(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151571
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】立体成形品及び立体成形品の製造方法、並びに振動板及び振動板の製造方法
(51)【国際特許分類】
B27N 3/02 20060101AFI20220929BHJP
H04R 7/02 20060101ALI20220929BHJP
H04R 31/00 20060101ALI20220929BHJP
B27N 3/08 20060101ALI20220929BHJP
B27N 3/04 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
B27N3/02 B
H04R7/02 Z
H04R31/00 A
B27N3/08
B27N3/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021210158
(22)【出願日】2021-12-24
(31)【優先権主張番号】P 2021050828
(32)【優先日】2021-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】519028416
【氏名又は名称】株式会社エムケイテック
(74)【代理人】
【識別番号】100178951
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 和家
(72)【発明者】
【氏名】久保田 倫久
(72)【発明者】
【氏名】久保田 康史
【テーマコード(参考)】
2B260
5D016
【Fターム(参考)】
2B260BA02
2B260BA03
2B260BA04
2B260BA07
2B260CD13
2B260EA05
5D016AA09
5D016EA03
5D016EB01
5D016HA07
5D016JA06
(57)【要約】
【課題】自然由来の材料を用い、大掛かりな設備を必要とすることなく、簡易かつ短い成形タクトで製造することができる、立体成形品、振動板、及びそれらの製造方法を提供する。
【解決手段】最大粒径が1000μm以下の木粉と、セルロースナノファイバーと、水と、を混合し、加熱プレスして成形された立体成形品である。また、最大粒径が500μm以下の木粉と、固形分換算で、木粉100重量%に対して0.1重量%以上50重量%以下のセルロースナノファイバーと、水と、を混合する混合工程(S1)と、混合工程(S1)によって混合した材料を金型にフォーミングするフォーミング工程(S2)と、金型によって加熱プレスする加熱プレス工程(S3)と、金型から成形品を取り出す取出工程(S4)と、を有する立体成形品の製造方法である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
最大粒径が1000μm以下の木粉と、セルロースナノファイバーと、水と、を混合し、加熱プレスして成形されたものであることを特徴とする立体成形品。
【請求項2】
最大粒径が500μm以下の木粉と、セルロースナノファイバーと、水と、を混合し、加熱プレスして成形されたものであることを特徴とする振動板。
【請求項3】
最大粒径が1000μm以下の木粉と、固形分換算で、前記木粉100重量%に対して0.1重量%以上50重量%以下のセルロースナノファイバーと、水と、を混合する混合工程と、
前記混合工程によって混合した材料を金型にフォーミングするフォーミング工程と、
前記金型によって加熱プレスする加熱プレス工程と、
前記金型から成形品を取り出す取出工程と、
を有することを特徴とする立体成形品の製造方法。
【請求項4】
最大粒径が500μm以下の木粉と、固形分換算で、該木粉100重量%に対して0.1重量%以上50重量%以下のセルロースナノファイバーと、水と、を混合する混合工程と、
前記混合工程によって混合した材料を金型にフォーミングするフォーミング工程と、
前記金型によって加熱プレスする加熱プレス工程と、
前記金型から成形品を取り出す取出工程と、
を有することを特徴とする振動板の製造方法。
【請求項5】
最大粒径が1000μm以下の、葉紛、茎紛、種子紛若しくは草粉からなる粉体、又は該粉体と最大粒径が1000μm以下の木粉とを混合した混合粉体と、セルロースナノファイバーと、水と、を混合し、加熱プレスして成形されたものであることを特徴とする立体成形品。
【請求項6】
最大粒径が1000μm以下の、葉紛、茎紛、種子紛若しくは草粉からなる粉体、又は該粉体と最大粒径が1000μm以下の木粉とを混合した混合粉体と、固形分換算で、該粉体又は該混合粉体100重量%に対して0.1重量%以上50重量%以下のセルロースナノファイバーと、水と、を混合する混合工程と、
前記混合工程によって混合した材料を金型にフォーミングするフォーミング工程と、
前記金型によって加熱プレスする加熱プレス工程と、
前記金型から成形品を取り出す取出工程と、
を有することを特徴とする立体成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木粉と、セルロースナノファイバーと、水と、を混合し、加熱プレスして成形された、立体成形品、振動板、及びそれらの製造方法、並びに葉紛、茎紛、種子紛若しくは草粉からなる粉体、又は該粉体と木粉とを混合した混合粉体と、セルロースナノファイバーと、水と、を混合し、加熱プレスして成形された立体成形品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製材工場等で生じる大量の大鋸屑などの木くずは、その用途が、主に肥料や固形燃料等に限られており、その多くが廃棄されているのが現状である。一方で、プラスチックなどの石油化学製品よりも地球環境にやさしい木質系バイオマスを、材料として用いる成形技術も提案されている(例えば、特許文献1や非特許文献1等参照)。また、立体成形品の一つである、イヤホン、ヘッドホン、スピーカ等の振動板においては、木粉にイソシアネート系のバインダーを添加して混練し、加熱プレスして成形する製造方法が提案されている(例えば、特許文献2等参照)。
【0003】
特許文献1記載の成形体の製造方法は、ポリエチレングリコール等の流動化促進剤が添加された木質系材料に水蒸気を接触させた後に、乾燥、粉砕、加熱プレスの各工程を実施して立体成形品を得るものである。しなかしながら、特許文献1記載の成形体の製造方法には、水蒸気を供給するための大掛かりな設備や特殊な設備が必要であるとともに、乾燥等の煩雑な工程が必要となるという問題がある。
【0004】
また、非特許文献1記載の三次元成形加工技術は、木質系粉末を射出成形や後方押出成形することによって、木質系材料の持つ、流動、自己接着特性を利用して、木質系材料のみによって立体成形品を得る製造方法である。しかしながら、非特許文献1記載の三次元成形加工技術は、成形タクトが非常に長くなるとともに、高い加圧能力を備えた高額で大掛かりなプレス機が必要になってしまう。
【0005】
さらに、特許文献2記載の振動板の製造方法においては、化学的に合成されたバインダーを用いており、環境に優しいものとはいえない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-261159号公報
【特許文献2】特開2007-044966号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】梶川 翔平,“木質系粉末の流動・自己接着による三次元成形加工技術”,[online],2017年5月18日,電気通信大学 新技術説明会,[令和3年2月2日検索],インターネット <URL:https://shingi.jst.go.jp/kobetsu/uec/2017_uec/tech_property.html#pbBlock49846>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記事情に鑑み、自然由来の材料を用い、大掛かりな設備を必要とすることなく、簡易かつ短い成形タクトで製造することができる、立体成形品、振動板、及びそれらの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を解決する本発明における立体成形品は、最大粒径が1000μm以下の木粉と、セルロースナノファイバーと、水と、を混合し、加熱プレスして成形されたものであることを特徴とする。
【0010】
ここで、前記立体成形品の種類は、自動車の内装部品などの各種部品、食器、雑貨や各種小物等、特に限定されるものではない。また、本出願におけるセルロースナノファイバーとは、繊維径がナノサイズのセルロース繊維をいう。セルロースナノファイバーの繊維径(平均繊維径)は、例えば2nm~100nmである。セルロースナノファイバーの長さ(平均長さ)は、例えば0.1μm~100μmである。セルロースナノファイバーのアスペクト比(長さ/径)は、例えば50~1000である。さらに、本出願における木粉とは、木材が細かく粉砕された粉をいい、鋸で木材を切る際に出る大鋸屑であってもよい。
【0011】
本発明の立体成形品によれば、自然由来の材料によって、十分な機械的強度を備えた成形品を得ることができる。
【0012】
上記目的を解決する本発明における振動板は、最大粒径が500μm以下の木粉と、セルロースナノファイバーと、水と、を混合し、加熱プレスして成形されたものであることを特徴とする。
【0013】
ここで、本発明における振動板は、イヤホン、ヘッドホン、スピーカ等の振動板に用いることができる。また、前記木粉は特に限定されるものではなく、例えば、杉、檜、マツ等の大鋸屑を用いることができ、これらを混合して用いてもよい。前記木粉は、音響特性の点で最大粒径が250μm以下のものを用いることが好ましい。さらに、強度を向上させるため、自然由来のパルプを骨材として混合してもよい。また、前記木粉は、平均粒径が、125μm以上250μm以下のものを用いてもよい。本出願における木粉の平均粒径とは、粉末を篩により分級して目開きに対する累積重量%曲線を作成し、その50重量%に該当する目開きの値の読みをいう。
【0014】
本発明の振動板によれば、自然由来の材料によって、音響特性に優れた振動板を得ることができる。
【0015】
上記目的を解決する本発明における立体成形品の製造方法は、最大粒径が1000μm以下の木粉と、固形分換算で、前記木粉100重量%に対して0.1重量%以上50重量%以下のセルロースナノファイバーと、水と、を混合する混合工程と、
前記混合工程によって混合した材料を金型にフォーミングするフォーミング工程と、
前記金型によって加熱プレスする加熱プレス工程と、
前記金型から成形品を取り出す取出工程と、
を有することを特徴とする。
【0016】
ここで、前記混合工程において、前記セルロースナノファイバーは、前記木粉100重量%に対して0.1重量%以上30重量%以下混合する態様がより好ましく、前記木粉100重量%に対して0.1重量%以上10重量%以下混合する態様がさらに好ましい。
【0017】
本発明の立体成形品の製造方法によれば、前記加熱プレス工程において、前記木粉が水分を吸収するときに前記セルロースナノファイバーが入り込むことで、水素結合を補強するといった、該セルロースナノファイバーが、いわゆる水素結合の強化剤(バインダー)の作用を奏するものと推測される。これによって、自然由来の材料を用い、大掛かりな設備を必要とすることなく、簡易かつ短い成形タクトで、十分な機械的強度を備えた立体成形品を得ることができる。特に、前記混合工程において、水を混合することで、前記加熱プレス工程において、水分を保持しながら加熱プレスすることが可能となり、前記セルロースナノファイバーの凝集を防ぎ、機械的強度のバラツキを抑制することができるものと推測される。
【0018】
上記目的を解決する本発明における振動板の製造方法は、最大粒径が500μm以下の木粉と、固形分換算で、該木粉100重量%に対して0.1重量%以上50重量%以下のセルロースナノファイバーと、水と、を混合する混合工程と、
前記混合工程によって混合した材料を金型にフォーミングするフォーミング工程と、
前記金型によって加熱プレスする加熱プレス工程と、
前記金型から成形品を取り出す取出工程と、
を有することを特徴とする。
【0019】
ここで、前記混合工程において、前記木粉100重量%に対して3重量%以上10重量%以下の前記セルロースナノファイバーを混合することがより好ましい。混合する前記セルロースナノファイバーが、前記木粉100重量%に対して3重量%未満であると、形状の維持が困難になったり前記振動板としての機械的強度が不十分になるおそれがある。一方、混合する前記セルロースナノファイバーが、前記木粉100重量%に対して10重量%を超えると、コストの面で不利になるおそれがある。
【0020】
また、前記混合工程において、前記木粉は、音響特性の点で最大粒径が250μm以下のものを用いることが好ましい。さらに、強度を向上させるため、自然由来のパルプを骨材として混合してもよい。また、前記木粉は、平均粒径が、125μm以上250μm以下のものを用いてもよい。
【0021】
前記混合工程では、前記木粉と前記セルロースナノファイバーに対して、重量比で3倍以上7倍以下の水を混合する混合工程であってもよい。混合する水の量が、前記木粉と前記セルロースナノファイバーに対して、重量比で3倍未満であると、混合が困難となって均一に混ざらない(前記木粉と前記セルロースナノファイバーに対して水が染みていかない)場合がある。一方、混合する水の量が、前記木粉と前記セルロースナノファイバーに対して、重量比で7倍を超えると、前記加熱プレス工程で水分を飛ばすことが難しくなる、といった問題が生じるおそれがある。
【0022】
本発明の振動板の製造方法によれば、自然由来の材料を用い、大掛かりな設備を必要とすることなく、簡易かつ短い成形タクトで、振動特性に優れた振動板を得ることができる。特に、紙製振動板(紙コーン)では、その製造に大量の水が必要になるが、本発明の製造方法によれば、そのような問題が生じることもない。
【0023】
上記目的を解決する本発明における第2の立体成形品は、最大粒径が1000μm以下の、葉紛、茎紛、種子紛若しくは草粉からなる粉体、又は該粉体と最大粒径が1000μm以下の木粉とを混合した混合粉体と、セルロースナノファイバーと、水と、を混合し、加熱プレスして成形されたものであることを特徴とする。
【0024】
上記目的を解決する本発明における第2の立体成形品の製造方法は、最大粒径が1000μm以下の、葉紛、茎紛、種子紛若しくは草粉からなる粉体、又は該粉体と最大粒径が1000μm以下の木粉とを混合した混合粉体と、固形分換算で、該粉体又は該混合粉体100重量%に対して0.1重量%以上50重量%以下のセルロースナノファイバーと、水と、を混合する混合工程と、
前記混合工程によって混合した材料を金型にフォーミングするフォーミング工程と、
前記金型によって加熱プレスする加熱プレス工程と、
前記金型から成形品を取り出す取出工程と、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、自然由来の材料を用い、大掛かりな設備を必要とすることなく、簡易かつ短い成形タクトで製造することができる、立体成形品、振動板、及びそれらの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の振動板の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図2】実施例1、実施例2および比較例で得られた振動板の周波数特性を示す図である。
【
図3】実施例3~12における5個ずつ採取した試験片に対してシャルピー衝撃試験を実施した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態を説明する。本発明の立体成形品は、その用途が限定されるものはない。このため、以下の説明では、本発明の立体成形品の一つである、本発明の振動板と、その製造方法を例に挙げて説明する。
【0028】
本発明の振動板の製造には、木粉と、セルロースナノファイバーと、水とを用いる。
【0029】
木粉は特に限定されるものではなく、例えば、杉、檜、マツ等の大鋸屑を好適に用いることができる。また、木粉は、最大粒径が500μm以下のものを用いることができ、最大粒径が250μm以下のものが、振動板の振動特性上より好ましい。具体的には、最大粒径が500μm以下の木粉とする場合には、目開き500μmの篩を通過したものを用いればよく、最大粒径が250μm以下の木粉とする場合には、目開き250μmの篩を通過したものを用いればよい。また、平均粒径が、125μm以上250μm以下の木粉を用いてもよい。
【0030】
セルロースナノファイバーも特に限定されるものではなく、例えば、セルロースを解繊する方法で製造されたものを用いることができる。セルロースとしては、解繊材料や微細化材料として利用可能なものであればよい。例えば、パルプ、綿、紙、レーヨン・キュプラ・ポリノジック・アセテートなどの再生セルロース繊維、バクテリア産生セルロース、ホヤなどの動物由来セルロースなどが利用可能である。なお、これらのセルロースは必要に応じて表面を化学修飾処理したものであってもよい。
【0031】
セルロースを解繊する方法としては、例えばセルロースの水懸濁液等を、リファイナー、高圧ホモジナイザー、グラインダー、一軸または多軸混練機、ビーズミル等による機械的な磨砕、ないし叩解することにより解繊する方法を使用することができる。なお、これらの方法を1種または複数種類組み合わせてセルロースナノファイバーを製造してもよい。
【0032】
セルロースナノファイバーの平均繊維径は3nm以上150nm以下が好ましく、より好ましくは3nm以上100nm以下である。ここで、セルロースナノファイバーの平均繊維径とは、ランダムに採取した40本のセルロースナノファイバーを走査型電子顕微鏡(SEM)で測定した値の平均値をいう。また、セルロースナノファイバーの最大繊維径は、セルロースナノファイバーの分散性の点で、1000nm以下であることが好ましく、特に好ましくは500nm以下である。
【0033】
セルロースナノファイバーの平均長さの下限としては、1μmが好ましく、2μmがより好ましい。一方、セルロースナノファイバーの平均長さの上限としては、6μmが好ましく、4μmがより好ましい。なお、ここで、セルロースナノファイバーの平均長さとは、ランダムに採取した40本のセルロースナノファイバーを走査型電子顕微鏡(SEM)で測定した値の平均値をいう。
【0034】
図1は、本発明の振動板(立体成形品)の製造方法10の一例を示すフローチャートである。
【0035】
図1に示すように、振動板の製造方法10では、初めに、混合工程(ステップS1)を実施する。この混合工程(S1)では、まず、用意したセルロースナノファイバーと水とを混合し、セルロースナノファイバーを分散させる。次いで、用意した木粉を混合する。配合量は、固形分換算で、木粉100重量%に対して、セルロースナノファイバーを0.1重量%以上50重量%以下とし、水は、木粉とセルロースナノファイバーに対して、重量比で3倍以上7倍以下とする。なお、均一に混ぜるという観点と、水分を飛ばすという観点のバランスから、水は、木粉とセルロースナノファイバーに対して、重量比で5倍程度が好ましい。
【0036】
強度を向上させるため、骨材としてパルプを混合する場合には、初めにパルプを水に離解させた後、セルロースナノファイバーを混合し、次いで、木粉を混合すればよい。
【0037】
続いて、混合工程(S1)によって混合した材料を、専用治具によって金型に充填する(フォーミングする)フォーミング工程を実施する(ステップS2)。
【0038】
次に、金型によって加熱プレスする加熱プレス工程を実施する(ステップS3)。この加熱プレス工程(S3)では、加熱温度を130℃~180℃とし、プレス圧力は、例えば、200MPa(1.4MPa/cm2)程度とする。加熱プレス工程(S3)は、金型に充填した材料が乾燥状態になるまで行えばよく、重量によって数秒~数分程度となる。
【0039】
最後に、金型から成形品を取り出す取出工程を実施する(ステップS4)。
【0040】
従って、本発明の振動板の製造方法によれば、特許文献1記載の成形体の製造方法や非特許文献1記載の三次元成形加工技術のような大掛かりな設備や特殊な設備(高い加圧能力を備えた高額で大掛かりなプレス機等)は不要である。さらに、非特許文献1記載の三次元成形加工技術と比べて、成形タクトを大幅に短縮することが可能となる。
【0041】
次いで、本発明の振動板の製造方法によって製造した振動板の周波数特性を比較例と対比して説明する。
【0042】
実施例1及び実施例2は、本発明の振動板の製造方法によって製造した振動板である。具体的には、口径が30mmのスピーカに用いる大きさの振動板とした。また、最大粒径が250μm以下の木粉と、固形分換算で、木粉100重量%に対して10重量%のセルロースナノファイバーと、木粉100重量%に対して10重量%のパルプと、木粉とセルロースナノファイバーに対して重量比で5倍の水とを用いた。比較例は、同じ大きさの一般的な紙コーンとした。
【0043】
図2は、実施例1、実施例2および比較例で得られた振動板の周波数特性を示す図である。この
図2では、実施例1の周波数特性を破線で示し、実施例2の周波数特性を一点鎖線で示し、比較例の周波数特性を実線で示している。なお、
図4では、縦軸は出力dBを示し、横軸は周波数Hzを示している。
【0044】
図2から明らかなように、実施例1および実施例2は、比較例に比べ、音響特性が優れていることが分かる。
【0045】
本発明によれば、自然由来の材料を用い、大掛かりな設備を必要とすることなく、簡易かつ短い成形タクトで製造することができる、立体成形品、振動板、及びそれらの製造方法を提供することができる。
【0046】
本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変更を行うことができる。例えば、上述した実施形態においては、振動板を例に挙げて説明したが、自動車の内装部品などの各種部品、食器、雑貨や各種小物等の立体成形品及びその製造方法にも適用することができる。特に、木粉については、粒径が異なる木粉を混合して用いることが好ましい。例えば、目開き500μmの篩を通過した最大粒径が500μm以下の木粉と、目開き500μmの篩を振るった際に縦に抜け落ちる、長さが1cm以上の細長い木粉とを混合して用いることができる。この態様を採用すれば、衝撃強度を向上させることができる。
【0047】
続いて、本発明の第2の立体成形品の実施形態について説明する。本発明の第2の立体成形品では、前述した本発明の立体成形品で用いた木粉に代えて、最大粒径が1000μm以下の、葉紛、茎紛、種子紛若しくは草粉からなる粉体、又は該粉体と最大粒径が1000μm以下の木粉とを混合した混合粉体と、セルロースナノファイバーと、水とを用いる。
【0048】
葉粉、茎粉、種子粉又は草粉は特に限定されるものではない。例えば、葉粉は、茶葉等の植物の葉の粉を好適に用いることができる。茎粉は、サトウキビや竹等の植物の茎の粉を好適に用いることができる。種子粉は、大麦(ビールかす)やコーヒーかす等の植物の種子の粉を好適に用いることができる。草粉は、ススキ等の草本の粉を好適に用いることができる。セルロースナノファイバーは、前述した本発明の立体成形品と同様のものを用いればよい。
【0049】
本発明の第2の立体成形品の製造方法も、
図1を用いて前述した、本発明の立体成形品の製造方法と同様である。具体的には、例えば、茎粉として竹の粉を用いる場合には、
図1に示すように、初めに、混合工程(ステップS1)を実施する。この混合工程(S1)では、まず、用意したセルロースナノファイバーと水とを混合し、セルロースナノファイバーを分散させる。次いで、用意した茎粉を混合する。配合量は、固形分換算で、茎粉100重量%に対して、セルロースナノファイバーを0.1重量%以上50重量%以下とし、水は、茎粉とセルロースナノファイバーに対して、重量比で3倍以上7倍以下とする。なお、均一に混ぜるという観点と、水分を飛ばすという観点のバランスから、水は、茎粉とセルロースナノファイバーに対して、重量比で5倍程度が好ましい。
【0050】
続いて、混合工程(S1)によって混合した材料を、専用治具によって金型に充填する(フォーミングする)フォーミング工程を実施する(ステップS2)。
【0051】
次に、金型によって加熱プレスする加熱プレス工程を実施する(ステップS3)。この加熱プレス工程(S3)では、加熱温度を130℃~180℃とし、プレス圧力は、例えば、1.4MPa/cm2程度とする。加熱プレス工程(S3)は、金型に充填した材料が乾燥状態になるまで行えばよく、重量によって数秒~数分程度となる。
【0052】
最後に、金型から立体成形品を取り出す取出工程を実施する(ステップS4)。竹の粉以外の茎粉、葉粉、種子粉及び草粉についても、同様の製造方法となる。
【0053】
また、最大粒径が1000μm以下の、葉紛、茎紛、種子紛若しくは草粉からなる粉体と、最大粒径が1000μm以下の木粉とを混合した混合粉体を用いる場合の配合量は、葉紛、茎紛、種子紛若しくは草粉からなる粉体と、木粉とを略同量とすればよい。また、セルロースナノファイバーと水との配合量は、固形分換算で、混合粉体100重量%に対してセルロースナノファイバーを0.1重量%以上50重量%以下とし、水は、混合粉体とセルロースナノファイバーに対して、重量比で3倍以上7倍以下とする。
【0054】
次いで、本発明の立体成形品及び本発明の第2の立体成形品について実施したシャルピー衝撃試験について説明する。
【0055】
実施例3~6は本発明の立体成形品の試験片であり、実施例7~12は本発明の第2の立体成形品の試験片である。具体的には、実施例3及び実施例4は檜の木粉、実施例5はホワイトウッドの木粉、実施例6はユーカリの木粉を用い、目開き500μmの篩を通過した最大粒径が500μm以下の木粉100重量%に対して、固形分換算で、セルロースナノファイバーを10重量%、パルプを15重量%とし、木粉とセルロースナノファイバーとパルプに対して、重量比で5倍程度の水を用いた。なお、実施例5では、目開き500μmの篩を振るった際に縦に抜け落ちる、長さが1cm以上の細長い木粉が混じっていた。
【0056】
実施例7は竹、実施例8は竹90%と竹炭10%、実施例9は竹炭の茎粉を用い、目開き500μmの篩を通過した最大粒径が500μm以下の茎粉100重量%に対して、固形分換算で、セルロースナノファイバーを10重量%、パルプを15重量%とし、茎粉とセルロースナノファイバーとパルプに対して、重量比で5倍程度の水を用いた。
【0057】
実施例10は、目開き500μmの篩を通過した、最大粒径が500μm以下の茶の葉粉と、最大粒径が500μm以下の檜の木粉を同量混合して混合粉体とし、この混合粉体100重量%に対して、固形分換算で、セルロースナノファイバーを10重量%、パルプを15重量%とし、混合粉体とセルロースナノファイバーとパルプに対して、重量比で5倍程度の水を用いた。実施例11は、目開き500μmの篩を通過した、最大粒径が500μm以下のコーヒーかすの種子粉と、最大粒径が500μm以下の檜の木粉を同量混合して混合粉体とし、この混合粉体100重量%に対して、固形分換算で、セルロースナノファイバーを10重量%、パルプを15重量%とし、混合粉体とセルロースナノファイバーとパルプに対して、重量比で5倍程度の水を用いた。
【0058】
実施例12は、目開き500μmの篩を通過した最大粒径が500μm以下のススキの草粉100重量%に対して、固形分換算で、セルロースナノファイバーを10重量%、パルプを15重量%とし、木粉とセルロースナノファイバーとパルプに対して、重量比で5倍程度の水を用いた。なお、実施例12では、目開き500μmの篩を振るった際に縦に抜け落ちる、長さが1cm以上の細長い草粉が混じっていた。
【0059】
そして、前述した
図1に示す製造方法によって立体成形品を製造し、その立体成形品から、JIS 4号試験片(Vノッチ試験片)を各実施例について5個ずつ採取した。
【0060】
図3は、実施例3~12における5個ずつ採取した試験片に対してシャルピー衝撃試験を実施した結果を示すグラフである。
【0061】
図3に示すように、実施例3~12の立体成形品は、自動車の内装部品などの各種部品、食器、雑貨や各種小物等に必要な衝撃強度を備えていることが分かる。また、長さが1cm以上の細長い木粉が混じっている実施例5や、長さが1cm以上の細長い草粉が混じっている実施例12において、衝撃強度が向上する結果となった。
【0062】
本発明の第2の立体成形品及び本発明の第2の立体成形品の製造方法によっても、自然由来の材料を用い、大掛かりな設備を必要とすることなく、簡易かつ短い成形タクトで製造することができる、立体成形品及びその製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0063】
10 振動板(立体成形品)の製造方法
S1 混合工程
S2 フォーミング工程
S3 加熱プレス工程
S4 取出工程