(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151491
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】低仕事関数材料で修飾されたカーボンナノ材料で機能化された針先、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01J 1/304 20060101AFI20220929BHJP
C01B 32/168 20170101ALI20220929BHJP
C01B 32/18 20170101ALI20220929BHJP
B81B 1/00 20060101ALI20220929BHJP
B81C 99/00 20100101ALI20220929BHJP
B82Y 30/00 20110101ALI20220929BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20220929BHJP
H01J 9/02 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
H01J1/304
C01B32/168
C01B32/18
B81B1/00
B81C99/00
B82Y30/00
B82Y40/00
H01J9/02 B
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021131588
(22)【出願日】2021-08-12
(31)【優先権主張番号】202110328379.9
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】512298672
【氏名又は名称】国家納米科学中心
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】徐建勲
(72)【発明者】
【氏名】ツァオ ユーリャン
(72)【発明者】
【氏名】グェァ イーフェイ
【テーマコード(参考)】
3C081
4G146
5C227
【Fターム(参考)】
3C081AA13
3C081AA18
3C081BA09
3C081BA22
3C081CA28
3C081DA32
3C081EA21
4G146AA07
4G146AA11
4G146AA16
4G146AA17
4G146AB04
4G146AB06
4G146AB08
4G146AC17B
4G146AD15
4G146AD17
4G146AD29
4G146AD40
4G146BA04
4G146CB16
4G146CB19
4G146CB23
4G146CB26
4G146CB34
4G146DA07
5C227AA02
5C227AA08
5C227AB03
5C227AB13
5C227AB15
5C227AC07
5C227AC08
5C227AC15
5C227AC16
5C227AC17
5C227AC18
5C227AD02
5C227AD07
5C227AD14
5C227AD15
5C227GG08
5C227GG18
5C227HH07
5C227HH08
5C227HH15
(57)【要約】 (修正有)
【課題】低仕事関数材料で修飾されたカーボンナノ材料で機能化された針先であって、より低い電子放出障壁を有し、電子放出に必要な電界強度を効果的に低減し、放出電流及び放出効率を向上させることができる針先を提供する。また、該針先の製造方法を提供する。
【解決手段】針先は、カーボンナノ材料が共有結合によって針先の材料と結合してなるものであり、前記カーボンナノ材料の内部または外面は低仕事関数材料で修飾されており、そのうち、前記針先の材料は金属であり、タングステン、鉄、コバルト、ニッケル、チタンから選ばれた1種または複数種であり、前記カーボンナノ材料はカーボンナノコーンまたはカーボンナノチューブであり、前記カーボンナノ材料の尖端と金属である前記針先との配向は一致し、前記低仕事関数材料は、金属、金属炭化物、金属酸化物、金属ホウ化物、金属窒化物及び金属内包フラーレンから選ばれた1種または複数種である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低仕事関数材料で修飾されたカーボンナノ材料で機能化された針先であって、
カーボンナノ材料が共有結合によって針先の材料と結合してなり、
前記カーボンナノ材料の内部または外面が低仕事関数材料で修飾されており、
前記針先の材料が金属であり、タングステン、鉄、コバルト、ニッケル、チタンから選ばれた1種または複数種であり、
前記カーボンナノ材料が、カーボンナノコーンまたはカーボンナノチューブであり、
前記低仕事関数材料が、金属、金属炭化物、金属酸化物、金属ホウ化物、金属窒化物及び金属内包フラーレンから選ばれた1種または複数種である
ことを特徴とする、低仕事関数材料で修飾されたカーボンナノ材料で機能化された針先。
【請求項2】
前記カーボンナノ材料の尖端と金属である前記針先との配向が一致し、
及び/または、前記カーボンナノコーンが層状グラファイト構造からなる錐状のカーボンナノ材料であり、
及び/または、前記カーボンナノチューブが層状グラファイト構造からなる管状のカーボンナノ材料であり、
及び/または、前記低仕事関数材料がBa、Ca、Yb、WC、HfC、NbC、TaC、Ni3C、LaB6、CeB6、TiN、GaN、Sr3N2、Ca@C82、Lu2C2@C82、Sc3N@C80、BaO、ZnO、ZrO2から選ばれた1種または複数種であり、
及び/または、前記針先の尖端の頂角が10~70°である
ことを特徴とする、請求項1に記載の低仕事関数材料で修飾されたカーボンナノ材料で機能化された針先。
【請求項3】
請求項1または2に記載の低仕事関数材料で修飾されたカーボンナノ材料で機能化された針先の製造方法であって、
カーボンナノ材料の内部が低仕事関数材料で修飾された場合、
(1)低仕事関数材料で針先の表面を修飾するステップと、
(2)低仕事関数材料で表面を修飾した針先の尖端にカーボンナノ材料を組み立て、電流印加またはレーザー照射により、両者の間に共有結合による界面結合を形成するステップを含み、
または、
(1)カーボンナノ材料の内部に低仕事関数材料を充填するステップと、
(2)内部に低仕事関数材料が充填されたカーボンナノ材料を針先の尖端に組み立て、電流印加またはレーザー照射により、両者の間に共有結合による界面結合を形成するステップを含む
ことを特徴とする、製造方法。
【請求項4】
イオンスパッタリング法、蒸着法、気相成長法または電気めっき法によって、針先の表面に厚さ1~100nmの低仕事関数材料を修飾することを特徴とする、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
真空気相充填法、溶融相充填法または溶液充填法によって、カーボンナノ材料の内部に低仕事関数材料を充填し、
カーボンナノ材料の粉末を反応器に置き、低仕事関数材料化合物の蒸気、溶融液または溶液と混合・接触させ、反応を2~36h維持した後、溶媒で、カーボンナノ材料に充填されなかった低仕事関数材料を洗浄し、吸引ろ過、乾燥を行うことを特徴とする、請求項3に記載の製造方法。
【請求項6】
スピンコーターで基材であるシリコンウエハにカーボンナノ材料を堆積し、表面に低仕事関数材料が修飾された針先の尖端にカーボンナノ材料を接着し、針体を別の金属体と接触させ、前記金属体と前記針体との間に電圧を印加して、前記針体に電流を流し、針の尖端部が熱を受け、接着されたカーボンナノ材料と結合することを特徴とする、請求項3に記載の製造方法。
【請求項7】
スピンコーターで基材であるシリコンウエハに、内部に低仕事関数材料が充填されたカーボンナノ材料を堆積し、針先の尖端にカーボンナノ材料を接着し、針体を別の金属体と接触させ、前記金属体と前記針体との間に電圧を印加して、前記針体に電流を流し、針の尖端部が熱を受け、接着されたカーボンナノ材料と結合することを特徴とする、請求項3に記載の製造方法。
【請求項8】
前記金属体が、円球形または台状の頂端を有し、前記金属体と針体が接触する位置の、針先の頂端からの距離が0.2~100μmであり、前記金属体及び針先の尖端の材料がいずれもタングステンであり、前記針体に流れる電流が0.04~4Aであることを特徴とする、請求項6または7に記載の製造方法。
【請求項9】
請求項1または2に記載の低仕事関数材料で修飾されたカーボンナノ材料で機能化された針先の製造方法であって、
カーボンナノ材料で機能化された針先の外面が低仕事関数材料で修飾された場合、
(1)カーボンナノ材料を針先の尖端に組み立て、電流印加またはレーザー照射により、両者の間に共有結合による界面結合を形成し、カーボンナノ材料で機能化された針先を得るステップと、
(2)前記カーボンナノ材料で機能化された針先の外面を低仕事関数材料で修飾するステップとを含む
ことを特徴とする、製造方法。
【請求項10】
ステップ(1)において、スピンコーターで基材であるシリコンウエハにカーボンナノ材料を堆積し、針先の尖端にカーボンナノ材料を接着し、針体を別の金属体と接触させ、前記金属体と前記針体との間に電圧を印加して、前記針体に電流を流し、針の尖端部が熱を受け、接着されたカーボンナノ材料と結合し、
前記金属体が円球形または台状の頂端を有し、前記金属体と針体が接触する位置の、針先の頂端からの距離が0.2~100μmであり、前記金属体及び針先の尖端の材料がいずれもタングステンであり、針体に流れる電流が0.04~4Aであり、
及び/または、ステップ(2)において、イオンスパッタリング法、蒸着法、気相成長法または電気めっき法によって、前記カーボンナノ材料で機能化された針先の外面に、厚さ1~100nmの低仕事関数材料を修飾することを特徴とする、請求項9に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属材料の機能化の分野に関し、特に低仕事関数材料で修飾されたカーボンナノ材料で機能化された針先、及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ナノ材料の新奇な物理化学的性能に基づいて、ナノ材料で機能化された針先は、電子放出源、走査型プローブ顕微鏡、真空電子デバイス、バイオ医薬品などの分野で広く使用されている。通常のナノ材料で機能化された針先は、物理的吸着力によってナノ材料(ナノワイヤー、ナノチューブなどを含む)を針先の尖端に吸着し[非特許文献1]、ナノ材料と針先の基材との間にカーボンまたはプラチナ材料を堆積して固定されたものである[非特許文献2-4]。カーボンナノチューブで機能化された針先は、上記の方法で製造され、電界放出における研究に応用される。このような機能化針先のナノ材料と金属との界面では、界面抵抗が高く、かつ、機械的強度が低いため、その実用化がかなり制限されている。本発明者の以前の特許文献では、新規なカーボンナノコーンで機能化された針先及びその製造方法が報告されており[特許文献1]、マイクロ・ナノマニピュレーターでカーボンナノコーンを金属針先の尖端に接着した後、さらに電流印加による加熱またはレーザー照射などの方式によって、カーボンナノコーンと金属針先の基材との共有結合による界面結合を得ている。この方法によって製造されたカーボンナノコーンで機能化された針先は、優れる界面性能を有し、界面接触抵抗が低く、機械的強度が大きい。カーボンナノコーンで機能化された針先の安定且つ制御可能な構造は、その電子放出源などの分野における実用化の基礎となっている。
【0003】
電子放出への応用について、放出材料の仕事関数は、電子放出の性能に影響を与える非常に重要なパラメータであり、低い仕事関数は、放出ビームの電流密度及び単色性を効果的に向上させることができる。また、仕事関数は、主に材料の種類、表面の形態、結晶の配向などの構造的要因によって制御されるものである。Swansonらは、率先して低仕事関数のジルコニア薄膜を単結晶Wの[100]面に修飾し、その仕事関数を4.5eVから2.5eVに低減することにより、放出ビームのサイズを大幅に向上させた[非特許文献5]。その後、酸化チタン薄膜[非特許文献6]及び酸化イットリウム薄膜で修飾された放出陰極[非特許文献7]についても、その低い表面仕事関数の電子放出に対する影響が理論的に予測された。Narasimhaらは、アダマンタンで修飾されたAu材料の仕事関数が5.1eVから1.6eVに低減したため、その電子放出の性能が大幅に向上したことを報告した[非特許文献8]。
【0004】
上記のように、カーボンナノコーンで機能化された針先は、安定且つ制御可能な構造を有する。しかしながら、カーボンナノコーンの尖端は、閉鎖された多層グラファイト構造であり、高い仕事関数(約4.8eV)を有し[非特許文献9]、その電子放出の性能はある程度限制されている。本発明者は、以前、溶媒蒸発法によって、内部に錐状酸化ガドリニウムが充填されたカーボンナノコーン粉末サンプルを製造することを報告した[非特許文献10]が、酸化ガドリニウムの仕事関数が高く且つ導電性が悪いため、低仕事関数のカーボンナノコーンで機能化された針先の製造に使用できない。それに比べて、一部の純金属、金属炭化物、金属ホウ化物、金属窒化物及び金属内包フラーレン(endohedral metallofullerene,EMF)などは、より低い仕事関数及びより高い導電性を有する。このような低仕事関数材料で修飾されたカーボンナノコーンで機能化された針先は、未だに報告されていない。一方、目下、金属化合物でカーボンナノチューブを修飾してなる複合材料に関する報告[非特許文献11]が多かったが、金属内包フラーレンで修飾されたカーボンナノチューブで機能化された針先は、未だに報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】徐建勳、趙宇亮、錐状ナノカーボン材料で機能化された針先及びその製造方法、中国特許公報ZL201610091160.0;Tapered Nano-carbon Material Funcionalized Needle Tip and Preparation Method Therefor,US patent No.US10823758B2.
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Houdellier,F.,et al.,Development of TEM and SEM high brightness electron guns using cold-field emission from a carbon nanotip.2015.151:p.107-115.
【非特許文献2】Zhang,H.,et al.,An ultrabright and monochromatic electron point source made of a LaB6 nanowire.Nature Nanotechnology,2016.11(3):p.273-+.
【非特許文献3】Slattery,A.D.,et al.,Efficient attachment of carbon nanotubes to conventional and high-frequency AFM probes enhanced by electron beam proceses.Nanotechnology,2013.24(23)
【非特許文献4】de Jonge,N. and J.M. Bonard,Carbon nanotube electron sources and applications.Philosophical Transactions of the Royal Society a-Mathematical Physical and Engineering Sciences,2004.362(1823):p.2239-2266.
【非特許文献5】Swanson,L.W.and G.A.Schwind,Review of ZrO/W schottky Cathode,in Handbook of Charged Particle Optics,J.Orloff,Editor.2009,CRC Press.p.1.
【非特許文献6】Hirose,K.and M.Tsukada,FIRST-PRINCIPLES CALCULATION OF THE ELECTRONIC-STRUCTURE FOR A BIELECTRODE JUNCTION SYSTEM UNDER STRONG-FIELD AND CURRENT.Physical Review B,1995.51(8):p.5278-5290.
【非特許文献7】Kobayashi,K.,First-principles study of the surface electronic structures of transition metal carbides.Japanese Journal of Applied Physics Part 1-Regular Papers Brief Communications&Review Papers,2000.39(7B):p.4311-4314.
【非特許文献8】Narasimha,K.T.,et al.,Ultralow effective work function surfaces using diamondoid monolayers.Nature Nanotechnology,2016.11:p.267-272.
【非特許文献9】Zhu,F.,et al.,Heating graphene to incandescence and the measurement of its work function by the thermionic emission method.Nano Research,2014.7(4):p.553-560.
【非特許文献10】Xu,L.L.,et al.,Investigation of the crystallization behaviors in a sub-micron space using carbon nanocones.RSC Adv.,2017.7:p.50688.
【非特許文献11】Gautam,U.K.,et al.,Recent developments in inorganicallyfilled carbon nanotubes:successes and challenges.Sci.Technol.Adv.Mater.,2010.11:p.054501.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、低仕事関数材料で修飾されたカーボンナノ材料で機能化された針先であって、より低い電子放出障壁を有し、電子放出に必要な電界強度を効果的に低減し、放出電流及び放出効率を向上させることができる針先を提供することである。本発明の別の目的は、上記の低仕事関数材料で修飾されたカーボンナノ材料で機能化された針先の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
具体的には、本発明は、以下の技術案を提供する。
本発明は、低仕事関数材料で修飾されたカーボンナノ材料で機能化された針先であって、カーボンナノ材料が共有結合によって針先の材料と結合してなり、前記カーボンナノ材料の内部または外面が低仕事関数材料で修飾されており、
前記針先の材料が金属であり、タングステン、鉄、コバルト、ニッケル、チタンから選ばれた1種または複数種であり、前記カーボンナノ材料がカーボンナノコーンまたはカーボンナノチューブであり、前記低仕事関数材料が、金属、金属炭化物、金属酸化物、金属ホウ化物、金属窒化物及び金属内包フラーレンから選ばれた1種または複数種である、針先を提供する。
【0009】
本発明は、カーボンナノ材料が共有結合によって針先の材料と結合してなるカーボンナノ材料で機能化された針先が、カーボンナノ材料の内部または外面を低仕事関数材料で修飾することにより、先行技術における他のカーボンナノ材料で機能化された針先と比べて、より安定な針先構造及びより低い電子放出障壁を有し、電子放出に必要な電界強度を効果的に低減し、放出電流及び放出効率を向上させることができることを見出した。
【0010】
好ましくは、前記カーボンナノ材料の尖端と金属である前記針先との配向は一致する。
好ましくは、前記カーボンナノコーンは、層状グラファイト構造からなる錐状のカーボンナノ材料である。
好ましくは、前記カーボンナノチューブは、層状グラファイト構造からなる管状のカーボンナノ材料である。
好ましくは、前記低仕事関数材料は、Ba、Ca、Yb、WC、HfC、NbC、TaC、Ni3C、LaB6、CeB6、TiN、GaN、Sr3N2、Ca@C82、Lu2C2@C82、Sc3N@C80、BaO、ZnO、ZrO2から選ばれた1種または複数種である。
【0011】
本発明では、適切な低仕事関数材料を選択して修飾することによって、針先の仕事関数を効果的に低減することができる。具体的には、Ba、Ca、Ybなどの金属は仕事関数が低く、蒸着法で針先またはカーボンナノ材料の表面に堆積しやすい。金属炭化物または金属窒化物、例えば、WC、HfC、NbC、TaC、Ni3C、TiN、GaN、Sr3N2などは仕事関数が低く、このような種類の材料自身を電子放出源として使用することに関する研究報告も多々ある(Ishizawa,Y.et al.,Appl.Surf.Sci.,1993,67,36;Tang,S.et al.,Nanoscale,2020,12,16770;Wang,Y.Q.et al.,Appl.Surf.Sci.,2013,285,115)。LaB6及びCeB6が商業用電子顕微鏡における熱放出電子源として用いられるのも、その仕事関数が低いからである。一部の低仕事関数の金属酸化物、例えば、BaO、ZrO2、ZnOなども、熱放出陰極材料に大量に用いられている(Yamamoto,S.Rep.Prog.PhyS.,2006,69,181)。上記の低仕事関数材料が、本発明の好ましい条件でカーボンナノコーンまたはカーボンナノチューブの内部または外面にナノサイズの薄膜や粒子を形成する場合、カーボンナノ材料の仕事関数を効果的に低減することができ、得られたカーボンナノ材料で機能化された針先を比較的低い仕事関数を有するようにできる。
【0012】
一方、上記低仕事関数材料のうちの金属、金属炭化物、金属窒化物、金属ホウ化物は、電子放出の操作条件下でいずれも不安定であり、電子放出の高温(通常、1000℃より高い)及び高エネルギーイオンの衝突により、上記低仕事関数材料の酸化及び構造の破壊が生じてしまう。金属酸化物は、比較的安定しているが、高温下で昇華し、消耗を引き起こす可能性があり、また、酸化物の低い導電性によって、その放出電流の大きさが大幅に制限されてしまう。本発明の最適化された条件において、上記低仕事関数材料はカーボンナノ材料の内部に位置し、カーボンナノ材料の連続的、かつ、閉鎖されたグラファイト層構造は、内部の材料の酸化及び消耗を効果的に防止することができる。同時に、好ましい条件で、金属酸化物は、カーボンナノ材料においてナノ粒子またはナノ薄膜として存在し、両者の間には良好な電気的接触が形成され、金属酸化物の導電性が悪いという欠点を効果的に克服することができる。同時に、製造された機能化針先では、カーボンナノ材料と金属針先との間に強固な共有結合による界面結合があり、機械的特性や電気的特性に優れ、機能化針先に安定した構造を付与し、低仕事関数材料を保護することができる。
【0013】
金属内包フラーレンは、金属、金属炭化物または金属窒化物の分子クラスターをフラーレンのカーボンケージ中に包接した化合物である。上記の材料と類似し、その内部の低仕事関数分子クラスターもカーボンナノ材料の仕事関数を低減でき、カーボンナノ材料は、金属内包フラーレンに対して、より良い保護作用及び支持作用を果たすことができる。
【0014】
好ましくは、前記針先は通常の針先形状であり、その尖端の頂角は10~70°である。
好ましくは、針先の尖端部は単一のカーボンナノコーンに完全に覆われ、カーボンナノコーンの尾部は針先の尖端を覆う。
好ましくは、針先の尖端部は単一のカーボンナノチューブクラスターまたは単一のカーボンナノチューブで修飾される。
【0015】
本発明は、さらに上記の低仕事関数材料で修飾されたカーボンナノ材料で機能化された針先の製造方法を提供する。
具体的には、本発明に記載の製造方法を、低仕事関数材料で修飾された部位によって、二つの並列技術案に分けることができる。
技術案の一として、
カーボンナノ材料の内部が低仕事関数材料で修飾された場合、本発明に記載の製造方法は、二つの操作形態に分けられ、具体的には下記の通りである。
【0016】
1.前記製造方法は、下記のステップを含む:
(1)低仕事関数材料で針先の表面を修飾するステップ;および
(2)低仕事関数材料で表面を修飾した針先の尖端にカーボンナノ材料を組み立て、電流印加またはレーザー照射により、両者の間に強固な界面結合を形成するステップ。
【0017】
好ましくは、ステップ(1)において、イオンスパッタリング法、蒸着法、気相成長法、または電気めっき法によって、針先の表面に厚さ1~100nmの低仕事関数材料を修飾する。
具体的な実施形態において、蒸着法を採用し、適切な材料の針先を選択して、機器の試料台に固定し、低仕事関数材料のターゲット材または粉末を機器の真空チャンバー内に配置して、適切な作業条件下で高エネルギー電子線で励起させ気相とし、針先の表面に堆積する。
【0018】
好ましくは、ステップ(2)において、スピンコーターで基材であるシリコンウエハにカーボンナノ材料を堆積する。表面を低仕事関数材料で修飾した針先の尖端にカーボンナノ材料を接着し、針体を別の金属体と接触させ、前記金属体と前記針体との間に電圧を印加して、針体に電流を流し、針の尖端部が熱を受け、接着されたカーボンナノ材料と結合する。
【0019】
さらに、前記金属体は円球形または台状の頂端を有する。前記金属体と針体とが接触する位置の、針先の頂端からの距離は0.2~100μmである。前記金属体及び針先の尖端の材料はいずれもタングステンである。前記針体に流れる電流は0.04~4Aである。
【0020】
2.前記の製造方法は、下記のステップを含む:
(1)カーボンナノ材料の内部に低仕事関数材料を充填するステップ;および
(2)内部に低仕事関数材料が充填されたカーボンナノ材料を針先の尖端に組み立て、電流印加またはレーザー照射により、両者の間に強固な界面結合を形成するステップ。
【0021】
好ましくは、ステップ(1)において、真空気相充填法、溶融相充填法または溶液充填法によって、カーボンナノ材料の内部に低仕事関数材料を充填する。具体的な操作は下記の通りである。
カーボンナノ材料の粉末を反応器に置き、低仕事関数材料化合物の蒸気、溶融液または溶液と混合・接触させ、反応を2~36h維持した後、溶媒で、カーボンナノ材料に充填されなかった低仕事関数材料を洗浄し、吸引ろ過、乾燥を行う。
【0022】
好ましくは、ステップ(2)において、スピンコーターで基材であるシリコンウエハに、内部に低仕事関数材料が充填されたカーボンナノ材料を堆積する。針先の尖端にカーボンナノ材料を接着し、針体を別の金属体と接触させ、前記金属体と前記針体との間に電圧を印加して、前記針体に電流を流し、針の尖端部が熱を受け、接着されたカーボンナノ材料と結合する。
【0023】
さらに、前記金属体は円球形または台状の頂端を有する。前記金属体と針体とが接触する位置の、針先の頂端からの距離は0.2~100μmである。前記金属体及び針尖の尖端の材料はいずれもタングステンである。前記針体に流れる電流は0.04~4Aである。
【0024】
技術案の二として、
カーボンナノ材料で機能化された針先の外面が低仕事関数材料で修飾された場合、本発明に記載の製造方法は下記のステップを含む:
(1)カーボンナノ材料を針先の尖端に組み立て、電流印加またはレーザー照射により、両者の間に強固な界面結合を形成し、カーボンナノ材料で機能化された針先を得るステップ;および
(2)前記カーボンナノ材料で機能化された針先の外面を低仕事関数材料で修飾するステップ。
【0025】
好ましくは、ステップ(1)において、スピンコーターで基材であるシリコンウエハにカーボンナノ材料を堆積する。針先の尖端にカーボンナノ材料を接着し、針体を別の金属体と接触させ、前記金属体と前記針体との間に電圧を印加して、前記針体に電流を流し、針の尖端部が熱を受け、接着されたカーボンナノ材料と結合する。
前記金属体は円球形または台状の頂端を有する。前記金属体と針体とが接触する位置の、針先の頂端からの距離は0.2~100μmである。前記金属体及び針先の尖端の材料はいずれもタングステンである。前記針体に流れる電流は0.04~4Aである。
好ましくは、ステップ(2)において、イオンスパッタリング法、蒸着法、気相成長法、または電気めっき法によって、前記カーボンナノ材料で機能化された針先の外面に厚さ1~100nmの低仕事関数材料を修飾する。
【0026】
具体的な実施形態において、蒸着法を採用し、適切な材料の針先を選択して、機器の試料台に固定し、低仕事関数材料のターゲット材または粉末を機器の真空チャンバー内に配置して、適切な作業条件下で高エネルギー電子線で励起させ気相とし、カーボンナノ材料で機能化された針先の外面に堆積する。
【発明の効果】
【0027】
本発明の有益な効果は以下の通りである。
本発明が提供する低仕事関数材料で修飾されたカーボンナノ材料で機能化された針先は、カーボンナノ材料自身より低い仕事関数を有しつつ、前記低仕事関数材料より安定な構造を有するため、針先の電子放出の性能、安定性、および寿命を効果的に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】(a)は、走査型電子顕微鏡に取り付けられたマイクロオペレーティングシステムの実物の写真である。(b)は、頂端が円球構造である金属体#1が金属針先#2と接触した後、瞬時電流により金属針先#2を加熱して製造された、カーボンナノコーンで機能化されたナノ針先の走査型電子顕微鏡写真である。
【
図2】金属タングステン針先の尖端にBa薄膜を堆積して製造された、低仕事関数の金属Baで修飾されたカーボンナノコーンで機能化された針先の透過型電子顕微鏡写真及びそれに応じたエネルギースペクトルである。
【
図3】金属タングステン針先の尖端にZnO薄膜を堆積して製造された、低仕事関数の金属酸化物ZnOで修飾されたカーボンナノコーンで機能化された針先の透過型電子顕微鏡写真及びそれに応じたエネルギースペクトルである。
【
図4】金属タングステン針先の尖端にLaB
6薄膜を堆積して製造された、低仕事関数の金属ホウ化物LaB
6で修飾されたカーボンナノコーンで機能化された針先の透過型電子顕微鏡写真及びそれに応じたエネルギースペクトルである。
【
図5】金属タングステン針先の尖端にNi
3C薄膜を堆積して製造された、低仕事関数の金属炭化物Ni
3Cで修飾されたカーボンナノコーンで機能化された針先の透過型電子顕微鏡写真及びそれに応じたエネルギースペクトルである。
【
図6】金属タングステン針先の尖端にTaC薄膜を堆積して製造された、低仕事関数の金属炭化物TaCで修飾されたカーボンナノコーンで機能化された針先の透過型電子顕微鏡写真及びそれに応じたエネルギースペクトルである。
【
図7】金属タングステン針先の尖端に電子線によってC薄膜を堆積して製造された、低仕事関数の金属炭化物WCで修飾されたカーボンナノコーンで機能化された針先の透過型電子顕微鏡写真及びそれに応じたエネルギースペクトルである。
【
図8】金属タングステン針先の尖端にTiN薄膜を堆積して製造された、低仕事関数の金属窒化物TiNで修飾されたカーボンナノコーンで機能化された針先の透過型電子顕微鏡写真及びそれに応じたエネルギースペクトルである。
【
図9】カーボンナノコーンで機能化された針先の外面に低仕事関数の金属酸化物ZnO薄膜を被覆して製造されたものの透過型電子顕微鏡写真及びそれに応じたエネルギースペクトルである。
【
図10】(a)、(b)は、溶液充填法によって、カーボンナノコーンの尖端に酢酸スカンジウムを充填したものの透過型電子顕微鏡写真であり、(c)、(d)は、それに応じた酸化スカンジウムが充填されたカーボンナノコーンで機能化されたナノ針先の透過型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、具体的な実施例により本発明をさらに説明する。なお、以下の実施例は、本発明の具体的な実施形態を説明するためのものであり、本発明の保護範囲を限定するものではない。
実施例において使用されるマイクロマニピュレーターは、Kleindiek Nanotechnik社の製品であり、走査型電子顕微鏡はFEIQuanta 200 FEGであり、透過型電子顕微鏡の型番はFEI F20である。
スピンコーターは、中国科学院微電子研究所製造のKW-4A型スピンコーターである。
マグネトロンスパッタリングシステムはLab-18である。
電子ビーム蒸着システムはOHMIKER-50Bである。
加熱攪拌装置はMS-H-PROである。
デジタル表示型赤外線乾燥用ランプはLP23030-Bである。
【0030】
実施例1
本実施例において、電子ビーム蒸着法によって、金属Wの針先の表面に、厚さ5nmのBa薄膜(Baターゲット材の純度:99.99%)をコーティングし、番号を#2とした。超音波でカーボンナノコーン材料をo-ジクロロベンゼン溶剤に分散させて得られた分散液を、スピンコーターで基材であるシリコンウエハに堆積した後、基材であるシリコンウエハを走査型電子顕微鏡の試料台3に配置し、タングステン針先#1、#2をそれぞれ
図1における1、2号のマイクロマニピュレーターの先端のプローブに取り付け、マイクロマニピュレーターを制御することにより、タングステン針先の走査型電子顕微鏡の試料室内の三次元空間での移動を実現した。
【0031】
尖端がタングステン針先#2の尖端から50μmの位置と軽く接触するようにタングステン針先#1を移動させ、回路を形成して、バイアス電圧50Vを印加することにより、タングステン針先#1の尖端を直ちに2μmの球状構造に溶融させた。その後、マイクロマニピュレーターでタングステン針先#2を制御することにより、針先を基板に堆積されたカーボンナノコーンにゆっくりと近づかせ、一つのカーボンナノコーンの尾部に挿し込み、当該カーボンナノコーンがゆっくりと基材から離れるよう、針先を上に持ち上げた。マイクロマニピュレーターで、接触点が針先の尖端から2μmの位置にあるように、タングステン針先#1が溶融した金属球面をタングステン針先#2の側面と接触させた。2本のタングステン針先に電圧を印加して3Aの電流を生じさせ、通電持続時間を0.25msとした。
【0032】
図2は、本実施例の透過型電子顕微鏡(TEM)写真であり、高解像度画像は、製造された機能化針先の構造が、外部から内部まで順にカーボンナノコーン、Baコーティング層、W針先であり、且つタングステン針先の尖端が溶融した場合、カーボンナノコーンの構造が変化していないことを示しており、その構造の安定性を間接的に証明している。エネルギー分散型X線分析(EDX)の分析結果は、充填物Baの存在を証明している。
【0033】
実施例2
本実施例において、マグネトロンスパッタリング法によって、金属Wの針先の表面に、厚さ5nmのZnO薄膜(マグネトロンスパッタにおけるZnOターゲット材の純度:99.99%)をコーティングし、番号を#2とした。超音波でカーボンナノコーン材料をo-ジクロロベンゼン溶剤に分散させて得られた分散液を、スピンコーターで基材であるシリコンウエハに堆積した後、基材であるシリコンウエハを走査型電子顕微鏡の試料台3に配置し、タングステン針先#1、#2をそれぞれ
図1における1、2号のマイクロマニピュレーターの先端のプローブに取り付け、マイクロマニピュレーターを制御することにより、タングステン針先の走査型電子顕微鏡の試料室内の三次元空間での移動を実現した。
【0034】
尖端がタングステン針先#2の尖端から50μmの位置と軽く接触するようにタングステン針先#1を移動させ、回路を形成して、バイアス電圧50Vを印加することにより、タングステン針先#1の尖端を直ちに2μmの球状構造に溶融させた。その後、マイクロマニピュレーターでタングステン針先#2を制御することにより、針先を基材に堆積されたカーボンナノコーンにゆっくりと近づかせ、一つのカーボンナノコーンの尾部に挿し込み、当該カーボンナノコーンがゆっくりと基材から離れるよう、針先を上に持ち上げた。マイクロマニピュレーターで、接触点が針先の尖端から2μmの位置にあるように、タングステン針先#1が溶融した金属球面をタングステン針先#2の側面と接触させた。2本のタングステン針先に電圧を印加して3Aの電流を生じさせ、通電持続時間を0.2msとした。
【0035】
図3は、本実施例のTEM写真であり、高解像度画像は、製造された機能化針先の構造が、外部から内部まで順にカーボンナノコーン、ZnOのナノ粒子、W針先であり、且つタングステン針先の尖端が溶融した場合、カーボンナノコーンの構造が変化していないことを示しており、その構造の安定性を間接的に証明している。エネルギー分散型X線分析(EDX)の分析結果も充填物ZnOの存在を証明している。本実施例で得られたZnOは、ナノ粒子としてカーボンナノコーンの内表面に存在し、カーボンナノコーンと良好な接触を形成している。
【0036】
実施例3
本実施例において、電子ビーム蒸着法によって、金属Wの針先の表面に、厚さ5nmのLaB
6薄膜(LaB
6ターゲット材の純度:99.99%)をコーティングし、番号を#2とした。超音波でカーボンナノコーン材料をo-ジクロロベンゼン溶剤に分散させて得られた分散液を、スピンコーターで基材であるシリコンウエハに堆積した後、基材であるシリコンウエハを走査型電子顕微鏡の試料台3に配置し、タングステン針先#1、#2をそれぞれ
図1における1、2号のマイクロマニピュレーターの先端のプローブに取り付け、マイクロマニピュレーターを制御することにより、タングステン針先の走査型電子顕微鏡の試料室内の三次元空間での移動を実現した。
【0037】
尖端がタングステン針先#2の尖端から50μmの位置と軽く接触するようにタングステン針先#1を移動させ、回路を形成して、バイアス電圧50Vを印加することによって、タングステン針先#1の尖端を直ちに2μmの球状構造に溶融させた。その後、マイクロマニピュレーターでタングステン針先#2を制御することにより、針先を基材に堆積されたカーボンナノコーンにゆっくりと近づかせ、一つのカーボンナノコーンの尾部に挿し込み、カーボンナノコーンがゆっくりと基板から離れるよう、針先を上に持ち上げた。マイクロマニピュレーターで、接触点が針先の尖端から2μmの位置にあるように、タングステン針先#1が溶融した金属球面をタングステン針先#2の側面と接触させた。2本のタングステン針先に電圧を印加して3Aの電流を生じさせ、通電持続時間を0.25msとした。
【0038】
図4は、本実施例のTEM写真であり、高解像度画像は、製造された機能化ナノプローブの構造が、外部から内部まで順にカーボンナノコーン、LaB
6、W針先であることを示しており、エネルギー分散型X線分析(EDX)の分析結果は、充填物LaB
6の存在を証明している。
【0039】
実施例4
本実施例において、マグネトロンスパッタリング法によって、金属Wの針先の表面に、厚さ5nmの炭化ニッケル薄膜(マグネトロンスパッタにおける炭化ニッケルターゲット材の純度:99.99%)をコーティングし、番号を#2とした。超音波でカーボンナノコーン材料をo-ジクロロベンゼン溶剤に分散させて得られた分散液をスピンコーターで基材であるシリコンウエハに堆積し、基材であるシリコンウエハを走査型電子顕微鏡の試料台3に配置し、タングステン針先#1、#2をそれぞれ
図1における1、2号のマイクロマニピュレーターの先端のプローブに取り付け、マイクロマニピュレーターを制御することにより、タングステン針先の走査型電子顕微鏡の試料室内の三次元空間での移動を実現した。
【0040】
尖端がタングステン針先#2の尖端から50μmの位置と軽く接触するようにタングステン針先#1を移動させ、回路を形成して、バイアス電圧50Vを印加することにより、タングステン針先#1の尖端を直ちに2μmの球状構造に溶融させた。その後、マイクロマニピュレーターでタングステン針先#2を制御することにより、針先を基材に堆積されたカーボンナノコーンにゆっくりと近づかせ、一つのカーボンナノコーンの尾部に挿し込み、カーボンナノコーンがゆっくりと基材から離れるよう、針先を上に持ち上げた。マイクロマニピュレーターで、接触点が針先の尖端から2μmの位置にあるように、タングステン針先#1が溶融した金属球面をタングステン針先#2の側面と接触させた。2本のタングステン針先に電圧を印加して3Aの電流を生じさせ、通電持続時間を0.25msとした。
【0041】
図5は、本実施例のTEM写真であり、高解像度画像は、製造された機能化ナノプローブの構造が、外部から内部まで順にカーボンナノコーン、炭化ニッケル、W針先であることを示しており、エネルギー分散型X線分析(EDX)の分析結果は充填物炭化ニッケルの存在を証明している。
【0042】
実施例5
本実施例において、マグネトロンスパッタリング法によって、金属Wの針先の表面に、厚さ5nmのTaC薄膜(マグネトロンスパッタにおけるTaCターゲット材の純度:99.99%)をコーティングし、番号を#2とした。超音波でカーボンナノコーン材料をo-ジクロロベンゼン溶剤に分散させて得られた分散液を、スピンコーターで基材であるシリコンウエハに堆積し、基材であるシリコンウエハを走査型電子顕微鏡の試料台3に配置し、タングステン針先#1、#2をそれぞれ
図1における1、2号のマイクロマニピュレーターの先端のプローブに取り付け、マイクロマニピュレーターを制御することにより、タングステン針先の走査型電子顕微鏡の試料室内の三次元空間での移動を実現した。
【0043】
尖端がタングステン針先#2の尖端から50μmの位置と軽く接触するようにタングステン針先#1を移動させ、回路を形成して、バイアス電圧50Vを印加することにより、タングステン針先#1の尖端を直ちに2μmの球状構造に溶融させた。その後、マイクロマニピュレーターでタングステン針先#2を制御することにより、針先を基材に堆積されたカーボンナノコーンにゆっくりと近づかせ、一つのカーボンナノコーンの尾部に挿し込み、当該カーボンナノコーンがゆっくりと基材から離れるよう、針先を上に持ち上げた。マイクロマニピュレーターで、接触点が針先の尖端から2μmの位置にあるように、タングステン針先#1が溶融した金属球面をタングステン針先#2の側面と接触させた。2本のタングステン針先に電圧を印加して3Aの電流を生じさせ、通電持続時間を0.25msとした。
【0044】
図6は、本実施例のTEM写真であり、高解像度画像は、製造された機能化ナノプローブの構造が、外部から内部まで順にカーボンナノコーン、TaC、W針先であることを示しており、エネルギー分散型X線分析(EDX)の分析結果は充填物TaCの存在を証明している。本実施例で得られたTaCは、ナノ粒子としてカーボンナノコーンの内表面に存在し、カーボンナノコーンと良好な接触を形成している。
【0045】
実施例6
本実施例において、走査型電子顕微鏡下で電子ビームにより炭素の堆積を誘導する方法によって、金属Wの針先の表面に、厚さ5nmの炭素をコーティングし、番号を#2とした。超音波でカーボンナノコーン材料をo-ジクロロベンゼン溶剤に分散させて得られた分散液を、スピンコーターで基材であるシリコンウエハに堆積し、基材であるシリコンウエハを走査型電子顕微鏡の試料台3に配置し、タングステン針先#1、#2をそれぞれ
図1における1、2号のマイクロマニピュレーターの先端のプローブに取り付け、マイクロマニピュレーターを制御することにより、タングステン針先の走査型電子顕微鏡の試料室内の三次元空間での移動を実現した。
【0046】
尖端がタングステン針先#2の尖端から50μmの位置と軽く接触するようにタングステン針先#1を移動させ、回路を形成して、バイアス電圧50Vを印加することにより、タングステン針先#1の尖端を直ちに2μmの球状構造に溶融させた。その後、マイクロマニピュレーターでタングステン針先#2を制御することにより、針先を基材に堆積されたカーボンナノコーンにゆっくりと近づかせ、一つのカーボンナノコーンの尾部に挿し込み、カーボンナノコーンがゆっくりと基材から離れるよう、針先を上に持ち上げた。マイクロマニピュレーターで、接触点が針先の尖端から2μmの位置にあるように、タングステン針先#1が溶融した金属球面をタングステン針先#2の側面と接触させた。2本のタングステン針先に電圧を印加して3Aの電流を生じさせ、通電持続時間を0.25msとした。
【0047】
図7は、本実施例のTEM写真であり、高解像度画像は、製造された炭化タングステンで修飾されたカーボンナノコーンで機能化されたナノプローブを示しており、エネルギー分散型X線分析(EDX)の分析結果は、WとCの存在を証明している。
【0048】
実施例7
本実施例において、マグネトロンスパッタリング法によって、金属Wの針先の表面に、厚さ5nmのTiN膜(マグネトロンスパッタにおけるTiNターゲット材の純度:99.99%)をコーティングし、番号を#2とした。超音波でカーボンナノコーン材料をo-ジクロロベンゼン溶剤に分散させて得られた分散液を、スピンコーターで基材であるシリコンウエハに堆積した後、基材であるシリコンウエハを走査型電子顕微鏡の試料台3に配置し、タングステン針先#1、#2をそれぞれ
図1における1、2号のマイクロマニピュレーターの先端のプローブに取り付け、マイクロマニピュレーターを制御することにより、タングステン針先の走査型電子顕微鏡の試料室内の三次元空間での移動を実現した。
【0049】
尖端がタングステン針先#2の尖端から50μmの位置と軽く接触するようにタングステン針先#1を移動させ、回路を形成して、バイアス電圧50Vを印加することにより、タングステン針先#1の尖端を直ちに2μmの球状構造に溶融させた。その後、マイクロマニピュレーターでタングステン針先#2を制御することにより、針先を基材に堆積されたカーボンナノコーンにゆっくりと近づかせ、一つのカーボンナノコーンの尾部に挿し込み、当該カーボンナノコーンがゆっくりと基材から離れるよう、針先を上に持ち上げた。マイクロマニピュレーターで、接触点が針先の尖端から2μmの位置にあるように、タングステン針先#1が溶融した金属球面をタングステン針先#2の側面と接触させた。2本のタングステン針先に電圧を印加して3Aの電流を生じさせ、通電持続時間を0.25msとした。
【0050】
図8は、本実施例のTEM写真であり、高解像度画像は、製造された機能化ナノプローブの構造が、外部から内部まで順にカーボンナノコーン、TiN、W針先であることを示しており、エネルギー分散型X線分析(EDX)の分析結果は、充填物TiNの存在を証明している。本実施例で得られたTiNは、薄膜としてカーボンナノコーンの内表面に存在し、カーボンナノコーンと良好な接触を形成している。
【0051】
実施例8
本実施例において、超音波でカーボンナノコーン材料をo-ジクロロベンゼン溶剤に分散させて得られた分散液を、スピンコーターで基材であるシリコンウエハに堆積した後、基材であるシリコンウエハを走査型電子顕微鏡の試料台3に配置し、タングステン針先#1、#2をそれぞれ
図1における1、2号のマイクロマニピュレーターの先端のプローブに取り付け、マイクロマニピュレーターを制御することにより、タングステン針先の走査型電子顕微鏡の試料室内の三次元空間での移動を実現した。
【0052】
尖端がタングステン針先#2の尖端から50μmの位置と軽く接触するようにタングステン針先#1を移動させ、回路を形成して、バイアス電圧50Vを印加することにより、タングステン針先#1の尖端を直ちに2μmの球状構造に溶融させた。その後、マイクロマニピュレーターでタングステン針先#2を制御することにより、針先を基材に堆積されたカーボンナノコーンにゆっくりと近づかせ、一つのカーボンナノコーンの尾部に挿し込み、当該カーボンナノコーンがゆっくりと基材から離れるよう、針先を上に持ち上げた。マイクロマニピュレーターで、接触点が針先の尖端から2μmの位置にあるように、タングステン針先#1が溶融した金属球面をタングステン針先#2の側面と接触させた。2本のタングステン針先に電圧を印加して3Aの電流を生じさせ、通電持続時間を0.25msとし、カーボンナノコーンで機能化されたタングステン針先を得た。
製造されたカーボンナノコーンで機能化されたタングステン針先#2を取り出し、マグネトロンスパッタ装置の試料台に固定し、その表面に、厚さ5nmのZnO薄膜(マグネトロンスパッタにおけるZnOターゲット材の純度:99.99%)をコーティングした。
【0053】
図9は、本実施例のTEM写真であり、高解像度画像は、製造された機能化ナノプローブの構造が、外部から内部まで順にZnO薄膜、カーボンナノコーン、W針先であることを示しており、エネルギー分散型X線分析(EDX)の分析結果は、ZnOの存在を証明している。
【0054】
実施例9
20mLのサンプル瓶を用意し、まず酢酸スカンジウム25mgを加え、更にエチレングリコール10mLを加え、上記の試薬が均一に混合するように、超音波で10min処理した。前記サンプル瓶にスターラーバーを入れ、軽く蓋を閉じ、加熱攪拌器に設置し、加熱時間を30min、加熱温度を100℃、攪拌速度を500rpmに設定して、酢酸スカンジウムを完全に溶解させた。また、カーボンナノコーン2mgを測り、上記溶液に加え、前記サンプル瓶の蓋を軽く閉じ、加熱攪拌器に設置し、加熱時間を18h、加熱温度を100℃、攪拌速度を500rpmに設定して、酢酸スカンジウムをカーボンナノコーンの尖端に充填した。加熱攪拌が終了した後、上記の混合物を室温まで冷却してから、孔径1μmの親水性ろ過膜でろ過し、ろ過後のサンプルをろ過膜と共に赤外線ランプで20h乾燥し、乾燥温度を80℃に設定した。ろ過膜からサンプルを削り、少量の当該サンプルを取って無水エタノールに加え、超音波で分散させた後、銅マイクログリッドに滴下して透過型電子顕微鏡(TEM)の観察に使用し、充填後のカーボンナノコーンの透過型電子顕微鏡写真は
図10(a)、(b)が示す通りである。
【0055】
充填されたカーボンナノコーンを超音波でo-ジクロロベンゼン溶剤に分散させて得られた分散液を、スピンコーターで基材であるシリコンウエハに堆積した後、基材であるシリコンウエハを走査型電子顕微鏡の試料台に配置し、上記実施例と同様、タングステン針先#1、#2をそれぞれ1、2号のマイクロマニピュレーターの先端のプローブに取り付け、マイクロマニピュレーターを制御することにより、一つの酢酸スカンジウムで充填されたカーボンナノコーンと接触・接着させ、電流を印加し、酢酸スカンジウムを分解させて酸化スカンジウムを生じさせるとともに、
図10(c)、(d)に示すように、酸化スカンジウムが充填されたカーボンナノコーンで機能化されたナノ針先を製造した。本実施例で得られた酸化スカンジウムは、ナノ粒子または薄膜としてカーボンナノコーンの内表面に存在し、カーボンナノコーンと良好な接触を形成している。
【0056】
上記において、一般的な説明、具体的な実施形態および試験で本発明を詳しく説明したが、本発明に基づき、いくつかの補正や改善を行い得ることは、当業者にとって明らかである。従って、本発明の趣旨から逸脱しない範疇で行われるこれらの補正や改善は、いずれも本発明の保護しようとする範囲に属する。
【符号の説明】
【0057】
1及び2…マイクロマニピュレーター、 3…試料台。