(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151545
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】タッチ素子及びそれを備えた表示装置
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20220929BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20220929BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20220929BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
G06F3/041 640
G06F3/041 490
G09F9/00 366A
G09F9/00 313
B32B7/023
G02B5/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021179554
(22)【出願日】2021-11-02
(31)【優先権主張番号】202110326226.0
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】512299015
【氏名又は名称】ティーピーケイ タッチ ソリューションズ(シアメン)インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】リウ ミンチュン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン イールン
(72)【発明者】
【氏名】リウ シェンファ
(72)【発明者】
【氏名】リン チュンチー
(72)【発明者】
【氏名】チェン ウェイチョウ
(72)【発明者】
【氏名】チュー チュンフン
【テーマコード(参考)】
2H149
4F100
5G435
【Fターム(参考)】
2H149AA02
2H149AA18
2H149AB01
2H149BA02
2H149DA02
2H149DA04
2H149DA12
2H149EA03
2H149FA23Y
2H149FD47
4F100AB24B
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100BA02
4F100DC16B
4F100GB41
4F100JN01
4F100JN10A
4F100YY00A
5G435AA07
5G435AA12
5G435BB04
5G435BB05
5G435BB12
5G435DD11
5G435EE49
5G435FF05
5G435HH12
5G435HH20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ディスプレイの薄型・軽量化のため、反射防止シートの薄型化、及び、それを用いたタッチ素子、表示装置を提供する。
【解決手段】本開示によるタッチ素子40は、ポリマー位相リタデーション層20と、ポリマー位相リタデーション層20に接触するように構成されたタッチセンシング構造30とを含む。タッチ素子40と直線偏光層10との組み合わせは、本開示の実施形態の反射防止光学素子、例えば円偏光子を構成することができる。すなわち、本実施形態の反射防止光学素子は、タッチセンシング機能と光学機能とを同時に有する多機能モジュールであり、タッチセンシング構造30は、ポリマー位相リタデーション層20の光学特性に影響を与えない。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー位相リタデーション層と、
前記ポリマー位相リタデーション層と接触するように構成されたタッチセンシング構造であって、該タッチセンシング構造は銀ナノワイヤとポリマーとの複合層である、タッチセンシング構造と、
を含み、
前記タッチセンシング構造が配置される前のタッチ素子の位相リタデーション値R0と前記ポリマー位相リタデーション層の位相リタデーション値R0との差が、可視光領域において1%未満であることを特徴とする、
タッチ素子。
【請求項2】
前記タッチ素子の厚さは、64μm未満であることを特徴とする請求項1に記載のタッチ素子。
【請求項3】
前記ポリマー位相リタデーション層の厚さは、53μm未満であることを特徴とする請求項1又は2に記載のタッチ素子。
【請求項4】
前記タッチ素子の位相リタデーションΔR0は、次式で表されることを特徴とする請求項3に記載のタッチ素子。
ΔR0=R0-R0’
ここで、R0は、前記タッチ素子の温度が約25℃のとき、波長575nmで測定した前記タッチ素子の第1位相リタデーション値であり、R0’は、85℃で240時間保持して約25℃に戻った後に波長575nmで測定した前記タッチ素子の第2位相リタデーション値であり、ΔR0は、前記第1位相リタデーション値と前記第2位相リタデーション値との差の絶対値であり、ΔR0は7.0nm未満である。
【請求項5】
前記ΔR0は、0nm~2.0nm、1nm~2.0nm、0.2nm~2.0nm、0.3nm~2.0nm、0.2nm~1.0nm、0.3nm~0.7nm、又は0.7nm~2.0nmであることを特徴とする請求項4に記載のタッチ素子。
【請求項6】
前記ポリマー位相リタデーション層の厚さは約13μmであり、前記タッチ素子の位相リタデーションΔR0は次式で表されることを特徴とする請求項1又は2に記載のタッチ素子。
ΔR0=R0-R0’
ここで、R0は、前記タッチ素子の温度が約25℃のとき、波長575nmで測定した前記タッチ素子の第1位相リタデーション値を示し、R0’は、85℃で240時間保持して約25℃に戻った後に、波長575nmで測定した前記タッチ素子の第2位相リタデーション値を示し、ΔR0は、前記第1位相リタデーション値と前記第2位相リタデーション値との差の絶対値を示し、ΔR0は、0nm~1.0nm、0.1nm~1.0nm、0.2nm~1.0nm、又は0.7nmである。
【請求項7】
前記ポリマー位相リタデーション層の厚さは約25μmであり、前記タッチ素子の位相リタデーションΔR0は次式で表されることを特徴とする請求項1又は2に記載のタッチ素子。
ΔR0=R0-R0’
ここで、R0は、前記タッチ素子の温度が約25℃のとき、波長575nmで測定した前記タッチ素子の第1位相リタデーション値であり、R0’は、85℃で240時間保持して約25℃に戻った後に波長575nmで測定した前記タッチ素子の第2位相リタデーション値であり、ΔR0は、前記第1位相リタデーション値と前記第2位相リタデーション値との差の絶対値であり、ΔR0は、0nm~2.0nm、0.1nm~2.0nm、又は0.2nm~2.0nmである。
【請求項8】
前記タッチ素子は、直線偏光層に組み込まれていることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載のタッチ素子。
【請求項9】
表示領域を有する表示パネルと、
前記表示パネル上に配置された請求項1~8のいずれか1項に記載のタッチ素子であって、該タッチ素子の前記タッチセンシング構造は、前記表示領域に対応して重なる、
表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タッチ素子に関し、より詳細には、屈曲可能であり、高温に耐性がある超薄タッチ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、円偏光子(CPOL)は、主に位相リターダー(ここでは位相リタデーション層とも呼ぶ)と直線偏光子(ここでは直線偏光層とも呼ぶ)とを有しており、外部環境からの入射光によって発生する反射光による表示問題を解決するために、表示分野において反射防止膜として用いられることが多い。位相リタデーション層は、1/4波長板(QWP)であってもよい。
図1は、円偏光子又は反射防止シート100aが外部環境からの入射光Lを受ける様子を示す模式図である。
図1に示すように、外部環境からの入射光Lが最も外側の直線偏光層10aを通過すると、入射光Lは直線偏光層10aによって直線偏光入射光L
1に変換される。直線偏光入射光L
1の偏光方向は垂直方向である。そして、直線偏光入射光L
1が位相リタデーション層20aとして用いられる1/4波長板に入射することにより、直線偏光入射光L
1が位相リタデーションを生じ、直線偏光入射光L
1が左回り偏光L
clに変換される。左回り偏光L
clは、表示パネル200で反射された後、逆の右回り偏光L
crとなり、右回り偏光L
crは、位相リタデーション層20aとして用いられる1/4波長板を透過して直線偏光入射光L
2となる。直線偏光入射光L
2の偏光方向は、直線偏光入射光L
1の偏光方向と直交しているため、外部環境からの入射光Lは、直線偏光層10aを透過できず、反射防止シート100aに遮光される。
【0003】
さらに、反射防止シート100aは、一体化された製品を形成するために、タッチセンシング構造30aと組み合わされてもよい。
図2は、従来の一体型反射防止シート100a及びタッチセンシング構造30aの構造を模式的に示す図である。
図2に示すように、位相リタデーション層20aの材料は、通常、異方性液晶である(位相リタデーション層20aは液晶位相リタデーション層とも呼ばれる)。その問題点は、異方性液晶の製造工程において、機械的強度を付与するために基板20cを基材として使用する必要があり、その結果、反射防止シートが厚くなり、従来の円偏光子には、タッチセンシング構造30aと組み合わされた別の透明接着層20bを設ける必要があり、最終的な反射防止シートの厚さは64μmに達する。これは、ディスプレイの薄型・軽量化の流れにそぐわないため、反射防止シートの薄型化が必要である。
【0004】
また、韓国特許第102146739号公報(以下、KR’739とする)に示されているように、位相リタデーション層には、ガラスフィルム-センサフィルムセンサ(GFF)や両面センサを有するガラスフィルム(GF2)等の各種タッチセンサを取り付けることができる。しかしながら、位相リタデーション層は光学素子であるが、本開示ではタッチセンサは電気部品である。機能の異なる2つのコンポーネントを直接結合する場合、それぞれの特性が別のコンポーネントの影響を受けて無効になるかどうかを考慮する必要がある。すなわち、KR’739は、タッチセンサモジュールと組み合わせて位相リタデーション層を設ける可能性を広く開示しているにすぎず、KR’739は、タッチセンサモジュールが位相リタデーション層の特性(位相リタデーション値等)をシフトさせないことを証明していない。
【0005】
また、位相リタデーション層20aの材料に関して、KR’739は、位相リタデーション層20aが異方性液晶であってもよいし、ポリマーからなる薄膜位相リタデーション層であってもよいことを開示している。しかしながら、位相リタデーション層20aとして異方性液晶を用いた製品の信頼性には疑問がある。まず、高温環境下での耐候性シミュレーション実験の結果である
図3を参照する。
図3は、高温試験における液晶位相リタデーション層の位相リタデーション値の差が可視光領域で7nmより大きいことを示している。例えば、波長575nmの条件では、リタデーション値の差(差の絶対値)は7.2である。この実験結果は、液晶位相リタデーション層を反射防止シートに用いた場合、環境条件や使用状況等により、製品の光学機能(前述の反射防止機能等)が低下し、端末製品の表示効果に影響を与えることを示している。すなわち、KR’739は、タッチセンサモジュールとの組み合わせによる位相リタデーション層の可能性を広く開示しているに過ぎず、液晶位相リタデーション層の信頼性が要求を満たしていないという問題を認識していなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本開示は、上述の欠陥に対して提供される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、電気信号処理素子(タッチセンシング構造)と光学素子(ポリマー位相リタデーション層)とを一体化したタッチ素子を提供することにある。タッチセンサの構造は、銀ナノワイヤを含む。異なる特性/機能を有する2つの構成要素は互いに結合され、各特性は、統合要件に適合する別の構成部品の影響を受けない。
【0009】
本開示の目的は、タッチ素子を提供することである。タッチ素子は、高温に長時間保持された後、位相リタデーション値の非常に低い差を維持することができる。可視光領域におけるタッチ素子のポリマー位相リタデーション層の位相リタデーション値の差は、7.0nm未満、又は2.0nm未満であってもよく、0nm~2.0nm、0.1nm~2.0nm、0.2nm~2.0nm、0.3nm~2.0nm、0.2nm~1.0nm、0.3 nm~0.7nm、0.7nm~2.0nmであってもよい。これにより、信頼性の高いタッチ素子や製品を実現することができる。
【0010】
本開示の別の目的は、タッチ素子を提供することである。タッチ素子のポリマー位相リタデーション層は、基板として直接使用することができるので、追加の基板を必要としない。本開示に係るポリマー位相リタデーション層の厚さは53μm未満であるので、折り曲げ可能な極薄タッチ素子及びその製品を実現することができる。
【0011】
上記目的を達成するために、本開示は、ポリマー位相リタデーション層と、前記ポリマー位相リタデーション層と接触するように構成されたタッチセンシング構造であって、前記タッチセンシング構造は銀ナノワイヤとポリマーとの複合層である、タッチセンシング構造と、を含むタッチ素子を提供する。可視光領域において、前記タッチセンシング構造が配置される前のタッチ素子の位相リタデーション値R0と前記ポリマー位相リタデーション層の位相リタデーション値R0との差は、1%未満である。
【0012】
好ましくは、本開示のタッチ素子によれば、前記タッチ素子の厚さは64μm未満である。
【0013】
好ましくは、本発明のタッチ素子によれば、前記ポリマー位相リタデーション層の厚さは53μm未満である。
【0014】
好ましくは、本発明のタッチ素子によれば、前記タッチ素子の位相リタデーションΔR0は、次式で表される。
ΔR0=R0-R0’
ここで、R0は、前記タッチ素子の温度が約25℃のとき、波長575nmで測定した前記タッチ素子の第1位相リタデーション値であり、R0’は、85℃で240時間保持して約25℃に戻った後に波長575nmで測定した前記タッチ素子の第2位相リタデーション値であり、ΔR0は、前記第1位相リタデーション値と前記第2位相リタデーション値との差の絶対値であり、ΔR0は7.0nm未満である。
【0015】
好ましくは、本発明のタッチ素子によれば、ΔR0は、0nm~2.0nm、0.1nm~2.0nm、0.2nm~2.0nm、0.3nm~2.0nm、0.2nm~1.0nm、0.3nm~0.7nm、又は0.7nm~2.0nmである。
【0016】
好ましくは、本発明のタッチ素子によれば、前記ポリマー位相リタデーション層の厚さは約13μmであり、前記タッチ素子の位相リタデーションΔR0は次式で表される。
ΔR0=R0-R0’
ここで、R0は、前記タッチ素子の温度が約25℃のとき、波長575nmで測定した前記タッチ素子の第1位相リタデーション値を示し、R0’は、85℃で240時間保持して約25℃に戻った後に、波長575nmで測定した前記タッチ素子の第2位相リタデーション値を示し、ΔR0は、前記第1位相リタデーション値と前記第2位相リタデーション値との差の絶対値を示し、ΔR0は、0nm~1.0nm、0.1nm~1.0nm、0.2nm~1.0nm、又は0.7nmである。
【0017】
好ましくは、本発明のタッチ素子によれば、前記ポリマー位相リタデーション層の厚さは約25μmであり、前記タッチ素子の位相リタデーションΔR0は次式で表される。
ΔR0=R0-R0’
ここで、R0は、前記タッチ素子の温度が約25℃のとき、波長575nmで測定した前記タッチ素子の第1位相リタデーション値であり、R0’は、85℃で240時間保持して約25℃に戻った後に波長575nmで測定した前記タッチ素子の第2位相リタデーション値であり、ΔR0は、前記第1位相リタデーション値と前記第2位相リタデーション値との差の絶対値であり、ΔR0は、0nm~2.0nm、0.1nm~2.0nm、0.2nm~2.0nm、0.3nm~2.0nm、又は0.3nmである。
【0018】
好ましくは、本開示のタッチ素子によれば、前記タッチ素子は直線偏光層に組み込まれている。
【0019】
また、本発明は、上記目的を達成するために、表示領域を有する表示パネルと、前記表示パネル上に配置された前記タッチ素子とを備え、前記タッチ素子のタッチセンシング構造が前記表示領域に対応して重なる表示装置を提供する。
【0020】
好ましくは、本発明の表示装置によれば、表示パネルは、液晶表示パネル、有機エレクトロルミネッセンス表示パネル、有機発光ダイオード表示パネル、又はマイクロ発光ダイオード表示パネルであるが、これらに限定されない。
【0021】
当業者が本開示の目的、特徴及び効果を理解できるようにするために、以下の特定の実施形態及び添付の図面を用いて、以下のように本開示を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、反射防止の原理を示す、外部環境からの入射光を受ける円偏光子の概略図である。
【0023】
【
図2】
図2は、従来の反射防止シートとタッチセンシング構造との一体構造を示す模式図である。
【0024】
【
図3】
図3は、波長に対する、信頼性試験後の従来の液晶位相リタデーション層の位相リタデーション値の差を示す曲線図である。
【0025】
【
図4】
図4は、本発明の第1実施形態に係るタッチ素子の構成を示す模式図である。
【0026】
【
図5】
図5は、本発明の第1実施形態に係るタッチ素子と従来技術との位相リタデーション値の差を示す曲線図である。
【0027】
【
図6】
図6は、本開示の別の実施形態に係るタッチ素子の構造を示す概略図である。
【0028】
【
図7】
図7は、本開示の別の実施形態によるタッチ素子の構造を示す概略図である。
【0029】
【
図8】
図8は、本発明の一実施形態に係る表示装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付図面を参照して、本発明開示に係る実施形態をより詳細に説明し、本開示の達成の効果、特徴、方法を明らかにする。しかしながら、本開示は、以下の例示的な実施形態に限定されるものではなく、様々な形態で実施され得ることに留意されたい。
【0031】
ここで使用される用語は、特定の実施形態を例示するためにのみ使用され、本開示を限定することを意図するものではない。文脈においてさらに明確に示されない限り、本明細書において使用される単数形の用語「a」及び「the」は、複数形も含む。文脈においてさらに明確に示されない限り、本明細書において使用される用語「耐候性」及び「信頼性」は、同じ概念として理解されるべきである。
【0032】
さらに、要素が別の要素上にある(on)と呼ばれる場合、その要素は、直接別の要素上にあってもよく、又は介在要素が存在してもよいことを理解されたい。さらに、ここで参照される厚さの値は絶対的ではない。当業者は、参照される厚さが製造公差、測定誤差等を含み得ることを理解することができる。好ましくは、ここに列挙される厚さは、10%又は20%の範囲内であり得る。
【0033】
また、本明細書では、様々な要素を記述するために「第1」、「第2」等の用語を使用するが、これらの要素はこれらの用語に限定されるべきではないことも理解されたい。これらの用語は、各要素を区別するためにのみ使用される。従って、他の実施形態における第1要素は、本開示の教示から逸脱することなく、第2要素と称され得る。本明細書において、同一符号は同一要素を示す。
【0034】
図4は、本開示のタッチ素子40の概略図である。本開示によるタッチ素子40は、ポリマー位相リタデーション層20と、ポリマー位相リタデーション層20に接触するように構成されたタッチセンシング構造30とを含む。タッチ素子40と直線偏光層10との組み合わせは、本開示の実施形態の反射防止光学素子、例えば円偏光子を構成することができる。すなわち、本実施形態の反射防止光学素子は、タッチセンシング機能と光学機能とを同時に有する多機能モジュールであり、タッチセンシング構造30は、ポリマー位相リタデーション層20の光学特性に影響を与えない。
【0035】
具体的には、
図4を参照すると、前述の
図2の説明を参照して、直線偏光層10は、外部環境からの入射光Lを受光し、入射光Lを直線偏光入射光L
1に変換する。本開示の好ましい実施形態では、直線偏光入射光L
1は垂直偏光方向を有する。しかし、本開示はこれに限定されない。
【0036】
図4のポリマー位相リタデーション層20は、直線偏光層10の下方に配置された薄膜位相リタデーション層又は延伸位相リタデーション層とも呼ばれる。ポリマー位相リタデーション層20は、直線偏光入射光L
1が位相リタデーションを生じるように、直線偏光入射光L
1を受光する。本開示の好ましい実施形態では、位相リタデーションにより直線偏光入射光L1が左回り偏光L
clに変換され、左回り偏光L
clは左回り円偏光の偏光方向を有する。そして、左回り偏光L
clが表示パネル200で反射されると、左回り偏光L
clは、逆の右回り偏光L
crとなり、右回り偏光L
crは、ポリマー位相リタデーション層20を通過し、直線偏光入射光L
2となる。直線偏光入射光L
2の偏光方向は、直線偏光入射光L
1の直線偏光方向と直交するため、外部環境からの入射光は、直線偏光層10を通過できず、タッチ素子40で遮断される。しかし、本開示はこれに限定されない。
【0037】
具体的には、
図4を参照すると、タッチセンシング構造30は、ポリマー位相リタデーション層20上に、接触して配置される。例えば、タッチセンシング構造30は、単層電極構造を形成することができる。いくつかの実施態様において、タッチセンシング構造30は、単層タッチ電極層を含み、単層タッチ電極層は、ポリマー位相リタデーション層20の上、すなわち、単層タッチ電極層は、ポリマー位相リタデーション層20と直線偏光層10との間に設けられてもよい。さらに、いくつかの実施態様において、単層タッチ電極層は、ポリマー位相リタデーション層20の下に配置されてもよい。
図7を参照すると、ポリマー位相リタデーション層20は、タッチセンシング構造30と直線偏光層10との間に形成される。さらに、タッチセンシング構造30は、二重層電極構造を形成してもよい。いくつかの実施態様において、タッチセンシング構造30は、第1タッチ電極層32及び第2タッチ電極層33を含む。第1タッチ電極層32は、直線偏光層10とポリマー位相リタデーション層20との間に配置され、第2タッチ電極層33は、ポリマー位相リタデーション層20の下に配置される。
【0038】
図4は、本開示の第1実施形態に係るタッチ素子の構成を示す模式図である。
図4に示すように、本開示に係るタッチ素子40は、ポリマー位相リタデーション層20と、ポリマー位相リタデーション層20に接触するように構成されたタッチセンシング構造30とを含む。同様に、本実施形態の直線偏光層10は、本開示の実施形態の反射防止光学素子を形成するために、タッチセンシング構造30上に配置される。
【0039】
具体的には、
図4を参照して、ポリマー位相リタデーション層20は、直線偏光層10の下に配置される。ポリマー位相リタデーション層20は、直線偏光入射光L
1を受光し、直線偏光入射光L
1に位相リタデーションを生じさせる。本実施形態において、ポリマー位相リタデーション層20の材料は、無色のポリイミド(CPI)であり、機械的特性、耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性に優れている。しかし、本開示はこれに限定されない。さらに、本開示による無色ポリイミドは、ジアミン単量体と二無水物単量体との縮合反応により製造され、ジアミン単量体と二無水物単量体との比は、0.95~0.05:0.05~0.95の範囲であることを説明する。しかし、本開示はこれに限定されない。
【0040】
本開示の実施形態では、タッチセンシング構造30は、金属ナノワイヤ(銀ナノワイヤ等)を含み、用いられる方法は、ポリマー位相リタデーション層20上に銀ナノワイヤを含む分散液をコーティングすることであり、例えば、銀ナノワイヤを、水、アルコール、ケトン、エーテル、炭化水素、又は芳香族溶媒(ベンゼン、トルエン、キシレン等)の溶媒に混合して、コーティング/スラリーを形成することができることは、言及に値する。上記コーティング/スラリーは、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、スルホン酸塩、硫酸塩、ジスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、リン酸塩、フッ素含有界面活性剤等の添加剤、界面活性剤又は接着剤を含んでもよい。銀ナノワイヤ層は、当業者に公知のパターニング方法によって形成され、タッチセンシング構造30を形成することができ、その結果、タッチセンシング構造30は、ポリマー位相リタデーション層20上に配置され、ポリマー位相リタデーション層20と接触する。
【0041】
好ましくは、銀ナノワイヤは、ポリマー位相リタデーション層20の表面に脱落することなく固定されて銀ナノワイヤ層を形成し、銀ナノワイヤは、互いに接触して、連続した電流経路を提供して、導電性ネットワークをさらに形成することができる。換言すれば、銀ナノワイヤは、その交点で互いに接触し、電子を移動させる経路を形成する。すなわち、1つの銀ナノワイヤ層及び別の銀ナノワイヤ層は、交差部で直接接触し、それによって低抵抗電子移動経路を形成する。一実施形態では、ある領域又は構造体のシート抵抗が108オーム/スクエアより高く、好ましくは104オーム/スクエア、3000オーム/スクエア、1000オーム/スクエア、350オーム/スクエア、又は100オーム/スクエアより高い場合、その領域又は構造体は電気絶縁体と見なすことができる。一実施形態において、銀ナノワイヤを含む銀ナノワイヤ層のシート抵抗は、100オーム/スクエア未満である。
【0042】
一実施形態では、ポリマー層が銀ナノワイヤを覆うように、ポリマー層がさらに設けられてもよい。特定の実施形態では、適切なポリマー/ポリマー物質が銀ナノワイヤ上に被覆され、流体状態/特性を有するポリマーが銀ナノワイヤ間を貫通して充填剤を形成することができ、銀ナノワイヤがポリマー/ポリマー物質内に埋め込まれる。ポリマーが硬化すると、複合構造が形成される。すなわち、この工程では、ポリマー/ポリマー物質が銀ナノワイヤ上のポリマー層で被覆され、銀ナノワイヤがポリマー層に埋め込まれて複合構造を形成する。本開示のいくつかの実施態様において、ポリマー層は、絶縁材料で形成される。例えば、ポリマー層の材料は、非導電性樹脂又は他の有機材料、例えば、ポリアクリレート、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリシロキサン、ポリ(シリコン-アクリル)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリカーボネート(PC)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリ-3、4-エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、ポリスチレンスルホン酸(PSS)、セラミック材料等であり得る。本開示のいくつかの実施形態において、ポリマー層は、スピンコーティング、スプレーコーティング、印刷等によって形成され得る。いくつかの実施形態では、ポリマー層の厚さは、約20ナノメートルから10ミクロン、又は50ナノメートルから200ナノメートル、又は30ナノメートルから100ナノメートルである。例えば、ポリマー層の厚さは、約90ナノメートル又は100ナノメートルであり得る。簡単のために、本開示はポリマー層を示さない。
【0043】
本開示は、位相リタデーション材料(すなわち、ポリマー位相リタデーション層20の材料)の位相リタデーション値に関するものであるので、まず、その測定方法について説明する。本開示の実施形態は、物体の厚み方向に垂直な面における位相リタデーション値、すなわち、面内位相リタデーション/位相リタデーション(R0)を測定する。本開示の実施形態は、可視光(例えば、400~700nm)の波長範囲内で物体の面内位相リタデーション値を測定するために、市販の装置モデルであるAxoScan(Axometrics社製)を使用する。データを簡潔にするために、550nm又は575nmのような特定の波長における面内位相リタデーション値のみが記録される。
【0044】
具体的には、本発明に係るポリマー位相リタデーション層20の信頼性試験後の位相リタデーション値の差ΔRは、次式で表される。
ΔR0=R0-R0’
ここで、R0は、第1温度の初期状態におけるポリマー位相リタデーション層20の第1位相リタデーション値を表し、R0’は、ポリマー位相リタデーション層20を第2温度に一定時間保った後、第1温度に戻ったときに測定される第2位相リタデーション値を表し、ΔR0は、第1位相リタデーションR0と第2位相リタデーション値R0’との差の絶対値を表す。すなわち、本発明のポリマー位相リタデーション層20の位相リタデーションが温度の影響を受けるか否かは、位相リタデーション値の差ΔR0、すなわち、本発明の実施形態のポリマー位相リタデーション層20及びポリマー位相リタデーション層20を含む製品(タッチ素子、反射防止素子、ディスプレイ等)の耐候性を評価するために、高温(100、240、360、500時間以上)での試験後の差ΔR0によって判断される。本発明に係るポリマー位相リタデーション層20のΔR0は、0.1nm~2.0nmの範囲である。従って、本発明のポリマー位相リタデーション層20/タッチ素子/反射防止素子/端子製品は、高温の影響を受けないと判断できる。
【0045】
なお、位相リタデーション値の差ΔR0は、理想的には0(つまり、位相リタデーション値は温度の影響を受けない)である。しかしながら、本開示の以下の実施形態は、測定器の誤差の影響を受け得る。本開示の測定装置で測定した、ポリマー位相リタデーション層20を有するタッチ素子40の差ΔR0は、0.1nm~2.0nmの範囲である。しかし、ユーザは、要求に応じて誤差範囲の小さい測定器を選択して差ΔR0を測定することができるので、測定値を小さくすることができる。これは例示的な説明に過ぎず、本開示はこれに限定されない。また、本発明における位相リタデーション値は、可視光の波長(例えば、400~700nm)の範囲で測定されたものと定義することができ、上記式で算出される差は、同一波長における位相リタデーション値の差である。あるいは、説明の便宜上、本開示における位相リタデーション値は、550nm又は575nmのような特定の波長で測定されるものとして定義することができ、上記の式によって計算される差は、550nm又は575nmにおける位相リタデーション値の差値である。また、明確にするために、上記式から得られる差が負である場合には、絶対値の数学的計算を行う。
【0046】
具体的には、本開示では、上記信頼性試験を行うための第1温度を室温(例えば、25℃)とし、第2温度を85℃とし、恒温恒湿試験機(モデル:GIANT FORCE INSTRUMENT ENTERPRISE CO., LTD.製GTH-408-40-CP-AR)に被試験物を240時間入れた後、室温(約5~10分間)で取り出して放置し、上記位相リタデーション値を測定する。なお、被試験物は上下のガラス片で挟持固定された後、恒温恒湿試験機に投入され、被試験物と上下のガラス片との間に隙間があり、恒温恒湿試験機の試験環境・条件に晒される。
【0047】
表1は、本発明の第1実施形態に係るポリマー位相リタデーション層20及び従来の液晶位相リタデーション層(位相リタデーション値測定用の光学接着剤により液晶位相リタデーション層を基板に貼り付けたもの)の位相リタデーション値R
0を種々の波長で測定したものである。この2つの位相リタデーション値R
0は、可視光の範囲で類似している。本発明の第1実施形態に係るポリマー位相リタデーション層20の入射光Lの波長550nmで測定した位相リタデーション値R
0は138.71nmであり、理想的な位相リタデーション値R
0である138.75nmに極めて近い。このように、本発明の第1実施形態に係るポリマー位相リタデーション層20は、実際の用途に応じた良好な光学特性を有し、上述した液晶位相リタデーション層に取って代わることができると判断できる。
【表1】
【0048】
さらに、タッチセンシング構造30は、一般に、インジウム錫酸化物(ITO)、金属メッシュ、銀ナノワイヤ(SNW)、カーボンナノチューブ(CNT)、グラフェン及びその他の材料を含み得るが、本開示は、銀ナノワイヤ/ポリマー層複合タッチセンシング構造30とポリマー位相リタデーション層20との組み合わせを提案し、複合タッチセンシング構造30が使用される場合、可視光の範囲で測定された測定位相リタデーション値R0と、別個のポリマー位相リタデーション層20(すなわち、複合タッチセンシング構造30は使用されない)の測定された位相リタデーション値とが極めて近いことが説明される。例えば、2つの位相リタデーション値R0の差は1%未満である。表2から、波長575nmでの試験では、複合タッチセンシング構造30の第1位相リタデーション値R0と複合タッチセンシング構造30のない第1位相リタデーション値との差が0.3%と算出されていることが分かる。前述の実験によれば、本開示における銀ナノワイヤ/ポリマー層を含む複合型のタッチセンシング構造30、及びポリマー位相リタデーション層20を含むタッチ素子40は、高い安定性を有し、応用のための実際的要求に適していることが分かる。上述したように、KR’739は、位相リタデーション層とタッチセンシングモジュールとの組み合わせの可能性を大まかに提案したに過ぎず、KR’739は、タッチセンシング素子が位相リタデーション層の光学特性(位相リタデーション値等)をドリフトさせないことを証明していない。すなわち、本開示は、KR’739と比較して、銀ナノワイヤ/ポリマー層及びポリマー位相リタデーション層からなるタッチセンシング構造を統合するための実現可能な解決策を提案し、ポリマー位相リタデーション層20及びこの構造の下に銀ナノワイヤ/ポリマー層を含む複合タッチセンシング構造30は、互いの特性に影響を与えることなく、互いに整合させることができる。
【0049】
しかしながら、一般に、インジウム錫酸化物(ITO)、金属メッシュ、カーボンナノチューブ(CNT)、グラフェン及び他の材料は、ポリマー位相リタデーション層20と組み合わされる。インジウム錫酸化物(ITO)、金属メッシュ、カーボンナノチューブ(CNT)、グラフェン及びその他の材料をポリマー位相リタデーション層20と組み合わせると、ポリマー位相リタデーション層20の特性(位相リタデーション値等)に大きなばらつきが生じる可能性がある。本開示の実施形態により、(インジウムスズ酸化物(ITO)、金属メッシュ、カーボンナノチューブ(CNT)、グラフェン及びポリマー位相リタデーション層20と組み合わされる他の材料の代わりに)銀ナノワイヤ/ポリマー層を含む複合導電層は、ポリマー位相リタデーション層20に対して光学的影響を有さないことが確認された(すなわち、タッチ素子の位相リタデーション値R
0と、タッチセンシング構造が配置される前のポリマー位相リタデーション層の位相リタデーション値R
0との差が1%未満である)。
【表2】
【0050】
具体的には、本発明の第1実施形態では、前述の方法により、銀ナノワイヤ/ポリマー層を含む複合導電層を13μmの厚さのポリマー位相リタデーション層20上に配置し、信頼性試験後に位相リタデーション値を測定する(すなわち、温度を上昇させ、85℃で240時間保持する)。
図5及び表3を参照されたい。
図5は、波長に対する、本発明の第1実施形態に係るタッチ素子と従来技術との位相リタデーション値の差を示す曲線図である。表3に、波長575nmで測定した本発明の第1実施形態の位相リタデーション値と従来の位相リタデーション値との差ΔR
0の値を示す。表3によれば、本発明の第1実施形態における波長575nmで測定した位相リタデーション値の差ΔR
0は0.7であり、従来技術における波長575nmで測定した位相リタデーション値の差ΔR
0は7.2である。
図5は、本発明の第1実施形態の位相リタデーション値の差ΔR
0が可視光領域で0.2nm~1.0nmであり、可視光領域で測定した従来技術の位相リタデーション値の差ΔR
0が7.0nm以上であることを示している。従来の液晶位相リタデーション層は、高温環境下に置かれると光学特性が大きく劣化し、反射防止効果が低下し、表示製品の品質が低下する。従って、本開示において高温環境下で使用した場合に良好な製品品質を維持するためには、信頼性試験(すなわち、温度を上昇させ、85℃で240時間保持する)後に測定した位相リタデーション値の差ΔR
0が7.0nm未満でなければならない。
【0051】
本発明に係るポリマー位相リタデーション層20の位相リタデーション値の差ΔR
0は、従来のタッチ素子の位相リタデーション値の差ΔR
0よりも著しく小さいので、ポリマー位相リタデーション層20は、耐候性に優れている。なお、本実施形態における575nmで測定した位相リタデーション値の差ΔR
0は0.7であるが、ΔR
0の下限は、機器誤差、製膜公差、フィルム材料のバッチ差等の要因から、0nm~0.1nmであることが合理的に期待でき、ΔR
0は、0nm~1.0nm、0.1nm~1.0nm、0.2nm~1.0nm、0.7nmである。
【表3】
【0052】
また、本発明の第1実施形態で用いられるポリマー位相リタデーション層20の厚さは13μm程度であり、タッチ素子40全体の厚さは25μmである。これに対して、従来のタッチ素子の総厚は約64μmである。本開示の実施形態の厚さは、大幅に低減される。そのため、折り曲げ可能な極薄タッチ素子を実現するには、薄型化が有利である。従って、本発明の実施形態に係るタッチ素子及び製品は、従来技術に比べて、厚みが薄く、耐候性が高い。
【0053】
本開示の他の実施形態において、本開示によるタッチ素子40のポリマー位相リタデーション層20の材料は、無色ポリイミド(CPI)以外の材料、例えば、シクロオレフィンポリマー(COP)、トリアセチルセルロース(TAC)又はポリカーボネート(PC)、及び他のフィルム材料であり得ることは言及に値する。
【0054】
表4に、本発明の第2実施形態と比較例の厚みの異なるフィルム材料を用いた場合の位相リタデーション値の差ΔR0の値を示す。本開示のタッチ素子40については、コストや厚さを考慮して、必要に応じて適切な材料をポリマー位相リタデーション層20の材料として選択することができることは理解可能である。表4によれば、本実施形態では、25μm厚のポリマー位相リタデーション層20を用いている。耐候性試験後に575nmで測定した位相リタデーション値の差ΔR0は0.3nmであり、従来技術に比べて光学特性のばらつきが少なく、信頼性が高いことが分かる。また、本発明の第2実施形態で用いられるポリマー位相リタデーション層20の厚さは25μmのみであり、タッチ素子40全体の厚さは37μmである。本発明の実施形態の厚みは、従来のタッチ素子の総厚み(64μm)に比べて大幅に薄くなっている。薄型化は折り曲げ可能な極薄タッチ素子を実現するのに有利である。
【0055】
なお、表4の比較例では、厚さ53μmのポリマー位相リタデーション層20が用いられている。タッチ素子40の全体の厚さは65μmであり、従来のタッチ素子の全体の厚さ(64μm)を超えるため、本開示では、64μmを超える厚さのポリマー位相リタデーション層は用いない。この比較例では、耐候性試験後に測定した位相リタデーションの差ΔR
0を575nmで試験したところ2.0 nmであった。そこで、本発明で用いるポリマー位相リタデーション層20を53μmの厚さで区別し、この厚さで測定した位相リタデーションの差を本発明の実施形態における位相リタデーションの差の特許請求の範囲に換算する。すなわち、2.0nmの値のΔR
0は、本発明のポリマー位相リタデーション層20の耐候性試験後の差の変動の上限とすることができる。
【表4】
【0056】
本発明の第2実施形態及び比較例を総合的に考慮すると、本発明のタッチ素子40の位相リタデーションの差ΔR0は、0nm~2.0nm、0.1nm~2.0nm、0.2nm~2.0nm、0.3nm~2.0nm、又は0.3nmとすることができる。
【0057】
本開示の技術分野における通常の知識を有する者が、可能な変形をより明確に理解できるように、タッチ素子の他の例を以下に示す。なお、上述した実施形態と同じ符号を付した要素は、
図4を用いて説明した要素と実質的に同じである。タッチ素子40と同じ要素、特徴、及び利点は繰り返さない。
【0058】
本開示係る他の実施形態を示す
図6を参照されたい。
図4との主な相違点は、本実施形態のタッチ素子40のタッチセンシング構造30がポリマー位相リタデーション層20の下に配置されていることである。ここでは、本実施形態の関連する説明は繰り返さない(前述の説明を参照されたい)。
【0059】
本開示に係る他の実施形態を示す
図7を参照されたい。
図4との主な相違点は、本実施形態のタッチ素子40のタッチセンシング構造30が、第1タッチ電極層32と第2タッチ電極層33とを備えていることである。第1タッチ電極層32は、直線偏光層10とポリマー位相リタデーション層20との間に配置され、第2タッチ電極層33は、ポリマー位相リタデーション層20の下に配置される。ここでは、本実施形態の関連する説明は繰り返さない(前述の説明を参照されたい)。
【0060】
本開示の第1及び第2実施形態及び比較例を総合的に考慮すると、本開示のタッチ素子40の位相リタデーションの差ΔR0は、7.0nm未満、又は0nmと2.0nm、0.1nmと2.0nm、0.2nmと2.0nm、0.3nmと2.0nm、0.2nmと1.0nm、0.3nmと0.7nm、又は0.7nmと2.0nmの間であり得る。異なる位置に配置されたタッチセンシング構造30は、位相リタデーションの差ΔR0に影響を与えず、本開示の技術分野に精通した者であれば、ここでは挙げないが、上記の例に基づいて様々なバリエーションや調整を行うことができることは理解されよう。
【0061】
以下、本発明のタッチ素子を表示装置に適用した実施形態について説明する。
【0062】
図8を参照されたい。
図8は、本発明の好ましい実施形態に係る表示装置の概略構成図である。表示装置300は、表示パネル200と、タッチ素子40とを備える。表示パネル200は、表示領域を有する。タッチ素子40は、表示パネル200上に配置されている。タッチ素子40のタッチセンシング構造30は、対応して表示領域に重なる。具体的には、表示パネル200は、液晶表示パネル(LCD)、有機エレクトロルミネッセンス表示パネル、有機発光ダイオード表示パネル、又はマイクロ発光ダイオード表示パネル(μLEDディスプレイ)であってもよいが、これらに限定されない。他の実施形態では、タッチ素子40及び直線偏光層10を反射防止素子として構成し、表示パネル200に組み付けて最終製品とすることができる。
【0063】
最後に、本開示の技術的特徴及びその達成可能な技術的効果は、少なくとも以下を含む。
【0064】
1.本発明に係るタッチ素子40は、85℃の高温に240時間保持した後でも、位相リタデーションの差が非常に小さく、高い耐熱性と信頼性を有するタッチ素子及び製品を実現することができる。
【0065】
2.本開示によるタッチ素子40のポリマー位相リタデーション層20は、追加の基板を必要とせずに直接基板として使用することができ、本開示のポリマー位相リタデーション層20の厚さは、曲げ可能な超薄タッチ素子を製造するために53μm未満に選択することができる。さらに、本開示の複合構造を有するタッチセンシング構造30は、ポリマー位相リタデーション層20と銀ナノワイヤとからなり、良好な整合特性を有する。
【0066】
本開示の実施形態は、特定の実施形態と共に上述される。技術分野に精通している者であれば、本明細書に開示されている内容から、本開示の技術的特徴、利点及び効果を容易に理解することができる。
【0067】
上述の説明は、本開示の好ましい実施形態のみであり、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。本開示の精神から逸脱することなく行われた他の全ての同等の変形又は修正は、以下の特許請求の範囲の範囲に含まれるべきである。