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特開2022-151616被覆粒子及びその製造方法、並びに、被覆粒子を含む組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151616
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】被覆粒子及びその製造方法、並びに、被覆粒子を含む組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/00 20160101AFI20220929BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20220929BHJP
   A61K 31/4745 20060101ALI20220929BHJP
   A61K 9/50 20060101ALI20220929BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20220929BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20220929BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20220929BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20220929BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220929BHJP
   A61P 39/06 20060101ALI20220929BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20220929BHJP
   A61K 8/11 20060101ALI20220929BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20220929BHJP
   A61K 8/98 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
A23L5/00 D
A23L5/00 F
A23L33/10
A23L5/00 K
A61K31/4745
A61K9/50
A61K47/44
A61K47/12
A61K47/14
A61K47/24
A61P43/00 105
A61P39/06
A61P25/28
A61K8/11
A61K8/49
A61K8/98
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022016035
(22)【出願日】2022-02-04
(31)【優先権主張番号】P 2021053854
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】伊丸岡 智子
(72)【発明者】
【氏名】辻 シャフィカ
(72)【発明者】
【氏名】池本 一人
【テーマコード(参考)】
4B018
4B035
4C076
4C083
4C086
【Fターム(参考)】
4B018LE02
4B018MA08
4B018MD08
4B018MD10
4B018MD18
4B018MD79
4B018MD90
4B018ME06
4B018ME14
4B018MF08
4B035LC05
4B035LE07
4B035LG01
4B035LG05
4B035LG06
4B035LG12
4B035LG13
4B035LG19
4B035LG21
4B035LG26
4B035LG57
4B035LK12
4B035LK13
4B035LK14
4B035LP21
4B035LP24
4B035LP36
4C076AA61
4C076AA64
4C076BB01
4C076CC01
4C076CC21
4C076CC26
4C076CC40
4C076DD08F
4C076DD15F
4C076DD29
4C076DD37
4C076DD43
4C076DD60
4C076EE53
4C076EE55H
4C076FF21
4C076GG17
4C083AA071
4C083AA072
4C083AA122
4C083AB051
4C083AB172
4C083AC101
4C083AC102
4C083AC301
4C083AC302
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC851
4C083AC852
4C083AD571
4C083AD572
4C083BB01
4C083BB11
4C083BB26
4C083BB42
4C083DD16
4C083EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB05
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA38
4C086MA52
4C086NA03
4C086ZA15
4C086ZB21
4C086ZC21
(57)【要約】
【課題】水、油、及び酸に対して安定であり、かつ、必要に応じて体内で溶解可能であるとともに、PQQの結晶系を維持することのできる被覆粒子及びその製造方法、並びに、被覆粒子を含む組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】ピロロキノリンキノン又はその塩を含む芯剤と、該芯剤を被覆する被覆層と、を有し、該被覆層が、シェラックと、1000ppm以下のエタノールと、を含む、被覆粒子。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピロロキノリンキノン又はその塩を含む芯剤と、該芯剤を被覆する被覆層と、を有し、
該被覆層が、シェラックと、1000ppm以下のエタノールと、を含む、
被覆粒子。
【請求項2】
前記被覆粒子が、10質量%以下の水を含む、
請求項1に記載の被覆粒子。
【請求項3】
前記シェラックの含有量が、前記ピロロキノリンキノン又はその塩100質量部に対して、30~300質量部である、
請求項1又は2に記載の被覆粒子。
【請求項4】
平均粒径が、5~100μmである、
請求項1~3のいずれか一項に記載の被覆粒子。
【請求項5】
前記芯剤が、ピロロキノリンキノンジナトリウムの含水物を含む、
請求項1~4のいずれか一項に記載の被覆粒子。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の被覆粒子と、
水、油脂、及び酸成分からなる群より選ばれる少なくとも1種類と、を含む、
組成物。
【請求項7】
乳化剤及び/又は分散剤を含む、
請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか一項に記載の被覆粒子の製造方法であって、
ピロロキノリンキノン又はその塩を含む芯剤と、シェラックとエタノールとを含む溶液と、を接触させて、前記芯剤に対して被覆層を形成した乾燥前被覆粒子を得る被覆工程と、
前記乾燥前被覆粒子を、相対湿度20~100%の気体中で処理することにより、該被覆層中のエタノール含量を1000ppm以下とする乾燥工程と、を有する、
被覆粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピロロキノリンキノン又はその塩(以下、まとめて「PQQ」ともいう。)を含む被覆粒子及びその製造方法、並びに、被覆粒子を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ピロロキノリンキノンジナトリウムは、下記式(1)で表される化合物である。
【化1】
【0003】
PQQは、細胞の増殖促進作用、抗酸化作用、ミトコンドリア新生作用、脳機能改善など多くの生理活性が明らかにされており、健康補助食品等の食品分野、化粧品分野等において、有用な化合物として注目を集めている。また、医薬品分野への利用も期待されている。
【0004】
このようなPQQを、医薬品分野、食品分野、及び化粧品分野等で用いるためにはいくつかの課題が生じる。例えば、食品や化粧品等においてその製品の色は重要な因子であり、食品や化粧品等が変色しないことが求められる。しかしながら、PQQは、赤い色の物質であり(非特許文献1)、その含水量によって変色する場合がある。また、PQQは、様々な物質と反応して変色する恐れもある。
【0005】
このような変色を抑えるために、PQQをコーティングして変色等から保護することが考えられる。例えば、特許文献1には、水難溶性物質を含む第1の被覆層と、油脂を含む第2の被覆層により、PQQをコーティングする方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-086171
【特許文献2】再表2011/007633
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Chem.Central.J,2012.6,57
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、油脂を含む被覆層は水に対しては安定であるものの食用油などに対しては溶解してしまうため、その用途が制限される。また、被覆されたPQQは、単に水や油に対して安定であるということだけでは足りず、必要に応じて体内で被覆層とともに溶解して吸収されなければならない。
【0009】
また、PQQは結晶性の物質でありいくつかの結晶形が報告されているが(特許文献3)、被覆層には、このような結晶形を維持することも求められる。
【0010】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、水、油、及び酸に対して安定であり、かつ、必要に応じて体内で溶解可能であるとともに、PQQの結晶系を維持することのできる被覆粒子及びその製造方法、並びに、被覆粒子を含む組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明らは、上記問題を解決するために鋭意検討した。その結果、ピロロキノリンキノン又はその塩を含む芯剤を所定の被覆層により被覆することにより、上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕
ピロロキノリンキノン又はその塩を含む芯剤と、該芯剤を被覆する被覆層と、を有し、
該被覆層が、シェラックと、1000ppm以下のエタノールと、を含む、
被覆粒子。
〔2〕
前記被覆粒子が、10質量%以下の水を含む、
〔1〕に記載の被覆粒子。
〔3〕
前記シェラックの含有量が、前記ピロロキノリンキノン又はその塩100質量部に対して、30~300質量部である、
〔1〕又は〔2〕に記載の被覆粒子。
〔4〕
平均粒径が、5~100μmである、
〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の被覆粒子。
〔5〕
前記芯剤が、ピロロキノリンキノンジナトリウムの含水物を含む、
〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の被覆粒子。
〔6〕
〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載の被覆粒子と、
水、油脂、及び酸成分からなる群より選ばれる少なくとも1種類と、を含む、
組成物。
〔7〕
乳化剤及び/又は分散剤を含む、
〔6〕に記載の組成物。
〔8〕
〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載の被覆粒子の製造方法であって、
ピロロキノリンキノン又はその塩を含む芯剤と、シェラックとエタノールとを含む溶液と、を接触させて、前記芯剤に対して被覆層を形成した乾燥前被覆粒子を得る被覆工程と、
前記乾燥前被覆粒子を、相対湿度20~100%の気体中で処理することにより、該被覆層中のエタノール含量を1000ppm以下とする乾燥工程と、を有する、
被覆粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、水、油、及び酸に対して安定であり、かつ、必要に応じて体内で溶解可能であるとともに、PQQの結晶系を維持することのできる被覆粒子及びその製造方法、並びに、被覆粒子を含む組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0015】
〔被覆粒子〕
本実施形態に係る被覆粒子は、ピロロキノリンキノン又はその塩(以下、まとめて「PQQ」という。)を含む芯剤と、該芯剤を被覆する被覆層と、を有し、該被覆層が、シェラックと、1000ppm以下のエタノールと、を含む。
【0016】
上記のような被覆粒子とすることにより、食品や化粧品、医薬として他の成分と混合した場合においても変色を生じさせにくく、また舌や口の中の組織と接触しても変色を生じさせにくくすることができる。さらに、本実施形態に係る被覆粒子は、水、油、及び酸に対して安定性を有する一方で、体内では溶けだして、吸収される徐放性を有するものとなるほか、被覆による残留溶媒が低減され、その残留溶媒による匂いなども低減することができる。
【0017】
被覆粒子の水分量は、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは2.0~10質量%であり、さらに好ましくは3.0~8.0質量%である。被覆粒子の水分量が10質量%以下であることにより、芯材に含まれるPQQの安定性がより向上する傾向にある。また、被覆粒子の水分量が2.0~であることによっても、芯材に含まれるPQQの安定性がより向上する傾向にある。
【0018】
〔芯剤〕
芯剤は、ピロロキノリンキノン又はその塩を含むものであれば特に制限されず、その他の添加剤を含んでもよい。
【0019】
(ピロロキノリンキノン又はその塩)
ピロロキノリンキノンは、還元型及び酸化型のいずれであってもよい。また、ピロロキノリンキノンの塩としては、特に限定されないが、例えば、ピロロキノリンキノンに存在する3つのカルボン酸のアルカリ塩であってもよく、ピリジンやピロールの酸塩であってもよい。また、ピロロキノリンキノンの塩は、例えば、モノカルボン酸塩、ジカルボン酸塩、トリカルボン酸塩であってもよく、モノカルボン酸塩については、いずれのカルボン酸の塩であってもよく、ジカルボン酸塩については、2つのカルボン酸の塩であれば任意の組み合わせの塩であってもよい。
【0020】
ピロロキノリンキノンの塩としては、特に限定されないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩、トリエタノールアミン塩、トリメチルアミン塩等の有機アミン塩;リジン塩、アルギニン塩等の塩基性アミノ酸塩等のものが挙げられる。さらに、ピロロキノリンキノンは水分子が水和した含水物であってもよい。
【0021】
このなかでも、ピロロキノリンキノンのフリー体、ナトリウム塩、カリウム塩が好ましく、ジナトリウム塩がより好ましく、ジナトリウム塩の含水物がさらに好ましい。このようなPQQを用いることにより、安定性がより向上する傾向にある。
【0022】
さらに、ピロロキノリンキノンは任意の結晶構造を有していてもよく、異なる結晶構造を含むものであってもよい。このなかでも、ピロロキノリンキノンの赤色を維持するためには含水結晶が好ましい。
【0023】
含水結晶における含水量はPQQの1水和物から5水和物が使用できる。PQQのなかでも、製造が容易であることからピロロキノリンキノンジナトリウム三水和物、もしくは2水和物が好ましい。
【0024】
PQQの含有量は、被覆粒子の総量に対して、好ましくは20~80質量%であり、より好ましくは30~70質量%であり、さらに好ましくは40~60質量%である。PQQの含有量が上記範囲内であることにより、被覆粒子におけるPQQの比率を維持しつつ、被覆層の厚さも確保できるため、被覆粒子のPQQによる効能と安定性が向上する傾向にある。
【0025】
(添加剤)
芯材に添加する添加剤としては、特に限定されないが、例えば、賦形剤、酸味料、更にはPQQと接触することによって含量低下などを引き起こさない範囲で各種ビタミン類などの有効成分を含んでもよい。また、流動性を改善するシリカを添加することもできる。
【0026】
〔被覆層〕
被覆層は上記芯剤を被覆するものであり、シェラックと、1000ppm以下のエタノールと、を含む。
【0027】
被覆層におけるシェラックの含有量は、PQQ100質量部に対して、好ましくは30~300質量部であり、より好ましくは50~250質量部であり、さらに好ましくは75~225質量部である。シェラックの含有量が30質量部以上であることにより、安定性がより向上する傾向にある。また、シェラックの含有量が300質量部以下であることにより、体内で溶解しやすく、PQQの吸収性がより向上するほか、PQQを含むカプセル剤などの大きさを小さくすることができる。
【0028】
また、エタノールの含有量は、被覆粒子の総量に対して、1000ppm以下であり、好ましくは500ppm以下であり、より好ましくは250ppm以下であり、さらに好ましくは150ppm以下である。エタノールの含有量の下限は、特に限定されないが、検出限界以下(0ppm)が好ましい。エタノールの含有量が1000ppm以下であることにより、被覆粒子の安定性が向上するほか、被覆粒子の固着が抑制され、被覆粒子に付着した匂いも抑えられる。
【0029】
〔粒径〕
被覆粒子の平均粒径は、好ましくは5~500μmであり、より好ましくは5~100μmであり、さらに好ましくは10~75μmである。被覆粒子の平均粒径が上記範囲内であることにより、凝集が抑制され、添加対象となる飲食品に添加するときや製剤する際に混合しやすく、また、装置等への付着を抑制することができる。
【0030】
〔組成物〕
本実施形態の組成物は、上記被覆粒子と、水、油脂、及び酸成分からなる群より選ばれる少なくとも1種類と、を含み、必要に応じて、乳化剤及び/又は分散剤などの他の添加剤をさらに含んでいてもよい。上記被覆粒子は水、油脂、及び酸成分に対して安定であり、上記のような組成物は変色等が抑制されたものとなる。また、乳化剤や分散剤を用いることにより組成物に対する被覆粒子の分散性や安定性をより向上することができる。
【0031】
油脂は、医薬品分野、食品分野、化粧品分野等で用いるものが好ましい。このような油脂としては、特に限定されないが、例えば、植物油、動物油、炭化水素油、エステル油、シリコーン油等が挙げられる。なお、油は常温で液状であっても、固形状であってもよい。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0032】
酸成分としては、特に限定されないが、例えば、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酒石酸、アスコルビン酸、リン酸、塩酸、硫酸等が挙げられる。
【0033】
乳化剤としては、特に限定されないが、例えば、レシチン、脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0034】
分散剤としては、特に限定されないが、例えば、ショ糖、グルコース、フルクトース、デキストリン、でんぷん、米粉、セルロース、ソルビトール、キシリトール等が挙げられる。
【0035】
上記各成分は、1種単独で用いても、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0036】
上記各成分の含有量は、特に限定されないが、例えば、被覆粒子100質量部に対して、好ましくは0.1~100質量部である。
【0037】
〔用途〕
本実施形態に係る組成物は、化粧品分野、医薬品分野、食品分野における製品であってもよいし、それら製品の製造に用いられる原料であってもよい。
【0038】
医薬品分野やサプリメントなどの食品分野で用いる経口剤としては、特に限定されないが、例えば、カプセル剤、タブレット剤、顆粒、散剤、丸剤、懸濁剤、乳剤、浸剤・煎剤、シロップ剤、液剤等の他、ゼリー、グミ、クラッシュゼリーに上記被覆粒子を混合したものが挙げられる。
【0039】
また、経口剤として製剤化する際には、特に限定されないが、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、潤沢剤、分散剤、懸濁剤、乳化剤、希釈剤、緩衝剤、抗酸化剤、細菌抑制剤等の添加剤を用いることができる。また、香料や甘味料を添加することが可能である。
【0040】
機能性食品として製品化する場合には、食品に用いられる添加剤、例えば甘味料、着色料、保存料、増粘安定剤、酸化防止剤、発色剤、漂白剤、防菌防黴剤、ガムベース、苦味料、酵素、光沢剤、酸味料、調味料、乳化剤、強化剤、製造用剤、香料、香辛料抽出物等を用いることができる。一般的には通常の食品、例えば味噌、醤油、インスタントみそ汁、ラーメン、焼きそば、カレー、コーンスープ、マーボードーフ、マーボーなす、パスタソース、プリン、ケーキ、パン等に加えることも可能である。
【0041】
〔被覆粒子の製造方法〕
本実施形態の被覆粒子の製造方法は、ピロロキノリンキノン又はその塩を含む芯剤と、シェラックとエタノールとを含む溶液と、を接触させて、芯剤に対して被覆層を形成した乾燥前被覆粒子を得る被覆工程と、乾燥前被覆粒子を、相対湿度20~100%の気体中で処理することにより、該被覆層中のエタノール含量を1000ppm以下とする乾燥工程と、を有する。
【0042】
(被覆工程)
被覆工程は、ピロロキノリンキノン又はその塩を含む芯剤と、シェラックとエタノールとを含む溶液と、を接触させて、芯剤に対して被覆層を形成した乾燥前被覆粒子を得る工程である。芯材であるPQQの結晶構造を維持する観点からは、PQQは溶液などに溶解しない状態で、被覆工程を行うことが好ましい。
【0043】
被覆層を形成するためのコート材料であるシェラックは、エタノールに溶解して使用してもよい。シェラックの含有量は、コート材料100質量%に対して、好ましくは3~50質量%であり、より好ましくは5~30質量%であり、さらに好ましくは10~30質量%である。シェラックの含有量が上記範囲内であることにより、シェラックの溶解度が向上し、被覆効率がより向上する傾向にある。
【0044】
また、エタノールの含有量は、コート材料100質量%に対して、好ましくは40~95質量%であり、より好ましくは50~90質量%であり、さらに好ましくは60~80質量%である。エタノールの含有量が上記範囲内であることにより、シェラックの溶解度が向上し、被覆効率がより向上し、またPQQ結晶が壊れることがより抑制される傾向にある。
【0045】
さらに、エタノールに含まれる水の含有量は、エタノール100質量%に対して、好ましくは0~50質量%であり、より好ましくは3~30質量%であり、さらに好ましくは10~30質量%である。エタノールに含まれる水の含有量が50質量%以下であることにより、シェラックの溶解度が向上し、被覆効率がより向上する傾向にある。また、エタノールに含まれる水の量が50質量%以下であることにより、水によってPQQ結晶が壊れることがより抑制される傾向にある。
【0046】
被覆層の形成に使用する装置に制限はなく、流動層型コーティング装置を用いることが好ましい。流動層型コーティング装置は、一般に、流動層容器の底部から導入した気体(流動化気体)によって、流動層容器内で粉粒体を浮遊流動させて流動層を形成しつつ、造粒、コーティング、乾燥等の処理を行うものである。その他、回転ドラム型装置、エバポレーター、スプレードライ、真空乾燥機が使用できる。
【0047】
被覆工程のより具体的な方法としては、特に限定されないが、例えば、PQQを含む芯材を流動層型コーティング装置に入れ、湿度20~60%の通常の空気を使用して流動させ、ここにエタノールにシェラックを溶かしたコート材料をスプレーしながら、コーティングしていく方法が挙げられる。
【0048】
上記のようにしてコーティングされた乾燥前被覆粒子には、通常、2000ppm以上のエタノールが含まれる。
【0049】
(乾燥工程)
乾燥工程は、上記のようにして得られた乾燥前被覆粒子を、相対湿度20~100%の気体中で処理することにより、該被覆層中のエタノール含量を1000ppm以下とする工程である。
【0050】
このような乾燥工程を経ることにより、乾燥前被覆粒子に含まれる残留溶媒のエタノールを除去することができる。特に、本実施形態の乾燥前被覆粒子は、減圧乾燥などで処理をすると芯材であるPQQから結晶構造の維持に必要な水分子までが除去されてしまい、結晶構造が壊れてしまうという問題がある。
【0051】
そのため、本実施形態の製造方法においては、相対湿度20~100%に調湿した気体中で乾燥前被覆粒子を処理する。乾燥工程における相対湿度は、好ましくは30~90%であり、より好ましくは40~80%であり、さらに好ましくは50~70%である。また、乾燥工程における処理温度は、好ましくは10~75℃であり、より好ましくは20~65℃であり、さらに好ましくは25~55℃である。
【0052】
このように乾燥工程において、湿度を有したガスを乾燥前被覆粒子と接触させることにより、PQQから結晶構造の維持に必要な水分子を除去することなく、被覆層におけるエタノールを除去することができる。なお、減圧乾燥や相対湿度が20%未満の乾燥した気体による乾燥では、予想外にエタノールの除去効率が低く、また、PQQ結晶内部の水和水も除去してしまい変色するおそれがある。
【0053】
乾燥工程において、調湿した空気と乾燥前被覆粒子との接触は、乾燥前被覆粒子を流動させながら実施してもよいし、乾燥前被覆粒子を静置した状態で実施してもよい。接触時間は残留エタノール量に応じて、適宜変更できるが、好ましくは2時間から1か月であり、より好ましくは2~1週間であり、さらに好ましくは2~10時間である。なお、乾燥工程で用いる調湿した空気は飽和塩溶液を使用することで容易に準備できる。
【0054】
〔組成物の製造方法〕
本実施形態の組成物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、上記被覆粒子を水、油脂、及び酸成分からなる群より選ばれる少なくとも1種類と、あるいは、必要に応じて、乳化剤及び/又は分散剤などの他の添加剤と混合する方法が挙げられる。
【0055】
例えば、組成物をタブレットで提供する場合、本実施形態の被覆粒子に対して各種賦形剤や滑沢剤等を添加して打錠することが好ましい。打錠成形体の製造方法としては、例えば直接圧縮成型する方法を用いることができる。具体的には、各成分の粉末をできるだけ均一に混合し、打錠機に直接フィードして打錠する方法が挙げられる。該打錠機としては、特に限定されないが、ロータリー打錠機コレクト12HU(菊水製作所製)等の打錠機が挙げられ、低圧力で、成形することができる。その圧力としては、例えば1~3t程度の圧力で成形することが可能である。
【0056】
また、本実施形態で得られる被覆結晶及び該被覆結晶を含む組成物を、経口投与に適当な、例えばシロップ剤のような液体調製物として用いる場合は、水、ショ糖、ソルビトール、果糖等の糖類;ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;ゴマ油、オリーブ油、大豆油等の油;p-ヒドロキシ安息香酸エステル類等の防腐剤;パラオキシ安息香酸メチル等のパラオキシ安息香酸誘導体;安息香酸ナトリウム等の保存剤;ストロベリーフレーバー、ペパーミント等のフレーバー類等を添加して製剤化することができる。
【0057】
また、本実施形態で得られる被覆結晶及び該被覆結晶を含む組成物を、経口投与に適当な、例えば錠剤、散剤又は顆粒剤等として用いる場合には、特に限定されないが、例えば、乳糖、ブドウ糖、蔗糖、マンニトール、ソルビトール等の糖類;バレイショ、コムギ、トウモロコシ等の澱粉;炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム等の無機物;結晶セルロース、カンゾウ末、ゲンチアナ末等の植物末等の賦形剤;澱粉、寒天、ゼラチン末、結晶セルロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、アルギン酸ナトリウム等の崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム、タルク、水素添加植物油、マクロゴール、シリコーン油等の滑沢剤;ポリビニールアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルメロース、ゼラチン、澱粉のり液等の結合剤;脂肪酸エステル等の界面活性剤;グリセリン等の可塑剤等を添加して製剤化することができる。
【0058】
また、本実施形態で得られる被覆結晶及び該被覆結晶を含む組成物を、経口投与用の製剤として用いる場合には、一般に飲食品に用いられる添加剤、例えば食甘味料、着色料、保存料、増粘安定剤、酸化防止剤、発色剤、漂白剤、防かび剤、ガムベース、苦味料、酵素、光沢剤、酸味料、調味料、乳化剤、強化剤、製造用剤、香料、香辛料抽出物等が添加されてもよい。経口投与に適当な製剤は、そのまま、又は例えば粉末食品、シート状食品、瓶詰め食品、缶詰食品、レトルト食品、カプセル食品、タブレット状食品、流動食品、ドリンク剤等の形態のものであってもよいし、健康食品、機能性食品、栄養補助食品等の飲食品として用いてもよい。
【実施例0059】
以下、本発明を実施例及び比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0060】
以下の実施例においては、芯材としてはPQQジナトリウム粉末(三菱瓦斯化学(株)製、商品名:BioPQQ、以下同様)を使用した。また、コート材料となるシェラックは、ラックグレーズ20E(エタノール溶液)を使用した。その他の試薬は富士フィルム和光製を使用した。被覆工程にはパウレック製結晶コーティング装置を使用した。
【0061】
〔エタノール量の測定方法〕
実施例及び比較例で得られた各サンプル100mgに水900μL加え、超音波で30分以上処理した。これにより得られた溶液を遠心分離して、水層をガスクロマトグラフィー(島津製GC-2014)で分析することで、エタノール量を算出した。
【0062】
〔水分量の測定方法〕
実施例及び比較例で得られた各サンプル10mgを用いて、カールフィッシャー法により水分を測定した。測定装置としては、メトローム社製KIクーロメーター851を使用した。
【0063】
〔平均粒径の測定方法〕
実施例及び比較例で得られた各サンプルを顕微鏡観察して、平均粒径を測定した。顕微鏡には、デジタルマイクロスコープ:キーエンスVHX-6000を使用し、平均粒径の算出には、当該装置付属のソフトを用いた。
【0064】
〔実施例1〕
(被覆工程)
PQQジナトリウム粉末297gとアエロジル3gを混合した芯材粉末をコーティング装置SPC-01に入れ、湿度46%の空気を0.5m3/minを供給して、芯材粉末を流動させた状態で、装置内を50~55℃に維持た。そして、この状態で上記シェラックのエタノール溶液を装置内でスプレーし、芯材粉末に対して、シェラックを被覆した。なお、この時の排気温度は32~40℃とした。上記のようにして得られた乾燥前被覆粒子の残留エタノール量は4000ppmであった。
【0065】
(乾燥工程)
上記のようにして得られた乾燥前被覆粒子に対して、湿度46%の空気を0.5m3/min供給して、55℃で30分間、一次乾燥処理を行った。一次乾燥処理後の被覆粒子の残留エタノール量は、2000ppmであった。
【0066】
次いで、さらに50℃、75%湿度の環境下に、48時間、一次乾燥処理後の被覆粒子を静置して、二次乾燥処理を行った。二次乾燥処理後の被覆粒子の残留エタノール量は100ppm以下であり、水分量は6.6質量%であった。また、この被覆粒子に含まれるピロロキノリンキノンジナトリウム3水和物量は46%であり、被覆粒子は赤色であった。さらに、被覆粒子の平均粒径は21μmであった。
【0067】
〔実施例2~3〕
実施例1と同様に被覆工程を実施した。被覆工程の途中で、乾燥前被覆粒子を抜き出し、シェラックコート量が異なる乾燥前被覆粒子を得た。この乾燥前被覆粒子を30℃、75%相対湿度下に48時間静置し、実施例2~3の被覆粒子を得た。この2つのサンプルは共に赤色であった。この時の結果は以下の表1のとおりである。
【0068】
〔実施例4〕
装置内温度と排気温度を少し低下させたこと以外は実施例1と同様に被覆工程を実施し、残留エタノール量が6600ppmである乾燥前被覆粒子を得た。この乾燥前被覆粒子を70℃、75%相対湿度の条件下で3時間静置した。その結果、残留エタノール量が70ppmであり、水分量は6.0質量%である被覆粒子を得た。
【0069】
〔比較例1〕
実施例1と同様に被覆工程を実施し、残留エタノール量が4000ppmである乾燥前被覆粒子を得た。この乾燥前被覆粒子を30℃で48時間減圧乾燥した。48時間の減圧乾燥後、エタノール含量が1800ppmである被覆粒子を得た。以上のとおり、減圧乾燥によってエタノール含量は減少したもののその減少効果は低いことが分かる。また、被覆粒子の水分量は6.4%であった。
【0070】
〔比較例2〕
実施例1と同様に被覆工程を実施し、残留エタノール量が4000ppmである乾燥前被覆粒子を得た。この乾燥前被覆粒子を70℃で、48時間加熱乾燥した。48時間の加熱乾燥後、エタノール含量はほぼ無くなった(検出出来なかった)が、被覆粒子は黒く変色していた。また、水分量は1.1%であり、芯材の含水結晶から水分が除去された結果、変色していたものと推察される。
【0071】
〔比較例3〕
実施例4と同様に被覆工程を実施し、残留エタノール量が6600ppmである乾燥前被覆粒子を得て、そのまま被覆粒子として用いた。
【0072】
【表1】
【0073】
〔溶出試験1:日本薬局方に準拠し溶出試験を実施。〕
容器に900ml(±1%)の試験液をいれ、37℃(±0.5℃)に保った。さらに、被覆粒子又は原料(BioPQQ)約20mgを容器に投入し、直ちに50rpmでパドルを回転させた。開始後一定時間に溶出液を10ml採取し、0.45μmフィルターで濾過して、吸光度で溶解量を算出した。サンプルが粉体であるため、液面に浮遊した状態で実施した。溶出試験装置(パドル法)は日本薬局方に準拠したToyama産業製を用いた。溶出率は259nmの吸光度より算出した(UV259nm)。また、試験液は人工胃液と人工腸液を使用した。
【0074】
【表2】
【0075】
〔口腔内モデル試験1〕
4ウェルにそれぞれ2%アガー入りリン酸バッファー(GIBCO, PBSpH7.4)を加熱して溶かした液を0.5mL入れて固めたプレートを作成した。このウェルを37℃に入れ温めておき、ここに被覆粒子又は原料(BioPQQ)約10mgのせ、その上からPBS100μLを加えて、37℃で5分処理した。その後、ウェルを水道水で洗浄し、ウェルの着色の様子を表3に記録した。表3に示すように、被覆することでPQQによる着色は大きく減少することが分かった。
【0076】
【表3】
【0077】
〔口腔内モデル試験2〕
実施例1で調製した被覆粒子50mgに、下記表4の各添加剤50mgをそれぞれ混合し、70℃で30分加熱した。加熱後のサンプルを使用して口腔内モデル試験1と同様の評価を行った。その結果を下記表4に示す。
【0078】
【表4】
【0079】
表4に示すように、酸味料のクエン酸を加えることで、さらに着色が抑制された。また、食用油脂や乳化剤のモノオレインやレシチンを加えることによっても、さらに着色が抑制されることが分かった。
【0080】
〔溶出試験2:シェラック量の影響と食用油脂共存〕
ソフトカプセルでは食用油脂と混合して使用される。その影響を調べた。まず、サンプルビン110mLに実施例1で調製した被覆粒子又は原料(BioPQQ)20mgと中鎖脂肪酸オイル(日清オイリオODO)500μLを混合した。その後、37℃に温めた蒸留水を100ml添加し、蓋をして激しく混和した。そして、37℃に設定したインキュベーターで60分静置した。なお、静置の途中30分で一度混合した。静置後のサンプル中のPQQの溶解量をUVスペクトルメーターで測定した。
【0081】
【表5】
【0082】
表5に示すように本発明の被覆粒子は食用油脂と混合しても、芯材の溶出性が抑えられたものとなり、安定なコート品となることが分かった。これによって、被覆粒子は、食用油脂と混合した用途に適していることが分かる。
【0083】
〔溶出試験3:シェラック以外のコート材料被覆粒子と食用油脂共存試験〕
シェラックのエタノール溶液に代えて、コート材料として、でんぷん、極度硬化油(日油TP9)、又はミツロウを使用したこと以外は実施例1の被覆工程と同様にして、BioPQQを含む芯材粉末に対してコート量が100%になるようにコート材料を被覆し、比較例4~5の被覆粒子を作製した。
【0084】
得られた被覆粒子を用いて、溶出試験2と同様の操作により、溶出率を算出した。その結果を下記表6に示す。表6に示すように、シェラック以外のコート材料を用いた被覆粒子では、食用油脂と混合すると芯材の溶出は抑えられず、これにより、コート材料としてはシェラックが適していることが分かった。
【0085】
【表6】
【0086】
〔保存安定性1〕
実施例1で調製した被覆粒子60mgと以下の表7に示す添加剤を粉末同士で混合し、50℃18時間保存後の状態を記録した。また、粉末同士を混合したものに対して、さらに水1mL加え、分散性を調べた。
【0087】
【表7】
【0088】
表7に示されるように、添加剤を加えることにより、高温下における被覆粒子の保存安定性がより向上し、また、水への分散性を向上することができた。
【0089】
〔保存安定性2〕
実施例4と比較例3で調製した被覆粒子60mgをそれぞれテストチューブに入れて、50℃18時間保存後の状態を記録した。その結果、実施例4で調製した被覆粒子は固結が見られなかったが、比較例3で調製した被覆粒子は固着が見られた。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明に係る被覆粒子は、医薬品分野、食品分野、化粧品分野等において産業上の利用可能性を有する。