボルト37の直径より大きく、第1のボルト35の直径は、回転軸102の第1のねじ穴104の直径に対応し、第2のボルト37の直径は、延長ロッド32の第2のねじ穴33の直径に対応する。延長ロッド32の第2端32bは、硬さ及び重量調節部材34の第1端34aの直径と、例えば、実際に同じである。
【0024】
硬さ及び重量調節部材34は、第1端34aで、回転軸102の頂端に内側へ凹んで形成される第1のねじ穴104に螺着されているため、硬さ及び重量調節部材34の第1端34aの硬さは、回転軸102の硬さに近似することが好ましいが、実際に同じであることが更に好ましい。これにより、延長ロッド32と回転軸102との硬さの差を減少することができる。硬さ及び重量調節部材34は、第2端34bで、延長ロッド32の第2端32bに着脱可能に螺着されているため、硬さ及び重量調節部材34の第2端34bの硬さは、延長ロッド32の硬さに近似することが好ましいが、実際に同じであることが更に好ましい。これにより、硬さ及び重量調節部材34と延長ロッド32との硬さの差を減少することができる。しかし、本発明はこれに限定されない。
硬さ及び重量調節部材34の第2端34bの硬さは、延長ロッド32の第2端32bの硬さと異なってもよく、例えばそれより大きく、又は小さい。硬さ及び重量調節部材34の第1端34aの硬さが回転軸102の硬さに近似し、又は同じであれば、連結部材30と回転軸102との硬さの差を減少することができ、摩耗などを減少することができる。同じように、本発明に係る硬さ及び重量調節部材34は、その他の物理的特性(例えば剛性、体積、密度、又は熱膨張性や磁性など)を有する調節部材に置き換えられてもよい。これにより、連結部材30と回転軸102との物理的特性の差を減少することができる。
【0025】
これにより、ターボ分子式真空ポンプ100の回転軸102が高速に運転する過程中に、本発明に係るローターキャップ10は、ターボ分子式真空ポンプ100のロックルーム112を持続的に封止することができるだけでなく、ローターキャップ10の連結部材30は硬さ及び重量調節部材34を有するため、硬さ及び重量調節部材34によるウェイト効果により、ローターキャップ10のカバー部材20の回転振動現象を低減することができ、そして硬さの差を減少することにより、連結部材30が回転軸102と連接することによる摩耗や欠けなどを減少することもできる。
【0026】
硬さ及び重量調節部材34と延長ロッド32との分解方向は、例えば回転軸102の回転方向の反対であり、硬さ及び重量調節部材34と延長ロッド32との組付け方向が回転軸102の回転方向と同じであることにより、回転軸102が回転している際に、ローターキャップ10がずれてしまう現象を回避することができる。同じように、硬さ及び重量調節部材34と回転軸102との分解方向は、例えば回転軸102の回転方向の反対であり、硬さ及び重量調節部材34と回転軸102との組付け方向が回転軸102の回転方向と同じであることにより、回転軸102が回転している際に、ローターキャップ10がずれてしまう現象を回避することができる。しかし、上記の分解方向および組付け方向は、本発明を限定するためのものではない。
【0027】
換言すると、本発明に係るローターキャップ10により、連結部材30と回転軸102との材質の硬さの差による摩耗や欠けなどの現象を減少することができる。また、重量を調整し、例えば連結部材30の重心の高さを降下することにより、ターボ分子式真空ポンプ100の回転軸102が高速に運転している際に、ローターキャップ10のカバー部材20が回転振動現象が発生することを減少することができ、例えばカバー部材20の頂面および底面の振動の変化を目標値より小さくすることもできる。実際には、回転軸102の回転数がおよそ27,660rpm~27,780rpmになると、上記の目標値は、およそ15μmである。
【0028】
一方、本発明に係るターボ分子式真空ポンプ用ローターキャップ10は、更に、治具60を備える。治具60は、ローターキャップ10のカバー部材20を挟むためのものである。治具60を回転することにより、カバー部材20が駆動されて回転する。治具60の一端には、内側へ凹んで形成される挟み空間62が設けられている。挟み空間62は挟み部材64を有する。
治具60がローターキャップ10を覆い、そしてカバー部材20が治具60の挟み空間62に置かれると、治具60の挟み部材64はカバー部材20をしっかりと保持するため、時針方向または反時針方向に治具60を回転することにより、ローターキャップ10を駆動して回転することができる。これにより、ローターキャップ10を回転軸102に組付け、又はローターキャップ10を回転軸102から分解することができる。挟み部材64は、例えばプレート、ロッド、又はリングである。一方、挟み部材64は、例えば固定方式、又は着脱可能な方式により、治具60の挟み空間62に設けられていてもいいし、或いは、挟み部材64は、例えば復帰可能な方式により、治具60の挟み空間62に設けられていてもよい。例えば、挟み部材64は、バネによる弾性力、又は挟み部材64自体による弾性力により、復帰可能な方式で治具60の挟み空間62に設けられている。これにより、カバー部材20をしっかりと保持することができる。
【0029】
カバー部材20の側面または頂面は、完全に曲面であり、すなわち、平面区や凹み区(
図4を参照)を有さなくてもよい。或いは、カバー部材20の側面または頂面に設けられている曲面は、更に、平面区22(
図5を参照)或凹み区24(
図6を参照)を有してもよい。カバー部材20を治具60の挟み空間62に置くと、挟み部材64は、カバー部材20の平面区22や凹み区24を挟んで保持し、治具60を回転することにより、ローターキャップ10を駆動して回転することができる。挟み部材64は、例えばプレート(
図9を参照)、ロッド(
図8を参照)、又はリング(
図7を参照)である。例えば、挟み部材64は、治具60の挟み空間62の内側の表面に設けられているプレート、ロッド、又はリングである。前記プレート、ロッド、又はリングの材質は、例えばゴムまたは金属を採用し、前記金属は、例えばアルミ、アルミ合金、又はステンレスなどである。治具60は、ゴム材質を採用するプレート、ロッド、又はリングによる緊迫力により、カバー部材20の側壁に緊迫することが可能により、ローターキャップ10を駆動して回転することができる。或いは、挟み空間62の内側の表面に設けられているプレート、ロッド、又はリングの形状は、例えば、カバー部材20の側壁の曲面に設けられている平面区22や凹み区24に対応してもよい。これにより、治具60の挟み部材64はカバー部材20の曲面に設けられている平面区22や凹み区24に緊迫することが可能により、ローターキャップ10を駆動して回転することができる。
【0030】
上述した、本発明に係るターボ分子式真空ポンプ用ローターキャップによれば、ターボ分子式真空ポンプのロックルームを持続的に封止するができると共に、硬さ及び重量調節部材の連結部材を有することによるウェイト効果により、ターボ分子式真空ポンプ用ローターキャップのカバー部材の回転振動現象を低減することができ、かつ硬さの差を減少することにより、連結部材の回転軸との連接による摩耗を減少することもできるという効果がある。
【0031】
このように、本発明の特定の例を参照して説明したが、それらの例は、説明のためだけのものであり、本発明を限定するものではなく、この分野に通常の知識を有する者には、本発明の要旨および請求の範囲を逸脱することなく、ここで開示された実施例に変更、追加、または、削除を施してもよいことがわかる。
【符号の説明】
【0032】
10 ローターキャップ
20 カバー部材
22 平面区
24 凹み区
30 連結部材
32 延長ロッド
32a 第1端
32b 第2端
33 第2のねじ穴
34 硬さ及び重量調節部材
34a 第1端
34b 第2端
35 第1のボルト
37 第2のボルト
38 挟み区
60 治具
62 挟み空間
64 挟み部材
100 ターボ分子式真空ポンプ
102 回転軸
104 第1のねじ穴
110 ローター
112 ロックルーム