(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151618
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】潤滑油組成物
(51)【国際特許分類】
C10M 169/04 20060101AFI20220929BHJP
C10M 105/32 20060101ALI20220929BHJP
C10M 149/06 20060101ALI20220929BHJP
C10N 40/04 20060101ALN20220929BHJP
C10N 40/00 20060101ALN20220929BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20220929BHJP
C10N 30/06 20060101ALN20220929BHJP
【FI】
C10M169/04 ZHV
C10M105/32 ZAB
C10M149/06
C10N40:04
C10N40:00 D
C10N30:00 Z
C10N30:06
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022017420
(22)【出願日】2022-02-07
(31)【優先権主張番号】P 2021051126
(32)【優先日】2021-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山田 修己
(72)【発明者】
【氏名】杉山 義光
(72)【発明者】
【氏名】木口 真之介
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BA07A
4H104BB31A
4H104BB33A
4H104BB34A
4H104CE03C
4H104DA02A
4H104EA01C
4H104EA02A
4H104EA03C
4H104LA20
4H104PA03
4H104PA39
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、冷却性と潤滑性とを両立することができる潤滑油組成物を提供することである。
【解決手段】一般式(1)で表される単量体(a)並びに一般式(2)で表される単量体(b)及び/又は一般式(3)で表される単量体(c)を必須構成単量体とする共重合体(A)と、エステル油(B)とを含む潤滑油組成物。好ましくは前記共重合体(A)の重量平均分子量が5,000~2,000,000、前記共重合体(A)の溶解性パラメーターが8.5~11.5(cal/cm
3)
1/2であるものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される単量体(a)並びに下記一般式(2)で表される単量体(b)及び/又は下記一般式(3)で表される単量体(c)を必須構成単量体とする共重合体(A)と、エステル油(B)とを含む潤滑油組成物。
【化1】
[式(1)中、A
1は1価のラジカル重合性基であり、-X
1-、-X
2-及び-X
3-はそれぞれ独立に-O-又は-NH-で表される基であり、R
1は炭素数1~4のアルキレン基であり、R
2はそれぞれ独立に炭素数2~20のアルキレン基であり、複数個ある場合のR
2は同一でも異なっていてもよく、R
3は水素原子、炭素数1~44のアルキル基、炭素数2~45のアシル基、炭素数1~44のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基又はベンゾイル基であり、pは1~100の整数である。]
【化2】
[式(2)中、R
4は水素原子又はメチル基;-X
4-は-O-又は-NH-で表される基;R
5は炭素数5~44の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基である。]
【化3】
[式(3)中、R
6は水素原子又はメチル基;-X
5-は-O-、-O(AO)
m-又は-NH-で 表される基であって、Aは炭素数2~4のアルキレン基であり、mは1~10の整数であり、mが2以上の場合のAは同一でも異なっていてもよい;R
7はイソブチレン基及び/又は1,2-ブチレン基を必須構成単位とする炭素数43以上の炭化水素重合体から水素原子を1つ除いた残基;qは0又は1の数である。]
【請求項2】
前記共重合体(A)の重量平均分子量が5,000~2,000,000である請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項3】
前記共重合体(A)の溶解性パラメーターが8.5~11.5(cal/cm3)1/2である請求項1又は2に記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
前記エステル油(B)の40℃における動粘度が3~30mm2/sである請求項1~3のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
【請求項5】
前記エステル油(B)の溶解性パラメーターが8.1~10.1(cal/cm3)1/2である請求項1~4のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
【請求項6】
潤滑油組成物の重量を基準として、前記共重合体(A)の含有量が0.1~10重量%である請求項1~5のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
【請求項7】
前記共重合体(A)が、単量体(a)以外の水酸基含有単量体(e)を構成単量体として含む請求項1~6のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
【請求項8】
前記共重合体(A)の溶解性パラメーターとエステル油(B)の溶解性パラメーターとの差の絶対値が3.4(cal/cm3)1/2以下である請求項1~7のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
【請求項9】
前記エステル油(B)が二価カルボン酸(x1)と一価アルコール(y1)とのジエステル化物、一価カルボン酸(x2)と二価アルコール(y2)とのジエステル化物及び一価カルボン酸(x2)と一価アルコール(y1)とのエステル化物からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、前記一価アルコール(y1)がアルキル基の炭素数が1~24の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有する化合物であり、前記一価カルボン酸(x2)がアルキル基の炭素数が1~24の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有する化合物である請求項1~8のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
【請求項10】
前記エステル油(B)が前記二価カルボン酸(x1)と前記一価アルコール(y1)とのジエステル及び/又は前記一価カルボン酸(x2)と前記二価アルコール(y2)とのジエステルである請求項9に記載の潤滑油組成物
【請求項11】
前記単量体(a)由来の構成単位の溶解性パラメーターとエステル油(B)の溶解性パラメーターとの差の絶対値が0.9~4.4(cal/cm3)1/2である請求項1~10のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
【請求項12】
電気自動車用又はハイブリッド車用潤滑油組成物である請求項1~11のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
【請求項13】
電気自動車又はハイブリッド車における変速機と電動モーターとの兼用油である請求項1~12のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
【請求項14】
更に粘度指数向上剤、清浄剤、分散剤、酸化防止剤、油性向上剤、摩擦摩耗調整剤、極圧剤、消泡剤、抗乳化剤、腐食防止剤及び流動点降下剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の添加剤を含有してなる請求項1~13のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の省燃費性能向上のため、自動車用変速機には動力伝達効率の向上や小型軽量化が求められており、変速機構においても手動変速機から自動変速機、最近では無段変速機が一部の車両に搭載されるに至っている。一方、鉛畜電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池、燃料電池等を搭載し、電動モーターを装着した電気自動車、あるいはこれらの電池と内燃機関とを併用したハイブリッド自動車が開発されており、これらの自動車には、変速機油と電動モーター油とが別々に使用されている。
【0003】
最近、電気自動車またはハイブリッド自動車においては、これらの油の共通化や、変速機と電動モーターをパッケージ化することによる小型軽量化が要望されつつあり、手動変速機油、自動変速機油または無段変速機油としての潤滑性能に加え、電動モーター油としての絶縁性および冷却性を併せ持った新規な油が要望されてきた。
変速機油には、熱・酸化安定性、清浄分散性、摩耗防止性、焼付き防止性等が要求される。これらの要求を満たすため、変速機油としては一般に、鉱油系あるいは合成系基油に各種添加剤(酸化防止剤、清浄分散剤、摩耗防止剤、防錆剤、金属不活性化剤、摩擦調整剤、消抱剤、着色剤、シール膨張剤、粘度指数向上剤等)を添加したものが用いられている。このような変速機油は、体積抵抗率が低く、絶縁性が不十分なため、電動モーター油として使用した場合、電動モーターがショートする等の不具合や、動粘度が高いことに起因する冷却性不良や動力ロスが問題となる。
【0004】
一方、電動モーター油は、絶縁性、冷却性等が要求され、潤滑性は必要とされないため、添加剤はほとんど含有されていない。よって、電動モーター油を変速機に用いた場合、ベアリング、歯車等が著しく摩耗するという問題がある。また、電動モーターにおいては、小型化・高回転化の進展により、潤滑油の冷却性に期待する部分が強くなっている。すなわち、電気自動車またはハイブリッド自動車等の電動モーター装着車において、変速機油としての焼付き防止性能、摩耗防止性能、低温流動性能を有し、かつ従来以上の絶縁性、冷却性を兼ね備えた自動車用変速機油組成物が求められている。
冷却性を兼ね備えた自動車用変速機油組成物として、一価アルコールと一塩基酸とのエステル及び/又は一価アルコールと多塩基酸とのエステル等の熱伝導率の高いエステル系合成油を用いることが知られている(特許文献1及び2)。
しかしながら、上記組成物は、粘度が低く熱伝達率が良く、冷却性は高いものの、低粘度であるために油膜厚が薄くなって摩擦係数が大きくなり、潤滑性が悪化する問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-242547号公報
【特許文献2】特開2014-25081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、冷却性と潤滑性とを両立することができる潤滑油組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、鋭意検討した結果、本発明に至った。すなわち本発明は、下記一般式(1)で表される単量体(a)並びに下記一般式(2)で表される単量体(b)及び/又は下記一般式(3)で表される単量体(c)を必須構成単量体とする共重合体(A)と、エステル油(B)とを含む潤滑油組成物である。
【化1】
[式(1)中、A
1は1価のラジカル重合性基であり、-X
1-、-X
2-及び-X
3-はそれぞれ独立に-O-又は-NH-で表される基であり、R
1は炭素数1~4のアルキレン基であり、R
2はそれぞれ独立に炭素数2~20のアルキレン基であり、複数個ある場合のR
2は同一でも異なっていてもよく、R
3は水素原子、炭素数1~44のアルキル基、炭素数2~45のアシル基、炭素数1~44のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基又はベンゾイル基であり、pは1~100の整数である。]
【化2】
[式(2)中、R
4は水素原子又はメチル基;-X
4-は-O-又は-NH-で表される基;R
5は炭素数5~44の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基である。]
【化3】
[式(3)中、R
6は水素原子又はメチル基;-X
5-は-O-、-O(AO)
m-又は-NH-で 表される基であって、Aは炭素数2~4のアルキレン基であり、mは1~10の整数であり、mが2以上の場合のAは同一でも異なっていてもよい;R
7はイソブチレン基及び/又は1,2-ブチレン基を必須構成単位とする炭素数43以上の炭化水素重合体から水素原子を1つ除いた残基;qは0又は1の数である。]
【発明の効果】
【0008】
本発明の潤滑油組成物は、冷却性と潤滑性とを両立することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例1~4の潤滑油組成物(V-1)~(V-4)の100℃におけるMTM摩擦係数測定において、回転速度とMTM摩擦係数との関係を示すものである。
【
図2】比較例1、3、5~8の潤滑油組成物(V’-1)、(V’-3)、(V’-5)~(V’-8)の100℃におけるMTM摩擦係数測定において、回転速度とMTM摩擦係数との関係を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の潤滑油組成物は、下記一般式(1)で表される単量体(a)並びに下記一般式(2)で表される単量体(b)及び/又は下記一般式(3)で表される単量体(c)を必須構成単量体とする共重合体(A)と、エステル油(B)とを含む潤滑油組成物である。
【化4】
[式(1)中、A
1は1価のラジカル重合性基であり、-X
1-、-X
2-及び-X
3-はそれぞれ独立に-O-又は-NH-で表される基であり、R
1は炭素数1~4のアルキレン基であり、R
2はそれぞれ独立に炭素数2~20のアルキレン基であり、複数個ある場合のR
2は同一でも異なっていてもよく、R
3は水素原子、炭素数1~44のアルキル基、炭素数2~45のアシル基、炭素数1~44のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基又はベンゾイル基であり、pは1~100の整数である。]
【化5】
[式(2)中、R
4は水素原子又はメチル基;-X
4-は-O-又は-NH-で表される基;R
5は炭素数5~44の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基である。]
【化6】
[式(3)中、R
6は水素原子又はメチル基;-X
5-は-O-、-O(AO)
m-又は-NH-で 表される基であって、Aは炭素数2~4のアルキレン基であり、mは1~10の整数であり、mが2以上の場合のAは同一でも異なっていてもよい;R
7はイソブチレン基及び/又は1,2-ブチレン基を必須構成単位とする炭素数43以上の炭化水素重合体から水素原子を1つ除いた残基;qは0又は1の数である。]
【0011】
共重合体(A)及びエステル油(B)は、それぞれ1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明においては、共重合体(A)とエステル油(B)とを組み合わせることにより、エステル油(B)の冷却性を低下させることなく{40℃における熱伝達率が2.10W/(m2/K)以上}、低速度時のMTM(ミニトラクション)摩擦係数(後述の条件で測定、以下において同じ)(100℃、速度:10mm/s)は0.070以上と高く動力伝達特性に優れ、高速度時にはMTM摩擦係数(100℃、速度:100mm/s)を0.055以下と急激に低くすることができ、潤滑性が高いものとすることができることを見出したものである。
【0012】
<共重合体(A)>
本発明において、共重合体(A)は前記一般式(1)で表される単量体(a)を必須構成単量体とする。
一般式(1)におけるA1は1価のラジカル重合性基であり、具体的にはビニル基、(メタ)アクリロイル基などである。
A1は、潤滑性の観点から好ましくは、ビニル基又は(メタ)アクリロイル基であることが好ましく、更に好ましくは(メタ)アクリロイル基である。
【0013】
一般式(1)において-X1-、-X2-及び-X3-はそれぞれ独立に-O-又は-NH-で表される基である。
これらの-X1-、-X2-及び-X3-は、潤滑性の観点から、-O-であることが好ましい。
【0014】
一般式(1)におけるR1は炭素数1~4のアルキレン基である。
炭素数1~4のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、1,2-及び1,3-プロピレン基、並びに1,2-、1,3-及び1,4-ブチレン基等が挙げられる。これらのうち、潤滑性の観点から、エチレン基、1,2-プロピレン基、1,3-プロピレン基が好ましく、更に好ましくはエチレン基である。
【0015】
一般式(1)におけるpは1~100の整数であり、高速度時の摩擦低減及び基油(エステル油(B)等、以下においても同じ。)への溶解性の観点から好ましくは1~70の整数、更に好ましくは1~40の整数、特に好ましくは1~20の整数である。
pが2以上である場合、複数個ある(-C(=O)-R2-X3-)は同一でも異なっていても良い。
【0016】
一般式(1)におけるR2は、炭素数2~20のアルキレン基であり、複数個ある場合、R2は同一でも異なっていてもよい。
炭素数2~20のアルキレン基としては、例えば、エチレン基、1,2-又は1,3-プロピレン基、イソブチレン基、1,2-、1,3-又は1,4-ブチレン基、イソペンチレン基、1,2-、1,3-、1,4-又は1,5-ペンチレン基、イソヘキシレン基、1,2-、1,3-、1,4-、1,5-又は1,6-ヘキシレン基、イソヘプチレン基、1,2-、1,3-、1,4-、1,5-、1,6-又は1,7-ヘプチレン基、イソオクチレン、1,8-オクチレン基、イソノニレン基、1,9-ノニレン基、イソデシレン基、1,10-デシレン基、イソウンデシレン基、1,11-ウンデシレン基、イソドデシレン基、1,12-ドデシレン基、イソトリデシレン基、1,13-トリデシレン基、イソテトラデシレン基、1,14-テトラデシレン基、イソペンタデシレン基、1,15-ペンタデシレン基、イソヘキサデシレン基、1,16-ヘキサデシレン基、イソヘプタデシレン基、1,17-ヘプタデシレン基、イソオクタデシレン基、1,18-イソオクタデシレン基、イソノナデシレン基、1,19-イソノナデシレン基、イソエイコシレン基、1,20-エイコシレン基等が挙げられる。
R2としては、高速度時の摩擦低減の観点から、好ましくは炭素数2~17のアルキレン基、更に好ましくは炭素数2~15のアルキレン基、特に好ましくは炭素数2~13のアルキレン基、最も好ましくは炭素数2~10のアルキレン基である。
【0017】
一般式(1)におけるR3は、水素原子、炭素数1~44のアルキル基、炭素数2~45のアシル基、炭素数1~44のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基又はベンゾイル基である。
【0018】
炭素数1~44のアルキル基としては、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が含まれ、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、イソオクチル基、n-ノニル基、イソノニル基、n-デシル基、イソデシル基、n-ウンデシル基、イソウンデシル基、n-ドデシル基、イソドデシル基、n-トリデシル基、イソトリデシル基、n-テトラデシル基、2-エチルドデシル基、n-ペンタデシル基、2-メチルテトラデシル基、n-ヘキサデシル基、イソヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、イソヘプタデシル基、2-エチルペンタデシル基、2-オクチルノニル基、2-(3-メチルヘキシル)-7-メチル-ノニル基、n-オクタデシル基、イソオクタデシル基、2-ヘキシルウンデシル基、2-エチルヘプタデシル基、1-ヘキシルトリデシル基、n-イコシル基、2-オクチルウンデシル基、イソイコシル基、1-ウンデシルドデシル基、1-オクチルペンタデシル基、2-デシルトリデシル基、n-テトライコシル基、2-デシルテトラデシル基、2-ドデシルペンタデシル基、2-ヘプチルイコシル基、2-ドデシルヘキサデシル基、n-トリアコンチル基、2-テトラデシルオクタデシル基、n-ヘキサトリアコンチル基、n-テトラコンチル基、2-エチルテトラコンチル基及びオレフィン[例えばプロピレンオリゴマー(2~14量体)、エチレン/プロピレンオリゴマー(2~20量体)及びイソブテンオリゴマー(2~10量体)等]から得られるオキソアルコールから水酸基を除いた残基等が挙げられる。
【0019】
アシル基としては、前記炭素数1~44のアルキル基を有する炭素数2~45のカルボン酸から誘導されるアシル基が含まれ、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ラウリロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基等が挙げられる。
【0020】
炭素数1~44のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基又はベンゾイル基としては、例えば、フェニル基、ベンゾイル基、フェニル基の有する水素原子の一部または全部が炭素数1~44のアルキル基で置換された基(トリル基等)、ベンゾイル基の有する水素原子の一部または全部が炭素数1~44のアルキル基で置換された基等が挙げられる。
【0021】
これらのR3のうち、高速度時の摩擦低減の観点から、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数2~13のアシル基、炭素数1~12のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基又はベンゾイル基が好ましく、更に好ましくは水素原子及び炭素数4~12のアシル基である。
【0022】
単量体(a)由来の構成単位(単量体(a)が有するラジカル重合性の炭素-炭素二重結合が反応し、単結合になった構造)は、基油への溶解性の観点から、特定の溶解性パラメーター(以下SP値と略記することがある。)を有するものが好ましい。
SP値の範囲は、好ましくは9.0~12.5(cal/cm3)1/2であり、更に好ましくは9.3~12.3(cal/cm3)1/2であり、特に好ましくは9.5~12.0(cal/cm3)1/2である。
【0023】
また、共重合体(A)が2種以上の単量体(a)を併用している場合は、(a)を構成する複数の単量体それぞれのSP値を前記の方法で算出し、それぞれの単量体(a)のSP値を、構成単量体単位の重量分率に基づいて相加平均した値が前記単量体(a)のSP値の範囲を満たすことが好ましい。
単量体(a)由来の構成単位のSP値が上記範囲であると、高速度時の摩擦低減及び基油への溶解性が良好となる傾向がある。
なお、本発明におけるSP値は、Fedors法(Polymer Engineering and Science,February,1974,Vol.14、No.2、P147~154)の152頁(Table.5)に記載の数値(原子又は官能基の25℃における蒸発熱及びモル体積)を用いて、同153頁の数式(28)により算出される値を意味する。具体的には、Fedors法のパラメーターである下記表1に記載のΔe
i及びv
iの数値から、分子構造内の原子及び原子団の種類に対応した数値を用いて、下記数式に当てはめることで算出することができる。
SP値=(ΣΔe
i/Σv
i)
1/2
【表1】
【0024】
単量体(a)の分子式量又は数平均分子量(以下Mnと略記する)は、高速度時の摩擦低減の観点から、好ましくは150~20,000であり、更に好ましくは150~10,000、特に好ましくは150~7,000、最も好ましくは150~4,000である。
なお、(a)のMn、(c)の重量平均分子量(以下Mwと略記する)及びMn、並びに後述する共重合体(A)のMw及びMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下GPCと略記する)により以下の条件で測定することができる。
<(a)のMn、(c)のMw及びMn、(A)のMw及びMnの測定条件>
装置 :「HLC-802A」[東ソー(株)製]
カラム :「TSK gel GMH6」[東ソー(株)製]2本
測定温度 :40℃
試料溶液 :0.25重量%のテトラヒドロフラン溶液
溶液注入量:100μl
検出装置 :屈折率検出器
基準物質 :標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)
12点(分子量:500、1,050、2,800、5,970、9,100、18,100、37,900、96,400、190,000、355,000、1,090,000、2,890,000)[東ソー(株)製]
【0025】
単量体(a)としては、高速度時の摩擦低減の観点から、好ましくはヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのラクトン1~100モル付加物(a1)、(a1)と炭素数2~45のモノカルボン酸とのエステル化物(a2-1)、(a1)と安息香酸(安息香酸の芳香環に結合している水素原子の一部が炭素数1~44のアルキル基に置換されていてもいい)とのエステル化物(a2-2)、(a1)と炭素数1~44のアルキルアルコールとのエーテル化物(a2-3)、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのラクタム1~100モル付加物(a3)、(a3)と炭素数2~45のモノカルボン酸とのアミド化物(a4)等が挙げられる。
これらの単量体(a)は、公知の製造方法によって得ることができる。
【0026】
単量体(a)としては、以下のものが挙げられる。
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのラクトン1~100モル付加物(a1):
ヒドロキシアルキル(ヒドロキシアルキル基の炭素数1~4)(メタ)アクリレート{例えば、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)等}にラクトン(炭素数3~21、例えば、β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン等)を開環付加したもの等が挙げられる。
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートにラクトンを開環付加反応させる際の反応温度は、反応時間の観点から好ましくは80℃~150℃であり、更に好ましくは100℃~140℃である。反応時間は、好ましくは2~24時間であり、更に好ましくは3~10時間である。反応は主に触媒存在下で行われる。
上記反応の触媒としては、公知の触媒でよく、p-トルエンスルホン酸、テトラプロピルチタネート、オクタン酸第一スズ等が挙げられる。触媒の使用量は、反応生成物量に対して好ましくは0.01~5質量%であり、更に好ましくは0.03~0.5質量%である。開環付加反応終了後は、触媒は、吸着剤を用いて吸着・ろ過し、除去する方法、中和して触媒を不活性化する方法等によって処理することが望ましい。
【0027】
(a1)と炭素数2~45のモノカルボン酸とのエステル化物(a2-1)及び(a1)と安息香酸(安息香酸の芳香環に結合している水素原子の一部が炭素数1~44のアルキル基に置換されていてもいい)とのエステル化物(a2-2):
前記(a1)とカルボン酸(炭素数2~45のモノカルボン酸、安息香酸等)とをエステル化反応させる際の反応温度は、反応時間及び(メタ)アクリル酸の重合防止の観点から好ましくは80℃~150℃であり、更に好ましくは90℃~130℃である。またエステル化反応は、生成する水を除去する目的で反応圧力を減圧にしてもよい。好ましい反応圧力は、反応時間及び重合防止の観点から好ましくは0.007~0.095MPaであり、更に好ましくは0.01~0.092MPaである。反応時間は、好ましくは2~24時間であり、更に好ましくは3~10時間である。エステル化反応は、触媒存在下で行われるのが望ましい。
上記エステル化反応の触媒としては、公知の触媒でよく、硫酸、p-トルエンスルホン酸等が挙げられる。またエステル化反応には溶剤を使用してもよく、溶剤としては非水溶で沸点が150℃以下のもの、例えばシクロヘキサン及びトルエン等が挙げられる。
炭素数2~45のモノカルボン酸としては、例えば、飽和脂肪族モノカルボン酸(例えば、エタン酸、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸等)、不飽和脂肪族モノカルボン酸(例えば、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ドコサヘキサン酸等)等が挙げられる。これらのうち、飽和脂肪族モノカルボン酸が好ましく、さらに好ましくは炭素数2~13の飽和脂肪族モノカルボン酸である。
【0028】
(a1)と炭素数1~44のアルキルアルコールとのエーテル化物(a2-3):
前記(a1)と炭素数1~44のアルキル化剤(メチルクロライド、エチルクロライド、プロピルクロライド、ブチルクロライド、イソプロピルクロライド、アリルクロライドなどのアルキルクロライド;メチルブロマイド、エチルブロマイド、プロピルブロマイド、ブチルブロマイド、イソプロピルブロマイドなどのアルキルブロマイド等)とをアルカリ(例えば、アミン、第四級アンモニウム塩、水酸化ナトリウム等)の存在下で一般的な条件で反応させることにより得ることができる。
【0029】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのラクタム1~100モル付加物(a3):
ヒドロキシアルキル(ヒドロキシアルキル基の炭素数1~4)(メタ)アクリレート{例えば、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)等}にラクタム(炭素数3~21、例えば、β-ラクタム、γ-ラクタム、δ-ラクタム、ε-ラクタム等)を開環付加したもの等が挙げられる。
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートにラクタムを開環付加反応させる際の反応温度は、反応時間の観点から好ましくは80℃~150℃であり、更に好ましくは100℃~140℃である。反応時間は、好ましくは2~24時間であり、更に好ましくは3~10時間である。反応は主に触媒存在下で行われる。
上記反応の触媒としては、公知の触媒でよく、テトラプロピルチタネート、オクタン酸第一スズ等が挙げられる。触媒の使用量は、反応生成物量に対して好ましくは0.01~5質量%であり、更に好ましくは0.03~0.5質量%である。
開環付加反応終了後は、触媒は、吸着剤を用いて吸着・ろ過し、除去する方法、中和して触媒を不活性化する方法等によって処理することが望ましい。
【0030】
(a3)と炭素数2~45のモノカルボン酸とのアミド化物(a4):
前記(a3)と炭素数2~45のモノカルボン酸とをアミド化反応させる際の反応温度は、反応時間及び(メタ)アクリル酸の重合防止の観点から好ましくは80℃~150℃であり、更に好ましくは90℃~130℃である。またアミド化反応は、生成する水を除去する目的で反応圧力を減圧にしてもよい。好ましい反応圧力は、反応時間及び重合防止の観点から好ましくは0.007~0.095MPaであり、更に好ましくは0.01~0.092MPaである。反応時間は、好ましくは2~24時間であり、更に好ましくは3~10時間である。
炭素数2~45のモノカルボン酸としては、例えば、飽和脂肪族モノカルボン酸(例えば、エタン酸、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸等)、不飽和脂肪族モノカルボン酸(例えば、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ドコサヘキサン酸等)等が挙げられる。これらのうち、飽和脂肪族モノカルボン酸が好ましく、さらに好ましくは炭素数2~13の飽和脂肪族モノカルボン酸である。
【0031】
単量体(a)のうち、高速度時の摩擦低減の観点から、好ましくはヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのラクトン1~100モル付加物(a1)及び(a1)と炭素数2~45のモノカルボン酸とのエステル化物(a2-1)であり、更に好ましくは(a1)であり、特に好ましいのは(a1)のうちラクトンの付加モル数が1~20モルであるものである。
【0032】
単量体(a)は、核磁気共鳴分析(13C-NMR)により得られるスペクトルにおいて、全ピークの合計面積に対する化学シフト170-180ppmの間のピークの合計面積割合(M1)と全ピークの合計面積に対する化学シフト160-170ppmの間のピークの合計面積割合(M2)との比率(M1/M2)が0.01以上となるものであることが好ましく、更に好ましくは0.02以上、次にさらに好ましくは0.03以上、特に好ましくは0.04以上、最も好ましくは0.05以上である。また、比率(M1/M2)は好ましくは200以下であり、さらに好ましくは180以下、特に好ましくは150以下、最も好ましくは130以下である。比率(M1/M2)が0.01以上であると、潤滑性及び省燃費性が良好となる傾向があり、200以下であるとエステル油(B)との相溶性が良好であり、貯蔵安定性が良好となる傾向がある。
【0033】
なお、全ピークの合計面積に対する化学シフト170-180ppmの間のピークの合計面積(M1)は、13C-NMRにより測定される、全炭素の積分強度の合計に対する(メタ)アクリレートの特定のカルボニル構造に由来する積分強度の割合を意味する。全ピークの合計面積に対する化学シフト160-170ppmの間のピークの合計面積(M2)は、13C-NMRにより測定される、全炭素の積分強度の合計に対する(メタ)アクリレートの特定のカルボニル構造に由来する積分強度の割合を意味する。
【0034】
比率(M1/M2)は(メタ)アクリレートの特定のカルボニル構造の割合を意味するが、同等の結果が得られるのであればその他の方法を用いてもよい。なお、13C-NMR測定にあたっては、サンプルとして試料0.1gに2mlの重クロロホルムを加えて希釈したものを使用し、測定温度は室温、共鳴周波数は100MHzとし、測定法は逆ゲート付デカップリング法を使用して測定される。
【0035】
上記分析により、
(a)化学シフト160-180ppmの積分強度の合計(炭化水素の全炭素に起因する積分強度の合計)、及び
(b)化学シフト170-180ppmの積分強度の合計(特定のカルボニル構造に起因する積分強度の合計)
(c)化学シフト160-170ppmの積分強度の合計(特定のカルボニル構造に起因する積分強度の合計)
をそれぞれ測定し、(a)100%とした時の(b)の割合(%)を算出しM1とする。同様にして、(a)100%とした時の(c)の割合(%)を算出し、M2とする。
【0036】
本発明における共重合体(A)は、前記一般式(2)で表される単量体(b)及び/又は前記一般式(3)で表される単量体(c)を構成単量体として含む。
【0037】
単量体(b)において、一般式(2)における-X4-は、-O-又はNH-で表される基であり、高速度時の摩擦低減の観点から好ましくは-O-である。
【0038】
単量体(b)において、一般式(2)におけるR4は、水素原子又はメチル基であり、高速度時の摩擦低減の観点から好ましいのは、メチル基である。
【0039】
単量体(b)において、一般式(2)におけるR5は直鎖状又は分岐鎖状の炭素数5~44のアルキル基である。具体的には、n-ペンチル基、イソペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、イソオクチル基、n-ノニル基、イソノニル基、n-デシル基、イソデシル基、n-ウンデシル基、イソウンデシル基、n-ドデシル基、イソドデシル基、n-トリデシル基、イソトリデシル基、n-テトラデシル基、2-エチルドデシル基、n-ペンタデシル基、2-メチルテトラデシル基、n-ヘキサデシル基、イソヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、イソヘプタデシル基、2-エチルペンタデシル基、2-オクチルノニル基、2-(3-メチルヘキシル)-7-メチル-ノニル基、n-オクタデシル基、イソオクタデシル基、2-ヘキシルウンデシル基、2-エチルヘプタデシル基、1-ヘキシルトリデシル基、n-イコシル基、2-オクチルウンデシル基、イソイコシル基、1-ウンデシルドデシル基、1-オクチルペンタデシル基、2-デシルトリデシル基、n-テトライコシル基、2-デシルテトラデシル基、2-ドデシルペンタデシル基、2-ヘプチルイコシル基、2-ドデシルヘキサデシル基、n-トリアコンチル基、2-テトラデシルオクタデシル基、n-ヘキサトリアコンチル基、n-テトラコンチル基、2-エチルテトラコンチル基及びオレフィン[例えばプロピレンオリゴマー(2~14量体)、エチレン/プロピレンオリゴマー(2~20量体)及びイソブテンオリゴマー(2~10量体)等]から得られるオキソアルコールから水酸基を除いた残基等が挙げられる。
【0040】
R5のうち、基油への溶解性の観点から、好ましいのは直鎖状又は分岐鎖状の炭素数10~34のアルキル基であり、更に好ましいのは直鎖状又は分岐鎖状の炭素数12~32のアルキル基であり、特に好ましいのは直鎖状又は分岐鎖状の炭素数16~32のアルキル基であり、最も好ましいのは炭素数16~22の直鎖状のアルキル基、及び炭素数18~32の分岐鎖状のアルキル基である。
【0041】
単量体(b)に由来する構成単位(単量体(b)の炭素-炭素二重結合が反応して単結合になった構造)のSP値は、基油への溶解性の観点から、好ましくは7.0~9.5(cal/cm3)1/2であり、更に好ましくは7.3~9.2(cal/cm3)1/2である。
【0042】
単量体(c)において、一般式(3)におけるR6は水素原子又はメチル基であり、高速度時の摩擦低減の観点から好ましいのは、メチル基である。
【0043】
単量体(c)において、一般式(3)における-X5-は-O-、-O(AO)m-又は-NH-で 表される基である。
Aは炭素数2~4のアルキレン基である。
炭素数2~4のアルキレン基としては、エチレン基、1,2-又は1,3-プロピレン基、及び1,2-、1,3-又は1,4-ブチレン基等が挙げられる。
mは1~10の整数であり、基油への溶解性の観点から好ましくは1~4の整数、更に好ましくは1~2の整数である。
mが2以上の場合のAは同一でも異なっていてもよく、(AO)m部分はランダム結合でもブロック結合でもよい。
-X5-としては、潤滑性の観点から、-O-及び-O(AO)m-で表される基が好ましく、更に好ましくは-O-及び-O(CH2CH2O)m-で表される基である。
【0044】
単量体(c)において、一般式(3)におけるqは0又は1の数であり、基油への溶解性の観点から、0が好ましい。
【0045】
単量体(c)において、一般式(3)におけるR7はイソブチレン基及び/又は1,2-ブチレン基を構成単位として含む炭素数43以上の炭化水素重合体から水素原子を1つ除いた残基である。
イソブチレン基は、-CH2C(CH3)2-又は-C(CH3)2CH2-で表される基であり、1,2-ブチレン基は、-CH2CH(CH2CH3)-又は-CH(CH2CH3)CH2-で表される基である。
イソブチレン基及び/又は1,2-ブチレン基を構成単位とする炭化水素重合体としては、構成単量体(不飽和炭化水素(x))としてイソブテン及び1-ブテンを用いた重合体、並びに1,3-ブタジエンを重合した1,2-付加物の二重結合を水素化した重合体等が挙げられる。
また、炭化水素重合体は、イソブテン、1-ブテン及び1,3-ブタジエンに加え、不飽和炭化水素(x)として以下の(1)~(3)の1種以上を構成単量体としてもよい。
(1)脂肪族不飽和炭化水素[炭素数2~36のオレフィン(例えばエチレン、プロピレン、2-ブテン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン、オクタデセン、トリアコセン及びヘキサトリアコセン等)及び炭素数4~36のジエン(例えば、イソプレン、1,4-ペンタジエン、1,5-ヘキサジエン及び1,7-オクタジエン等)等]
(2)脂環式不飽和炭化水素[例えばシクロヘキセン、(ジ)シクロペンタジエン、ピネン、リモネン、インデン、ビニルシクロヘキセン及びエチリデンビシクロヘプテン等]
(3)芳香族基含有不飽和炭化水素(例えばスチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4-ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、シクロヘキシルスチレン、ベンジルスチレン、クロチルベンゼン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン及びトリビニルベンゼン等)
これらによって構成される炭化水素重合体は、ブロック重合体でもランダム重合体であってもよい。また炭化水素重合体が、二重結合を有する場合には、水素添加により、二重結合の一部又は全部を水素化したものであってもよい。一態様において、R7における炭化水素重合体は、構成単量体として炭素数4の単量体のみを用いた炭化水素重合体であってよく、炭素数4の単量体は、イソブテン、1-ブテン及び1,3-ブタジエンからなる群より選択される少なくとも1種であってよい。
【0046】
単量体(c)のMnは好ましくは800~10,000であり、より好ましくは1,000~9,000であり、さらに好ましくは1,200~8,500である。単量体(c)のMnが800以上であると潤滑性が良好となる傾向があり、10,000以下であると他の単量体との共重合性が良好となる傾向がある。
【0047】
単量体(c)は、炭化水素重合体の片末端に水酸基を導入して得られた片末端に水酸基を含有する重合体(Y)と、(メタ)アクリル酸とのエステル化反応、または(メタ)アクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸アルキル(好ましくは炭素数1~4)エステルとのエステル交換反応により得ることができる。なお、「(メタ)アクリル」は、「アクリル及び/又はメタクリル」を意味する。
【0048】
片末端に水酸基を含有する重合体(Y)の具体例としては、以下の(Y1)~(Y4)が挙げられる。
アルキレンオキサイド付加物(Y1);不飽和炭化水素(x)をイオン重合触媒(ナトリウム触媒等)存在下に重合して得られた炭化水素重合体に、アルキレンオキサイド(エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等)を付加して得られたもの等(この場合、単量体(c)は、一般式(3)において、-X5-が-(AO)m-であり、q=0である化合物)。
ヒドロホウ素化物(Y2);片末端に二重結合を有する不飽和炭化水素(x)の炭化水素重合体のヒドロホウ素化反応物(例えば米国特許第4,316,973号明細書に記載のもの)等(この場合、単量体(c)は、一般式(3)において、-X5-が-O-であり、q=0である化合物)。
無水マレイン酸-エン-アミノアルコール付加物(Y3);片末端に二重結合を有する不飽和炭化水素(x)の炭化水素重合体と無水マレイン酸とのエン反応で得られた反応物を、アミノアルコールでイミド化して得られたもの等(この場合、単量体(c)は、一般式(3)において、-X5-が-O-であり、q=1である化合物)。
ヒドロホルミル-水素化物(Y4);片末端に二重結合を有する不飽和炭化水素(x)の炭化水素重合体をヒドロホルミル化し、次いで水素化反応して得られたもの(例えば特開昭63-175096号公報に記載のもの)等(この場合、単量体(c)は、一般式(3)において、-X5-が-O-であり、q=0である化合物)。
これらの片末端に水酸基を含有する重合体(Y)のうち、潤滑性の観点から、好ましいのはアルキレンオキサイド付加物(Y1)、ヒドロホウ素化物(Y2)及び無水マレイン酸-エン-アミノアルコール付加物(Y3)であり、より好ましいのはアルキレンオキサイド付加物(Y1)である。
【0049】
一般式(3)中のR7を構成する全単量体のうちブタジエンの比率(イソブチレン基及び/又は1,2-ブチレン基を構成単位として含む炭化水素重合体において、全構成単量体中の1,3-ブタジエンの重量割合)は、潤滑性の観点から、50重量%以上が好ましく、より好ましくは75重量%以上、さらに好ましくは85重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。
【0050】
一般式(3)における、イソブチレン基及び/又は1,2-ブチレン基を必須構成単位として含む炭化水素重合体において、イソブチレン基と1,2-ブチレン基との合計量は、潤滑性の観点から、炭化水素重合体の構成単位の合計モル数に基づいて、30モル%以上であることが好ましく、40モル%以上であることがより好ましく、さらに好ましくは50モル%以上である。
炭化水素重合体におけるイソブチレン基と1,2-ブチレン基との合計量の比率を上げる方法として、例えば、下記の方法などを採用することができる。上記のアルキレンオキサイド付加物(Y1)の場合は、例えば1,3-ブタジエンを用いたアニオン重合において、反応温度を1,3-ブタジエンの沸点(-4.4℃)以下とし、且つ、重合開始剤の投入量を1,3-ブタジエンに対して少なくすることにより、炭化水素重合体中のイソブチレン基と1,2-ブチレン基との合計量の比率を上げることができる。上記のヒドロホウ素化物(Y2)、無水マレイン酸-エン-アミノアルコール付加物(Y3)及びヒドロホルミル-水素化物(Y4)の場合は片末端に二重結合を有する炭化水素重合体の重合度を大きくすることで、上記比率を上げることができる。
【0051】
一般式(3)におけるイソブチレン基及び/又は1,2-ブチレン基を必須構成単位として含む炭化水素重合体におけるイソブチレン基と1,2-ブチレン基との合計量は、13C-NMRによって測定することができる。具体的には、例えば、単量体として炭素数4のもののみを用いた場合、炭化水素重合体を13C-NMRにより分析し、下記数式(1)を用いて計算し、炭化水素重合体の構成単位の合計モル数に基づくイソブチレン基と1,2-ブチレン基との合計のモル%を決定することができる。13C-NMRにおいて、イソブチレン基のメチル基に由来するピークが30~32ppmの積分値(積分値A)、1,2-ブチレン基の分岐メチレン基(-CH2CH(CH2CH3)-又は-CH(CH2CH3)CH2-)に由来するピークが26~27ppmの積分値(積分値B)に現れる。炭化水素重合体の構成単位の合計モル数に基づくイソブチレン基と1,2-ブチレン基との合計のモル%は、上記ピークの積分値と、炭化水素重合体の全炭素のピークに関する積分値(積分値C)から求めることができる。
イソブチレン基と1,2-ブチレン基との合計量(モル%)=100×{(積分値A)×2+(積分値B)×4}/(積分値C) (1)
【0052】
R7における炭化水素重合体が構成単量体にブタジエン、又は、ブタジエン及び1-ブテンを含む場合、一般式(3)中のR7の一部または全部を構成するブタジエン、又は、ブタジエン及び1-ブテン由来の構造において、1,2-付加体と1,4-付加体のモル比(1,2-付加体/1,4-付加体)は潤滑性及び他の単量体との共重合性の観点から、好ましくは5/95~95/5、より好ましくは20/80~80/20、さらに好ましくは30/70~70/30である。
【0053】
R7における炭化水素重合体が構成単量体にブタジエン、又は、ブタジエン及び1-ブテンを含む場合、一般式(3)中のR7の一部または全部を構成するブタジエン、又は、ブタジエン及び1-ブテン由来の構造における1,2-付加体/1,4-付加体のモル比は1H-NMRや13C-NMR、ラマン分光法などで測定することができる。
【0054】
単量体(c)に由来する構成単位(単量体(c)中の(メタ)アクリロイル基の炭素-炭素二重結合が反応して単結合になった構造)のSP値は、基油への溶解性の観点から、好ましくは7.0~9.0(cal/cm3)1/2であり、より好ましくは7.3~8.5(cal/cm3)1/2である。
【0055】
本発明における共重合体(A)は、さらに、アルキル基が炭素数1~4の直鎖アルキル基である(メタ)アクリル酸アルキルエステル(d)を構成単量体として含む共重合体であってもよい。
【0056】
アルキル基が炭素数1~4の直鎖アルキル基である(メタ)アクリル酸アルキルエステル(d)としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル及び(メタ)アクリル酸n-ブチルが挙げられる。
(d)のうち、潤滑性の観点から、好ましいのは炭素数1~3の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルであり、更に好ましいのは(メタ)アクリル酸メチル及び(メタ)アクリル酸エチルであり、特に好ましいのは(メタ)アクリル酸メチルである。
【0057】
本発明において、共重合体(A)は、高速度時(特に100℃、速度:100mm/s及び1000mm/sのとき)の摩擦低減の観点から、単量体(a)以外の水酸基含有単量体(e)を構成単量体として含むことが好ましい。
水酸基含有単量体(e)としては、具体的には以下のものが挙げられる。
水酸基含有芳香族単量体(p-ヒドロキシスチレン等)、ヒドロキシアルキル(炭素数2~6)(メタ)アクリレート[2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-又は3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-、3-又は4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシイソブチル(メタ)アクリレート等]、モノ-又はジ-ヒドロキシアルキル(炭素数1~4)置換(メタ)アクリルアミド[N,N-ジヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ-2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド等]、ビニルアルコール、炭素数3~12のアルケノール[(メタ)アリルアルコール、クロチルアルコール、イソクロチルアルコール、1-オクテノール及び1-ウンデセノール等]、炭素数4~12のアルケンモノオール又はアルケンジオール[1-ブテン-3-オール、2-ブテン-1-オール及び2-ブテン-1,4-ジオール等]、ヒドロキシアルキル(炭素数1~6)アルケニル(炭素数3~10)エーテル(2-ヒドロキシエチルプロペニルエーテル等)、多価(3~8価)アルコール(グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ジグリセリン、糖類及び蔗糖等)のアルケニル(炭素数3~10)エーテル又は(メタ)アクリレート[蔗糖(メタ)アリルエーテル等]等;が挙げられる。
これらのうち、高速度時の摩擦低減の観点から、ヒドロキシアルキル(炭素数2~6)(メタ)アクリレートが好ましく、更に好ましくは2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートである。
【0058】
共重合体(A)は、リン原子含有単量体(f)及び窒素原子含有単量体(g)(単量体(a)、単量体(b)及び単量体(c)を除く)、からなる群から選ばれる少なくとも1種を構成単量体とする共重合体であってもよい。
【0059】
単量体(a)と併用されるリン原子含有単量体(f)としては、以下の単量体(f1)~(f2)が挙げられる。
【0060】
リン酸エステル基含有単量体(f1):
(メタ)アクリロイロキシアルキル(炭素数2~4)リン酸エステル[(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート及び(メタ)アクリロイロキシイソプロピルホスフェート]及びリン酸アルケニルエステル[リン酸ビニル、リン酸アリル、リン酸プロペニル、リン酸イソプロペニル、リン酸ブテニル、リン酸ペンテニル、リン酸オクテニル、リン酸デセニル及びリン酸ドデセニル等]等が挙げられる。
【0061】
ホスホノ基含有単量体(f2):
(メタ)アクリロイルオキシアルキル(炭素数2~4)ホスホン酸[(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホン酸等]及びアルケニル(炭素数2~12)ホスホン酸[ビニル
ホスホン酸、アリルホスホン酸及びオクテニルホスホン酸等]等が挙げられる。
【0062】
リン原子含有単量体(f)のうち好ましいのは(f1)であり、更に好ましいのは(メタ)アクリロイロキシアルキル(炭素数2~4)リン酸エステルであり、特に好ましいのは(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェートである。
【0063】
窒素原子含有単量体(g)[単量体(a)、単量体(b)及び単量体(c)を除く]としては、以下の単量体(g1)~(g4)が挙げられる。
アミド基含有単量体(g1):
(メタ)アクリルアミド、モノアルキルアミノ(メタ)アクリルアミド[窒素原子に炭素数1~4のアルキル基が1つ結合したもの;例えばN-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド及びN-n-又はイソブチル(メタ)アクリルアミド等]、モノアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド[窒素原子に炭素数1~4のアルキル基が1つ結合したアミノアルキル基(炭素数2~6)を有するもの;例えばN-メチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N-エチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピルアミノ-n-ブチル(メタ)アクリルアミド及びN-n-又はイソブチルアミノ-n-ブチル(メタ)アクリルアミド等]、ジアルキルアミノ(メタ)アクリルアミド[窒素原子に炭素数1~4のアルキル基が2つ結合したもの;例えばN,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド及びN,N-ジ-n-ブチル(メタ)アクリルアミド等]、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド[窒素原子に炭素数1~4のアルキル基が2つ結合したアミノアルキル基(炭素数2~6)を有するもの;例えばN,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド及びN,N-ジ-n-ブチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド等]、N-ビニルカルボン酸アミド[N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニル-n-又はイソプロピオニルアミド及びN-ビニルヒドロキシアセトアミド等]等のアミド基のみに窒素原子を有するものが挙げられる。
【0064】
ニトロ基含有単量体(g2):
4-ニトロスチレン等が挙げられる。
【0065】
1~3級アミノ基含有単量体(g3):
1級アミノ基含有ビニル単量体{炭素数3~6のアルケニルアミン[(メタ)アリルアミン及びクロチルアミン等]、アミノアルキル(炭素数2~6)(メタ)アクリレート[アミノエチル(メタ)アクリレート等]};2級アミノ基含有ビニル単量体{モノアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート[窒素原子に炭素数1~6のアルキル基が1つ結合したアミノアルキル基(炭素数2~6)を有するもの;例えばt-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等]、炭素数6~12のジアルケニルアミン[ジ(メタ)アリルアミン等]};3級アミノ基含有ビニル単量体{ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート[窒素原子に炭素数1~6のアルキル基が2つ結合したアミノアルキル基(炭素数2~6)を有するもの;例えばジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等]、窒素原子を有する脂環式(メタ)アクリレート[モルホリノエチル(メタ)アクリレート等]、芳香族ビニル系単量体[N,N-ジフェニルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノスチレン、4-ビニルピリジン、2-ビニルピリジン、N-ビニルピロール、N-ビニルピロリドン及びN-ビニルチオピロリドン等]}、及びこれらの塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩又は低級アルキル(炭素数1~8)モノカルボン酸(酢酸及びプロピオン酸等)塩等が挙げられる。
【0066】
ニトリル基含有単量体(g4):
(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
【0067】
窒素原子含有ビニル単量体(g)のうち好ましいのは、(g1)及び(g3)であり、更に好ましいのは、N,N-ジフェニルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートである。
【0068】
共重合体(A)は、以下の単量体(h)~(o)を構成単量体としてもよい。
【0069】
脂肪族炭化水素単量体(h):
炭素数2~20のアルケン(エチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン及びオクタデセン等)及び炭素数4~12のアルカジエン(ブタジエン、イソプレン、1,4-ペンタジエン、1,6-ヘプタジエン及び1,7-オクタジエン等)等が挙げられる。
【0070】
脂環式炭化水素単量体(i):
シクロヘキセン、(ジ)シクロペンタジエン、ピネン、リモネン、ビニルシクロヘキセン及びエチリデンビシクロヘプテン等が挙げられる。
【0071】
芳香族炭化水素系単量体(j):
スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4-ジメチルスチレン、4-エチルスチレン、4-イソプロピルスチレン、4-ブチルスチレン、4-フェニルスチレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-ベンジルスチレン、インデン、4-クロチルベンゼン及び2-ビニルナフタレン等が挙げられる。
【0072】
ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルケトン類(k):
炭素数2~12の飽和脂肪酸のビニルエステル(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル及びオクタン酸ビニル等)、炭素数1~12のアルキル、アリール又はアルコキシアルキルビニルエーテル(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、ビニル-2-メトキシエチルエーテル及びビニル-2-ブトキシエチルエーテル等)及び炭素数1~8のアルキル又はアリールビニルケトン(メチルビニルケトン、エチルビニルケトン及びフェニルビニルケトン等)等が挙げられる。
【0073】
エポキシ基含有単量体(l):
グリシジル(メタ)アクリレート及びグリシジル(メタ)アリルエーテル等が挙げられる。
【0074】
ハロゲン元素含有単量体(m):
塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、塩化(メタ)アリル及びハロゲン化スチレン(ジクロロスチレン等)等が挙げられる。
【0075】
不飽和ポリカルボン酸のエステル(n):
不飽和ポリカルボン酸のアルキル、シクロアルキル又はアラルキルエステル[不飽和ジカルボン酸(マレイン酸、フマール酸及びイタコン酸等)の炭素数1~8のアルキルジエステル(ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルマレエート及びジオクチルマレエート)]等が挙げられる。
【0076】
アルコキシアルキルエーテル単量体(o);
メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシヘプチル(メタ)アクリレート、メトキシヘキシル(メタ)アクリレート、メトキシペンチル(メタ)アクリレート、メトキシオクチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシブチル(メタ)アクリレート、エチキシヘプチル(メタ)アクリレート、エトキシヘキシル(メタ)アクリレート、エトキシペンチル(メタ)アクリレート、エトキシオクチル(メタ)アクリレート、プロポキシメチル(メタ)アクリレート、プロポキシエチル(メタ)アクリレート、プロポキシプロピル(メタ)アクリレート、プロポキシブチル(メタ)アクリレート、プロポキシヘプチル(メタ)アクリレート、プロポキシヘキシル(メタ)アクリレート、プロポキシペンチル(メタ)アクリレート、プロポキシオクチル(メタ)アクリレート、ブトキシメチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシプロピル(メタ)アクリレート、ブトキシブチル(メタ)アクリレート、ブトキシヘプチル(メタ)アクリレート、ブトキシヘキシル(メタ)アクリレート、ブトキシペンチル(メタ)アクリレート、ブトキシオクチル(メタ)アクリレート、等が挙げられる。
単量体(o)のうち、好ましいのは、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレートである。
【0077】
共重合体(A)を構成する単量体(a)の割合は、潤滑性及び粘度指数の観点から、(A)の構成単量体の合計重量に基づいて、好ましくは2~50重量%であり、更に好ましくは5~45重量%であり、特に好ましくは5~40重量%である。
(A)を構成する単量体(b)及び(c)の合計割合は、潤滑性及び粘度指数の観点から、(A)の構成単量体の合計重量に基づいて、好ましくは20~97重量%であり、更に好ましくは40~94重量%であり、特に好ましくは50~90重量%である。
共重合体(A)を構成する単量体(a)の割合は、高速度時の摩擦低減の観点から、(A)の構成単量体の合計重量に基づいて、好ましくは2~90重量%であり、より好ましくは5~80重量%であり、更に好ましくは10~70重量%、特に好ましくは15~60重量%、最も好ましくは15~55重量%である。
(A)を構成する単量体(b)及び(c)の合計割合は、高速度時の摩擦低減及び基油への溶解性の観点から、(A)の構成単量体の合計重量に基づいて、好ましくは10~98重量%であり、より好ましくは20~95重量%であり、更に好ましくは30~90重量%、特に好ましくは40~85重量%である。
(A)を構成する単量体(d)の割合は、高速度時の摩擦低減の観点から、(A)の構成単量体の合計重量に基づいて、好ましくは50重量%以下であり、より好ましくは45重量%以下、更に好ましくは40重量%以下、特に好ましくは10重量%以下である。
(A)を構成する単量体(e)の割合は、高速度時の摩擦低減の観点から、(A)の構成単量体の合計重量に基づいて、好ましくは1.0~20.0重量%であり、更に好ましくは1.0~15.0重量%、特に好ましくは5.0~10.0重量%である。
(A)を構成する(f)~(g)の合計の含有量は、高速度時の摩擦低減の観点から、(A)の構成単量体の合計重量に基づいて、好ましくは20重量%以下であり、更に好ましくは1~15重量%、特に好ましくは2~10重量%である。
(A)を構成する(h)~(o)の合計の含有量は、高速度時の摩擦低減の観点から、(A)の構成単量体の合計重量に基づいて、好ましくは10重量%以下であり、更に好ましくは1~7重量%、特に好ましくは2~5重量%である。
【0078】
(A)のSP値は、高速度時の摩擦低減及び潤滑性の観点から、8.5~11.5(cal/cm3)1/2が好ましく、より好ましくは8.7~11.0(cal/cm3)1/2、更に好ましくは8.9~10.5(cal/cm3)1/2であり、特に好ましくは9.2~10.2(cal/cm3)1/2である。
(A)のSP値は、前記SP値の算出方法を用いて(A)を構成する各単量体に由来する構成単位((A)を構成する各単量体に含まれるビニル基が重合反応により単結合となった構造)のSP値を算出し、仕込み時の各構成単量体の重量分率に基づいて相加平均した値を意味する。例えば、単量体がメタクリル酸メチルの場合、メタクリル酸メチルに由来する構成単位は、原子団として、CH3が2個、CH2が1個、Cが1個、CO2が1個なので、下記数式により、メタクリル酸メチルに由来する構成単位のSP値は9.933(cal/cm3)1/2であることが分かる。同様に計算して、メタクリル酸エチルに由来する構成単位のSP値は9.721(cal/cm3)1/2であることがわかる。
ΣΔei=1125×2+1180+350+4300=8080
Σvi=33.5×2+16.1-19.2+18.0=81.9
δ=(8080/81.9)1/2=9.933(cal/cm3)1/2
重合体がメタクリル酸メチル50重量%とメタクリル酸エチル50重量%との重合物である場合、重合体のSP値は、下記の通り各単量体に由来する構成単位のSP値の重量分率に基づいて相加平均することにより算出される。
重合体のSP値=(9.933×50+9.721×50)/100=9.827
重合体(A)のSP値は、使用する単量体、重量分率を適宜調整することにより所望の範囲にすることができる。具体的には、アルキル基の炭素数の長い単量体を多く使用することでSP値を小さくすることができ、アルキル基の炭素数の短い単量体を多く使用することでSP値を大きくすることができる。
【0079】
また、共重合体(A)を2種以上用いる場合は、それぞれの重合体(A)のSP値を基に重量分率を計算し、相加平均した値が上記SP値を満たすことが好ましい。
【0080】
(A)のMwは、高速度時の摩擦低減、粘度指数向上効果及び潤滑油組成物の低温粘度の観点から、好ましくは5,000~2,000,000であり、更に好ましくは7,000~1,000,000であり、より好ましくは10,000~600,000であり、特に好ましくは15,000~500,000であり、最も好ましくは20,000~250,000である。
【0081】
(A)は、公知の製造方法によって得ることができ、具体的には前記の単量体を溶剤中で重合触媒存在下に溶液重合することにより得る方法が挙げられる。
溶剤としては、トルエン、キシレン、炭素数9~10のアルキルベンゼン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、2-プロパノール及びエステル油等が挙げられる。
重合触媒としては、アゾ系触媒(アゾビスイソブチロニトリル及びアゾビスバレロニトリル等)、過酸化物系触媒(ベンゾイルパーオキサイド、クミルパーオキサイド及びラウリルパーオキサイド等)及びレドックス系触媒(ベンゾイルパーオキサイドと3級アミンの混合物等)が挙げられる。更に必要により、公知の連鎖移動剤(炭素数2~20のアルキルメルカプタン等)を使用することもできる。
重合温度は、好ましくは25~140℃であり、更に好ましくは50~120℃である。また、上記の溶液重合の他に、塊状重合、乳化重合又は懸濁重合により(A)を得ることができる。
(A)が共重合体である場合の重合形態としては、ランダム付加重合体又は交互共重合体のいずれでもよく、また、グラフト共重合体又はブロック共重合体のいずれでもよい。
【0082】
<エステル油(B)>
エステル油(B)としては、従来から潤滑油として使用されている潤滑機能のあるエステル化合物であれば特に限定されない。例えば、二価カルボン酸(x1)と一価アルコール(y1)とのジエステル化物、一価カルボン酸(x2)と二価アルコール(y2)とのジエステル化物、一価カルボン酸(x2)と一価アルコール(y1)とのエステル化物、一価カルボン酸(x1)と三価以上の多価アルコール(y3)とのエステル化物、三価以上の多価カルボン酸(x3)と一価アルコール(y1)とのエステル化物等が挙げられる。
エステル油(B)としては、冷却性の観点から、好ましいのは、二価カルボン酸(x1)と一価アルコール(y1)とのジエステル化物、一価カルボン酸(x2)と二価アルコール(y2)とのジエステル化物及び一価カルボン酸(x2)と一価アルコール(y1)とのエステル化物からなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0083】
二価カルボン酸(x1)としては、炭素数2~24の脂肪族二価カルボン酸[直鎖状飽和脂肪族二価カルボン酸{例えば、エタン二酸(シュウ酸)、プロパン二酸(マロン酸)、n-ブタン二酸(コハク酸)、n-ヘプタン二酸(グルタル酸)、n-ヘキサン二酸(アジピン酸)、n-ヘプタン二酸、n-オクタン二酸、n-ノナン二酸(アゼライン酸)、n-デカン二酸(セバシン酸)、n-ウンデカン二酸、n-ドデカン二酸、n-トリデカン二酸、n-テトラデカン二酸、n-ペンタデカン二酸及びn-ヘキサデカン二酸等}、分岐鎖状飽和脂肪族二価カルボン酸{例えば、3-メチルアジピン酸等}、不飽和脂肪族二価カルボン酸{例えば、マレイン酸、フマル酸等}、脂環式飽和二価カルボン酸{例えば、1,2-又は1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,2-、1,3-又は1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等}等]、炭素数8~24の芳香環含有二価カルボン酸{例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等}等が挙げられる。
これらのうち、熱伝導率の観点から、炭素数2~24の脂肪族二価カルボン酸が好ましく、更に好ましくは炭素数2~24の直鎖状飽和脂肪族二価カルボン酸であり、特に好ましくは炭素数6~10の直鎖状飽和脂肪族二価カルボン酸である。
【0084】
一価カルボン酸(x2)としては、炭素数2~25の脂肪族一価カルボン酸[直鎖状飽和脂肪族一価カルボン酸{例えば、酢酸、プロピオン酸、n-ブタン酸、n-ペンタン酸、n-ヘキサン酸、n-ヘプタン酸、n-オクタン酸、n-ノナン酸、n-デカン酸、n-ウンデカン酸、n-ドデカン酸、n-トリデカン酸、n-テトラデカン酸、n-ペンタデカン酸、n-ヘキサデカン酸、n-ヘプタデカン酸、n-オクタデカン酸、n-ノナデカン酸、エイコサン酸、ドコサン酸及びテトラコサン酸等}、炭素数4~25の分岐鎖状飽和脂肪族一価カルボン酸{例えば、イソ酪酸、2-エチルヘキサン酸、イソノナン酸、イソデカン酸、イソウンデカン酸、イソドデカン酸、イソトリデカン酸、イソテトラデカン酸、イソペンタデカン酸、イソヘキサデカン酸、イソヘプタデカン酸、イソオクタデカン酸及びイソノナデカン酸等}、脂環式一価カルボン酸{例えば、シクロヘキサンカルボン酸等}等]、芳香環含有一価カルボン酸{例えば、安息香酸等}等が挙げられる。
これらのうち、熱伝導率及び潤滑性の観点から、炭素数2~25の脂肪族一価カルボン酸が好ましく、更に好ましくはアルキル基の炭素数が1~24の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有する化合物(直鎖状又は分岐鎖状飽和脂肪族一価カルボン酸)であり、特に好ましくはアルキル基の炭素数が5~14の直鎖状飽和脂肪族一価カルボン酸である。
【0085】
一価アルコール(y1)としては、炭素数1~24の脂肪族モノアルコール[直鎖状飽和脂肪族モノアルコール{例えば、n-ヘキサノール、n-ヘプタノール、n-オクタノール、n-ノナノール、n-デカノール、n-ウンデシルアルコール、n-ドデシルアルコール、n-トリデシルアルコール、n-テトラデシルアルコール、n-ペンタデシルアルコール、n-ヘキサデシルアルコール、n-ヘプタデシルアルコール、n-オクタデシルアルコール、n-ノナデシルアルコール、n-イコサノール、n-ヘンエイコサノール、n-ドコサノール及びn-テトラコサノール等}、分岐差状飽和脂肪族モノアルコール{例えば、2-エチルヘキサノール、イソノニルアルコール、イソデシルアルコール、イソウンデシルアルコール、イソドデシルアルコール、イソトリデシルアルコール、イソテトラデシルアルコール、イソペンタデシルアルコール、イソヘキサデシルアルコール、イソヘプタデシルアルコール、イソオクタデシルアルコール及びイソノナデシルアルコール等}、脂環式モノアルコール{例えば、シクロヘキサノール、2-、3-又は4-t-ブチルシクロヘキサノール、メントール、シクロヘキサンエタノール、2-、3-又は4-イソプロピルシクロヘキサノール等}等]、炭素数7~24の芳香環含有モノアルコール{例えば、ベンジルアルコール等}等が挙げられる。
これらのうち、熱伝導率の観点から、炭素数1~24の脂肪族モノアルコールが好ましく、更に好ましくはアルキル基の炭素数が1~24の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有する化合物(直鎖状又は分岐鎖状飽和脂肪族モノアルコール)であり、特に好ましくはアルキル基の炭素数が4~16の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有する化合物(直鎖状又は分岐鎖状飽和脂肪族モノアルコール)である。
【0086】
二価アルコール(y2)としては、炭素数2~24の脂肪族二価アルコール[直鎖状飽和脂肪族ジオール{例えば、エチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,15-ペンタデカンジオール及び1,16-ヘキサデカンジオール等}、分岐鎖状飽和脂肪族ジオール{例えば、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,4-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘプタンジオール、1,2-オクタンジオール、1,2-ノナンジオール、1,2-デカンジオール、1,2-ウンデカンジオール、1,2-ドデカンジオール、1,2-トリデカンジオール、1,2-テトラデカンジオール、1,2-ペンタデカンジオール及び1,2-ヘキサデカンジオール等}、脂環式ジオール{例えば、1,2-、1,3-又は1,4-シクロヘキサンジオール等}等]、炭素数8~24の芳香環含有二価アルコール{例えば、ジヒドロキシベンゼンのエチレンオキサイド付加物等}等が挙げられる。
これらのうち、熱伝達率の観点から、炭素数2~24の脂肪族二価アルコールが好ましく、更に好ましくは炭素数2~24の直鎖状飽和脂肪族ジオールであり、特に好ましくは炭素数4~12の直鎖状又は分岐鎖状飽和脂肪族ジオールである。
【0087】
エステル油(B)のSP値は、冷却性、潤滑性及び(A)の溶解性の観点から、8.1~10.1(cal/cm3)1/2が好ましく、更に好ましくは8.2~9.5(cal/cm3)1/2であり、特に好ましくは8.4~9.2(cal/cm3)1/2である。
エステル油(B)を2種以上用いる場合は、それぞれのエステル油のSP値及び重量分率を計算し、相加平均した値が上記SP値を満たすことが好ましい。
【0088】
エステル油(B)の40℃における動粘度(JIS-K2283で測定したもの)(単位:mm2/s、以下略記する)は、冷却性及び潤滑性の観点から、3~30が好ましく、更に好ましくは3~15である。
エステル油(B)の40℃における動粘度は、エステル油(B)を合成する際のカルボン酸とアルコールの炭素数及び分岐度により調整することができ、例えば、炭素数が大きいものを用いると動粘度は高くなり、炭素数が小さいものを用いれば動粘度は低くなる傾向がある。また、分岐度が小さいものは動粘度が高く、分岐度が大きいものは動粘度が低い傾向がある。
エステル油(B)としては、潤滑性及び冷却性の観点から、炭素数が10~40のエステル化合物が好ましく、更に好ましくは炭素数が15~26のエステル化合物である。
エステル油(B)としては、潤滑性及び冷却性の観点から、炭素数6~10の直鎖状飽和脂肪族二価カルボン酸と炭素数4~16の分岐鎖状飽和脂肪族モノアルコールとのジエステル化物、炭素数が5~14の直鎖状飽和脂肪族一価カルボン酸と炭素数4~12の分岐鎖状飽和脂肪族ジオールとのジエステル化物、及びアルキル基の炭素数が5~14の直鎖状飽和脂肪族一価カルボン酸と炭素数4~16の分岐鎖状飽和脂肪族モノアルコールとのエステル化物が好ましい。
エステル油(B)としては、潤滑性及び冷却性の観点から、メチル基を2~6個有するものが好ましく、更に好ましくは3~4個である。
メチル基を3個有する化合物としては、例えば、3-メチル-1,5-ペンタンジオールと直鎖状飽和脂肪族一価カルボン酸とのジエステル等が挙げられる。
メチル基を4個有する化合物としては、例えば、2-エチルヘキシルアルコールと直鎖状飽和脂肪族二価カルボン酸とのジエステル等が挙げられる。
【0089】
エステル油(B)として、具体的には、二価カルボン酸(x1)と一価アルコール(y1)とのジエステル{例えば、セバシン酸ビス(2-エチルヘキシル)(100℃動粘度:3.19、40℃動粘度:11.3)、ドデカン二酸ビス(2-エチルヘキシル)(100℃動粘度:3.7、40℃動粘度:13.7)、ジトリデシルドデカン二酸(100℃動粘度:5.1、40℃動粘度:24.0)、アジピン酸ビス(n-オクチル)(100℃動粘度:2.6、40℃動粘度:8.2)、アジピン酸ビス(2-エチルへキシル)(100℃動粘度:2.4、40℃動粘度:7.8)、アゼライン酸ビス(2-エチルヘキシル)(100℃動粘度:3.0、40℃動粘度:10.4)、アゼライン酸2-エチルヘキシル-n-オクチル(100℃動粘度:3.1、40℃動粘度:10.8)、セバシン酸2-エチルへキシル-n-オクチル(100℃動粘度:3.6、40℃動粘度:11.7)等}、一価カルボン酸(x2)と二価アルコール(y2)とのジエステル{例えば、ビス(ペンタン酸)-3-メチル-1,5-ペンタンジイル(100℃動粘度:1.5、40℃動粘度:3.7)、ビス(オクタン酸)-3-メチル-1,5-ペンタンジイル(100℃動粘度:2.41、40℃動粘度:7.4)、ビス(ノナン酸)-3-メチル-1,5-ペンタンジイル(100℃動粘度:2.7、40℃動粘度:8.9)、ビス(デカン酸)-3-メチル-1,5-ペンタンジイル(100℃動粘度:3.2、40℃動粘度:10.7)、ネオペンチルグリコールとイソオクタン酸とのジエステル(100℃動粘度:2.9、40℃動粘度:11.4)、ネオペンチルグリコールと2-エチルヘキサン酸とのジエステル(100℃動粘度:2.0、40℃動粘度:7.5)等}、一価アルコール(y1)と一価カルボン酸(x2)とのモノエステル{例えば、イソオクタノールオレイン酸エステル(100℃動粘度:2.7、40℃動粘度:8.3)等}等が挙げられる。
【0090】
エステル油(B)の100℃における動粘度(JIS-K2283で測定したもの)は、冷却性及び潤滑性の観点から好ましくは1~15mm2/sであり、更に好ましくは2~5mm2/s、粘度指数の観点から、特に好ましくは2.4~3.2mm2/sである。
エステル油(B)の粘度指数(JIS-K2283で測定したもの)は、潤滑性の観点から好ましくは90以上であり、更に好ましくは100以上である。
【0091】
エステル油(B)の曇り点(JIS-K2269で測定したもの)は、好ましくは-5℃以下であり、更に好ましくは-15℃以下である。基油の曇り点がこの範囲内であると潤滑油組成物の低温粘度が良好である。
【0092】
<潤滑油組成物>
本発明の潤滑油組成物は、前記共重合体(A)及び前記エステル油(B)を含有する。
潤滑油組成物中の共重合体(A)と前記エステル油(B)との重量比率(A/B)は、高速度時の摩擦低減、冷却性及び潤滑性の観点から、0.001~0.43が好ましく、更に好ましくは0.001~0.11である。
潤滑油組成物中の共重合体(A)の含有量は、潤滑油組成物の重量を基準として、高速度時の摩擦低減、冷却性及び潤滑性の観点から、0.1~30重量%が好ましく、更に好ましくは0.1~10重量%である。
潤滑油組成物中のエステル油(B)の含有量は、潤滑油組成物の重量を基準として、冷却性の観点から、40重量%以上が好ましく、更に好ましくは60重量%以上であり、より好ましくは70~99.9重量%であり、特に好ましくは90.0~99.9重量%である。
【0093】
本発明の潤滑油組成物は、エステル油(B)以外の基油を含有してもよい。
基油としては、鉱物油(溶剤精製油、パラフィン油、イソパラフィンを含有する高粘度指数油、イソパラフィンの水素化分解による高粘度指数油及びナフテン油等)、合成潤滑油[炭化水素系合成潤滑油(ポリ-α-オレフィン系合成潤滑油等)等が挙げられる。
エステル油(B)以外の基油としては、絶縁性及び(A)の溶解性の観点から、鉱物油が好ましい。
エステル油(B)以外の基油としては、冷却性の観点から、40℃動粘度が6~20mm2/sのものが好ましく、更に好ましくは6~15mm2/sである。
エステル油(B)以外の基油としては、潤滑性の観点から、100℃動粘度が1~6mm2/sのものが好ましく、更に好ましくは2~5mm2/sである。
潤滑油組成物中のエステル油(B)以外の基油の含有量は、潤滑油組成物の重量を基準として、冷却性、絶縁性及び熱伝導率の観点から、80重量%以下が好ましく、より好ましくは50重量%以下、更に好ましくは30重量%以下である。
【0094】
共重合体(A)のSP値とエステル油(B)のSP値との差の絶対値は、摩擦低減及び溶解性の観点から、3.4(cal/cm3)1/2以下が好ましく、更に好ましくは2.3(cal/cm3)1/2以下であり、特に好ましくは1.8(cal/cm3)1/2以下である。
なお、共重合体(A)、エステル油(B)を2種以上併用している場合は、(A)のSP値及び重量分率を計算し、相加平均した値と、(B)のSP値及び重量分率を計算し、相加平均した値との差が上記範囲を満たすことが好ましい。
【0095】
共重合体(A)を構成する単量体中の単量体(a)に由来する構成単位のSP値とエステル油(B)のSP値との差の絶対値は、高速度時の摩擦低減及び基油への溶解性の観点から、上限は4.4(cal/cm3)1/2以下が好ましく、更に好ましくは4.1(cal/cm3)1/2以下であり、特に好ましくは3.6(cal/cm3)1/2以下であり、下限は、好ましくは0.3(cal/cm3)1/2以上であり、更に好ましくは0.9(cal/cm3)1/2以上である。好ましい範囲としては、例えば、0.3~4.4(cal/cm3)1/2、0.9~4.4(cal/cm3)1/2等が例示される。
なお、共重合体(A)が複数種類の単量体(a)に由来する構成単位を有する場合や、エステル油(B)を2種以上併用している場合は、それぞれ重量分率に基づいて相加平均した値との差が上記範囲を満たすことが好ましい。
【0096】
エステル油(B)を構成する一価アルコール(y1)の有するアルキル基又は前記一価カルボン酸(x2)の有するアルキル基の炭素数(N1)と、共重合体(A)を構成する単量体(b)中のR5又は単量体(c)中のR7の炭素数(N2)との比率(N1/N2)は、基油への溶解性の観点から、0.01~4.80が好ましく、更に好ましくは0.01~1.33である。
【0097】
潤滑油組成物の25℃における熱伝導率(後述の条件で熱特性計で測定)は、冷却性の観点から、0.14~0.16W/(m・K)が好ましく、更に好ましくは0.15~0.16W/(m・K)である。
潤滑油組成物の80℃における熱伝達率(後述の条件で算出)は、冷却性の観点から、2.35~2.80W/(m2/K)が好ましく、更に好ましくは2.45~2.70W/(m2/K)である。
潤滑油組成物の40℃における熱伝達率(後述の条件で算出)は、冷却性の観点から、2.10W/(m2/K)以上が好ましく、更に好ましくは2.10~2.45W/(m2/K)である。
潤滑油組成物の体積抵抗率は、絶縁性の観点から、1010Ω・cm以上が好ましく、更に好ましくは1011Ω・cm以上である。
【0098】
潤滑油組成物のMTM摩擦係数(後述の条件で測定、以下においても同じ)(100℃、速度:10mm/s)は、潤滑性の観点から、0.070~0.095が好ましく、更に好ましくは0.070~0.090である。
潤滑油組成物のMTM摩擦係数(100℃、速度:100mm/s)は、潤滑性の観点から、0.055以下が好ましく、更に好ましくは0.030~0.055である。
潤滑油組成物のMTM摩擦係数(100℃、速度:1000mm/s)は、潤滑性の観点から、0.025以下が好ましく、更に好ましくは0.005~0.023、特に好ましくは0.008~0.020である。
潤滑油組成物のMTM摩擦係数(100℃、速度:10mm/s)とMTM摩擦係数(100℃、100mm/s)との比率(10/100)は、潤滑性の観点から、1.60~2.50が好ましく、更に好ましくは1.80~2.32である。
潤滑油組成物のMTM摩擦係数(100℃、速度:10mm/s)とMTM摩擦係数(100℃、1000mm/s)との比率(10/1000)は、潤滑性の観点から、3.0~12が好ましく、更に好ましくは5.5~7.5である。
【0099】
潤滑油組成物の40℃における動粘度(JIS-K2283で測定したもの)は、潤滑性及び冷却性の観点から、4.0~30.0mm2/sが好ましく、更に好ましくは7.0~20.0mm2/sである。
潤滑油組成物の80℃における動粘度(JIS-K2283で測定したもの)は、潤滑性及び冷却性の観点から、1.5~19.0mm2/sが好ましく、更に好ましくは3.0~8.0mm2/sである。
潤滑油組成物の100℃における動粘度(JIS-K2283で測定したもの)は、潤滑性及び冷却性の観点から、1.0~15.0mm2/sが好ましく、更に好ましくは2.0~5.0mm2/sである。
潤滑油組成物の粘度指数(JIS-K2283で測定したもの)は、潤滑性の観点から、160以上が好ましく、更に好ましくは170以上である。
【0100】
本発明の潤滑油組成物は、更に粘度指数向上剤、清浄剤、分散剤、酸化防止剤、油性向上剤、摩擦摩耗調整剤、極圧剤、消泡剤、抗乳化剤、腐食防止剤及び流動点降下剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の添加剤を含有してもよい。
【0101】
(1)粘度指数向上剤:
(炭素数1~7)アルキル(メタ)アクリレート/(炭素数8~40)直鎖又は分岐アルキル(メタ)アクリレート共重合体、分散モノマー(アミンモノマー等)/(炭素数1~7)アルキル(メタ)アクリレート/(炭素数8~40)直鎖又は分岐アルキル(メタ)アクリレート共重合体、ヒドロキシ基含有モノマー/(炭素数1~7)アルキル(メタ)アクリレート/(炭素数8~40)直鎖又は分岐アルキル(メタ)アクリレート共重合体、櫛形ポリマー[(炭素数1~7)アルキル(メタ)アクリレート/(炭素数8~40)直鎖又は分岐アルキル(メタ)アクリレート/ポリオレフィンマクロモノマー]、エチレン/(炭素数1~18)アルキル(メタ)アクリレート共重合体、ポリイソブチレン、ポリアルキルスチレン、エチレン/プロピレン共重合体、スチレン/マレイン酸エステル共重合体、スチレン/イソプレン水素化共重合体等;
【0102】
(2)清浄剤:
塩基性、過塩基性又は中性の金属塩[スルフォネート(石油スルフォネート、アルキルベンゼンスルフォネート及びアルキルナフタレンスルフォネート等)の過塩基性又はアルカリ土類金属塩等]、サリシレート類、フェネート類、ナフテネート類、カーボネート類、フォスフォネート類及びこれらの混合物;
(3)分散剤:
コハク酸イミド類(ビス-又はモノ-ポリブテニルコハク酸イミド類)、マンニッヒ縮合物及びボレート類等;
(4)酸化防止剤:
ヒンダードフェノール類及び芳香族2級アミン類等;
(5)油性向上剤:
長鎖脂肪酸及びそれらのエステル(オレイン酸及びオレイン酸エステル等)、長鎖アミン及びそれらのアミド(オレイルアミン及びオレイルアミド等)等;
(6)摩擦摩耗調整剤:
モリブデン系及び亜鉛系化合物(モリブデンジチオフォスフェート、モリブデンジチオカーバメート及びジンクジアルキルジチオフォスフェート等)等;
(7)極圧剤:
硫黄系化合物(モノ又はジスルフィド、スルフォキシド及び硫黄フォスファイド化合物)、フォスファイド化合物及び塩素系化合物(塩素化パラフィン等)等;
(8)消泡剤:
シリコン油、金属石けん、脂肪酸エステル及びフォスフェート化合物等;
(9)抗乳化剤:
4級アンモニウム塩(テトラアルキルアンモニウム塩等)、硫酸化油及びフォスフェート(ポリオキシエチレン含有非イオン性界面活性剤のフォスフェート等)等;
(10)腐食防止剤:
窒素原子含有化合物(ベンゾトリアゾール及び1,3,4-チオジアゾリル-2,5-ビスジアルキルジチオカーバメート等)等;
(11)流動点効果剤:
ポリアルキルメタクリレート、ポリアルキルアクリレート、ポリアルキルスチレン、ポリビニルアセテート等。
【0103】
本発明の潤滑油組成物は、ギヤ油(デファレンシャル油及び工業用ギヤ油等)、MTF、変速機油[ATF及びbelt-CVTF等]、トラクション油(トロイダル-CVTF等)、ショックアブソーバー油、パワーステアリング油、作動油(建設機械用作動油及び工業用作動油等)及びエンジン油等に好適に用いられる。効果を発揮しやすいという観点から、好ましくは電気自動車又はハイブリッド車における変速機油、電動モーター油、変速機と電動モーターとの兼用油として用いられることであり、特に好ましくは電気自動車又はハイブリッド車における変速機と電動モーターとの兼用油として用いられることである。
【実施例0104】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0105】
<製造例1>[単量体(a-1)の製造]
温度調節器、バキューム撹拌翼、減圧装置、ジムロート冷却管、分留管、留出液受け用フラスコ、窒素流入口及び流出口を備えた反応容器に、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)260.3重量部(2.0モル部)、ε-カプロラクトン1141.4重量部(10.0モル部)、ハイドロキノンモノメチルエーテル3.7重量部(0.03モル部)、ブチルトリス(2-エチルヘキサノイルオキシ)スズ0.27重量部を投入し、空気を通じながら撹拌下115℃まで昇温した。次いで、115℃で8時間反応を行い、留出水を分離した。更に25℃まで冷却し、1H-NMRでエステル化反応物を確認(収率98モル%)した。
(a-1)は、一般式(1)におけるA1はメタクリロイル基、R1はエチレン基、p=5、R2=ペンチレン基、R3は水素原子で表される単量体で、(a-1)由来の構成単位のSP値は10.75である。
【0106】
<製造例2>[単量体(a-2)の製造]
温度調節器、バキューム撹拌翼、減圧装置、ジムロート冷却管、分留管、留出液受け用フラスコ、窒素流入口及び流出口を備えた反応容器に、ラウリン酸520.8重量部、(a-1)711.0重量部、ハイドロキノンモノメチルエーテル3.7重量部(0.03モル部)、トルエン300重量部及びパラトルエンスルホン酸20.7重量部を投入し、撹拌下115℃まで昇温した。次いで、115℃で8時間エステル化反応を行い、留出水を分離した。更に25℃まで冷却し、1H-NMRでエステル化反応物を確認(収率98モル%)した。10重量%水酸化ナトリウム水溶液200重量部を投入して撹拌し、パラトルエンスルホン酸を十分に中和した。分液ロートで上澄み液を回収し、120℃に昇温後、同温度で減圧下(0.027~0.040MPa)トルエンを2時間かけて除去し(a-2)を得た。
(a-2)は、一般式(1)におけるA1はメタクリロイル基、R1はエチレン基、p=5、R2=ペンチレン基、R3は炭素数12のラウロイル基で表される単量体で、(a-2)由来の構成単位のSP値は9.68である。
【0107】
<製造例3>[単量体(a-3)の製造]
温度調節器、バキューム撹拌翼、減圧装置、ジムロート冷却管、分留管、留出液受け用フラスコ、窒素流入口及び流出口を備えた反応容器に、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)232.2重量部(2.0モル部)、ε-カプロラクトン2282.8重量部(20.0モル部)、ハイドロキノンモノメチルエーテル3.7重量部(0.03モル部)、ブチルトリス(2-エチルヘキサノイルオキシ)スズ0.27重量部を投入し、空気を通じながら撹拌下115℃まで昇温した。次いで、115℃で8時間反応を行い、留出水を分離した。更に25℃まで冷却し、1H-NMRでエステル化反応物を確認(収率98モル%)した。
(a-3)は、一般式(1)におけるA1はアクリロイル基、R1はエチレン基、p=10、R2=ペンチレン基、R3は水素原子で表される単量体で、(a-3)由来の構成単位のSP値は10.68である。
【0108】
<製造例4~24、比較製造例1~4>
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計及び窒素導入管を備えた反応容器に、酢酸エチル185重量部、表2~4に記載した各種単量体の配合物100重量部、連鎖移動剤として表2~4に記載の量のドデシルメルカプタン、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)を投入し、窒素置換(気相酸素濃度100ppm)を行った後、密閉下、撹拌しながら76℃に昇温し、同温度で6時間重合反応を行った。
表2~4に記載の基油150重量部を加え、120~130℃に昇温後、同温度で減圧下(0.027~0.040MPa)で未反応の単量及び酢酸エチルを2時間かけて除去し、本発明の共重合体(A-1)~(A-12)または比較のための(A’-1)~(A’-2)を含む共重合体溶液を得た。
【0109】
<比較製造例5~9>
表5に記載の基油をそのまま溶液として用いた。
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
表2~5に記載の各種の単量体及び基油は、以下に記載した通りである。
(a-4):HEMAのε-カプロラクトン1モル付加体
(a-5):HEMAのε-カプロラクトン20モル付加体
(a-6):HEMAのε-カプロラクトン4モル付加体の末端ブチルエステル
(a-7):HEAのε-カプロラクトン2モル付加体
(a-8):HEAのε-カプロラクトン14モル付加体
(a-9):HEAのε-カプロラクトン7モル付加体の末端ブチルエステル
(b-1):メタクリル酸n-ドデシル
(b-2):炭素数12~15の直鎖及び分岐アルキルメタクリレート混合物(Neodol23(シェルケミカルズ社製)とメタクリル酸とのエステル化物)
(b-3):メタクリル酸n-ヘキサデシル
(b-4):メタクリル酸n-オクタデシル
(b-5):メタクリル酸2-デシルテトラデシル
(b-6):メタクリル酸2-ドシルヘキサデシル
(b-7):メタクリル酸2-テトラデシルオクタデシル
(b-8):アクリル酸n-ドデシル
(b-9):アクリル酸n-オクタデシル
(c-1):ポリブタジエンマクロモノマー(クラレ社製L-1203[1,2-付加体/1,4-付加体=45/55]とメタクリル酸のエステル化物, Mn=6960)
(c-2):ポリブタジエンマクロモノマー(クラレ社製L-3203[1,2-付加体/1,4-付加体=65/35]とメタクリル酸のエステル化物, Mn=6960)
(d-1):メタクリル酸メチル
(d-2):メタクリル酸ブチル
(e-1):アクリル酸2-ヒドロキシエチル
(e-2):メタクリル酸2-ヒドロキシエチル
(e-3):メタクリル酸2-ヒドロキシイソブチル
(g-1):N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート
(B-1):3-メチル-1,5-ペンタンジオールとオクタン酸とのジエステル(40℃動粘度:7.38mm2/s、100℃動粘度:2.41mm2/s、SP値:8.98
(B-2):3-メチル-1,5-ペンタンジオールとノナン酸とのジエステル(40℃動粘度:8.93mm2/s、100℃動粘度:2.73mm2/s、SP値:8.95)
(B-3):2-エチルヘキシルアルコールとアジピン酸とのジエステル(40℃動粘度:7.80mm2/s、100℃動粘度:2.40mm2/s、SP値:8.91)
(B-4):イソオクタノールとオレイン酸とのモノエステル(40℃動粘度:8.20mm2/s、100℃動粘度:2.68mm2/s、SP値:8.61)
(B-5):3-メチル-1,5-ペンタンジオールとペンタン酸とのジエステル(40℃動粘度:3.74mm2/s、100℃動粘度:1.49mm2/s、SP値:9.11)
(B-6):2-エチルヘキシルアルコールとゼバシン酸とのジエステル(40℃動粘度:11.32mm2/s、100℃動粘度:3.19mm2/s、SP値:8.87)
(B-7):n-オクタノールとアジピン酸とのジエステル(40℃動粘度:8.21mm2/s、100℃動粘度:2.58mm2/s、SP値:9.04)
(B-8):ネオペンチルグリコールと2-エチルヘキサン酸とのジエステル(40℃動粘度:7.49mm2/s、100℃動粘度:2.03mm2/s、SP値:8.79)
(C-1):鉱物油(SKルブリカンツ社製YUBASE2、40℃動粘度:8.65mm2/s、100℃動粘度:2.41mm2/s、SP値:8.20)
【0115】
<実施例1~21、比較例1~9>
製造例4~24及び比較製造例1~9で得られた溶液を用いて、表2~5に記載の含有量で配合し潤滑油組成物(V―1)~(V-21)及び(V’-1)~(V'-9)を得た。
得られた潤滑油組成物(V―1)~(V―21)、(V’―1)~(V’―9)を用いて、各温度における動粘度、粘度指数、熱伝導率、熱伝達率、体積抵抗率、MTM摩擦係数を以下の方法で測定した。なお、比較例5~9では、表5に記載した基油を潤滑油組成物(V’-5)~(V’-9)としてそのまま用いた。
【0116】
<潤滑油組成物の粘度指数の計算方法>
ASTM D 445の方法で100℃、80℃、40℃での動粘度を測定し、100℃と40℃の動粘度から、ASTM D 2270の方法で粘度指数を計算した。
【0117】
<熱伝導率の測定>
デカゴン社製 熱特性計KD2proを用い、シングルニードルセンサーにて室温25℃で測定した。
【0118】
<熱伝達率の計算方法>
潤滑油組成物の各温度(40℃又は80℃)での動粘度、熱伝導率、密度、定圧比熱から、以下の式を用いて40℃、80℃での熱伝達率を算出した。
熱伝達率(W/m2K)=(密度[kg/m3])0.33×(定圧比熱[kJ/kgK])0.33×(熱伝導率[W/mK])0.67/(動粘度[mm2/s])0.17
【0119】
<体積抵抗率の測定>
JIS C 2101の24(体積抵抗率試験)に準拠し,室温25℃で測定した。
【0120】
<MTM(ミニトラクション)摩擦係数>
MTM(ミニトラクション)試験機を用いて、下記測定条件で測定し、ストライベック曲線を得て、各速度:10mm/s、100mm/s、500mm/s、1,000mm/sにおける摩擦係数を結果として表2~5に示した。
機器:PCS Instruments MTM-2
ディスク:MTM polished disc(standard)(0.01micron)
ボール:Drilled 3/4 AISI52100precision steel ball
速度:10mm/s~3,000mm/s
温度:100℃
スライディング/ローリング比:50%
負荷:30N
【0121】
表2~5から、本発明の潤滑油組成物は、エステル油(B)の冷却性を低下させることなく{40℃における熱伝達率が2.10W/(m2/K)以上}、低速度時のMTM摩擦係数(100℃、速度:10mm/s)は0.070以上と高く動力伝達特性に優れ、高速度時にはMTM摩擦係数(100℃、速度:100mm/s)を0.055以下と急激に低くすることができ、潤滑性が高いことが分かる。
本発明の潤滑油組成物は、冷却性及び潤滑性に優れていることから、ギヤ油(デファレンシャル油及び工業用ギヤ油等)、MTF、変速機油[ATF及びbelt-CVTF等]、トラクション油(トロイダル-CVTF等)、ショックアブソーバー油、パワーステアリング油、作動油(建設機械用作動油及び工業用作動油等)及びエンジン油等に好適に用いられる。特に、電気自動車又はハイブリッド車における変速機油、電動モーター油、変速機と電動モーターとの兼用油として有用であり、電気自動車又はハイブリッド車における変速機と電動モーターとの兼用油として極めて有用である。