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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151528
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】乗員保護装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/18 20060101AFI20220929BHJP
   B60R 21/231 20110101ALI20220929BHJP
【FI】
B60R21/18
B60R21/231
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021159075
(22)【出願日】2021-09-29
(31)【優先権主張番号】P 2021052344
(32)【優先日】2021-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】深浦 和実
(72)【発明者】
【氏名】増田 泰士
(72)【発明者】
【氏名】山田 真史
(72)【発明者】
【氏名】折▲高▼ 早苗
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054AA03
3D054AA07
3D054AA08
3D054AA25
3D054CC04
3D054CC10
3D054CC15
3D054DD14
3D054FF16
(57)【要約】
【課題】シートの前方に車体側部材が配設される構成であっても、車体側部材との接触を抑制して、乗員を的確に保護可能な乗員保護装置を提供すること。
【解決手段】シート3に着座した乗員MPを保護するための乗員保護装置S。可撓性を有したシート体から構成される袋状として折り畳まれて収納されるエアバッグ25と、乗員の腰部の周囲に巻き掛けられるとともに折り畳まれたエアバッグを保持させる保持ベルト部10と、を備える。エアバッグが、作動時に、内部に膨張用ガスを流入させて、保持ベルト部から前上方に向かって突出するように膨張する構成とされるとともに、膨張完了時に、後面側において乗員の上半身MUを拘束可能とされる上半身拘束面37と、前面側においてシートの前方に配設される車体側部材1に対して乗員拘束時におけるエアバッグの反力を確保可能に当接する車体側部材当接面35と、を備える。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに着座した乗員を保護するための乗員保護装置であって、
可撓性を有したシート体から構成される袋状として、折り畳まれて収納されるエアバッグと、
前記乗員の腰部の周囲に巻き掛けられるとともに、折り畳まれた前記エアバッグを保持させる保持ベルト部と、
を備える構成とされて、
前記エアバッグが、作動時に、内部に膨張用ガスを流入させて、前記保持ベルト部から前上方に向かって突出するように膨張する構成とされるとともに、膨張完了時に、後面側において前記乗員の上半身を拘束可能とされる上半身拘束面と、前面側において前記シートの前方に配設される車体側部材に対して乗員拘束時における前記エアバッグの反力を確保可能に当接する車体側部材当接面と、を備える構成とされていることを特徴とする乗員保護装置。
【請求項2】
前記エアバッグが、膨張完了時の下面側に、前記乗員の大腿部と当接可能な大腿部当接面を配設させる構成とされ、
前記車体側部材当接面が、膨張完了時の前記エアバッグにおける下端側に配設されて、前記乗員の膝よりも前方となる位置で、前記車体側部材と当接可能に、構成されていることを特徴とする請求項1に記載の乗員保護装置。
【請求項3】
前記エアバッグが、前記車体側部材当接面の前記車体側部材との当接時に、前記膝の前方を覆うように配置される膝保護部を、備えていることを特徴とする請求項1に記載の乗員保護装置。
【請求項4】
前記エアバッグが、膨張完了時の上端側に、前記乗員の頭部を保護可能な頭部保護部を配設させる構成とされるとともに、単体で膨張させた状態において、前記上半身拘束面と前記大腿部当接面との交差角度を、90°~150°の範囲内に設定されて、構成されていることを特徴とする請求項2に記載の乗員保護装置。
【請求項5】
前記エアバッグが、内部に流入した余剰の膨張用ガスを排気可能なベントホールを、備える構成とされ、
該ベントホールは、前記エアバッグの前記車体側部材との当接時の非接触エリアの位置に、形成されていることを特徴とする請求項1に記載の乗員保護装置。
【請求項6】
前記ベントホールが、膨張完了時の前記エアバッグにおける前面側若しくは側面側に、配設されていることを特徴とする請求項5に記載の乗員保護装置。
【請求項7】
前記ベントホールが、膨張完了時の前記エアバッグにおいて、前記乗員の肩部の高さ以上の位置に、配設されていることを特徴とする請求項6に記載の乗員保護装置。
【請求項8】
前記車体側部材が、インストルメントパネルであり、
前記ベントホールが、膨張完了時の前記エアバッグにおいて、前記インストルメントパネルの上面より上方となる位置に、配設されていることを特徴とする請求項5に記載の乗員保護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに着座した乗員を保護するための乗員保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗員保護装置としては、シートベルトにおいて腰部の周囲に巻き付けられるラップベルトの部位に収納されるエアバッグを有し、前上方に向かって突出するように膨張させたエアバッグにより、シートに着座した乗員を保護する構成のものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-51744公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この従来の乗員保護装置では、シートに着座した乗員の上半身は、エアバッグによって保護できるものの、シートの前方に配設される車体側部材と乗員との接触は考慮されておらず、前方からの衝撃力が強く作用した際の前方移動する乗員と車体側部材との接触を抑制する点に、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、シートの前方に車体側部材が配設される構成であっても、車体側部材との接触を抑制して、乗員を的確に保護可能な乗員保護装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る乗員保護装置は、シートに着座した乗員を保護するための乗員保護装置であって、
可撓性を有したシート体から構成される袋状として、折り畳まれて収納されるエアバッグと、
乗員の腰部の周囲に巻き掛けられるとともに、折り畳まれたエアバッグを保持させる保持ベルト部と、
を備える構成とされて、
エアバッグが、作動時に、内部に膨張用ガスを流入させて、保持ベルト部から前上方に向かって突出するように膨張する構成とされるとともに、膨張完了時に、後面側において乗員の上半身を拘束可能とされる上半身拘束面と、前面側においてシートの前方に配設される車体側部材に対して乗員拘束時におけるエアバッグの反力を確保可能に当接する車体側部材当接面と、を備える構成とされていることを特徴とする。
【0007】
本発明の乗員保護装置では、エアバッグが、シートの前方に配設される車体側部材と当接可能な車体側部材当接面を、備えていることから、作動時において、シートに対して前方から衝撃力が作用した際に、乗員が、仮に、シートに対して若干前方移動するような態様となっても、エアバッグの車体側部材当接面が、車体側部材と当接することとなって、乗員が、車体側部材と接触することを、抑制できる。また、エアバッグは、車体側部材当接面を車体側部材に当接させることにより、乗員拘束時の反力を確保できることから、乗員が上半身を前傾させるように移動する際に、上半身拘束面の前方への移動ストロークを抑えて、エネルギー吸収量を高めることができ、上半身拘束面により、乗員の上半身を安定して受け止めて保護することができる。
【0008】
したがって、本発明の乗員保護装置では、シートの前方に車体側部材が配設される構成であっても、車体側部材との接触を抑制して、乗員を的確に保護することができる。
【0009】
また、本発明の乗員保護装置において、エアバッグを、膨張完了時の下面側に、乗員の大腿部と当接可能な大腿部当接面を配設させる構成とし、
車体側部材当接面を、膨張完了時のエアバッグにおける下端側に配設させて、乗員の膝よりも前方となる位置で、車体側部材と当接可能に、構成することが、好ましい。
【0010】
上記構成の乗員保護装置では、エアバッグは、上半身拘束面による上半身の拘束時に、下面側の大腿部当接面を、乗員の大腿部の上面と当接させることができることから、倒れや圧縮等を抑制されて、乗員の上半身を、上半身拘束面によって、一層的確に拘束することができる。また、上記構成の乗員保護装置では、車体側部材当接面が、エアバッグの下端側において、乗員の膝よりも前方となる位置で、車体側部材と当接可能に構成されていることから、乗員の膝が、車体側部材と干渉することを、抑制できる。
【0011】
さらに、エアバッグに、車体側部材当接面の車体側部材との当接時に、膝の前方を覆うように配置される膝保護部を、配設させる構成とすれば、乗員の膝が、車体側部材と干渉することを、的確に抑制できて、好ましい。
【0012】
さらにまた、上記構成の乗員保護装置において、エアバッグを、膨張完了時の上端側に、乗員の頭部を保護可能な頭部保護部を配設させる構成とするとともに、単体で膨張させた状態において、上半身拘束面と大腿部当接面との交差角度を、90°~150°の範囲内に設定される構成とすることが好ましい。エアバッグをこのような構成とすれば、上半身拘束面と大腿部当接面との交差角度を90°未満に設定する場合と比較して、頭部保護部を、乗員の頭部に接近させるように、迅速に膨張させることができる。そのため、乗員の頭部を、頭部保護部によって迅速に拘束することができる。
【0013】
さらにまた、上記構成の乗員保護装置において、エアバッグにおいて、内部に流入した余剰の膨張用ガスを排気可能なベントホールを、エアバッグの車体側部材との当接時の非接触エリアの位置に、形成する構成とすれば、膨張完了時のエアバッグが、車体側部材当接面を車体側部材に当接させた際に、ベントホールから適宜膨張用ガスを排気させることにより、過度に内圧を上昇させることを抑制できて、好ましい。
【0014】
具体的には、ベントホールは、膨張完了時のエアバッグにおいて、前面側若しくは側面側に、配設させることが好ましい。さらには、ベントホールは、乗員の肩部の高さ以上の位置に、配設させることが好ましく、乗員の肩部の高さ以上の位置に配置させれば、乗員の腕部等に、ベントホールから排気される膨張用ガスが当たることを抑制できる。
【0015】
また、具体的には、ベントホールは、車体側部材がインストルメントパネルである場合、膨張完了時のエアバッグにおいて、インストルメントパネルの上面より上方となる位置に、配設させることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態である乗員保護装置を搭載させたシートの斜視図である。
図2図1のシートの側面図である。
図3図1のシートの正面図であり、シートベルトが装着された状態を示す。
図4図1の乗員保護装置において使用されるエアバッグを、単体で膨張させた状態を示す概略斜視図である。
図5図4のエアバッグの概略縦断面図である。
図6】実施形態の乗員保護装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態のシートの正面図である。
図7】実施形態の乗員保護装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態のシートの側面図である。
図8】実施形態の乗員保護装置において、膨張を完了させたエアバッグにより乗員を拘束する状態を示す側面図である。
図9】本発明の他の実施形態の乗員保護装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態のシートの側面図である。
図10図9の乗員保護装置において、膨張を完了させたエアバッグにより乗員を拘束する状態を示す側面図である。
図11】本発明の他の実施形態であるエアバッグを単体で膨張させた状態の概略斜視図である。
図12図11のエアバッグの概略縦断面図である。
図13図11のエアバッグを構成する基材を並べた状態の平面図である。
図14図11のエアバッグの折畳工程を説明する概略図である。
図15図11のエアバッグの膨張過程を説明する概略図である。
図16図11のエアバッグを使用した乗員保護装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態のシートの側面図である。
図17図11のエアバッグを、リクライニングさせたシートにおいて膨張させた状態を示すシートの側面図である。
図18図11のエアバッグの別の折畳工程を説明する概略図である。
図19図11のエアバッグの折畳工程において、図18の後の工程を説明する概略図である。
図20図11のエアバッグを、図18,19に示すような折畳工程で折り畳んだ際の膨張過程を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態において、前後・上下・左右の方向は、特に断らない限り、シート3の前後・上下・左右の方向と一致するものである。
【0018】
実施形態の乗員保護装置Sは、図6に示すように、車体側部材としてのインストルメントパネル1(以下「インパネ」と省略する)を前方に配設させたシート3、すなわち、助手席に、搭載されている。乗員保護装置Sは、図1,2に示すように、エアバッグ25を保持させる保持ベルト部としてのシートベルト7と、エアバッグ25と、エアバッグ25に膨張用ガスを供給するインフレーター17と、を備える構成とされている。シート3(助手席)は、背もたれ部4と座部5とを備えている。なお、実施形態の乗員保護装置Sを搭載させたシート3を助手席として使用する車両のインパネ1には、通常の車両において搭載されている助手席用のエアバッグ装置は、搭載されていない。
【0019】
シートベルト7は、シート3に着座した乗員MPを拘束するためのベルト本体8と、ベルト本体8に取り付けられるタングプレート12と、タングプレート12を連結させるためのバックル13と、を備える構成とされている。ベルト本体8は、背もたれ部4内に配置される図示しないリトラクタの巻取軸に、一端を係止され、他端側を、シート3における座部5の後端左方に配置されるアンカ部材14(図1,2参照)に係止されている。詳細には、ベルト本体8は、背もたれ部4の上端左縁側から外部に露出されるように配置されるもので、実施形態の場合、乗員の非着座状態においては、図1,2に示すように、ラップベルト10を、背もたれ部4の前面に露出させるように、構成されている。ベルト本体8は、ラップベルト10と、背もたれ部4内に収納されるショルダーベルト9と、を有し、乗員着座時においてタングプレート12をバックル13に連結させた状態で、アンカ部材14とバックル13との間において左右方向に略沿うように配置されるラップベルト10によって乗員MPの下半身MD(腰部MW)を拘束し、背もたれ部4の上端左縁側から延びつつバックル13にかけて斜めに配置されるショルダーベルト9によって乗員MPの上半身MU(肩部MSから胸部MBにかけて)を拘束する構成とされている。すなわち、実施形態の乗員保護装置Sでは、ラップベルト10が、乗員MPの腰部MWの周囲に巻き掛けられて、折り畳まれたエアバッグ25を保持させる保持ベルト部を、構成している。ラップベルト10は、乗員MPの非着座状態においては、図1に示すように、背もたれ部4の左縁4a側において、上下方向に略沿うようにして、背もたれ部4の前面に露出されている。シートベルト7において、背もたれ部4内に配置されている図示しないリトラクタは、プリテンショナー機構を有している。
【0020】
インフレーター17は、シート3における座部5の後下部側に配設されるもので、実施形態の場合、図1に示すように、インフレーター本体18(詳細な図示を省略)と、インフレーター本体18から延びてエアバッグ25に膨張用ガスを供給するパイプ部19と、を備えている。パイプ部19は、インフレーター本体18から延びて、先端を、シート3の左方において座部5と背もたれ部4との境界部位付近に位置させるように、配設されるもので、この先端を、クランプ20を利用して、エアバッグ25における後述する導管部40と接続させる構成とされている(図7参照)。実施形態の場合、インフレーター17は、エアバッグ25の膨張に伴うシートベルト7のベルト本体8の引き出しを規制するために、作動開始を、シートベルト7のプリテンショナー機構よりも遅らせるように、設定されている。具体的には、インフレーター17は、シートベルト7のプリテンショナー機構の作動から5ms後に、作動するように、設定されている。
【0021】
エアバッグ25は、可撓性を有したシート体から構成される袋状とされるもので、図4,5に示すように、バッグ本体26と、インフレーター17と接続されてバッグ本体26内に膨張用ガスを流入させる導管部40と、バッグ本体26をラップベルト10に連結させるためのベルト取付部42と、を備えている。実施形態の場合、エアバッグ25は、ポリエステル糸やポリアミド糸等からなる可撓性を有した織布から形成されるもので、バッグ本体26を長尺状に折り畳まれて、シートベルト7の装着時におけるラップベルト10の上面側に重ねられるようにして、ラップベルト10の領域に配置されている(図3参照)。すなわち、エアバッグ25は、ラップベルト10を保持ベルト部として、ラップベルト10に保持されている。図1,2に示すような非装着状態においては、エアバッグ25(折り畳まれたバッグ本体26と導管部40)は、ラップベルト10の背面側(背もたれ部4側)に、配置されている。実施形態の場合、折り畳まれたエアバッグ25とラップベルト10とは、図3に示すように、周囲を、エアバッグ25の展開膨張時に破断可能なカバー22によって覆われて、一体化されている。
【0022】
バッグ本体26は、実施形態の場合、膨張完了時の外形形状を、図4,5に示すように、軸方向を左右方向に略沿わせた略三角柱形状とされている。詳細に説明すれば、バッグ本体26は、左右の側方側から見た状態での膨張完了形状を、前側に斜辺を有するような略直角三角形状とし、前後方向側から見た状態での膨張完了形状を、上下に幅広とした略長方形状とするように、構成されている(図6,7参照)。バッグ本体26は、膨張完了時に乗員MPから離れた前側(車体側部材側、すなわち、インパネ1側)に配置される前壁部27と、膨張完了時に乗員MP側に配置される後壁部28,下壁部29と、膨張完了時に左右方向側で対向して配置される左壁部30,右壁部31と、を備える構成とされている(図4,5参照)。そして、実施形態のバッグ本体26(エアバッグ25)では、前壁部27において、インパネ1の後面1bと前後で対向して配置される下端27a側の部位が、乗員拘束時にインパネ1と当接可能とされる車体側部材当接面35を、構成している。すなわち、車体側部材当接面35は、膨張完了時のバッグ本体26(エアバッグ25)における下端26a側に、配設されている。また、実施形態のバッグ本体26(エアバッグ25)では、下壁部29が、膨張完了時に乗員MPの大腿部MTと当接可能な大腿部当接面36を構成し、後壁部28が、膨張完了時に乗員MPの上半身MU(胸部MBから頭部MHにかけて)を拘束可能な上半身拘束面37を、構成している。具体的には、バッグ本体26は、膨張完了時の左右方向側の幅寸法を、シート3の背もたれ部4よりも小さく、かつ、乗員MPの上半身MUを安定して保護可能に、上半身MUと同等として、構成されている(図6参照)。後壁部28と下壁部29とは、略直交するように配置される構成であり、前壁部27は、下端27a側を前側に位置させるように、左右の側方から見て傾斜するように配置される。そして、バッグ本体26は、膨張完了時の前後方向側の幅寸法を、膨張完了時の前下端側となる前下端部位26bを乗員MPの膝Kよりも前方に位置させるように、設定されている(図7参照)。詳細には、バッグ本体26の前後方向側の幅寸法は、膨張を完了させたバッグ本体26の上半身拘束面37によって前傾移動する乗員MPの上半身MUを拘束した状態において、図8に示すように、前下端部位26bを膝MKよりも前方に位置させ、前下端部位26bの前面(前壁部27の下端27a)から構成される車体側部材当接面35を、膝MKより前方となる位置で、インパネ1と当接させるような寸法に、設定されている。また、実施形態では、乗員非受止状態でのエアバッグ25(バッグ本体26)は、膨張完了状態において、前下端部位26bとインパネ1との間に隙間を設けるように、配置される構成である(図7参照)。すなわち、下壁部29(大腿部当接面36)は、前端29aを、乗員MPの膝MKよりも前方に位置させて、大腿部MTの上面を、前後左右の略全面にわたって覆うように、構成されている。後壁部28(上半身拘束面37)は、上端28aを、乗員MPの頭部MHの前方となる位置に配置させるように、構成されている。
【0023】
また、バッグ本体26は、内部に流入した余剰の膨張用ガスを排気可能なベントホール33を、備えている。ベントホール33は、バッグ本体26において、膨張完了時のインパネ1との当接時の非接触エリアの位置に、形成されている。具体的には、ベントホール33は、膨張完了時のバッグ本体26において、インパネ1の上面1aより上方となる位置であって、かつ、乗員MPの肩部MSの高さ以上の位置に、形成されるもので、実施形態の場合、膨張完了時のエアバッグ25(バッグ本体26)の側面側となる左壁部30及び右壁部31における前上端付近に、配設されている(図6,7参照)。また、バッグ本体26は、膨張完了時における後下端側の部位(下壁部29の後端29b側の部位)で、連通孔(図符号省略)を介して、導管部40と連通されている(図5参照)。
【0024】
導管部40は、バッグ本体26から左方に延びるように構成されるもので、先端40a側を開口させた略筒状として、インフレーター17のパイプ部19と接続されるもので、エアバッグ25の膨張完了時に、ラップベルト10に略沿うように左右方向に略沿って配置される構成である。この導管部40は、先端40a側を、上述したごとく、クランプ20を用いて、インフレーター17のパイプ部19に接続される構成である。バッグ本体26をラップベルト10に連結させるためのベルト取付部42は、図4,5に示すように、導管部40の下面側に、配設されている。ベルト取付部42は、ラップベルト10を挿通可能に、両端側を開口させた略筒状とされている。
【0025】
実施形態の乗員保護装置Sでは、車両に搭載した状態で、インフレーター17が作動すれば、インフレーター17から吐出される膨張用ガスが、導管部40を経てバッグ本体26内に流入することとなり、バッグ本体26が、カバー22を破断させるようにして、保持ベルト部としてのラップベルト10から前上方に突出しつつ、図6,7に示すように、膨張を完了させることとなる。
【0026】
そして、実施形態の乗員保護装置Sでは、エアバッグ25(バッグ本体26)が、シート3の前方に配設される車体側部材としてのインパネ1と当接可能な車体側部材当接面35を、備えていることから、作動時において、シート3に対して前方から衝撃力が作用した際に、乗員MPが、仮に、シート3に対して若干前方移動するような態様となっても、エアバッグ25の車体側部材当接面35が、インパネ1の後面1bと当接することとなって、乗員MPが、インパネ1と接触することを、抑制できる。また、エアバッグ25は、車体側部材当接面35をインパネ1の後面1bに当接させることにより、乗員拘束時の反力を確保できることから、図8に示すごとく、乗員MPが上半身MUを前傾させるように移動する際に、上半身拘束面37の前方への移動ストロークを抑えて、エネルギー吸収量を高めることができ、上半身拘束面37により、乗員MPの上半身MUを安定して受け止めて保護することができる。
【0027】
したがって、実施形態の乗員保護装置Sでは、シート3の前方に車体側部材としてのインパネ1が配設される構成であっても、インパネ1との接触を抑制して、乗員MPを的確に保護することができる。
【0028】
なお、実施形態の乗員保護装置Sでは、前方からの衝撃力が強く作用した際に、エアバッグ25の膨張完了後において、仮に、乗員MPが、車体側部材としてのインパネ1と接触することとなっても、乗員MPは、車体側部材当接面35をインパネ1と当接させた状態のエアバッグ25に受け止められて、十分に運動エネルギーを低減されていることから、支障を生じない。
【0029】
また、実施形態の乗員保護装置Sでは、エアバッグ25(バッグ本体26)は、膨張完了時の下面側に、乗員MPの大腿部MTと当接可能な大腿部当接面36を配設させる構成とされ、車体側部材当接面35は、膨張完了時のエアバッグ25(バッグ本体26)における下端26a側に配設されて、乗員MPの膝MKよりも前方となる位置で、インパネ1と当接可能に、構成されている。そのため、実施形態の乗員保護装置Sでは、エアバッグ25は、上半身拘束面37による上半身MUの拘束時に、下面側の大腿部当接面36を、乗員MPの大腿部MTの上面と当接させることができることから、倒れや圧縮等を抑制されて、乗員MPの上半身MUを、上半身拘束面37によって、一層的確に拘束することができる。また、実施形態の乗員保護装置Sでは、車体側部材当接面35が、エアバッグ25(バッグ本体26)の下端26a側において、乗員MPの膝MKよりも前方となる位置で、インパネ1と当接可能に構成されていることから、乗員MPの膝MKが、インパネ1と干渉することを、抑制できる。なお、車体側部材がインパネではなく、後述するごとく、例えば、シートの前方に配置される座席であって、上記のような点を考慮しなければ、例えば、エアバッグを、上下の中間部位を前方に突出させるような外形形状として、車体側部材当接面をエアバッグの下端側に設けず、膨張完了時の下面側に、大腿部当接面を配設させない構成としてもよい。
【0030】
さらに、エアバッグに、図7の二点鎖線で示すような膝保護部45を配設させ、車体側部材当接面35のインパネ1との当接時に、膝保護部45によって、膝MKの前方を覆う構成としてもよく、このような構成とすれば、乗員MPの膝MKが、インパネ1と干渉することを、的確に抑制できる。なお、このような膝保護部45は、図7に示すごとく、乗員非受止状態において、膝の前方を覆うような構成としてもよく、また、前傾移動する上半身を受け止めたエアバッグがインパネと当接した際に、膝の前方を覆うような構成としてもよい。
【0031】
さらにまた、実施形態の乗員保護装置Sでは、エアバッグ25に、内部に流入した余剰の膨張用ガスを排気可能なベントホール33,33が、エアバッグ25(バッグ本体26)のインパネ1との当接時の非接触エリアの位置に、形成されていることから、膨張完了時のエアバッグ25(バッグ本体26)が、車体側部材当接面35をインパネ1に当接させた際に、ベントホール33から適宜膨張用ガスを排気させることにより、過度に内圧を上昇させることを抑制できる。勿論、このような点を考慮しなければ、エアバッグにベントホールを配設させない構成としてもよい。
【0032】
具体的には、実施形態の場合、ベントホール33は、膨張完了時のエアバッグ25(バッグ本体26)において、側面側となる位置であって、かつ、乗員MPの肩部MSの高さ以上の位置に、配設される構成である。膨張用ガスを乗員MPから離れた位置で排気させるためには、ベントホール33は、膨張完了時に乗員MPから離れた前面側若しくは側面側に、配設させることが好ましく、実施形態のエアバッグ25では、乗員MPの肩部MSの高さ以上の位置における側面側(左壁部30,右壁部31の前上端側)に配置させていることから、膨張用ガスを、乗員MPから確実に離れた位置で排気させることができて、乗員の腕部等に、ベントホール33から排気される膨張用ガスが当たることを抑制できる。乗員の肩部の高さ以上の位置であれば、ベントホールは、エアバッグの側面側に配設させてもよいが、肩部よりも下部側の位置に設ける場合、乗員の腕部との距離を考慮して、エアバッグの前面側に配設させることが望ましい。また、実施形態では、ベントホール33は、膨張完了時のエアバッグ25(バッグ本体26)において、インパネ1の上面1aより上方となる位置に、配設されていることから、バッグ本体26が、車体側部材当接面35をインパネ1に当接させた際に、インパネ1よりも上方に配置されるベントホール33から、円滑に膨張用ガスを排気させることができる。
【0033】
なお、実施形態では、乗員保護装置Sは、車体側部材としてのインパネ1を前方に配設させた助手席としてのシート3に、搭載されているが、車体側部材は、インパネに限定されるものではなく、例えば、図9,10に示すように、乗員保護装置を、後席(シート)3Aに搭載させ、膨張完了時のエアバッグ25Aを、車体側部材としての前席3Bに、当接させる構成としてもよい。このような構成の乗員保護装置においても、膨張を完了させたエアバッグ25Aの車体側部材当接面35Aが、前席3Bの背もたれ部4Bと当接することとなって、乗員MPが、前席3Bと接触することを、抑制でき、また、車体側部材当接面35Aを前席3Bの背もたれ部4Bに当接させることにより、エアバッグ25Aの乗員拘束時の反力を確保することもできる。
【0034】
また、エアバッグ50としては、図11,12に示す構成のものを使用してもよい。エアバッグ50は、バッグ本体51と、図示しないインフレーターと接続されてバッグ本体51内に膨張用ガスを流入させる導管部40Cと、バッグ本体51をラップベルト10に連結させるためのベルト取付部42Cと、を備えている。導管部40Cとベルト取付部42Cとは、前述のエアバッグ25における導管部40及びベルト取付部42と同一の構成であることから、同一の図符号の末尾に「C」を付して、詳細な説明を省略する。
【0035】
バッグ本体51は、膨張完了時の外形形状を、図11,12に示すように、軸方向を左右方向に略沿わせた略三角柱形状とされるもので、前述のバッグ本体26と同様に、膨張完了時に乗員MPから離れた前側に配置される前壁部52と、膨張完了時に乗員MP側に配置される後壁部53,下壁部54と、膨張完了時に左右方向側で対向して配置される左壁部55,右壁部56と、を備えている。このバッグ本体51においても、前述のバッグ本体26と同様に、膨張完了時のバッグ本体51における前面下端側(前壁部52の下端52a側)の部位が、車体側部材当接面60を構成している。また、このバッグ本体51においても、下壁部54が、膨張完了時に乗員MPの大腿部MTと当接可能な大腿部当接面61を構成し、後壁部53が、膨張完了時に乗員MPの上半身MUを拘束可能な上半身拘束面62を、構成している。
【0036】
このバッグ本体51(エアバッグ50)では、図12に示すように、単体で膨張させた状態において、下壁部54(大腿部当接面61)と後壁部53(上半身拘束面62)との交差角度θが、90°~150°の範囲内に設定されている。具体的には、単体で膨張させた状態の前後方向に略沿った断面における下壁部54と後壁部53との交差角度θ(詳細には、下壁部54と後壁部53との接線相互の交差角度θ、図12参照)は、120°程度に設定されている。バッグ本体51(エアバッグ50)は、シートベルト7に保持されて、シート3に着座した乗員MPをシートベルト7によって拘束している状態での膨張完了時においては、後壁部53を下壁部54に接近させるようにして(交差角度を小さくされるようにして)配置されることとなる(図16参照)。そして、乗員MPの前方を覆うように膨張を完了させた状態では、バッグ本体51(エアバッグ50)は、図16に示すように、後端側(後壁部53側)の上下方向側の幅寸法を、上端51aを頭部MHの前方に位置させるようにして、乗員MPの上半身MUを胸部MBから頭部MHにかけて拘束可能に構成され、下端側(下壁部54側)の前後方向側の幅寸法を、膨張完了時の前下端側となる前下端部位51bを、乗員MPの膝MKと略同等として、膝MKよりもわずかに前方となる位置に配置させるように、構成されている。そして、実施形態のエアバッグ50では、バッグ本体51において、膨張完了時の上端51a側の領域が、乗員MPの頭部MHを保護可能な頭部保護部63を構成している。また、このエアバッグ50では、膨張完了時の前下端部位51bは、乗員MPの膝MKと略同等となる位置に配置されるものの、上半身拘束面62によって前傾移動する乗員MPの上半身MUを拘束した状態では、エアバッグ50は、この前下端部位51bの前面(前壁部52の下端52a)から構成される車体側部材当接面60を、膝MKより前方となる位置で、インパネ1Cと当接させることとなる(図16参照)。このエアバッグ50においても、バッグ本体51は、詳細な図示を省略するが、膨張完了時の左右方向側の幅寸法を、前述のバッグ本体26と同様に、乗員の上半身MUと略同等として、構成されている。
【0037】
このエアバッグ50は、図13に示すような基材の周縁相互を結合させて、袋状に形成されている。具体的には、エアバッグ50は、図11~13に示すように、バッグ本体51を構成する乗員側パネル70及び前側パネル75と、導管部40Cを構成する2枚の導管部用パネル77,78と、ベルト取付部42Cを構成するベルト取付用パネル79と、から、構成されている。これらの乗員側パネル70,前側パネル75,導管部用パネル77,78,ベルト取付用パネル79は、それぞれ、ポリエステル糸やポリアミド糸等からなる可撓性を有した織布から形成されている。
【0038】
乗員側パネル70は、膨張完了時に乗員MP側に配置されて、大腿部当接面61から上半身拘束面62にかけての部位を構成するもので、主に後壁部53を構成する後壁構成部71と、主に下壁部54を構成する下壁構成部72と、を有しており、この後壁構成部71と下壁構成部72とを、膨張完了時の後下端側で連結させたような外形形状とされている。後壁構成部71は、後壁部53と、左壁部55,右壁部56における後側の領域と、を構成し、下壁構成部72は、下壁部54と、左壁部55,右壁部56における下側の領域と、を構成している。後壁構成部71と下壁構成部72とは、それぞれ、外形形状を略六角形状とされている。前側パネル75は、膨張完了時のバッグ本体51における前壁部52を主に構成するもので、詳細には、前壁部52と、左壁部55,右壁部56における前側の領域と、を構成している。前側パネル75は、外形形状を略六角形状とされるもので、具体的には、外形形状を、下左縁71a,後左縁72a相互、下右縁71b,後右縁72b相互を結合させた状態で、残りの外縁71c,72cを離隔させるように平らに展開した状態の後壁構成部71及び下壁構成部72と、略一致させた略六角形状とされている。乗員側パネル70,前側パネル75は、左右対称形とされている。そして、バッグ本体51は、下左縁71a,後左縁72a相互、下右縁71b,後右縁72b相互を結合させた状態の乗員側パネル70(後壁構成部71,下壁構成部72)の外縁71c,72cを、前側パネル75の外周縁75aに結合させることにより、袋状とされている。
【0039】
2枚の導管部用パネル77,78は、外形形状を同一とされるもので、導管部40Cにおける上側の領域と下側の領域とを、それぞれ構成している。ベルト取付用パネル79は、外形形状を略長方形板状として、二つ折りされて短手方向側の縁部相互を結合させることにより、ベルト取付部42Cを形成することとなる。
【0040】
そして、実施形態のバッグ本体51(エアバッグ50)において、単体で膨張させた状態での、下壁部54(大腿部当接面61)と後壁部53(上半身拘束面62)との交差角度θ(図12参照)は、乗員側パネル70の後壁構成部71における下左縁71a,下右縁71bの傾斜角度、具体的には、後壁構成部64の中心線(左右の中央を通る前後方向に沿った中心線C)に対する傾斜角度α(図13参照)を変更することにより、適宜設定することができる。この傾斜角度αを大きく設定すれば、単体で膨張させた状態での下壁部54と後壁部53との交差角度θを大きくすることができる。具体的には、実施形態のエアバッグ50(バッグ本体51)を構成する乗員側パネル70では、傾斜角度αは、75°程度に、設定されている。なお、詳細な図示はしないが、前述のエアバッグ25におけるバッグ本体26も、同様な形状の基材の周縁相互を結合させることにより袋状に形成されており、後壁構成部の下左縁,下右縁の傾斜角度は、このバッグ本体51を構成する後壁構成部の下左縁,下右縁の傾斜角度αよりも小さく設定されている。
【0041】
また、このエアバッグ50は、図14に示すように折り畳まれて、シート3Cに搭載されている。具体的には、図14のA,Bに示すように、バッグ本体51を、前側パネル75を平らに展開するように、前側パネル75と乗員側パネル70とを重ねた状態から、左縁側と右縁側とをそれぞれ前側パネル75側(乗員から離隔した側)に折り返して、左右方向側の幅寸法を縮小した左右縮小折りバッグ82を形成する。その後、左右縮小折りバッグ82を、図14のB,Cに示すように、上縁82a側と下縁82b側とから、それぞれ、前側パネル75側に向かって巻くようにロール折りして上側ロール折り部位83と下側ロール折り部位84を形成し、下側ロール折り部位84を導管部40Cの上に重ね、上側ロール折り部位83を下側ロール折り部位84の上に重ねれば、バッグ本体51を折り畳むことができる。そして、このように折り畳まれたエアバッグ50(バッグ本体51)は、図14のCに示すように、所定位置の周囲に、破断可能な折り崩れ防止用のテープ材87を巻き付けることによって折畳状態を維持された状態で、前述のエアバッグ25と同様に、周囲を、ラップベルト10とともにカバーによって覆われて、ラップベルト10に保持されつつ、ラップベルト10の領域に配置されることとなる。
【0042】
このような構成のエアバッグ50を使用する場合においても、エアバッグ50(バッグ本体51)が、シート3Cの前方に配置される車体側部材としてのインパネ1Cと当接可能な車体側部材当接面60を、備えていることから、図16に示すように、作動時において、シート3Cに対して前方から衝撃力が作用した際に、乗員MPが、仮に、シート3Cに対して若干前方移動するような態様となっても、エアバッグ50の車体側部材当接面60が、インパネ1Cの後面1bと当接することとなって、乗員MPがインパネ1Cと接触することを、抑制できる。また、エアバッグ50は、車体側部材当接面60をインパネ1Cの後面1bに当接させることにより、乗員拘束時の反力を確保できることから、乗員MPが上半身MUを前傾させるように移動する際に、上半身拘束面62の前方への移動ストロークを抑えて、エネルギー吸収量を高めることができ、上半身拘束面62により、乗員MPの上半身MUを安定して受け止めて保護することができる。
【0043】
また、上記構成のエアバッグ50は、膨張完了時の上端51a側に、乗員MPの頭部MHを保護可能な頭部保護部63を配設させる構成とされるとともに、単体で膨張させた状態において、上半身拘束面62(後壁部53)と大腿部当接面61(下壁部54)との交差角度θを、90°~150°の範囲内(実施形態の場合、120°程度)に設定されている。そのため、上記構成のエアバッグ50では、上半身拘束面と大腿部当接面との交差角度を90°未満に設定する場合と比較して、頭部保護部63を、乗員MPの頭部MHに向かうように、迅速に膨張させることができる。また、このエアバッグ50では、上半身拘束面62(後壁部53)と大腿部当接面61(下壁部54)との交差角度θを、90°~150°の範囲内に設定されるとともに、さらに、エアバッグ50は、折畳工程において、頭部保護部63側となる上端51a側を、導管部40C側に接近させつつ、前壁部52(前側パネル75)側に巻くように、ロール折りして、折り畳まれている。そのため、エアバッグ50(バッグ本体51)が、内部に膨張用ガスを流入させて、ラップベルト10から一旦前上方に向かって突出した後に、バッグ本体51の内部に流入する膨張用ガスを、上半身拘束面62(後壁部53)に略沿わせるようにして、斜め後上方に向かうように流入させることができて、頭部保護部63を、乗員MPの頭部MHに向かうように、迅速に膨張させることができる。そのため、乗員MPの頭部MHを、頭部保護部63によって迅速に拘束することができる。
【0044】
このエアバッグ50の展開状態を詳細に説明すれば、バッグ本体51は、導管部40Cを経て内部に膨張用ガスを流入させると、まず、ラップベルト10から前上方に突出し、その後、上側ロール折り部位83と下側ロール折り部位84との折りを解消するように展開膨張することとなる。具体的には、バッグ本体51は、まず、図15のAに示すように、上半身拘束面62(後壁部53)に略沿うように内部に流入する膨張用ガスによって、上側ロール折り部位83の折りを解消しつつ、後斜め上方(乗員MPの頭部MH側)に向かって展開することとなり、先端側(上端51a)の頭部保護部63を、迅速に、頭部MHの前面に到達させるように展開されることとなる。そして、その後、図15のBに示すように、下側ロール折り部位84の折りを解消しつつ、全体を厚く膨張させることとなる。
【0045】
また、エアバッグ50は、図18,19に示すような折り畳みにより、折り畳む構成としてもよい。具体的には、図18のA,Bに示すように、前側パネル75を平らに展開するように、前側パネル75と乗員側パネル70とを重ねた状態のバッグ本体51を、乗員側パネル70における後壁構成部71を下壁構成部72側に重ね、前側パネル75を内側で相互に重ねるように、略二つ折りし、この二つ折りバッグ90における左縁90a側と右縁90b側とを、それぞれ、後壁構成部71側に折り返して、図19のAに示すように、左右縮小折りバッグ91を形成する。その後、左右縮小折りバッグ91を、図19のA,Bに示すように、下縁91a側から後壁構成部71側に向かって巻くようにロール折りして、ロール折り部位92を形成すれば、バッグ本体51を折り畳むことができる。エアバッグ50をこのように折り畳んだ場合、バッグ本体51は、導管部40Cを経て内部に膨張用ガスを流入させてラップベルト10から前上方に突出しつつ、ロール折り部位90の折りを解消しつつ上下に広く展開することとなり、その後、全体を厚く膨張させることとなる(図20のA,B参照)。そのため、前述したごとく折り畳む場合と同様に、バッグ本体51は、上端51a側の頭部保護部63を、迅速に、頭部MHの前面に到達させるように展開されることとなる。
【0046】
また、このエアバッグ50は、単体で膨張させた状態での上半身拘束面62(後壁部53)と大腿部当接面61(下壁部54)との交差角度θを、90°~150°の範囲内(実施形態の場合120°程度)に設定されていることから、図17に示すごとく、背もたれ部4Dを座部5Dに対して後傾させるようにリクライニングさせたシート3Dに着座している乗員MPの前方を覆うように膨張させる場合にも、後壁部53(上半身拘束面62)を、乗員MPの上半身MUに略沿わせるように、配置させることができて、乗員MPを的確に保護することができる。そのため、単体で膨張させた状態での上半身拘束面62(後壁部53)と大腿部当接面61(下壁部54)との交差角度θを、90°~150°の範囲内に設定されるエアバッグ50であれば、例えば、自動運転対応の車両のシートにも好適であり、車体側部材を前方に配置させない状態であっても、自動運転時等において、リクライニングしたシートに着座している乗員も、好適に保護することができる。
【0047】
さらに、実施形態の乗員保護装置Sでは、エアバッグ25を保持させる保持ベルト部として、シートベルト7のラップベルト10を利用しているが、ラップベルトを利用せず、シートベルトとは別体の保持ベルト部を設け、この保持ベルト部に、エアバッグを保持させる構成としてもよい。実施形態の乗員保護装置Sでは、シートベルト7のラップベルト10にエアバッグ25を保持させる構成であるものの、インフレーター17が、シートベルト7のプリテンショナー機構の作動よりも遅れて(5ms程度)作動することから、シートベルト7により乗員MPのシート3に対する着座状態を、安定して維持させた状態で、エアバッグ25を膨張させることができ、エアバッグ25とシートベルト7とにより、乗員MPを安定して保護することができる。
【符号の説明】
【0048】
1…インストルメントパネル(インパネ、車体側部材)、1a…上面、3,3A,3C…シート、3B…前席(車体側部材)、7…シートベルト、10…ラップベルト、17…インフレーター、25,25A…エアバッグ、26…バッグ本体、33…ベントホール、35…車体側部材当接面、36…大腿部当接面、37…上半身拘束面、45…膝保護部、50…エアバッグ、51…バッグ本体、51a…上端、60…車体側部材当接面、61…大腿部当接面、62…上半身拘束面、63…頭部保護部、MP…乗員、MT…大腿部、MU…上半身、MD…下半身、MW…腰部、MK…膝、MS…肩部、S…乗員保護装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
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