(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151476
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】殺菌用光照射装置
(51)【国際特許分類】
A61L 2/10 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
A61L2/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021103834
(22)【出願日】2021-06-23
(31)【優先権主張番号】P 2021049297
(32)【優先日】2021-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148895
【弁理士】
【氏名又は名称】荒木 佳幸
(72)【発明者】
【氏名】木暮 靖男
【テーマコード(参考)】
4C058
【Fターム(参考)】
4C058AA02
4C058BB06
4C058KK02
4C058KK12
4C058KK22
4C058KK28
4C058KK32
4C058KK44
(57)【要約】
【課題】物品の形状を問わず、短時間で隅々まで確実に殺菌可能な殺菌用光照射装置を提供すること。
【解決手段】紫外光を照射して被照射物を殺菌する殺菌用光照射装置が、箱形の筐体と、筐体内に配置され紫外光を出射する光源と、筐体内に配置され筐体内の空間を第1空間と第2空間とに仕切ると共に紫外光が透過可能に構成された仕切板と、光源、仕切板及び被照射物を覆うように筐体内に配置され紫外光を筐体内に閉じ込めるように反射する反射ミラーと、を備え、被照射物が第1空間に配置され、光源が第1空間又は第2空間の少なくともいずれか一方に配置されていることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外光を照射して被照射物を殺菌する殺菌用光照射装置であって、
箱形の筐体と、
前記筐体内に配置され、前記紫外光を出射する光源と、
前記筐体内に配置され、前記筐体内の空間を第1空間と第2空間とに仕切ると共に、前記紫外光が透過可能に構成された仕切板と、
前記光源、前記仕切板及び前記被照射物を覆うように筐体内に配置され、前記紫外光を前記筐体内に閉じ込めるように反射する反射ミラーと、
を備え、
前記被照射物が前記第1空間に配置され、前記光源が前記第1空間又は前記第2空間の少なくともいずれか一方に配置されている
ことを特徴とする殺菌用光照射装置。
【請求項2】
前記光源が、前記仕切板の少なくとも一辺の縁部に沿って配置されていることを特徴とする請求項1に記載の殺菌用光照射装置。
【請求項3】
前記光源が、前記仕切板の対向する二辺の縁部に沿って配置されていることを特徴とする請求項2に記載の殺菌用光照射装置。
【請求項4】
前記反射ミラーが、前記筐体の内面に沿って配置されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の殺菌用光照射装置。
【請求項5】
前記仕切板の前記第1空間に面する面が、前記被照射物の載置面であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の殺菌用光照射装置。
【請求項6】
前記仕切板が、透明な板状のガラスであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の殺菌用光照射装置。
【請求項7】
前記仕切板が、前記第2空間から入射する前記紫外光を拡散させる光拡散面を備える、板状のガラスであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の殺菌用光照射装置。
【請求項8】
前記光源が、波長200~300nmの紫外光を発するLED素子又は放電ランプを有することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の殺菌用光照射装置。
【請求項9】
前記被照射物が、板状の形状を呈することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の殺菌用光照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、紫外光を照射して被照射物を殺菌する殺菌用光照射装置に関し、特に、被照射物に対して様々な方向から紫外光を照射可能な殺菌用光照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ウイルス感染症に対する意識の高まりにより、長時間手に触れて使用するスマートフォンや、常時身に着けて使用する眼鏡や貴金属の衛生面が懸念されている。
そして、このような物品の表面を除菌、殺菌する目的で、紫外線照射装置が実用に供されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1には、箱体の内部で照射する紫外線により物品(被照射物)の表面を除菌ないし殺菌する紫外線照射装置が記載されている。この紫外線照射装置は、箱体の内側上面に光源を有し、箱体の底面に配置された物品に対して上方から紫外線を照射するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の紫外線照射装置によれば、長時間手に触れて使用するスマートフォンや、常時身に着けて使用する眼鏡や貴金属の表面を殺菌することができる。
しかしながら、特許文献1においては、被照射物を箱体の底面に配置し、上方から紫外線を照射する構成であるため、箱体の底面と接する被照射物の接触面には紫外光が及ばず、当該接触面を殺菌できない、といった問題がある。
また、スマートフォンやタブレットPC等、板状の被照射物の場合、箱体の底面と接する接触面の面積が広くなるため、かかる問題は顕著となる。
また、スマートフォン、タブレットPC、眼鏡、貴金属等の販売店等においては、昨今のコロナ禍の影響から、客が一度手にした商品について、短時間で隅々まで確実に殺菌(除菌)したいという要請もある。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、物品(被照射物)の形状を問わず、短時間で隅々まで確実に殺菌可能な殺菌用光照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の殺菌用光照射装置は、紫外光を照射して被照射物を殺菌する殺菌用光照射装置であって、箱形の筐体と、筐体内に配置され、紫外光を出射する光源と、筐体内に配置され、筐体内の空間を第1空間と第2空間とに仕切ると共に、紫外光が透過可能に構成された仕切板と、光源、仕切板及び被照射物を覆うように筐体内に配置され、紫外光を筐体内に閉じ込めるように反射する反射ミラーと、を備え、被照射物が第1空間に配置され、光源が第1空間又は第2空間の少なくともいずれか一方に配置されていることを特徴とする。
【0008】
このような構成によれば、紫外光が透過可能な仕切板上の被照射物に対して、様々な方向から紫外光が照射されるため、被照射物の形状に拘わらず、被照射物全体を短時間で隅々まで確実に殺菌することができる。
【0009】
また、光源が、仕切板の少なくとも一辺の縁部に沿って配置されていることが望ましい。また、この場合、光源が、仕切板の対向する二辺の縁部に沿って配置されていることが望ましい。
【0010】
また、反射ミラーが、筐体の内面に沿って配置されていることが望ましい。
【0011】
また、仕切板の第1空間に面する面が、被照射物の載置面であることが望ましい。
【0012】
また、仕切板が、透明な板状のガラスであることが望ましい。
【0013】
また、仕切板が、第2空間から入射する紫外光を拡散させる光拡散面を備える、板状のガラスであることが望ましい。
【0014】
また、光源が、波長200~300nmの紫外光を発するLED素子又は放電ランプを有することが望ましい。
【0015】
また、被照射物が、板状の形状を呈することが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明の殺菌用光源装置によれば、物品(被照射物)の形状を問わず、被照射物に対して様々な方向から紫外光が照射されるため、被照射物を短時間で隅々まで確実に殺菌することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る殺菌用光照射装置の構成を示す透視図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る殺菌用光照射装置のケース内における紫外光の様子を説明する模式図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る殺菌用光照射装置の効果確認実験の実験モデルを示す模式図である。
【
図4】
図4は、本発明の第2の実施形態に係る殺菌用光照射装置の構成を示す透視図である。
【
図5】
図5は、本発明の第2の実施形態に係る殺菌用光照射装置のケース内における紫外光の様子を説明する模式図である。
【
図6】
図6は、本発明の第3の実施形態に係る殺菌用光照射装置の構成と、ケース内における紫外光の様子を説明する模式図である。
【
図7】
図7は、本発明の第3の実施形態に係る殺菌用光照射装置の効果確認実験の実験モデルを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一の符号を付してその説明は繰り返さない。
【0019】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る殺菌用光照射装置1(以下、「光照射装置1」という。)の構成を示す模式図であり、
図1(a)は、光照射装置1をY軸方向から見たときの透視図であり、
図1(b)は、光照射装置1をX軸方向から見たときの透視図である。本実施形態の光照射装置1は、内部に収容された、スマートフォンなどの被照射物Sに対して紫外光を照射して殺菌する装置である。なお、本明細書においては、
図1の座標に示すように、後述する一対のUVCランプ20が延びる方向をX軸方向、一対のUVCランプ20が対向する方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向に直交する方向をZ軸方向と定義して説明する。
【0020】
図1に示すように、本実施形態の光照射装置1は、UVCランプ20(光源)と、載置板40(仕切板)と、反射ミラー50と、電源装置60と、これらを収容するケース10(筐体)を備えている。
【0021】
ケース10は、X軸方向に長い樹脂製の箱形のケースであり、蓋体部11と、本体部12とから構成されている。蓋体部11は、本体部12の上端部に設けられたヒンジ部13を介して回動可能に接合されており、蓋体部11を開くことによって(
図1(b)において反時計方向に回動させることによって)ケース10の内部にアクセス可能(つまり、被照射物Sを出し入れ可能)になっている。
【0022】
UVCランプ20は、波長200~300nmのUVC(Ultraviolet C:紫外線C波)を発する棒状の光源であり、放電ランプ(例えば、冷陰極ランプ、熱陰極ランプ、低圧水銀ランプ、エキシマランプ)または複数のUVLED(Ultraviolet Light Emitting Diode)素子から構成されるLEDモジュールである。本実施形態においては、一対のUVCランプ20が、載置板40の下側(Z軸方向-側)の第2空間R2において、載置板40のY軸方向両端の縁部に沿ってX軸方向に延びるように配置されている。
【0023】
各UVCランプ20は、インバーター回路等(不図示)を含む電源装置60とケーブル65によって接続されており、各UVCランプ20には、電源装置60からの電力が供給されるようになっている。各UVCランプ20に電力が供給されると、各UVCランプ20からは所定の光量(例えば、100mW)の殺菌作用を有する紫外光(例えば、波長253.7nm)が出射される。
【0024】
載置板40は、ケース10の本体部12の下側に固定され、ケース10内の紫外線照射空間R0(
図1の反射ミラー50で囲まれる空間)を第1空間R1と第2空間R2とにZ軸方向に二分し、被照射物Sが載置される矩形板状の部材であり、表面41と、裏面42と、を有している。本実施形態においては、載置板40は、UVCランプ20からの紫外光を透過可能な透明な石英ガラスからなり、第1空間R1に面する表面41は被照射物Sが載置される載置面となっている。また、第2空間R2に面する裏面42はUVCランプ20からの紫外光が入射する入射面となっており、一対のUVCランプ20が載置板40のX軸方向に平行な二辺の縁部に沿って配置されている。
【0025】
反射ミラー50は、UVCランプ20から出射された紫外光をケース10の内部空間に閉じ込める機能を有する部材であり、UVCランプ20、載置板40及び被照射物Sを6方向から囲み(覆い)、その内側に紫外線照射空間R0を形成している。本実施形態の反射ミラー50は、ケース10の蓋体部11の内面に沿って配置される第1反射ミラー51と、ケース10の本体部12の内面に沿って配置される第2反射ミラー52と、から構成されている。なお、本実施形態においては、Y軸方向+側の反射ミラー50とケース10との間に電源装置60が配置される構成を示しているが、別の実施形態としては、電源装置60はケース10の外側に配置されていてもよく、この場合、反射ミラー50はケース10の内面に密着するように配置されてもよい。
【0026】
本実施形態の第1反射ミラー51は、下向きの升形の形状を呈する部材である。また、第2反射ミラー52は、第1反射ミラー51とZ軸方向に対向するように配置された上向きの升形の形状を呈する部材である。第1反射ミラー51及び第2反射ミラー52の内面は紫外光を反射する反射面になっており、UVCランプ20からの紫外光を反射するように構成されている。
【0027】
図2は、本実施形態の光照射装置1のケース10内における紫外光の様子を説明する模式図である。
【0028】
本実施形態の光照射装置1を使用するときには、ケース10の蓋体部11を開いて、載置板40の表面41に被照射物Sを載置し、蓋体部11を閉めて、本体部12のスイッチ(不図示)を操作する。なお、本実施形態の被照射物Sは、スマートフォンのような板状の形状を呈し、一方面が載置板40の表面41と当接するように配置される。
本体部12のスイッチが操作されると、各UVCランプ20に電源装置60からの電力が供給され、各UVCランプ20からは、殺菌作用を有し、360°に拡がる紫外光が出射される。このように、本実施形態のUVCランプ20からは、様々な角度成分の紫外光が出射されるため、紫外光の一部は載置板40の縁部から第1空間R1に入り(
図2の光線L1)、他の一部は第2空間R2を進む(
図2の光線L2)。
そして、第1空間R1に入る光線L1は、被照射物Sに直接的に入射するか、或いは第1反射ミラー51又は第2反射ミラー52に反射されて被照射物Sに入射する。また、被照射物Sに入射した紫外光の一部は被照射物Sの表面で反射され、さらに第1反射ミラー51又は第2反射ミラー52に反射されて被照射物Sに入射する。このように、第1空間R1に入る光線L1が、第1反射ミラー51又は第2反射ミラー52、或いは被照射物Sで反射を繰り返す結果、第1空間R1に露出している被照射物Sの表面全体に紫外光が照射され、殺菌される。
また、第2空間R2に入る光線L2は、載置板40を透過して被照射物Sに直接的に入射するか、或いは第2反射ミラー52に反射されて載置板40を透過して被照射物Sに入射する。また、被照射物Sに入射した紫外光の一部は被照射物Sの表面で反射され、さらに第2反射ミラー52に反射されて被照射物Sに入射する。このように、第2空間R2に入る光線L2が、第2反射ミラー52、或いは被照射物Sで反射を繰り返す結果、載置板40と当接している被照射物Sの表面(当接面)全体に紫外光が照射され、殺菌される。
【0029】
(第1の実施形態の光照射装置1の効果確認実験)
図3は、本実施形態の光照射装置1の効果を確認するために、発明者が行った効果確認実験の実験モデルを示す模式図である。
図3に示すように、本実験においては、載置板40の表面41上に、被照射物Sに見立てた遮光スクリーンSCを配置し、遮光スクリーンSCに形成された開口APから出射される紫外光の強度を光強度計によって測定し、単位面積当たりの積算光量を求めた。なお、
図3の各矢印は、一方(Y軸方向-側)のUVCランプ20から出射される紫外光の光線を模式的に示すものである。
図3に示すように、UVCランプ20からは、様々な角度成分の紫外光が出射され、遮光スクリーンSCには、載置板40を透過した直接光(光線L11)と、第2反射ミラー52に反射されて載置板40を透過した間接光(光線L12)が入射する。
そして、この場合の紫外光の強度を光強度計によって測定し、UVCランプ20を60秒間点灯させたときの、単位面積当たりの積算光量(積分値)を求めると、1mJ/cm
2となった。
このことから、被照射物Sの表面(当接面)は、1mJ/cm
2の光量で照射できることが分かった。
また、遮光スクリーンSCを取り外して、光強度計のみ設置し、同様の測定を行ったところ、UVCランプ20を60秒間点灯させたときの、単位面積当たりの積算光量(積分値)は、10mJ/cm
2となった。
このことから、紫外光が被照射物Sによって吸収されない限り、第1反射ミラー51又は第2反射ミラー52によって繰り返し反射されるため、被照射物Sの表面全体を効率よく照射できることが分かった。
【0030】
このように、本実施形態においては、反射ミラー50によって、UVCランプ20から出射された紫外光がケース10の内部空間に閉じ込められ、紫外光が透過可能な載置板40上の被照射物Sに対して様々な方向から紫外光が照射されるように構成されている。従って、本実施形態の構成によれば、被照射物Sがスマートフォンのような板状の形状を呈していても、被照射物S全体を短時間で隅々まで確実に殺菌することが可能となる。また、被照射物Sに対して様々な方向から紫外光が照射されるため、被照射物Sが眼鏡のような複雑な形状のものであっても、被照射物S全体を短時間で隅々まで確実に殺菌することができる。
【0031】
以上が本実施形態の説明であるが、本発明は、上記の構成に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内において様々な変形が可能である。
【0032】
例えば、本実施形態の光照射装置1においては、第1空間R1内の1つの被照射物Sに対して紫外光を照射するものとして説明したが、このような構成に限定されるものではなく、第1空間R1内に複数の被照射物Sを配置して、これらに対して同時に紫外光を照射してもよい。
【0033】
また、本実施形態の載置板40は、石英ガラスから形成されるとしたが、紫外光を透過するものであればよく、例えば、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等を使用することもできる。
【0034】
また、本実施形態においては、一対のUVCランプ20が載置板40のX軸方向に平行な二辺の縁部に沿って配置されているとしたが、このような構成に限定されるものではない。第2空間R2に配置されたUVCランプ20からの紫外光の一部が第1空間R1に入るように構成すればよく、例えば、1本のUVCランプ20が載置板40のX軸方向に平行な一辺の縁部に沿って配置されてもよく、3本以上のUVCランプ20が配置されてもよい。
また、本実施形態においては、一対のUVCランプ20は、載置板40の下側(Z軸方向-側)の第2空間R2に配置されるものとしたが、第1空間R1に配置されてもよく、この場合、第1空間R1に配置されたUVCランプ20からの紫外光の一部が第2空間R2に入るように、載置板40のX軸方向に平行な二辺の縁部に沿って配置すればよい。また、一方のUVCランプ20を第2空間R2に配置し、他方のUVCランプ20を第1空間R1に配置することもできる。つまり、一対のUVCランプ20は、第1空間R1又は第2空間R2の少なくともいずれか一方に配置すればよい。
【0035】
(第2の実施形態)
図4は、本発明の第2の実施形態に係る殺菌用光照射装置2(以下、「光照射装置2」という。)の構成を示す模式図であり、
図4(a)は、光照射装置2をY軸方向から見たときの透視図であり、
図4(b)は、光照射装置2をX軸方向から見たときの透視図である。本実施形態の光照射装置2は、一対のUVCランプ20A(第1光源)、20B(第2光源)が、第1空間R1の上側略中央部と第2空間R2の下側略中央部にそれぞれ配置されている点で、第1の実施形態の光照射装置1とは異なっている。
【0036】
図5は、本実施形態の光照射装置2のケース10内における紫外光の様子を説明する図である。
【0037】
本実施形態のUVCランプ20A、20Bも第1の実施形態のUVCランプ20と同様の構成であり、各UVCランプ20A、20Bに電源装置60からの電力が供給されると、各UVCランプ20A、20Bからは、殺菌作用を有し、360°に拡がる紫外光が出射される。このように、本実施形態のUVCランプ20Aからは、様々な角度成分の紫外光が第1空間R1に出射され(
図5の光線L1)、UVCランプ20Bからは、様々な角度成分の紫外光が第2空間R2に出射される(
図5の光線L2)。
そして、UVCランプ20Aから第1空間R1に出射される光線L1は、被照射物Sに直接的に入射するか、或いは第1反射ミラー51又は第2反射ミラー52に反射されて被照射物Sに入射する。また、被照射物Sに入射した紫外光の一部は被照射物Sの表面で反射され、さらに第1反射ミラー51又は第2反射ミラー52に反射されて被照射物Sに入射する。このように、UVCランプ20Aから第1空間R1に出射される光線L1が、第1反射ミラー51又は第2反射ミラー52、或いは被照射物Sで反射を繰り返す結果、第1空間R1に露出している被照射物Sの表面全体に紫外光が照射され、殺菌される。
また、UVCランプ20Bから第2空間R2に入る光線L2は、載置板40を透過して被照射物Sに直接的に入射するか、或いは第2反射ミラー52に反射されて載置板40を透過して被照射物Sに入射する。また、被照射物Sに入射した紫外光の一部は被照射物Sの表面で反射され、さらに第2反射ミラー52に反射されて被照射物Sに入射する。このように、UVCランプ20Bから第2空間R2に入る光線L2が、第2反射ミラー52、或いは被照射物Sで反射を繰り返す結果、載置板40と当接している被照射物Sの表面(当接面)全体に紫外光が照射され、殺菌される。
【0038】
このように、本実施形態においても、反射ミラー50によって、UVCランプ20A、20Bから出射された紫外光がケース10の内部空間に閉じ込められ、紫外光が透過可能な載置板40上の被照射物Sに対して様々な方向から紫外光が照射されるように構成されている。従って、本実施形態の構成によれば、被照射物Sがスマートフォンのような板状の形状を呈していても、被照射物S全体を短時間で隅々まで確実に殺菌することが可能となる。また、被照射物Sに対して様々な方向から紫外光が照射されるため、被照射物Sが眼鏡のような複雑な形状のものであっても、被照射物S全体を短時間で隅々まで確実に殺菌することができる。
なお、本実施形態においては、一対のUVCランプ20A、20Bが、第1空間R1の上側略中央部と第2空間R2の下側略中央部にそれぞれ配置されているとしたが、このような構成に限定されるものではない。UVCランプ20Aからの紫外光が第1空間R1に露出している被照射物Sの表面全体に照射されればよく、UVCランプ20Aは第1空間R1の任意の位置に配置することができる。また、UVCランプ20Bからの紫外光が載置板40と当接している被照射物Sの表面(当接面)全体に照射されればよく、UVCランプ20Bは第2空間R2の任意の位置に配置することができる。
【0039】
(第3の実施形態)
図6は、本発明の第3の実施形態に係る殺菌用光照射装置3(以下、「光照射装置3」という。)の構成と、光照射装置3のケース10内における紫外光の様子を説明する模式図である。本実施形態の光照射装置3は、載置板40Aの裏面42AがUVCランプ20からの紫外光を拡散させる光拡散面となっている点で、第1の実施形態の光照射装置1とは異なっている。
【0040】
より具体的には、本実施形態の載置板40Aは、板状の石英ガラスからなり、表面41Aは被照射物Sが載置される載置面となっており、裏面42Aは、サンドブラスト処理(例えば、100番から1000番)された、不連続な凹凸面からなる光拡散面となっている。
【0041】
本実施形態においても、第1の実施形態と同様、各UVCランプ20に電源装置60からの電力が供給されると、各UVCランプ20からは、殺菌作用を有し、360°に拡がる紫外光が出射される。このように、UVCランプ20からは、様々な角度成分の紫外光が出射されるため、紫外光の一部は載置板40Aの縁部から第1空間R1に入り(
図6の光線L1)、他の一部は第2空間R2を進む(
図6の光線L2)。
そして、第1空間R1に入る光線L1は、被照射物Sに直接的に入射するか、或いは第1反射ミラー51又は第2反射ミラー52に反射されて被照射物Sに入射する。また、被照射物Sに入射した紫外光の一部は被照射物Sの表面で反射され、さらに第1反射ミラー51又は第2反射ミラー52に反射されて被照射物Sに入射する。このように、第1空間R1に入る光線L1が、第1反射ミラー51又は第2反射ミラー52、或いは被照射物Sで反射を繰り返す結果、第1空間R1に露出している被照射物Sの表面全体に紫外光が照射され、殺菌される。
また、第2空間R2に入る光線L2は、載置板40Aを透過して被照射物Sに直接的に入射するか、或いは第2反射ミラー52に反射されて載置板40Aを透過して被照射物Sに入射する。また、本実施形態においては、載置板40Aの裏面42Aが光拡散面となっているため、載置板40Aの裏面42Aに入射する紫外光の一部が裏面42Aによって拡散され(
図6の光線L2´)、さらに第2反射ミラー52に反射されて被照射物Sに入射する。このように、本実施形態においては、第2空間R2に入る光線L2及び裏面42Aによって拡散された光線L2´が、第2反射ミラー52、或いは被照射物Sで反射を繰り返す結果、載置板40Aと当接している被照射物Sの表面(当接面)全体に紫外光が照射され、殺菌される。
【0042】
(第3の実施形態の光照射装置3の効果確認実験)
図7は、本実施形態の光照射装置3の効果を確認するために、発明者が行った効果確認実験の実験モデルを示す模式図である。
図7に示すように、本実験においては、載置板40Aの表面41A上に、被照射物Sに見立てた遮光スクリーンSCを配置し、遮光スクリーンSCに形成された開口APから出射される紫外光の強度を光強度計によって測定し、単位面積当たりの積算光量を求めた。なお、
図7の各矢印は、一方(Y軸方向-側)のUVCランプ20から出射される紫外光の光線を模式的に示すものである。
図3に示すように、UVCランプ20からは、様々な角度成分の紫外光が出射され、遮光スクリーンSCには、載置板40Aを透過した直接光(光線L11)と、第2反射ミラー52に反射されて載置板40Aを透過した間接光(光線L12)と、裏面42Aによって拡散され、第2反射ミラー52に反射されて載置板40Aを透過した間接光(光線L13)が入射する。
そして、この場合の紫外光の強度を光強度計によって測定し、UVCランプ20を60秒間点灯させたときの、単位面積当たりの積算光量(積分値)を求めると、11mJ/cm
2となった。
このことから、被照射物Sの表面(当接面)は、11mJ/cm
2の光量で照射できることが分かった。これは、
図3に示す、「第1の実施形態の光照射装置1の効果確認実験」と比較すると11倍の光量であり、光線L13の影響と考えられるが、この結果から載置板40Aの裏面42Aを光拡散面とすることの有効性が確認できた。
また、遮光スクリーンSCを取り外して、光強度計のみ設置し、同様の測定を行ったところ、UVCランプ20を60秒間点灯させたときの、単位面積当たりの積算光量(積分値)は、21mJ/cm
2となった。
このことから、紫外光が被照射物Sによって吸収されない限り、第1反射ミラー51又は第2反射ミラー52によって繰り返し反射されるため、被照射物Sの表面全体を効率よく照射できることが分かった。また、
図3に示す、「第1の実施形態の光照射装置1の効果確認実験」と比較すると約2倍の光量であり、この結果から載置板40Aの裏面42Aを光拡散面とすることの有効性が確認できた。
【0043】
このように、本実施形態においても、反射ミラー50によって、UVCランプ20から出射された紫外光がケース10の内部空間に閉じ込められ、紫外光が透過可能な載置板40A上の被照射物Sに対して様々な方向から紫外光が照射されるように構成されている。従って、本実施形態の構成によれば、被照射物Sがスマートフォンのような板状の形状を呈していても、被照射物S全体を短時間で隅々まで確実に殺菌することが可能となる。また、被照射物Sに対して様々な方向から紫外光が照射されるため、被照射物Sが眼鏡のような複雑な形状のものであっても、被照射物S全体を短時間で隅々まで確実に殺菌することができる。
なお、本実施形態においては、載置板40Aの裏面42Aが光拡散面になっているとしたが、このような構成に限定されるものではなく、載置板40Aの表面41Aあるいは表面41Aと裏面42Aの両面が光拡散面になっていてもよい。
【0044】
なお、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0045】
1 :殺菌用光照射装置(光照射装置)
2 :殺菌用光照射装置(光照射装置)
3 :殺菌用光照射装置(光照射装置)
10 :ケース
11 :蓋体部
12 :本体部
13 :ヒンジ部
20 :UVCランプ
20A :UVCランプ
20B :UVCランプ
40 :載置板
40A :載置板
41 :表面
41A :表面
42 :裏面
42A :裏面50 :反射ミラー
51 :第1反射ミラー
52 :第2反射ミラー
60 :電源装置
65 :ケーブル