(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151623
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】電線処理装置
(51)【国際特許分類】
H01B 13/00 20060101AFI20220929BHJP
H01R 43/05 20060101ALN20220929BHJP
【FI】
H01B13/00 F
H01R43/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022018115
(22)【出願日】2022-02-08
(31)【優先権主張番号】202110326556.X
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】522052473
【氏名又は名称】新明和(上海)精密机械有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】小原 雅広
(72)【発明者】
【氏名】三好 明
(72)【発明者】
【氏名】熊 立洪
(72)【発明者】
【氏名】魏 建波
【テーマコード(参考)】
5E063
【Fターム(参考)】
5E063CB06
5E063CB09
5E063CC04
5E063XA02
(57)【要約】
【課題】電線の一端部を把持しながら移動するクランプを備えた電線処理装置において、電線の長さが長い場合または短い場合であっても、上記クランプにより電線を安定して搬送すること。
【解決手段】電線処理装置は、電線の一端部を把持するクランプと、前記クランプを第1位置から第2位置に移動させる制御装置とを備える。前記制御装置は、前記クランプを前記第1位置から加速移動させる加速制御部と、前記クランプを前記第2位置まで減速移動させる減速制御部と、電線の長さが第1閾値以上の場合に前記加速移動の加速度を標準加速度よりも小さな第1加速度に変更する加速度変更部と、電線の長さが前記第1閾値以下の第2閾値未満の場合に前記減速移動の減速度を前記標準減速度よりも小さな第1減速度に変更する減速度変更部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の一端部を把持するクランプと、
前記クランプを移動させるアクチュエータと、
前記クランプが第1位置から第2位置に移動するように前記アクチュエータを制御する制御装置と、を備え、
前記クランプが前記電線の前記一端部を把持しながら移動すると、前記電線の他端部が前記一端部に引っ張られることによって移動するように構成された電線処理装置であって、
前記制御装置は、
前記クランプを前記第1位置から加速移動させる加速制御部と、
前記クランプを前記第2位置まで減速移動させる減速制御部と、
前記加速移動の加速度として予め設定された標準加速度および前記減速移動の減速度として予め設定された標準減速度を記憶する記憶部と、
前記電線の長さの情報が入力される電線長さ入力部と、
前記電線長さ入力部に入力された電線の長さが第1閾値以上か否かを判定し、前記第1閾値以上の場合には前記加速移動の加速度を前記標準加速度よりも小さな第1加速度に変更する加速度変更部と、
前記電線長さ入力部に入力された電線の長さが前記第1閾値以下の第2閾値未満か否かを判定し、前記第2閾値未満の場合には前記減速移動の減速度を前記標準減速度よりも小さな第1減速度に変更する減速度変更部と、
を備えた、電線処理装置。
【請求項2】
前記クランプは、前記電線の把持および把持の解除が可能に構成され、
前記第2位置の下方に、前記電線を回収する回収トレイが配置されている、請求項1に記載の電線処理装置。
【請求項3】
前記クランプは、第1アームと、前記第1アームに対向する第2アームと、前記第1アームおよび前記第2アームが互いに接近または離反するように前記第1アームおよび前記第2アームの一方または両方を駆動するクランプアクチュエータと、を有している、請求項2に記載の電線処理装置。
【請求項4】
前記電線の前記一端部を把持する他のクランプを備え、
前記クランプは、前記第1位置において、前記他のクランプから前記電線の前記一端部を受け取るように構成されている、請求項2または3に記載の電線処理装置。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記クランプを前記第1位置から前記第2位置に移動させ、前記クランプの把持を解除させ、前記クランプを前記第2位置から前記第1位置に移動させる第1動作を繰り返す第1制御と、
第3位置において前記他のクランプから前記クランプに前記電線の前記一端部を受け渡し、前記他のクランプを前記第3位置から第4位置に移動させ、前記他のクランプを前記第4位置から前記第3位置に移動させる第2動作を繰り返す第2制御と、を同時に実行するように構成され、
前記第1加速度および前記第1減速度は、前記第1動作の所要時間が前記第2動作の所要時間以下となるように設定されている、請求項2~4のいずれか一つに記載の電線処理装置。
【請求項6】
前記クランプが前記第1位置にあるときに少なくとも前記電線の前記他端部を支持する台を備えている、請求項1~5のいずれか一つに記載の電線処理装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記加速移動の後、かつ、前記減速移動の前に、前記クランプを等速移動させる等速制御部を有している、請求項1~6のいずれか一つに記載の電線処理装置。
【請求項8】
前記クランプは、前記電線の長手方向に垂直な直線方向に移動するように構成されている、請求項1~7のいずれか一つに記載の電線処理装置。
【請求項9】
前記加速度変更部は、前記電線長さ入力部に入力された電線の長さが、前記第1閾値よりも大きな第3閾値以上か否かを判定し、前記第3閾値以上の場合には前記加速移動の加速度を前記第1加速度よりも小さな第2加速度に変更するように構成されている、請求項1~8のいずれか一つに記載の電線処理装置。
【請求項10】
前記減速度変更部は、前記電線長さ入力部に入力された電線の長さが、前記第2閾値よりも小さな第4閾値以下か否かを判定し、前記第4閾値以下の場合には前記減速移動の減速度を前記第1減速度よりも小さな第2減速度に変更するように構成されている、請求項1~9のいずれか一つに記載の電線処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ワイヤハーネス等の材料として、導体からなる心線と、心線の周囲を囲む絶縁体からなる被覆とを有する電線が用いられている。このような電線に対して、各種の処理を行う電線処理装置が知られている。電線処理装置は、例えば、電線の切断、被覆の剥ぎ取り、または端子の圧着などの処理を行う。電線処理装置は、電線の一端部を把持しながら移動するクランプを備えている。例えば、特開2010-262877号公報には、電線の一端部を把持する排出クランプを備えた電線処理装置が開示されている。排出クランプは、他のクランプから電線の一端部を受け取り、電線を回収トレイの上方に移動させる。排出クランプが電線の一端部を把持しているときに、電線の他端部はクランプに把持されていない。排出クランプが電線の一端部を移動させると、電線の他端部は一端部に引っ張られることによって移動する。
【0003】
特開2010-262877号公報に開示された電線処理装置では、作業者が入力画面に排出加減速度を入力できるようになっている。特許文献2010-262877号公報には、排出加減速時間を長くすることによって、電線に加わる慣性力を小さくできるため、排出の整列性を高めると共に電線の屈曲などを防ぐことができる、と記載されている。具体的には、第1の例として、電線長さが短く、電線が軟らかい場合が記載されている。第1の例では、電線が軟らかいことを考慮して、排出加減速度は通常より小さい値が入力される、と記載されている。また、第2の例として、電線長さが長く、電線が硬い場合が記載されている。第2の例では、電線が硬いことを考慮して、排出加減速度は通常の値に設定される、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特開2010-262877号公報には、電線の硬さに基づいて排出加減速度を設定することが記載されているが、電線長さに基づいてどのように排出加減速度を設定すべきかについては記載されていない。電線長さが短い第1の例では、電線長さが長い第2の例に比べて、排出加減速度は小さい。逆に、電線長さが長い第2の例では、電線長さが短い第1の例に比べて、排出加減速度は大きい。すなわち、電線長さが長いほど、排出加減速度は大きい。
【0006】
しかし、電線長さが長いほど、加速時に電線は曲がりやすい。そのため、電線長さが長いほど排出加減速度を大きくした場合、電線の屈曲を抑制することは難しい。
【0007】
そこで、電線の屈曲を抑制するために、電線長さが長いほど排出加減速度を小さくすることが考えられる。この場合、電線長さが短いほど排出加減速度は大きくなる。しかし、電線長さが短いと、電線の一端部を把持しているクランプを停止させたときに、電線の他端部に生じる慣性の影響が大きくなる。そのため、停止時に電線の他端部が振れやすくなる。
【0008】
このように、単に電線長さが長いほど排出加減速度を小さくするだけでは、加速時の電線の曲がり、および、停止時の電線の振れを好適に抑制することは難しい。しかし、クランプにより電線を安定して搬送するためには、加速時の電線の曲がり、および、停止時の電線の振れを好適に抑制することが好ましい。なお、このような課題は、電線を回収トレイの上方に移動させる場合だけでなく、電線を任意の位置に移動させる場合にも、同様に生じる課題である。また、心線および被覆を有する電線に限らず、任意の電線について生じる課題である。
【0009】
本発明の目的は、電線の一端部を把持しながら移動するクランプを備え、電線の長さが長い場合および短い場合のいずれであっても、上記クランプにより電線を安定して搬送することができる電線処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ここに開示される電線処理装置は、電線の一端部を把持するクランプと、前記クランプを移動させるアクチュエータと、前記クランプが第1位置から第2位置に移動するように前記アクチュエータを制御する制御装置と、を備える。前記電線処理装置は、前記クランプが前記電線の前記一端部を把持しながら移動すると、前記電線の他端部が前記一端部に引っ張られることによって移動するように構成されている。前記制御装置は、前記クランプを前記第1位置から加速移動させる加速制御部と、前記クランプを前記第2位置まで減速移動させる減速制御部と、前記加速移動の加速度として予め設定された標準加速度および前記減速移動の減速度として予め設定された標準減速度を記憶する記憶部と、前記電線の長さの情報が入力される電線長さ入力部と、前記電線長さ入力部に入力された電線の長さが第1閾値以上か否かを判定し、前記第1閾値以上の場合には前記加速移動の加速度を前記標準加速度よりも小さな第1加速度に変更する加速度変更部と、前記電線長さ入力部に入力された電線の長さが前記第1閾値以下の第2閾値未満か否かを判定し、前記第2閾値未満の場合には前記減速移動の減速度を前記標準減速度よりも小さな第1減速度に変更する減速度変更部と、を備える。
【0011】
上記電線処理装置によれば、電線の長さが第1閾値以上の場合には、クランプが第1位置から加速移動するときの加速度が、標準加速度から第1加速度に低減される。そのため、電線が比較的長い場合であっても、加速時に電線が曲がってしまうことを抑制することができる。電線の長さが第2閾値未満の場合には、クランプが第2位置まで減速移動するときの減速度が低減される。そのため、電線が比較的短い場合であっても、クランプが第2位置に停止したときに、電線の他端部が振れることを抑制することができる。したがって、上記電線処理装置によれば、電線の長さが長い場合および短い場合のいずれであっても、クランプにより電線を安定して搬送することができる。
【0012】
前記クランプは、前記電線の把持および把持の解除が可能に構成されていてもよい。前記第2位置の下方に、前記電線を回収する回収トレイが配置されていてもよい。
【0013】
このことにより、前記クランプは、電線を回収トレイに排出する排出クランプとして機能する。前記クランプが第1位置から第2位置に移動した後、電線の把持を解除することにより、電線は回収トレイに回収される。電線が比較的長い場合であっても、電線が曲がってしまうことは抑制されるので、回収トレイに回収される電線は比較的真っ直ぐな状態となる。電線が比較的短い場合であっても、電線の他端部の振れは抑制されるので、回収トレイに回収される電線は比較的真っ直ぐな状態となる。回収トレイに複数の電線を回収する場合、電線同士を良好に整列した状態にすることができる。したがって、作業者は、回収トレイに回収された電線を容易に束ねることができる。
【0014】
前記クランプの構成は特に限定されない。例えば、前記クランプは、第1アームと、前記第1アームに対向する第2アームと、前記第1アームおよび前記第2アームが互いに接近または離反するように前記第1アームおよび前記第2アームの一方または両方を駆動するクランプアクチュエータと、を有していてもよい。
【0015】
前記電線処理装置は、前記電線の前記一端部を把持する他のクランプを備えていてもよい。前記クランプは、前記第1位置において、前記他のクランプから前記電線の前記一端部を受け取るように構成されていてもよい。
【0016】
前記制御装置は、前記クランプを前記第1位置から前記第2位置に移動させ、前記クランプの把持を解除させ、前記クランプを前記第2位置から前記第1位置に移動させる第1動作を繰り返す第1制御を実行するように構成されていてもよい。前記制御装置は、第3位置において前記他のクランプから前記クランプに前記電線の前記一端部を受け渡し、前記他のクランプを前記第3位置から第4位置に移動させ、前記他のクランプを前記第4位置から前記第3位置に移動させる第2動作を繰り返す第2制御を実行するように構成されていてもよい。前記制御装置は、前記第1制御と前記第2制御とを同時に実行するように構成されていてもよい。前記第1加速度および前記第1減速度は、前記第1動作の所要時間が前記第2動作の所要時間以下となるように設定されていてもよい。
【0017】
このことにより、加速移動の加速度を標準加速度から第1加速度に低減させた場合、および、減速移動の減速度を標準減速度から第1減速度に低減させた場合のいずれにおいても、第1動作の所要時間は第2動作の所要時間以下である。そのため、電線の長さが第1閾値以上の場合および第2閾値未満の場合のいずれであっても、電線処理装置のタクトタイムが長くなることを防止することができる。
【0018】
前記電線処理装置は、前記クランプが前記第1位置にあるときに少なくとも前記電線の前記他端部を支持する台を備えていてもよい。
【0019】
前記制御装置は、前記加速移動の後、かつ、前記減速移動の前に、前記クランプを等速移動させる等速制御部を有していてもよい。
【0020】
前記クランプは、前記電線の長手方向に垂直な直線方向に移動するように構成されていてもよい。
【0021】
前記加速度変更部は、前記電線長さ入力部に入力された電線の長さが、前記第1閾値よりも大きな第3閾値以上か否かを判定し、前記第3閾値以上の場合には前記加速移動の加速度を前記第1加速度よりも小さな第2加速度に変更するように構成されていてもよい。
【0022】
前記減速度変更部は、前記電線長さ入力部に入力された電線の長さが、前記第2閾値よりも小さな第4閾値以下か否かを判定し、前記第4閾値以下の場合には前記減速移動の減速度を前記第1減速度よりも小さな第2減速度に変更するように構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、電線の一端部を把持しながら移動するクランプを備え、電線の長さが長い場合および短い場合のいずれであっても、上記クランプにより電線を安定して搬送することができる電線処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】電線処理装置の構成を模式的に表す平面図である。
【
図5】排出クランプが第1位置から第2位置に移動するまでの経過時間と速度との関係を表した図である。
【
図6】加速移動の加速度が変更された場合の
図5相当図である。
【
図7】減速移動の減速度が変更された場合の
図5相当図である。
【
図8】排出クランプが加速移動したときに電線が湾曲する様子を表す図である。
【
図9】排出クランプが減速移動したときに電線の端部が振れる様子を表す図である。
【
図10】第1把持クランプを用いた処理、第2把持クランプを用いた処理、および排出クランプを用いた処理について、処理内容と所要時間との関係の一例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。
【0026】
図1は、一実施形態に係る電線処理装置1の構成を模式的に表す平面図である。電線処理装置1は、電線10に対して種々の処理を行う装置である。図示は省略するが、電線10は、導体からなる心線と絶縁材からなる被覆とを有している。被覆は心線の周囲を覆っている。電線処理装置1は、電線10を送り出す送給装置2と、電線10の長さを測定する測長装置3と、電線10を把持する第1把持クランプ4Fおよび第2把持クランプ4Rと、電線10を切断する切断刃5と、電線10の先端部の被覆を剥ぎ取る第1剥ぎ取り刃6Fおよび第2剥ぎ取り刃6Rと、電線10の先端に端子11を圧着する第1端子圧着機7Fおよび第2端子圧着機7Rと、排出クランプ8と、回収トレイ9と、を備えている。また、電線処理装置1は制御装置20を備えている。
【0027】
送給装置2は、電線10を電線10の長手方向に送り出す装置である。送給装置2の構成は何ら限定されないが、例えば、一対のローラ2A,2Bと、ローラ2Aおよび2Bの少なくとも一方を駆動するモータ(図示せず)と、を備えた装置を好適に用いることができる。
【0028】
測長装置3は、送り出される電線10の長さを測定する装置である。測長装置3の構成は何ら限定されない。測長装置3は、例えば、電線10の送り出しに伴って回転する一対のローラ3Aと、ローラ3Aの回転量を測定するエンコーダ3Bとを備えている。ローラ3Aは、電線10の送り出される長さに等しい量だけ回転する。測長装置3は、ローラ3Aの回転量に基づいて電線10の長さを検出するように構成されている。
【0029】
第1把持クランプ4Fおよび第2把持クランプ4Rは、電線10の把持および把持の解除が可能に構成されている。第1把持クランプ4Fおよび第2把持クランプ4Rは、電線10の長手方向に垂直な方向に移動可能に構成されている。また、第1把持クランプ4Fおよび第2把持クランプ4Rは、電線10の長手方向に移動可能に構成されている。第2把持クランプ4Rは、本発明に係る「他のクランプ」の一例である。第2把持クランプ4Rは、第3位置P3と第4位置P4との間を移動可能である。本実施形態では、第1把持クランプ4Fおよび第2把持クランプ4Rは、電線10の長手方向に垂直な直線方向に移動可能に構成されている。第1把持クランプ4Fは、
図1の矢印Aの方向に移動可能である。第2把持クランプ4Rは、
図1の矢印Bの方向に移動可能である。ただし、第1把持クランプ4Fおよび第2把持クランプ4Rは、電線10の長手方向に垂直な周方向に移動可能に構成されていてもよい。第1把持クランプ4Fおよび第2把持クランプ4Rの構成は何ら限定されない。第1把持クランプ4Fおよび第2把持クランプ4Rとして、従来から公知の任意のクランプを用いることができる。
【0030】
切断刃5、第1剥ぎ取り刃6F、および第2剥ぎ取り刃6Rは、それぞれ一対の刃によって構成されている。例えば、切断刃5、第1剥ぎ取り刃6F、および第2剥ぎ取り刃6Rは、それぞれ上下一対の刃によって構成されている。切断刃5は、電線10の心線および被覆を切断するように構成されている。第1剥ぎ取り刃6Fおよび第2剥ぎ取り刃6Rは、電線10の心線は切断せず、被覆のみを切り込むように構成されている。第1剥ぎ取り刃6Fおよび第2剥ぎ取り刃6Rは、切断刃5により切断された電線10の被覆を剥ぎ取る。以下、切断された電線10のうち、切断刃5よりも第1把持クランプ4F側に位置する電線、切断刃5よりも第2把持クランプ4R側に位置する電線には、それぞれ符号10A、10Bを付すこととする。
【0031】
第1把持クランプ4Fが第1剥ぎ取り刃6Fに近づいた後、第1剥ぎ取り刃6Fは電線10Aの被覆を切り込む。第1剥ぎ取り刃6Fが電線10Aの被覆を切り込んだ後、第1把持クランプ4Fが第1剥ぎ取り刃6Fから遠ざかることにより、第1把持クランプ4Fに把持された電線10Aの端部の被覆が剥ぎ取られる。同様に、第2把持クランプ4Rが第2剥ぎ取り刃6Rに近づいた後、第2剥ぎ取り刃6Rは電線10Bの被覆を切り込む。第2剥ぎ取り刃6Rが電線10Bの被覆を切り込んだ後、第2把持クランプ4Rが第2剥ぎ取り刃6Rから遠ざかることにより、第2把持クランプ4Rに把持された電線10Bの端部の被覆が剥ぎ取られる。
【0032】
第1端子圧着機7Fは、第1把持クランプ4Fに把持された電線10Aの端部に端子11を圧着する。第2端子圧着機7Rは、第2把持クランプ4Rに把持された電線10Bの端部に端子11を圧着する。
【0033】
排出クランプ8は、電線10Bの一端部を把持するクランプである。排出クランプ8は、本発明に係る「クランプ」の一例である。以下の説明では、電線10Bの両端部のうち、排出クランプ8に把持される方の端部を第1端部10aと言い、排出クランプ8に把持されない方の端部を第2端部10bと言うこととする。排出クランプ8は、第2把持クランプ4Rから電線10Bの第1端部10aを受け取り、電線10Bを回収トレイ9に搬送するように構成されている。
図1において、仮想線で表す排出クランプ8の位置を第1位置という。実線で表す排出クランプ8の位置を第2位置という。符号P1は第1位置を表す。符号P2は第2位置を表す。回収トレイ9は第2位置P2の下方に配置されている。排出クランプ8は、矢印Cで示すように、第1位置P1と第2位置P2との間を移動する。電線処理装置1は、排出クランプ8を移動させるアクチュエータ83(
図2参照)を備えている。アクチュエータ83として、例えば、モータなどを用いることができる。排出クランプ8は、第1位置P1において電線10Bを受け取り、第2位置P2において電線10Bを排出する。
【0034】
排出クランプ8は、電線10Bの把持および把持の解除が可能に構成されている。排出クランプ8の構成は特に限定されない。例えば、
図2に示すように、排出クランプ8は、ベース80と、第1アーム81と、第2アーム82と、第1アーム81および第2アーム82をベース80に回転可能に支持する回転軸85と、第1アーム81および第2アーム82を回転させるクランプアクチュエータ87と、ガイドレール70に移動可能に係合したスライダ88とを備えていてもよい。
【0035】
クランプアクチュエータ87は、第1アーム81および第2アーム82が互いに接近および離反するように第1アーム81および第2アーム82を駆動する。第1アーム81および第2アーム82が互いに接近することにより、第1アーム81および第2アーム82は電線10Bを把持する。逆に、第1アーム81および第2アーム82が互いに離反することにより、第1アーム81および第2アーム82は、電線10Bの把持を解除する。クランプアクチュエータ87の種類は特に限定されない。クランプアクチュエータ87として、例えば、エアシリンダ、モータなどを好適に用いることができる。
【0036】
排出クランプ8を第1位置P1と第2位置P2との間で移動させる機構は何ら限定されない。従来から公知の機構を好適に用いることができる。例えば、スライダ88に無端ベルトが取り付けられ、上記無端ベルトは一対のプーリに巻き掛けられていてもよい。この場合、アクチュエータ83は、一方のプーリを回転させるサーボモータ等であってもよい。また、排出クランプ8を移動させる機構はボールねじ機構であってもよい。すなわち、ガイドレール70は外周面にねじ溝が形成されたねじ軸であり、スライダ88に上記ねじ軸に噛み合うねじ溝が形成されていてもよい。この場合、アクチュエータ83は、上記ねじ軸を回転させるサーボモータ等であってもよい。
【0037】
電線処理装置1は、電線10Bの一部を支持可能な台12を備えている。
図3に示すように、排出クランプ8は台12よりも上方に配置されている。台12は、排出クランプ8が第1位置P1にあるときに、少なくとも電線10Bの第2端部10bを支持する。電線10Bが排出クランプ8に把持されているときに、電線10Bの第1端部10aは台12よりも上方に位置する。本実施形態では、電線10Bが排出クランプ8に把持されているときに、電線10Bの第2端部10bは台12に接触しているが、電線10Bの第1端部10aは台12から上方に離間している。ただし、特に限定されない。電線10Bが排出クランプ8に把持されているときに、電線10Bの第1端部10aおよび第2端部10bの両方が台12から上方に離間していてもよい。電線10Bが比較的短い場合、第2端部10bは台12から上方に離間する傾向がある。電線10Bが比較的短い場合、電線10Bは排出クランプ8により、空中に浮いた状態で把持される。
【0038】
制御装置20はコンピュータによって構成されている。制御装置20は、電線処理装置1の専用のコンピュータであってもよく、パーソナルコンピュータのような汎用のコンピュータであってもよい。制御装置20は、ネットワークを介して接続されたコンピュータであってもよい。制御装置20は、クラウド上のコンピュータであってもよい。
制御装置20は、電線処理装置1の動作を制御する。
【0039】
次に、電線処理装置1の動作について説明する。以下の説明では、
図1の下側、上側を、それぞれ前側、後側とする。
図1の左側、右側をそれぞれ左側、右側とする。電線処理装置1は、以下に説明するサイクルを連続的に繰り返す。
【0040】
まず、送給装置2は、電線10を予め設定された所定長さだけ前側に送り出す。把持クランプ4Fおよび把持クランプ4Rは、電線10を把持する。測長装置3は、電線10の長さを測定する。
【0041】
次に、切断刃5が電線10を切断する。これにより、電線10は前側の電線10Bと後側の電線10Aとに分けられる。第1把持クランプ4Fは、電線10Aの前端部を把持する。第2把持クランプ4Rは、電線10Bの後端部(第1端部10a)を把持する。
【0042】
次に、第1把持クランプ4Fは右側に移動し、第2把持クランプ4Rは左側に移動する。第1把持クランプ4Fは前側に移動し、第1剥ぎ取り刃6Fは、電線10Aの前端部の被覆に切り込みを入れる。第2把持クランプ4Rは後側に移動し、第2剥ぎ取り刃6Rは、電線10Bの後端部の被覆に切り込みを入れる。そして、第1把持クランプ4Fが後側に移動することにより、電線10Aの前端部の被覆が剥ぎ取られる。第2把持クランプ4Rが前側に移動することにより、電線10Bの後端部の被覆が剥ぎ取られる。
【0043】
第1把持クランプ4Fは更に右側に移動し、第2把持クランプ4Rは更に左側に移動する。第1端子圧着機7Fは、電線10Aの前端部に端子11を圧着する。第2端子圧着機7Rは、電線10Bの第1端部10aに端子11を圧着する。
【0044】
その後、第1把持クランプ4Fは、左側に移動し、切断刃5の後方の初期位置(
図1において実線で示す位置)に戻る。第2把持クランプ4Rは、第3位置P3まで更に左側に移動する。そして、排出クランプ8は電線10Bの第1端部10aを把持し、第2把持クランプ4Rは電線10Bの第1端部10aの把持を解除する。これにより、電線10Bの第1端部10aは、第2把持クランプ4Rから排出クランプ8に受け渡される。その後、第2把持クランプ4Rは、右側に移動し、切断刃5の前方の初期位置(
図1に実線で示す位置。すなわち第4位置P4)に戻る。
【0045】
排出クランプ8は、電線10Bを把持しながら第1位置P1から第2位置P2に移動する。電線10Bの第2端部10bはクランプ等によって把持されておらず、台12の上に置かれている。排出クランプ8が電線10Bの第1端部10aを左側に移動させると、電線10Bの第2端部10bは第1端部10aに引っ張られることにより、左側に移動する。その結果、電線10Bは、回収トレイ9の上方に搬送される。排出クランプ8は、第2位置P2に到達した後、電線10Bの把持を解除する。これにより、電線10Bの第1端部10aは落下し、電線10Bは回収トレイ9に回収される。その後、排出クランプ8は第2位置P2から第1位置P1に戻る。
【0046】
以上が、1サイクルの動作である。電線処理装置1は、上記サイクルを繰り返すことにより、第1端部10aおよび第2端部10bに端子11が圧着された電線10Bを連続的に作製する。
【0047】
本実施形態に係る電線処理装置1は、電線10Bの長さに応じて、排出クランプ8の移動を制御するように構成されている。制御装置20は、アクチュエータ83を制御することにより、排出クランプ8の移動を制御することができる。
図4は、制御装置20のブロック図である。
図4に示すように、制御装置20は、加速制御部21、等速制御部22、減速制御部23、記憶部24、電線長さ入力部25、加速度変更部26、および減速度変更部27を有している。
【0048】
図5は、排出クランプ8が第1位置P1から第2位置P2に移動するまでの経過時間Tと排出クランプ8の速度Vとの関係を表した図である。排出クランプ8は、第1位置P1において停止している状態から、T1において移動を開始し、T1~T2において加速移動し、T2~T3において等速移動し、T3~T4において減速移動し、T4において第2位置に到達して停止する。なお、加速移動とは、加速しながら移動することをいう。等速移動とは、一定速度で移動することをいう。減速移動とは、減速しながら移動することをいう。
【0049】
加速制御部21は、排出クランプ8を第1位置P1から加速移動させるように構成されている。減速制御部23は、排出クランプ8を第2位置P2まで減速移動させるように構成されている。等速制御部22は、加速移動の後、かつ、減速移動の前に、排出クランプ8を等速移動させるように構成されている。
【0050】
記憶部24は、加速移動の加速度として予め設定された標準加速度、および、減速移動の減速度として予め設定された標準減速度を記憶している。標準加速度をα0とすると、
図5において、α0=V1/(T2-T1)である。標準減速度をβ0とすると、
図5において、β0=V1/(T4-T3)である。
【0051】
電線長さ入力部25には、電線10Bの長さ(以下、単に電線長さと言う)の情報が入力される。電線長さ入力部25は、測長装置3から電線長さの情報を取得するように構成されていてもよい。また、電線処理装置1は、作業者が操作画面(図示せず)等から電線長さを入力可能に構成されていてもよい。電線長さ入力部25は、作業者の入力に基づいて、電線長さの情報を取得するように構成されていてもよい。電線長さ入力部25が電線長さを取得する方法は何ら限定されない。
【0052】
加速度変更部26は、電線長さ入力部25に入力された電線長さが第1閾値以上か否かを判定し、第1閾値以上の場合には加速移動の加速度を標準加速度α0よりも小さな第1加速度α1に変更するように構成されている。なお、第1閾値および第1加速度α1は予め設定された値であり、例えば、記憶部24に保存されている。電線長さが第1閾値以上の場合、例えば、
図6に示すように、加速移動の加速度は第1加速度α1=V1/(T21-T1)に変更される。
【0053】
減速度変更部27は、電線長さ入力部25に入力された電線長さが第1閾値以下の第2閾値未満か否かを判定し、第2閾値未満の場合には減速移動の減速度を標準減速度β0よりも小さな第1減速度β1に変更するように構成されている。なお、第2閾値および第1減速度β1は予め設定された値であり、例えば、記憶部24に保存されている。電線長さが第2閾値未満の場合、例えば、
図7に示すように、減速移動の減速度は第1減速度β1=V1/(T41-T31)に変更される。
【0054】
排出クランプ8が第1位置P1から加速移動を始めたときに、電線10Bには慣性が発生する。
図8に示すように、電線10Bが比較的長い場合、排出クランプ8が加速移動するときに、電線10Bは湾曲する傾向がある。電線10Bが湾曲すると、排出クランプ8は電線10Bを安定して搬送しにくくなる。また、電線10Bが湾曲すると、排出クランプ8が第2位置P2に到達して電線10Bの把持を解除したときに、電線10Bが湾曲したまま回収トレイ9に回収される場合がある。その場合、回収トレイ9において、複数の電線10B同士は良好に整列しないことがある。そのため、作業者が回収トレイ9に回収された電線10Bを束ねる作業に手間と時間がかかる。
【0055】
しかし、本実施形態によれば、電線長さが第1閾値以上の場合、加速移動の加速度は標準加速度α0から第1加速度α1に低減される。加速移動の加速度は抑えられる。そのため、電線10Bが比較的長い場合でも、電線10Bの湾曲は抑制される。排出クランプ8は電線10Bを安定して搬送することができる。また、回収トレイ9に電線10Bを良好に回収することができ、回収トレイ9内の電線10B同士を良好に整列させることができる。よって、作業者が回収トレイ9に回収された電線10Bを束ねる作業を容易に行うことができる。
【0056】
排出クランプ8が第2位置P2まで減速移動したときに、電線10Bには慣性が発生する。
図9に示すように、電線10Bが比較的短い場合、排出クランプ8が減速移動して第2位置P2に停止したときに、電線10Bの第2端部10bが振れる傾向がある。すなわち、電線10Bの第2端部10bが振動する傾向がある。なお、第2端部10bが台12から上方に離間している場合、第2端部10bの振動は、より顕著となる。電線10Bの第2端部10bが振れると、排出クランプ8が電線10Bの把持を解除したときに、電線10Bが左右に傾きやすい。この場合も、回収トレイ9において、複数の電線10B同士は良好に整列しないことがある。作業者が回収トレイ9に回収された電線10Bを束ねる作業に手間と時間がかかる。
【0057】
しかし、本実施形態によれば、電線長さが第2閾値未満の場合、減速移動の減速度は標準減速度β0から第1減速度β1に低減される。減速移動の減速度は抑えられる。そのため、電線10Bが比較的短い場合でも、排出クランプ8の停止時に電線10Bの振れは抑制される。排出クランプ8は、第2位置P2に電線10Bを安定して搬送することができる。回収トレイ9に電線10Bを良好に回収することができ、回収トレイ9内の電線10B同士を良好に整列させることができる。よって、作業者が回収トレイ9に回収された電線10Bを束ねる作業を容易に行うことができる。
【0058】
本実施形態では、電線長さが第1閾値以上の場合、
図6に示すように、減速移動の減速度は標準減速度β0のままである。電線長さが第1閾値以上の場合に、減速移動の減速度は低減させない。また、電線長さが第2閾値未満の場合、
図7に示すように、加速移動の加速度は標準加速度α0のままである。電線長さが第2閾値未満の場合に、加速移動の加速度は低減させない。そのため、排出クランプ8が第1位置P1から第2位置P2に移動する時間が長くなりすぎることはない。
【0059】
電線処理装置1では、第1把持クランプ4Fを用いた処理と、第2把持クランプ4Rを用いた処理と、排出クランプ8を用いた処理とは、同時に行われる。
図10は、第1把持クランプ4Fを用いた処理と、第2把持クランプ4Rを用いた処理と、排出クランプ8を用いた処理とについて、処理内容と所要時間との関係の一例を表す図である。電線処理装置1のタクトタイムは、第1把持クランプ4Fを用いた処理の所要時間と、第2把持クランプ4Rを用いた処理の所要時間と、排出クランプ8を用いた処理の所要時間とのうち、最も長い所要時間によって決定される。
【0060】
図10(a)~(c)に示すように、元々、排出クランプ8を用いた処理の所要時間T300は、第1把持クランプ4Fを用いた処理の所要時間T100よりも短く、第2把持クランプ4Rを用いた処理の所要時間T200よりも短い。
図10(d)に示すように、排出クランプ8の移動時間が少々長くなったとしても、排出クランプ8を用いた処理の所要時間T300Aは、第1把持クランプ4Fを用いた処理の所要時間T100よりも短く、第2把持クランプ4Rを用いた処理の所要時間T200よりも短い。よって、電線処理装置1のタクトタイムは長くならない。
【0061】
本実施形態では、加速移動の加速度を標準加速度α0から第1加速度α1に変更した場合、および、減速移動の減速度を標準減速度β0から第1減速度β1に変更した場合のいずれであっても、排出クランプ8を用いた処理の所要時間T300Aは、第1把持クランプ4Fを用いた処理の所要時間T100および第2把持クランプ4Rを用いた処理の所要時間T200の少なくとも一方の時間以下に設定されている。すなわち、第1加速度α1および第1減速度β1は、電線処理装置1のタクトタイムが長くならないように設定されている。
【0062】
制御装置20は、排出クランプ8を第1位置P1から第2位置P2に移動させ、排出クランプ8の把持を解除させ、排出クランプ8を第2位置P2から第1位置P1に移動させる第1動作を繰り返す制御(第1制御)を実行する。また、制御装置20は、第3位置P3において第2把持クランプ4Rから排出クランプ8に電線10Bの第1端部10aを受け渡し、第2把持クランプ4Rを第3位置P3から第4位置P4に移動させ、第4位置P4から第3位置P3に移動させる第2動作を繰り返す制御(第2制御)を実行する。第1制御と第2制御とは同時に実行される。第1加速度α1および第1減速度β1は、第1動作の所要時間が第2動作の所要時間以下となるように設定されている。
【0063】
以上のように、本実施形態によれば、電線10Bが比較的長い場合には、排出クランプ8が第1位置P1から加速移動するときの加速度が低減される。そのため、電線10Bが慣性により曲がってしまうことを抑制することができる。よって、電線10Bが比較的長い場合であっても、排出クランプ8は第1位置P1から第2位置P2に電線10Bを安定して搬送することができる。電線10Bが比較的短い場合には、排出クランプ8が第2位置P2まで減速移動するときの減速度が低減される。そのため、排出クランプ8が第2位置P2に停止したときに、電線10Bの第2端部10bが慣性により振れることを抑制することができる。よって、電線10Bが比較的短い場合であっても、排出クランプ8は第1位置P1から第2位置P2に電線10Bを安定して搬送することができる。このように本実施形態によれば、排出クランプ8によって、第1位置P1から第2位置P2に電線10Bを安定して搬送することができる。
【0064】
本実施形態によれば、加速移動の加速度の変更および減速移動の減速度の変更は、電線長さに応じて制御装置20により自動的に行われる。そのため、作業者が加速度または減速度を手動で変更する場合と異なり、変更をし忘れることはない。また、変更した後、電線長さが元に戻った場合に、加速度および減速度を元に戻し忘れることはない。
【0065】
本実施形態によれば、排出クランプ8が第1位置P1から第2位置P2に移動した後、電線10Bの把持を解除することにより、電線10Bは回収トレイ9に回収される。上述のように、電線10Bが比較的長い場合であっても、電線10Bが曲がってしまうことは抑制される。よって、回収トレイ9に回収される電線10Bは比較的真っ直ぐな状態となる。また、電線10Bが比較的短い場合、排出クランプ8が第2位置P2に停止したときに、電線10Bの第2端部10bが振れることは抑制される。そのため、排出クランプ8が電線10Bの把持を解除したときに、電線10Bは比較的真っ直ぐな状態で回収トレイ9に回収される。したがって、本実施形態によれば、回収トレイ9における電線10B同士を良好に整列した状態にすることができる。作業者は回収トレイ9に回収された電線10Bを容易に束ねることができる。
【0066】
本実施形態によれば、第1加速度α1および第1減速度β1は、前述の第1動作の所要時間が第2動作の所要時間以下となるように設定されている。電線長さが第1閾値以上の場合および第2閾値未満の場合のいずれであっても、排出クランプ8の処理の所要時間T300Aは、第2把持クランプ4Rの処理の所要時間T200以下である。そのため、電線処理装置1のタクトタイムを長くしなくても、前述の効果を得ることができる。
【0067】
以上、本発明の一実施形態について説明した。ただし、前記実施形態は例示に過ぎない。他にも様々な実施形態が可能である。以下、他の実施形態の例について簡単に説明する。
【0068】
前記実施形態では、電線10Bが長いか否かを判定するための閾値として、一つの閾値のみが設定されている。しかし、複数の閾値を設定してもよい。例えば、制御装置20の加速度変更部26は、更に、電線長さ入力部25に入力された電線長さが第1閾値よりも大きな第3閾値以上か否かを判定し、第3閾値以上の場合には、加速移動の加速度を第1加速度α1よりも小さな第2加速度α2に変更してもよい。なお、第2加速度α2は、排出クランプ8の処理の所要時間が第1把持クランプ4Fおよび第2把持クランプ4Rの少なくとも一方の処理の所要時間以下となるように設定されていることが好ましい。
【0069】
前記実施形態では、電線10Bが短いか否かを判定するための閾値として、一つの閾値のみが設定されている。しかし、複数の閾値を設定してもよい。例えば、制御装置20の減速度変更部26は、更に、電線長さ入力部25に入力された電線の長さが第2閾値よりも小さな第4閾値以下か否かを判定し、第4閾値以下の場合には減速移動の減速度を第1減速度β1よりも小さな第2減速度β2に変更してもよい。なお、第2減速度β2は、排出クランプ8の処理の所要時間が第1把持クランプ4Fおよび第2把持クランプ4Rの少なくとも一方の処理の所要時間以下となるように設定されていることが好ましい。
【0070】
第2閾値は第1閾値よりも小さくてもよいが、第1閾値と等しくてもよい。例えば、電線長さが200mm以上の場合には、加速移動の加速度が第1加速度α1に変更され、電線長さが200mm未満の場合には、減速移動の減速度が第1減速度β1に変更されてもよい。
【0071】
前記実施形態では、排出クランプ8の移動方向は、電線10Bの長手方向と垂直な直線方向である。しかし、排出クランプ8の移動方向は、電線10Bの長手方向と交差する方向であればよく、特に限定されない。また、排出クランプ8の移動方向は直線方向に限定されない。例えば、排出クランプ8の移動方向は、電線10Bの長手方向と垂直な周方向であってもよい。
【0072】
前記実施形態では、少なくとも電線10Bの第2端部10bを支持する台12を備えているが、第2把持クランプ4Rを用いた処理および電線10Bの回収に差し障りがなければ、台12は無くてもよい。
【0073】
排出クランプ8の処理の所要時間は第1把持クランプ4Fおよび第2把持クランプ4Rの少なくとも一方の処理の所要時間以下であることが好ましいが、必須ではない。排出クランプ8の処理の所要時間は、第1把持クランプ4Fの処理の所要時間よりも長くてもよく、第2把持クランプ4Rの処理の所要時間よりも長くてもよい。
【0074】
前記実施形態では、排出クランプ8は加速移動、等速移動、および減速移動を行うことによって、第1位置P1から第2位置P2に移動する。しかし、等速移動は無くてもよい。排出クランプ8は、加速移動および減速移動を行うことにより、第1位置P1から第2位置P2に移動するように構成されていてもよい。
【0075】
前記実施形態では、排出クランプ8は、第1位置P1と第2位置P2との間で往復移動するように構成されている。しかし、排出クランプ8は、第1位置P1から第2位置P2に移動した後、第2位置P2から第1位置P2に戻る前に、他の位置に移動するように構成されていてもよい。
【0076】
前記実施形態では、第1位置から第2位置に移動するクランプは、電線10Bを回収トレイに排出する排出クランプ8である。しかし、電線の一端部を把持しながら第1位置から第2位置に移動するクランプは、電線を排出する排出クランプに限定されない。本発明によれば、電線を安定して搬送することができるという効果を得ることができる。電線の一端部を把持しながら移動する任意のクランプについて、本発明を適用することができる。
【0077】
電線処理装置1が行う処理は、特に限定されない。排出クランプ8が搬送する電線10Bには、端子11が圧着されていなくてもよい。また、電線は、心線および被覆を有する電線に限られない。
【符号の説明】
【0078】
1 電線処理装置
4F 第1把持クランプ
4R 第2把持クランプ(他のクランプ)
8 排出クランプ(クランプ)
9 回収トレイ
10B 電線
12 台
20 制御装置
81 第1アーム
82 第2アーム
83 アクチュエータ
87 クランプアクチュエータ