(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151489
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】物質の混合方法、ベイプリキッド、ベイプリキッドの生成装置
(51)【国際特許分類】
A24B 15/167 20200101AFI20220929BHJP
B01F 23/41 20220101ALI20220929BHJP
B01F 23/40 20220101ALI20220929BHJP
【FI】
A24B15/167
B01F3/08 A
B01F3/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021126447
(22)【出願日】2021-08-02
(31)【優先権主張番号】P 2021052564
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】521128775
【氏名又は名称】C&H株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127306
【弁理士】
【氏名又は名称】野中 剛
(72)【発明者】
【氏名】橋本 翔太
【テーマコード(参考)】
4B043
4G035
【Fターム(参考)】
4B043BB08
4B043BB22
4B043BC03
4B043BC14
4B043BC20
4B043BC22
4G035AB38
4G035AB40
(57)【要約】
【課題】 脂溶性物質の結晶が析出しにくい物質の混合方法などを提供する。
【解決手段】 混合方法は、第1液体と、脂溶性物質とを70℃以上に温めた状態で混ぜ合わせる第1混合工程と、第1混合工程で得られた物質に、第1添加物が加えられる第1添加物投入工程と、第1添加物投入工程で得られた物質に、第2液体が加えられ、攪拌が行われる第2混合工程を実行する。第1液体は、PG(プロピレングリコール)で構成される。第2液体は、VG(植物性グリセリン)で構成される。脂溶性物質は、CBD(カンナビジオール)を主とするカンナビノイド類で構成される。第1添加物は、ハンセン溶解度パラメータにおける水素結合項が、第1液体の水素結合項と脂溶性物質の水素結合項の間の値を有し、ハンセン溶解度パラメータにおける分極項が、第1液体の分極項と脂溶性物質の分極項の間の値を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1液体と、脂溶性物質とを70℃以上に温めた状態で混ぜ合わせる第1混合工程と、
前記第1液体と前記脂溶性物質に、第1添加物が加えられる第1添加物投入工程と、
前記第1液体と前記脂溶性物質と第1添加物を混ぜ合わせた物質に、第2液体が加えられ、攪拌が行われる第2混合工程を実行する混合方法であって、
前記第1液体は、PG(プロピレングリコール)で構成され、
前記第2液体は、VG(植物性グリセリン)で構成され、
前記脂溶性物質は、CBD(カンナビジオール)を主とするカンナビノイド類で構成され、
前記第1添加物は、ハンセン溶解度パラメータにおける水素結合項が、前記第1液体の前記水素結合項と前記脂溶性物質の前記水素結合項の間の値を有し、前記ハンセン溶解度パラメータにおける分極項が、前記第1液体の前記分極項と前記脂溶性物質の前記分極項の間の値を有する、混合方法。
【請求項2】
前記第1添加物は、トリアセチン、L-メントール、p―ヒドロキシ安息香酸エチル、安息香酸ブチルの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の混合方法。
【請求項3】
前記第1添加物投入工程では、前記第2混合工程で得られた物質に対して、4重量パーセント以上6重量パーセント以下の前記第1添加物の投入が行われる、請求項1または請求項2に記載の混合方法。
【請求項4】
前記第2混合工程を実行する前に、前記第1液体と前記脂溶性物質と第1添加物を混ぜ合わせた物質に、乳化剤が加えられ、攪拌が行われる乳化剤投入工程を実行する、請求項1~請求項3のいずれかに記載の混合方法。
【請求項5】
前記第1混合工程と、前記第1添加物投入工程は、同時に行われる、請求項1~請求項4のいずれかに記載の混合方法。
【請求項6】
前記第2混合工程で得られた物質は、電子タバコのベイプリキッドとして用いられ、
前記混合方法は、前記第1添加物投入工程の前若しくは前記第1添加物投入工程の後、第2添加物が加えられる第2添加物投入工程を実行し、
前記第2添加物は、香料で構成される、請求項1~請求項5のいずれかに記載の混合方法。
【請求項7】
濃度が10%以上30%以下になるように、前記脂溶性物質が用意され、
前記濃度は、前記脂溶性物質の含有量を前記第2混合工程で得られた物質の容積で割ったものに100を乗算して得られる値である、請求項1~請求項6のいずれかに記載の混合方法。
【請求項8】
前記第1添加物投入工程では、前記脂溶性物質の濃度が高い場合に、前記脂溶性物質の濃度が低い場合に比べて、多くの第1添加物が加えられる、請求項1~請求項7のいずれかに記載の混合方法。
【請求項9】
PG(プロピレングリコール)で構成された第1液体と、
CBD(カンナビジオール)を主とするカンナビノイド類で構成された脂溶性物質と、
ハンセン溶解度パラメータにおける水素結合項が、前記第1液体の前記水素結合項と前記脂溶性物質の前記水素結合項の間の値を有し、前記ハンセン溶解度パラメータにおける分極項が、前記第1液体の前記分極項と前記脂溶性物質の前記分極項の間の値を有する第1添加物と、
VG(植物性グリセリン)で構成された第2液体とが、混ぜ合わさって構成される、電子タバコのベイプリキッド。
【請求項10】
PG(プロピレングリコール)で構成された第1液体と、
CBD(カンナビジオール)を主とするカンナビノイド類で構成された脂溶性物質と、
ハンセン溶解度パラメータにおける水素結合項が、前記第1液体の前記水素結合項と前記脂溶性物質の前記水素結合項の間の値を有し、前記ハンセン溶解度パラメータにおける分極項が、前記第1液体の前記分極項と前記脂溶性物質の前記分極項の間の値を有する第1添加物と、
乳化剤と、
VG(植物性グリセリン)で構成された第2液体とが、混ぜ合わさって構成される、電子タバコのベイプリキッド。
【請求項11】
PG(プロピレングリコール)で構成された第1液体と、
CBD(カンナビジオール)を主とするカンナビノイド類で構成された脂溶性物質と、
ハンセン溶解度パラメータにおける水素結合項が、前記第1液体の前記水素結合項と前記脂溶性物質の前記水素結合項の間の値を有し、前記ハンセン溶解度パラメータにおける分極項が、前記第1液体の前記分極項と前記脂溶性物質の前記分極項の間の値を有する第1添加物と、
VG(植物性グリセリン)で構成された第2液体と、
少なくとも前記第1液体と前記脂溶性物質を混ぜ合わせるために使用される容器と、
前記容器を温めるために使用される熱伝達部とを備える、電子タバコのベイプリキッドの生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物質の混合方法などに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1のように、電子タバコ用液体組成物などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、CBD(カンナビジオール)などの脂溶性物質を高濃度で含有させる場合には、結晶の析出を回避する必要があった
【0005】
したがって本発明の目的は、脂溶性物質の結晶が析出しにくい物質の混合方法などを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る混合方法は、第1液体と、脂溶性物質とを70℃以上に温めた状態で混ぜ合わせる第1混合工程と、第1混合工程で得られた物質に、第1添加物が加えられる第1添加物投入工程と、第1添加物投入工程で得られた物質に、第2液体が加えられ、攪拌が行われる第2混合工程を実行する。
第1液体は、PG(プロピレングリコール)で構成される。
第2液体は、VG(植物性グリセリン)で構成される。
脂溶性物質は、CBD(カンナビジオール)を主とするカンナビノイド類で構成される。
第1添加物は、ハンセン溶解度パラメータにおける水素結合項が、第1液体の水素結合項と脂溶性物質の水素結合項の間の値を有し、ハンセン溶解度パラメータにおける分極項が、第1液体の分極項と脂溶性物質の分極項の間の値を有する。
【0007】
当該第2混合工程で得られた物質には、脂溶性物質が高濃度含まれるが、第1添加物が混合されていることにより、当該第2混合工程で得られた物質が生成されてから一定時間が経過しても、当該脂溶性物質が結晶化する可能性を低くできる。
このため、第1液体と第2液体の構成比を大きく変えずに、高濃度の脂溶性物質を含む物質(ベイプリキッドなど)を生成することが可能になる。第1液体と第2液体の構成比を大きく変えないので、当該第2混合工程で得られた物質を電子タバコのベイプリキッドとして使用した際の煙の香味、煙量を所望する程度に容易に設定することができる。
【0008】
好ましくは、第1添加物は、トリアセチン、L-メントール、p―ヒドロキシ安息香酸エチル、安息香酸ブチルの少なくとも1つを含む。
【0009】
さらに好ましくは、第1添加物投入工程では、第2混合工程で得られた物質に対して、4重量パーセント以上6重量パーセント以下の第1添加物の投入が行われる。
【0010】
混合方法は、第2混合工程を実行する前に、第1液体と脂溶性物質と第1添加物を混ぜ合わせた物質に、乳化剤が加えられ、攪拌が行われる乳化剤投入工程を実行してもよい。
【0011】
乳化剤投入工程を第2混合工程の前に行うことで、脂溶性物質が高濃度に含まれる場合でも、結晶化及び分離が起きにくく出来る。
【0012】
第1混合工程と、第1添加物投入工程は、同時に行われてもよい。
【0013】
さらに好ましくは、第2混合工程で得られた物質は、電子タバコのベイプリキッドとして用いられる。
混合方法は、第1添加物投入工程の前若しくは第1添加物投入工程の後、第2添加物が加えられる第2添加物投入工程を実行する。
第2添加物は、香料で構成される。
【0014】
さらに好ましくは、濃度が10%以上30%以下になるように、脂溶性物質が用意される。
当該濃度は、脂溶性物質の含有量を第2混合工程で得られた物質の容積で割ったものに100を乗算して得られる値である。
【0015】
さらに好ましくは、第1添加物投入工程では、脂溶性物質の濃度が高い場合に、脂溶性物質の濃度が低い場合に比べて、多くの第1添加物が加えられる。
【0016】
本発明に係る電子タバコのベイプリキッドは、PG(プロピレングリコール)で構成された第1液体と、CBD(カンナビジオール)を主とするカンナビノイド類で構成された脂溶性物質と、ハンセン溶解度パラメータにおける水素結合項が、第1液体の水素結合項と脂溶性物質の水素結合項の間の値を有し、ハンセン溶解度パラメータにおける分極項が、第1液体の分極項と脂溶性物質の分極項の間の値を有する第1添加物と、VG(植物性グリセリン)で構成された第2液体とが、混ぜ合わさって構成される。
【0017】
本発明に係る電子タバコのベイプリキッドは、PG(プロピレングリコール)で構成された第1液体と、CBD(カンナビジオール)を主とするカンナビノイド類で構成された脂溶性物質と、ハンセン溶解度パラメータにおける水素結合項が、第1液体の水素結合項と脂溶性物質の水素結合項の間の値を有し、ハンセン溶解度パラメータにおける分極項が、第1液体の分極項と脂溶性物質の分極項の間の値を有する第1添加物と、乳化剤と、VG(植物性グリセリン)で構成された第2液体とが、混ぜ合わさって構成される。
【0018】
本発明に係る電子タバコのベイプリキッドの生成装置は、PG(プロピレングリコール)で構成された第1液体と、CBD(カンナビジオール)を主とするカンナビノイド類で構成された脂溶性物質と、ハンセン溶解度パラメータにおける水素結合項が、第1液体の水素結合項と脂溶性物質の水素結合項の間の値を有し、ハンセン溶解度パラメータにおける分極項が、第1液体の分極項と脂溶性物質の分極項の間の値を有する第1添加物と、VG(植物性グリセリン)で構成された第2液体と、少なくとも第1液体と脂溶性物質を混ぜ合わせるために使用される容器と、容器を温めるために使用される熱伝達部とを備える。
【発明の効果】
【0019】
以上のように本発明によれば、脂溶性物質の結晶が析出しにくい物質の混合方法などを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本実施形態における混合装置の構成図で、第1液体と第2液体と脂溶性物質と第1添加物と第2添加物とが混ぜ合わさった状態のものある。
【
図2】本実施形態における混合方法の手順を示すフローチャートである。
【
図3】スターラーで構成された攪拌部を含む混合装置の構成図で、第1液体と第2液体と脂溶性物質と第1添加物と第2添加物と乳化剤が混ぜ合わさった状態のものある。
【
図4】乳化剤投入工程を含む混合方法の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本実施形態について、図を用いて説明する(
図1、
図2参照)。
なお、実施形態は、以下の実施形態に限られるものではない。また、一つの実施形態に記載した内容は、原則として他の実施形態にも同様に適用される。また、各実施形態及び各変形例は、適宜組み合わせることが出来る。
【0022】
(混合装置1)
本実施形態における混合装置(電子タバコのベイプリキッドの生成装置)1は、容器10、熱伝達部20、攪拌部30、第1液体41a、第2液体41b、脂溶性物質43、第1添加物45a、第2添加物45bを備える(
図1参照)。
混合装置1は、電子タバコのベイプリキッドを生成するためなどに用いられる。
【0023】
(容器10)
容器10は、ベイプリキッドを生成するための材料を混ぜ合わせるための容器である。
容器10は、少なくとも第1液体41aと脂溶性物質43を混ぜ合わせるために使用される。
【0024】
(熱伝達部20)
熱伝達部20は、容器10に熱を伝達する装置であり、後述する第1混合工程で容器10を70℃以上に温めるために使用される。
熱伝達部20は、例えば、火を使った加熱装置などで構成される。
ただし、熱伝達部20は、電熱器など、他の装置で構成されてもよい。
【0025】
(攪拌部30)
攪拌部30は、攪拌棒などで構成され、容器10に投入された第1液体41aと脂溶性物質43の混ぜ合わせる際などの攪拌に用いられる。
ただし、攪拌は、攪拌棒を用いる形態に限らず、他の方法で行ってもよい。
例えば、攪拌部30は、スターラー装置30aと回転子30bを含む構成であってもよい。
【0026】
(第1液体41a)
第1液体41aは、PG(プロピレングリコール)で構成される。
【0027】
(第2液体41b)
第2液体41bは、VG(植物性グリセリン)で構成される。
例えば、3:7、若しくは4:6の容積比になるように第1液体41aと第2液体41bが用意される。ただし、この容積比は、他の値であってもよい。
【0028】
(脂溶性物質43)
脂溶性物質43は、CBD(カンナビジオール)を主とするカンナビノイド類で構成される。
濃度が10%以上30%以下になるように脂溶性物質43が用意される。
ここでいう濃度は、脂溶性物質43の含有量(mg)÷後述する攪拌工程後の物質(第1液体41a、第2液体41b、脂溶性物質43、第1添加物45a、第2添加物45bの混合物)の容積(ml)×100で表される。
【0029】
(第1添加物45a)
第1添加物45aは、25℃の条件下で、ハンセン溶解度パラメータにおける水素結合項δHが、第1液体41aの当該ハンセン溶解度パラメータにおける水素結合項δHと脂溶性物質43の当該ハンセン溶解度パラメータにおける水素結合項δHの間の値(9~10.1)を有し、当該ハンセン溶解度パラメータにおける分極項δPが、第1液体41aの当該ハンセン溶解度パラメータにおける分極項δPと脂溶性物質43の当該ハンセン溶解度パラメータにおける分極項δPの間の値(4.5~6)を有する。また、第1添加物45aは、25℃の条件下で、ハンセン溶解度パラメータにおける分散項δDが、16~18.2の値を有するのが望ましい。
例えば、第1添加物45aは、トリアセチン、L-メントール、p―ヒドロキシ安息香酸エチル、安息香酸ブチルの少なくとも1つを含む。
第1添加物45aは、後述する攪拌工程後の物質(第1液体41a、第2液体41b、脂溶性物質43、第1添加物45a、第2添加物45bの混合物)に対して、4重量パーセント以上6重量パーセント以下だけ用いられる。
第1添加物45aを4~6重量パーセント程度にすることで、濃度30%程度の脂溶性物質43を結晶化せずに第1液体41aと第2液体41bの混合液に配合することが出来る。
【0030】
(第2添加物45b)
第2添加物45bは、香料で構成される。
【0031】
従って、本実施形態における電子タバコのベイプリキッドは、少なくとも、PG(プロピレングリコール)で構成された第1液体41aと、VG(植物性グリセリン)で構成された第2液体41bと、CBD(カンナビジオール)を主とするカンナビノイド類で構成された脂溶性物質43と、ハンセン溶解度パラメータにおける水素結合項δHが、第1液体41aの水素結合項δHと脂溶性物質43の水素結合項δHの間の値を有し、当該ハンセン溶解度パラメータにおける分極項δPが、第1液体41aの分極項δPと脂溶性物質43の分極項δPの間の値を有する第1添加物45aとが、混ぜ合わさって構成される。
【0032】
(混合方法)
次に、第1液体41aなどに基づいてベイプリキッドを生成する混合方法の手順について説明する(
図2参照)。
まず、容器10に第1液体41aと脂溶性物質43が投入される。
熱伝達部20によって70℃以上に温めた状態で、攪拌部30を使って、容器10内の物質の混ぜ合わせが行われる(第1混合工程S11)。
第1混合工程S11の後、容器10に第1添加物45aが投入される(第1添加物投入工程S12)。すなわち、第1混合工程S11で得られた物質(第1液体41a、脂溶性物質43)に、第1添加物45aが加えられる。
なお、第1混合工程S11と第1添加物投入工程S12は、同時に行われてもよい。この場合、第1液体41a、脂溶性物質43、第1添加物45aを容器10に投入し、熱伝達部20によって70℃以上に温めた状態で、攪拌部30を使って、容器10内の物質の混ぜ合わせが行われる。
【0033】
第1添加物投入工程S12の前若しくは第1添加物投入工程S12の後、容器10に第2添加物45bが投入される(第2添加物投入工程S13)。すなわち、第1混合工程S11で得られた物質(第1液体41a、脂溶性物質43)に、若しくは、第1添加物投入工程S12で得られた物質(第1液体41a、脂溶性物質43、第1添加物45a)に、第2添加物45bが加えられる。
ただし、第2添加物投入工程S13は省略してもよい。
第1添加物投入工程S12と第2添加物投入工程S13の後、容器10に第2液体41bが投入され、攪拌部30を使って、容器10内の混ぜ合わせが行われる(第2混合工程S14)。すなわち、第1添加物投入工程S12と第2添加物投入工程S13で得られた物質(第1液体41a、脂溶性物質43、第1添加物45a、第2添加物45b)に、第2液体41bが加えられ、攪拌部30を使って、攪拌される。
第2混合工程S14により、脂溶性物質43を含むベイプリキッドが生成される。
なお、第1添加物投入工程S12と、第2添加物投入工程S13と、第2混合工程S14は、熱伝達部20によって温められた状態で行われてもよいし、温められない状態で行われてもよい。
また、第2添加物投入工程S13は、第2混合工程S14の後に行われてもよい。
【0034】
(第1添加物45aを混合させることの効果)
トリアセチンなど第1添加物45aを加えない状態の第1液体41aと第2液体41bの混合液(第1の混合液)のハンセン溶解度パラメータにおける水素結合項δHは、第1液体41aの当該ハンセン溶解度パラメータにおける水素結合項δHと、第2液体41bの当該ハンセン溶解度パラメータにおける水素結合項δHの間の値を示す。すなわち、当該第1の混合液の当該ハンセン溶解度パラメータにおける水素結合項δHは、PG(プロピレングリコール)で構成された第1液体41aの当該ハンセン溶解度パラメータにおける水素結合項δHよりも高い値を示す。一方、脂溶性物質43の当該ハンセン溶解度パラメータにおける水素結合項δHは、PG(プロピレングリコール)で構成された第1液体41aの当該ハンセン溶解度パラメータにおける水素結合項δHよりも低い値を示す。
【0035】
また、当該第1の混合液のハンセン溶解度パラメータにおける分極項δPは、第1液体41aの当該ハンセン溶解度パラメータにおける分極項δPと、第2液体41bの当該ハンセン溶解度パラメータにおける分極項δPの間の値を示す。すなわち、当該第1の混合液の当該ハンセン溶解度パラメータにおける分極項δPは、PG(プロピレングリコール)で構成された第1液体41aの当該ハンセン溶解度パラメータにおける分極項δPよりも高い値を示す。一方、脂溶性物質43の当該ハンセン溶解度パラメータにおける分極項δPは、PG(プロピレングリコール)で構成された第1液体41aの当該ハンセン溶解度パラメータにおける分極項δPよりも低い値を示す。
【0036】
このため、当該第1の混合液に脂溶性物質43を溶かしても、結晶化が起こりやすい。
【0037】
トリアセチンなど第1添加物45aを加えた状態の第1液体41aと第2液体41bの混合液(第2の混合液)は、第1の混合液と比べて、当該ハンセン溶解度パラメータにおける水素結合項δH及び分極項δPが低い値を示す。特に、第1添加物45aの含有割合(重量パーセント)を高めると、第2の混合液の当該ハンセン溶解度パラメータにおける水素結合項δH及び分極項δPが低い値、すなわち、脂溶性物質43の当該ハンセン溶解度パラメータにおける水素結合項δH及び分極項δPに近い値を示す。このため、当該第1の混合液に脂溶性物質43を溶かした形態と比べて、当該第2の混合液に脂溶性物質43を溶かしても、結晶化が起こりにくい。
【0038】
当該ベイプリキッドには、脂溶性物質43が高濃度(10%以上)含まれるが、第1添加物45aが混合されていることにより、ベイプリキッドが生成されてから一定時間が経過しても、当該脂溶性物質43が結晶化する可能性を低くできる。
このため、第1液体41aと第2液体41bの構成比を大きく変えずに、高濃度の脂溶性物質43を含むベイプリキッドを生成することが可能になる。第1液体41aと第2液体41bの構成比を大きく変えないので、当該ベイプリキッドを電子タバコに使用した際の煙の香味、煙量を所望する程度に容易に設定することができる。
【0039】
脂溶性物質43の濃度が高い場合には、脂溶性物質43の濃度が低い場合に比べて、第2の混合液の組成を脂溶性物質43の組成に近づける必要がある。このため、脂溶性物質43の濃度が高い場合には、脂溶性物質43の濃度が低い場合に比べて、第1添加物45aの含有割合を高める(多くの第1添加物45aを加える)のが望ましい。
【0040】
(混合方法の応用例)
第2混合工程S14の前段階で、ショ糖エステルなどの乳化剤47を投入する乳化剤投入工程S15が行われてもよい。
例えば、以下のような形態が考えられる(
図3、
図4参照)。
第1混合工程S11と第1添加物投入工程S12が同時に行われる。すなわち、第1液体41aと脂溶性物質43と第1添加物45aが容器10に投入され、70℃以上に温めた状態で混ぜ合わされる。その後に、乳化剤投入工程S15として、乳化剤47が4~6重量%だけ投入され、乳化剤47が完全に溶解するまで攪拌が行われる。その後、第2混合工程S14が行われ、スターラー装置30aを含む攪拌部30を使って、1000~1500rpmの回転数で攪拌が行われる。その後に、第2添加物投入工程S13が行われる。
【0041】
(乳化剤投入工程S15を追加することの効果)
乳化剤投入工程S15を第2混合工程S14の前に行うことで、脂溶性物質43が高濃度(例えば、30重量%)に含まれる場合でも、結晶化及び分離が起きにくく出来る。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲及び要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0043】
1 混合装置(電子タバコのベイプリキッドの生成装置)
10 容器
20 熱伝達部
30 攪拌部
30a スターラー装置
30b 回転子
41a 第1液体
41b 第2液体
43 脂溶性物質
45a 第1添加物
45b 第2添加物
47 乳化剤
S11 第1混合工程
S12 第1添加物投入工程
S13 第2添加物投入工程
S14 第2混合工程