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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151599
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】車両用外装品
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/03 20060101AFI20220929BHJP
   B60R 13/00 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
G01S7/03 246
B60R13/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009258
(22)【出願日】2022-01-25
(31)【優先権主張番号】P 2021053900
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】平野 里彩
(72)【発明者】
【氏名】柴川 展子
(72)【発明者】
【氏名】服部 徳文
(72)【発明者】
【氏名】奥村 晃司
(72)【発明者】
【氏名】前田 英登
(72)【発明者】
【氏名】大塚 豊
(72)【発明者】
【氏名】西岡 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】藤本 一和
【テーマコード(参考)】
3D024
5J070
【Fターム(参考)】
3D024BA03
3D024BA07
3D024BA08
3D024BA15
5J070AF03
5J070AK39
(57)【要約】
【課題】装飾本体部をより一層明るく光らせる。
【解決手段】車両用外装品20は、車両10の外装部を装飾する装飾本体部31と、光を発する光源81と、ミリ波透過性を有するとともに、照射された光を拡散反射する光拡散反射部材71とを備える。装飾本体部31は後基材32及び加飾層61を備える。後基材32は、装飾本体部31に照射された光を拡散及び透過するとともに、ミリ波透過性を有する。加飾層61は、後基材32よりも前側に形成され、かつミリ波透過性を有する。光源81、装飾本体部31及び光拡散反射部材71は、光源81が発した光を光拡散反射部材71で拡散反射させて後基材32に向かわせる箇所に配置されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミリ波を送信するミリ波レーダ装置が搭載された車両に適用され、前記ミリ波の送信方向における前記ミリ波レーダ装置の前方に配置される車両用外装品であって、
前記車両の外装部を装飾する装飾本体部と、光を発する光源と、ミリ波透過性を有するとともに、照射された前記光を拡散反射する光拡散反射部材とを備え、
前記装飾本体部は、照射された前記光を拡散及び透過するとともに、前記ミリ波透過性を有する基材と、前記送信方向における前記基材よりも前側に形成され、かつ前記ミリ波透過性を有する加飾層とを備え、
前記光源、前記装飾本体部及び前記光拡散反射部材は、前記光源が発した前記光を前記光拡散反射部材で拡散反射させて前記基材に向かわせる箇所に配置されている車両用外装品。
【請求項2】
前記基材は、光拡散材の粒子が分散された樹脂材料により形成されている請求項1に記載の車両用外装品。
【請求項3】
前記送信方向における前記基材の後面は、同後面に照射された前記光を拡散及び透過する凹凸部を有している請求項1に記載の車両用外装品。
【請求項4】
前記光拡散反射部材の全体は、光拡散材が分散された樹脂材料により形成されている請求項1~3のいずれか1項に記載の車両用外装品。
【請求項5】
前記送信方向における前記光拡散反射部材の最前部は、光拡散材の粒子が分散された塗膜からなる光拡散反射層により構成されている請求項1~3のいずれか1項に記載の車両用外装品。
【請求項6】
前記光拡散反射部材は、前記送信方向における前記装飾本体部よりも後方に配置され、
前記装飾本体部の外周縁部と前記光拡散反射部材の外周縁部とは、環状の接合部により接合されており、
前記装飾本体部と前記光拡散反射部材との間であって、前記接合部により囲まれた領域は収容部を構成し、
前記光源は、前記収容部に配置されている請求項1~5のいずれか1項に記載の車両用外装品。
【請求項7】
前記収容部のうち、前記接合部から同収容部の内方へ離れた領域の一部は、前記ミリ波レーダ装置から送信される前記ミリ波の通過領域を構成している請求項6に記載の車両用外装品。
【請求項8】
前記光源は、前記収容部のうち前記通過領域から外れた箇所に配置されている請求項7に記載の車両用外装品。
【請求項9】
前記光源は、前記光拡散反射部材から前記送信方向における前方へ離れた箇所に配置されており、同送信方向における後方へ前記光を発する請求項6~8のいずれか1項に記載の車両用外装品。
【請求項10】
前記装飾本体部は、前記基材に加え、前記光の透過を遮断する遮光部を備え、
前記遮光部の一部は、前記基材の外周縁部に密着した状態の周縁遮光部により構成され、
前記周縁遮光部は、前記光拡散反射部材の前記外周縁部に対し密着した状態で溶着されており、
前記周縁遮光部と前記光拡散反射部材との溶着部分により前記接合部が形成されている請求項6~9のいずれか1項に記載の車両用外装品。
【請求項11】
前記遮光部のうち、前記送信方向における前記基材よりも前方において前記周縁遮光部により囲まれた箇所は、中間遮光部により構成されており、
前記中間遮光部と前記基材との間には、照射された前記光を前記送信方向における後方へ反射する光反射部が設けられている請求項10に記載の車両用外装品。
【請求項12】
前記基材には、一般部と、前記一般部よりも前記送信方向における前方へ突出する帯状の突部とが形成され、
前記突部の幅方向における両側の面は、前記送信方向における後方ほど間隔が拡大するように、前記送信方向に対し傾斜する一対の側面により構成され、前記送信方向における前記突部の前端の面は、両側面を繋ぐ頂面により構成されており、
前記送信方向における前記一般部よりも前側には前記中間遮光部が形成され、
前記突部の各側面と前記加飾層との間には、前記光の透過を遮断する光遮蔽層が形成され、前記突部の前記頂面と前記加飾層との間には、前記光遮蔽層が形成されていない請求項11に記載の車両用外装品。
【請求項13】
前記基材を後基材とした場合において、
前記送信方向における前記加飾層よりも前側には、透明な樹脂材料により形成された前基材が、前記加飾層に密着した状態で配置されており、
前記加飾層と前記後基材との間には、前記加飾層を前記送信方向における後方から被覆して保護するための保護層が形成されている請求項1~12のいずれか1項に記載の車両用外装品。
【請求項14】
前記加飾層は、前記ミリ波透過性を有し、かつ前記光源から照射された光の波長をシフトさせる金属皮膜により形成され、
前記保護層には、顔料又は染料が含有されており、
前記顔料又は前記染料は、前記保護層に入射した前記光が同保護層を透過する過程で、その光の色を、前記加飾層を透過した後の光が白色となる色にシフトさせる請求項13に記載の車両用外装品。
【請求項15】
前記金属皮膜はインジウムにより形成され、
前記保護層には緑色の前記顔料又は前記染料が含有されている請求項14に記載の車両用外装品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の外装部に取付けられて同外装部を装飾する車両用外装品に関する。
【背景技術】
【0002】
ミリ波レーダ装置が組込まれた車両では、同装置からミリ波が車外へ向けて送信される。先行車両、歩行者等を含む車外の物体に当たって反射されたミリ波は、上記ミリ波レーダ装置によって受信される。そして、ミリ波レーダ装置では、送信及び受信されたミリ波により、上記物体が認識され、車両と物体との距離、相対速度等の検出が行なわれる。
【0003】
上記車両では、ミリ波の送信方向におけるミリ波レーダ装置の前方に、フロントグリル、エンブレム等の車両用外装品が配置される。
従来は、上記車両用外装品に対しては、ミリ波レーダ装置を隠す機能と、ミリ波を透過する機能とが求められたが、近年では、さらに、光る機能が求められるようになってきている。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1には、車両の外装部を装飾する装飾本体部と、光を発する光源とを備えた車両用外装品が記載されている。装飾本体部は、ミリ波の透過性と、光の透過性とを有する透明部材を備えている。透明部材は、光を拡散反射(乱反射)する発光部を有している。光源は、装飾本体部の周縁部の外部に配置されている。そして、光源が光を発すると、その光が透明部材を透過する。上記光は、発光部を通過する際に拡散反射される。そのため、車両の外部から車両用外装品を見ると、装飾本体部(透明部材)が光って見える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-217863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記従来の車両用外装品では、装飾本体部を光らせることができるものの、充分明るくなく、明るく光らせるうえで改良の余地が残されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する車両用外装品は、ミリ波を送信するミリ波レーダ装置が搭載された車両に適用され、前記ミリ波の送信方向における前記ミリ波レーダ装置の前方に配置される車両用外装品であって、前記車両の外装部を装飾する装飾本体部と、光を発する光源と、ミリ波透過性を有するとともに、照射された前記光を拡散反射する光拡散反射部材とを備え、前記装飾本体部は、照射された前記光を拡散及び透過するとともに、前記ミリ波透過性を有する基材と、前記送信方向における前記基材よりも前側に形成され、かつ前記ミリ波透過性を有する加飾層とを備え、前記光源、前記装飾本体部及び前記光拡散反射部材は、前記光源が発した前記光を前記光拡散反射部材で拡散反射させて前記基材に向かわせる箇所に配置されている。
【0008】
上記の構成によれば、光源が光を発すると、その光は光拡散反射部材に照射される。上記光は、光拡散反射部材によって拡散反射されて、装飾本体部の基材に向かう。基材に照射された光は、基材で拡散及び透過される。なお、「光が基材で拡散及び透過される」とは、「光が基材で拡散されること」、及び「光が基材を透過されること」である。
【0009】
従って、車両の外部から車両用外装品を見ると、装飾本体部が白く明るく見える。特に、光源が発した光は、光拡散反射部材によって拡散反射され、その後に基材によってさらに拡散及び透過される。そのため、車両用外装品は、光源からの光が、光拡散反射部材及び基材の一方のみによって拡散される場合よりも明るい白色に見える。
【0010】
上記車両用外装品において、前記基材は、光拡散材の粒子が分散された樹脂材料により形成されていることが好ましい。
上記の構成によれば、光拡散反射部材で拡散反射された光が基材に入射されると、その光は、樹脂材料に分散されている光拡散材の粒子に当たり、拡散及び透過される。
【0011】
上記車両用外装品において、前記送信方向における前記基材の後面は、同後面に照射された前記光を拡散及び透過する凹凸部を有していることが好ましい。
上記の構成によれば、上記送信方向における基材の後面の凹凸部に対し、光拡散反射部材で拡散反射された光が入射されると、その光は、凹凸部で拡散及び透過される。
【0012】
上記車両用外装品において、前記光拡散反射部材の全体は、光拡散材が分散された樹脂材料により形成されていることが好ましい。
上記の構成によれば、光源が発した光は、光拡散反射部材に照射されると、その光拡散反射部材の樹脂材料に分散されている光拡散材の粒子に当たり、拡散反射される。
【0013】
上記車両用外装品において、前記送信方向における前記光拡散反射部材の最前部は、光拡散材の粒子が分散された塗膜からなる光拡散反射層により構成されていることが好ましい。
【0014】
上記の構成によれば、光源が発した光は、上記送信方向における光拡散反射部材の最前部に位置する光拡散反射層に照射される。照射された光が、光拡散反射層の樹脂材料に分散されている光拡散材に当たると、拡散反射される。
【0015】
上記車両用外装品において、前記光拡散反射部材は、前記送信方向における前記装飾本体部よりも後方に配置され、前記装飾本体部の外周縁部と前記光拡散反射部材の外周縁部とは、環状の接合部により接合されており、前記装飾本体部と前記光拡散反射部材との間であって、前記接合部により囲まれた領域は収容部を構成し、前記光源は、前記収容部に配置されていることが好ましい。
【0016】
上記の構成によるように、装飾本体部と光拡散反射部材との間に収容部を形成し、この収容部に光源を配置すれば、光源が装飾本体部と光拡散反射部材とによって覆われた状態となり、保護される。
【0017】
上記車両用外装品において、前記収容部のうち、前記接合部から同収容部の内方へ離れた領域の一部は、前記ミリ波レーダ装置から送信される前記ミリ波の通過領域を構成していることが好ましい。
【0018】
上記の構成によれば、ミリ波レーダ装置から送信されたミリ波の全てが収容部を通過する。送信されたミリ波の一部が収容部の外部を通過する現象は起こらない。
上記車両用外装品において、前記光源は、前記収容部のうち前記通過領域から外れた箇所に配置されていることが好ましい。
【0019】
光源が収容部のうち、上記の条件を満たす箇所に配置されることにより、ミリ波レーダ装置から送信されたミリ波は、収容部のうち光源がない箇所を通過する。光源は、ミリ波レーダ装置から送信されるミリ波の通過を妨げない。
【0020】
上記車両用外装品において、前記光源は、前記光拡散反射部材から前記送信方向における前方へ離れた箇所に配置されており、同送信方向における後方へ前記光を発することが好ましい。
【0021】
上記の構成によれば、光源は上記送信方向における後方へ光を発する。この光は、光拡散反射部材に照射されると、拡散反射される。拡散反射された光の一部は、装飾本体部の基材に照射される。
【0022】
上記車両用外装品において、前記装飾本体部は、前記基材に加え、前記光の透過を遮断する遮光部を備え、前記遮光部の一部は、前記基材の外周縁部に密着した状態の周縁遮光部により構成され、前記周縁遮光部は、前記光拡散反射部材の前記外周縁部に対し密着した状態で溶着されており、前記周縁遮光部と前記光拡散反射部材との溶着部分により前記接合部が形成されていることが好ましい。
【0023】
上記の構成によれば、周縁遮光部と、光拡散反射部材の外周縁部とが、溶着によって接合される。周縁遮光部及び上記外周縁部は、両者の間に隙間がなく、封止された状態となる。そのため、車両用外装品の外部から水が、周縁遮光部と上記外周縁部との間を通って収容部に侵入することが阻止される。
【0024】
また、周縁遮光部を含む遮光部は、可視光の透過を遮断する。そのため、車両の外部から車両用外装品を見ると、周縁遮光部よりも上記送信方向における後方の部材が見えない。
【0025】
上記車両用外装品において、前記遮光部のうち、前記送信方向における前記基材よりも前方において前記周縁遮光部により囲まれた箇所は、中間遮光部により構成されており、前記中間遮光部と前記基材との間には、照射された前記光を前記送信方向における後方へ反射する光反射部が設けられていることが好ましい。
【0026】
上記の構成によれば、光源から照射されて、光拡散反射部材で拡散反射された光のうち、中間遮光部に向かうものは、基材を透過した後に光反射部に照射される。この光は、光反射部で、上記送信方向における後方へ反射されて、光拡散反射部材に照射される。このように、光拡散反射部材で拡散反射された光が、光反射部で跳ね返されて光拡散反射部材に戻される。そのため、光反射部が設けられない場合に比べ、光拡散反射部材で拡散反射される光が多くなる。これに伴い、基材で拡散及び透過される光が多くなって輝度が高くなる。
【0027】
上記車両用外装品において、前記基材には、一般部と、前記一般部よりも前記送信方向における前方へ突出する帯状の突部とが形成され、前記突部の幅方向における両側の面は、前記送信方向における後方ほど間隔が拡大するように、前記送信方向に対し傾斜する一対の側面により構成され、前記送信方向における前記突部の前端の面は、両側面を繋ぐ頂面により構成されており、前記送信方向における前記一般部よりも前側には前記中間遮光部が形成され、前記突部の各側面と前記加飾層との間には、前記光の透過を遮断する光遮蔽層が形成され、前記突部の前記頂面と前記加飾層との間には、前記光遮蔽層が形成されていないことが好ましい。
【0028】
光源の非点灯時には、光源から光が光拡散反射部材に照射されない。そのため、光拡散反射部材で光の拡散反射が行なわれない。これに伴い、光拡散反射部材からの光が基材に照射されない。そのため、基材でも光の拡散及び透過が行なわれない。
【0029】
一方、送信方向における前方から車両用外装品に対し可視光が入射すると、その可視光の一部は中間遮光部によって吸収される等して、透過を遮断される。そのため、車両の外部から車両用外装品を見ると、中間遮光部よりも後方の部材が見えない。
【0030】
また、可視光の一部は、加飾層のうち、上記送信方向における突部の前側に位置する部分で反射される。そのため、車両の外部から車両用外装品を見ると、加飾層が上記送信方向における前方へ飛び出しているように立体的に見える。すなわち、突部上の加飾層のうち、頂面に形成された部分は、両側面に形成された部分よりも、上記送信方向における前方に位置するように見える。突部上の加飾層のうち、両側面に形成された部分は、頂面に形成された部分よりも上記送信方向における後方で影のように見える。
【0031】
これに対し、光源の点灯時において、仮に、基材で拡散及び透過された光が、加飾層のうち、頂面に形成された部分にも両側面に形成された部分にも照射されると、次の問題が起り得る。すなわち、基材で拡散及び透過された光によって、加飾層のうち、頂面に形成された部分も、両側面に形成された部分も、一様に明るく見える。突部上の加飾層が、光源の上記非点灯時に比べ、同突部の幅方向に膨張したように、すなわち、太く見える。
【0032】
この点、上記の構成によれば、突部の各側面と加飾層との間には光遮蔽層が形成されている。光遮蔽層では、光の透過が遮断される。加飾層のうち、突部の各側面に形成された部分には、基材で拡散及び透過された光が到達しない。
【0033】
これに対し、突部の頂面と加飾層との間には光遮蔽層が形成されていない。そのため、加飾層のうち、突部の頂面に形成された部分には、基材で拡散及び透過された光が照射される。
【0034】
光源の点灯時には、突部上の加飾層のうち、頂面に形成された部分が明るく見える。突部上の加飾層のうち、各側面に形成された部分は明るく見えない。従って、光源の非点灯時と、点灯時とで、突部上の加飾層が同程度の幅で見える。
【0035】
上記車両用外装品において、前記基材を後基材とした場合において、前記送信方向における前記加飾層よりも前側には、透明な樹脂材料により形成された前基材が、前記加飾層に密着した状態で配置されており、前記加飾層と前記後基材との間には、前記加飾層を前記送信方向における後方から被覆して保護するための保護層が形成されていることが好ましい。
【0036】
上記の構成によれば、車両の外部から車両用外装品を見ると、透明な前基材を通して加飾層が見える。この加飾層によって車両用外装品、ひいては車両において車両用外装品の周辺部分が装飾される。
【0037】
また、加飾層は、これを上記送信方向における後方から被覆する保護層によって保護される。加飾層が前基材から剥がれることが保護層により抑制される。加飾層は、保護層により、前基材に密着した状態に保持される。
【0038】
上記車両用外装品において、前記加飾層は、前記ミリ波透過性を有し、かつ前記光源から照射された光の波長をシフトさせる金属皮膜により形成され、前記保護層には、顔料又は染料が含有されており、前記顔料又は前記染料は、前記保護層に入射した前記光が同保護層を透過する過程で、その光の色を、前記加飾層を透過した後の光が白色となる色にシフトさせることが好ましい。
【0039】
加飾層が、ミリ波透過性を有し、かつ光源から照射された光の波長をシフトさせる金属皮膜によって形成されている場合、光は加飾層を透過することにより、白色とは異なる色の光にシフトされる場合がある。この場合、車両の外部から車両用外装品を見ると、加飾層が、上記のようにシフトされた色であって、白色とは異なる色に光って見える。
【0040】
しかし、保護層として、上記の顔料又は染料が含有されたものが用いられる。すると、保護層に入射した光は、同保護層を透過する過程で、加飾層を透過した後の光が白色となる色にシフトされる。シフトされた上記色の光が加飾層を透過することで、その光は黒体軌跡上の白色に調整される。
【0041】
上記車両用外装品において、前記金属皮膜はインジウムにより形成され、前記保護層には緑色の前記顔料又は前記染料が含有されていることが好ましい。
上記の構成によるように、金属皮膜がインジウムによって形成されている場合、光は加飾層を透過することにより、黄色の光にシフトされる。車両の外部から車両用外装品を見た場合、加飾層が黄色に光って見える。
【0042】
しかし、保護層として、上記の構成によるように、緑色の顔料又は染料が含有されたものが用いられる。すると、保護層に入射した光は、同保護層を透過する過程で、緑色の顔料又は染料により、加飾層を透過した後の光が白色となる色(緑色)にシフトされる。シフトされた上記緑色の光が加飾層を透過することで、その光は黒体軌跡上の白色に調整される。
【発明の効果】
【0043】
上記車両用外装品によれば、装飾本体部をより一層明るく光らせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】第1実施形態における車両用外装品の正面図である。
図2図1の2-2線断面図である。
図3図2のA部を拡大して示す部分側断面図である。
図4】第3実施形態における装飾本体部の部分側断面図である。
図5】第4実施形態において、加飾層を透過する光が白色となるように調整される作用を説明する色度図である。
図6図5におけるB部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
(第1実施形態)
以下、車両用外装品の第1実施形態について、図1図3を参照して説明する。
なお、以下の記載に関し、車両の前進方向を前方とし、後進方向を後方として説明する。また、上下方向は車両の上下方向を意味し、左右方向は車幅方向であって車両の前進時の左右方向と一致するものとする。また、各図では、車両用外装品における各部を認識可能な大きさとするために、各部の縮尺を適宜変更して図示している。
【0046】
図2に示すように、車両10の前部の左右方向における中央部分であって、フロントグリル11の後方には、前方監視用のミリ波レーダ装置12が搭載されている。ミリ波レーダ装置12は、電磁波の一形態であるミリ波を車外のうち、車両10の前方における所定の角度範囲へ向けて送信し、先行車両、歩行者等を含む車外の物体に当たって反射されたミリ波を受信するセンサ機能を有する。ミリ波とは、波長が1mm~10mmであり、かつ周波数が30GHz~300GHzである電波をいう。
【0047】
ミリ波レーダ装置12は、雨や霧、雪といった悪天候に強く、他の方式と比較して検出可能距離が長いといった特徴を有している。
なお、上述したように、ミリ波レーダ装置12が車両10の前方に向けてミリ波を送信することから、ミリ波レーダ装置12によるミリ波の送信方向は、車両10の後方から前方へ向かう方向である。ミリ波の送信方向における前方は、車両10の前方と合致し、同送信方向における後方は車両10の後方と合致する。そのため、以後の記載では、ミリ波の送信方向における前方を単に「前方」、「前」等といい、同送信方向における後方を単に「後方」、「後」等というものとする。
【0048】
上記フロントグリル11の厚み(前後方向の寸法)は、一般的なフロントグリルと同様、一定ではない。また、フロントグリルでは、樹脂製基材の表面に金属めっき層が形成されることがある。この場合、フロントグリルは、送信又は反射されたミリ波と干渉する。そこで、フロントグリル11において、ミリ波レーダ装置12のミリ波の経路となる箇所、具体的には、フロントグリル11において、ミリ波の送信方向におけるミリ波レーダ装置12の前方となる箇所には、窓部13が設けられている。車両用外装品20は、この窓部13に配置されている。
【0049】
車両用外装品20は、装飾本体部31、光拡散反射部材71及び光源81を備えている。次に、車両用外装品20を構成する各部について説明する。
<装飾本体部31>
図1及び図2に示すように、装飾本体部31は、車両10の外装部を装飾するためのものであり、全体として横長の略楕円の板状をなしている。また、装飾本体部31は、前方へ膨らむように緩やかに湾曲している。
【0050】
図2及び図3に示すように、装飾本体部31は、後基材32、遮光部、前基材51、加飾層61、保護層63及びハードコート層65を備えている。なお、図2では、加飾層61、保護層63及びハードコート層65の図示が省略されている。
【0051】
<後基材32>
後基材32は、特許請求の範囲における「基材」に相当する部材である。後基材32は、装飾本体部31の後半部を構成する部材であり、ミリ波レーダ装置12から送信されたミリ波を透過する性能であるミリ波透過性を有している。
【0052】
後基材32は、白色の光拡散材の粒子が分散された樹脂材料によって形成されている。樹脂材料としては、共重合ポリカーボネートが用いられている。また、光拡散材としては、酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物が用いられている。後基材32は、同後基材32に照射された光を、白色の光となるように拡散及び透過する。
【0053】
なお、上記樹脂材料として、AS(アクリロニトリルスチレン)樹脂、PC(ポリカーボネート)樹脂、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)樹脂等が用いられてもよい。また、上記光拡散材として、硫酸バリウム、シリカ等が用いられてもよい。
【0054】
なかでもAS樹脂は、吸水性が低い。そのため、上記樹脂材料として、AS樹脂が用いられると、車両用外装品20が、例えば高温多湿下で使用されても、吸水に起因する、誘電率、誘電正接等の電気特性の変化が少なく、ミリ波透過性の低下が起こりにくい。また、AS樹脂が用いられて車両用外装品20が形成されると、吸水により、耐熱性が低下して製品強度が保たれなくなるといったことも起こりにくい。従って、これらの点で、AS樹脂は後基材32の上記樹脂材料として適している。この場合、上記光拡散材として、AS樹脂に対して有効な光学特性を示す硫酸バリウムが適している。
【0055】
後基材32には、一般部33と、一般部33よりも前方へ突出する帯状の突部34とが形成されている。一般部33は、図1における車両用外装品20の背景領域21に対応している。突部34は、車両用外装品20の模様領域22に対応している。ここでは、模様領域22は、文字部分23とその周りの環状部分24とによって構成されている。
【0056】
図2及び図3に示すように、後基材32の大部分の後面36は、前方へ凹むように緩やかに湾曲した平滑な単一の面によって構成されている。
<遮光部>
遮光部は、周縁遮光部41及び中間遮光部43を備えている。周縁遮光部41及び中間遮光部43は、例えば、PC樹脂とカーボンブラックとの混合材料によって形成されている。周縁遮光部41及び中間遮光部43は、黒色をなしており、光を吸収することで、光の透過を遮断する。周縁遮光部41は、後基材32の外周縁部35に沿って設けられることで楕円の環状をなしており、同外周縁部35に対し密着している。中間遮光部43は、周縁遮光部41により囲まれた箇所であって、後基材32の上記一般部33の前方に位置している。
【0057】
<前基材51>
前基材51は、装飾本体部31の前半部を構成する透明な部材である。前基材51は、PC樹脂によって、後基材32及び遮光部(周縁遮光部41及び中間遮光部43)よりも前方に位置している。ここでの透明には、無色透明のほか、着色透明(有色透明)も含まれる。なお、前基材51は、PC樹脂に代えてPMMA樹脂等の透明な樹脂によって形成されてもよい。
【0058】
前基材51の後部は、上記後基材32及び遮光部の両者の前部の形状に対応した形状に形成されている。すなわち、前基材51の後部であって、後基材32の突部34の前方となる箇所には、前方へ凹む凹部52が形成されている。また、前基材51の外周縁部53の後面には、前方へ凹む環状凹部54が形成されている。環状凹部54は、周縁遮光部41に対し前方から密着している。また、前基材51の後部であって、中間遮光部43の前方となる箇所には、同前方へ凹む凹部55が形成されている。この凹部55は、中間遮光部43に対し前方から密着している。
【0059】
前基材51の前面56は、上記後基材32の後面36に対応して、前方へ膨らむように緩やかに湾曲した平滑な単一の面によって構成されている。
<加飾層61>
図3に示すように、加飾層61は、後基材32と、中間遮光部43及び前基材51との間に形成されている。より詳しくは、加飾層61は、突部34の前方では、同突部34と凹部52との間に形成されている。また、加飾層61は、一般部33の前方では、中間遮光部43と一般部33との間に形成されている。すなわち、加飾層61は、突部34が設けられた箇所では、その突部34の前方に形成されている。また、加飾層61は、中間遮光部43が設けられた箇所では、その中間遮光部43の後面に形成されている。
【0060】
加飾層61は、金属皮膜によって構成されている。ここで、仮に、金属皮膜が一面にわたって連続した状態で形成されると、ミリ波が遮断又は大きく減衰される。そのため、金属皮膜は、インジウム(In)等の金属材料がスパッタリング又は蒸着されることにより、島構造をなすように形成されている。島構造は、金属皮膜が一面に連続しておらず、多数の微細な金属皮膜が島状に互いに僅かに離間し又は一部接触した状態で敷き詰められてなる構造である。この構造を採用することにより、金属皮膜は不連続構造となり、電気抵抗が高くなり、ミリ波透過性を有する。加飾層61は金属光沢を有している。
【0061】
<保護層63>
保護層63は、加飾層61を後方から被覆して保護するための層であり、加飾層61と後基材32との間に形成されている。保護層63は、無色透明又は着色透明な材料、本実施形態では、ウレタン系塗料によって形成されており、ミリ波透過性を有している。
【0062】
<ハードコート層65>
ハードコート層65は、透明であり、ミリ波透過性を有している。ハードコート層65は、前基材51の前面56に対し、公知のハードコート剤を塗布することにより形成されている。ハードコート剤としては、例えば、アクリレート系、オキセタン系、シリコーン系等の有機系ハードコート剤、無機系ハードコート剤、有機無機ハイブリッド系ハードコート剤等が挙げられる。
【0063】
ハードコート層65は、装飾本体部31の最前部に位置している。ハードコート層65の前面は、車両用外装品20の意匠面を構成している。
ハードコート層65は、前基材51に傷が付くのを抑制する機能を有している。また、ハードコート層65は、太陽光、風雨、温度変化等が原因で、車両用外装品20が変質したり劣化したりするのを抑制する機能も有している。
【0064】
<光拡散反射部材71>
図2及び図3に示すように、光拡散反射部材71は、装飾本体部31よりも後方に配置されている。光拡散反射部材71はミリ波透過性を有している。
【0065】
光拡散反射部材71の全体は、白色の光拡散材が分散された樹脂材料によって形成されている。樹脂材料としては、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合)樹脂が用いられているが、それ以外の樹脂材料、例えば、PC樹脂とABS樹脂とのポリマーアロイが用いられてもよい。また、光拡散材としては、例えば、上記後基材32に分散される光拡散材と同様のものが用いられる。
【0066】
光拡散反射部材71は、同光拡散反射部材71に照射された光を、白色の光となるように拡散反射する。
装飾本体部31の外周縁部を構成する上記周縁遮光部41と、光拡散反射部材71の外周縁部72とは、環状の接合部73によって接合されている。
【0067】
より詳しくは、光拡散反射部材71における外周縁部72の前面74には、周縁遮光部41の後端面42が、超音波溶着法等の溶着法によって溶着されている。超音波溶着法は、2つの樹脂部品の接合予定面に対し、圧力と超音波による振動とを加え、発生する摩擦熱によって両樹脂部品を溶融及び接合する方法である。この場合、2つの樹脂部品は、光拡散反射部材71及び周縁遮光部41であり、接合予定面は、後端面42及び前面74である。そして、周縁遮光部41と光拡散反射部材71との溶着部分により、上記環状の接合部73が形成されている。なお、超音波溶着法とは異なる溶着法、例えば、レーザ溶着法、熱板溶着法等の溶着法によって上記溶着が行なわれてもよい。
【0068】
装飾本体部31と光拡散反射部材71との間であって、接合部73により囲まれた領域は収容部75を構成している。収容部75のうち、接合部73から内方へ離れた領域の一部は、ミリ波レーダ装置12から送信されるミリ波の通過領域76とされている(図1参照)。
【0069】
<光源81>
図2及び図3に示すように、光源81は、発光ダイオード(LED)のチップによって構成されている。第1実施形態では、光源81が複数用いられている。各光源81は、基板82にLED素子83が実装されることによって構成されている。
【0070】
各光源81は、収容部75であって、上記通過領域76から外れた箇所に配置されている。第1実施形態では、一部の光源81は、通過領域76から上方へ外れた箇所に配置され、残りの光源81は、通過領域76から下方へ外れた箇所に配置されている。
【0071】
光源81、装飾本体部31及び光拡散反射部材71は、光源81からの光を光拡散反射部材71で拡散反射させて後基材32に向かわせる箇所に配置されている。
上記の条件を満たす箇所として、各光源81は、LED素子83を基板82よりも後側に位置させた状態で配置されている。また、光源81毎のLED素子83は、光拡散反射部材71から前方へ離れており、後方へ光を発する。
【0072】
そして、上記車両用外装品20は、起立させられた状態でフロントグリル11の上記窓部13に配置され、同フロントグリル11に取付けられている。ここで、車両用外装品20をフロントグリル11に取り付ける構造は特に制限されない。車両用外装品20は、例えば、クリップ、ビス、爪係合等によってフロントグリル11に取り付けられている。なお、車両用外装品20は、フロントグリル11に代えて車体(図示略)に取付けられてもよい。
【0073】
次に、上記のように構成された第1実施形態の作用について説明する。また、作用に伴い生ずる効果についても併せて説明する。
第1実施形態の車両用外装品20では、装飾本体部31の周縁部を構成する周縁遮光部41と、光拡散反射部材71の外周縁部72とを、環状の接合部73によって接合させることで、閉じられた空間からなる収容部75を形成している。この収容部75に複数の光源81を配置している。そのため、各光源81を装飾本体部31と光拡散反射部材71とによって覆われた状態にすることができる。車両用外装品20に外力が加わった場合、その外力を装飾本体部31及び光拡散反射部材71によって受け止めることができる。外力が各光源81に及ばないようにし、各光源81を外力から保護することができる。
【0074】
また、上記接合部73は、周縁遮光部41の後端面42と、光拡散反射部材71における外周縁部72の前面74とを溶着させることによって形成されている。周縁遮光部41と外周縁部72とは、それらの間に隙間がなく、封止された状態となる。そのため、雨、氷雪が溶けてできた水、洗車時に使用される水等が、周縁遮光部41と外周縁部72との間から収容部75に入り込むのを阻止し、防水性を高めることができる。
【0075】
さらに、加飾層61は、これを後方から被覆する保護層63によって保護される。この保護層63により、加飾層61が前基材51から剥がれるのを抑制し、加飾層61を前基材51に密着した状態に保持することができる。
【0076】
ミリ波レーダ装置12からミリ波が送信されると、そのミリ波は、光拡散反射部材71、収容部75及び装飾本体部31を順に透過する。収容部75のうち、接合部73から同収容部75の内方へ離れた領域の一部は、ミリ波レーダ装置12から送信されるミリ波の通過領域76を構成している(図1図2参照)。そのため、送信されたミリ波の全てが、収容部75を通過する。送信されたミリ波の一部が収容部75の外部を通過する現象は起こらない。
【0077】
また、光源81毎のLED素子83は、収容部75のうち通過領域76から上方又は下方へ外れた箇所に位置している。そのため、ミリ波レーダ装置12から送信されるミリ波は、収容部75のうち光源81がない箇所を通過する。各光源81は、ミリ波レーダ装置12から送信されるミリ波の通過を妨げない。
【0078】
装飾本体部31を透過したミリ波は、先行車両、歩行者等を含む車両前方の物体に当たって反射された後、装飾本体部31、収容部75及び光拡散反射部材71を順に透過する。上記ミリ波は、ミリ波レーダ装置12によって受信される。金属皮膜からなる加飾層61は、島構造を採っていて不連続であることから、電気抵抗が高く、ミリ波透過性を有する。
【0079】
ミリ波レーダ装置12では、送信及び受信されたミリ波に基づき、上記物体が認識され、車両10と同物体との距離、相対速度等の検出が行われる。
また、光源81毎のLED素子83は、後方へ光を発する。各光源81の後方には光拡散反射部材71が位置している。そのため、各光源81が発した光は、光拡散反射部材71に照射される。照射された光は、光拡散反射部材71の樹脂材料に分散されている白色の光拡散材の粒子に当たり、拡散反射される。光拡散反射部材71によって、白色の光となるように拡散反射された上記光は、後基材32に向かう。後基材32に照射された光は、樹脂材料に分散されている白色の光拡散材の粒子に当たり、白色の光となるように拡散及び透過される。
【0080】
従って、車両10の前方から車両用外装品20を見ると、装飾本体部31が白く明るく見える。特に、各光源81が発した光は、光拡散反射部材71によって拡散反射され、その後に後基材32によって拡散及び透過される。そのため、車両10の前方から車両用外装品20を見ると、その車両用外装品20は、各光源81からの光が、光拡散反射部材71及び後基材32の一方のみによって拡散される場合よりも明るい白色に見える。
【0081】
ところで、図3において、車両用外装品20に対し前方から入射した可視光の一部は、ハードコート層65及び前基材51を順に透過する。
可視光の一部は、周縁遮光部41と、背景領域21に位置する中間遮光部43とによって吸収される。そのため、車両10の前方から車両用外装品20を見ると、ハードコート層65及び前基材51を通して、それらの後側(奥側)に、周縁遮光部41及び中間遮光部43が位置するように見える。しかも、周縁遮光部41及び中間遮光部43は黒色を帯びているように見える。それらの周縁遮光部41及び中間遮光部43よりも後方の部材は見えない。
【0082】
また、可視光の一部は、模様領域22に位置する加飾層61で反射される。そのため、車両10の前方から車両用外装品20の模様領域22を見ると、ハードコート層65及び前基材51を通して、それらの後側(奥側)に加飾層61が位置するように見える。しかも、模様領域22では、加飾層61が凹部52と突部34との間に形成されているため、加飾層61が前方へ飛び出しているように立体的に見える。さらに、加飾層61は、金属皮膜によって形成されているため、金属のように光り輝いて見える。
【0083】
このように、背景領域21に位置する中間遮光部43と、模様領域22に位置する加飾層61と、装飾本体部31の外周縁部に位置する周縁遮光部41とによって車両用外装品20が装飾され、車両用外装品20及びその周辺部分の見栄えが向上する。
【0084】
(第2実施形態)
次に、車両用外装品の第2実施形態について説明する。
第2実施形態では、図3において二点鎖線で示すように、保護層63のうち、中間遮光部43の後方となる部分と一般部33との間に、照射された光を後方へ反射する光反射部85が設けられている。光反射部85としては、例えば、光を反射する反射シートが用いられる。反射シートは、保護層63の後面の上記箇所に対し、粘着剤、接着剤等によって貼付けられる。光反射部85は、その他にも、白色の光拡散材の粒子が分散された塗膜によって形成されてもよい。また、光反射部85は、白色の光拡散材が分散された樹脂材料が用いられて樹脂成形されてもよい。
【0085】
上記以外の構成は第1実施形態と同様である。そのため、第1実施形態で説明したものと同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
従って、第2実施形態によると、第1実施形態と同様の作用及び効果が得られるほか、次の作用及び効果が得られる。
【0086】
光源81から照射されて、光拡散反射部材71で拡散反射された光のうち、中間遮光部43に向かうものは、光反射部85に照射される。この光は、光反射部85で後方へ反射されて、光拡散反射部材71に照射される。このように、光拡散反射部材71で拡散反射された光が、光反射部85で跳ね返されて光拡散反射部材71に戻される。そのため、光反射部85が設けられない場合に比べ、光拡散反射部材71で拡散反射される光が多くなる。これに伴い、後基材32で拡散及び透過される光を多くして輝度を高くすることができる。
【0087】
(第3実施形態)
次に、車両用外装品の第3実施形態について、図4を参照して説明する。
後基材32には、一般部33と、一般部33よりも前方へ突出する帯状の突部34とが形成されている。一般部33の前側には、中間遮光部43が形成されている。これらの点において、第3実施形態は第1実施形態と共通している。
【0088】
第1実施形態では説明を省略したが、帯状をなす突部34は、一対の側面37と頂面38とを備えている。一対の側面37は、突部34の幅方向における両側(図4では上下両側)に位置している。両側面37は、それらの間隔、表現を変えると、突部34の幅が後方ほど拡大するように、上記送信方向(前後方向)に対し傾斜している。両側面37の前後方向に対する傾斜角度は互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。頂面38は、突部34の前端に位置し、両側面37の前端同士を繋いでいる。
【0089】
さらに、第3実施形態では、突部34と、加飾層61及び保護層63との間であって、各側面37に面する箇所に、光の透過を遮断する光遮蔽層87が形成されている。突部34の頂面38と、加飾層61及び保護層63との間には光遮蔽層87が形成されていない。なお、光遮蔽層87は、中間遮光部43の後方において、加飾層61及び保護層63と一般部33との間に形成されてもよいし、形成されなくてもよい。
【0090】
上記以外の構成は第1実施形態と同様である。そのため、第1実施形態で説明したものと同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
従って、第3実施形態によると、第1実施形態と同様の作用及び効果が得られる。
【0091】
ここで、光源81の非点灯時には、光源81からの光が光拡散反射部材71に照射されない。そのため、光拡散反射部材71で光の拡散反射が行なわれない。これに伴い、光拡散反射部材71からの光が後基材32に照射されない。そのため、後基材32でも光の拡散及び透過が行なわれない。
【0092】
一方、車両用外装品20に対し前方から可視光が入射すると、その可視光の一部は中間遮光部43によって吸収されて、透過を遮断される。そのため、車両10の前方から車両用外装品20を見ると、中間遮光部43よりも後方の部材は見えない。
【0093】
また、可視光の一部は、加飾層61のうち、突部34の前側に位置する部分で反射される。そのため、車両10の前方から車両用外装品20を見ると、上述したように、加飾層61が前方へ飛び出しているように立体的に見える。すなわち、突部34上の加飾層61のうち、頂面38に形成された部分は、両側面37に形成された部分よりも、前方に位置するように見える。突部34上の加飾層61のうち、両側面37に形成された部分は、頂面38に形成された部分よりも後方で影のように見える。
【0094】
これに対し、光源81の点灯時において、仮に、後基材32によって拡散及び透過された光が、加飾層61のうち、頂面38に形成された部分に対しても、両側面37に形成された部分に対しても照射されると、次の問題が起り得る。すなわち、後基材32で拡散及び透過された光によって、加飾層61のうち、頂面38に形成された部分も、両側面37に形成された部分も、一様に明るく見える。図4中のW1は、このときに見える突部34上の加飾層61の幅を示している。突部34上の加飾層61が、光源81の上記非点灯時に比べ、両側面37に形成された加飾層61の分、同突部34の幅方向に太く見えてしまう。
【0095】
この点、第3実施形態では、突部34の各側面37と加飾層61との間に光遮蔽層87が形成されている。光遮蔽層87では、光が吸収されて透過が遮断される。加飾層61のうち、突部34の各側面37に形成された部分には、後基材32によって拡散及び透過された光が到達しない。
【0096】
これに対し、突部34の頂面38と加飾層61との間には光遮蔽層87が形成されていない。そのため、加飾層61のうち、突部34の頂面38に形成された部分には、後基材32によって拡散及び透過された光が到達する。
【0097】
光源81の点灯時には、突部34上の加飾層61のうち、頂面38に形成された部分が明るく見えるが、各側面37に形成された部分は明るく見えない。図4中のW2は、このときに明るく見える突部34上の加飾層61の幅を示している。
【0098】
従って、車両10の前方から車両用外装品20を見た場合、光源81の非点灯時と、点灯時とで、突部34上の加飾層61が同程度の幅で見え、意匠性が向上する。
(第4実施形態)
次に、車両用外装品20の第4実施形態について、図3図5及び図6を参照して説明する。
【0099】
第4実施形態では、加飾層61は、ミリ波透過性を有し、かつ光源81から照射された光の波長をシフトさせる金属皮膜により形成されている。金属皮膜はインジウムにより形成されている。これらの点で、第4実施形態は、第1実施形態と共通している。
【0100】
第4実施形態では、保護層63に、次の条件を満たす顔料又は染料が含有されている。
条件:保護層63に入射した光が同保護層63を透過する過程で、その光の色を、加飾層61を透過した後の光が白色となる色にシフトさせること。
【0101】
金属皮膜が上記のようにインジウムによって形成されている場合、保護層63には、緑色の顔料又は染料が含有される。
上記以外の構成は第1実施形態と同様である。そのため、第1実施形態で説明したものと同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0102】
図5は、光の色を(Cx,Cy)の平面座標で表した色度図を示している。光の色は、この色度図上における座標位置で示される。図6は、図5のB部を拡大して示している。
上記のように、加飾層61が金属皮膜によって形成されている場合、光は加飾層61を透過することにより、白色とは異なる色の光にシフトされる。車両10の前方から車両用外装品20を見た場合、加飾層61が、上記のようにシフトされた色であって、白色とは異なる色に光って見える。
【0103】
金属皮膜がインジウムによって形成されている場合、光は加飾層61を透過することにより、図6において矢印Xで示すように、黄色の光にシフトされる。車両10の外部から車両用外装品20を見た場合、加飾層61が黄色に光って見える。
【0104】
しかし、第4実施形態では、保護層63として、上記の顔料又は染料が含有されたものが用いられる。そのため、保護層63に入射した光は、同保護層63を透過する過程で、加飾層61を透過した後の光が白色となる色にシフトされる。シフトされた上記色の光が加飾層61を透過することで、その光は黒体軌跡上の白色に調整される。
【0105】
保護層63として、上記のように、緑色の顔料又は染料が含有されたものが用いられる。すると、保護層63に入射した光は、同保護層63を透過する過程で、図6において矢印Yで示すように、緑色の顔料又は染料により、加飾層61を透過した後の光が白色となる色(緑色)にシフトされる。シフトされた上記緑色の光が加飾層61を透過することで、図6において矢印Zで示すように、その光を黒体軌跡(図示略)上の白色に調整することができる。従って、車両10の前方から車両用外装品20を見た場合、加飾層61が白色で光って見えるようにすることができる。
【0106】
なお、上述した各実施形態は、これを以下のように変更した変更例として実施することもできる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0107】
<後基材32について>
・後基材32で光を拡散させるために、同後基材32を形成する樹脂材料中に光拡散材料を分散することに代え、図4において二点鎖線で示すように、後基材32の後面36に、その後面36に照射された光を拡散及び透過する凹凸部89が形成されてもよい。なお、図4では、図示の都合上、凹凸部89が誇張して描かれている。
【0108】
このようにすることで、光拡散反射部材71で拡散反射された光が凹凸部89に入射されると、その光は、凹凸部89で拡散及び透過される。そのため、装飾本体部31に照射された光を、後基材32によって、白色となるように拡散及び透過させることができる。
【0109】
<光拡散反射部材71について>
図3において二点鎖線で示すように、光拡散反射部材71の最前部が、白色の光拡散材の粒子が分散された塗膜からなる光拡散反射層91により構成されてもよい。図3では、光拡散反射部材71において二点鎖線よりも前側部分が光拡散反射層91を示している。
【0110】
このようにすることで、光源81が発した光は、光拡散反射部材71の光拡散反射層91に照射される。照射された光が、光拡散反射層91の樹脂材料に分散されている光拡散材に当たると、拡散反射される。
【0111】
<加飾層61>
・加飾層61を構成する金属皮膜がインジウムとは異なる種類の金属材料によって形成されてもよい。この変更例が第4実施形態に適用された場合には、保護層63に、第4実施形態とは異なる色の顔料又は染料が含有される。
【0112】
<光源81について>
・上記実施形態とは異なる数の光源81が用いられてもよい。
・光源81は、収容部75のうち通過領域76から左右方向へ外れた箇所に配置されてもよい。
【0113】
・光源81として、電界発光するLEDとは異なる原理で発光する光源が用いられてもよい。例えば、白熱発光、蛍光発光、放電発光、化学発光、レーザ発光等で発光する光源である。
【0114】
<車両用外装品20の適用対象について>
・車両用外装品20は、ミリ波レーダ装置12が車両10の前部とは異なる箇所、例えば後部に搭載された場合にも適用可能である。この場合、ミリ波レーダ装置12は、車両10の後方に向けてミリ波を送信する。車両用外装品20は、ミリ波の送信方向におけるミリ波レーダ装置12の前方、すなわち、ミリ波レーダ装置12に対し車両10の後方となる箇所に配置される。
【0115】
同様に、上記車両用外装品20は、ミリ波レーダ装置12が車両10の斜め前側部や斜め後側部に搭載された場合にも適用可能である。
・車両用外装品20の適用対象は、車両10において、ミリ波の送信方向におけるミリ波レーダ装置12の前方に取り付けられて、車両10を装飾するとともに、ミリ波透過性を有するものである。例えば、エンブレム、オーナメント、マーク、フロントグリル等が車両用外装品20の適用対象として挙げられる。
【符号の説明】
【0116】
10…車両
12…ミリ波レーダ装置
20…車両用外装品
31…装飾本体部
32…後基材(基材)
33…一般部
34…突部
36…後面
37…側面
38…頂面
41…周縁遮光部(遮光部の一部を構成)
43…中間遮光部(遮光部の一部を構成)
51…前基材
61…加飾層
63…保護層
71…光拡散反射部材
72…外周縁部
73…接合部
75…収容部
76…通過領域
81…光源
85…光反射部
87…光遮蔽層
89…凹凸部
91…光拡散反射層
図1
図2
図3
図4
図5
図6